JP4238289B2 - 摺接弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は摺接弁に関し、特に、湯水混合水栓等の各種水栓に好適に用いられる摺接弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
水栓用の摺接弁の中には、閉弁操作が施されると、水栓を止水状態にするものがある。かかる摺接弁は、リフト弁、ねじ込み弁等の他の形式の弁に比べて、急激な開閉が行われ易い構造となっている。従って、閉弁間際にはこの弁を通過する湯水の流量が急激に減少し、開弁直後にはこの流量が急激に増加することがある。そして、この急激な流量変動を原因として、不快な音や振動等を生ずること、即ち、「ウォーターハンマー」と称される現象を生ずることがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この現象の発生を防止するために、例えば、図8に示すように、摺接弁80を構成する可動弁体81の摺接面82に、その弁体80の流路83に連続する凹部84を設け、この摺接弁80の閉弁直前及び開弁直後の暫くの間、固定弁体85の流路86から可動弁体81の流路83へと、この凹部84を通じて湯水を少量ずつ漏れ出させることが有効である。ただし、この方策を用いる場合には、凹部84を高精度に形成し、その流路抵抗を十分にコントロールすることが必要となる。例えば、凹部84の深さ等に製作上の誤差を生じ、流路抵抗にばらつきを生ずれば、この凹部84に沿って過不足の無い量の湯水を漏れ出させることは困難であるからである。
【0004】
しかし、摺接弁80を構成する弁体81、85の素材としては、耐摩耗性を重視し、樹脂等の他の素材に比べて成形の自由度や加工性の劣るセラミックス等が用いられるのが一般的なため、高精度な凹部84を備えた弁体81を作製することは必ずしも容易ではない。
【0005】
また、セラミックス製の弁体では、その製造の最終段階で、摺接面にラッピング等の鏡面加工が施されるのが一般的であるが、その加工量を厳密に制御することは困難である。そして、目的の凹部84の深さ等が元々微少であることと相まって、鏡面加工の加工量の僅かなばらつきのために、この凹部84の深さ等が大きくばらつくことがある。
従って、高精度の凹部84を備えた弁体81を作製するには、多くの手間と、コストが必要となる。
【0006】
また、このように、成形の自由度の低い素材が用いられるのが一般的なため、弁体81の摺接面82に形成可能な凹部84の形状にも限界がある。従って、凹部84の形状に工夫を凝らせば(複雑化等)、「ウォーターハンマー」の発生をより確実に防止できるにも係わらず、実際に形成可能な凹部84は単純形状に止まることも考えられる。
このように、摺接弁の閉弁直前等の暫くの間において、この摺接弁を通過する湯水の流量を絞り込むための部分、即ち、流量絞り部を、摺接弁を構成する弁体に直接設けることには種々の問題点がある。
【0007】
本発明は前記観点に鑑みてなされたものであり、摺接弁を構成する各弁体の少なくとも一方に、各弁体とは別体の緩和部を付加することで、ウォーターハンマーの発生を確実に防止でき、しかも、製造上の手間と、コストの少ない摺接弁を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の摺接弁は、互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通又は遮断を行う摺接弁において、
前記固定弁体及び前記可動弁体とは別個の部材で構成されると共に前記可動弁体の流路の遮断側縁部に配設されて前記各流路の遮断間際の急激な流量減少を緩和する緩和部を備え、
前記緩和部は、前記固定弁体の側を向くと共に前記可動弁体の摺接面よりも前記可動弁体の流路内に段差状に後退した機能面を備え、
前記可動弁体の流路の遮断側縁部近傍の流路深さを、前記機能面と、前記可動弁体の摺接面との間隔に絞り込むことを特徴とする。
請求項3の摺接弁は、互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通又は遮断を行う摺接弁において、
前記固定弁体及び前記可動弁体とは別個の部材で構成されると共に前記固定弁体の流路の遮断側縁部に配設されて前記各流路の遮断間際の急激な流量減少を緩和する緩和部を備え、
