JP7375245B1 - 銀粉の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】所望の線幅と高さの配線パターンが得られるような導電性ペーストを調製することができる銀粉の製造方法及び当該銀粉を提供する。【解決手段】銀粉の製造方法は、凝集銀粉を気流式粉砕機2で解砕する解砕工程と、解砕工程後の銀粉を風力分級機3で分級する分級工程と、を含み、凝集銀粉は、水分量が2wt%以上20wt%以下であり、解砕工程では、80℃以上180℃以下の温度の圧縮空気を供給エアとして気流式粉砕機2に供給し、分級工程では、気流式粉砕機2の排気と解砕工程後の銀粉とが風力分級機3に供給されており、排気は、温度が30℃以上、且つ、容積絶対湿度が20g/m3以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、銀粉の製造方法及び銀粉ならびに導電性ペーストに関する。
特許文献1には銀粉及び銀粉の製造方法が記載されている。この銀粉の製造方法では、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えることにより、銀粒子を析出させ、その後に、該水性反応系を濾過してケーキを得て、該ケーキを気流乾燥装置にて乾燥することにより、銀粉を得ている。
特許文献2には、銀粒子の製造方法が記載されている。この銀粒子の製造方法では、平均粒径がサブミクロンの銀粒子のスラリーに、アルコールを投入して撹拌した後に、濾過脱水し、乾燥して解砕している。この銀粒子の製造方法において、乾燥処理は熱風乾燥または真空乾燥の何れでもよく、熱風乾燥では30~100℃の熱風下に濾過物を置けばよいとされている。
特許文献3には、銀粉及びその製造方法が記載されている。この銀粉の製造方法では、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤を加えて銀粒子を還元析出させて得られた銀含有スラリーを濾過し、水洗して得られたケーキを室温で脱水し、室温で解砕して解砕粉にし、室温で分級して銀粉を得ている。
特開2008-1974号公報 特開2010-229481号公報 特開2016-216824号公報
導電性ペースト(以下では単にペーストと記載する場合がある)を塗布して製造される電子部品の配線や接点は、ペーストを印刷などにより塗布した後、これを加熱(典型的には焼成)して得られる。ペーストには、これを塗布して焼成した際に、所望の線幅と高さの配線パターンが得られることが求められる。一般に、電子部品では配線部分以外の面積の最大化や電子部品の小型化のために、配線の細線化が望まれており、配線を細くしても比抵抗が大きくなりすぎないように配線の高さが高い配線パターンが望まれている。
銀粉を導電材として含む導電性ペーストにあっては、上記のようなペーストの性能を実現するために、銀粉中の銀粒子の表面性(例えば、表面の形状)を制御する場合がある。例えば、銀粉中の銀粒子の表面に、所望の凹凸を形成する場合がある。しかしながら、従来の銀粉の製造方法にあっては、銀粒子の表面に所望の凹凸を有する銀粉を得られない場合があった。そのため、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるようなペーストを提供できない場合があった。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、線幅が細く高さが高い、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるような導電性ペーストを調製することができる銀粉の製造方法及び当該銀粉を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る銀粉の製造方法及び銀粉、並びに当該銀粉を含む導電性ペーストは以下のとおりである。
<1>凝集銀粉を気流式粉砕機で解砕する解砕工程と、
前記解砕工程後の銀粉を風力分級機で分級する分級工程と、を含み、
前記凝集銀粉は、水分量が2wt%以上20wt%以下であり、
前記解砕工程では、80℃以上180℃以下の温度の圧縮空気を供給エアとして前記気流式粉砕機に供給し、
前記分級工程では、前記気流式粉砕機の排気と前記解砕工程後の銀粉とが前記風力分級機に供給されており、
前記排気は、温度が30℃以上、且つ、容積絶対湿度が20g/m3以上である銀粉の製造方法。
<2>前記風力分級機と前記気流式粉砕機とを連結管で接続し、当該連結管を介して前記気流式粉砕機の排気と前記解砕工程後の銀粉とを前記気流式粉砕機から前記風力分級機に供給する上記<1>に記載の銀粉の製造方法。
<3>前記分級工程後の銀粉を捕集機で捕集する捕集工程を更に含み、
前記捕集工程では、前記風力分級機の排気と前記分級工程後の銀粉を前記捕集機に供給する、上記<1>又は<2>に記載の銀粉の製造方法。
<4>前記分級工程では、前記風力分級機に外気を吸引させながら分級する上記<1>~<3>のいずれかに記載の銀粉の製造方法。
<5>レーザー回折式粒度分布測定における体積基準で求めた粒度分布における、粒子径の小さい側から累積した累積10%径(μm)、累積50%径(μm)及び累積90%径(μm)の値をそれぞれD10、D50及びD90とし、
前記D90から前記D10を差し引いた差分値を前記D50で割った値が1.0以下であり、
銀粒子の表面の500nm×500nm範囲の面粗さ測定における算術平均粗さSa(nm)に前記D50を乗じたSa×D50値が17000nm以上である銀粉。
<6>レーザー回折式粒度分布測定における体積基準で求めた粒度分布における、粒子径の小さい側から累積した累積10%径(μm)、累積50%径(μm)及び累積90%径(μm)の値をそれぞれD10、D50及びD90とし、
前記D90から前記D10を差し引いた差分値を前記D50で割った値が1.0以下であり、
銀粒子内に閉じた空隙を有しており、
BET1点法による測定される比表面積(m/g)を用いて、真密度を9.7g/cmとして下記式(1)で計算されるBET径と、
前記銀粒子の表面の500nm×500nm範囲の面粗さ測定における算術平均粗さSa(nm)において、
前記算術平均粗さSaに前記BET径を乗じたSa×BET径の値が13000nm以上である銀粉。
BET径=6/比表面積/真密度・・・式(1)
<7>前記D50が0.4μm以上4.0μm以下である上記<5>又は<6>に記載の銀粉。
<8>上記<5>~<7>のいずれかに記載の銀粉を含む導電性ペースト。
線幅が細く高さが高い、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるような導電性ペーストを調製することができる銀粉の製造方法及び当該銀粉を提供することができる。
