JP2004217952A - 表面処理銅粉並びにその表面処理銅粉の製造方法及びその表面処理銅粉を用いた導電性ペースト - Google Patents
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Abstract
【課題】製造プロセスが簡便で、生産コストの低減が図れる表面処理銅粉であって、従来の有機層コート銅粉以上の耐酸化性を持つ製品を供給する。
【解決手段】有機層コート銅粉以上の耐酸化性を得るため、「表面処理層を備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の一種以上を用いて被膜を形成し、乾燥した表面処理銅粉。」を採用する。そして、最適の製造方法として、銅粉スラリーに、上述の化合物塩から選ばれる一種以上の成分を添加し、溶液pHを8〜11の範囲に調整して、銅粉の粉粒表面に目的の成分の一種以上を含有した被膜を形成させ、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させる方法等を提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】有機層コート銅粉以上の耐酸化性を得るため、「表面処理層を備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の一種以上を用いて被膜を形成し、乾燥した表面処理銅粉。」を採用する。そして、最適の製造方法として、銅粉スラリーに、上述の化合物塩から選ばれる一種以上の成分を添加し、溶液pHを8〜11の範囲に調整して、銅粉の粉粒表面に目的の成分の一種以上を含有した被膜を形成させ、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させる方法等を提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、導電性ペースト用の表面処理銅粉、その表面処理銅粉の製造方法、その表面処理銅粉を用いた導電性ペーストに関するものである。特に、本件発明に係る表面処理銅粉は、耐酸化性に優れたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から銅粉は、導電性ペーストの原料として広く用いられてきた。そして、その導電性ペーストは、その取り扱いの容易さ故に、実験目的の使用から、電子産業用途に到るまで広範な領域において使用されてきた。近年は、電子産業の分野でも、特に低温焼成セラミック基板、プリント配線板用途、チップ部品の導体形成用においての需要が増加してきている。
【0003】
この銅粉には、耐酸化性能が種々の見地から求められてきた。例えば、銅粉を用いて導電性ペーストを製造する場合に、銅粉表面の酸化が著しいと、導電性ペーストのバインダー樹脂である有機ビヒクルとの関係で導電性ペーストの粘度を増粘させ回路の引き回しの困難なものとなる。また、酸化が容易であると、低温焼成セラミック基板のセラミックグリーンシートの焼成と導電性ペーストで引き回した回路との同時焼成を行う場合の焼成回路の酸化が著しくなり、焼成回路の電気抵抗の上昇原因となり好ましいものではなかった。
【0004】
このような銅粉の問題点を解決するため、銅粉の表面にステアリン酸等の飽和脂肪酸、パーフルオロアルキル燐酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系表面処理剤を用いた有機層を設けることで、銅粉の耐酸化性能を向上させることが行われてきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−332502公報
【特許文献2】
米国特許第5,126,915号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した有機層を設けた銅粉では、特に低温焼成セラミック基板の焼成と同時に焼成する導電回路用途としては、耐酸化性能の改善が不十分であった。従って、有機層以外にも銅以上の高融点を持つ金属材でコーティングしたり、予め酸化金属をコーティングしたりする無機物コート層を備えた種々の銅粉が提案されてきた。
【0007】
銅粉の粉粒表面に無機物コート層を設ける方法とは、銅粉の粉粒表面に異種金属コート層を形成したり、金属酸化物コート層を形成したりするプロセスであり、メカノケミカル的なプロセスが採用されたり、電解メッキ等の電気化学的プロセスが採用される等、その製造工程が煩雑化するため製造コストの上昇を招くという欠点が存在していた。そして、これらのものは耐熱収縮性という点では非常に優れた性能を発揮するが、耐酸化性という観点では良好な性能を得られないと言うのが現実であった。
【0008】
従って、市場では、製造プロセスが簡便で、生産コストの低減が図れる表面処理銅粉であって、従来の有機層コート銅粉以上の耐酸化性を持つ製品が望まれてきたのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に説明する発明に想到するに到ったのである。
【0010】
<表面処理銅粉> 本件明細書における請求項には、次の7種類の表面処理銅粉を記載している。
▲1▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲2▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のアルミニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲3▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のスズ化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲4▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性の亜鉛化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲5▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のジルコニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲6▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲7▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩から選ばれる2種以上の成分を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
【0011】
以上、▲1▼〜▲7▼の表面処理銅粉の表面処理層は、ケイ酸ナトリウムに代表される成分を用いて形成されるように、いわゆる水ガラス組成の表面処理層を粉粒表面に備える銅粉を製造することを考慮して開発を進めた結果得られたものである。従って、「水ガラス系表面処理層を備えた銅粉」と称することも考えられたが、学術的に考えた場合に水ガラスはアルカリ−ケイ酸系ガラスの濃厚水溶液として分類されるものであり、上記組成物ではケイ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩組成のみは明らかに水ガラスと称することは可能であるが、他の組成を考えると総括的な請求項を記載することが困難であると考えた。そして、一方では、それぞれの表面処理銅粉の産業上の利用分野及び耐酸化性の改善という解決課題は共通するため、独立の請求項の形で記載したのである。これらの表面処理銅粉は、耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理層を銅粉の粉粒表面に備えるため、トータルとして見た場合の耐酸化性に優れるものとなる点に特徴を有している。
【0012】
上記▲1▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩を用いて得られる被膜を、乾燥させることで得られるものである。この水溶性のケイ素化合物塩とは、例えば、ケイ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩層であり、その組成は一定していないものと考えられる。但し、以下に述べる製造方法を前提とした場合に、その組成が定まるものと考えるのである。例えば、ケイ酸ナトリウムは、単一物質として得られているだけでも、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)及びその種々の水化物、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等がある。しかしながら、下記の製造方法の中で詳説するが、以上に述べたケイ酸ナトリウムを用いて得られる被膜は、いわゆる和水水ガラスに近い組成で構成されているものと推察している。即ち、このような水ガラス成分を備える表面処理層は、耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れたものとなるのである。