前記緩和部は、前記可動弁体の側を向くと共に前記固定弁体の摺接面よりも前記固定弁体の流路内に段差状に後退した機能面を備え、
前記固定弁体の流路の遮断側縁部近傍の流路深さを、前記機能面と、前記固定弁体の摺接面との間隔に絞り込むことを特徴とする。
【0009】
本発明では、弁体(固定弁体又は可動弁体の少なくとも一方)の流路の遮断側縁部に緩和部を配設し、この流路の遮断側縁部近傍の流路深さの絞り込み等を行う。そして、本摺接弁の閉弁直前及び開弁直後の暫くの間は、この絞り込まれた部分、即ち、流量絞り部が他の弁体の流路と連通する。このとき、流量絞り部の流路抵抗が的確であれば、摺接弁を通過する湯水の流量が適量(僅かに漏れ出る程度)に絞り込まれる。これにより、固定弁体及び可動弁体の各流路の遮断間際、即ち、本摺接弁の閉弁間際にこの弁を通過する湯水の流量は、この絞り込まれた流量を基準に緩やかに減少する。同様に、各流路の連通直後、即ち、本摺接弁の開弁直後に、この弁を通過する湯水の流量は、緩やかに増加する。
【0010】
本発明において、流量絞り部の性能(流路抵抗等)を大きく左右するのは緩和部の寸法精度や形状等であるが、この緩和部を弁体とは別個に作製するため、その寸法精度を高めたり、所望の形状を得ることが容易である。特に、緩和部を樹脂等の成形の自由度や加工性の高い素材で構成すれば、緩和部の寸法精度と、形状選択の自由度とがより一層高くなる。そして、簡便に作製できる高性能な緩和部を所望の弁体の流路に入れ込むだけで、的確な流路抵抗を備えた流量絞り部が得られ、摺接弁の閉弁間際及び開弁直後の急激な流量変動が防止される。
このように、本発明によれば、ウォーターハンマーの発生を確実に防止できる摺接弁を少ない手間とコストで得られる。
【0011】
そして、弁開閉時における「不快な音」、「不快な振動」等の発生を防止できると共に、この摺接弁の配備された水栓の配管(水道管等)の的確な保護がなされ、しかもこの摺接弁を操作するためのハンドル、レバー等の操作感の向上(引っ掛かり感を低減させる。)を図ることができる。
また、本摺接弁では、仮に弁体の摺接面の鏡面加工にバラツキを生じても、取り扱いの容易な緩和部の寸法調整等を行えば、十分な精度の流量絞り部が得られる。
【0012】
更に、本摺接弁を構成する弁体では、摺接面ではなく、流路内に流量絞り部を設けるため、各摺接面のシール性能に影響を与えない。即ち、摺接面に対して前述のような凹部84を設けると、摺接面のシール性能が低下することがあるが、本摺接弁ではかかる事態を生ずることはない。
【0013】
また、前述の凹部84を備えた弁体81では、この凹部84が有底であるため、ゴミ等の異物が一旦浸入すると、停滞し、付着し易い。そして、この状態で可動弁体81の回動等を行うと、この異物により固定弁体85の摺接面87等に傷が付く恐れがある。このため、この異物をブラシ等で除去する必要があり面倒である。また、この除去作業を慎重に行わなければ、ブラシ等で可動弁体81の摺接面82に傷を付け、水漏れの原因になることもある。一方、本摺接弁では、弁体より緩和部を取り外して(但し、弁体に対して着脱可能とした場合)、付着した異物を取り除けばよいため、この除去作業が容易である。しかも、異物の多くは緩和部に付着するものと考えられ、緩和部のみに除去作業を施せばよいため、弁体の摺接面に傷を付けることはない。また、弁体の流路の内壁に異物が付着した場合にも、この内壁のみに除去作業を施せばよいため、弁体の摺接面に傷を付けることはない。
【0014】
ここで、この緩和部のより具体的な態様を例示すると、「略小片状、略小塊状、略薄板状、略小柱状等の種々の形状とされ、本摺接弁を構成する一方の弁体(固定弁体又は可動弁体の少なくとも一方)の流路の遮断側縁部に配設されると共に、他方の弁体の側を向いた機能面を一方の弁体の摺接面に近接させ、一方の弁体の流路の遮断側縁部近傍の流路深さを、この機能面と、一方の弁体の摺接面との間隔に絞り込むようにした緩和部」を挙げることができる。この場合、一方の弁体の摺接面よりも流路内に段差状に後退した機能面により、流量絞り部が形成され、摺接弁の閉弁直前及び開弁直後の暫くの間、この機能面に沿って、固定弁の流路から可動弁の流路へと、少量ずつの湯水を漏れ出させることになる。
【0015】
更に、本発明の可動弁体の「移動」態様としては、(1)回動のみを行う態様や(2)進退のみを行う態様の他に、(3)回動と共に進退を行う態様等が例示できる。