本実施形態に係る銀粉の製造方法を実現するプラントのフロー図である。 実施例1の銀粉のSEM像である。 実施例2の銀粉のSEM像である。 比較例1の銀粉のSEM像である。 参考例1の銀粉のSEM像である。 細線評価を行うための電極パターンの形状を示す図である。 実施例3の銀粉のSEM像である。 比較例2の銀粉のSEM像である。
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る銀粉の製造方法について説明する。
図1には、本実施形態に係る銀粉の製造方法を実現するプラント100のフローを示している。
プラント100では、水分を含有し湿潤状態で凝集した銀粉であり該銀粉を構成する銀粒子の表面に凹凸を有する銀粉(以下、凝集銀粉と称する)が原料として供される。この凝集銀粉は例えば湿式還元法により製造することができる。プラント100では、この凝集銀粉が解砕、乾燥、分級及び捕集されて、導電性ペーストの調製に好適な銀粉が製造される。プラント100で製造される銀粉は、凝集銀粉中の銀粒子の表面形状をある程度残したものとなる。本発明により、プラント100で製造される銀粉は、凝集銀粉中の銀粒子の表面よりも平滑化しつつも、銀粒子の表面に所望の凹凸を有するものとすることができる。
原料となる凝集銀粉は、一例として以下の湿式還元法により製造することができる。湿式還元法は、銀塩含有水溶液にアルカリ又は錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリー又は銀錯塩含有水溶液を生成した後、ホルマリンなどの還元剤を加えて銀粉を還元析出させる方法とすることができる。また、酸化銀含有スラリー又は銀錯塩含有水溶液に水酸化ナトリウムを加えてpH調整を行う処理を含む方法で製造することもできる。以下では、これらの方法を単に湿式還元法と記載する。また、銀粒子のことを単に粒子と称する場合がある。なお、銀粉とは銀の粉体のことであり、銀粒子の集合体である。
湿式還元法では、銀粒子の結合を防止して、単分散した銀粉を得ることが好ましい。湿式還元法は、単分散した銀粉を得るため、還元析出した銀スラリーに対して分散剤を添加する処理、又は銀粒子を還元析出させる前の銀塩と酸化銀の少なくとも一方を含む水性反応系に対して分散剤を添加する処理を含むことができる。分散剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、アミノ酸などの有機酸、有機金属、キレート形成剤及び保護コロイドのいずれか1種以上を選択して使用することができる。前記銀スラリーから乾燥した銀粉を得るには、フィルタープレス等の固液分離工程と乾燥工程を経る必要がある。湿式還元法で還元析出した銀スラリー中では銀粒子が単分散している場合でも、銀スラリーをフィルタープレス等の固液分離工程と乾燥工程を経た銀粉は、凝集しており、導電性ペースト用銀粉として用いることは難しい場合が多い。導電性ペースト用銀粉としては銀粉中に粗粒が混入することは好ましくないとされることが多い。このようなことから、湿式還元法で還元析出した銀スラリーから、導電性ペースト用銀粉を得る方法として、前記銀スラリーを固液分離、乾燥、解砕し、粗粒を除去するための分級を経る方法が用いられることが多い。
プラント100は、供給機1、気流式粉砕機2(以下、粉砕機2と称する)、風力分級機3(以下、分級機3と称する)、捕集機としてのサイクロン4、集塵機5及びブロア6を含む。
プラント100では、粉砕機2、分級機3、サイクロン4、集塵機5及びブロア6がこの順に直列に接続され、粉砕機2、分級機3、サイクロン4及び集塵機5を通過した気流がブロア6によって吸引されている。粉砕機2と分級機3、分級機3とサイクロン4、サイクロン4と集塵機5のそれぞれの装置間において、銀粉は空気輸送されることが好ましい。
供給機1は、凝集銀粉を粉砕機2に供給する装置である。供給機1は、例えばスクリューフィーダを用いることができる。供給機1から粉砕機2に供給される凝集銀粉は、水分量が2wt%(質量%)以上20wt%以下とされる。凝集銀粉の水分量は、好ましくは8wt%以上15wt%以下、更に好ましくは11wt%以下である。
粉砕機2は、凝集銀粉を解砕する解砕工程を実現する装置である。粉砕機2では、粉砕機2の内部空間に凝集銀粉と圧縮空気とを供給することで凝集銀粉を解砕する。
粉砕機2において、凝集銀粉を解砕する圧縮空気は、粉砕機2の内部空間に連通する噴射ノズルを介して内部空間に噴射するように供給される。噴射ノズルは例えば粉砕機2の下部に設けられ、内部空間の下部領域に噴射するように配置される。噴射ノズルは粉砕機2の複数の箇所に設けてもよい。図1では、噴射ノズルが粉砕機2の上部と下部に設けられている。
解砕工程では、粉砕機2の噴射ノズルに供給する圧縮空気(以下、噴射ノズルに供給される圧縮空気を供給エアまたは解砕エアと称する)は、粉砕機2内に入る圧縮空気の温度が80℃以上180℃以下となるように供給エアの供給路において加熱器22により加熱して供給される。粉砕機2内に入る圧縮空気の温度は150℃以下とすることが好ましい。粉砕機2の噴射ノズルに供給する圧縮空気の圧力は、エアポンプ24の(加熱前の室温での)供給圧力の値が例えば0.1MPa以上0.8MPa以下とすることができ、好ましくは0.4MPa以上0.6MPa以下とすることができる。
粉砕機2において、凝集銀粉は、圧縮空気と別の経路から粉砕機2の内部空間に供給される。供給には、凝集銀粉を粉砕機2の内部に送ることができるような機構があればよく、粉砕機供給口21に噴射ノズルを設けて解砕エアと凝集銀粉を粉砕機内に供給するフォースとして使用することができる。別の構成として、粉砕機供給口21に設けられたベンチュリやエジェクタなどの供給機構を使用することも可能である。凝集銀粉を粉砕機2に供給する際に用いる供給エアは、供給エアの供給路において加熱器22により80℃以上180℃以下に加熱されるとよい。供給エアの圧力は、エアポンプ24の(加熱前の室温での)供給圧力の値が0.1MPa以上0.8MPa以下とされるとよい。
粉砕機2の内部空間では、噴射ノズルから噴出された解砕エアのせん断力、解砕エアによって加速された凝集銀粉中の凝集粒子同士の衝突及び解砕エアによって加速された凝集粒子と粉砕機2の槽内の壁面との衝突により凝集銀粉の解砕が進行する。なお、本実施形態において凝集銀粉中の凝集粒子とは、上述の湿式還元法で説明した単分散した銀粒子が凝集した二次粒子のことである。
