JP4234832B2 - 再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法及び再生発泡スチレン系樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発泡スチレン系樹脂成形品から再生される発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法及び再生発泡スチレン系樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発泡スチレン系樹脂成形品は、一度使用された後は焼却処分されるか、または熱収縮されてポリスチレンとして再利用されているが、再利用の比率は不十分であり今後、再利用率を向上させることが、社会的課題とされている。
【0003】
発泡スチレン系樹脂成形品を収縮塊として回収する技術は、既に完成されており、1997年には日本国内での発泡スチレン系樹脂成形品の流通量の約28%が熱収縮塊等として回収されており、主に、射出成形による雑貨品、押出成形による建材等の用途に利用されている。このように、発泡スチレン系樹脂成形品の再生利用法は限定されたものであり、その用途の拡大が急がれている。
【0004】
一方、リサイクルという定義からは、発泡性スチレン系樹脂を発泡成形し、最終的に発泡スチレン系樹脂成形品として使用されたスチレン系樹脂を、ポリスチレンとして他の用途に利用するのではなく、発泡性スチレン系樹脂として再利用することが望まれているが、現在のところ、発泡スチレン系樹脂成形品から回収されたスチレン系樹脂を発泡性スチレン系樹脂として工業的に再生されている例は少ない。
【0005】
発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物等から発泡性スチレン系樹脂を再生する方法としては、上記収縮物を押出機でペレット化しこれに発泡剤を含浸する方法が技術的には最も容易であると考えられるが、この方法ではペレット粒子の大きさによって生産性が決まってしまう。特に発泡性スチレン系樹脂として需要の多い粒径0.3〜1.5mmの粒子とすることは、押出し工程での吐出量の低下を招くこと、及び混入したゴミが生産性が著しく低下させて経済的とは言えない。
【0006】
特開昭50−109966号公報には、比重が約0.2であって多数の気泡を含み1cm以下の大きさであるスチレン系樹脂粒子を有機溶剤を含む水に分散させ、樹脂の軟化点以上で少なくとも30分間撹拌し、次いで炭化水素を含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子を再生する方法が開示されている。しかし、工業的レベルで、発泡スチレン系樹脂成形品を比重0.2まで安定に収縮させることは困難であり、限られた範囲でしか適用出来ない。また、上記の方法では、発泡剤の含浸工程においても、スチレン系樹脂の比重が低いため、生産性が悪くなる問題点があった。
【0007】
これらの問題点を解決する方法として、特開平6−87973号公報において、発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物を粉砕して得られるスチレン系樹脂粒子を有機高分子系分散剤を含む水性媒体中に分散し、易揮発性発泡剤を含浸して再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法が提案されている。これによりある程度のゴミの混入は許容され、発泡剤の含浸においても高い生産性を有すことが可能となった。しかし、この方法により得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子は気泡サイズが大きいことから、再生した成形品は、新規の発泡性スチレン系樹脂粒子から得られた成形品と比較して強度が劣る問題点があった。そこで、適用する成形品を比較的強度を必要としないものに限定したり、新規に製造した発泡性スチレン系樹脂粒子と任意の割合で混合する方法が採られおり、新規に製造された発泡性スチレン系樹脂粒子と混合するための新たに混合機が必要であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、以上の問題点に鑑み、発泡スチレン系樹脂成形品から、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法において、得られた樹脂粒子の気泡サイズを小さくし、発泡スチレン系樹脂成形品とした時の強度に優れる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法及び再生発泡スチレン系樹脂成形品を提供するものである。
【0009】
【課題点を解決するための手段】
本発明は、発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物を無延伸熱溶融及び粉砕により得られるスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散し、易揮発性発泡剤を含浸することにより得られる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法において、再生スチレン系樹脂、微粉状の平均粒子径100μm以下のタルクもしくは炭酸カルシウムを該再生スチレン系樹脂に対し、0.1〜5重量%及び/又は有機系滑材をあらかじめ混合した後、押出機によって無延伸熱溶融を行なうことを特徴とする再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法及び再生発泡スチレン系樹脂成形品の実施の形態を具体的に説明する。
【0011】
本発明に用いる微粉状の無機物としては、タルク又は炭酸カルシウムが好ましい。ここでタルクとは、酸化ケイ素及び酸化マグネシウムを主成分とし、酸化アルミニウム、酸化鉄等を微量に含む混合物をいう。また、微粉状の無機物の平均粒子径は100μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。微粉状の無機物の平均粒子径が100μmを越えると、樹脂粒子の気泡サイズを小さくする十分な効果が得られない傾向がある。
