JP4238466B2 - カラー印刷方法およびカラー印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷用紙にカラー印刷を行うカラー印刷方法およびカラー印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、一般的なカラー印刷装置の動作を示している。
このカラー印刷装置は、サーマルヘッド201と、このサーマルヘッド201との間でインクリボン205と印刷用紙200とを挟むプラテンローラ202と、サーマルヘッド201の下流側に位置して印刷用紙200を搬送する排紙ローラ203およびピンチローラ204とによって大略構成されている。また、インクリボン205のベースフィルム上にはY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)の四色の染料層が塗布されている。
【0003】
カラー印刷装置では、まず、印刷用紙200に対してY色の印刷を行う印刷工程が実行され、その後、Y色の次の色であるM色の印刷の準備を行うM色印刷準備工程が実行され、という具合に、各色に対応した印刷工程と次色印刷準備工程とが交互に実行され、印刷用紙200に対するカラー印刷が行われる。図9ではこれらの各工程のうち(a)Y色印刷工程、(b)M色印刷準備工程、(c)M色印刷工程、(d)C色印刷準備工程が示されており、それ以後の工程については図示が省略されている。以下、各工程におけるカラー印刷装置の動作を説明する。
【0004】
(a)Y(イエロー)色印刷工程
Y色印刷工程では、印刷用紙200とインクリボン205のY色の染料層とが、サーマルヘッド203とプラテンローラ202との間に圧接され、排紙ローラ203によって印刷用紙200が搬送方向Aに搬送されると共に、この印刷用紙200の搬送速度に対応させた速度でインクリボン205のY色の染料層が搬送される。この際、サーマルヘッド201の発熱体を加熱することによって、インクリボン205のY色の染料がリボンから剥離して印刷用紙200に熱転写される。
(b)M(マゼンタ)色印刷準備工程
M色印刷準備工程では、Y色の印刷が終了すると、排紙ローラ203の回転を停止させると共に、サーマルヘッド201の発熱体への加熱を停止する。その後、次色(M色)印刷の準備のため、印刷用紙200が排紙ローラ203によって逆方向Bに搬送され、インクリボン205が順方向に搬送されてM色の染料層が準備される。
(c)M色印刷工程
M色印刷工程では、印刷用紙200とインクリボン205のM色の染料層とが、サーマルヘッド203とプラテンローラ202との間に圧接され、排紙ローラ203によって印刷用紙200が搬送方向Aに搬送されると共に、この印刷用紙200の搬送速度に対応させた速度でインクリボン205のM色の染料層が搬送される。この際、サーマルヘッド201の発熱体を加熱することによって、インクリボン205のM色の染料がリボンから剥離されて印刷用紙200に熱転写される。
(d)C(シアン)色印刷準備工程
C色印刷準備工程では、M色の印刷が終了すると、排紙ローラ203の回転を停止させると共に、サーマルヘッド201の発熱体への加熱を停止する。その後、次色(C色)印刷の準備のため、印刷用紙200が排紙ローラ203によって逆方向Bに搬送され、インクリボン205が順方向に搬送されてC色の染料層が準備される。これ以降、カラー印刷装置では、同様にインクリボン205に添付されたC色染料、K色染料を印刷用紙200に順次熱転写する。以後、同様の工程が残りの色について実行され、印刷用紙200に対してカラー印刷が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のカラー印刷装置において、印刷用紙200は、順方向に搬送されて1色分の印刷が行われた後、次色印刷準備のために逆方向に搬送されるが、この搬送方向の切り換えの際に、排紙ローラ203とピンチローラ204とによって挟まれた状態で一時停止する。そして、従来のカラー印刷装置では、例えば図9(b)および(d)を見比べると明らかなように、いずれの色の印刷が行われる場合でも、この搬送方向の切り換えに伴って印刷用紙200の搬送が一時停止するときに、常に印刷用紙200の同じ位置が排紙ローラ203とピンチローラ204とによって挟まれていた。このため、印刷用紙200のこの挟まれた位置に印刷用紙200の幅方向に延びる凹みが生じていた。
【0006】
