JP4233333B2 - プリント配線板用の銅ペースト、及びその銅ペーストを用いたプリント配線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、プリント配線板用の銅ペースト、及びその銅ペーストを用いたプリント配線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から銅粉は、銅ペーストの原料として広く用いられてきた。銅ペーストは、その取り扱いの容易さ故に、スクリーン印刷法を用いたプリント配線板の回路形成、各種電気的接点部等に応用され、電気的導通確保の手段に用いられてきた。
【0003】
この銅ペーストに用いる銅粉は、ペースト粘度を減少させ、ペーストとしての取り扱いを容易にし、プリント配線板のビアホールの穴埋め性を向上させることが望まれてきた。これらの市場要求に応えるため、銅ペーストの銅粉の持つ物性である粒径、粉粒の比表面積の減少、粉粒体表面の有機剤による表面処理等の種々の解決手段が採用され、銅ペースト粘度の低減を図ることが行われてきた。
【0004】
そして、上述した銅粉の備える物性をコントロールすることにより、銅ペーストの粘度の低減に関しては、優れた効果を挙げてきたのである。
【0005】
【特許文献1】
特開平3−137174号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、銅ペースト用の銅粉の持つ物性である粒径、粉粒の比表面積の減少、粉粒体表面の有機剤による表面処理等の要因を管理するだけでは、銅ペーストの粘度制御を完全に行うことはできず、目標粘度をクリアすることができずロット毎のバラツキが大きなものとなる傾向が存在していた。
【0007】
また、銅ペースト用の銅粉には、導体形成に用いた際に、導体の持つ抵抗が低いものであるという特性が求められることは当然であり、低抵抗の導体形成が可能であるという性質を併せ持つ必要性がある。
【0008】
従って、銅ペーストの粘度制御を完全に行うことが可能で、優れた充填性を確保できる銅粉の供給が市場において求められてきたのである。又、銅ペーストに加工して導体を形成する場合には導体抵抗を低減させることも求められてきた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は、銅粉の凝集度がペースト化した際の粘度に与える影響に着目し、鋭意研究した結果、以下に説明する銅ペーストに関する発明に想到したのである。
【0010】
本件発明に係る銅ペーストは、「有機ビヒクルと銅粉とからなるプリント配線板の導体形成に用いる銅ペーストにおいて、前記銅粉は、カルボン酸含有有機溶媒で表面処理を施し、凝集粒子を風力サーキュレータを用いて解粒処理したものであり、且つ、以下に示す▲1▼〜▲4▼の各粉体特性を具備したものを用いたことを特徴とするプリント配線板用の銅ペースト。」であり、その粉体特性は、「▲1▼前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が3.7μm〜6.9μm。 ▲2▼前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.2〜1.7。 ▲3▼前記銅粉の比表面積が0.16m2/g〜0.30m2/g。 ▲4▼タップ充填密度が4.5g/cm3以上。」である。
【0011】
まず、本件発明に係る銅ペーストで用いる銅粉は、通常の銅粉で見られる粉粒の凝集状態を無くして、単分散状態に近づけるための解粒処理を施したものを用いるのである。そして、ここで言う解粒処理は、乾燥した凝集状態にある銅粉を、遠心力を利用した風力サーキュレータを用いて、銅粉の粉粒同士を衝突させることで、単分散状態に近づける方法を採用することが好ましいのである。
【0012】
ここで言うような銅粉の粉粒の凝集状態は、所謂ヒドラジン還元法に代表される湿式法であっても、高圧アトマイズ法に代表される乾式法であっても、不可避的に発生し得るものである。特に、湿式法の場合には、粉粒の凝集状態の形成が起こりやすい傾向にある。即ち、一般的に湿式法による銅粉の製造は、硫酸銅溶液を出発原料として、水酸化ナトリウム溶液を用いて反応させ、酸化銅を得て、これを所謂ヒドラジン還元する等して、洗浄、濾過、乾燥することで行われる。このようにして乾燥した銅粉が得られるのであるが、このように湿式法で得られた銅粉の粉体は、一定の凝集状態にある。この凝集した状態の粉体を、一粒一粒の粉体に分離することを、本件明細書では「解粒」と称し、解粒するための操作を「解粒処理」と称しているのである。
【0013】
