JP4178374B2 - 銀コートフレーク銅粉及びその銀コートフレーク銅粉の製造方法並びにその銀コートフレーク銅粉を用いた導電性ペースト - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、銀コートフレーク銅粉、その銀コートフレーク銅粉の製造方法、その銀コートフレーク銅粉を用いた導電性ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、銅粉は略球形の形状をしており、銅ペーストにして導体形成を行った場合には、その導体の抵抗を上昇させることなく、しかも同時に、プリント配線板のビアホールの穴埋め等の場合には穴埋め性の向上、形成する導体の形状の精度等も望まれてきた。
【0003】
これらの市場要求に応えるため、銅ペーストの製造に用いる銅粉に、略球形の粉粒の銅粉を用いるのではなく、フレーク状の粉粒で構成された銅粉(本件明細書においては、単に「フレーク銅粉」と称する。)を用いることが検討されてきた。フレーク銅粉を用いることで、鱗片化した形状であるが故に、粉粒の比表面積が大きくなり、粉粒同士の接触面積が大きくなるため、電気的抵抗を減少させ、導体形状の精度を上げるには非常に有効な方法であった。ところが、従来のフレーク銅粉は、均一な粒径や厚さを備えるものでもなく、微細な粉粒の製品は存在せず、大きな粗粒がある一定の割合で含まれ、亀裂が見られるものもあるという品質のもので、非常に広い粒度分布を持つ製品であった。
【0004】
このような品質のフレーク銅粉では、上述した意味での電気的抵抗改善という点でのある程度の目標は達成できても安定性に欠け、銅ペーストに加工して形成する導体回路のファインパターン化、プリント配線板のビアホールの充填性を良好にすることが出来ないと言うのが現実であった。従って、従来のフレーク銅粉を用いた銅ペーストの用途は、粗いパターンの導体回路の形成に用いる等に限定されてきた。
【0005】
これらのことから分かるように、フレーク銅粉の用途を飛躍的に高めるためには、銅ペースト用に加工して、導体形成に用いた際に、導体の電気的抵抗を安定して低くすることが重要で、しかも、充填性に優れるという特性を同時に満足させる必要があることになる。従って、本件発明者等は上述した問題点を解決するため、従来のフレーク銅粉の粉粒のように鱗片化するレベルまで加工することなく、加工度を下げることで、粉粒自体を観察するとナゲット状に見えるフレーク銅粉を提唱してきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、市場では、電子機器等のシグナル電送速度の向上を目的として、より一層高速のシグナル伝送速度を得ることの出来る導体形成可能な導電性ペーストの供給が望まれてきた。
【0007】
このような要求に応えるためには、導電性ペーストを用いて形成した導体回路の電気抵抗が低いことが求められる。このように導体回路の低電気抵抗を達成するためには、導電性ペーストを構成する金属粉の電気抵抗が低いことが必須条件となる。また、導体回路の抵抗が低いと言うことは、近年のOA機器の問題の一つである発熱問題を解決する一助ともなるのである。
【0008】
これらのことから、市場では、本件発明者等の供給してきたフレーク銅粉を改良して、更に低抵抗の導体形成可能な製品が求められてきたのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等の提唱してきた、フレーク銅粉を基礎として、このフレーク銅粉の粉粒表面に銀コート層を形成することとしたのである。但し、この銀コート層の形成には、従来にない新たな製造方法を採用するのである。その結果、芯材となるフレーク銅粉の本来持つ、粉体特性をほぼそのまま維持することができ、導体回路のファインパターン化、プリント配線板のビアホールの充填性を良好に保つことが可能な銀コートフレーク銅粉を得ることが可能となるのである。以下に本件発明を説明する。
【0010】
まず、最初に銀コートフレーク銅粉の芯材となるフレーク銅粉に関して説明する。本件発明者等が、従来から存在するフレーク銅粉を調査した結果、そのフレーク銅粉の持つ諸特性は、表1に示す如きものとなる。ここで、D10、D50、D90及びDmaxとは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積10%、50%、90%における粒径及び最大粒径のことであり、フレーク銅粉0.1gをSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて測定したものである。
【0011】
【表1】
【0012】