また、本摺接弁は、少なくとも通水・止水の選択機能を備えるものである。例えば、シングルレバータイプやワンハンドルタイプの単水栓等に配備され、単純に通水・止水の選択を行う摺接弁を例示できる。また、種々のタイプの水栓に配備され、通水・止水の選択及び流路の切換を行う摺接弁等を例示できる。更に、シングルレバータイプの湯水混合水栓等に配備され、通水・止水の選択及び湯水の混合調節、若しくはこれらと共に流路切換を行う摺接弁を例示できる。
【0016】
更に、本発明の「遮断側縁部」は、固定弁体と可動弁体の対応し合う各流路(連通可能な各流路)の各周縁のうちで、摺接弁の閉弁を行う際に、互いに終端として交差し合う側に位置する部分である。換言すれば、摺接弁の開弁を行う際に、始端として互いに交差し合う側に位置する部分である。そして、本発明では、緩和部を両弁体の対応し合う各遮断側縁部のうちの一方に配設しても、双方に配設してもよい。
また、緩和部は、対象となる弁体の流路に単に挿入されるものであっても、この流路の内壁面等に固着(接着等)されるものであってもよい。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の摺接弁において、前記可動弁体に組み付けられて該可動弁体を移動操作する操作部材の一部を、該可動弁体の流路に挿入し、この操作部材の一部により前記緩和部を構成したことを特徴としている。
本発明によれば、操作部材の一部を緩和部とするため、部品点数の減少が図られる。従って、摺接弁の製造上の手間とコストをより一層少なくできる。
尚、本発明の「操作部材の一部」とは、可動弁体が操作軸(スピンドル等)や操作杆等に直接連結される場合には、この操作軸等の一部を指し、可動弁体がこの操作軸等に、操作部材の一部を構成する介在物(可動ブロック等)等を介して間接的に連結される場合には、この介在物等自体若しくはその一部を指す。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本摺接弁の組み込まれた切換弁カートリッジBの一具体例を説明する。
この切換弁カートリッジBは、所定の湯水混合水栓(図示を省略)に配備されるものであり、図1に示すように、後方ハウジング30と、前方ハウジング40と、固定弁体50と、可動弁体60と、操作部材70とを備えている。
【0019】
このうち、後方ハウジング30は、樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、略円筒状の外形を備える。但し、前端部の2箇所からは、孔付きの係止腕31を突出させている。また、後方ハウジング30の前端部のうちで、各係止腕31の根元側に位置する箇所には略矩形状の切り欠き部32が設けられている。
【0020】
更に、後方ハウジング30の中間部の周面には、カラン側出口孔33が設けられている。また、この出口孔33の前方に位置する周面部分には、Oリングhを装着するための装着溝が設けられている。
更に、後方ハウジング30の前方の開口部は、段差状に凹んだ弁体搭載部34とされている。また、この搭載部34には、内周側にT字状部分が付加された特殊形状のOリングkを嵌め込むための装着溝sを備える。そして、この搭載部34は、この装着溝sを境界に開口d(駄肉を削除した単なる開口)と、取入用通過孔(中心角が90度前後の平面略扇形状)qと、流出用通過孔(中心角が90度前後の平面略扇形状)rとに区画されている。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、後方ハウジング30内部の中間から前端寄りには、仕切り壁35が設けられており、この仕切り壁35により取入用流路vと流出用流路wとが区画されている。そして、取入用流路vは、後方ハウジング30後端の取入口36を入口とし、取入用通過孔qを出口とし、流出用流路wは、流出用通過孔rを入口とし、カラン側出口孔33を出口としている。
【0022】
また、前方ハウジング40も樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、図1に示すように、有底の略円筒形とされている。更に、前面の略中央には、このハウジング40の内外を貫通する軸挿通部43が略筒状に立ち上げられている。また、周面の前端側には、Oリングmが嵌め込まれる装着溝が設けられている。