単に解粒処理を行うことを目的とするのであれば、解粒の行える手段として、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置等種々の物を用いることが可能である。ところが、銅ペーストの粘度を可能な限り低減させることを考えるに、上述したように粉粒の比表面積を可能な限り小さなものとすることが求められる。従って、解粒は可能であっても、解粒時に粉粒の表面に損傷を与え、その比表面積を増加させるような解粒手法であってはならないのである。
【0014】
このような認識に基づいて、本件発明者等が鋭意研究した結果、銅粉の粉粒が装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することを最小限に抑制し、凝集した粉粒同士が相互に衝突し合い、しかも、解粒が十分可能であり、同時に、粉粒同士の衝突による粉粒表面の平滑化の可能な手法を採用したのである。この解粒処理に用いるのが、遠心力を利用した風力サーキュレータである。ここで言う「風力サーキュレータ」とは、エアをブロワーして、凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げてサーキュレーションさせ、このときに発生する遠心力により粉粒同士を気流中で相互に衝突させ、解粒作業を行うために用いるのである。このときに、遠心力を利用した市販の風力分級器を用いることも可能である。このような場合には、あくまでも分級を目的としたものではなく、風力分級器に凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げるサーキュレータの役割を果たさせるのである。
【0015】
そして、解粒処理を行う前の銅粉は、カルボン酸含有有機溶媒で表面処理を施すのである。ここで言う「カルボン酸含有有機溶媒」とは、カルボン酸を有機溶媒(エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトンのいずれか1種又は2種以上を混合したもの)に溶解させたものである。そして、この表面処理は、前記カルボン酸含有有機溶媒に銅粉を入れ混合攪拌する等の方法により、カルボン酸含有有機溶媒と銅粉とを接触させることで、銅粉の粉粒表面にカルボン酸成分を吸着させ、その後銅粉を濾別採取して、乾燥させるものである。また、このカルボン酸による処理方法には、カルボン酸を気化させた気流中に銅粉を入れて処理することも可能である。即ち、カルボン酸を用いて処理する方法は、銅粉表面の均一な表面処理ができるものであれば、特に限定を要するものではない。
【0016】
ここで言うカルボン酸とは、いわゆる飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸を用いることができる。本件発明において用いることのできる飽和脂肪酸の種類を具体的に列挙すると、エナント酸(C6H13COOH)、カプリル酸(C7H15COOH)、ペラルゴン酸(C8H17COOH)、カプリン酸(C9H19COOH)、ウンデシル酸(C10H21COOH)、ラウリン酸(C11H23COOH)、トリデシル酸(C12H25COOH)、ミリスチン酸(C13H27COOH)、ペンタデシル酸(C14H29COOH)、パルミチン酸(C15H31COOH)、ヘプタデシル酸(C16H33COOH)、ステアリン酸(C17H35COOH)、ノナデカン酸(C18H37COOH)、アラキン酸(C19H39COOH)、ベヘン酸(C21H43COOH)のいずれか1種又は2種以上を混合したものである。
【0017】
そして、本件発明において用いることのできる不飽和脂肪酸の種類を具体的に列挙すると、アクリル酸(CH2=CHCOOH)、クロトン酸(CH3CH=CHCOOH)、イソクロトン酸(CH3CH=CHCOOH)、ウンデシレン酸(CH2=CH(CH2)9COOH)、オレイン酸(C17H33COOH)、エライジン酸(CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH)、セトレイン酸(CH3(CH2)9CH=CH(CH2)9COOH)、ブラシジン酸(C21H41COOH)、エルカ酸(C21H41COOH)、ソルビン酸(C5H7COOH)、リノール酸(C17H31COOH)、リノレン酸(C17H29COOH)、アラキドン酸(C13H31COOH)のいずれか1種又は2種以上を混合したものある。
【0018】
以上に述べたカルボン酸を用いて、銅粉の構成成分である銅と接触させ、乾燥させると、銅粉の粉粒表面に吸着カルボン酸及びカルボン酸の金属塩の混在した表面処理層が形成され、銅ペーストに加工したときペースト粘度を効果的に低減させることが可能となるのである。しかも、その銅ペーストを用いて形成した導体の導電性を損なうこともないのである。ここで「2種以上」としているのは、以上に列挙した飽和脂肪酸の複数種、不飽和脂肪酸の複数種を混合して用いるものであっても構わないことを意味している。
