JP2005046796A5 - - Google Patents
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Description
本発明は吸湿剤を用いて空気中の水分を吸着により除去し、吸湿剤に吸着した水分を加熱により脱着再生させる調湿デバイスに関するものである。
従来、この種の調湿装置は空気中の水分の吸脱着方法として、ハニカム状セラミックス基材の表面に吸湿剤を担持し、この吸湿剤に空気中の水分を吸着させ、吸湿剤に吸着した水分を外部から主に輻射熱や対流熱により加熱して脱着再生するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−24235号公報
しかしながら、前記従来の構成では、水分の脱着過程において吸湿剤の温度上昇が遅く、水分脱着温度に達するまでに時間が長くかかるという課題を有していた。すなわち、セラミックス基材を用いた場合、熱容量が大きく、熱伝導率が低いことに起因して、水分脱着速度が遅いという課題を有していた。
また、前記課題を解決するために、基材をハニカム状とした場合は、基材の温度分布が不均一となることで、水分脱着効率が悪くなったり、空気中の塵などによってハニカム体が目詰まりすることで、水分脱着効率が悪くなるなどの問題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、温度上昇が速く、温度分布が均一で、水分脱着効率を高くした調湿デバイスを提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の調湿デバイスは、通電により発熱可能なエキスパンドメタルの基材と、前記エキスパンドメタルの基材の表面に形成した吸湿剤層とを備え、水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電するようにしたものである。
これによって、基材の表面に形成された吸湿剤が基材からの伝導熱により直接加熱されるため温度上昇が速く、また基材と吸湿剤層が密着しているため温度分布が均一となる。
本発明の調湿デバイスは、吸湿剤の温度上昇が速く、また温度分布が均一であるため水分脱着効率を高くすることができる。
第1の発明は、通電により発熱可能なエキスパンドメタルの基材と前記エキスパンドメタルの基材の表面に吸湿剤層を形成し、水分吸着時は非通電とし、水分脱着時に通電することにより、温度上昇が速く、温度分布が均一となり水分脱着効率の高い調湿デバイスとすることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明のエキスパンドメタルの基材をNi−CrまたはFe−Cr−Alのいずれかを用いることにより、耐久性に優れ、また固有抵抗が大きくなり小型化することができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のエキスパンドメタルの基材を板厚・幅・長さ・きざみ幅・LW・SWの内の少なくとも一つ以上を調整することにより、抵抗値が決まり、任意の抵抗値に設定することができる。
第4の発明は、特に、第3の発明のエキスパンドメタルの基材のLW/SWの比を1〜5の範囲に設定することにより、目切れが無く抵抗値のバラツキを小さくすることができる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のエキスパンドメタルの基材を900〜1000℃の雰囲気中で焼鈍することにより、加工硬化を緩和し、かつ表面に緻密な不働態酸化皮膜が形成され、耐久性の高い調湿デバイスとすることができる。
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明のエキスパンドメタルの基材を波板状とすることにより、水分を含んだ空気との接触面積が大きくなり、吸脱着効率の高い調湿デバイスとすることができる。
第7の発明は、特に、第6の発明の波形状の稜線方向に通気することにより、通気抵抗が小さくなり、水分の吸脱着性能が高い調湿デバイスとすることができる。
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の吸湿剤層をエキスパンドメタルの基材表面に形成したアルミナを主成分とするアンダーコート層と、アンダーコート層の表面に設けられた吸湿剤とからなるようにすることで、基材と吸湿剤層との密着性が向上し、振動や熱伸縮に強い高耐久性の調湿デバイスとすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における調湿デバイスの斜視図を、図2は、図1に示す調湿デバイスの展開図を、それぞれ示すものである。
図1は、本発明の第1の実施の形態における調湿デバイスの斜視図を、図2は、図1に示す調湿デバイスの展開図を、それぞれ示すものである。
