JP4119954B2 - 摺接弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は摺接弁に関し、特に、湯水混合水栓等の各種水栓に好適に用いられる摺接弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
摺接弁を備えた水栓の中には、操作部材に回動操作や傾動操作(揺動操作)等が施されると、可動弁体を固定弁体上で回動・進退等させて、吐水量調節、流路切換、湯水の混合調節等を行うものがある。かかる摺接弁では、操作部材に加えられた駆動力を可動弁体に伝えるために、操作部材と可動弁体とを係合させるのが一般的である。そして、この係合は、操作部材の係合部(係合用の凸部や凹部等)と、可動弁体の背面若しくは側面に設けられた係合専用の被係合部(被係合用の凹部や凸部等)を用いて行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この係合方式を小型(薄肉タイプ等)の可動弁体に対して適用するのは困難である。
即ち、小型の可動弁体と言えども、大型(厚肉タイプ)の可動弁体と同様に、十分な通水能力を備えた流路、例えば、十分な開口面積を備えた流路を有することが必要である。そして、このような流路が小型の可動弁体の背面や側面で開口すると、これらの面の空き領域が狭くなるため、十分に機能する被係合部を別途設けることは困難になる。また、この背面や側面の全周にパッキン等のシール部材が配置される場合には、この空き領域が特に狭くなり、被係合部を別途設けることは実質的に不可能なこともある。更に、この狭い空き領域に被係合部を無理に設ければ、止水不良の原因をつくり出すことにもなりかねない。
【0004】
一方、小型の可動弁体に被係合部を設けることを優先させた場合にも、この弁体の流路形成のための領域が狭くなるため、流路形成の自由度が低くなったり、十分な通水能力を備えた流路を形成できなくなる可能性が高い。
従って、小型の可動弁体に対して、十分な通水能力を備えた流路と、十分に機能する係合専用の被係合部とを同時に設けることは困難である。このため、前述の被係合部を備えた可動弁体では、その肉厚を十分に大きくして、その背面や側面に十分な空き領域を確保せざるを得ないのが実状である。
このような事情より、可動弁体の小型化を図りつつ、この弁体と操作部材の係合を確実に行うことができる摺接弁の出現が望まれている。
【0005】
本発明は前記観点に鑑みてなされたものであり、可動弁体の小型化を図りつつ、可動弁体と操作部材との係合を確実に行うことができ、しかも可動弁体の構造の簡略化を図ることができる摺接弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の摺接弁は、互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通度合いを調節する摺接弁において、
前記可動弁体には、摺接面に設けられる第1の開口部と背面に設けられる第2の開口部とを備える流路と、摺接面に設けられる第1の開口部と側面に設けられる第2の開口部とを備える流路と、が設けられ、
可動弁体を移動操作する操作部材に、前記背面に設けられる第2の開口部に係合する係合部を設け、該係合部と前記背面に設けられる第2の開口部との係合により操作部材と一体的に可動弁体が移動されるようにし、
前記可動弁体の背面の周縁側がシール部分とされ、前記背面に設けられる第2の開口部は、該シール部分の内側に位置していることを特徴とする。
【0007】
本発明では、可動弁体がその摺接面と、摺接面以外の部位(背面、側面)で開口する流路を備えている。そして、背面に設けられる開口部を用いて、可動弁体と操作部材の係合を行う。即ち、流路を被係合部として兼用するため、可動弁体に係合専用の被係合部を別途設ける必要がない。従って、小型(薄肉)の可動弁体の限られた領域を流路形成のために効率的に利用できる。このため、可動弁体の小型化を積極的に図ることができる。また、係合専用の被係合部を別途設ける必要がない分だけ、可動弁体の構造が簡便になると共にシール性能が向上する。尚、本発明は可動弁体が小型である場合に特に大きな意義を有するが、可動弁体が大型(厚肉)である場合にも、構造の簡略化とシール性能の向上が図られる点で大きな意義を有する。
【0008】