【0013】
上記▲2▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のアルミニウム化合物塩を用いて形成する被膜を、乾燥させることで得られるものである。この水溶性のアルミニウム化合物塩は、アルミニウム化合物塩としてアルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等のアルカリ塩、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウム等の酸性塩等を言うのである。ここでは、アルミン酸ナトリウムを例にとって説明する。
【0014】
例えば、アルミン酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層は、オルトアルミン酸ナトリウム(Na3AlO3)、メタアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)のいずれか若しくは複合により構成されたものであると考えられる。但し、厳密には、下記に述べる製造方法から分かるように、上記アルミン酸ナトリウムも、水和物として存在するものと考えられる。アルミン酸ナトリウム自体は、水に対し易溶であるが、下記に示す製造方法で用いる水溶液のpHを当初のアルカリ性から酸性に変化させることで、水に溶解し難い安定したアルミン酸ナトリウムを被膜として粉粒表面へ形成できるので耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理層となるのである。
【0015】
また、一方、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウム等の酸性塩を用いる場合には、当該酸性塩を溶解させた水溶液のpHは当初は酸性であり、これをアルカリ性に変化させることで、安定した水酸化アルミニウムを被膜として粉粒表面へ形成できるので耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理銅粉となるのである。
【0016】
上記▲3▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のスズ化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のスズ化合物塩とは、スズ酸ナトリウム等のアルカリ塩、硫酸スズ及び塩化スズ等の酸性塩等である。一例として、アルカリ塩であるスズ酸ナトリウムを用いた場合について説明する。スズ酸ナトリウム層は、αスズ酸ナトリウム(NaSnO3・3H2O)、βスズ酸ナトリウム(Na2O・5SnO2・8H2O、Na2O・9SnO2・8H2O)いずれか若しくは複合により構成されたものであると考えられる。この内、前者のαスズ酸ナトリウムは、140℃の温度での加熱により無水化することが可能であり、アルコールやアセトン等の有機溶媒に不溶なものである。従って、有機溶媒による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能する。また、後者のβスズ酸ナトリウムは、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0017】
上記▲4▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性の亜鉛化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性の亜鉛化合物塩とは、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等である。亜鉛化合物塩は、酸化物(ZnO)が両性であることから、酸とは亜鉛塩を、塩基とは亜塩酸塩を形成するため、多くの種類が存在している。この亜鉛化合物塩は、水溶液中ではアコ化して安定な錯イオン(例えば、[Zn(OH2)4]2+)となっていると考えられる。そこで、この錯イオンを水酸化亜鉛として、銅粉の粉粒表面に薄膜層を形成し、これを乾燥させ表面処理層とするのである。水酸化亜鉛には、α型、β型、γ型、δ型、ε型の5種類の変態形態が知られているが、以下に述べる製造方法から分かるように、本件発明に係る表面処理銅粉は湿式法で製造するものであるため、銅粉の粉粒表面を覆うのは水溶液に最も安定なε型が殆どではないかと推察できるのである。この水酸化亜鉛被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0018】
上記▲5▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のジルコニウム化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のジルコニウム化合物塩とは、硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等である。この水溶性のジルコニウム化合物を用いて、湿式法で銅粉の粉粒表面にジルコニウム水酸化物被膜を形成し、このジルコニウム水酸化被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0019】
上記▲6▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のチタン化合物塩とは、硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等である。この水溶性のチタン化合物塩を用いて、湿式法で銅粉の粉粒表面にチタン水酸化物被膜を形成し、このチタン水酸化被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0020】
上記▲7▼の表面処理銅粉の粉粒表面の表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩(例えば、ケイ酸ナトリウム等)、水溶性のアルミニウム化合物塩(例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、水溶性のスズ化合物塩(スズ酸ナトリウム、硫酸スズ、塩化スズ等)、水溶性の亜鉛化合物塩(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等)、水溶性のジルコニウム化合物塩(硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等)、水溶性のチタン化合物塩(硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等)の2種以上の成分を用いて形成した被膜を、乾燥させ得られるものである。水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩のそれぞれは、個別に上述した如き効果を発揮するため、これらを組みあわせて複合的に用いることも可能なのである。ここで、「水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩から選ばれる2種以上の成分を用いて被膜を形成し、乾燥させたもの」とは、表面処理層自体の内部でケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる2種以上の成分を含んだ被膜の概念を含む意味合いで記載したものである。このような表面処理層を採用することで、表面処理銅粉の用途に応じた耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性の設計が可能となるのである。
【0021】