解砕工程では、上述する衝突によって解砕と同時に銀粒子の表面の凹凸が減り、削り取られた微細粒子が発生すると共に銀粒子の表面の平滑化が起きる。本実施形態では、粉砕機内の雰囲気が、凝集銀粉中の水分が高温の解砕エアにより蒸発することで湿り気のある気体となる。解砕工程における解砕の進行と表面の平滑化が、湿り気のある気体内で行われる。一般に、気体中に水分がある方が粒子は凝集しやすい。そのため、乾燥状態の銀粉を乾燥空気で解砕する場合に比べて凝集が起きやすい状態で解砕の進行と表面の平滑化が行われる。その結果、解砕機内における凝集粒子同士の衝突や削り取られた微細粒子の再付着なども起きやすくなっていると予想される。本実施形態で得られる銀粒子は、従来の水分量の少ない雰囲気下で解砕工程が行われた銀粒子に比べて、銀粒子表面に大きい凹凸を有している。
粉砕機2としては、連続的に内部空間に圧縮空気を供給し、これによって生じさせた旋回流中で解砕を実現するカレントジェットミル(日清エンジニアリング株式会社製)、Skジェット・オー・ミル(株式会社セイシン企業製)、スーパージェットミル(日清エンジニアリング株式会社製)やスパイラルジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、分級ロータを内蔵し、内部空間で形成される流動層中に圧縮空気を供給することで解砕を実現するカウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)やクロスジェットミル(株式会社栗本鉄工所製)が挙げられる。
以下では、粉砕機2が、連続的に内部空間に解砕エアを供給され、これによって生じさせた旋回流中で解砕を実現するものであって、粉砕機供給口21から供給エアと別の経路から凝集銀粉を粉砕機2の内部空間に供給する気流式の粉砕機である場合を例示して説明する。
凝集銀粉と供給エアとは、粉砕機2の排気が温度30℃以上、且つ、容積絶対湿度が20g/m以上となる比率に調整されて粉砕機2に供給される。容積絶対湿度が30g/m以上とすることも好ましい。以下では、容積絶対湿度を、単に絶対湿度と称する。粉砕機2の排気の温度および絶対湿度は、例えば温度湿度計26を用いて連結管23内の温度および湿度(相対湿度)を測定することにより求めることができる。
分級機3は、解砕工程後の銀粉から粗大粒(粗粉)又は微粉をより分けて除去(いわゆる分級)する分級工程を実現する風力分級機である。以下では、分級機3が、粗粉をより分けて除去する場合を例示して説明する。
分級機3としては、気流の供給又は吸引によって生じさせた旋回流による遠心力と遠心力に逆らう方向に流れる気流の力とのバランスで分級する分級機構を有するものを例示できる。また、回転ロータによって生じさせた遠心力と遠心力に逆らう方向に流れる気流の力とのバランスで分級する分級機構を有するものを例示できる。具体例を挙げると、高速空気流の供給により生じさせた旋回流による遠心力を利用した分級を実現するエアロファインクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)や回転ロータによって生じさせた旋回流による遠心力を利用したターボクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)などを例示できる。
以下では、分級機3が、回転ロータによって生じさせた旋回流による遠心力と、粉砕機2の排気又は当該排気とは別の気流(例えば、外気)が当該遠心力に逆らって吸引されて気流分級機排気口39へ向かう際の気流の力とのバランスで分級する分級機構を有する風力分級機である場合を例示して説明する。ここでは、粉砕機2の排気は解砕工程を経た銀粉とともに分級機供給口31に供給され、前記別の気流は粉砕機2の排気とは別の経路で分級機3に吸引される気体により生じるようにすることができる。なお、分級機3が吸引する外気は、絶対湿度15g/m3未満であることが好ましく、絶対湿度12g/m3以下であることがさらに好ましい。分級機3が吸引する外気は、温度が30℃未満、且つ、相対湿度が50%未満としてもよく、相対湿度は、40%以下としてもよい。
分級機3には、解砕工程後の銀粉(粉砕機2で解砕された銀粉)と、粉砕機2の排気とが供給される。分級機3の分級機供給口31は、粉砕機2の粉砕機排気口29と連結管23で接続されているとよい。これにより、解砕工程後の銀粉の全てと、粉砕機2の排気の全てとは、連結管23及び分級機供給口31を介して分級機3に供給されるようになる。つまり、連結管23では、粉砕機2の排気の気流による解砕工程後の銀粉の空気輸送が実現される。
プラント100では、連結管23を通流する粉砕機2の排気は、その温度が30℃以上、且つ、絶対湿度が20g/m以上となるように制御する。これにより、乾燥工程と解砕工程の一体化による工程の簡略化が出来ると共に、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるような導電性ペーストを調製することができる銀粉の製造方法を実現することができる。
また、連結管23を通流する粉砕機2の排気が、温度が30℃以上、且つ、絶対湿度が20g/m以上なるように制御されることで、分級機供給口31では湿り気のある気体であるが、分級工程が進むにつれて外気が混ざることで銀粉を運搬する気体の水分量が徐々に減っていくことになる。このような運搬気体の水分量の変化と共に分級が行われる。一般に、気体中に水分がある方が粒子は凝集しやすいことから、凝集しやすい銀粒子は分級初期において粗粉として排除しやすくなる。すなわち、乾燥状態の銀粉を乾燥空気で分級する場合に比べて、凝集のしやすさによる銀粒子の選別を行うことができる。
分級機3に供給された解砕工程後の銀粉の内、粗粉は、粗粉排出口35から排出される。分級機3に供給された解砕工程後の銀粉の内の粗粉以外は、分級機3の排気と共に分級機3の分級機排気口39から排出されて、空気輸送によりサイクロン入口41からサイクロン4に供給(吸引)される。
サイクロン4では、分級機3から供給された銀粉を捕集機で捕集する捕集工程が実現される。この際、微細粒子が銀粉から取り除かれる。サイクロン4では、例えば下部の回収ポット49などに銀粉が回収される。サイクロン4で回収される銀粉が本実施形態に係る銀粉である。
凝集銀粉は、粉砕機2での解砕、分級機3での分級及びサイクロン4での捕集の過程における固気接触により、解砕と共に乾燥が進行する。これにより、サイクロン4で回収される銀粉は、凝集銀粉よりも乾燥したものとなる。プラント100では、80℃以上180℃以下に加熱された圧縮空気が粉砕機2の内部空間に供給されることにより、粉砕機2、分級機3及びサイクロン4で銀粉の乾燥が進行し、サイクロン4で回収される銀粉が、更なる仕上げ乾燥が不要な程度まで十分に乾燥したもの(例えば、銀粉の水分量が0.1質量%以下)となる。