【0019】
そして、表面処理を行い銅粉を濾別採取して行う乾燥は、乾燥温度50℃〜100℃、乾燥時間2〜8時間の条件で行うことが好ましい。乾燥温度は、銅粉の表面酸化を防止するため、可能な限り低温領域を採用することが望まれる。乾燥温度が50℃未満では、銅粉という粉粒体に吸着した水分を十分に除去する事ができず、しかも、カルボン酸の定着が強固に出来ないためである。一方、乾燥温度を、100℃を超える温度とすると、表面処理層の損傷が起こりやすくなるためである。この乾燥温度範囲において、その加熱温度に合わせた加熱時間も採用すべきである。低温でも、あまりに長時間の乾燥を行うと表面処理層が損傷を起こし、乾燥時間が短すぎると、銅粉の吸着水分の除去が不完全となるのである。
【0020】
このような手法を採用し、表面に表面処理層を形成した銅粉は、優れた耐酸化性能を示すものとなる。そして、このカルボン酸含有有機溶媒で処理するだけで、その銅粉を用いて製造される銅ペーストは、ペースト粘度が低いためビアホール等の充填性に優れ、しかも、ペースト粘度の経時変化が起こりにくくなり、銅ペーストの品質管理が容易となり、製造現場での管理コストの低減、生産効率の向上が期待できるのである。また、この銅粉の表面処理は、銅粉の経時的な表面酸化を防止することで、銅ペーストに加工して、その銅ペーストを用いて形成した導体の電気抵抗の変化を最小限に抑制することで必要となるのである。
【0021】
更に、本件発明に係るプリント配線板用の銅ペーストで用いる銅粉は、「▲1▼前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が3.7μm〜6.9μm。 ▲2▼前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.2〜1.7。 ▲3▼前記銅粉の比表面積が0.16m2/g〜0.30m2/g。 ▲4▼タップ充填密度が4.5g/cm3以上。」の各特性を具備するものであることが望ましいのである。これらの粉体特性は、主に解粒処理により付与されるものである。
【0022】
▲1▼の粉体特性は、前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が3.7μm〜6.9μmである。ここで銅粉の粉粒の平均粒径を表すのには、当業者間で一般的に用いられるレーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる平均粒径をD50を用いたのである。そして、本件発明者等が、平均粒径と銅ペースト粘度との関係を慎重に確認したが、一定レベルの相関は存在しても、強い相関関係があると断定できるものではなかった。例えば、X−Y平面の一軸に平均粒径D50、他軸側に銅ペースト粘度をとって、銅粉の平均粒径D50と銅ペースト粘度との相関性を確認し、最小自乗法を用いて算出した相関係数は、平均して0.5以下であった。
【0023】
しかしながら、経験則に照らし合わせてみると、平均粒径D50が3.7μm未満の場合には、銅ペーストに加工したときの粘度上昇が著しく、取扱いの困難な銅ペーストになる。また、同時に、その銅ペーストを用いて形成した導体は、電気抵抗が上昇する傾向が出るのである。一方、平均粒径D50の値には特に上限は存在しないが、銅粉を用いて銅ペーストに加工し、200μm径以下のプリント配線板のビアホール内を充填することを想定すると、平均粒径D50が6.9μmを超えると、銅ペーストの充填性能が損なわれ、充填が困難となるのである。
【0024】
▲2▼の粉体特性は、前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.2〜1.7である。この粉体特性が、最も粘度との関係が大きなものと考えられる。
【0025】
本件発明者等は、銅粉の平均粒径D50と銅ペーストの粘度との相関関係が、強いものではなかったため、銅ペースト粘度と平均粒径との関係以上に相関性の認められる指標を探した。その結果、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる平均粒径D50の値と、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の観察像(倍率1000倍で観察)を画像解析することにより得られる平均粒径DIAとの比に着目したのである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。