以上に述べてきた表面処理銅粉は、下記に述べる製造方法から明らかなように、製造過程において凝集する場合のあることが考えられる。従って、表面処理銅粉の粉粒の分散性を高めた処理を施すことが好ましい。本件発明に係る表面処理銅粉を導電性ペーストに加工して、この導電性ペーストを用いて回路若しくは電極等の形状を引き回し、焼結加工して微細で精密な回路を形成しようとすることを考えれば、「レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50が0.1〜10μmであり、且つ、当該重量累積粒径D50と走査電子顕微鏡像の画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下である低凝集性の表面処理銅粉」とすることが望ましいのである。
【0022】
ここで凝集度という概念を用いているが、以下のような理由から採用したものである。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではないと考えられる。殆どの銅粉を構成する粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集して集合した状態になっているからである。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、重量累積粒径を算出していると言えるのである。
【0023】
これに対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子が確実に捉えられることになり、反面には粉粒の凝集状態の存在を全く反映させていないことになる。
【0024】
以上のように考えると、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの銅粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。
【0025】
このとき、D50の値は、表面処理銅粉の粉粒の凝集状態が全くなくなるとすれば、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無くなった単分散粉と言えるのである。但し、現実には、凝集度が1未満の値を示す場合もある。理論的に考え真球の場合には、1未満の値にはならないのであるが、現実には、真球ではなく1未満の凝集度の値が得られることになるようである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察される銅粉の画像から200個の粉粒を任意に選択し、画像解析を用いて得られる円相当平均径である。この画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行うものである。
【0026】
以上に述べてきた表面処理銅粉は、優れた耐薬品酸化性、耐高温雰囲気酸化性を備えるが故に、有機ビヒクルと混合して導電性ペーストに加工して、この導電性ペーストを用いて引き回した回路及び電極等を焼成し、有機ビヒクルを除去する脱媒過程において酸化が進行することなく、脱媒終了後の継続加熱による粉粒の焼結時にも粉粒表面の酸化を最小限に抑制することができる。そのため、焼成された回路及び電極等の酸化による電気抵抗の上昇を効果的に抑制することが可能となるのである。
【0027】
<表面処理銅粉の製造方法> 以上に述べてきた表面処理銅粉は、以下の湿式処理プロセスを用いて製造することが好ましい。製造に要する時間を最も短縮化することが可能であり、しかも、製造プロセスの単純化が図れるためトータルで考えたときの生産コストの低減化が可能となるからである。
【0028】
本件発明に係る導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法は、以下のように製造方法Aと製造方法Bとに大別して捉えられる。即ち、銅粉スラリーに添加するのは、ケイ素化合物塩(例えば、ケイ酸ナトリウム等)、水溶性のアルミニウム化合物塩(例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、水溶性のスズ化合物塩(スズ酸ナトリウム、硫酸スズ、塩化スズ等)、水溶性の亜鉛化合物塩(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等)、水溶性のジルコニウム化合物塩(硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等)、水溶性のチタン化合物塩(硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等)であるから、銅粉スラリーがアルカリ性を呈する場合と酸性を呈する場合とが考えられる。従って、アルカリ性になった銅粉スラリー(本件明細書では、「アルカリ性銅粉スラリー」と称している。)と、酸性になった銅粉スラリー(本件明細書では、「酸性銅粉スラリー」と称している。)とで、pH調整操作が異なるのである。
【0029】
本件発明に係る製造方法Aとは、「銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の塩基性化合物塩を添加しアルカリ性銅粉スラリーとし、このアルカリ性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を加えて溶液pHを3〜6の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、 その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法。」である。
【0030】
この製造方法の特徴は、銅粉スラリーに水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を添加して一旦アルカリ溶液となった場合を対象としているのである。そして、このアルカリ溶液の状態から、アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて、溶液pHを酸性領域にもっていくことで、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成するのである。その後、粉粒表面にある被膜を形成した銅粉を濾別採取して、洗浄し、乾燥することで粉粒上の被膜から一定量の水分を飛ばして、水を化合した酸化物若しくは水酸化物被膜としての表面処理層を銅粉の粉粒上に形成するのである。
【0031】
ここで、「アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて溶液pHを3〜6の範囲に調整」としたのは、溶液pHが3より、酸性側になると、銅粉の粉粒表面への目的の被膜の形成速度が速く不均一な被膜を形成し、同時に一旦生成した被膜の再溶解が起こりやすくなり、結果として良好な被膜が得られないのである。一方、溶液pHが6よりもアルカリ性側になると、銅粉の粉粒表面に形成させる被膜の形成反応が著しく低下し、銅粉の粉粒表面での被膜の密着性が低下するため、均一で密着性に優れた良好な被膜の形成が困難となるようである。
【0032】
本件明細書で言う「アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液」とは、通説どおり水に溶解させると水素イオンが生じる酸のことであり、少なくとも硫酸、塩酸、酢酸の水溶液の使用が可能である。そして、このアウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて、溶液pHを調整する際には、アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液の添加速度を適度にゆっくりと設定し、溶液のpH変化を緩やかに起こさせることで、目的の被膜形成が良好に行え、その被膜の均一性も向上するのである。
【0033】
乾燥に関しては、その手法に特段の制限はなく、銅粉の粉粒表面に形成した被膜から、十分に水分を蒸発させることが出来る方法であれば、大気加熱乾燥、真空加熱乾燥等の雰囲気も問題ではない。但し、乾燥温度は、表面処理層の不必要な酸化を防止するため、100℃以下の温度で適当な乾燥条件を採用することが望ましいのである。この乾燥に関しては、以下に述べる製造方法Bにおいても、同様に考えられる。
【0034】
本件発明に係る製造方法Bとは、「銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の酸性化合物塩を添加し酸性銅粉スラリーとし、この酸性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を加えて溶液pHを8〜11の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法。」である。
【0035】
