JP4238654B2 - ボイラ用給水の処理方法および処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、外部から供給される水道水,工業用水,地下水等の給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理に関するもので、とくに水分の影響により、ボイラの伝熱管に生じる腐食を抑制する処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
日本工業規格(JIS)に規定された特殊循環ボイラの範疇に属する貫流ボイラは、給水を加熱して蒸気を生成させるための伝熱管を備えている。このような伝熱管は、炭素鋼等の非不動態化金属を用いて形成されているため、伝熱管内へ供給された水(以下、「缶水」と云う)と接触する部位が、缶水の影響による腐食のために破損し、貫流ボイラの寿命に致命的な影響をおよぼす場合がある。このため、貫流ボイラを長期間安定に運転するためには、伝熱管の腐食を効果的に抑制する必要がある。
【0003】
ところで、伝熱管に生じる前記のような腐食は、たとえば特許文献1,特許文献2および特許文献3に記載されているように、ボイラに対して供給する給水中へ薬剤を添加することにより抑制している。しかし、給水中へ添加された薬剤は、一部が蒸気中に取り込まれる可能性がある。この場合、この蒸気は、たとえば食品の調理や加工の用途において、衛生上の観点から、そのまま利用するのは困難となる。また、給水中へ添加された薬剤は、缶水に含まれることになるが、缶水の濃縮水を排水する場合(ブロー操作時)、この濃縮水は、添加された薬剤を含んでいるので、薬剤を除去するための特別な処理を施さない限り、そのまま下水等へ排出すると、環境汚染を引き起こす可能性がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−232286号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平4−283299号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平6−158366号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、水分の影響によりボイラの伝熱管に生じる腐食を薬剤を用いずに抑制することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、まずこの発明の方法に関する手段として、請求項1に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理方法であって、前記給水に溶存している酸化剤を除去する酸化剤除去工程と、前記給水に含まれている硬度成分を除去する硬度成分除去工程と、前記ボイラの腐食促進成分を捕捉し,かつ前記ボイラの腐食抑制成分を透過するように、前記給水をろ過処理するろ過処理工程と、前記給水に溶存している気体を除去する溶存気体除去工程とからなることを特徴としている。
【0009】
つぎに、請求項2に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理方法であって、前記給水に溶存している酸化剤を除去する工程を実行し、つぎに前記給水に含まれている硬度成分を除去する工程を実行し、つぎに前記ボイラの腐食促進成分を捕捉し,かつ前記ボイラの腐食抑制成分を透過するように、前記給水をろ過処理する工程を実行し、さらに前記給水に溶存している気体を除去する工程を実行することを特徴としている。
【0010】
つぎに、請求項3に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理方法であって、前記酸化剤を除去する工程を実行する前に、前記給水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する工程を実行することを特徴としている。
【0011】
つぎに、請求項4に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理方法であって、前記非溶解物をろ過する工程を実行する前に、酸化剤を添加する工程を実行することを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理方法であって、前記非溶解物をろ過する工程を実行した後に、細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する第二ろ過工程を実行することを特徴としている。
【0013】
そして、この発明の装置に関する手段として、請求項6に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記給水に溶存している酸化剤を吸着除去する酸化剤除去装置と、前記給水に含まれている硬度成分をイオン交換により除去する硬度成分除去装置と、前記ボイラの腐食促進成分を捕捉可能であり,かつ前記ボイラの腐食抑制成分を透過可能なろ過膜により、前記給水をろ過処理するろ過処理装置と、前記給水に溶存している気体を真空脱気する溶存気体除去装置とからなることを特徴としている。
【0014】
つぎに、請求項7に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置,前記硬度成分除去装置,前記ろ過処理装置および前記溶存気体除去装置を上流側からこの順番に配置したことを特徴としている。
【0015】
つぎに、請求項8に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置が活性炭ろ過装置であり、前記硬度成分除去装置がイオン交換樹脂を用いた軟水装置であり、前記ろ過処理装置がナノろ過膜を用いたろ過処理装置であり、前記溶存気体除去装置が膜式真空脱気装置であることを特徴としている。
【0016】