サイクロン4の排気は集塵機5を介してブロア6に吸引されてプラント100の系外に排気される。集塵機5ではサイクロン4の排気が濾過され、サイクロン4で捕集されなかった微細な銀粉が回収される。
本実施形態に係る銀粉の製造方法は、以上のようにして行われる。
本発明の銀粉について、以下、説明する。
本発明の銀粉は、レーザー回折式粒度分布測定における体積基準で求めた粒度分布における、粒子径の小さい側から累積した累積10%径(μm)、累積50%径(μm)及び累積90%径(μm)の値をそれぞれD10、D50及びD90とし、前記D90から前記D10を差し引いた差分値を前記D50で割った値が1.0以下であることが好ましい。この値が1.0を超える場合には、銀粉をペースト化し焼成して得られる配線パターンについて、所望の線幅と高さの配線パターンを得にくくなることがある。なお、前記D90から前記D10を差し引いた差分値は、0.1μm以上、4.0μmとすることができる。
銀粉を構成する銀粒子は、銀粒子内に閉じた空隙を有していることが好ましい。これにより、配線パターンを得るための焼成温度を低くすることが可能になる。
銀粉を構成する銀粒子の表面の500nm×500nm範囲の面粗さ測定における算術平均粗さSa(nm)は、9nm以上であることが好ましく、10nm以上がさらに好ましい。Saが9nm未満である場合には、銀粉をペースト化し焼成して得られる配線パターンについて、所望の線幅と高さの配線パターンを得にくくなる場合がある。Saが大きすぎる場合には、ペースト化したときの粘度が高くなりすぎる恐れがあり、Saは40nm以下とすることができる。
銀粉のBET1点法による測定される比表面積(m/g)を用いて、真密度を9.7g/cmとして下記式(1)で計算されるBET径と、銀粉を構成する銀粒子の表面の500nm×500nm範囲の面粗さ測定における算術平均粗さSa(nm)において、前記算術平均粗さSaに前記BET径を乗じたSa×BET径の値が13000nm以上であることが好ましく、14000nm以上であることがさらに好ましい。この範囲にすることで、BET径の大きさに関わらず銀粉をペースト化し焼成して得られる配線パターンにおける線幅を従来技術と比較して狭くすることができる。
BET径=6/比表面積/真密度・・・式(1)
銀粉は、前記Saに前記D50を乗じたSa×D50の値が17000nm以上であることが好ましく、18500nm以上であることがさらに好ましい。この範囲にすることで、D50の大きさに関わらず銀粉をペースト化し焼成して得られる配線パターンにおける線幅を従来技術と比較して狭くすることができる。
銀粉の前記D50は、0.4μm以上、4.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましく、1.0μm以上2.5μm以下であることが一層好ましい。銀粉のD50が4.0μmを超えると細い幅の配線パターンを得にくくなることがある。銀粉のD50が、0.4μm未満の場合には、ペースト化する際にペーストの粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなることがある。同様の理由で、前記D90は、0.45μm以上、7.0μm以下であることが好ましく前記D10は、0.1μm以上、3.8μm以下であることが好ましい。
銀粉の前記BET径は、0.3μm以上3.5μm以下であることが好ましく、0.8μm以上3.0μm以下であることがさらに好ましく、0.8μm以上2.5μm以下であることが一層好ましい。銀粉のBET径が3.5μmを超えると細い幅の配線パターンを得にくくなることがある。銀粉のBET径が、0.3μm未満の場合には、ペースト化する際にペーストの粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなることがある。
銀粉の前記BET径と前記D50の比である式(2)で算出される値は、1.8以下であることが好ましく、1.6以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。この値が1.8を超える場合には、銀粉中の銀粒子の凝集の程度が強く、所望の線幅と高さの配線パターン、特に細い幅の配線パターンを得にくくなることがある。
D50/BET径・・・式(2)
銀粉の水分量は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下が好ましく、0.01質量%以下が一層好ましい。銀粉の水分量が、0.1質量%を超える場合には、ペースト中で銀粉が凝集して粘度が上昇することや、銀粉が凝集して印刷版が目詰まりして断線する恐れがある。
本発明の導電性ペーストは、本発明の銀粉を少なくとも含み、任意に、有機バインダ及び溶剤を含有することができる。
有機バインダは、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、セルロース系樹脂(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の任意の比率での組み合わせでもよい。
溶剤は、特に限定されず、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、テキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶剤;ブチルカルビトールアセテート、酢酸エチル等のエステル系溶剤;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;グリセリン等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の任意の比率での組み合わせでもよい。
導電性ペースト中の本発明の銀粉の含有量は、80質量%以上とすることができ、好ましくは85質量%以上であり、また、95質量%以下とすることができ、好ましくは90質量%以下である。
導電性ペースト中の有機バインダの含有量は、0.1質量%以上とすることができ、好ましくは0.2質量%以上であり、また、0.4質量%以下とすることができ、好ましくは0.3質量%以下である。
導電性ペースト中の溶剤の含有量は、6質量%以上とすることができ、好ましくは7質量%以上であり、また、20質量%以下とすることができ、好ましくは15質量%以下である。
導電性ペーストは、任意成分として、ガラスフリット、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、スリップ剤等を含有することができる。太陽電池の電極の製造に用いられる導電性ペーストは、ガラスフリットを含有することが好ましく、例えば、Pb-Te-Bi系、Pb-Si-B系等のガラスフリットが挙げられる。