この凹みについて、図10を参照しつつ説明する。図10(a)はY色印刷後の印刷用紙200の要部断面、図10(b)はM色印刷後の印刷用紙200の要部断面、図10(c)はC色印刷後の印刷用紙200の要部断面、図10(d)はK色印刷後の印刷用紙200の要部断面をそれぞれ示したものである。また、印刷用紙200には、熱転写された染料がイエロー200Y、マゼンダ200M、シアン200C、ブラック200Kとして積層される。
前述した如く、各色の印刷終了したときに、排紙ローラ203およびピンチローラ204によって印刷用紙200の同じ位置が常に挟まれるため、印刷用紙200にこの凹みが残ってしまう。さらに、この凹みにも200Y、200M、200C、200Kが順次積層されるため、この凹み部分が印刷不良となる虞れがある。
【0007】
これを防止するために、各色の印刷が終了したとき、各色の印刷の施されていない部分を、排紙ローラ203およびピンチローラ204によって挟むようにすることも考えられる。しかし、この場合、印刷用紙200の順方向Aへの送り量が長くなり、印刷用紙200を往復させる距離が長くなってしまい、搬送時間が長くなる。このため、1枚の印刷用紙200の印刷に費やされる時間が長くなってしまう。
【0008】
また、特開平8−85646号公報等のように、排紙ローラの摩擦力を高めるために、その表面に弾性を有するマイクロ突起を複数個形成したものがある。この場合、マイクロ突起を印刷用紙に対して強く押し付けさせるために、排紙ローラとピンチローラとの間での圧接力を比較的高くしている。このため、マイクロ突起を有する排紙ローラを用いたカラー印刷装置では、印刷用紙に凹みがさらに形成され易くなってしまう。
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであって、印刷用紙に発生する凹みを低減し、これにより発生する印刷不良を低減させて高品位なカラー印刷を実現することのできるカラー印刷方法およびカラー印刷装置を提供することを目的とする。
【0010】
上述した課題を解決するため、請求項1記載の発明は、サーマルヘッドの下流側に排紙ローラおよびピンチローラを具備し、印刷用紙を順方向または逆方向に搬送するシート搬送手段を備え、複数の色を前記印刷用紙に順次重ねて印刷することによってカラー印刷を行うカラー印刷装置のカラー印刷方法であって、前記シート搬送手段が、前記サーマルヘッド位置上に前記印刷用紙の印刷開始位置を位置合わせする印刷準備工程と、前記シート搬送手段が、前記印刷用紙を前記印刷用紙を順方向へ搬送する間に、前記サーマルヘッドによって前記印刷用紙に染料を熱転写する印刷工程と、前記シート搬送手段が、前記印刷用紙を逆方向に搬送して次色染料の準備をする次色準備工程と、を備え、前記印刷工程において印刷用紙の順方向への送り量を色毎に異ならせることにより、印刷工程から印刷準備工程に移る際に、順方向から逆方向に移る前記印刷用紙における折返位置を色毎にずらすことを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のカラー印刷方法において、前記印刷用紙の順方向への送り量の色毎の差は、前記排紙ローラに対して前記ピンチローラを押し付けるときに形成されるニップ幅よりも大きくしたことを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、サーマルヘッドの下流側に排紙ローラおよびピンチローラを具備し、印刷用紙を順方向または逆方向に搬送するシート搬送手段を備え、複数の色を印刷用紙に順次重ねて印刷することによってカラー印刷を行うカラー印刷装置であって、前記シート搬送手段は、印刷準備時には、前記サーマルヘッド位置上に前記印刷用紙の印刷開始位置を位置合わせし、前記サーマルヘッドによって前記印刷用紙に染料を熱転写する印刷時には、前記印刷用紙を前記印刷用紙を順方向へ搬送させ、次色染料の準備をする次色準備時には、前記印刷用紙を逆方向へ搬送させ、前記印刷用紙の順方向への送り量を色毎に異ならせることにより、前記印刷時から前記次色準備時に移る際に、順方向から逆方向に移る前記印刷用紙における折返位置を色毎にずらすことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のカラー印刷装置において、前記印刷用紙の順方向への送り量の色毎の差は、前記排紙ローラに対して前記ピンチローラを押し付けるときに形成されるニップ幅よりも大きくしたことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本実施形態においては、本発明による一実施形態を示したものであり、本発明の趣旨に逸脱しない範囲内で任意に変更可能である。
【0015】
〈1〉プリンタの構成
図1は、プリンタ100の印刷機構の大略構成を示した図である。