つぎに、請求項9に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置の前段に、前記給水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する塔式ろ過装置を配置したことを特徴としている。
【0017】
つぎに、請求項10に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記塔式ろ過装置が除鉄・除マンガン装置および/または砂ろ過装置であることを特徴としている。
【0018】
つぎに、請求項11に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記塔式ろ過装置の前段に、前記給水へ次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加する薬注装置を配置したことを特徴としている。
【0019】
さらに、請求項12に記載の発明は、給水を加熱して蒸気を生成するボイラへの給水の処理装置であって、前記塔式ろ過装置の後段に、前記給水に含まれている細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する膜式ろ過装置を配置したことを特徴としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、外部から供給される水道水,工業用水,地下水等の給水を加熱して蒸気を生成する蒸気ボイラに適用することができる。
【0021】
まず、この発明の処理方法は、給水に溶存している次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を除去する酸化剤除去工程と、給水に含まれているカルシウム,マグネシウム等の硬度成分を除去する硬度成分除去工程と、ボイラの伝熱管の腐食促進成分である硫酸イオン,塩化物イオン等を捕捉し,かつ前記伝熱管の腐食抑制成分であるシリカを透過するように、給水をろ過処理するろ過処理工程と、給水に溶存している酸素等の気体を除去する溶存気体除去工程とからなっている。そして、この発明の処理方法は、前記酸化剤除去工程,前記硬度成分除去工程,前記ろ過処理工程および前記溶存気体除去工程をこの順番に実行することが好適である。
【0022】
そして、この発明の処理方法は、外部から供給される給水の水質に応じて、前記酸化剤除去工程を実行する前に、給水,とくに工業用水あるいは地下水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する工程を実行することが好適である。
【0023】
そして、この発明の処理方法においては、外部から供給される給水(とくに、工業用水あるいは地下水)の水質に応じて、前記非溶解物のろ過工程における微生物等の細菌の繁殖を防止するために,あるいは前記鉄分,マンガン等の酸化を促進するために、前記非溶解物のろ過工程を実行する前に、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加する工程を実行することが好適である。
【0024】
さらに、この発明の処理方法においては、前記ろ過処理工程時に目詰まりを防止するために、前記非溶解物のろ過工程を実行した後に、細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する第二ろ過工程を実行することが好適である。
【0025】
つぎに、この発明の処理装置は、給水に溶存している次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去する酸化剤除去装置と、給水に含まれているカルシウム,マグネシウム等の硬度成分をイオン交換により除去する硬度成分除去装置と、ボイラの伝熱管の腐食促進成分である硫酸イオン,塩化物イオン等を捕捉可能であり,かつ前記伝熱管の腐食抑制成分であるシリカを透過可能なろ過膜により、給水をろ過処理するろ過処理装置と、給水に溶存している酸素等の気体を真空脱気する溶存気体除去装置とからなっている。そして、この発明の処理装置は、前記酸化剤除去装置,前記硬度成分除去装置,前記ろ過処理装置および前記溶存気体除去装置を上流側からこの順番に配置することが好適である。さらに、この発明の処理装置は、前記酸化剤除去装置が活性炭ろ過装置であり、前記硬度成分除去装置がイオン交換樹脂を用いた軟水装置であり、前記ろ過処理装置がナノろ過膜を用いたろ過処理装置であり、前記溶存気体除去装置が膜式真空脱気装置であることが好適である。
【0026】
そして、この発明の処理装置は、外部から供給される給水の水質に応じて、前記酸化剤除去装置の前段に、給水,とくに工業用水あるいは地下水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する塔式ろ過装置を配置することが好適である。この塔式ろ過装置は、除鉄・除マンガン装置あるいは砂ろ過装置であり、これらを直列または並列に配置するか,あるいはいずれか一方を配置することが好適である。
【0027】
そして、この発明の処理装置においては、外部から供給される給水(とくに、工業用水あるいは地下水)の水質に応じて、前記塔式ろ過装置における微生物等の細菌の繁殖を防止するために,あるいは前記鉄分,マンガン等の酸化を促進するために、前記塔式ろ過装置の前段に、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加する薬注装置を配置することが好適である。
【0028】
さらに、この発明の処理装置においては、前記ろ過処理装置の目詰まりを防止するために、前記塔式ろ過装置の後段に、細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する膜式ろ過装置を配置することが好適である。
【0029】
【実施例】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の第一実施例の概略説明図である。
【0030】