更に、本発明の可動弁体の「移動」態様としては、(1)回動のみを行う態様や(2)進退のみを行う態様の他に、(3)回動と共に進退を行う態様等が例示できる。具体的には、単水栓等に配備され、可動弁体の進退若しくは回動により、吐水量調節を行う摺接弁を例示できる。また、シングルレバータイプの湯水混合水栓に配備され、可動弁体の進退及び回動により、湯水の混合調節(温度調節)及び吐水量調節、若しくはこれらに加えて流路切換を行う摺接弁等を例示できる。また、種々のタイプの水栓に配備され、可動弁体の回動により、吐水量調節と、流路の切換等を行う摺接弁等を例示できる。
【0009】
また、本摺接弁には、固定弁体に対して可動弁体を移動させて、両弁体の流路の連通度合いを調節するものが広く含まれる。従って、本摺接弁が、この連通を遮断する機能を有するか否か、即ち、通水(吐水)・止水の選択機能を備えるか否かは特に問わない。例えば、本摺接弁の上流側等に通水(吐水)・止水の選択機能を具備した他の弁(摺接弁に限らない。)が配置された場合には、本摺接弁を湯水の混合調節のみを行うものとすることもできる。
【0010】
更に、本発明の「操作部材」とは、可動弁体が操作軸(スピンドル等)や操作杆等に直接係合される場合には、この操作軸等を指し、可動弁体がこの操作軸等に、介在物(可動ブロック等)等を介して間接的に係合される場合には、操作軸等と介在物とを併せたものを指す。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の摺接弁において、
前記操作部材に補助係合部を設け、
前記可動弁体において、前記背面に設けられる第2の開口部以外の領域に前記補助係合部と係合する補助被係合部を設けると共に、
前記補助被係合部は、前記可動弁体の背面に設けられる有底の補助穴であることを特徴とする。
本発明では、補助係合部と、補助被係合部とで補助的な係合を行い、操作部材及び可動弁体の係合の信頼性を高めている。尚、この「補助被係合部」は、従来技術として前述した「係合専用の被係合部」と異なり、あくまでも補助的なものである。従って、可動弁体の背面や側面の空き領域が狭い場合には、このような領域にも形成容易なサイズや形状に止めることができる。このため、可動弁体に「補助被係合部」を付加しても、この弁体の小型化の妨げとはならない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本摺接弁の組み込まれた切換弁カートリッジBの一具体例を説明する。
この切換弁カートリッジBは、所定の湯水混合水栓(図示を省略)に配備されるものであり、図1に示すように、後方ハウジング30と、前方ハウジング40と、固定弁体50と、可動弁体60と、操作部材70とを備えている。
【0013】
このうち、後方ハウジング30は、樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、略円筒状の外形を備える。但し、前端部の2箇所からは、孔付きの係止腕31を突出させている。また、後方ハウジング30の前端部のうちで、各係止腕31の根元側に位置する箇所には略矩形状の切り欠き部32が設けられている。
【0014】
更に、後方ハウジング30の中間部の周面には、カラン側出口孔33が設けられている。また、この出口孔33の前方に位置する周面部分には、Oリングhを装着するための装着溝が設けられている。
更に、後方ハウジング30の前方の開口部は、段差状に凹んだ弁体搭載部34とされている。また、この搭載部34には、内周側にT字状部分が付加された特殊形状のOリングkを嵌め込むための装着溝sを備える。そして、この搭載部34は、この装着溝sを境界に開口d(駄肉を削除した単なる開口)と、取入用通過孔(中心角が90度前後の平面略扇形状)qと、流出用通過孔(中心角が90度前後の平面略扇形状)rとに区画されている。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、後方ハウジング30内部の中間から前端寄りには、仕切り壁35が設けられており、この仕切り壁35により取入用流路vと流出用流路wとが区画されている。そして、取入用流路vは、後方ハウジング30後端の取入口36を入口とし、取入用通過孔qを出口とし、流出用流路wは、流出用通過孔rを入口とし、カラン側出口孔33を出口としている。
【0016】
また、前方ハウジング40も樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、図1に示すように、有底の略円筒形とされている。更に、前面の略中央には、このハウジング40の内外を貫通する軸挿通部43が略筒状に立ち上げられている。また、周面の前端側には、Oリングmが嵌め込まれる装着溝が設けられている。