この表1に示した結果の内、まず注目すべきは標準偏差SDの値である。この標準偏差SDとは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる全粒径データのバラツキを表す指標であり、この値が大きな程、バラツキが大きなものとなる。従って、ここで測定した5ロットの標準偏差SDの値は、0.343〜14.280の範囲でばらついていることが分かり、ロット間の粒径分布のバラツキが非常に大きな事が分かる。次に、変動係数であるSD/D50の値に着目すると0.55〜0.87の範囲でバラツクという結果が得られており、且つ、D90/D10で表される値が4.04〜7.61の範囲でバラツクものとなっている。更に、Dmaxの値は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られた最大粒径を示すものであり、最大104.70μmという大きな粗粒が含まれている事も分かる。この従来のフレーク銅粉を、走査電子顕微鏡で観察したのが図3である。この図3から分かるように、従来の銅粉は、その粉粒の厚さが薄くなり、その厚さにも均一性が無いものであり、粉粒としての形状自体にも安定性が無いものである。
【0013】
これらの粉体特性を持つ従来のフレーク銅粉を用いて、銅ペーストを製造し、セラミックコンデンサの外部電極を製造した場合には形状精度がバラツキ、プリント配線板のビアホールの充填を行うと充填性及び形成した導体の電気抵抗にバラツキが生ずる事になるのである。
【0014】
そして、本件発明者等が鋭意研究した結果、フレーク銅粉の持つ粉体としての特性を、請求項に記載したように、フレーク銅粉として、粒径が10μm以下であって、フレーク銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D10、D50、D90、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.5以下であり、且つ、D90/D10表される値が4.0以下のものを採用すれば、銀コートフレーク銅粉に加工し、導電性ペーストにして導体回路形成を行った場合にも、その導体の電気抵抗を著しく低減させ、同時に、プリント配線板のビアホールの穴埋め性を向上させ、形成する導体の形状の精度も著しく改善出来ることが判明したのである。この本件発明で用いるフレーク銅粉を、走査型電子顕微鏡で観察したのが、図2である。ここで、図2と図3とを比較することで、明らかに、図3に示す従来のフレーク銅粉に比べて、図2のフレーク銅粉の粉粒のサイズが揃い、しかも粉粒自体の厚さも均一化できていることが分かるのである。
【0015】
ここで、「粒径が10μm以下」としているのは、フレーク銅粉の粒径が10μm以下でなければ、100μm径以下のビアホール等の凹部の穴埋め性の改善が出来ないためである。そして、フレーク銅粉の粒径とは、扁平化した銅粉の粉粒を観察した際の、粉粒の長径方向の長さを意味するものとして用いており、走査型電子顕微鏡等を用いて粉粒を直接観察することにより測定するものである。
【0016】
上述した如きフレーク銅粉を安定して製造するためには、従来の製造方法を用いても製造することは出来ないのである。即ち、従来のフレーク銅粉は、ヒドラジン還元法に代表される湿式法やアトマイズ法に代表される乾式法等の手法で得られた略球形の銅粉を、直接、ボールミル、ビーズミル等の粉砕機にかけ、メディアであるボールやビーズにより銅粉の粉粒を粉砕することで、粉粒を塑性変形させ扁平化させることでフレーク状にしたものである。
【0017】
ところが、このような製造方法の場合には、当初用いる略球形の銅粉自体が、一定の凝集状態にあり、凝集状態を破壊することなく圧縮変形を行っても、粉粒同士の凝集状態が保たれたまま圧縮変形を受け、凝集状態のままのフレーク銅粉が得られ、粉粒同士が分散した状態にはならないのである。
【0018】
従って、本件発明者等は、まず略球形の状態の銅粉の凝集状態を破壊し、解粒処理を行い、その後、粉粒をフレーク状に圧縮変形する方法に想到したのである。これらに相当する製造方法が、凝集状態にある銅粉を解粒処理し、解粒処理の終了した銅粉の粉粒を高エネルギーボールミルで圧縮変形することでフレーク状にするものである。
【0019】
凝集状態にある銅粉とは、所謂ヒドラジン還元法、電解法に代表される湿式法であっても、アトマイズ法に代表される乾式法等であっても、一定の凝集状態が形成されるためこのように表現しているのである。特に、湿式法の場合には、粉粒の凝集状態の形成が起こりやすい傾向にある。即ち、一般的に湿式法による銅粉の製造は、硫酸銅溶液を出発原料として、水酸化ナトリウム溶液を用いて反応させ、酸化銅を得て、これを所謂ヒドラジン還元する等して、洗浄、濾過、乾燥することで行われる。このようにして乾燥した銅粉が得られるのであるが、このように湿式法で得られた銅粉の粉体は、一定の凝集状態にある。また、銅粉スラリーとは、ヒドラジン還元する等して銅粉が生成し、これを含有したスラリー状態になったものを言う。詳細には実施形態を通じて説明する。この凝集した状態の粉体を、一粒一粒の粉体に分離することを、本件明細書では「解粒」と称しているのである。
【0020】