図1において、外部の水源(図示省略)から供給される水道水,工業用水,地下水等の給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1は、給水ライン2を介して、外部の水源から供給された原水を一時的に貯留する被処理水タンク3と接続されている。そして、この給水ライン2には、被処理水に溶存している次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を吸着除去する活性炭ろ過装置4と、被処理水に含まれているカルシウム,マグネシウム等の硬度成分をイオン交換樹脂(図示省略)により除去する軟水装置5と、被処理水に含まれている硫酸イオン,塩化物イオン等を捕捉可能であり,かつシリカを透過可能なナノろ過膜(図示省略)を用いたろ過処理装置6と、被処理水に溶存している酸素等の気体を真空脱気する膜式真空脱気装置7と、この膜式真空脱気装置7を通過した被処理水を貯留する給水タンク8とが、上流側,すなわち前記被処理水タンク3側から順番に配置されている。そして、前記軟水装置5と前記ろ過処理装置6との間には、前記ナノろ過膜の目詰まりを防止するためのフィルター9が設けられている。
【0031】
まず、前記ボイラ1について簡単に説明すると、前記ボイラ1は、水管ボイラと称されている多管式の貫流ボイラについて説明するもので、その缶体構造の概略を例示した図2に示すように、上下に所定の距離を離して配置した環状の下部ヘッダ10と環状の上部ヘッダ11とを備えている。この両ヘッダ10,11の間には、複数の伝熱管12,12,…が環状に配置されており、この各伝熱管12によって画成された空間部が燃焼室13となっている。そして、この燃焼室13の上方には、前記各伝熱管12内の給水(以下、「缶水W」と云う)を加熱して蒸気を発生させるためのバーナ等の加熱装置14が設けられている。この加熱装置14は、前記上部ヘッダ11の中央部から前記燃焼室13へ向けて挿入されている。
【0032】
そして、前記下部ヘッダ10には、前記給水タンク8に貯留された給水を供給するための前記給水ライン2の端部が接続されているとともに、缶水Wの濃縮水を排水する(ブローする)ための排出管15が接続されている。また、前記上部ヘッダ11には、熱交換器等の負荷装置(図示省略)へ向けて蒸気を供給するための蒸気供給管16が接続されている。
【0033】
前記各伝熱管12は、炭素鋼等の非不動態化金属を用いて形成されたものであるが、この非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属を云い、通常はステンレス鋼,チタン,アルミニウム,クロム,ニッケルおよびジルコニウム等を除く金属である。ところで、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって、中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。したがって、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅および銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難いと考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。
【0034】
さて、前記給水ライン2に配置された各機器について説明する。まず、前記被処理水タンク3は、水道水,工業用水,地下水等の水源から供給された被処理水を一時的に貯留するためのものであり、ここから所定の水圧に調整されて,すなわち所定の吐出圧を有する給水ポンプ(図示省略)から、下流側へ供給される。この被処理水タンク3に貯留される被処理水のうち、水道水は、水道法による規定により一旦貯留される。また、工業用水および地下水は、それぞれの水質に応じて、前記給水ライン2において処理するに際し、効率的に処理することができるような水質に改質された状態,いわゆる前処理された状態で貯留される。ここで云う,いわゆる前処理とは、後述する他の実施例で説明するように、たとえば工業用水あるいは地下水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過処理することであり、またたとえば地下水には、前記給水ライン2における処理工程において、繁殖あるいは増殖する可能性がある微生物等の細菌を殺菌するために、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加することである。
【0035】
つぎに、前記活性炭ろ過装置4は、前記被処理水タンク3から供給された被処理水に溶存している次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を活性炭で吸着除去するためのものである。この酸化剤,すなわち残留塩素は、後段に配置された前記軟水装置5のイオン交換樹脂(図示省略)を酸化してイオン交換能力を早期に劣化させるおそれがあり、またさらに後段に配置された前記ろ過処理装置6のナノろ過膜(図示省略)を酸化してろ過能力を早期に劣化させるおそれがある。そこで、このような酸化による早期の能力劣化を防止するために、前記残留塩素を活性炭で吸着して除去することにより、前記イオン交換樹脂の交換能力の早期劣化を防止し、かつ前記ナノろ過膜のろ過能力の早期劣化を防止し、よって被処理水の処理効率の向上,安定化等を図るものである。
【0036】
ところで、被処理水中の残留塩素を除去する装置として、この実施例においては、前記活性炭ろ過装置4を例示したが、被処理水中の残留塩素を除去する装置としては、これに限定されるものではなく、たとえば図示は省略するが、重亜硫酸ナトリウム(SBS)を添加する薬注装置を適用することができる。
【0037】
つぎに、前記軟水装置5は、前記残留塩素が除去された被処理水に含まれているカルシウム,マグネシウム等の硬度成分を前記イオン交換樹脂により除去するためのものである。すなわち、前記軟水装置5は、被処理水中に含まれている各種の硬度成分をナトリウムイオンに置換して、被処理水を軟水に変換するためのものである。