【0026】
即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる平均粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではないと考えられる。殆どの銅粉を構成する粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集して集合した状態になっているからである。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、平均粒径を算出していると言えるのである。
【0027】
これに対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子が確実に捉えられることになり、反対に粉粒の凝集状態の存在を全く反映させていないことになる。
【0028】
従って、広く用いられてきた平均粒径D50の値又は平均粒径DIAの値を単独で用いて、銅ペーストの粘度と対比してみることは、いずれの場合にも、銅ペーストの製造に用いた銅粉の内在する状態を正確に反映させたものとはならないと考えられる。
【0029】
以上のように考えた結果、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの銅粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。このとき、D50の値は、銅粉の粉粒の凝集状態がなくなるほど、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無くなった単分散粉と言えるのである。
【0030】
そこで、本件発明者等は、凝集度と各凝集度の銅粉を用いて製造した銅ペーストとの相関関係を調べてみた。その結果、極めて良好な相関関係が得られた。このとき最小二乗法により得られる相関直線の持つ相関係数は、平均して0.7以上であり、強い相関を持つことが分かるのである。このことから分かるように、銅粉の持つ凝集度をコントロールしてやれば、その銅粉を用いて製造する銅ペーストの粘度の自由なコントロールが可能となると判断できるのである。しかも、凝集度を1.7以下にしておけば、得られる相関直線の傾きが小さく、銅ペーストの粘度の変動を極めて狭い領域に納めることが可能となることが分かったのである。そして、凝集度の値が1.2になれば、ほぼ完全に近い分散状態が得られていると判断できるのである。
【0031】
また、現実に凝集度を算出してみると、1未満の値を示す場合もある。これは、凝集度の算出に用いるDIAを真球と仮定しているからと考えられ、理論的には1未満の値にはならないのであるが、現実には、真球ではないがために1未満の凝集度の値が得られるようである。以上に述べた考え方に基づき、凝集度の値を1.2〜1.7と定めたのである。
【0032】
このD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下となると、銅ペーストの有機ビヒクルの構成が同じであれば、従来にないレベルでの銅ペーストの粘度の低減が可能となるのである。また、凝集状態が解消されていればいるほど、その銅粉を用いて銅ペーストを製造して、プリント配線板のビアホール等の穴埋めを行う際の充填性を向上させることが可能であり、結果として形成した導体の電気的抵抗を低くすることが可能となるのである。なお、解粒処理を行わない場合の凝集状態にある乾燥した銅粉の凝集度は、測定誤差による変動は有るものの確実に1.7を超えるのが通常である。
【0033】
以上のことから銅ペーストの粘度は、銅粉の持つ凝集度の変化に応じて変化するものと考えられるが、銅粉の場合には凝集度の値を1.7以下とすると、この凝集度領域における粘度の値の変動が、非常に小さくなる事が分かったのである。
【0034】
即ち、銅粉の凝集度が1.7より大きくなると、銅ペースト粘度が、銅粉の凝集度の変化による影響を受け大きく変化する。更に、検証実験を続けた結果、銅粉の凝集度を1.7以下に維持しておけば、凝集度の変化による銅ペーストの粘度のバラツキを小さくして、しかも、銅粉の平均粒径の変化による影響も小さくできることも分かってきたのである。
【0035】