このプリンタ100は、用紙カセット101と、紙送り機構110と、リボン送り機構120と、サーマルヘッド130とによって大略構成されている。
【0016】
用紙カセット101は、定型(例えば、A4、A5等)の印刷用紙となる印刷用紙102を多数枚収納するものである。この印刷用紙102は、図示しないシートフィーダにより一枚ずつ取り出されて紙送り機構110によって搬送される。
【0017】
紙送り機構110は、サーマルヘッド130を境に、給紙側と排出側とに分かれ、給紙側に配置された給紙ローラ111およびピンチローラ112と、サーマルヘッド130と対向する位置に配置されたプラテンローラ113と、排出側に配置された排紙ローラ114およびピンチローラ115とによって構成されている。この紙送り機構110は、給紙ローラ111とピンチローラ112との間、サーマルヘッド130とプラテンローラ113との間、排紙ローラ114とピンチローラ115との間を介して印刷用紙102を順次搬送する。
ここで、サーマルヘッド130とプラテンローラ113とが接触する位置がサーマルヘッド位置aとなり、このサーマルヘッド位置aにサーマルヘッド130の発熱体が列設されることになる。また、排紙ローラ114とピンチローラ115とが接触する位置が排紙ローラ位置bとなり、この排紙ローラ位置bとサーマルヘッド位置aとの間は寸法dだけ離間している。
【0018】
また、給紙ローラ111、プラテンローラ113および排紙ローラ114は、例えばステッピングモータ等の紙送りモータ80(図3参照)によって回転駆動される。
この紙送りモータ80を正転させることにより、給紙ローラ111、プラテンローラ113および排紙ローラ114は、時計方向に回転し、印刷用紙102を順方向Fに搬送する。一方、紙送りモータ80を逆転させることにより、給紙ローラ111、プラテンローラ113および排紙ローラ114は、反時計方向に回転し、印刷用紙102を逆方向Rに搬送する。
また、紙送りモータ80は、供給される紙送り信号の通電時間を調整することにより、各ローラの回転を調整して印刷用紙102の送り量を調整するものである。
【0019】
さらに、ピンチローラ112,115は、対向するローラ111,114の間に介挿される印刷用紙102を確実に挟み込むために、芯金にゴムを被覆させた構成となっている。このため、図4に示すように、例えば印刷用紙102を挟んで排紙ローラ114にピンチローラ115を押し付けるとき、ピンチローラ115の表面が潰れる。このときの排紙ローラ114とピンチローラ115との接触幅がニップ幅N(例えば、1.5mm)となる。
【0020】
リボン送り機構120は、インクリボン121を順方向fに搬送させるものであり、インクリボン121の両端が巻回された供給側ロール122および巻取側ロール123と、インクリボン121をガイドしてサーマルヘッド130に掛けるガイドローラ124,125とによって構成されている。
この巻取側ロール123は、例えばDCモータ等のリボン送りモータ60(図3参照)によって回転駆動される。このリボン送りモータ60を駆動することにより、巻取ロール123は時計方向に回転してインクリボン121を巻取り、インクリボン121が順方向fに搬送される。
また、インクリボン121は、図2に示すように、薄いベースフィルム121aと、このベースフィルム121aの長手方向に、Y(イエロー)の染料、M(マゼンタ)の染料、C(シアン)の染料およびK(ブラック)の染料の順に繰り返して染料が塗布された染料層121Y、121M、121Cおよび121Kとからなる。これらの染料は、昇華型または熱溶融型インクからなる。
【0021】
サーマルヘッド130は、基板に複数個の発熱体(いずれも図示せず)が列設されたものであり、サーマルヘッド昇降機構40(図3に図示)によって矢印U方向またはD方向に昇降される。これにより、サーマルヘッド130をプラテンローラ113に対して離間または圧接させる。
また、サーマルヘッド130の近傍には剥離プレート131が設けられ、この剥離プレート131は、印刷用紙102に染料を熱転写するとき、インクリボン121を印刷用紙102に押し付けるものである。
【0022】
次に、プリンタ100の制御系を図3を参照しつつ説明する。なお、図3には、プリンタ100に対して画像信号を出力するパーソナルコンピュータ1000(以下、パソコン1000という)が併せて図示されている。
【0023】
プリンタ100の制御系は、コントローラ10と、サーマルヘッド駆動回路20と、サーマルヘッド130と、ヘッド昇降駆動回路30、サーマルヘッド昇降機構40、リボン送り駆動回路50、リボン送りモータ60、紙送り駆動回路70と、紙送りモータ80と、複数の紙検出センサ132と、リボン検出センサ133とによって大略構成されている。