【0038】
ところで、被処理水中の前記硬度成分を除去する装置として、この実施例においては、前記軟水装置5を例示したが、被処理水中の前記硬度成分を除去する装置としては、これに限定されるものではなく、たとえば図示は省略するが、逆浸透膜による除去装置を適用することができる。
【0039】
つぎに、前記ろ過処理装置6について説明すると、このろ過処理装置6は、前記軟水装置5により処理された軟水を前記ナノろ過膜を用いてろ過処理するためのものである。前記ナノろ過膜は、被処理水中に含まれている腐食促進成分を捕捉して取り除くことができ、かつ被処理水中に含まれている腐食抑制成分を透過することができる機能を有するものである。
【0040】
ここで、前記ナノろ過膜について説明すると、このナノろ過膜は、ポリアミド系,ポリエーテル系等の合成高分子膜である。そして、このナノろ過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度のもの)の透過を阻止できる液体分離膜である。さらに、このナノろ過膜は、そのろ過機能の点において、限外ろ過膜(分子量が1,000〜300,000程度のものをろ別可能な膜)と逆浸透膜(分子量が数十程度のものをろ別可能な膜)との中間に位置する機能を有するものである。ちなみに、前記ナノろ過膜は、各社から市販されており、容易に入手することができる。また、前記ナノろ過膜は、通常、ろ過膜モジュールとして構成されるが、モジュールの形態としては、スパイラルモジュール,中空糸モジュール,平膜モジュール等に構成される。
【0041】
さて、前記各伝熱管12の腐食を促進する成分である腐食促進成分について説明すると、腐食促進成分とは、前記各伝熱管12の腐食が発生しやすい部位,とくに内側に水分(ここでは、缶水W)が配置され、かつ外側から加熱される前記各伝熱管12の内面に作用してその腐食を促進するものを云い、通常硫酸イオン(SO4 2-),塩化物イオン(Cl-)およびその他の成分を含んでいる。ちなみに、腐食促進成分として重要なものは、硫酸イオンおよび塩化物イオンの両者である。なお、日本工業規格JIS B 8223:1999は、貫流ボイラを含む特殊循環ボイラの腐食を抑制する観点から、当該ボイラの缶水Wの水質に関する各種の管理項目および推奨基準を規定しており、塩化物イオン濃度の規制値を設けているが、缶水Wの硫酸イオン濃度については言及していない(すなわち、硫酸イオンが腐食に関与するものとは認識していない)。しかし、本特許出願人の会社の研究者等は、缶水Wの水質と腐食との関係を長年に亘って研究した成果として、缶水Wに含まれている硫酸イオンが腐食促進成分として前記各伝熱管12等に作用していることを確認している(たとえば、特開2003−129263号公報参照)。
【0042】
一方、前記各伝熱管12の腐食を抑制する成分である腐食抑制成分とは、前記各伝熱管12の腐食が発生しやすい部位,とくに前記各伝熱管12の内面に作用し、そこに生じる腐食を抑制可能なものを云い、通常、シリカ(すなわち、二酸化ケイ素(SiO2))を含んでいる。ところで、給水に含まれているシリカは、通常、前記各伝熱管12におけるスケール発生成分と認識されており、通常は可能な限りその濃度を抑制するのが好ましいと考えられている。しかし、本特許出願人の会社の研究者等は、缶水Wの水質と腐食との関係を長年に亘って研究した成果として、缶水Wに含まれているシリカが腐食抑制成分として前記各伝熱管12等に作用していることを確認している(たとえば、特開2001−336701号公報,特開2001−335975号公報および特開2002−18487号公報参照)。
【0043】
ちなみに、シリカは、給水として用いる水道水,工業用水,地下水等において、通常、含有されている成分である。
【0044】
つぎに、前記膜式真空脱気装置7は、前記ナノろ過膜でろ過処理された被処理水に溶存している酸素等の気体を機械的に除去するためのものである。すなわち、この膜式真空脱気装置7は、被処理水に溶存しており、前記各伝熱管12の腐食の要因の一つである溶存酸素を中空糸膜(図示省略)を用いて真空脱気するためのものであり、前記中空糸膜の一方に被処理水を流通させ、他方を真空排気手段で真空吸引することで、被処理水中の溶存酸素を脱気するものである。
【0045】
ところで、被処理水中の溶存酸素を除去する装置として、この実施例においては、前記膜式真空脱気装置7を例示したが、被処理水中に溶存している酸素等の気体を除去する装置としては、これに限定されるものではなく、たとえば図示は省略するが、真空脱気塔による除去装置を適用することができ、また加熱脱気による除去装置も適用することができる。
【0046】
つぎに、前記給水タンク8は、前記給水ライン2において、前記残留塩素の除去処理,軟水化処理,前記ナノろ過膜によるろ過処理および脱酸素処理された処理水と、前記ボイラ1から前記負荷装置へ供給された蒸気の凝縮水(復水)とを貯留するためのものである。この給水タンク8には、前記負荷装置からの前記復水を回収するための復水配管17が接続されている。
【0047】
さらに、前記給水ライン2において、前記給水タンク8と前記ボイラ1との間には、前記給水タンク8に貯留された給水を前記下部ヘッダ10へ供給するポンプ18が設けられている。
【0048】
さて、前記構成において、前記ボイラ1を運転する場合は、前記被処理水タンク3から前記給水タンク8へ被処理水を供給し、この供給過程において所要の処理を行い、前記ボイラ1用の給水として前記給水タンク8内に貯留する。ここの供給過程において、前記給水ライン2を流れる被処理水は、まず前記被処理水タンク3から所定の吐出圧を有する給水ポンプ(図示省略)により所定の水圧で流出する。ここで流出する被処理水の水圧は、下流側に配置された各処理装置における圧損等を考慮して設定されている。そして、前記被処理水タンク3から流出した被処理水は、まず前記活性炭ろ過装置4を通過し、前記残留塩素が除去された被処理水となり、つぎに前記軟水装置5を通過して軟水となる。つぎに、この軟水は、前記ろ過処理装置6においてろ過処理される。具体的には、軟水が前記ろ過処理装置6において、前記ナノろ過膜を通過する際、硫酸イオン,塩化物イオン等の腐食促進成分が前記ナノろ過膜により捕捉され、軟水から除去される。一方、軟水に含まれているシリカ,すなわち腐食抑制成分は、軟水とともに前記ナノろ過膜を透過する。つぎに、このようにして処理されたろ過処理水は、前記膜式真空脱気装置7を通過し、前記給水タンク8に貯留される。この結果、前記給水タンク8には、脱気処理され,かつ腐食抑制成分を含む軟水が給水として貯留されることになる。