単に解粒作業を行うことを目的とするのであれば、解粒の行える手段として、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置等種々の物を用いることが可能である。ところが、フレーク銅粉を用いる銅ペーストの粘度を可能な限り低減させることを考えると、銅粉の比表面積を可能な限り小さなものとすることが求められる。従って、解粒は可能であっても、解粒時に粉粒の表面に損傷を与え、その比表面積を著しく増加させるような解粒手法を採用することは困難である。
【0021】
このような認識に基づいて、本件発明者等が鋭意研究した結果、以下に述べる二つの解粒手法を採用することが好ましいと考えた。この二つの方法に共通することは、銅粉の粉粒が装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することを最小限に抑制し、凝集した粉粒同士が相互に衝突し合い、しかも、解粒が十分可能な方法である点である。即ち、装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することで粉粒の表面を傷つけ、表面粗さを増大させるものであってはならないのである。そして、十分な粉粒同士の衝突を起こさせることで、凝集状態にある粉粒を解粒し、同時に、粉粒同士の衝突による粉粒表面の平滑化の可能な手法を採用することが望ましいのである。
【0022】
例えば、解粒処理を行う一つの手法としては、凝集状態にある乾燥した銅粉を、遠心力を利用した風力サーキュレータを用いて行うことができる。ここで言う「遠心力を利用した風力サーキュレータ」とは、エアをブロワーして、凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げてサーキュレーションさせ、このときに発生する遠心力により粉粒同士を気流中で相互に衝突させ、解粒作業を行うために用いるものである。このときに、遠心力を利用した市販の風力分級器を用いることも可能である。係る場合、あくまでも分級を目的としたものではなく、風力分級器がエアをブロワーして、凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げるサーキュレータの役割を果たすのである。
【0023】
また、もう一つの解粒手法としては、凝集状態にある銅粉を含有した銅粉スラリーを、遠心力を利用した流体ミルを用いて解粒処理するのである。ここで言う「遠心力を利用した流体ミル」とは、銅粉スラリーを円周軌道を描くように高速でフローさせ、このときに発生する遠心力により凝集した粉粒同士を溶媒中で相互に衝突させ、解粒作業を行うために用いるのである。
【0024】
上述した解粒処理は、必要に応じて複数回を繰り返して行うことも可能であり、要求品質に応じて、解粒処理のレベルの任意選択が可能である。解粒処理の施された銅粉は、凝集状態が破壊され新たな粉体特性を備えることになるのである。そして、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.5以下とすることが、最も望ましいのである。ここで言う凝集度が1.5以下となると、殆ど完全な単分散の状態が確保できていると言えるためである。
【0025】
ここで用いた凝集度とは、以下のような理由から採用したものである。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではないと考えられる。殆どの銅粉を構成する粉粒は、個々の粒子が完全に分離した所謂単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集して集合した状態になっているからである。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、重量累積粒径を算出していると言えるのである。
【0026】
これに対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子が確実に捉えられることになり、反面には粉粒の凝集状態の存在を全く反映させていないことになる。
【0027】
以上のように考えると、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの銅粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。
【0028】
このとき、D50の値は、銅粉の粉粒の凝集状態が全くなくなるとすれば、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無くなった単分散粉と言えるのである。但し、現実には、凝集度が1未満の値を示す場合もある。理論的に考え真球の場合には、1未満の値にはならないのであるが、現実には、真球ではなく1未満の凝集度の値が得られることになるようである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行い、平均粒径DIAを求めたものである。
【0029】
以上のようにして解粒処理の終了した略球形の銅粉を、高エネルギーボールミルを用いて処理することで、銅粉の粉粒を圧縮変形させ、本件発明で用いるフレーク銅粉とするのである。
【0030】