図1において、1は通電可能なエキスパンドメタルで表面に吸湿剤層が形成されている。2、2′は給電端子であり、スポット溶接によりエキスパンドメタル1に取り付けられている(以下エキスパンドメタルの各部を示す用語は、JIS G 3351に準拠して使用する。)。
エキスパンドメタル1は、図3に示す構成となっている。すなわち、フープ状の基材4を刻み幅Kに応じて順送し、かまぼこ型の刃物で打ち抜いているものである。このためアヤメ3は押し広げられるものであり、前記順送の条件を調整することによって短目方向の中心間距離SWと長目方向の中心間距離LWを所定の寸法としているものである。本実施例では、LWは2mm、SWは1mm、Lは800mm、Sは35mmの設定としている。エキスパンドメタル1の材料としては、体積抵抗率が大きく、耐熱性、耐食性、耐孔食性に優れたFe−Cr−Al系耐熱鋼、Ni−Cr系耐熱鋼のいずれかが適している。本実施例では、エキスパンドメタル1の表面に形成する吸湿剤層の熱膨張係数と整合するために、相対的に熱膨張係数が小さいFe−Cr−Al系耐熱鋼(R20−5SR t0.1mm(川崎製鉄製))を用いた。
以上のエキスパンドメタルを図1に示すように波板状に加工する。この時、繰返し応力による基材の破断を防止するため、山谷部に適切なR加工を施すと良い。本実施例では、波高さ20mm、R=1とした。前述したアヤメ3を形成する加工時に基材4は加工硬化を生じ、このため本実施例のように波板状に加工する際の折り曲げ等の二次加工によって折れたりするものである。そこで、本実施の形態では加工硬化を緩和するために焼鈍処理を施している。また、焼鈍処理は、基材の耐腐食性を向上させ、かつアンカー効果により吸湿剤層との密着性を向上させる効果もある。焼鈍処理温度としては、900〜1000℃が適切である。すなわち、900℃未満では酸化皮膜の形成量が不十分であり、1000℃より高くなると結晶粒の成長による脆化が問題になるためである。本実施の形態における焼鈍処理は大気中で行っているが、不活性ガス雰囲気中で行うこともできる。
こうして焼鈍を終了したエキスパンドメタル1の表面に、図4に示すようにアルミナを主成分とするアンダーコート層12を塗布し焼成を行った後、ゼオライトを主成分とする吸湿剤層13の作製を行った。
吸湿剤層4は、ゼオライト100重量部、コロイダルシリカ30重量部、イオン交換水100重量部を攪拌、混合して形成しているものである。このスラリーを、アンダーコート層12の上に塗布した後、130℃で20分間乾燥させ、600℃で20分間焼成して吸湿剤層13を形成している。本実施の形態では、吸湿剤としてゼオライトを用いたが、他にシリカゲルや活性アルミナを用いても良い。
こうして完成した調湿デバイス21を、図5に示すように、90mm幅に加工されたケーシング22内にセットした。図5において、23は送風機、24は吸気口、25は排気口である。
以上のように構成された調湿装置について、以下その動作、作用を説明する。
調湿デバイスの供給端子2、2′間に通電して、エキスパンドメタル1を加熱状態にする。同時に、吸湿剤層も加熱される。水分脱着温度に達した吸湿剤層からは、吸着されていた水分が脱着する。次に、調湿デバイスの供給端子2、2′間を非通電状態にし送風機22に通電すると、エキスパンドメタル1は非加熱状態となり通風により吸湿剤層の温度は下がり、空気中の水分が吸湿剤に吸着される。以上の動作を繰り返すことにより、目的とする湿度の空気を供給することができる。
この実施の形態の効果について、以下に説明する。
本実施の形態では、エキスパンドメタル1の表面に吸湿剤層を形成し、エキスパンドメタル1に通電したときの発熱を利用して吸湿剤層を加熱するため、吸湿剤層の温度上昇が速く、水分脱着温度に達するまでの時間が非常に短くなるものである。すなわち、従来のようにハニカム状セラミックス基材の表面に吸湿剤を担持し、この吸湿剤に空気中の水分を吸着させ、吸湿剤に吸着した水分を外部から主に輻射熱や対流熱により加熱して脱着再生する方法と比較して、本実施の形態では入力電力量を同一とした場合、約3倍の速度で水分脱着温度に達した。従来のものでは、吸着剤層の温度が200℃に達するまでの時間は100Wで約60秒であったが、本実施の形態では100Wで20秒弱であった。以上の結果より、吸脱着サイクルが比較的短い使用用途においては、本実施の形態の調湿デバイスは非常に有用である。
また、エキスパンドメタルを基材として用い波板状に加工しているため、表面積を大きく確保した上で、ハニカム形状のように目詰まりする心配がなく、また波形状の稜線方向に通気することで通気抵抗が低減され、性能低下が少ない高耐久かつ高性能な調湿デバイスとすることができる。
また、ヒータとしてエキスパンドメタルを用いているため、抵抗値の設定を自由に行え、任意の電力を吸湿剤層に供給できるものである。すなわち、図4に示すエキスパンドメタルの板厚・幅S・長さL・きざみ幅K・LW・SWのいずれを変更することによっても抵抗値を変えることができるものである。