導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、本発明の球状銀粉、有機バインダ、溶剤及び場合により任意成分を混合する方法が挙げられる。混合の方法は、特に限定されず、例えば、自公転式攪拌機、超音波分散、ディスパー、3本ロールミル、ボールミル、ビーズミル、2軸ニーダー等を用いることができる。
本発明の導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、フォトリソグラフィ法等の印刷、ディッピング等により、基板上に塗布し、塗膜を形成することができる。レジストを利用したフォトリソグラフィ等により、塗膜を所定パターン形状としてもよい。
塗膜を焼成して導電膜を形成することができる。焼成は、大気雰囲気下で行っても、窒素等の非酸化性雰囲気下で行ってもよい。塗膜の焼成温度を600℃以上800℃以下とすることができ、好ましくは690℃以上740℃以下である。焼成時間は、20秒以上1時間以下とすることができ、好ましくは40秒以上2分以下である。
以下では、本実施形態に係る銀粉の製造方法及び当該製造方法において製造される銀粉の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1にかかる銀粉は、以下のようにして製造した。
プラント100に供する凝集銀粉は以下のようにして製造した。銀イオン水溶液として銀を47.5kg含む硝酸銀水溶液2955kgに、26wt%のアンモニア水溶液27.74kgを加えて、液温を28.3℃とした。さらに還元剤として37wt%ホルマリン水溶液154.6kgを加え十分に撹拌し、銀粉を含むスラリーを得た。
さらに、得られたスラリーに、純水と0.54kgのステアリン酸エマルションを含む液体を5.0kg加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、加圧ろ過して銀粉(凝集銀粉)を得た。得られた銀粉の銀微粒子(原料粒子)は、粒子断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、内部に閉じた空隙を有していた。凝集銀粉の水分量(乾燥減量)は、10.02wt%であった。
更に凝集銀粉を上述のプラント100で解砕及び乾燥し、サイクロン4で捕集した銀粉を更に目開き40μmの篩で篩処理し、当該篩を通過した銀粉を実施例1に係る銀粉とした。実施例1、2に係る銀粉の粒子断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、内部に閉じた空隙を有していた。
表1には、実施例1に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。後述の実施例2、実施例3、比較例1、比較例2及び参考例1についても併せて示す。ここで供給エアBは粉砕機下部の噴射ノズルに供給されるエア、供給エアAは粉砕機上部の噴射ノズルに供給されるエアである。
表1中、「環境」の項目には、製造時におけるプラント100周囲の雰囲気の気温(℃)及び相対湿度(%)を示している。後述する分級機3が吸い込む外気の気温と相対湿度である。
また、表1中、「凝集銀粉水分量」の項目には、上述の凝集銀粉の水分量(wt%)を示している。
また、表1中、「供給機」の項目には、供給機1から粉砕機2へ凝集銀粉を供給した際の供給速度(kg/min)を示している。また、「粉砕機」の項目には、粉砕機2での解砕条件として、粉砕機2に供給した供給エアの総エア量(m/min)、各噴射ノズルに供給された供給エアの供給量(m/min)及びその圧力(MPa)、および、温度(℃)を示している。なお、総エア量は、ここでは粉砕機にある上部および下部の噴射ノズルに供給される供給エアの総量である。なお、総エア量、各噴射ノズルに供給された供給エアの供給量は、加熱前の値であり、供給路に設置した流量計27により測定される値であり、1気圧0℃における値(ノルマル換算値)を示している。表1中、粉砕機・温度の欄の値は、加熱器22の出口温度であり、加熱後、粉砕機に供給される前の供給エアの温度を示している。
以下の説明では、供給エアA及び供給エアBの温度を80℃以上とした場合を、プラント100で乾燥処理を行った場合として扱う。実施例1では、表1に示すように供給エアA及び供給エアBの温度が120℃とされているため、プラント100で乾燥処理が行われている。
また、表1中、「粉砕機排気」の項目には、粉砕機2の排気の温度(℃)、当該排気の相対湿度(%)及び当該排気の絶対湿度(g/m)を示している。
また、表1中、「分級機」の項目には、分級機3の条件として、粉砕機2の排気とは別に分級機3に吸引される外気の吸込風量(m/min)を示している。なお、吸込風量は、ノルマル流量を示している。
また、表1中、「ブロア」の項目の排気風量には、ブロア6における排気風量(m/min)の設定値を示している。なお、排気風量は、ノルマル流量を示している。
ここで、表1における、分級機3に吸引される外気の吸込風量は実測値ではなく、ブロア6の排気風量から粉砕機2に供給した総エア量を差し引いて求めた計算値である。
(実施例2)
実施例2にかかる銀粉は、実施例1と同様にして製造した凝集銀粉(水分量:10.02wt%)をプラント100に供し、実施例1とはプラント100の運転条件を変更して解砕及び乾燥し、実施例1と同様にサイクロン4で捕集した銀粉を目開き40μmの篩で篩処理して当該篩を通過した銀粉を実施例2に係る銀粉とした。表1には、実施例2に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。実施例2では、表1に示すように供給エアA及び供給エアBの温度が130℃とされているため、プラント100で乾燥処理が行われている。
(比較例1)
比較例1にかかる銀粉は、上記実施例とは異なり、プラント100での乾燥処理を行わずに製造した。すなわち比較例1にかかる銀粉は、実施例1と同様にして製造した凝集銀粉を、実施例1とは異なり、真空回転乾燥機で乾燥処理した後、ヘンシェル型ミキサで撹拌して荒く解砕し、荒く解砕された凝集している銀粉(水分量:0.01wt%)を実施例1と同様にプラント100に供し、実施例1とはプラント100の運転条件を変更して解砕しサイクロン4で捕集した銀粉を比較例1に係る銀粉とした。表1には、比較例1に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。比較例1では、表1に示すように供給エアA及び供給エアBの温度が16℃とされているため、上述の如くプラント100で乾燥処理が行われていない。また、分級機に供給される粉砕機の排気であるエアの絶対湿度が低くなっている。