【0024】
また、複数の紙検出センサ132およびリボン位置検出センサ133は、サーマルヘッド130の近傍に配設される。これらの紙検出センサ132は、印刷用紙102の位置を検出するものであり、リボン位置検出センサ133は、染料層121Y、121M、121C、121Kの順方向fの端部を検出するものである。そして、センサ132、133は、被検出対象を検出した場合、検出信号を入力制御部14を介してコントローラ10に向けて出力するものである。
【0025】
コントローラ10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、入力制御部14および出力制御部15等からなる。
【0026】
CPU11は、入力制御部14を介してパソコン1000から供給される印刷信号を受け取り、印刷のための各種制御信号を生成し、これらの制御信号を出力制御部15を介してサーマルヘッド駆動回路20、ヘッド昇降駆動回路30、リボン送り駆動回路50および紙送り駆動回路70に供給するものである。
RAM12は、CPU11のワークエリアとして用いられる。ROM13は、印刷を行うための各種制御プログラムを格納するプログラムメモリである。
各種制御プログラムとしては、パソコン1000からの画像信号を受け、サーマルヘッド駆動回路20からサーマルヘッド130に供給される印刷信号を制御する印刷制御プログラム、ヘッド昇降駆動回路30からサーマルヘッド昇降機構40に供給される昇降信号を制御するヘッド昇降制御プログラム、リボン送り駆動回路50からリボン送りモータ60に供給されるリボン送り信号を制御するリボン送り制御プログラム、紙送り駆動回路70から紙送りモータ80に供給される紙送り信号を制御する紙送り制御プログラム等がある。
【0027】
特に、紙送り制御プログラムは、後述する印刷工程で順方向Fに印刷用紙102を搬送し、過送り工程で各色毎にその過送り量を異ならせるようにし、さらに次色印刷準備工程で印刷用紙102を逆方向Rに搬送するような制御を行うものである。その詳細については、後に述べるものとする。
【0028】
ここで、過送りとは、一の染料の熱転写(印刷)終了後にインクリボン121に添付された染料を印刷用紙102上に確実に転写させるため、さらに印刷用紙102上の染料を確実に定着させるため、サーマルヘッド130の発熱を停止した後に印刷用紙102を順方向Fに若干搬送することである。このとき、印刷終了後に順方向Fに搬送される印刷用紙102の搬送距離を過送り量という。
【0029】
また、本実施形態の過送り工程では、各色毎にその過送り量を異ならせている。このため、ROM13のメモリには、これを実現するための制御プログラムおよびデータテーブルが格納されている。例えば、このデータテーブルは、下記の表1のようになる。そして、CPU10は、紙送り制御プログラムに基づいて、紙送りモータ80に供給される紙送り信号の印加時間を制御することにより、過送り量が調整される。
【0030】
【表1】
【0031】
ここで、各過送り量は、図8の(a)、(b)、(c)、(d)に示すようになる。即ち、図8(a)にはY色の過送り量s1、図8(b)にはM色の過送り量s2、図8(c)にはC色の過送り量s3、図8(d)にはK色の過送り量s4がそれぞれ示されている。
また、これらの隣り合う各過送り量の差は、s2−s1≒s3−s2≒s4−s3=Δsとすると、このΔsをΔs>Nとする。なお、このNは、前述した如く、図4に示すように、排紙ローラ114に対してピンチローラ115を押し付けるときに形成されるニップ幅のことである。
【0032】
再び、図3に戻って各回路の動作について説明する。
まず、サーマルヘッド駆動回路20は、パソコン1000から供給される画像信号に基づいて、CPU11が生成した印刷信号を、サーマルヘッド130の発熱体に適宜供給するものである。このサーマルヘッド130の個々の発熱体は、この印刷信号を受けて、印刷信号に対応した発熱を行う。これにより、インクリボン121の染料層121Y、110M、110C、110Kの各々の染料は、各染料層がサーマルヘッド130の各発熱体に対向したときにこの発熱体の熱量によってそれぞれの溶解量が調整される。この結果、印刷用紙102上には、各色毎の階調印刷が行われることになる。
【0033】
ヘッド昇降駆動回路30は、図1に示すようにサーマルヘッド130を矢印UまたはD方向に昇降させるために、サーマルヘッド昇降機構40に昇降信号を出力するものである。
【0034】