更に、前方ハウジング40の周面の後方側の2箇所には、係止腕31と略凹凸の反転した形状の係止用凹部45が設けられ、各凹部45の略中心位置には係止腕31の孔に嵌入可能な突起が設けられている。尚、各凹部45の後端側が略矩形状の切り欠き部47とされている。
また、前方ハウジング40の周面の中間部には、2つシャワー側出口孔48、48が設けられている。
【0017】
また、固定弁体(例えば、セラミックス製)50は、図1に示すように、略円板形状とされ、周面に2つの位置決め突起51を備える。更に、固定弁体50には、供給用流路52と、カラン連絡用流路53が、この弁体50の摺接面55及び背面56で開口する状態に設けられている。そして、何れの流路52、53も、中心角が90度前後の平面略扇形状とされている。
【0018】
また、可動弁体(例えば、セラミックス製)60は、図1に示すように、薄肉の略円板形状とされている。そして、図2に示すように、摺接面65に第1の開口部Dを備えると共に背面66に第2の開口部Eを備えたカラン選択用流路(中心角が略180前後の平面略扇形状)61と、摺接面65に第1の開口部Fを備えると共に側面67に第2の開口部Gを備えたシャワー選択用流路(中心角が略90前後の平面扇形状)62とが設けられている。
【0019】
この可動弁体60では、図3(b)に示すように、背面66の周縁側がOリングnの当接箇所tとなっている。また、図3(a)に示すように、この当接箇所tの内側に位置する部分の約半分が第2の開口部Eとされている。また、この部分のうちの約1/4では、その直下にシャワー選択用流路62が形成され、肉厚が小さくされている。従って、この背面66の空き流域は、図3(a)の一点鎖線xで取り囲んだ狭い範囲に限定される。そして、この背面66の空き流域には、有底の補助穴(補助被係合部)63が設けられている。また、この可動弁体60の側面67には、シャワー選択用流路62の第2の開口部Gが設けられると共にこの弁体60が薄肉タイプであるため、十分な空き領域は存在しない。
【0020】
また、操作部材70は、樹脂等を用いて作製した一体成形品であり、図1に示すように、略スカート形状とされた基端部71と、その前端より略軸状に突設された軸本体部72とを備える。このうち、基端部71の傾斜状の内壁面からは、一対の係合用突起(係合部)73、74が略ハの字状に垂下している。
また、この内壁面の両突起73、74に挟まれた箇所からは補助突起(補助係合部)75が垂下している。更に、この内壁面には、これらの突起73、74、75を周回状に取り囲み、Oリングnが嵌め込まれる装着溝76が設けられている。また、軸本体部72の根元部にはOリングpの嵌め込まれる装着溝が設けられている。更に、中間部にはセレーション溝Mが設けられ、前端部は略太鼓形状のハンドル係合部Nとされている。
【0021】
次に、以上の切換弁カートリッジBの組付手順等の一例を簡単に述べる。
先ず、後方ハウジング30にOリングh、kを装着した後に、固定弁体50を後方ハウジング30に取着する。この取着は、各位置決め突起51の下半側を対応する切り欠き部32に嵌め込み、固定弁体50の背面56を弁体搭載部34の前面に、Oリングkを挟んで水密状に衝合させて行われる。これにより、供給用流路52が取入用流路vと連通し、カラン連絡用流路53が流出用流路wと連通する。
【0022】
続いて、操作部材70にOリングn、pを装着した後に、操作部材70を可動弁体60の背面66に取着する。この取着は、図3(a)に示すように、両係合用突起73、74をカラン選択用流路61の両端側(可動弁体60の回動方向に沿った両端側)に挿入すると共に補助突起75を補助穴63に挿入しながら行われる。この装着により、図3(b)に示すように、両係合用突起73、74の下面が、可動弁体60の摺接面65の若干、手前の位置まで到達する。また、各係合用突起73、74の2つの側面a、bがカラン選択用流路61の内壁面に接触すると共に、補助突起75が補助穴63に係合しているため、操作部材70を回動させれば可動弁体60も一体で回動することになる。
【0023】
次いで、前方ハウジング40にOリングmを装着した後に、操作部材70及び可動弁体60を、このハウジング40の後端側よりその内部に挿入する。このとき、図2に示すように、軸本体部72が軸挿通部43に挿入され、セレーション溝M及びハンドル係合部Nが軸挿通部43の前方に露出する。
続いて、前後のハウジング30、40を接続すれば、本切換弁カートリッジBの組付けを完了する。この接続は、各係止腕31を対応する係止用凹部45に位置合わせし、前者の孔に後者の突起を係止させて行われる。同時に、固定弁体50の各位置決め突起51の上半側が、前方ハウジング40の対応する切り欠き部47に嵌め込まれる。