この製造方法Bの特徴は、銅粉スラリーに水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を添加して一旦酸性溶液となった場合を対象としているのである。そして、この酸性溶液の状態から、アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて、溶液pHを酸性領域にもっていくことで、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成するのである。その後、粉粒表面にある被膜を形成した銅粉を濾別採取して、洗浄し、乾燥することで粉粒上の被膜から一定量の水分を飛ばして、水を化合した酸化物若しくは水酸化物被膜としての表面処理層を銅粉の粉粒上に形成するのである。
【0036】
ここで、「アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて溶液pHを8〜11の範囲に調整」としたのは、溶液pHが11より、アルカリ性側になると、銅粉の粉粒表面への目的の被膜の形成速度が速く不均一な被膜を形成し、同時に一旦生成した被膜の再溶解が起こりやすくなり、結果として良好な被膜が得られないのである。一方、溶液pHが8よりも酸性側になると、銅粉の粉粒表面に形成する被膜の形成反応が著しく低下し、銅粉の粉粒表面での被膜の密着性が低下するため、均一で密着性に優れた良好な被膜の形成が困難となるようである。
【0037】
本件明細書で言う「アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液」とは、通説どおり水に溶解させると水酸イオンが生じるもののことであり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等の水溶液の使用が可能である。そして、このアウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて、溶液pHを調整する際には、アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液の添加速度を適度にゆっくりと設定し、溶液のpH変化を緩やかに起こさせることで、目的の被膜形成が良好に行え、その被膜の均一性も向上するのである。
【0038】
そして、以上に述べた製造方法に用いる銅粉は、予め銅粉の粉粒の予備酸化処理を施しておくと、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を用いて得られる被膜の形成が容易になり、密着性に優れるようになる傾向を示すようである。従って、銅粉の表面を大気中で加熱することによる大気酸化、若しくは溶液中での化成処理による酸化処理を施しておくことが望ましいのである。
【0039】
そして、表面処理銅粉は、必要に応じて粉粒の凝集状態を破壊する解粒処理を行い、使用目的に応じた分散性の調整を行うのである。ここで言う分散性の調整とは、上述した凝集度の調整の意味になる。従って、解粒処理とは、この凝集した状態にある粉体を、一粒一粒の粉粒に分離することを言うのである。
【0040】
単に解粒処理を行うことを目的とするのであれば、解粒の行える手段として、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置等種々の物を用いることが可能である。ところが、表面処理銅粉を用いた導電性ペーストの粘度を可能な限り低減させることを考えると、表面処理銅粉の比表面積を可能な限り小さなものとすることが求められる。
【0041】
このような認識に基づいて、本件発明者等が鋭意研究した結果、以下に述べる二つの解粒手法を採用することが好ましいのである。この二つの方法に共通することは、表面処理銅粉の粉粒が装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することを最小限に抑制し、凝集した粉粒同士が相互に衝突し合い、しかも、解粒が十分可能な方法である点である。即ち、粉粒の表面を傷つけ、表面粗さを増大させる可能性が最も少ないものである。そして、十分な粉粒同士の衝突を起こさせることで、凝集状態にある粉粒を解粒し、同時に、粉粒同士の衝突による粉粒表面の平滑化の可能な手法を採用したのである。
【0042】
解粒処理を行う一つの手法としては、凝集状態にある乾燥した表面処理銅粉に対し、遠心力を利用した風力サーキュレータを用いるのである。ここで言う「遠心力を利用した風力サーキュレータ」とは、エアをブロワーして、凝集した表面処理銅粉を円周軌道を描くように吹き上げてサーキュレーションさせ、このときに発生する遠心力により粉粒同士を気流中で相互に衝突させることで解粒作業を行うのである。かかる場合、遠心力を利用した市販の風力分級器を用いることも可能であるが、あくまでも分級を目的としたものではなく、風力分級器がエアをブロワーして、凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げるサーキュレータの役割を果たすのである。
【0043】
また、もう一つの解粒手法としては、凝集状態にある表面処理銅粉を含有した表面処理銅粉スラリーを、遠心力を利用した流体ミルを用いて解粒処理するのである。ここで言う「遠心力を利用した流体ミル」とは、表面処理銅粉スラリーを円周軌道を描くように高速でフローさせ、このときに発生する遠心力により凝集した粉粒同士を溶媒中で相互に衝突させ、解粒作業を行うために用いるのである。
【0044】
上述した解粒処理は、必要に応じて複数回を繰り返して行うことも可能であり、要求品質に応じて、解粒処理のレベルの任意選択が可能である。解粒処理の施された表面処理銅粉は、凝集状態が破壊され新たな粉体特性を備えることになるのである。そして、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下とすることが、最も望ましいのである。ここで言う凝集度が1.7以下となると、導電性ペースト用途に特に適した分散状態が確保できていると言えるのである。
【0045】
以上のような製造方法を用いることで、本件発明に係る表面処理銅粉を、効率よく製造することが可能となるのである。この表面処理銅粉は、有機ビヒクルと混合して導電性ペーストに加工して、主に焼結回路及び導体を形成する際の脱媒過程で酸化進行することが無くなるのである。また、本件発明に係る表面処理銅粉は有機ビヒクルを構成する溶媒に対する耐酸化抵抗力が強く、変質しにくい傾向にある。従って、次のような利点が得られるのである。
【0046】
本件発明に係る表面処理銅粉は、テルピネオール系導電性ペーストにおいて、次のような有用性を発揮するのである。テルピネオール系導電性ペーストの粘度における特徴は、導電性ペーストに加工した直後の粘度が最も高く、時間の経過と共に粘度が低下していく傾向にある。このように経時的に低下していく粘度を初期粘度に戻すことは、事後的調整としては殆ど不可能であり、テルピネオール系導電性ペーストの粘度の経時変化を可能な限り抑制する技術が強く求められていた。ところが、本件発明に係る表面処理銅粉と、テルピネオール系樹脂と混合して得られる導電性ペーストは、前述した経時変化が小さくなるのである。
【0047】
従って、上述したように導電性ペースト粘度の経時変化が小さいと言うことは、導電性ペーストとしての粘度管理が容易になり、導電性ペーストの品質変動が小さいと言うことになる。導電性ペーストを使用する分野の中でも、導電性ペーストを用いて製造する回路の厚さ、幅、回路エッジの直線性等に高い精度が要求されるプリント配線板製造分野において、特に有用なものとなるのである。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態を通じて、比較例と対比しつつ、本件発明に関し、より詳細に説明する。
【0049】
第1実施形態: 本実施形態では、ケイ酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。
【0050】
ここで用いた芯材となる銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積粒径D50の値が4.18μm、タップ充填密度4.8g/cm3、比表面積が0.29m2/gであった。ここでの「タップ充填密度の測定」には、試料重量を120gとして、パウダーテスターPT−E(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定した。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積粒径D50のの測定は、0.1gの粉体をSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて行った。比表面積は、粉体試料2.00gを75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定したものである。