(参考例1)
参考例1にかかる銀粉は、実施例1とは異なり、プラント100で2回の処理を行ったものである。すなわち、実施例1と同様にして製造した凝集銀粉(水分量:10.40wt%)をプラント100に供し、実施例1とはプラント100の運転条件を変更して解砕及び乾燥し(1回目)、実施例1と同様にサイクロン4で捕集した銀粉(水分量:0.01wt%)を再度プラント100に供し(2回目)、再びサイクロン4で捕集した銀粉を目開き40μmの篩で篩処理して当該篩を通過した銀粉を参考例1に係る銀粉とした。
表1には、参考例1に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。なお、表1では、2回目にプラント100に供された銀粉(1回目の処理にてサイクロン4で捕集した銀粉)の水分量を、「凝集銀粉水分量」の項目に記載している。表1中、「参考例1(1回目)」は、プラント100における、1回目の処理時の運転条件を示す。また、「参考例1(2回目)」は、プラント100における、2回目の処理時の運転条件を示す。参考例1では、1回目の処理時にプラント100で乾燥処理を行い(供給エアA及び供給エアBの温度が110℃)、2回目の処理時にはプラント100で乾燥処理を行っていない(供給エアA及び供給エアBの温度が13℃)。
次に、上記の実施例1、2、比較例1及び参考例1において用いた凝集銀粉とは異なる凝集銀粉を用い、さらに、プラント100の運転条件も変更して、得られる銀粉を確認した。
(実施例3)
実施例3にかかる銀粉は、以下のようにして製造した。
まず、プラント100に供する凝集銀粉は以下のようにして製造した。銀イオン水溶液として銀を38.9kg含む硝酸銀水溶液2630kgに、26wt%のアンモニア水溶液35.52kgを加えて、液温を32.0℃とした。さらに還元剤として37wt%ホルマリン水溶液171.2kgを加え十分に撹拌し、銀粉を含むスラリーを得た。
さらに、得られたスラリーに、4.05kgのステアリン酸エマルションを加えて銀のスラリーを得た。この銀のスラリーをろ過、水洗した後、加圧ろ過して銀粉(凝集銀粉)を得た。得られた銀粉の銀微粒子(原料粒子)は、粒子断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、内部に閉じた空隙を有していた。凝集銀粉の水分量(乾燥減量)は、7.83wt%であった。
更に凝集銀粉をプラント100で解砕及び乾燥し、サイクロン4で捕集した銀粉を更に目開き40μmの篩で篩処理し、当該篩を通過した銀粉を実施例3に係る銀粉とした。実施例3に係る銀粉の粒子断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、内部に閉じた空隙を有していた。
表1には、実施例3に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。実施例3では、表1に示すように供給エアA及び供給エアBの温度が150℃とされているため、プラント100で乾燥処理が行われている。
(比較例2)
比較例2にかかる銀粉は、比較例1と同じく、プラント100での乾燥処理を行わずに製造した。すなわち比較例2にかかる銀粉は、実施例3と同様にして製造した凝集銀粉を、実施例3とは異なり、真空回転乾燥機で乾燥処理した後、ヘンシェル型ミキサで撹拌して荒く解砕し、荒く解砕された凝集している銀粉(水分量:0.01wt%)を実施例3と同様にプラント100に供し、実施例3とはプラント100の運転条件を変更して解砕しサイクロン4で捕集した銀粉を比較例2に係る銀粉とした。表1には、比較例2に係る銀粉を製造した際のプラント100の運転条件を示している。比較例2では、表1に示すように供給エアA及び供給エアBの温度が14℃とされているため、上述の如くプラント100で乾燥処理が行われていない。また、分級機に供給される粉砕機の排気であるエアの絶対湿度が低くなっている。
表2、表3には、実施例、比較例及び参考例に係る銀粉の評価値を示す。表2、表3に示す各評価値について以下説明する。
表2中、「SSA」(m/g)は銀粉の比表面積である。銀粉の比表面積は、BET法で求めたBET比表面積を採用した。BET比表面積は、BET比表面積測定装置(株式会社マウンテック製のMacsorb HM-model 1210)を使用して、測定装置内に60℃で10分間He-N混合ガス(窒素30%)を流して脱気した後、BET1点法により測定した。
表2中、「BET径」(μm)は、銀粉のBET比表面積(m/g)と銀粉の真密度(本実施形態では真密度として9.7g/cmを使用)とに基づいて次式(1)により求めた比表面積径である。
BET径(μm)=6/比表面積/真密度・・・式(1)
表2中、「D10」(μm)、「D50」(μm)及び「D90」(μm)は、レーザー回折式粒度分布測定における体積基準で求めた銀粉の粒度分布に関し、粒子径の小さい側から累積した累積10%径(μm)、累積50%径(μm)及び累積90%径(μm)の値を示している。なお、体積基準における累積50%径とはメジアン径のことである。以下では累積10%径(μm)、累積50%径(μm)及び累積90%径(μm)の値をそれぞれD10、D50及びD90と記載する。
銀粉の粒度分布としては、レーザー回折式粒度分布測定を実現するレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクトロラックMT-3300 EXII)で測定した粒度分布を採用した。
上記レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置での粒度分布の測定は、以下のようにして行った。まず、銀粉0.1gをイソプロピルアルコール(IPA)40mLに加えて分散した。分散には、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、装置名:US-150T;19.5kHz、チップ径20mm)を用いた。分散時間は、2分間とした。そして、分散後の試料を上記レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置に供し、付属の解析ソフトにより粒度分布を求めた。
表2中、「(D90-D10)/D50」は、D90からD10を差し引いて差分値を求め、当該差分値をD50で割った値を示している。この値は、粒度分布の広がりの程度(粒度分布のシャープさ)を示しており、値が大きいほど粒度分布がブロードであり、値が小さいほど粒度分布がシャープである。以下では、「(D90-D10)/D50」をシャープさの値と称する場合がある。