ここで言う高エネルギーボールミルとは、ビーズミル、アトライター等のように銅粉を乾燥させた状態で行うか、銅粉スラリーの状態で行うかは問わず、メディアを用いて、銅粉の粉粒を圧縮して塑性変形させることのできる装置の総称として用いているものである。このようにして得られたフレーク銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D10、D50、D90、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.5以下であり、且つ、D90/D10で表される値が4.0以下となる特徴を備えるものとなるのである。但し、本件明細書の発明の対象となるフレーク銅粉は、従来にある銅粉と異なり、図2から分かるようにフレーク状と言うよりは、ナゲット状と称するのが適当であり、通常のフレーク銅粉の粉粒の平均的アスペクト比が5以上であるのに対し、当該アスペクト比で言えば3以下の値となる粉粒が主体を占めることになる。
【0031】
なお、本件明細書で言うアスペクト比とは、フレーク銅粉を構成する粉粒の厚さと前記重量累積粒径D50とで表されるアスペクト比([D50]/[厚さ])の値のことである。このアスペクト比は、フレーク銅粉の加工度を表すものであると言える。従って、本件明細書に言うアスペクト比の値が大きくなるほど、粉粒の厚さが薄くなり、粉粒内部の転位密度の上昇及び結晶粒の微細化が急激に起こり始め、抵抗の上昇を引き起こすのである。これに対し、アスペクト比の値が小さいほど、加工度が低く扁平率が低いため、粉粒同士の十分な接触界面面積が得られず、結果として抵抗を下げる事が出来なくなるのである。これらのことを考慮するに、最も良好で安定した性能を得ることの出来る範囲として、アスペクト比は1.0〜3.0未満の範囲にあることが望ましいのである。
【0032】
そして、以上に述べてきたフレーク銅粉に対する銀コートは、以下に述べるような方法を採用することが好ましいのである。即ち、フレーク銅粉を酸性溶液中に分散し、該フレーク銅粉分散液にキレート化剤を加えてフレーク銅粉スラリーを作製した後に緩衝剤を添加してpH調整を行い、該フレーク銅粉スラリーに銀イオン溶液を連続的に添加することで置換反応によりフレーク銅粉の粉粒表面へ銀コート層を形成するのである。
【0033】
この本発明に係る銀コートフレーク銅粉の製造方法によれば、フレーク銅粉表面に銀コート層を均一に被覆することが可能となり、その結果、優れた導電性を有し、低抵抗な粉体となり導体回路形成を行った場合の低電気抵抗を達成でき、同時に大気雰囲気中に長期保管した場合でも導電性の経時変化が少ない銀コートフレーク銅粉となるのである。また、置換反応を利用した従来の製造方法では、フレーク銅粉表面の銀コート層が比較的大きな析出粒子で形成されるため、被覆状態が悪く、不均一で粗い銀コート層となる傾向がある。ところが、本発明に係る製造方法によれば、非常に均一な銀層の被覆をした銀コートフレーク銅粉を製造することができるため、芯材であるフレーク銅粉の粉体特性、特に粒度分布を殆どそのまま維持することも可能となるのである。
【0034】
本件発明に係る製造方法で銀コート層を均一なものとできる理由は、銀の置換反応を行う前にフレーク銅粉を酸性溶液中に分散させ、フレーク銅粉の粉粒の表面の酸化物を確実に除去していることと、キレート化剤を加えたフレーク銅粉スラリーに緩衝剤を添加してpH調整を行い、銀イオン溶液を連続的に添加することで、銀の置換反応速度を一定することによると推測している。従来の製造方法では、酸性溶液ではなくアルカリ性溶液を使用するため、粉体として取り出す際に、溶液中に溶存している銅イオンが、水酸化物として粉粒の表面に再沈殿する可能性がある。また、置換反応の際、銀イオン溶液を一度にまとめて投入するため、銀イオン濃度がフレーク銅粉の粉粒の周辺で不均一になり、銀の被覆状態の悪い銀コートフレーク銅粉が形成されると考えられるのである。
【0035】
これに対し本件発明に係る製造方法では、▲1▼酸性溶液にフレーク銅粉を分散させることでフレーク銅粉の粉粒表面の酸化物を除去して置換反応の容易な下地を形成すること。▲2▼キレート化剤により一旦溶けだした銅イオンを錯体として安定化させ保持して粉粒表面への再沈殿を防止すること。▲3▼緩衝剤を用いてpH調整を行いつつ、銀イオンとの置換反応が均一に進行するように銀イオン溶液を連続的に添加し、銀イオンの偏在を防止している。これらの効果が相乗的に作用して、フレーク銅粉表面に極めて均一な銀コート層を形成できるのである。
【0036】
本件発明に係る製造方法で用いる酸性溶液は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれた、いずれかを用いることが好ましい。置換反応を起こさせる前にフレーク銅粉の粉粒表面の銅酸化物を確実に除去できる酸性溶液であればよいが、その選択する種類や濃度は過剰にフレーク銅粉の銅成分を溶解しないようにする必要がある。この酸性溶液のpHは、2.0〜5.0の酸性領域とすることが望ましい。pHが5.0を越えるとフレーク銅粉の酸化物を十分に溶解除去できなくなり、pHが2.0より小さくとなるとフレーク銅粉の溶解が著しくなり、フレーク銅粉自体の凝集も進行し易くなるからである。