リボン送り駆動回路50は、巻取側ロール114を駆動するリボン送りモータ60に、リボン送り信号を供給するものである。このリボン送りモータ60は、リボン送り信号を受けて駆動され、巻取ロール123を時計方向に回転させる。これにより、インクリボン121は、順方向fに搬送される。
【0035】
紙送り駆動回路70は、紙送り機構110を駆動する紙送りモータ80に、紙送り信号を供給するものである。この紙送りモータ80には正の紙送り信号が印加されたときに紙送りモータ80を正転させ、負の紙送り信号が印加されたときに反転させるモータ駆動回路(図示せず)が付設されている。このように、紙送りモータ80は、正の紙送り信号を受けると、給紙ローラ111、プラテンローラ113および排紙ローラ114を時計方向に回転させ、印刷用紙102を順方向Fに搬送する。一方、例えば負の紙送り信号を受けると、反時計方向に回転させ、印刷用紙102を逆方向Rに搬送する。
【0036】
〈2〉印刷動作
次に、このプリンタ100によるカラー印刷動作について、図5および図6に基づいて説明する。図5は、サーマルヘッド昇降機構40に供給される昇降信号、サーマルヘッド130に供給される印刷信号、リボン送りモータ60に供給されるリボン送り信号、紙送りモータ80に供給される紙送り信号を示すタイムチャートである。図6は、印刷準備、Y色印刷、印刷終了、過送り、M色印刷準備時における印刷用紙102の動きを示す図である。
【0037】
(1)Y色印刷準備工程
まず、コントローラ10は、図5に示すように、紙送り駆動回路70を介して紙送り信号を紙送りモータ80に供給すると共に、リボン送り駆動回路50を介してリボン送り信号をリボン送りモータ60に供給する。サーマルヘッド昇降機構40には昇降信号が供給されていないため、サーマルヘッド130は、図1中の矢印U方向に移動した状態にあり、プラテンローラ113から離間させる。一方、紙送りモータ80に紙送り信号が供給されることにより、シートフィーダによって取り出された印刷用紙102は、給紙ローラ111によってサーマルヘッド位置aまで搬送される。その後、紙検出センサ132からの検出信号に基づいて位置合わせがなされる。このとき、サーマルヘッド位置aに対向した印刷用紙102上の位置が印刷開始位置Sとなる(図6(a)参照)。また、リボン送りモータ60にリボン送り信号が供給されることにより、インクリボン121は、巻取側ロール123によって巻取られて順方向fに搬送される。その後、リボン検出センサ124からの検出信号に基づいてインクリボン121の染料層121Y(イエロー)の順方向f側の端部がサーマルヘッド位置aの位置まで搬送される。このように、Y色印刷準備工程では、サーマルヘッド位置a上にインクリボン121の染料層121Yの端部と、印刷用紙102の印刷開始位置Sとが位置合わせされる。なお、この工程は、各色の印刷終了後に行われる後述の排紙工程時に行うようにしてもよい。
【0038】
▲2▼Y色印刷工程
次に、コントローラ10は、図5に示すように、ヘッド昇降駆動回路30を介してサーマルヘッド昇降機構40に昇降信号を供給し、サーマルヘッド駆動回路20を介して印刷信号をサーマルヘッド130に供給する。さらに、紙送り駆動回路70を介して紙送り信号を紙送りモータ80に供給すると共に、リボン送り駆動回路50を介してリボン送り信号をリボン送りモータ60に供給する。
サーマルヘッド昇降機構40に昇降信号が供給されることにより、サーマルヘッド130は、図1中の矢印D方向に移動し、プラテンローラ113との間で印刷用紙102とインクリボン121とを圧接する。
紙送りモータ80は、紙送り信号を受けて、プラテンローラ113および排紙ローラ114を時計方向に回転させる。プラテンローラ113および排紙ローラ114は、印刷用紙102を順方向Fに搬送する。
また、リボン送りモータ60は、リボン送り信号を受けて、巻取ロール123を時計方向に回転させる。巻取ロール123は、インクリボン121を巻取ることにより、インクリボン121を順方向fに搬送する。このインクリボン121の搬送速度は、印刷用紙102の搬送速度に同期されている。
さらに、サーマルヘッド130の発熱体には、サーマルヘッド駆動回路20を介して印刷信号が供給されているから、発熱体が適宜加熱される。染料層121Yの染料は、この発熱体の熱を受け、印刷用紙102に熱転写される(図6(b)参照)。
このように、Y色印刷工程では、印刷用紙102にY(イエロー)が印刷される。
【0039】
その後、コントローラ10は、染料層121Yの端部がサーマルヘッド位置aに来ると印刷を終了するために、サーマルヘッド駆動回路20からサーマルヘッド130に供給される印刷信号を停止する。また、リボン送り機構40に供給されるリボン送り信号を停止してインクリボン121の搬送を停止する。