更に、前方ハウジング40の周面の後方側の2箇所には、係止腕31と略凹凸の反転した形状の係止用凹部45が設けられ、各凹部45の略中心位置には係止腕31の孔に嵌入可能な突起が設けられている。尚、各凹部45の後端側が略矩形状の切り欠き部47とされている。
また、前方ハウジング40の周面の中間部には、2つシャワー側出口孔48、48が設けられている。
【0023】
また、固定弁体(例えば、セラミックス製)50は、図1に示すように、略円板形状とされ、周面に2つの位置決め突起51を備える。更に、固定弁体50には、供給用流路52と、カラン連絡用流路53が、この弁体50の摺接面55及び背面56で開口する状態に設けられている。そして、何れの流路52、53も、中心角が90度前後の平面略扇形状とされている。
【0024】
また、可動弁体(例えば、セラミックス製)60も、図1に示すように、略円板形状とされている。そして、図2に示すように、この弁体60の摺接面65及び背面66で開口するカラン選択用流路(中心角が略180度前後の平面略扇形状)61と、この弁体50の摺接面65及び側面67で開口するシャワー選択用流路(中心角が略90度前後の平面扇形状)62が設けられている。更に、図3に示すように、可動弁体の背面66には有底の補助穴63が設けられている。
【0025】
また、操作部材70は、樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、図1に示すように、略スカート形状とされた基端部71と、その前端より略軸状に突設された軸本体部72とを備える。このうち、基端部71の傾斜状の内壁面からは、一対の脚状突起73、74が略ハの字状に垂下している。尚、これらの脚状突起73、74のうちの一方73の下端側が緩和部を構成することになる。
また、この内壁面の両突起73、74に挟まれた箇所からは補助突起75が垂下している。更に、この内壁面には、これらの突起73、74、75を周回状に取り囲み、Oリングnが嵌め込まれる装着溝76が設けられている。また、軸本体部72の根元部にはOリングpの嵌め込まれる装着溝が設けられている。更に、中間部にはセレーション溝Mが設けられ、前端部は略太鼓形状のハンドル係合部Nとされている。
【0026】
次に、以上の切換弁カートリッジBの組付手順等の一例を簡単に述べる。
先ず、後方ハウジング30にOリングh、kを装着した後に、固定弁体50を後方ハウジング30に取着する。この取着は、各位置決め突起51の下半側を対応する切り欠き部32に嵌め込み、固定弁体50の背面56を弁体搭載部34の前面に、Oリングkを挟んで水密状に衝合させて行われる。これにより、供給用流路52が取入用流路vと連通し、カラン連絡用流路53が流出用流路wと連通する。
【0027】
続いて、操作部材70にOリングn、pを装着した後に、操作部材70を可動弁体60の背面66に取着する。この取着は、図3(a)に示すように、両脚状突起73、74をカラン選択用流路61の両端側(可動弁体60の回動方向に沿った両端側)に挿入すると共に補助突起75を補助穴63に挿入しながら行われる。この装着により、図3(b)に示すように、両脚状突起73、74の下面が、可動弁体60の摺接面65の若干、手前の位置まで到達する。また、各脚状突起73、74の2つの側面a、bがカラン選択用流路61の内壁面に接触すると共に、補助突起75が補助穴63に係合しているため、操作部材70を回動させれば可動弁体60も一体で回動することになる。
【0028】
次いで、前方ハウジング40にOリングmを装着した後に、操作部材70及び可動弁体60を、このハウジング40の後端側よりその内部に挿入する。このとき、図2に示すように、軸本体部72が軸挿通部43に挿入され、セレーション溝M及びハンドル係合部Nが軸挿通部43の前方に露出する。
【0029】
続いて、前後のハウジング30、40を接続すれば、本切換弁カートリッジBの組付けを完了する。この接続は、各係止腕31を対応する係止用凹部45に位置合わせし、前者の孔に後者の突起を係止させて行われる。同時に、固定弁体50の各位置決め突起51の上半側が、前方ハウジング40の対応する切り欠き部47に嵌め込まれる。
【0030】