【0037】
また、本発明の製造方法に用いるキレート化剤は、銅の錯生成定数の方が銀の錯生成定数の値よりも大きなものが好ましい。例えば、アンモニアのようなキレート化剤では、銀の錯生成定数と銅の錯生成定数とはほぼ同じであり、置換反応を阻害する銅イオンの安定化が図りにくくなると考えられる。そのため、本発明の製造方法では、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノ二酢酸から選ばれた1種又は2種以上のものを用いることが望ましく、これらによれば優先的に銅イオンの錯体を形成することになり、置換反応に供する銅をイオンとして安定的に維持することが可能となる。
【0038】
また、本発明の製造方法に用いる緩衝剤は、フタル酸塩であることのが好ましい。この緩衝剤であるフタル酸塩としては、フタル酸カリウム、フタル酸ナトリウム等が挙げられるが、このような緩衝剤を用いると本発明の製造方法における酸性溶液をpH4.0程度の酸性領域に安定的に維持することができる。
【0039】
そして、本件発明に係る銀コートフレーク銅粉の製造方法では、銀イオン溶液は、硝酸銀溶液を用いることが好ましい。本発明で用いられる銀イオン溶液は、本件発明の効果を奏する限りにおいて特に制限はないが、最も好適なものとしては硝酸銀である。この硝酸銀溶液は硝酸銀濃度20〜300g/Lの範囲であることが好ましく、フレーク銅粉スラリーに添加する速度は、200mL/min以下でゆっくりと添加することが望ましい。上記濃度範囲の硝酸銀溶液を比較的ゆっくりとした添加速度、実用的には20〜200mL/minで添加することで、フレーク銅粉表面に均一な銀コート層を被覆することが確実に行えるようになるからである。
【0040】
さらに、本件発明に係る銀コートフレーク銅粉の製造方法では、酸性溶液中にフレーク銅粉を分散した後、デカンテーション処理を行うことが好ましい。このデカンテーション処理とは傾斜法とも呼ばれるが、酸性溶液にフレーク銅粉を分散させた後、溶液を静置することでフレーク銅粉の沈降をさせた後、上澄み液を静かに傾斜して分離採取する操作のことをいうものである。これによれば、銀コートフレーク銅粉が大気と接触することがないので、銀コートフレーク銅粉表面の再酸化を防止した状態で次工程に移行することが可能となるからである。以上のようにして、製造した銀コートフレーク銅粉の走査電子顕微鏡像を示したのが図1である。この図1の銀コートフレーク銅粉の芯材となったフレーク銅粉を示したのが図2であるから、図1と図2とを比較することで、粉体の粉粒の形状が大きく変化することのないことが分かるのである。
【0041】
そして、銀コート量は、銀コートフレーク銅粉の質量を基準としたときに0.01質量%〜10.0質量%の範囲とすることが好ましい。銀の質量パーセントが0.01質量%未満であると均一に銀コートを行うことができず、芯材である銅粉の表面が酸化され易く形成した導体の導電性を阻害することになり、10.0質量%を越える銀をコートしても、それ以上に当該導電性を向上させる効果は得られず、更にコストが高くなるだけになるのである。
【0042】
以上に述べた銀コートフレーク銅粉を用いて製造した導電性ペーストは、その充填性に優れ、形成した導体の電気抵抗を低く維持できることから、多層プリント配線板の層間導体であるビアホール、スルーホール等の穴埋め用途に最適であり、また、スクリーン印刷アディティブ法による導体回路及びセラミックコンデンサの外部電極の形成に適したものとなるのである。そこで、請求項には、本件発明に係る銀コートフレーク銅粉を用いて製造した導電性銅ペーストとしているのである。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態を通じて、本件発明に関し、より詳細に説明する。
【0044】
そこで、最初に第1実施形態、第2実施形態、比較例で共通する内容となる、湿式法による銅粉及び銅粉スラリーの製造方法について説明する。ここでは、硫酸銅(五水塩)100kgを、温水に溶解させ液温60℃の200リットルの溶液とした。そして、ここに125リットルの25質量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に維持しつつ、1時間の攪拌を行い、酸化第二銅を生成した。
【0045】
酸化第二銅の生成が終了すると、液温を60℃に維持し続け、ここに濃度450g/lのグルコース水溶液80リットルを、20分かけて一定の速度で添加し、酸化第一銅スラリーを生成した。ここで、このスラリーを一旦濾過し、洗浄した後、温水を加えて320リットルの再スラリーとした。
【0046】
次に、再スラリーに、1.5kgのアミノ酢酸及び0.7kgのアラビアゴムを添加し、攪拌して、溶液温度を50℃に保持した。この状態の再スラリーに、20質量%濃度の水加ヒドラジン50リットルを、40分かけて一定の速度で添加し、酸化第一銅を還元して銅粉として、銅粉スラリーを生成した。この銅粉スラリーが、以下の第2実施形態で用いる銅粉スラリーである。