【0024】
そして、本切換弁カートリッジBは所望の水栓本体10に配備された後、操作部材70の露出部分M、Nに切換ハンドルが取着され、使用可能な状態となる。このとき、後方ハウジング30の後端の取入口36は、この水栓本体10に設けられた湯水混合室に連絡される。同時に、後方ハウジング30のカラン側出口孔33は、この水栓本体10に設けられたカラン室に連絡される。また、前方ハウジング40のシャワー側出口48、48は、この水栓本体10に設けられたシャワー室に連絡される。
【0025】
次に、本切換弁カートリッジBの使用例を図4〜7を用いて説明する。尚、本実施の形態では周縁寸法の略等しい固定弁体50と可動弁体60を用いたが、これらの図においては、説明の便宜上、固定弁体50を大きめに図示している。
先ず、図4は、湯水混合水栓が止水状態にあることを示している。即ち、可動弁体60の何れの選択用流路61、62も、固定弁体50の供給用流路52と遮断された状態となっている。
【0026】
そして、湯水をカランから吐水させたい場合には、図5に示すように、切換ハンドルH(水栓本体10の右側面に配置される。)を使用者の側に回転させる。これにより、可動弁体60が回転し、カラン選択用流路61が固定弁体50の両流路52、53に連通し、取入用流路vと流出用流路wが連絡され、カラン吐水が可能となる。一方、湯水をシャワーヘッドから吐水させたい場合には、図6に示すように、切換ハンドルHを使用者と反対側に回転させる。これにより、可動弁体60が回転し、シャワー選択用流路62が固定弁体50の供給用流路52に連通し、シャワー吐水が可能となる。更に、何れの吐水の場合にもハンドルHの操作量を選択し、各選択用流路61、62と、供給用流路52の重なり合う面積を調節すれば流量調節が行われる。
【0027】
以上の切換弁カートリッジBでは、操作部材70と可動弁体60との係合を、係合用突起73、74の開口部Eへの挿入を主体に行っている。即ち、可動弁体60の一方の選択用流路61に、湯水の流通という本来の機能の他に、被係合部としての機能を兼任させている。このため、可動弁体60は、薄肉タイプとされ、背面66及び側面67に大型の開口部E、Gを設け、しかも背面66の周縁側がシール部分とされ、空き領域(x等)が狭くなっているが、第2の開口部Eを用いて操作部材70にしっかりと係合する。しかも、この弁体60の背面66の僅かな空き領域に設けた補助穴63と、操作部材70の補助突起75により、操作部材70及び可動弁体60の係合の信頼性が高められている。
【0028】
従って、薄肉の可動弁体60の限られた領域を流路61、62の形成のために有効に利用できる。また、可動弁体60に対して、係合専用の被係合部(補助穴63のような補助的なものを除く。)を別途設ける必要がない分だけ、可動弁体60の構造が簡便になると共にシール性能が向上する。
【0029】
また、本切換弁カートリッジBによると、この可動弁体60との係合に用いられる係合用突起73、74の一方を用いて、カラン吐水開始時と終了時におけるウォーターハンマーの発生を防止することもできる。このため、カラン吐水開始時等に「不快な音」や「不快な振動」等が発生することを防止できると共に、この切換弁カートリッジBの配備された湯水混合水栓の配管(水道管等)の的確な保護がなされ、しかも切換ハンドルHの操作感の向上(引っ掛かり感を低減させる。)を図ることができる。以下、この点について詳述する。
【0030】
このウォーターハンマーの発生防止の対策として、図8に示すように、可動弁体60の摺接面65に、カラン選択用流路61に連続する凹部Yを設け、本切換弁カートリッジBの閉弁直前及び開弁直後の暫くの間、この凹部Yを通じて供給用流路52からカラン選択用流路61へと湯水を少量ずつ漏れ出させることが有効である。ただし、この方策を用いる場合には、凹部Y、即ち流量絞り部Yを高精度に形成し、その流路抵抗を十分にコントロールとすることが必要となる。
【0031】
しかし、弁体50、60の素材としては、耐摩耗性を重視して、樹脂等の他の素材に比べて成形性や加工性に劣るセラミックス等が用いられるのが一般的なため、高精度な凹部Yを備えた弁体60を作製することは必ずしも容易ではない。また、弁体60の製造の最終段階で、その摺接面65にラッピング等の鏡面加工が施されるが、その加工量が僅でもばらつけば、この凹部Yの精度が大きく低下すると考えられる。更に、摺接面65に形成可能な凹部Yの形状にも一定の限界があるため、凹部Yの形状に工夫を凝らせば(複雑化等)、「ウォーターハンマー」の発生をより確実に防止できるにも係わらず、実際に形成可能な凹部Yは単純形状に止まることも考えられる。