表2中の「銀粉水分量」とは、分級工程を経て得られた銀粉の水分量である。表1中、「凝集銀粉水分量」(%)及び表2中の「銀粉水分量」(%)は、以下のようにして求めた。試料として凝集銀粉又は銀粉10gを秤量ビンに取り、ふたをしない状態で90℃で3時間乾燥させて、40分以上放冷した後の試料の重量の減少量を乾燥前の試料の重量(10g)で割って得られた値に100を乗じて求めた値である。
表2中、「強熱減量」(%)は、以下のようにして求めた値を採用した。まず、銀粉3gを秤量して磁性るつぼに入れ、800℃まで加熱する。そして恒量となるのに十分な加熱をするために800℃で30分間加熱する。その後、銀粉を冷却し、秤量して加熱後の質量(w)を求める。強熱減量(%)は、この質量(w)に基づいて、次式(2)により求めた値である。
強熱減量(%)=(3-w)/3×100・・・式(2)
表2中、「TAP」(g/mL)は、銀粉のタップ密度である。銀粉のタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学社製のカサ比重測定装置SS-DA-2)を使用して求めた値を採用した。タップ密度の測定は、以下のようにして行った。銀粉試料30gを秤量して20mLの試験管に入れ、落差20mmで1000回タッピングした。そして、タッピング後の試料容積(cm)を求めた。タップ密度(g/cm)は、このタッピング後の試料容積(cm)に基づいて、次式(3)により求めた値である。
タップ密度(g/cm)=30(g)/タッピング後の試料容積(cm)・・・式(3)
表2中、「Sa」(nm)は、銀粒子表面の面粗さ測定における、ISO25178に規定される算術平均粗さである。また、表3中、「Sz」、「Sp」、「Sv」及び「Sq」は、同様に、ISO25178に規定される最大高さ、最大山高さ、最大谷深さ及び二乗平均平方根高さである。これらの値は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)による形状像に基づいて求めた。具体的には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のSPM(Nano Cute)を使用し、カンチレバーには株式会社日立ハイテクフィールディング製SI-DF40P2を使用した。測定モードはタッピングモード(DFM)を選択した。詳述すると、まず、Qカーブ測定を行いカンチレバーの調整を行った。このとき、共振周波数が200Hzから500Hzの範囲であることと、Q値が100から1000の範囲であることを確認した。カンチレバーの目標振動振幅は1Vとした。次に、SPMで視野範囲5μmの銀微粒子の形状像及び誤差信号像を取得した。このとき、振幅減衰率は-0.1から-0.2の範囲に自動で設定される。また、走査周波数は0.6Hzから1Hzの範囲になるように設定した。フィードバック制御のパラメータは自動設定とした。形状像取得時の画素数は256×256とした。そして、形状像にて粗さを解析したい範囲を指定したうえで、3次の傾き補正とフラット処理を実行して粒子の曲面に由来する成分を除去することで、ISO25178に規定される粒子表面の算術平均粗さSa及びSz、Sp、Sv、Sqの各値を自動算出した。このとき、カットオフ処理は行わなかった。解析する範囲は、一辺が500nmの正方形の範囲(以下、500nm×500nm範囲と記載する)とした。解析する際には、10個の粒子を無作為に選択して解析を行い、それらの平均値を算出した。
表2中、「Sa×D50」(nm)はSaにD50を乗じて求めた値である。
表2中、「Sa×BET径」(nm)はSaにBET径を乗じて求めた値である。
図2から図5および図7、図8にはそれぞれ、実施例1、実施例2、比較例1、参考例1および実施例3、比較例2の銀粉のSEM像(20000倍)を示す。実施例1~3のSEM像では、銀粒子表面に凹凸があることがわかる。実施例1~3のSEM像で観察された銀粒子表面に凹凸は、湿式反応により生成された銀粒子表面の凹凸が解砕工程、分級工程で十分に除去されず、本発明の銀粉を構成する銀粒子の表面に比較的大きく残留していることにより銀粒子表面の凹凸が比較的大きくなっていると推察される。比較例1,参考例1,比較例2のSEM像で観察された銀粒子の表面にある凹凸は、実施例のそれと比較して小さい。これは、解砕工程、分級工程の銀粒子を取り巻く雰囲気の水分量が少ないために、銀粒子表面の凹凸が解砕工程、分級工程で十分に除去された結果、銀粒子表面に凹凸が実施例と比較して小さくなったことによるものと推察される。実施例、比較例、参考例の銀粒子表面の凹凸の程度は、それらのSaの値に反映されている。
以下では、実施例、比較例及び参考例の銀粉を用いて導電性ペーストを調製し、更に細線評価(EL)を行った。
実施例1~3、比較例1、2及び参考例1の銀粉を使用して、以下のようにして導電性ペーストを調製した。表4に示す組成比とした表4に示す物質に対して、以下の処理を行うことにより、導電性ペーストを得た。プロペラレス自公転式撹拌脱泡装置(株式会社シンキ―製のAR310)を用いて1400rpmで30秒撹拌し混合した後、3本ロール(EXAKT社製の80S)を用いて、ロールギャップを100μmから20μmまで通過させて混練した。
ペーストの粘度は、BROOKFIELD社製の粘度計5XHBDV-IIIUCを用いて計測した。計測条件は以下のようにした。コーンスピンドルは、CP-52を用いた。ペースト温度は25℃とした。回転数及び計測時間は、1rpm(ずり速度2sec-1)で5分間及び5rpm(ずり速度10sec-1)で1分間とした。
細線評価は、導電パターンを形成して評価した。導電パターンの形成は以下のように行った。まず、太陽電池用シリコン基板(100Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT-320TV)を用いて、基板裏面にアルミニウムペースト(Rutech製28D22G-2)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。次に、上記ペーストを500メッシュにてろ過した後、基板表面側に、図6に示すパターンで、14から26μmの設計線幅(スクリーン開口幅)の電極(フィンガー電極)と設計線幅1mmの電極(バスバー電極)をスキージ速度350mm/secにて印刷(塗布)を行った。印刷されたペーストを200℃で10分間の熱風乾燥を行った後、高速焼成炉IR炉(日本ガイシ株式会社、高速焼成試験4室炉)を用いて、ピーク温度750℃、インアウト時間41秒の焼成を行い、導電パターンを得た。