印刷終了時には、図6の(c)に示すように、印刷用紙102上のサーマルヘッド位置aが印刷終了位置Eとなる。このように、印刷用紙102の印刷開始位置Sから印刷終了位置Eまでの範囲が印刷エリア142となる。
【0040】
▲3▼過送り工程
さらに、コントローラ10は、図5に示すように、昇降信号および紙送り信号の供給を続行する。
ここで、CPU11は、ROM13に格納されたデータテーブルからY(イエロー)に対応した通電時間t1を読出し、この通電時間t1だけを紙送り信号を紙送りモータ80に供給する。ここで、紙送りモータ80は、この紙送り信号を受けて、この通電時間t1に対応した量(過送り量s1)だけ印刷用紙102を順方向Fに搬送する。この過送りにより、染料層121Yの染料を印刷用紙102上に確実に転写させる。
この際、印刷用紙102では、図6の(d)に示すように、サーマルヘッド位置aに対向した位置をヘッド折返位置A1とし、排紙ローラ位置bに対向した位置をローラ折返位置B1とする。
【0041】
(4)M色印刷準備工程
次に、コントローラ10は、次色(M色)の印刷を準備するために、図5に示すように、昇降信号を停止し、リボン送り信号および負の紙送り信号を供給する。サーマルヘッド昇降機構40は、昇降信号の供給が停止されることにより、図1中のU方向にサーマルヘッド130を移動させ、このサーマルヘッド130をプラテンローラ113から離間させる。紙送りモータ80は、負の紙送り信号を受けて、排紙ローラ114およびプラテンローラ113を反時計方向に回転させる。排紙ローラ114およびプラテンローラ113は、印刷用紙102の印刷開始位置Sがサーマルヘッド位置aに達するまで印刷用紙102を逆方向Rに搬送する。また、リボン送りモータ60は、リボン送り信号を受けて、巻取ローラ123を時計方向に回転させる。巻取ローラ123は、インクリボン121の染料層121M(マゼンタ)の順方向f側の端部がサーマルヘッド位置aに一致するまでインクリボン121を順方向fに搬送する。このように、M色印刷準備工程では、サーマルヘッド位置a上にインクリボン121の染料層121Mの端部と、印刷用紙102(Y色印刷済み)の印刷開始位置Sとが位置合わせされることになる。この後、M色印刷、過送り、C色印刷準備、C色印刷、過送り、K色印刷準備、K色印刷、過送りの各工程を経て、印刷用紙102の印刷エリア142上には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で印刷が施される。
【0042】
▲5▼排紙工程
最後に、コントローラ10は、印刷用紙102を排紙するために、図5に示すように、昇降信号およびリボン送り信号を停止し、正の紙送り信号を供給する。
サーマルヘッド昇降機構40は、このサーマルヘッド130をプラテンローラ113から離間させる。
紙送りモータ80は、紙送り信号を受けて、印刷用紙102を外部に搬送する。
これにより、印刷用紙102には、文字パターンや画像パターン等のカラー印刷が施されたことになる。
【0043】
〈3〉印刷用紙の過送り動作
次に、本実施形態による印刷用紙102の過送り動作について、図7および図8を参照しつつさらに詳述する。
図7は、サーマルヘッド位置a近傍における印刷用紙102の動きを印刷動作に対応付けて示した図である。さらに、図8は、各色毎に印刷が終了した後に印刷用紙102上のヘッド折返位置およびローラ折返位置を示す図である。
【0044】
ここで、ヘッド折返位置は、印刷用紙102に各色毎の印刷を終了した後に次色の印刷に備えて印刷用紙102を停止したとき、サーマルヘッド位置aに対向する印刷用紙102上の位置のことである。また、ローラ折返位置は、同様に印刷用紙102を停止させたとき、排紙ローラ位置bに対向する印刷用紙102上の位置のことである。従って、この折返位置とローラ折返位置との間隔は、サーマルヘッド位置aと排紙ローラ位置bとの離間寸法dに等しいことになる。
【0045】
ここで、本実施形態によるプリンタ100では、図7に示すように、各色の印刷毎に、紙送り機構110によってサーマルヘッド位置a上を印刷用紙102が往復する。しかも、各色の印刷終了後に行われる過送り工程において、前述した如く、コントローラ10は、紙送り信号の印加時間を調整することにより、各色毎の過送り量を変えている。
具体的には、CPU10が、ROM13に格納された紙送り制御プログラムおよびデータテーブル(表1参照)に基づき、紙送りモータ80に供給する紙送り信号の印加時間を制御することにより行っている。
【0046】