▲3▼の粉体特性は、銅粉の比表面積が0.16m2/g〜0.30m2/gである。従来から、銅ペーストの粘度を下げるために寄与する要因として考えられてきた銅粉の粉体特性の一つであり、粉粒の比表面積は、粉粒の粒子径が同程度であれば、その比表面積が小さいほど粉粒の表面が滑らかであることを意味しており、比表面積が小さければ小さいほど、銅ペーストの粘度を低くすることが出来るという見解については事実であり、間違いのないものと言える。また、銅粉の表面処理剤の種類により、銅粉表面と銅ペーストを構成する有機ビヒクルとの親和性が異なるため、銅ペーストの粘度に影響を与えることも現実に起こっている。従って、銅粉表面を表面処理する際には、銅ペーストを構成する有機ビヒクルとの相性を十分に考慮して選択使用しなければならないことが理解できる。
【0036】
そこで、本件発明者等が、銅ペーストに用いる銅粉であることを前提に考えると、▲1▼及び▲2▼の粉体特性を満足し、更に比表面積を0.16m2/g〜0.30m2/gの範囲に制御することが、銅ペースト用の銅粉として最も適していると判断できたのである。比表面積の下限値は、上述した解粒処理を用いても、銅粉の比表面積を0.16m2/g未満まで平滑化させる事は困難であり、本件発明で採用した製造方法の限界として定まるものである。一方、比表面積が0.30m2/gを超えると、比表面積の増加による銅ペーストの増粘傾向が顕著になるのである。
【0037】
更に、▲4▼の粉体特性は、タップ充填密度が4.5g/cm3以上というものである。タップ充填密度も、ペースト粘度の増粘化傾向、銅粉を用いて銅ペーストを製造しプリント配線板のビアホール等の穴埋めを行う際の充填性の指標として用いることも可能である。タップ充填密度は、銅粉の凝集の仕方(即ち、2次構造体の形状)、粒径との関係で定まるものであるからである。従って、上述した粉体特性の条件を満たせば、必然的にタップ充填密度が4.5g/cm3以上となるのである。反対に言えば、タップ充填密度が4.5g/cm3 未満の場合には、銅ペーストに加工したときの増粘傾向が顕著になるのである。
【0038】
以上に述べた粉体特性を兼ね備えた銅粉を用いて、銅ペーストを製造すると、その銅ペーストの粘度は低く、上述した粉体特性の範囲では、大きな変動のないペースト粘度を達成できるのである。そして、銅ペーストの製造に用いる銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50を、200μm径以下のプリント配線板のビアホール内を充填することを目的とした銅ペースト用に定めているため、プリント配線板の導体形成用途に非常に適したものとなる。その結果、本件発明に係る銅ペーストを用いることで、高品質のプリント配線板が提供可能となるのである。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態を通じて、比較例と対比しつつ、本件発明に関し、より詳細に説明する。
【0040】
そこで、最初に実施形態と比較例とで共通する内容となる、湿式法による銅粉の製造方法について説明する。ここでは、硫酸銅(五水塩)100kgを、温水に溶解させ液温60℃の200リットルの溶液とした。そして、ここに125リットルの25質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に維持しつつ、1時間の攪拌を行い、酸化第二銅を生成した。
【0041】
酸化第二銅の生成が終了すると、液温を60℃に維持し続け、ここに濃度450g/lのグルコース水溶液80リットルを、20分かけて一定の速度で添加し、酸化第一銅スラリーを生成した。ここで、このスラリーを一旦濾過し、洗浄した後、温水を加えて320リットルの再スラリーとした。
【0042】
次に、再スラリーに、1.5kgのアミノ酢酸及び0.7kgのアラビアゴムを添加し、攪拌して、溶液温度を50℃に保持した。この状態の再スラリーに、20質量%濃度の水加ヒドラジン50リットルを、90分かけて一定の速度で添加し、酸化第一銅を還元して銅粉として、銅粉スラリーを生成した。
【0043】
続いて、この銅粉スラリーを濾過し、純水で十分に洗浄し、濾過して水切りを行い、乾燥して銅粉を得た。この銅粉が第1実施形態で用いる凝集状態にある乾燥した銅粉である。この凝集状態にある銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径D50は7.12であり、画像解析により得られる平均粒径DIAは3.96、従って、D50/DIAで算出される凝集度は1.80であった。
【0044】
実施形態: 本実施形態では、解粒処理することで低凝集性の銅粉を製造し、その銅粉を用いて銅ペーストを製造し、銅ペーストの粘度を測定したのである。
【0045】
上述する製造方法により得られた「凝集状態にある乾燥した銅粉」5kgを、ヌッチェに入れ、5gのオレイン酸を加えて分散させた5リットルのメタノール溶液を滴下して、当該銅粉の粉粒表面に表面処理層を形成した。そして、吸引濾過することで、銅粉と溶液とを吸引濾過し、吸引濾過で分取した銅粉を、70℃の温度で5時間乾燥させた。