【0051】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0052】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gのケイ酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0053】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の硫酸溶液を加え、pH4になるように調整した。溶液pHが4になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0054】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は250℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0055】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、テルピネオール系導電性ペーストを製造した。ここで製造したテルピネオール系導電性ペーストは、表面処理銅粉を80重量部、バインダーとなる有機ビヒクルを20質量部の組成として、これらを混合して1時間の混錬を行ってテルピネオール系導電性ペーストを得たのである。このときの有機ビヒクルは、テルピネオール93質量部、エチルセルロース7質量部の組成を持つものを用いた。
【0056】
以上のようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると880Pa・s、一週間経過後の粘度は712Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると19.1%であった。なお、本件明細書における粘度の測定には、東機産業社製の粘度計であるRE−105Uを用いて、0.5rpmの回転数で測定したものである。
【0057】
第2実施形態: 本実施形態では、基本的に第1実施形態と同様の方法でケイ酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。第1実施形態と異なるのは、銅粉の予備酸化を行わなかった点である。従って、この実施形態に関する詳細な説明は、重複した記載を避けるため省略することとする。
【0058】
この実施形態で得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は245℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0059】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると800Pa・s、一週間経過後の粘度は640Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.0%であった。
【0060】
第3実施形態: 本実施形態では、アルミン酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0061】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉100gに対し、50gの過酸化水素水を1時間かけて、ゆっくりと添加して、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0062】
そして、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。次に、この銅粉スラリーに14gのアルミン酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0063】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は280℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0064】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると825Pa・s、一週間経過後の粘度は672Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると18.5%であった。
【0065】
第4実施形態: 本実施形態では、スズ酸ナトリウムを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0066】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0067】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gのスズ酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0068】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は260℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0069】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると840Pa・s、一週間経過後の粘度は630Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると25.0%であった。
【0070】
第5実施形態: 本実施形態では、ケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムとを用いて混合組成の表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0071】
本実施形態における混合層を備えた表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0072】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに、各々7gのケイ酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0073】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は300℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0074】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると850Pa・s、一週間経過後の粘度は700Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると17.6%であった。
【0075】
第6実施形態: 本実施形態では、硫酸アルミニウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉100gに対し、50gの過酸化水素水を1時間かけて、ゆっくりと添加して、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0077】
そして、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。次に、この銅粉スラリーに14gの硫酸アルミニウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0078】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10になるように調整した。溶液pHが10になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0079】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は283℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0080】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると790Pa・s、一週間経過後の粘度は630Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.3%であった。