そして、本切換弁カートリッジBは、所望の水栓本体10に配備された後、操作部材70の露出部分M、Nに切換ハンドルが取着され、使用可能な状態となる。このとき、後方ハウジング30の後端の取入口36は、この水栓本体10に設けられた湯水混合室に連絡される。同時に、後方ハウジング30のカラン側出口孔33は、この水栓本体10に設けられたカラン室に連絡される。また、前方ハウジング40のシャワー側出口48、48は、この水栓本体10に設けられたシャワー室に連絡される。
【0031】
次に、本切換弁カートリッジBの使用例を図4〜7を用いて説明する。尚、本実施の形態では周縁寸法の略等しい固定弁体50と可動弁体60を用いたが、これらの図においては、説明の便宜上、固定弁体50を大きめに図示している。
先ず、図4は、湯水混合水栓が止水状態にあることを示している。即ち、可動弁体60の何れの選択用流路61、62も、固定弁体50の供給用流路52と遮断された状態となっている。
【0032】
そして、湯水をカランから吐水させたい場合には、図5に示すように、切換ハンドルH(水栓本体10の右側面に配置される。)を使用者の側に回転させる。これにより、可動弁体60が回転し、カラン選択用流路61が固定弁体50の両流路52、53に連通し、取入用流路vと流出用流路wが連絡され、カラン吐水が可能となる。一方、湯水をシャワーヘッドから吐水させたい場合には、図6に示すように、切換ハンドルHを使用者と反対側に回転させる。これにより、可動弁体60が回転し、シャワー選択用流路62が固定弁体50の供給用流路52に連通し、シャワー吐水が可能となる。更に、何れの吐水の場合にもハンドルHの操作量を選択し、各選択用流路61、62と、供給用流路52の重なり合う面積を調節すれば流量調節が行われる。
【0033】
そして、本切換弁カートリッジBでは、図7に示すように、カラン選択用流路61の遮断側縁部68(カラン吐水を終了させる際に供給用流路52の周縁を最後に横切る部分)に、脚状突起(緩和部)73が配設されている。このため、この選択用流路61のうちで、脚状突起73の配設された箇所は流路深さの絞り込まれた流量絞り部Rとされている。そして、カラン吐水の終了直前や開始直後の暫くの間は、専ら、この流量絞り部Rを介して、カラン選択用流路61と、供給用流路52の連通がなされる。
【0034】
以上の切換弁カートリッジBでは、脚状突起73を可動弁体60のカラン選択用流路61に入れ込んで流量絞り部Rを形成している。このため、ウォーターハンマーに関する対策を各弁体60、50自体に施す必要はない。また、脚状突起73が各弁体60、50とは別個に、しかも成形の自由度や加工性の高い樹脂を用いて成形されるため、その寸法精度を高くすることが容易である。更に、仮に可動弁体60の摺接面65の鏡面加工にばらつきを生じても、脚状突起73の寸法調節で瞬時に対応できる。
従って、少ない手間とコストで得られる高精度の流量絞り部Rを用いて、カラン吐水開始時と、終了時のウォーターハンマーの発生を確実に防止できる。
【0035】
また、樹脂を用いて各弁体60、50とは別個に成形される脚状突起(緩和部)73では、形状選択の自由度が高いため、この突起73の形状を工夫(複雑化等)して、更に高性能な流量絞り部Rを得ることも容易である。
尚、本切換弁カートリッジBでは、カラン側の吐止水時のウォーターハンマー対策のみを講じたが、シャワー側の吐止水時のみ、若しくはカラン側及びシャワー側の吐止水時のウォーターハンマー対策の講じられた切換弁カートリッジであってもよい。例えば、図7(a)のシャワー選択用流路62の遮断側縁部69に、略小片状等とされた緩和部を配設すれば(例えば、内壁に貼付する。)、シャワー側の吐止水時のウォーターハンマーを確実に防止できる。
【0036】
また、固定弁体50の供給用流路52のカラン選択用流路61に対する遮断側縁部58や、シャワー選択用流路62に対する遮断側縁部59に緩和部を配設してもよい。例えば、弁体搭載部34より所定の脚状突起を立ち上げ、この突起を供給用流路52に挿入して流量絞り部を形成してもよい。この場合、この脚状突起を固定弁体50の位置決めや固定のために用いることもできる。また、可動弁体60及び固定弁体50の双方に緩和部を配設してもよい。
【0037】
更に、本切換弁カートリッジBによると、各弁体50、60の摺接面55、65自体には流量絞り部(凹部等)を設ける必要がないため、各摺接面55、65のシール性能が低下しない。また、このカートリッジBでは、流量絞り部Rに異物が付着しても、脚状突起73を可動弁体60より取り外せば、この異物の除去作業を容易に行うことができる。