【0049】
そして、前記給水タンク8に貯留された給水は、前記給水ポンプ18を介して前記ボイラ1へ供給され、前記下部ヘッダ10内において、缶水Wとして貯留される。貯留された缶水Wは、前記加熱装置14により加熱されながら前記各伝熱管12内を上昇し、徐々に蒸気になる。そして、前記各伝熱管12内において生成された蒸気は、前記上部ヘッダ11において集められ、前記蒸気供給管16から前記負荷装置へ供給される。
【0050】
ところで、前記ボイラ1の運転中において、前記各伝熱管12は、図2に一点鎖線IIIで示すような下端部分,すなわち前記下部ヘッダ10との連結部分が、缶水Wと継続的に接触することになる。このため、前記各伝熱管12は、前記下端部分において、通常、缶水Wの影響を受け、腐食しやすい。とくに、前記各伝熱管12は、前記下端部分において、内周面の減肉的な腐食に加えて、局部的な腐食が生じやすく、それが原因で微小な穴開きを起こして破損する場合がある。
【0051】
ここで、前記局部的腐食とは、図3(図2の一点鎖線III部分の拡大図)に示すように、前記各伝熱管12の缶水Wとの接触面側から厚さ方向の反対側へ向かう孔状の腐食,すなわち前記各伝熱管12の厚さ(肉厚)方向に発生する孔状の腐食を云う。以下、このような局部的腐食の発生現象を「孔食」と云い、この孔食により生じた孔状の腐食を「食孔」(図3においては、符号Aで示している。)と云う。ちなみに、このような孔食は、通常、缶水W中の溶存酸素の影響により発生するものと理解されている。
【0052】
しかしながら、この発明の前記第一実施例によれば、前記ボイラ1の運転中において、前記各伝熱管12に対して、腐食抑制成分を含む軟水が缶水Wとして供給されることになり、缶水Wに含まれている腐食抑制成分は、前記各伝熱管12の前記下端部分に作用し、当該部分の腐食を抑制する。より具体的には、腐食抑制成分は、前記各伝熱管12の缶水Wとの接触部分における減肉的な腐食を抑制するとともに、前記食孔Aの発生および成長も抑制し、腐食(とくに、前記食孔A)による前記伝熱管12の破損を抑制する。この際、缶水Wは、前記ろ過処理装置6により、腐食促進成分が除去されているため、腐食抑制成分による前記のような腐食抑制作用は、腐食促進成分により阻害されにくく、効果的に発揮されることになる。
【0053】
さて、缶水Wに含まれている腐食抑制成分により、前記各伝熱管12の腐食が抑制されるのは、缶水Wに含まれている溶存酸素等(前記各伝熱管12の腐食促進成分)の影響により、前記各伝熱管12から溶出する成分に腐食抑制成分(とくに、シリカ)が作用し、前記各伝熱管12の内面に耐食性の皮膜(防食皮膜)が形成されるためと考えられる。とくに、溶存酸素は、前記各伝熱管12に局部的なアノードを発現させ、これにより前記孔食を進行させる場合があるが、缶水Wに含まれている腐食抑制成分(シリカ)は、アニオンまたは負電荷のミセルとして存在するため、前記のようなアノードに吸着しやすく、当該部分で選択的に防食皮膜を形成しやすい。このため、缶水Wに含まれている腐食抑制成分(シリカ)は、前記各伝熱管12における前記孔食の進行をとくに効果的に抑制することができるものと考えられる。
【0054】
ところで、前記ボイラ1に対して供給される給水,すなわち缶水Wに含まれている腐食抑制成分(シリカ)は微量であるから、前記各伝熱管12の腐食抑制効果を高めるために、缶水Wは、濃縮倍率を高めて腐食抑制成分(シリカ)の濃度を高めることが好ましい。具体的には、缶水Wに含まれている腐食抑制成分としてのシリカ濃度(すなわち、二酸化ケイ素(SiO2)の濃度)は、少なくとも150mg/リットル(すなわち、150mg/リットル以上)になるように、好ましくは少なくとも300mg/リットル(すなわち、300mg/リットル以上)になるように設定するのが好ましい。ここで、シリカは、缶水W中において、前記のように、アニオンまたは負電荷のミセルとして存在するものと考えられるが、ここでのシリカ濃度は、シリカ(SiO2)としての濃度である。缶水W中におけるこのようなシリカ濃度は、通常、JIS K 0101:1998に記載されたモリブデン黄吸光光度法にしたがって測定することができる。
【0055】
ちなみに、前記ボイラ1における缶水Wの濃縮倍率は、缶水Wの加熱の調節と、前記排出管15からの缶水Wの排出量(いわゆる、ブロー量)の調節とにより制御することができる。具体的には、前記排出管15からの缶水Wの排出量を抑制すると、缶水Wの濃縮倍率を高めることができ、また前記給水ポンプ18による給水の供給により、缶水Wを希釈しつつ、濃縮された缶水Wを前記排出管15から適宜排出すると、缶水Wの濃縮倍率を低下させることができる。
【0056】
ここで、前記第一実施例における前記ナノろ過膜について、具体的に実験を行ったので、その実験例を比較例とともに説明する。
【0057】
実験例1
市販のナノろ過膜を用いてろ過処理した。実験条件は、つぎのとおりである。
(1)測 定 水:愛媛県北条市の水道水
(2)処理形態:前記活性炭ろ過装置4および前記軟水装置5を通過させた被処理水をろ過処理した。
(3)水 温:17℃
(4)給水圧力:0.33MPa(前記ナノろ過膜の膜面に対する水圧)
この実験条件の下に、ろ過処理前の水道水およびろ過処理後の水道水について、硫酸イオン(SO4 2-),塩化物イオン(Cl-)およびシリカ(SiO2)の含有量を測定して比較した。その結果、ろ過処理後のそれぞれの残量は、硫酸イオンが約1%,塩化物イオンが約11%,シリカが約65%であった。
【0058】