【0012】
本発明における微粉状の無機物の配合量は、スチレン系樹脂に対して0.1〜5重量%の範囲であることが好ましく、1〜3重量%の範囲であることがより好ましい。微粉状の無機物の配合量が0.1重量%未満では十分に気泡サイズを小さくする効果が得られない傾向があり、また5重量%を越えると、気泡サイズが極端に小さくなり、成形時に樹脂が溶融し成形品外観が悪化する傾向がある。
【0013】
本発明に用いる有機系滑材としては、メチレンビズステアリルアミド,エチレンビスステアリルアミド,エチレンビスオレイン酸アミド等の高級脂肪酸ビスアミド及び/又はステアリン酸亜鉛,ステアリン酸マグネシウム,オレイン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩が好ましい。
【0014】
本発明における有機系滑材の配合量は、スチレン系樹脂に対して0.05〜2重量%の範囲であることが好ましく、0.1〜1重量%の範囲であることがより好ましい。有機系滑材の配合量が0.05重量%未満では気泡サイズを小さくする十分な効果が得られない傾向があり、また2重量%を越えると、気泡サイズが極端に小さくなり、成形時に樹脂が溶融し成形品外観が悪化する傾向がある。
【0015】
本発明における発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物は、発泡スチレン系樹脂成形品を必要に応じて適宜の大きさに粗粉砕した後、熱収縮、圧縮による気泡破壊収縮、摩擦熱による収縮、これらの手段の組み合わせによって作製することができるが、本発明ではその手段は特に制限されるものではない。本発明においては、発泡スチレン系樹脂成形品は、発泡性スチレン系樹脂を金型成形したものだけでなく、単に加熱発泡させたもの等も含むものである。
【0016】
上記で得られた収縮物粗粉砕品と微粉状の無機物及び/又は有機系滑材の混合は、従来公知の手段で行うことができる。例えば、リボンミキサー,Vブレンダー,ヘンシェルミキサー,レディゲーミキサー等の混合機が使用できる。
【0017】
本発明において、発泡スチレン系樹脂成形品収縮物の熱溶融はスチレン系樹脂からの脱泡,均質化を目的として行われる。樹脂の熱溶融は、押出機、熱ロール等など従来既知の方法が適用できる。熱溶融は無延伸状態で行われる。熱溶融を延伸状態で行うと、冷却固化して得られるスチレン系樹脂に延伸ひずみが残るため、発泡剤含浸工程でひずみの緩和が起こって延伸方向に収縮する。従って、この場合、得られる発泡性スチレン系樹脂は球形にならず、扁平になるため好ましくない。熱溶融は、生産性が良い点から、押し出し機を用いて行うのが好ましい。溶融押し出しされる樹脂の形状は特に制限はないが、樹脂に延伸ひずみが残留した状態で冷却固化しないことが重要である。
【0018】
本発明において、発泡剤の含浸工程に供されるスチレン系樹脂粒子の大きさは、0.3〜5mmであることが好ましい。スチレン系樹脂粒子の大きさが0.3mm未満では、発泡性スチレン系樹脂としての需要が少ない傾向があり、また5mmを越えると発泡剤の含浸で球形になりにくい傾向がある。この範囲をはずれるスチレン系樹脂粒子は、次の発泡剤の含浸工程の前に、分級により分離され、上記の大きさの範囲になるように細粉砕又は再度溶融される。上記の大きさのスチレン系樹脂粒子は発泡剤の含浸によって球形となり、その径は発泡剤含浸前の長さとほぼ同等となる。
【0019】
本発明において上記の粉砕に用いる粉砕機は、プラスチック用のものが適用できるが、ポリスチレンを目的とした、0.3〜5mmの範囲に粉砕可能なものであれば、必ずしも粉砕機に制限はない。細粉砕によって得られた上記の大きさの範囲をはずれるスチレン系樹脂は、ふるい分けされ、再度、押し出し機等による溶融工程に供することができる。
【0020】
本発明においてスチレン系樹脂粒子への発泡剤の含浸は、当該樹脂粒子と発泡剤を、有機高分子系分散剤を含む分散液に分散せしめ、加熱、保持することによって行うことができる。この工程に使用する装置としては攪拌翼つき耐圧反応容器が好ましい。
【0021】
本発明に用いる発泡剤は、易揮発性の炭化水素であり、例えば、プロパン,ブタンまたはその異性体,ペンタンまたはその異性体,ヘキサンまたはその異性体などを単独で、または組合せて用いることができる。発泡剤の含浸量は、スチレン系樹脂粒子に対して3〜15重量%の範囲が好ましい。発泡剤の含浸量が3重量%未満では発泡能力が不十分になる傾向があり、また15重量%を越えると発泡効果の向上はみられない傾向がある。
【0022】
本発明における発泡剤の含浸温度は、100〜140℃の範囲内が好ましい。発泡剤の含浸温度が100℃未満では上記スチレン系樹脂粒子を球形化するに不十分な傾向があり、また140℃を越えると含浸槽にスチレン系樹脂が溶着して固まる傾向がある。この温度は、使用する発泡剤及び上記スチレン系樹脂粒子の粒度により上記の範囲で適宜選択される。
【0023】
本発明で得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子は、脱水,乾燥して使用に供され、適宜分級され、また改質剤により表面被覆される。これら、諸工程は従来既知の方法が適用できる。
【0024】
本発明の製造法によって得られる再生発泡性スチレン系樹脂粒子は、一般にやや着色しているが、、新規に製造した発泡性スチレン系樹脂粒子と同程度の分子量を有し、ほぼ同等の特性を有する。このため、得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子だけで使用してもよく、新規に製造した発泡性スチレン系樹脂粒子と任意の割合での混合して使用することもできる。
この再生発泡性スチレン系樹脂粒子は、公知の方法で発泡成形して再生発泡スチレン系樹脂成形品とされる。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。
【0026】
実施例1