【0038】
また、本切換弁カートリッジBでは、可動弁体60と操作部材70の一体的な回動を行うための係合を、両脚状突起73、74のカラン選択用流路61への挿入を主体に行っている。このため、可動弁体60に対しては、操作部材70との係合のみに用いられる被係合部(補助穴63のような補助的なものは除く。)を別途形成する必要はない。従って、図1等に示すような小型(薄肉)の可動弁体60の積極的な使用が可能となる。以下、この点に関して詳述する。
【0039】
即ち、小型の弁体と言えども十分な通水能力を備えた流路(例えば、十分な開口面積を備えた流路等)を有することが必要である。そして、このような流路が小型の可動弁体の背面や側面で開口すると、これらの面の空き領域が狭くなる。また、この背面や側面の全周にOリング等のシール部材が配置されると、この空き領域が特に狭くなる。因みに、本実施の形態の可動弁体60では、図3(b)に示すように、背面66の周縁側がOリングnの当接部位tとなり、この部位tで囲まれた部分の約半分がカラン選択用流路61の開口部とされている。更に、この部位tで囲まれた部分の約1/4の部分の真下には、シャワー選択用流路62が設けられ、肉厚が小さくされているため、この背面66の空き領域は、図3(a)の一点鎖線xで囲まれた狭い部分に限定される。また、この弁体60の側面には、シャワー選択用流路62の開口部が設けられると共に、この弁体60が元々薄肉タイプであるため十分な空き領域は存在しない。
【0040】
そして、このような狭い空き領域には、操作部材70に係合される被係合部を別途設けることは困難であるばかりか、かかる領域に被係合部を無理に設ければ、止水不良の原因をつくり出すことにもなりかねない。一方、小型の可動弁体に被係合部を設けることを優先させた場合にも、この弁体の流路形成のための領域が狭くなるため、流路形成の自由度が低くなったり、十分な通水能力を備えた流路を形成できなくなる可能性が高い。このため、従来の摺接弁では、可動弁体の肉厚を十分に確保し、その十分な空き領域を備えた背面、側面等に被係合部を設けざるを得なかった。従って、可動弁体が大型になると共に構造が複雑で製造上の手間とコストの掛かるものとなっていた。
【0041】
これに対し、本実施の形態では、可動弁体60の摺接面65以外の部位(例えば、背面66や側面67)に、この弁体60に設けられた流路61、62の第2の開口部が設けられている(第1の開口部は夫々摺接面65に設けられている。)。そして、「操作部材70に、この第2の開口部に係合する係合部(例えば、両脚状突起73、74)を設け、この係合部と、この第2の開口部との係合により、操作部材70と一体で可動弁体60が移動される。」ようにしている。従って、可動弁体60に対して被係合部を別途設ける必要がないため、構造が簡単な小型の弁体60の積極的な使用が可能となる。尚、本切換弁カートリッジBでは、補助突起(補助係合部)75と、補助穴(補助被係合部)63との係合を行っているが、これはあくまでも補助的なものである。従って、この補助突起(補助係合部)75の形状やサイズは、前述の狭い領域x内に収まる程度とされている。また、この補助穴(補助被係合部)63の形成を省略することもできる。
【0042】
尚、前記各発明の範囲は、前記具体的に示した各実施の形態に示すものに限定されず、各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。
即ち、本摺接弁において湯水の入出力方向は特に問わない。例えば、実施の形態の切換弁カートリッジBにおいて、カラン側出口孔33及びシャワー側出口孔48を入力側とし、後方ハウジング30の取入口36を出力側とすることもできる。具体的には、出口孔33及び出口孔48の一方を水道に直接連絡された源水取入口とし、他方を浄水器に連絡された浄水取入口(他方をソーラシステムに連絡されたソーラ取入口でもよい。)としてもよい。
【0043】
更に、本実施の形態とは逆に、可動弁体60に補助突起75を設け、操作部材70に補助穴63を設けてもよい。また、操作部材70より他方の脚状突起74を省略してもよい。この場合も、残りの脚状突起73と補助突起75を用いて十分な係合が行われる。更に、各脚状突起73、74を可動弁体60との係合に関与しないものとすることもできる。