この結果によると、ろ過処理前の水道水に含まれていた硫酸イオンおよび塩化物イオンは、ろ過処理により大幅に減少しているが、シリカは、ろ過処理後の減少量が少ない。この結果から、この実験例において用いた水道水は、前記ナノろ過膜によるろ過処理を施すことにより、前記各伝熱管12に対して腐食促進成分となる硫酸イオンおよび塩化物イオンが効果的に除去され、また前記各伝熱管12の腐食抑制成分となるシリカを主として含む給水に改善されることになる。したがって、このようなろ過処理後の水道水を前記ボイラ1への給水として用い、それによる缶水Wの濃縮倍率を適宜調節すれば、前記各伝熱管12に生じる腐食,とくに前記孔食を、腐食を抑制するための薬剤を給水に対して別途添加しなくても、有効に抑制することができるものと期待できる。
【0059】
比較例1
前記ナノろ過膜を市販の限外ろ過膜に変更した点を除き、実験例1の場合と同様にして水道水をろ過処理した。ろ過処理の前後において、水道水に含まれる硫酸イオン,塩化物イオンおよびシリカの量を測定したところ、ろ過処理後の水道水に含まれるこれらの成分量は、ろ過処理前の水道水に含まれるこれらの成分量とほぼ同じであった。すなわち、限外ろ過膜を用いた場合、水道水に含まれる硫酸イオンおよび塩化物イオンを除去するのは困難であった。したがって、限外ろ過膜を用いてろ過処理した水道水を前記ボイラ1への給水として用いた場合、前記各伝熱管12の腐食は、腐食を抑制するための薬剤を給水に対して別途添加しない限り、抑制するのが困難なものと考えられる。
【0060】
比較例2
前記ナノろ過膜を市販の逆浸透膜に変更した点を除き、実験例1の場合と同様にして水道水をろ過処理した。ろ過処理の前後において、水道水に含まれる硫酸イオン,塩化物イオンおよびシリカの量を測定したところ、ろ過処理後の水道水に含まれるこれらの成分量は、ろ過処理前の水道水の5%未満であった。すなわち、逆浸透膜を用いた場合、水道水からは、腐食促進成分である硫酸イオンおよび塩化物イオンとともに、腐食抑制成分となるシリカも同時に除去されてしまうことが判明した。したがって、逆浸透膜を用いてろ過処理した水道水を前記ボイラ1の給水として用いた場合、前記各伝熱管12の腐食は、腐食を抑制するための薬剤を給水に対して別途添加しない限り、抑制するのは困難なものと考えられる。
【0061】
ここで、前記第一実施例の変形例について説明する。具体的な図示は省略するが、まず第一変形例について説明する。前記第一実施例においては、前記ろ過処理装置6を前記給水タンク8の上流側に配置したが、前記ろ過処理装置6を前記給水タンク8の下流側,すなわち前記給水タンク8と前記ボイラ1との間に配置した場合も同様に実施することができる。ただし、前記復水配管17を介して前記給水タンク8へ高温の復水が供給される場合は、前記ナノろ過膜の耐熱性の観点からの対応が必要となる。
【0062】
そして、前記第一実施例の第二変形例について説明すると、この第二変形例も前記第一変形例と同様、具体的な図示は省略する。前記第一実施例においては、前記ろ過処理装置6は、前記軟水装置5および前記膜式真空脱気装置7とそれぞれ別体なものとして配置しているが、前記ろ過処理装置6は、たとえば前記膜式真空脱気装置7と一体な装置として構成されていてもよい。
【0063】
以上のように、この第一実施例によれば、腐食促進成分を捕捉して除去可能であり,かつ腐食抑制成分を透過可能なナノろ過膜を用いて、前記ボイラ1へ供給する給水を予めろ過処理しているので、前記各伝熱管12に生じる腐食を薬剤を用いずに効果的に抑制することができる。また、前記イオン交換樹脂および前記ナノろ過膜の酸化による劣化の原因となる残留塩素を予め除去処理しているので、前記イオン交換樹脂の交換能力および前記ナノろ過膜のろ過能力の早期劣化を防止し、したがって被処理水,すなわちボイラ用給水の処理効率の向上,安定化等を図ることができる。
【0064】
つぎに、図4に基づいて、この発明の第二実施例について詳細に説明する。図4は、この発明の第二実施例の概略説明図であり、工業用水あるいは地下水を給水として用いる場合の説明図である。工業用水あるいは地下水は、その水質はもちろんのこと、その採水形態および供給形態が多種多様であり、一般に鉄分,マンガン等の非溶解物を多く含むとともに、ごみ等の非溶解物も多く含まれている場合があり、これらの非溶解物が下流側に配置された前記ろ過処理装置6のナノろ過膜(図示省略)および前記膜式真空脱気装置7の中空糸膜(図示省略)のろ過性能の劣化に大きく影響する。
【0065】
そこで、この第二実施例にあっては、前記第一実施例における前記被処理水タンク3の上流側には、工業用水あるいは地下水等の被処理水の水源(図示省略)と前記被処理水タンク3との間に前処理ライン19を備えている。そして、この前処理ライン19には、この前処理ライン19を通過する被処理水へ次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加する薬注装置20と、被処理水に含まれているごみ等の非溶解物を除去する砂ろ過装置21と、被処理水に含まれている鉄分,マンガン等の非溶解物を除去する除鉄・除マンガン装置22とが、上流側,すなわち前記水源側から順番に配置されている。ここにおいて、前記砂ろ過装置21と前記除鉄・除マンガン装置22とは、被処理水中の非溶解物を除去する塔式ろ過装置23を構成している。そして、前記砂ろ過装置21と前記除鉄・除マンガン装置22との間には、前記除鉄・除マンガン装置22における酸化物をフロック化するための凝集剤(たとえば、ポリ塩化アルミニウム)を添加する凝集剤添加装置24が設けられている。すなわち、この第二実施例は、工業用水あるいは地下水のそれぞれの水質に応じて、前記第一実施例における前記給水ライン2で被処理水を処理するに際し、被処理水を効率的に処理することができるような水質に改質する処理を行う構成である。
【0066】