【0032】
一方、本切換弁カートリッジBでは、図7に示すように、可動弁体60のカラン選択用流路61の遮断側縁部68に、この弁体60と別体の係合用突起73を入れ込んでいる。そして、カラン選択用流路61の遮断側縁部68近傍の流路深さを係合用突起73の下面と、可動弁体60の摺接面65との間隔に絞り込み、流量絞り部Rを形成している。尚、「遮断側縁部」とは、固定弁体50と可動弁体60の連通可能な各流路(52及び61、52及び62)の各周縁のうちで、摺接弁の閉弁を行う際に、互いに終端として交差し合う側に位置する部分58、59、68、69である。換言すれば、摺接弁の開弁を行う際に、始端として互いに交差し合う側に位置する部分である。
【0033】
このとき、流量絞り部Rが高精度で、その流路抵抗が的確であれば、カラン吐水終了直前と、開始直後の暫くの間、供給用流路52からカラン選択用流路61へと流入する湯水の流量が適量(僅かずつの漏れ出る程度)に絞り込まれる。そして、カラン吐水の終了時及び開始時に、本切換弁カートリッジBを通過する湯水の流量は、この絞り込まれた流量を基準に増減する。従って、カラン吐水の終了時や開始時に、この流量が急激に変動することがないため、ウォーターハンマーの発生を確実に防止できる。
【0034】
そして、この流量絞り部Rの性能の適否に大きく係わるのは、係合用突起73の寸法精度等であるが、この突起73が可動弁体60と別体とされ、しかも成形の自由度や加工性の高い樹脂を用いて作製されるため、この寸法精度等を高めることは容易である。しかも、仮に、可動弁体60の摺接面65の鏡面加工にばらつきを生じても、取り扱いの容易な係合用突起73の寸法調節で瞬時に対応できる。
【0035】
従って、本切換弁カートリッジBによると、少ない手間と、コストで得られた高精度の流量絞り部Rを用いてカラン吐水開始時と、終了時におけるウォーターハンマーの発生を確実に防止できる。また、この流量絞り部Rが操作部材70の一部分を用いて構成されるため、このような有益な効果を発揮しつつも部品点数が増えない。
また、係合用突起73は、可動弁体60と別体とされ、しかも樹脂を用いて作製され、その形状選択の自由度が高いため、この突起73の形状を工夫(複雑化等)して、更に高性能な流量絞り部Rを得ることも容易である。
【0036】
尚、本切換弁カートリッジBでは、カラン側の吐止水時のウォーターハンマー対策のみを講じたが、シャワー側の吐止水時、若しくはカラン側及びシャワー側の吐止水時のウォーターハンマー対策を講じてもよい。例えば、操作部材70に別の係合用突起を設け、この突起をシャワー選択用流路62の第2の開口部Gに係合し、この流路62の遮断側縁部69に流量絞り部を形成すれば、シャワー側の吐止水時のウォーターハンマーを確実に防止できる。
【0037】
また、係合用突起73とは別の部材を用いて、固定弁体50に流量絞り部を形成することもできる。即ち、図7(a)の固定弁体50の供給用流路52のカラン選択用流路61に対する遮断側縁部58や、シャワー選択用流路62に対する遮断側縁部59に流量絞り部を形成してもよい。例えば、弁体搭載部34より所定の突起を立ち上げ、この突起を供給用流路52に挿入し、流量絞り部を形成することができる。この場合、この突起を固定弁体50の位置決めや固定のために用いることもできる。
【0038】
更に、本切換弁カートリッジBによると、各弁体50、60の摺接面55、65自体に流量絞り部(凹部等)を設けないため、これらの面55、65のシール性能が確実に確保される。また、流量絞り部Rに異物が付着しても、係合用突起73を可動弁体60より取り外せば、異物の除去を容易に行うことができる。しかも、異物の多くは、係合用突起73に付着するものと考えられ、この突起73のみに除去作業を施せばよいため、弁体60の摺接面65に傷を付けることはない。また、可動弁体60の各選択用流路61、62の内壁に異物が付着した場合にも、この内壁のみに除去作業を施せばよいため、摺接面65に傷を付けることはない。
【0039】
尚、前記各発明の範囲は、前記具体的に示した各実施の形態に示すものに限定されず、各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。