【0044】
【発明の効果】
以上のように、請求項1及び請求項3の発明によると、ウォーターハンマーの発生を確実に防止でき、しかも、製造上の手間とコストの少ない摺接弁が得られる。
また、請求項2の発明によると、部品点数の減少を通じて、請求項1の発明の摺接弁の製造上の手間とコストをより一層少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態の切換弁カートリッジの各構成部品を説明するための斜視図である。
【図2】発明の実施の形態の切換弁カートリッジの構造を示す縦断面図である。
【図3】(a)は脚状突起等と可動弁体の関係を説明するための平面図、(b)は図3(a)の3−3縦断面図である。
【図4】摺接弁が止水状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び脚状突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図5】摺接弁がカラン吐水の状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び脚状突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図6】摺接弁がシャワー吐水の状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び脚状突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図7】(a)は緩和部の機能を説明するための固定弁体、可動弁体及び脚状突起の概略的な横断面図、(b)は図7(a)の7−7縦断面図である。
【図8】本発明者の案出した凹部を備える弁体を説明するための概略的な縦断面図である。
【符号の説明】
B;切換弁カートリッジ、R;流量絞り部、h、k、m、n、p;Oリング、H;切換ハンドル、
30;後方ハウジング、31;係止腕、32;切り欠き部、33;カラン側出口孔、34;弁体搭載部、s;装着溝、d;開口、q、r;通過孔、35;仕切り壁、36;取入口、v;取入用流路、w;流出用流路、
40;前方ハウジング、43;軸挿通部、45;係止用凹部、47;切り欠き部、48;シャワー側出口孔、
50;固定弁体、51;位置決め突起、52;供給用流路、53;カラン連絡用流路、55;摺接面、56;背面、58、59;遮断側縁部、
60;可動弁体、61、62;選択用流路、63;補助穴、65;摺接面、66;背面、67;側面、68、69;遮断側縁部、
70;操作部材、71;基端部、72;軸本体部、73、74;脚状突起、75;補助突起、76;装着溝、M;セレーション溝、N;ハンドル係合部。
Claims (3)
- 互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通又は遮断を行う摺接弁において、
前記固定弁体及び前記可動弁体とは別個の部材で構成されると共に前記可動弁体の流路の遮断側縁部に配設されて前記各流路の遮断間際の急激な流量減少を緩和する緩和部を備え、
前記緩和部は、前記固定弁体の側を向くと共に前記可動弁体の摺接面よりも前記可動弁体の流路内に段差状に後退した機能面を備え、
前記可動弁体の流路の遮断側縁部近傍の流路深さを、前記機能面と、前記可動弁体の摺接面との間隔に絞り込むことを特徴とする摺接弁。 - 前記可動弁体に組み付けられて該可動弁体を移動操作する操作部材の一部を該可動弁体の流路に挿入し、この操作部材の一部により前記緩和部を構成したことを特徴とする請求項1記載の摺接弁。
- 互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通又は遮断を行う摺接弁において、
前記固定弁体及び前記可動弁体とは別個の部材で構成されると共に前記固定弁体の流路の遮断側縁部に配設されて前記各流路の遮断間際の急激な流量減少を緩和する緩和部を備え、
前記緩和部は、前記可動弁体の側を向くと共に前記固定弁体の摺接面よりも前記固定弁体の流路内に段差状に後退した機能面を備え、
前記固定弁体の流路の遮断側縁部近傍の流路深さを、前記機能面と、前記固定弁体の摺接面との間隔に絞り込むことを特徴とする摺接弁。
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