導電パターンの線幅と高さは、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス VKX-1000)を用いて、図6の設計線幅のうち、設計線幅24μmで印刷した電極について計測を行った。対物レンズ20倍で撮影(1視野辺りの電極長さ約500μm)し、1視野において、間隔0.687μmで601枚の断面形状を測定(電極長さ約400μmに相当)し、それらの平均断面形状を算出した。平均断面形状について、基板の高さをベースラインとして、ベースラインからの立ち上がりの距離を線幅、最高点とベースラインの高さの差を高さとして計測し、1視野における線幅・高さを得た。設計線幅24μmの電極10本のうち、左から4本目、6本目、8本目の3本について、それぞれ電極上端から5cm、10cmの2か所、計6か所を撮影。6視野の線幅及び高さについて平均を算出した。
表5には、実施例、比較例及び参考例の銀粉を用いたペーストによる細線評価における電極の高さと線幅とを示す。また、実施例、比較例及び参考例の銀粉を用いたペーストの粘度を示す。
表5に示されるように、同じ凝集銀粉を元に製造した比較例1、参考例1、実施例1、2において、比較例1、参考例1に比べて実施例1、2における銀粉を用いたペーストは、細線評価においては設計線幅により近い導電パターンの線幅を実現しており、好ましい特性を有していることがわかる。また、実施例1,2にかかわる銀粉を用いたペーストでは設計線幅により近い導電パターンの線幅を実現しつつ、高さを線幅で割ったアスペクト比が大きくなるため、好ましい特性を有していることがわかる。また、同じ凝集銀粉を元に製造した、比較例2と実施例3においても、比較例2に比べて実施例3における銀粉を用いたペーストは、設計線幅により近い導電パターンの線幅を実現しつつ、アスペクト比が大きくなるため、好ましい特性を有していることがわかる。
上記細線評価の結果より、実施例に係る銀粉は、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるようなペーストを調製することができる銀粉であると評価することができる。
表2より、実施例、比較例及び参考例のように同じ凝集銀粉に対して表1のようにプラント100の運転条件を変更した場合、実施例の銀粉の方が比較例又は参考例の銀粉に比べて表面に大きな凹凸を有し、Saの値が大きくなることが分かる。
また、表2より、比較例1に比べて実施例1、2では、連結管23を通流する粉砕機2の排気が、温度が30℃以上、且つ、絶対湿度が20g/m3以上なるように制御されることで、分級機による分級性能が向上しており、実施例における(D90-D10)/D50は、比較例1に比べて小さくなっていることが分かる。実施例1において作製した凝集銀粉とは異なる凝集銀粉である実施例3においても、同様に、実施例3における(D90-D10)/D50は、比較例2に比べて小さくなっていた。
このように、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるようなペーストを調製するためには、銀粒子の表面に適度な凹凸を有する銀粉を用いる必要がある。これは、図2から図5に示す実施例、比較例及び参考例の銀粉のSEM像からも明らかである。すなわち、実施例に係る銀粉(図2、図3、図7参照)は、その球状の銀粒子の表面に、適度な凹凸が観察できる。これに対し、比較例、参考例に係る銀粉(図4、図5、図8参照)は、実施例に係る銀粉と比べて、その銀粒子の表面の凹凸が小さく、銀粒子の表面が全体的に滑らかである。このように本実施形態に係る製造方法によれば、銀粒子表面の平滑化を抑制して所望の線幅と高さの配線パターンが得られるペーストの調製に好適な銀粒子を得られるのである。
表1に示されるプラント100の運転条件で見ると、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるようなペーストを調製することができる銀粉の製造方法は、比較例又は参考例の如く予め凝集銀粉を乾燥させてからプラント100で乾燥以外の処理を行う製造方法ではなく、実施例の如くプラント100で凝集銀粉を解砕、分級及び乾燥させて銀粉を得る製造方法であることがわかる。そして、プラント100で凝集銀粉を乾燥させて乾燥させた銀粉を得るにあたっては、解砕工程では、80℃以上180℃以下の温度の圧縮空気が粉砕機2に供給されることが必要であり、また、粉砕機2の排気が分級機3に供給されており、当該排気が、温度が30℃以上、且つ、相対湿度が30%であることが必要であると考えられる。
以上のようにして、所望の線幅と高さの配線パターンが得られるような導電性ペーストを調製することができる銀粉の製造方法及び当該銀粉を提供することができる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、銀粉の製造方法及び銀粉に適用できる。
1 :供給機
100 :プラント
2 :粉砕機(気流式粉砕機)
21 :粉砕機供給口
22 :加熱器
23 :連結管
24 :エアポンプ
26 :温度湿度計
27 :流量計
29 :粉砕機排気口
3 :分級機(風力分級機)
31 :分級機供給口
35 :粗粉排出口
39 :分級機排気口
4 :サイクロン
41 :サイクロン入口
49 :回収ポット
5 :集塵機
6 :ブロア

Claims (4)

  1. 凝集銀粉を気流式粉砕機で解砕する解砕工程と、
    前記解砕工程後の銀粉を風力分級機で分級する分級工程と、を含み、
    前記凝集銀粉は、水分量が2wt%以上20wt%以下であり、
    前記解砕工程では、80℃以上180℃以下の温度の圧縮空気を供給エアとして前記気流式粉砕機に供給し、
    前記分級工程では、前記気流式粉砕機の排気と前記解砕工程後の銀粉とが前記風力分級機に供給されており、
    前記排気は、温度が30℃以上、且つ、容積絶対湿度が20g/m3以上である銀粉の製造方法。
  2. 前記風力分級機と前記気流式粉砕機とを連結管で接続し、当該連結管を介して前記気流式粉砕機の排気と前記解砕工程後の銀粉とを前記気流式粉砕機から前記風力分級機に供給する請求項1に記載の銀粉の製造方法。
  3. 前記分級工程後の銀粉を捕集機で捕集する捕集工程を更に含み、
    前記捕集工程では、前記風力分級機の排気と前記分級工程後の銀粉を前記捕集機に供給する、請求項1又は2に記載の銀粉の製造方法。
  4. 前記分級工程では、前記風力分級機に外気を吸引させながら分級する請求項1又は2に記載の銀粉の製造方法。
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