また本実施の形態では、エキスパンドメタル1は、LW/SWの比を1〜5に設定しているものである。試験結果によれば、LW/SWの比が1以下になると、ボンドの強度が弱くなり二次加工ができなくなるものである。またこの比が5以上になると、エキスパンドメタル1の平坦度が極端に悪くなるものである。従って実用的にはLW/SWの比は1〜5が適切であり、2〜3とする方がより好ましい。
また、エキスパンドメタル1は、900〜1000℃の雰囲気中で焼鈍しているため、表面に酸化物の緻密な不働態皮膜を形成することで、耐熱性・耐食性が向上し、かつアンカー効果によりアンダーコート層または吸湿剤層との密着性を向上させることができる。
以上の効果を示すため、図1に示す調湿デバイスを用いて、基材の耐食試験および基材とアンダーコート層との密着性試験を行った。すなわち、耐食試験としては、酸、アルカリ、塩化ナトリウム溶液浸漬試験により評価し、密着性試験としては、600℃から水中に投入することによる熱衝撃試験により評価を行った。比較例としては、焼鈍処理を行わない基材を用いた。
液温25℃、1%塩化ナトリウム溶液、0.5%硫酸、0.5%水酸化ナトリウム各水溶液に両サンプルを浸漬した結果、熱処理基材は全く腐食されなかったが、未熱処理基材では1%塩化ナトリウム溶液、0.5%硫酸において、錆の発生が認められた。
次に、熱衝撃試験を行った結果、熱処理基材ではアンダーコート層に剥れはなかったが、未熱処理基材では一部に剥れが認められた。
(実施の形態2)
図6は本発明の第2の実施の形態における除湿装置の斜視図を示すものである。
図6は本発明の第2の実施の形態における除湿装置の斜視図を示すものである。
図6に示すように、31はケーシングで内部に調湿デバイス32が収められている。33は送風機で吸気口34が設けられており、他方には排気口35が設けられている。ケーシング31の上部には開口部36が設けられており、開口部35は不織布37により蓋がされている。調湿デバイス32は実施の形態1に示したものと同等とした。
以上のように構成された空調装置について、以下その動作、作用を説明する。
調湿デバイスに通電して、エキスパンドメタルを加熱状態にする。同時に、吸湿剤層も加熱される。水分脱着温度に達した吸湿剤層からは、吸着されていた水分が脱着し、開口部37からケーシングの外に放出される。次に、調湿デバイスを非通電状態にしシロッコファン34に通電すると、エキスパンドメタル1は非加熱状態となり通風により吸湿剤層の温度は下がり、空気中の水分が吸湿剤に吸着される。以上の動作を繰り返すことにより、目的とする湿度の空気を供給することができる。
以上のように本実施の形態によれば、実施の形態1で説明した除湿デバイス35を送風機33と吸気口34と排気口35を備えたケーシングに収容して、圧力損失が小さく、水分の吸脱着性能に優れた調湿装置とすることができるものである。
以上のように、本発明にかかる調湿デバイスおよびこの調湿デバイスを用いた調湿装置は、吸湿剤の温度上昇が速く、また温度分布が均一であるため水分脱着効率を高くすることが可能となるので、除湿機、デシカント空調、シート等のむれ感解消、調湿装置、加湿器等の用途にも適用できる。
1、11 エキスパンドメタル
3 アヤメ
4 基材
12 アンダーコート層
13 吸湿剤層
21、32 調湿デバイス
3 アヤメ
4 基材
12 アンダーコート層
13 吸湿剤層
21、32 調湿デバイス
Claims (8)
- 通電により発熱可能なエキスパンドメタルと、前記エキスパンドメタルの表面に形成した吸湿剤層とを備え、前記吸湿剤層に水分を吸着させる時は、前記エキスパンドメタルに非通電とし、前記吸湿剤層から水分を脱着させる時は、前記エキスパンドメタルに通電する調湿デバイス。
- エキスパンドメタルは、Ni−CrまたはFe−Cr−Alのいずれかとした請求項1に記載の調湿デバイス。
- エキスパンドメタルは、板厚、幅、長さ、きざみ幅、LW、SWの内の少なくとも一つを調整することによって抵抗を設定する請求項1または2に記載の調湿デバイス。
- エキスパンドメタルは、LW/SWの比を1〜5の範囲に設定した請求項3に記載の調湿デバイス。
- エキスパンドメタルは、900〜1000℃の雰囲気中で焼鈍した請求項1〜4のいずれか1項に記載の調湿デバイス。
- エキスパンドメタルは、波板状とした請求項1〜5のいずれか1項に記載の調湿デバイス。
- 波形状の稜線方向に通気する請求項6に記載の調湿デバイス。
- 吸湿剤層は、エキスパンドメタルの基材表面に形成したアルミナを主成分とするアンダーコート層と、アンダーコート層の表面に設けられた吸湿剤とを備えた請求項1〜7のいずれか1項に記載の調湿デバイス。
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