この第二実施例において、前記薬注装置20は、一般的に公知の薬注ポンプ(図示省略)により構成されている。また、前記砂ろ過装置21は、硅石等の粗粒ろ材と、アンスラサイト,ろ過砂等の細粒ろ材とから形成されたろ材層(図示省略)によるろ過を行う塔式のものであり、一般的に公知の装置である。そして、前記除鉄・除マンガン装置22は、硅石等の粗粒ろ材と、アンスラサイト,マンガンゼオライト等の細粒ろ材とから形成されたろ材層(図示省略)によるろ過を行う塔式のものであり、一般的に公知の装置である。さらに、前記凝集剤添加装置24は、前記薬注装置20と同様、一般的に公知の薬注ポンプ(図示省略)により構成されている。
【0067】
さて、前記構成において、前記水源から供給された工業用水あるいは地下水等の被処理水は、前記薬注装置20により次亜塩素酸ソーダが添加された状態で前記砂ろ過装置21へ流入する。流入した被処理水は、前記薬注装置20内において、前記ろ材層でろ過され、ごみ等の非溶解物が除去される。このろ過過程において、被処理水には次亜塩素酸ソーダが溶存しているため、前記砂ろ過装置21内の微生物等の細菌を殺菌し、細菌が前記砂ろ過装置21内で繁殖あるいは増殖するのを防止する。そして、ここで非溶解物が除去された被処理水は、前記除鉄・除マンガン装置22へ向かって流出する。
【0068】
そして、前記砂ろ過装置21を通過した被処理水は、つぎに前記除鉄・除マンガン装置22へ流入するが、その手前で前記凝集剤添加装置24からポリ塩化アルミニウムの水溶液が添加される。すなわち、被処理水は、次亜塩素酸ソーダおよびポリ塩化アルミニウムが溶存した状態で前記除鉄・除マンガン装置22へ流入する。流入した被処理水は、前記除鉄・除マンガン装置22内において、前記ろ材層でろ過され、鉄分,マンガン等の非溶解物が除去される。このろ過過程において、まず次亜塩素酸ソーダは、つぎのような機能を果たす。第一に、前記砂ろ過装置21と同様、前記除鉄・除マンガン装置22内の微生物等の細菌を殺菌し、細菌が前記除鉄・除マンガン装置22内で繁殖あるいは増殖するのを防止する。第二に、鉄分およびマンガンを効果的に除去する機能を有している。すなわち、被処理水中の鉄分は、次亜塩素酸ソーダによって酸化され、不溶性の水酸化第二鉄(Fe(OH)3)になり、この水酸化第二鉄が前記ろ材層でろ過され、除去される。また、マンガンは、前記ろ材層との接触時に起こる接触酸化によって酸化され、除去される。つぎに、ポリ塩化アルミニウムは、鉄分およびマンガンの酸化物をフッロク化し、ろ過性能の向上に寄与する。
【0069】
さらに、前記除鉄・除マンガン装置22を通過した被処理水は、前記非溶解物が除去された状態で、前記被処理水タンク3内に貯留される。
【0070】
ここで、前記第二実施例の変形例について説明する。具体的な図示は省略するが、まず第一変形例について説明する。前記第二実施例において、前記塔式ろ過装置23は、前記砂ろ過装置21と前記除鉄・除マンガン装置22とを直列状態で接続する構成としているが、これに限定されるものではなく、工業用水あるいは地下水の水質に応じて、いずれか一方の装置をもって構成することができる。たとえば、工業用水の場合は、比較的水質が安定していることが多いので、前記砂ろ過装置21のみで構成することができる。また、地下水の場合は、比較的鉄分,マンガン等が多く含まれているので、前記除鉄・除マンガン装置22をもって構成することができる。
【0071】
そして、前記第二実施例の第二変形例について説明すると、この第二変形例も前記第一変形例と同様、具体的な図示は省略する。前記第二実施例においては、前記前処理ライン19を一つのものとしているが、たとえば工業用水と地下水とを併用し、両者を切り替えて供給する場合、工業用水用の前処理ライン(工業用水ライン)と地下水用の前処理ライン(地下水ライン)との二つのラインを前記被処理水タンク3とそれぞれ接続し、前記工業用水ラインに前記砂ろ過装置21を設け、また前記地下水ラインに前記除鉄・除マンガン装置22を設ける構成とすることができる。すなわち、前記塔式ろ過装置23を並列状態で接続する構成である。
【0072】
以上のように、この第二実施例によれば、前記給水ライン2で被処理水を効率的に処理することができるように、水質を改質することができる。
【0073】
さらに、この発明の第三実施例について説明する。一般的に、前記第二実施例に示すように、前記塔式ろ過装置23を構成する前記砂ろ過装置21および前記除鉄・除マンガン装置22を通過した被処理水は、前記給水ライン2における前記ろ過処理装置6のナノろ過膜(図示省略)および前記膜式真空脱気装置7の中空糸膜(図示省略)のろ過能力に影響する濁質成分はほぼ除去されているが、被処理水の水質によっては、前記塔式ろ過装置23では除去しきれない濁質成分が含まれている場合があり、前記ナノろ過膜および前記中空糸膜のろ過能力の早期劣化の原因となることがある。また、前記薬注装置20により添加した次亜塩素酸ソーダでも死滅し難い原虫(たとえば、クリプトスポリジウム)も存在し、これが前記ナノろ過膜および前記中空糸膜のろ過能力の早期劣化の原因となることがある。
【0074】
そこで、この第三実施例にあっては、図4に示すように、前記除鉄・除マンガン装置22と前記被処理水タンク3との間に、前記除鉄・除マンガン装置22を通過した細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する膜式ろ過装置25を備えた構成である。
【0075】
この第三実施例において、前記膜式ろ過装置25は、被処理水に含まれている細菌類や鉄分等の濁質成分を機械的に除去するためのものである。この膜式ろ過装置25は、中空糸膜(図示省略)を用いており、この中空糸膜の内外に圧力差を設け、この中空糸膜の外側から内側へ被処理水を通過させ、前記濁質成分を前記中空糸膜の外側で捕捉している。そして、この捕捉された前記濁質成分は、洗浄により除去し、排出する構成となっている。
【0076】
この構成により、前記膜式ろ過装置25を通過した被処理水は、前記濁質成分が除去された状態で、前記被処理水タンク3内に貯留される。
【0077】
ここで、前記第三実施例の変形例について説明する。具体的な図示は省略するが、前記第一実施例において、前記被処理水タンク3の手前に、前記膜式ろ過装置25を設けることも好適である。このような構成とすれば、被処理水の前記濁質成分を効果的に除去することができる。たとえば、被処理水が水道水の場合であっても、効果的である。