【0046】
上記表面処理の終了した銅粉を、市販の風力分級器である日清エンジニアリング社製のターボクラシファイヤを用いて、回転数6500rpmでサーキュレーションさせ、凝集状態にある粉粒同士を衝突させて解粒作業を行った。
【0047】
この結果、表面処理の終了した銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径D50は5.43μm、画像解析により得られる平均粒径DIAは4.02μm、従って、D50/DIAで算出される凝集度は1.35、比表面積が0.18m2/g 、タップ充填密度が5.1g/cm3であった。本件明細書におけるレーザー回折散乱式粒度分布測定法の平均粒径D50は、銅粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置であるMicro Trac HRA9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて行った。
【0048】
次に、この銅粉を用いて、エポキシ系銅ペーストを製造した。当該銅粉を85重量部、第1のエポキシ樹脂には油化シェル社製のエピコート828を3重量部、第2のエポキシ樹脂には東都化成株式会社製のYD−171を9重量部、エポキシ樹脂硬化剤として味の素株式会社製のアミキュアMY−24を3重量部として、これらを混合して30分間の混錬を行ってエポキシ系銅ペーストを得たのである。
【0049】
以上のようにして得られたエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると145Pa・sという結果が得られている。なお、本件明細書における粘度の測定には、東機産業社製の粘度計であるRE−105Uを用いて、0.5rpmの回転数で測定したものである。
【0050】
比較例: 実施形態において解粒処理を行うことなく、凝集状態にある銅粉を用いて製造したエポキシ系銅ペーストの製造直後の粘度を測定すると1150Pa・sという結果が得られている。この結果を、本件発明に係る実施形態の場合と比較すると明らかなように、本件実施形態に係る解粒処理を行った銅粉は、その凝集度が小さく、その効果として銅ペーストの粘度が低くなっていることが分かる。しかも、製造ロット数を増加させて対比させれば、より明確になることであるが、本件発明に係る銅粉を用いると銅ペーストの粘度のバラツキが非常に小さくなってくるのである。
【0051】
【発明の効果】
本件発明に係る銅ペーストは、そこに用いる銅粉の粉粒特性が非常に分散性が高いものであり、従来の凝集状態にある銅粉を用いた場合に比べ低粘度化させることが可能で、安定したペースト品質の確保が可能となる。このような低粘度の銅ペーストは、充填性に優れ、特にプリント配線板のビアホール内部等の導体形成の場において有用であり、プリント配線板の製造現場におけるペースト管理の煩雑さを解消し、トータル製造コストを下げ、しかも、高品質の接続信頼性に優れた製品供給を可能とするのである。
Claims (2)
- 有機ビヒクルと銅粉とからなるプリント配線板の導体形成に用いる銅ペーストにおいて、
前記銅粉は、カルボン酸含有有機溶媒で表面処理を施し、凝集粒子を風力サーキュレータを用いて解粒処理したものであり、且つ、以下に示す▲1▼〜▲4▼の各粉体特性を具備したものを用いたことを特徴とするプリント配線板用の銅ペースト。▲1▼ 前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50が3.7μm〜6.9μm。
▲2▼ 前記銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による平均粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.2〜1.7。
▲3▼ 前記銅粉の比表面積が0.16m2/g〜0.30m2/g。
▲4▼ タップ充填密度が4.5g/cm3以上。 - 請求項1に記載の銅ペーストを用いて形成した導体を含んだプリント配線板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003015444A JP4233333B2 (ja) | 2003-01-23 | 2003-01-23 | プリント配線板用の銅ペースト、及びその銅ペーストを用いたプリント配線板 |
Applications Claiming Priority (1)
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