【0047】
続いて、この銅粉スラリーを濾過し、純水で十分に洗浄し、濾過して水切りを行い、乾燥して銅粉を得た。この銅粉が第1実施形態で用いる凝集状態にある乾燥した銅粉である。この凝集状態にある銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は5.56であり、画像解析により得られる平均粒径DIAは3.10、従って、D50/DIAで算出される凝集度は1.79であった。
【0048】
第1実施形態: 本実施形態では、前記の製造方法により得られた「凝集状態にある乾燥した銅粉」を、市販の風力分級器である日清エンジニアリング社製のターボクラシファイヤを用いて、回転数6500rpmでサーキュレーションさせ、凝集状態にある粉粒同士を衝突させて解粒作業を行った。
【0049】
この結果、解粒作業の終了した銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50は3.70であり、画像解析により得られる平均粒径DIAは3.08、従って、D50/DIAで算出される凝集度は1.20であり、十分な解粒処理が行われていることが確認できた。
【0050】
次に、この解粒処理した銅粉を、媒体分散ミルであるWilly A.Bachofen AG Maschinenfabrik製のダイノーミル KDL型を用いて、0.7mm径のジルコニアビーズをメディアとして用い、溶媒にメタノールを用いて30分間分散し、銅粉の粉粒を圧縮して塑性変形させる事で、略球形の銅粉をフレーク状の銅粉にした。
【0051】
以上のようにして得られたフレーク銅粉は、最大粒径Dmaxが7.78μmであって粗大粒は見られず、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積D10、D50、D90、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.21であり、D90/D10で表される値が1.70、観察した粉粒のアスペクト比は平均2.8であった。従って、本件発明で用いるフレーク銅粉の具備すべき要件を満足するものであることが分かるのである。
【0052】
更にこの段階で、得られたフレーク銅粉を用いてエポキシ系の銅ペーストを製造した。ここで製造したエポキシ系銅ペーストは、フレーク銅粉を85重量部、第1のエポキシ樹脂には油化シェル社製のエピコート806を3.5重量部、第2のエポキシ樹脂には東都化成株式会社製のYD−141を10.2重量部、エポキシ樹脂硬化剤として味の素株式会社製のアミキュアMY−24を1.3重量部として、これらを混錬してエポキシ系銅ペーストを得た。そして、この銅ペーストを金型に入れ、加圧して加熱硬化させ直径10mm、厚さ10mmの形状を持つペレットを製造し、四探針の電圧測定器を用いて、このペレットに電流を通電した場合の電圧を測定し、抵抗値に換算するという手法を採用した。その結果の抵抗値は、2.5×10−5Ω・cmであった。
【0053】
次に、このフレーク銅粉の粉粒の表面に銀コート層を形成した。銀コート層の形成は、硫酸濃度15g/Lの硫酸水溶液2000mLに、上述したフレーク銅粉1kgを分散させた。続いてデカンテーション処理を行い、エチレンジアミン四酢酸(以下EDTAと称す)80gを添加して溶解してフレーク銅粉スラリー(総量5000mL)を作製した。
【0054】
その後、緩衝剤としてフタル酸カリウムをpH4になるように添加しpH調整を行った。このようにpH調整したフレーク銅粉スラリーに硝酸銀溶液700mL(硝酸銀17gを水に添加して700mLとして調整したもの)を、30分間の時間をかけてゆっくりと添加し、30分間の攪拌をして置換反応処理を行い、銀コート処理を行った。そして、濾過洗浄、吸引脱水することで銀コートフレーク銅粉と溶液とを濾別し、水洗した後に銀コートフレーク銅粉を70℃の温度で5時間の乾燥を行った。
【0055】
ここで得られた銀コートフレーク銅粉の粉体特性は、最大粒径Dmaxが7.78μmであって粗大粒は見られず、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積D10、D50、D90、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.22であり、D90/D10で表される値が1.72、観察した粉粒のアスペクト比は平均2.8であった。この結果を、銀コート層形成前のフレーク銅粉の粉体特性と比較しても、粉体特性は大きく変化していないことが分かるのである。
【0056】
そして、当該銀コートフレーク銅粉を用いて、上述したと同様のエポキシ系導電性ペーストを製造し、この導電性ペーストを用いて、同様の方法で電気抵抗を測定した。その結果の抵抗値は、1.8×10−5Ω・cmであった。前記した銀コート前の、フレーク銅粉の段階で測定した抵抗値と比較すると明らかに電気抵抗が低くなっていることが分かるのである。
【0057】