即ち、Y色の印刷が終了した後の過送り工程おいて、印刷用紙102は、印加時間t1に対応した過送り量s1だけ順方向Fに搬送される。このとき、サーマルヘッド位置aに対向した印刷用紙102の位置をヘッド折返位置A1とし、排紙ローラ位置bに対向した印刷用紙102の位置をローラ折返位置B1とする(図8(a))。
【0047】
次に、M色の印刷が終了した後の過送り工程おいては、印刷用紙102は、印加時間t2(t2>t1)に対応した過送り量s2(s2>s1)だけ順方向Fに搬送される。このとき、サーマルヘッド位置aに対向した印刷用紙102の位置をヘッド折返位置A2とし、排紙ローラ位置bに対向した印刷用紙102の位置をローラ折返位置B2とする(図8(b))。このローラ折返位置B2は、先のY色印刷終了後の過送り工程のローラ折返位置B1よりもΔs(Δs=s2−s1)だけずれた位置となる。
【0048】
また、C色の印刷が終了した後の過送り工程においては、印刷用紙102は、印加時間t3(t3>t2)に対応した過送り量s3(s3>s2)だけ順方向Fに搬送される。このとき、サーマルヘッド位置aに対向した印刷用紙102の位置をヘッド折返位置A3とし、排紙ローラ位置bに対向した印刷用紙102の位置をローラ折返位置B3とする(図8(c))。このローラ折返位置B3は、先のローラ折返位置B1、B2よりもずれた位置となる。
【0049】
さらに、K色の印刷が終了した後の過送り工程においては、印刷用紙102は、印加時間t4(t4>t3)に対応した過送り量s4(s4>s3)だけ順方向Fに搬送される。このとき、サーマルヘッド位置aに対向した印刷用紙102の位置をヘッド折返位置A4とし、排紙ローラ位置bに対向した印刷用紙102の位置をローラ折返位置B4とする(図8(d))。このローラ折返位置B4は、先のローラ折返位置B1、B2、B3よりもずれた位置となる。
【0050】
〈4〉本実施形態の効果
このように、本実施形態によるプリンタ100では、各色の印刷終了後に行う過送りの量を個々に変えることにより、各色の印刷終了後に排紙ローラ114およびピンチローラ115によって挟まれる印刷用紙102のローラ折返位置をB1〜B4にずらすことができる。従って、印刷用紙102上のローラ折返位置B1〜B4を変えることにより、従来発生していた凹みを分散させることができる。しかも、各色毎の過送り量のずれを、排紙ローラ114に対してピンチローラ115を押し付けるときのニップ幅Nよりも大きくしているから、ローラ折返位置B1〜B4がニップ幅Nの範囲で重なることがなくなる。この結果、本実施形態によるプリンタ100では、印刷用紙102上の凹みを分散させることにより、凹みが原因で発生していた印刷不良を低減でき、高品位なカラー印刷を実現することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の次色印刷準備工程では、印刷用紙102を停止させずに、順方向Fから逆方向Rに切換えるようにしたから、従来技術のように、印刷用紙102が排紙ローラ114およびピンチローラ115で挟まれる時間を短縮でき、凹みの発生をより低減することができる。
【0052】
〈5〉変形例
(5−1)変形例1
前記実施形態では、過送り量の調整を、紙送りモータ80に供給する紙送り信号の印加時間を調整することによって行う場合を例示したが、本発明はこれに限らず、サーマルヘッド130の近傍にアレイ状に紙検出センサ132を設け、これらの紙検出センサ132からの検出信号に基づいて過送り量を制御するようにしてもよい。また、紙送りモータ80は、ステッピングモータを使用しているため、パルス数をカウントし、このパルス数を制御することによっても過送り量を調整することも可能である。
【0053】
(5−2)変形例2
前記実施形態では、次色印刷準備工程でインクリボン121の次色印刷準備を行うようにしたが、本発明はこれに限らず、インクリボン121の次色印刷準備を過送り工程で行うようにしてもよい。この場合、過送り工程に入る前に、サーマルヘッド昇降機構40によってサーマルヘッド130をプラテンローラ113から離間させておけばよい。
【0054】
(5−3)変形例3
前記実施形態では、印刷装置をパソコン1000に接続されるプリンタ100とした場合を例示したが、本発明はこれに限らず、ファックス等の他の印刷装置に適用してもよい。
【0055】
(5−4)変形例4
前記実施形態では、プリンタ100を、印刷用紙102にインクリボン121の染料を熱転写するものとして述べたが、印刷用紙102に代えて、例えばシアン感熱発色層、マゼンダ感熱発色層、イエロー感熱発色層をベースフィルムに順次積層したカラー感熱記憶紙を用いてもよい。この場合にはインクリボンを省略することができる。