【0081】
第7実施形態: 本実施形態では、硫酸スズを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0082】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0083】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gの硫酸スズを加え、30分間の攪拌を行った。
【0084】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH9.5になるように調整した。溶液pHが9.5になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0085】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は257℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0086】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると800Pa・s、一週間経過後の粘度は605Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると24.4%であった。
【0087】
第8実施形態: 本実施形態では、硫酸亜鉛を用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0088】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0089】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gの硫酸亜鉛を加え、30分間の攪拌を行った。
【0090】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH9になるように調整した。溶液pHが9になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0091】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は260℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0092】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると820Pa・s、一週間経過後の粘度は650Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.7%であった。
【0093】
第9実施形態: 本実施形態では、塩化酸化ジルコニウムを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0094】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0095】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに10gの塩化酸化ジルコニウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0096】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10になるように調整した。溶液pHが10になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0097】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は280℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0098】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると850Pa・s、一週間経過後の粘度は620Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると27.1%であった。
【0099】
第10実施形態: 本実施形態では、硫酸チタンを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0100】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0101】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに10gの硫酸チタンを加え、30分間の攪拌を行った。
【0102】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10.5になるように調整した。溶液pHが10.5になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0103】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は270℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0104】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると835Pa・s、一週間経過後の粘度は675Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると19.2%であった。
【0105】
比較例1: この比較例では、実施形態で用いた銅粉をそのまま用いて、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は150℃であった。この値は、上述した実施形態と比較すると極めて低く、低温加熱でも容易に酸化が開始する事が分かるのである。
【0106】
続いて、この銅粉を用いて、実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。こうして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると705Pa・s、一週間経過後の粘度は425Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると39.7%の低粘度化があり、大きな粘度変化が起きていることが分かった。
【0107】
比較例2: この比較例では、実施形態で用いたと同一の銅粉をオレイン酸で処理した表面処理銅粉を使用しているのである。
【0108】
この表面処理銅粉は、前記銅粉25kgを、オレイン酸0.025kgを溶解させた25リットルのメタノール溶液中に投入し、1時間の攪拌を行った。そして、吸引濾過することで、銅粉とメタノール溶液とを濾別し、分取した銅粉を70℃の温度で5時間の乾燥を行い、粒子表面にオレイン酸による表面処理層を形成したものである。
【0109】
この表面処理銅粉を用いて、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は170℃であった。この値は、上述した実施形態と比較すると極めて低く、低温加熱でも容易に酸化が開始する事が分かるのである。
【0110】
続いて、この銅粉を用いて、実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。こうして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると826Pa・s、一週間経過後の粘度は450Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると45.5%の低粘度化があり、大きな粘度変化が起きていることが分かった。
【0111】
【発明の効果】
本件発明に係る水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか1種以上の成分からなる表面処理層を備えた表面処理銅粉は耐酸化性に優れており、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造すると、粘度の経時変化を非常に小さなものとすることが可能となる。この表面処理銅粉の耐酸化性能は、低温焼成セラミック基板の回路、プリント配線板の回路作成に用いる導電性ペースト、チップ部品の電極形成等に用いると、酸化進行が遅いため、得られる導体回路が非常に優れた導電性能の確保することになる。そして、導電性ペーストの粘度の経時劣化が少ないと言うことは、工業的に大量に使用する際のペースト粘度の管理を省力化するものとなるのである。