第2実施形態: 本実施形態では、前記した方法により得られた「銅粉スラリー」を、市販の遠心力を利用した流体ミルである太平洋機工社製のファイン・フローミルを用いて、回転数3000rpmでサーキュレーションさせ、凝集状態にある粉粒同士を衝突させて解粒作業を行った。
【0058】
この結果、解粒作業の終了した銅粉のレーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積D50は3.68であり、画像解析により得られる平均粒径DIAは3.20、従って、D50/DIAで算出される凝集度は1.15であり、十分な解粒作業が行われていることを確認した。
【0059】
次に、この解粒処理した銅粉を、銅粉スラリーの状態のまま、ダイノーミルを用いて、銅粉の粉粒を圧縮して塑性変形させる事で、略球形の銅粉をフレーク状の銅粉にした。このときの条件は、第1実施形態と同様である。
【0060】
以上のようにして得られたフレーク銅粉は、最大粒径Dmaxが8.48μmであって粗大粒は見られず、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D10、D50、D90、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.30であり、D90/D10表される値が2.18、観察した粉粒のアスペクト比は平均2.6であった。従って、本件発明で用いるフレーク銅粉の具備すべき要件を満足するものであることが分かるのである。
【0061】
更に、得られたフレーク銅粉を用いて、第1実施形態と同様のエポキシ系銅ペーストを製造し、同様の手法で電気抵抗値を測定した。その結果の抵抗値は、2.6×10−5Ω・cmであった。
【0062】
次に、このフレーク銅粉の粉粒の表面に銀コート層を形成した。銀コート層の形成条件は、第1実施形態と同様であるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。ここで得られた銀コートフレーク銅粉の粉体特性は、最大粒径Dmaxが8.48μmであって粗大粒は見られず、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積D10、D50、D90、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.32であり、D90/D10で表される値が2.58、観察した粉粒のアスペクト比は平均2.7であった。この結果を、銀コート層形成前のフレーク銅粉の粉体特性と比較しても、粉体特性は大きく変化していないことが分かるのである。
【0063】
そして、ここで得られた銀コートフレーク銅粉を用いて、第1実施形態と同様のエポキシ系導電性ペーストを製造し、この導電性ペーストを用いて、同様の方法で電気抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、2.5×10−5Ω・cmであった。前記した銀コート前の、フレーク銅粉の段階で測定した抵抗値と比較すると明らかに電気抵抗が低くなっていることが分かるのである。
【0064】
比較例: 本実施形態では、第1実施形態で用いた凝集状態にある乾燥した銅粉を、解粒処理することなく、第1実施形態と同様にダイノーミルを用いて、銅粉の粉粒を圧縮して塑性変形させる事で、略球形の銅粉を鱗片状のフレーク銅粉にした。この結果得られたフレーク銅粉の粉体特性が、表1の試料番号3として示したものであり、粉粒のアスペクト比は平均6.2である。従って、本件発明に係るフレーク銅粉の具備すべき要件を満足するものでないことが分かるのである。なお、銀コート層を形成する前の鱗片状のフレーク銅粉を用いて、第1実施形態と同様のエポキシ系銅ペーストを製造し、同様の手法で電気抵抗値を測定した。その結果の抵抗値は、5.0×10−5Ω・cmであった。
【0065】
そして、本件発明者等は、この鱗片状のフレーク銅粉を用いて、これに以下の従来の銀コート方法で、銀コート層を形成した。銀コート層の形成は、まず、水9000mLにEDTA160gを溶解させ、その溶液中に鱗片状のフレーク銅粉1kgを分散させた。この溶液に硝酸銀溶液1000mL(アンモニア水溶液220mlに硝酸銀180gを溶解させ、水を添加して1000mLとして調整したもの)を一度にまとめて添加した。そして、30分間の攪拌をして置換反応処理を行った。その後、ロッシェル塩140gを添加して、30分間攪拌を行って銀コートフレーク銅粉を得た。そして、濾過洗浄し吸引脱水することで、銀コートフレーク銅粉と溶液とを濾別し、水洗した後に銀コートフレーク銅粉を70℃の温度で5時間の乾燥を行った。
【0066】
以上のようにして、鱗片状のフレーク銅粉を芯材として得られた銀コートフレーク銅粉の粉体特性は、最大粒径Dmaxが57.08μmであって粗大粒が観察され、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積D10、D50、D90、及びレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.72であり、D90/D10で表される値が5.43、観察した粉粒のアスペクト比は平均6.2であった。この結果から分かるように、銀コート層形成前の鱗片状のフレーク銅粉の粉体特性と比べれば、粉体特性が、かなり変化していることが分かるのである。