【0078】
以上のように、この第三実施例によれば、前記第二実施例による水質の改質に加えて、さらに効果的な改質を行うことができる。
【0079】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、水分の影響によるボイラの伝熱管に生じる腐食を薬剤を用いずに抑制することができる。また、ボイラ用給水の処理効率を向上させることができるとともに、その処理の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第一実施例の概略説明図である。
【図2】第一実施例におけるボイラの缶体構造の概略説明図である。
【図3】図2における一点鎖線III部分の拡大説明図である。
【図4】この発明の第二実施例および第三実施例の要部の概略説明図である。
【符号の説明】
1 ボイラ
2 給水ライン
3 被処理水タンク
4 活性炭ろ過装置
5 軟水装置
6 ろ過処理装置
7 膜式真空脱気装置
8 給水タンク
12 伝熱管
19 前処理ライン
20 薬注装置
21 砂ろ過装置
22 除鉄・除マンガン装置
23 塔式ろ過装置
25 膜式ろ過装置
Claims (12)
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理方法であって、前記給水に溶存している酸化剤を除去する酸化剤除去工程と、前記給水に含まれている硬度成分を除去する硬度成分除去工程と、前記ボイラ1の腐食促進成分を捕捉し,かつ前記ボイラ1の腐食抑制成分を透過するように、前記給水をろ過処理するろ過処理工程と、前記給水に溶存している気体を除去する溶存気体除去工程とからなることを特徴とするボイラ用給水の処理方法。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理方法であって、前記給水に溶存している酸化剤を除去する工程を実行し、つぎに前記給水に含まれている硬度成分を除去する工程を実行し、つぎに前記ボイラ1の腐食促進成分を捕捉し,かつ前記ボイラ1の腐食抑制成分を透過するように、前記給水をろ過処理する工程を実行し、さらに前記給水に溶存している気体を除去する工程を実行することを特徴とするボイラ用給水の処理方法。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理方法であって、前記酸化剤を除去する工程を実行する前に、前記給水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する工程を実行することを特徴とする請求項2に記載のボイラ用給水の処理方法。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理方法であって、前記非溶解物をろ過する工程を実行する前に、酸化剤を添加する工程を実行することを特徴とする請求項3に記載のボイラ用給水の処理方法。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理方法であって、前記非溶解物をろ過する工程を実行した後に、細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する第二ろ過工程を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のボイラ用給水の処理方法。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記給水に溶存している酸化剤を吸着除去する酸化剤除去装置と、前記給水に含まれている硬度成分をイオン交換により除去する硬度成分除去装置と、前記ボイラ1の腐食促進成分を捕捉可能であり,かつ前記ボイラ1の腐食抑制成分を透過可能なろ過膜により、前記給水をろ過処理するろ過処理装置と、前記給水に溶存している気体を真空脱気する溶存気体除去装置とからなることを特徴とするボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置,前記硬度成分除去装置,前記ろ過処理装置および前記溶存気体除去装置を上流側からこの順番に配置したことを特徴とする請求項6に記載のボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置が活性炭ろ過装置4であり、前記硬度成分除去装置がイオン交換樹脂を用いた軟水装置5であり、前記ろ過処理装置がナノろ過膜を用いたろ過処理装置6であり、前記溶存気体除去装置が膜式真空脱気装置7であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記酸化剤除去装置の前段に、前記給水に含まれている鉄分,マンガン,ごみ等の非溶解物をろ過する塔式ろ過装置23を配置したことを特徴とする請求項7に記載のボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記塔式ろ過装置23が除鉄・除マンガン装置22および/または砂ろ過装置21であることを特徴とする請求項9に記載のボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、前記塔式ろ過装置23の前段に、前記給水へ次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を添加する薬注装置20を配置したことを特徴とする請求項9または請求項10に記載のボイラ用給水の処理装置。
- 給水を加熱して蒸気を生成するボイラ1への給水の処理装置であって、 前記塔式ろ過装置23の後段に、前記給水に含まれている細菌類や鉄分等の微細な濁質成分をろ過する膜式ろ過装置25を配置したことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のボイラ用給水の処理装置。
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