即ち、本摺接弁において湯水の入出力方向は特に問わない。例えば、実施の形態の切換弁カートリッジBにおいて、カラン側出口孔33及びシャワー側出口孔48を入力側とし、後方ハウジング30の取入口35を出力側とすることもできる。具体的には、出口孔33及び出口孔48の一方を水道に直接連絡された源水取入口とし、他方を浄水器に連絡された浄水取入口(他方をソーラシステムに連絡されたソーラ取入口でもよい。)としてもよい。
【0040】
また、操作部材70の補助係合部を凹状とし、可動弁体60の補助被係合部を凸状としてもよい。また、係合用突起73、74を一本にしたり、請求項1の発明においては、補助突起75等を省略することもできる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の発明によると、可動弁体の小型化と構造の簡略化とを図りつつ、可動弁体と操作部材との係合を確実に行うことができる摺接弁が得られる。
また、請求項2の発明によると、可動弁体と操作部材との係合の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態の切換弁カートリッジの各構成部品を説明するための斜視図である。
【図2】発明の実施の形態の切換弁カートリッジの構造を示す縦断面図である。
【図3】(a)は係合用突起等と可動弁体の関係を説明するための平面図、(b)は図3(a)の3−3縦断面図である。
【図4】摺接弁が止水状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び係合用突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図5】摺接弁がカラン吐水の状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び係合用突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図6】摺接弁がシャワー吐水の状態にあるときの固定弁体、可動弁体及び係合用突起の位置関係を説明する概略的な横断面図である。
【図7】(a)は緩和部の機能を説明するための固定弁体、可動弁体及び係合用突起の概略的な横断面図、(b)は図7(a)の7−7縦断面図である。
【図8】本発明者の案出した凹部を備える弁体を説明するための概略的な縦断面図である。
【符号の説明】
B;切換弁カートリッジ、R;流量絞り部、h、k、m、n、p;Oリング、H;切換ハンドル、
30;後方ハウジング、31;係止腕、32;切り欠き部、33;カラン側出口孔、34;弁体搭載部、s;装着溝、d;開口、q、r;通過孔、35;仕切り壁、36;取入口、v;取入用流路、w;流出用流路、
40;前方ハウジング、43;軸挿通部、45;係止用凹部、47;切り欠き部、48;シャワー側出口孔、
50;固定弁体、51;位置決め突起、52;供給用流路、53;カラン連絡用流路、55;摺接面、56;背面、58、59;遮断側縁部、
60;可動弁体、61、62;選択用流路、D、F;第1の開口部、E、G;第2の開口部、63;補助穴(補助被係合部)、65;摺接面、66;背面、67;側面、68、69;遮断側縁部、
70;操作部材、71;基端部、72;軸本体部、73、74;係合用突起(係合部)、75;補助突起(補助係合部)、76;装着溝、M;セレーション溝、N;ハンドル係合部。
Claims (2)
- 互いに摺接される固定弁体と可動弁体とを有し、固定弁体に対して可動弁体を移動させることにより摺接面に開口する固定弁体及び可動弁体の各流路の連通度合いを調節する摺接弁において、
前記可動弁体には、摺接面に設けられる第1の開口部と背面に設けられる第2の開口部とを備える流路と、摺接面に設けられる第1の開口部と側面に設けられる第2の開口部とを備える流路と、が設けられ、
可動弁体を移動操作する操作部材に、前記背面に設けられる第2の開口部に係合する係合部を設け、該係合部と前記背面に設けられる第2の開口部との係合により操作部材と一体的に可動弁体が移動されるようにし、
前記可動弁体の背面の周縁側がシール部分とされ、前記背面に設けられる第2の開口部は、該シール部分の内側に位置していることを特徴とする摺接弁。 - 前記操作部材に補助係合部を設け、
前記可動弁体において、前記背面に設けられる第2の開口部以外の領域に前記補助係合部と係合する補助被係合部を設けると共に、
前記補助被係合部は、前記可動弁体の背面に設けられる有底の補助穴であることを特徴とする請求項1に記載の摺接弁。
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