発泡スチレン系樹脂成形品を220℃の熱風で収縮させ、見かけ比重0.75、大きさ500mm×400mm×100mm及び重さ15kgの収縮物を得た。この収縮物を10mmのスクリーンをとりつけた粉砕機(ホーライ社製、ZA−560型粉砕機)で粗粉砕した。このとき得られた粗粉砕物の最大長さは、おおよそ10mm、かさ比重0.5であった。次いで、ヘンシェルミキサー(三井三池化工製、FM10B)にこの粗粉砕物1000g及び平均粒子径が5μmのタルク(丸尾カルシウム製、タルクVLBB)10gを入れ、2000rpmで2分間混合した。このタルクで表面被覆された粗粉砕物をベント付き30mm押出機(T型ダイス、シート幅300mm、シート肉圧1mm)を用いて押出速度とほぼ同じ速度でシートを引きながら溶融押出した。さらに冷却固化の前に、押出方向に対し水平に、1mm間隔、深さ0.5mmのスリットをロールで設け、冷却固化後、切断機で10〜15cmに切断した。 引き続き、得られたシート状スチレン系樹脂の切断片を、2mmのスクリーンをとりつけた粉砕機(オリエント社製、VM−16型粉砕機)で細粉砕した。細粉砕物を、0.71mmの篩いで分級したところ、2.7重量%が篩いを通過した。篩い上に残った細粉砕物を発泡性スチレン樹脂粒子の原料とした。この原料の沈降法により測定した比重は1.05であった。
【0027】
上記の細粉砕物1000g、イオン交換水2000g、ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、KHー20)0.5g、リン酸三カルシウム5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.08gを内容積4リットルの耐圧反応釜にいれ、密閉し115℃に昇温後、発泡剤としてブタン(イソブタン/n−ブタンの重量比=4/6)を45gづつ2回に分けて圧入した。ブタン圧入完了後引き続き12時間保持して発泡剤の含浸を行った。室温まで冷却後、発泡剤が含浸されたスチレン系樹脂粒子を取り出し、脱水乾燥した後、8.6メッシュ通過,26メッシュ残で分級し、更にステアリン酸亜鉛(日本油脂製、ジンクステアレート)0.1重量%,硬化ひまし油(大日化学製、ダイワックスOHG)0.1重量%となる量で表面被覆し、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0028】
得られた再生発泡性スチレン系樹脂粒子を、50ml/gに予備発泡し、約18時間熟成後、発泡スチレン系樹脂成型機(ダイセン工業製、VS−500)を用いて成形圧力0.8kgf/cm2で成形し、再生成形品を得た。
【0029】
実施例2
実施例1において、タルクを平均粒子径が12μmの炭酸カルシウムとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0030】
実施例3
実施例1において、タルクをエチレンビスステアリルアミド1gとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0031】
実施例4
実施例1において、タルクをエチレンビスオレイン酸アミド1gとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0032】
実施例5
実施例1において、タルクをステアリン酸亜鉛1gとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0033】
比較例1
実施例1において、タルクを使用しないこと以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0034】
比較例2
実施例1において、タルクの使用量10gを100gとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0035】
比較例3
実施例1において、タルクの平均粒子径が110μmのものとした以外は、実施例1と同様に行い、再生発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1〜3で得た再生発泡性スチレン系樹脂粒子の評価結果を表1に示す。表1における特性評価の方法は以下の通りである。
セル径は、発泡粒子を鋭利なカッターナイフ等で切り取り、その断面の顕微鏡写真を撮影し、得られた写真よりセル10個の径を測定し、その平均をセル径とした。成形品の表面平滑率は、まず成形品の表面に印刷用インクをローラーで薄く塗り、この表面部分を画像処理装置にかけ、全面積に対する黒色部分の面積を求め、表面平滑率とした。強度は、JIS−A−9511に準じた密度0.02g/lの発泡成形体を曲げ強度とした。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明の製造法によって得られる再生発泡スチレン系樹脂粒子は、気泡サイズが小さく、これにより強度に優れた再生発泡性スチレン系樹脂成形品を得ることができる。
Claims (3)
- 発泡スチレン系樹脂成形品の収縮物を無延伸熱溶融及び粉砕により得られるスチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散し、易揮発性発泡剤を含浸することにより得られる再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法において、再生スチレン系樹脂、微粉状の平均粒子径100μm以下のタルクもしくは炭酸カルシウムを該再生スチレン系樹脂に対し、0.1〜5重量%及び/又は有機系滑材をあらかじめ混合した後、押出機によって無延伸熱溶融を行なうことを特徴とする再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法。
- 有機系滑材が、高級脂肪酸ビスアマイド及び/又は高級脂肪酸の金属塩である請求項1に記載の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法。
- 有機系滑材の配合量が、スチレン系樹脂に対し、0.05〜2重量%の範囲である請求項1又は2に記載の再生発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法。
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