【発明の属する技術分野】
本件出願に係る発明は、導電性ペースト用の表面処理銅粉、その表面処理銅粉の製造方法、その表面処理銅粉を用いた導電性ペーストに関するものである。特に、本件発明に係る表面処理銅粉は、耐酸化性に優れたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から銅粉は、導電性ペーストの原料として広く用いられてきた。そして、その導電性ペーストは、その取り扱いの容易さ故に、実験目的の使用から、電子産業用途に到るまで広範な領域において使用されてきた。近年は、電子産業の分野でも、特に低温焼成セラミック基板、プリント配線板用途、チップ部品の導体形成用においての需要が増加してきている。
【0003】
この銅粉には、耐酸化性能が種々の見地から求められてきた。例えば、銅粉を用いて導電性ペーストを製造する場合に、銅粉表面の酸化が著しいと、導電性ペーストのバインダー樹脂である有機ビヒクルとの関係で導電性ペーストの粘度を増粘させ回路の引き回しの困難なものとなる。また、酸化が容易であると、低温焼成セラミック基板のセラミックグリーンシートの焼成と導電性ペーストで引き回した回路との同時焼成を行う場合の焼成回路の酸化が著しくなり、焼成回路の電気抵抗の上昇原因となり好ましいものではなかった。
【0004】
このような銅粉の問題点を解決するため、銅粉の表面にステアリン酸等の飽和脂肪酸、パーフルオロアルキル燐酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系表面処理剤を用いた有機層を設けることで、銅粉の耐酸化性能を向上させることが行われてきた。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−332502公報
【特許文献2】
米国特許第5,126,915号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した有機層を設けた銅粉では、特に低温焼成セラミック基板の焼成と同時に焼成する導電回路用途としては、耐酸化性能の改善が不十分であった。従って、有機層以外にも銅以上の高融点を持つ金属材でコーティングしたり、予め酸化金属をコーティングしたりする無機物コート層を備えた種々の銅粉が提案されてきた。
【0007】
銅粉の粉粒表面に無機物コート層を設ける方法とは、銅粉の粉粒表面に異種金属コート層を形成したり、金属酸化物コート層を形成したりするプロセスであり、メカノケミカル的なプロセスが採用されたり、電解メッキ等の電気化学的プロセスが採用される等、その製造工程が煩雑化するため製造コストの上昇を招くという欠点が存在していた。そして、これらのものは耐熱収縮性という点では非常に優れた性能を発揮するが、耐酸化性という観点では良好な性能を得られないと言うのが現実であった。
【0008】
従って、市場では、製造プロセスが簡便で、生産コストの低減が図れる表面処理銅粉であって、従来の有機層コート銅粉以上の耐酸化性を持つ製品が望まれてきたのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、以下に説明する発明に想到するに到ったのである。
【0010】
<表面処理銅粉> 本件明細書における請求項には、次の7種類の表面処理銅粉を記載している。
▲1▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲2▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のアルミニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲3▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のスズ化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲4▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性の亜鉛化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲5▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のジルコニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲6▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
▲7▼ 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩から選ばれる2種以上の成分を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。
【0011】
以上、▲1▼〜▲7▼の表面処理銅粉の表面処理層は、ケイ酸ナトリウムに代表される成分を用いて形成されるように、いわゆる水ガラス組成の表面処理層を粉粒表面に備える銅粉を製造することを考慮して開発を進めた結果得られたものである。従って、「水ガラス系表面処理層を備えた銅粉」と称することも考えられたが、学術的に考えた場合に水ガラスはアルカリ−ケイ酸系ガラスの濃厚水溶液として分類されるものであり、上記組成物ではケイ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩組成のみは明らかに水ガラスと称することは可能であるが、他の組成を考えると総括的な請求項を記載することが困難であると考えた。そして、一方では、それぞれの表面処理銅粉の産業上の利用分野及び耐酸化性の改善という解決課題は共通するため、独立の請求項の形で記載したのである。これらの表面処理銅粉は、耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理層を銅粉の粉粒表面に備えるため、トータルとして見た場合の耐酸化性に優れるものとなる点に特徴を有している。
【0012】
上記▲1▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩を用いて得られる被膜を、乾燥させることで得られるものである。この水溶性のケイ素化合物塩とは、例えば、ケイ酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩層であり、その組成は一定していないものと考えられる。但し、以下に述べる製造方法を前提とした場合に、その組成が定まるものと考えるのである。例えば、ケイ酸ナトリウムは、単一物質として得られているだけでも、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)及びその種々の水化物、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、二ケイ酸ナトリウム(Na2Si2O5)、四ケイ酸ナトリウム(Na2Si4O9)等がある。しかしながら、下記の製造方法の中で詳説するが、以上に述べたケイ酸ナトリウムを用いて得られる被膜は、いわゆる和水水ガラスに近い組成で構成されているものと推察している。即ち、このような水ガラス成分を備える表面処理層は、耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れたものとなるのである。
【0013】
上記▲2▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のアルミニウム化合物塩を用いて形成する被膜を、乾燥させることで得られるものである。この水溶性のアルミニウム化合物塩は、アルミニウム化合物塩としてアルミン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩等のアルカリ塩、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウム等の酸性塩等を言うのである。ここでは、アルミン酸ナトリウムを例にとって説明する。
【0014】