【0056】
(5−5)変形例5
前記実施形態では、K(ブラック)を印刷した後も過送りを行うようにしたが、過送り工程をなくして用紙排出工程を行うようにしてもよい。
さらに、各色毎の過送り工程を行わないプリンタの場合には、印刷工程で紙送り機構110によって順方向Fに搬送される印刷用紙102の搬送量を各色毎に調整するようにすればよい。
【0057】
【発明の効果】
上述したように、本発明によるカラー印刷装置では、印刷用紙の順方向の送り量を各色毎に異ならせるようにしたから、切換時に搬送ローラとピンチローラとによって挟まれる画像形成シートの位置をずらすことができ、シートの凹みを分散させる。これにより、シートの印刷面上にこの凹みによる印刷不良を低減し、高品位なカラー印刷を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るプリンタの印刷機構の要部を示す構成図である。
【図2】 同実施形態に用いられるインクリボンを示す平面図である。
【図3】 同実施形態に用いられるプリンタの回路構成を示すブロック図である。
【図4】 同実施形態に用いられる排紙ローラおよびピンチローラを示す図である。
【図5】 コントローラから出力される信号を示すタイムチャートである。
【図6】 Y色準備からM色準備までの印刷用紙の動きを示す説明図である。
【図7】 同実施形態によるプリンタの印刷工程に対応した印刷用紙の動きを示す説明図である。
【図8】 各色の印刷終了時における印刷用紙の逆方向側の要部を示す図である。
【図9】 従来技術によるカラー印刷装置の動作を示した説明図である。
【図10】 印刷時に印刷用紙に形成された凹みによる印刷状態を示す図である。
【符号の説明】
10・・・コントローラ
20・・・サーマルヘッド駆動回路
30・・・ヘッド昇降駆動回路
40・・・サーマルヘッド昇降機構
50・・・リボン送り駆動回路
60・・・リボン送りモータ
70・・・紙送り駆動回路
80・・・紙送りモータ
100・・・プリンタ
102・・・印刷用紙
110・・・紙送り機構
114・・・排紙ローラ
115・・・ピンチローラ
120・・・リボン送り機構
121・・・インクリボン
123・・・巻取ロール
130・・・サーマルヘッド
1000・・・パソコン
Claims (4)
- サーマルヘッドの下流側に排紙ローラおよびピンチローラを具備し、印刷用紙を順方向または逆方向に搬送するシート搬送手段を備え、複数の色を前記印刷用紙に順次重ねて印刷することによってカラー印刷を行うカラー印刷装置のカラー印刷方法であって、
前記シート搬送手段が、前記サーマルヘッド位置上に前記印刷用紙の印刷開始位置を位置合わせする印刷準備工程と、
前記シート搬送手段が、前記印刷用紙を前記印刷用紙を順方向へ搬送する間に、前記サーマルヘッドによって前記印刷用紙に染料を熱転写する印刷工程と、
前記シート搬送手段が、前記印刷用紙を逆方向に搬送して次色染料の準備をする次色準備工程と、を備え、
前記印刷工程において印刷用紙の順方向への送り量を色毎に異ならせることにより、印刷工程から印刷準備工程に移る際に、順方向から逆方向に移る前記印刷用紙における折返位置を色毎にずらすことを特徴とするカラー印刷方法。 - 請求項1記載のカラー印刷方法において、
前記印刷用紙の順方向への送り量の色毎の差は、前記排紙ローラに対して前記ピンチローラを押し付けるときに形成されるニップ幅よりも大きくしたことを特徴とするカラー印刷方法。 - サーマルヘッドの下流側に排紙ローラおよびピンチローラを具備し、印刷用紙を順方向または逆方向に搬送するシート搬送手段を備え、複数の色を印刷用紙に順次重ねて印刷することによってカラー印刷を行うカラー印刷装置であって、
前記シート搬送手段は、印刷準備時には、前記サーマルヘッド位置上に前記印刷用紙の印刷開始位置を位置合わせし、前記サーマルヘッドによって前記印刷用紙に染料を熱転写する印刷時には、前記印刷用紙を前記印刷用紙を順方向へ搬送させ、次色染料の準備をする次色準備時には、前記印刷用紙を逆方向へ搬送させ、
前記印刷用紙の順方向への送り量を色毎に異ならせることにより、前記印刷時から前記次色準備時に移る際に、順方向から逆方向に移る前記印刷用紙における折返位置を色毎にずらすことを特徴とするカラー印刷装置。 - 請求項3記載のカラー印刷装置において、
前記印刷用紙の順方向への送り量の色毎の差は、前記排紙ローラに対して前記ピンチローラを押し付けるときに形成されるニップ幅よりも大きくしたことを特徴とするカラー印刷装置。
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