【0067】
そして、ここで得られた銀コートフレーク銅粉を用いて、第1実施形態と同様のエポキシ系導電性ペーストを製造し、この導電性ペーストを用いて、同様の方法で電気抵抗の測定を行った。その結果の抵抗値は、3.8×10−5Ω・cmであった。前記した銀コート前の、フレーク銅粉の段階で測定した抵抗値と比較すると明らかに電気抵抗が低くなっていることが分かるが、上述した実施形態と同様のレベルまでの低電気抵抗化は出来ていないのである。
【0068】
【発明の効果】
本件発明に係る銀コートフレーク銅粉を用いることで、導電性ペーストを製造し、その導電性ペーストを用いて形成した導体回路の充填性の改善し、電気抵抗の著しい低減が可能となった。しかも、粉粒形状が安定化しているため、形成した導体回路形状の制御が容易となり、従来不可能であったファインパターン回路形状の形成が可能となるのである。また、本件発明に係るフレーク銅粉の製造方法を用いることで、芯材のフレーク銅粉の持つ粉体特性を大きく変化させることのない、従来にない銀コートフレーク銅粉の製造が可能となり、しかも、本件発明に係る粉体特性を備えた銀コートフレーク銅粉の製造歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となるのである。この結果、本件発明に係る銀コートフレーク銅粉は、特にプリント配線板の導体形成の場において有用であり、トータル製造コストを下げ、しかも、導体回路の接続信頼性に優れた製品供給を可能とするのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】銀コートフレーク銅粉の走査型電子顕微鏡観察像
【図2】フレーク銅粉の走査型電子顕微鏡観察像。
【図3】フレーク銅粉の走査型電子顕微鏡観察像(従来品)。
Claims (10)
- 粒径が10μm以下のフレーク銅粉の表層に銀コート層を備えた銀コートフレーク銅粉であって、
フレーク銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D10、D50、D90、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒度分布の標準偏差SDを用いて表されるSD/D50の値が0.5以下であり、且つ、D90/D10で表される値が4.0以下の粉体特性を備え、
当該フレーク銅粉の粉粒表面に銀コート層を備えたことを特徴とする銀コートフレーク銅粉。 - 銀コート量が、銀コートフレーク銅粉の質量を基準としたときに0.01質量%〜10.0質量%である請求項1に記載の銀コートフレーク銅粉。
- 請求項1又は請求項2に記載の銀コートフレーク粉の製造方法であって、
フレーク銅粉は、凝集状態にある銅粉を解粒処理し、解粒処理の終了した銅粉の粉粒を高エネルギーボールミルで圧縮変形することでフレーク状にし、
当該フレーク銅粉を酸性溶液中に分散し、該フレーク銅粉分散液にキレート化剤を加えてフレーク銅粉スラリーを作製した後に、緩衝剤を添加してpH調整を行い、該フレーク銅粉スラリーに銀イオン溶液を添加することで置換反応により銅粉表面へ銀層を形成することを特徴とする銀コートフレーク銅粉の製造方法。 - 酸性溶液が、硫酸、塩酸、リン酸のいずれかを用いて調整したものである請求項3に記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン五酢酸、イミノ二酢酸から選ばれた1種又は2種以上のものからなる請求項3又は請求項4に記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- 緩衝剤は、フタル酸塩である請求項3〜請求項5のいずれかに記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- 銀イオン溶液は、硝酸銀溶液である請求項3〜請求項6のいずれかに記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- 銅粉スラリーに硝酸銀溶液を加える際の添加速度が、20g/min〜300g/minとするものである請求項3〜請求項7に記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- 酸性溶液中にフレーク銅粉を分散した後、デカンテーション処理を行うものである請求項3〜請求項8に記載の銀コートフレーク銅粉の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の銀コートフレーク銅粉を用いて製造した導電性ペースト。
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