例えば、アルミン酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層は、オルトアルミン酸ナトリウム(Na3AlO3)、メタアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)のいずれか若しくは複合により構成されたものであると考えられる。但し、厳密には、下記に述べる製造方法から分かるように、上記アルミン酸ナトリウムも、水和物として存在するものと考えられる。アルミン酸ナトリウム自体は、水に対し易溶であるが、下記に示す製造方法で用いる水溶液のpHを当初のアルカリ性から酸性に変化させることで、水に溶解し難い安定したアルミン酸ナトリウムを被膜として粉粒表面へ形成できるので耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理層となるのである。
【0015】
また、一方、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウム等の酸性塩を用いる場合には、当該酸性塩を溶解させた水溶液のpHは当初は酸性であり、これをアルカリ性に変化させることで、安定した水酸化アルミニウムを被膜として粉粒表面へ形成できるので耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性に優れた表面処理銅粉となるのである。
【0016】
上記▲3▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のスズ化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のスズ化合物塩とは、スズ酸ナトリウム等のアルカリ塩、硫酸スズ及び塩化スズ等の酸性塩等である。一例として、アルカリ塩であるスズ酸ナトリウムを用いた場合について説明する。スズ酸ナトリウム層は、αスズ酸ナトリウム(NaSnO3・3H2O)、βスズ酸ナトリウム(Na2O・5SnO2・8H2O、Na2O・9SnO2・8H2O)いずれか若しくは複合により構成されたものであると考えられる。この内、前者のαスズ酸ナトリウムは、140℃の温度での加熱により無水化することが可能であり、アルコールやアセトン等の有機溶媒に不溶なものである。従って、有機溶媒による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能する。また、後者のβスズ酸ナトリウムは、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0017】
上記▲4▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性の亜鉛化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性の亜鉛化合物塩とは、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等である。亜鉛化合物塩は、酸化物(ZnO)が両性であることから、酸とは亜鉛塩を、塩基とは亜塩酸塩を形成するため、多くの種類が存在している。この亜鉛化合物塩は、水溶液中ではアコ化して安定な錯イオン(例えば、[Zn(OH2)4]2+)となっていると考えられる。そこで、この錯イオンを水酸化亜鉛として、銅粉の粉粒表面に薄膜層を形成し、これを乾燥させ表面処理層とするのである。水酸化亜鉛には、α型、β型、γ型、δ型、ε型の5種類の変態形態が知られているが、以下に述べる製造方法から分かるように、本件発明に係る表面処理銅粉は湿式法で製造するものであるため、銅粉の粉粒表面を覆うのは水溶液に最も安定なε型が殆どではないかと推察できるのである。この水酸化亜鉛被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0018】
上記▲5▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のジルコニウム化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のジルコニウム化合物塩とは、硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等である。この水溶性のジルコニウム化合物を用いて、湿式法で銅粉の粉粒表面にジルコニウム水酸化物被膜を形成し、このジルコニウム水酸化被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0019】
上記▲6▼の表面処理銅粉の粉粒表面に設けられる表面処理層は、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる被膜を乾燥させ得られるものである。この水溶性のチタン化合物塩とは、硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等である。この水溶性のチタン化合物塩を用いて、湿式法で銅粉の粉粒表面にチタン水酸化物被膜を形成し、このチタン水酸化被膜を乾燥させることにより得られる表面処理層は、水に対し難溶性であり、水溶液による銅粉粉粒の表面酸化を有効に防止するように機能するのである。
【0020】
上記▲7▼の表面処理銅粉の粉粒表面の表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩(例えば、ケイ酸ナトリウム等)、水溶性のアルミニウム化合物塩(例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、水溶性のスズ化合物塩(スズ酸ナトリウム、硫酸スズ、塩化スズ等)、水溶性の亜鉛化合物塩(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等)、水溶性のジルコニウム化合物塩(硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等)、水溶性のチタン化合物塩(硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等)の2種以上の成分を用いて形成した被膜を、乾燥させ得られるものである。水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩のそれぞれは、個別に上述した如き効果を発揮するため、これらを組みあわせて複合的に用いることも可能なのである。ここで、「水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩から選ばれる2種以上の成分を用いて被膜を形成し、乾燥させたもの」とは、表面処理層自体の内部でケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる2種以上の成分を含んだ被膜の概念を含む意味合いで記載したものである。このような表面処理層を採用することで、表面処理銅粉の用途に応じた耐薬品酸化性、耐大気雰囲気酸化性の設計が可能となるのである。
【0021】
以上に述べてきた表面処理銅粉は、下記に述べる製造方法から明らかなように、製造過程において凝集する場合のあることが考えられる。従って、表面処理銅粉の粉粒の分散性を高めた処理を施すことが好ましい。本件発明に係る表面処理銅粉を導電性ペーストに加工して、この導電性ペーストを用いて回路若しくは電極等の形状を引き回し、焼結加工して微細で精密な回路を形成しようとすることを考えれば、「レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50が0.1〜10μmであり、且つ、当該重量累積粒径D50と走査電子顕微鏡像の画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下である低凝集性の表面処理銅粉」とすることが望ましいのである。
【0022】
ここで凝集度という概念を用いているが、以下のような理由から採用したものである。即ち、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる重量累積粒径D50の値は、真に粉粒の一つ一つの径を直接観察したものではないと考えられる。殆どの銅粉を構成する粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集して集合した状態になっているからである。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、凝集した粉粒を一個の粒子(凝集粒子)として捉えて、重量累積粒径を算出していると言えるのである。
【0023】
これに対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察される銅粉の観察像を画像処理することにより得られる平均粒径DIAは、SEM観察像から直接得るものであるため、一次粒子が確実に捉えられることになり、反面には粉粒の凝集状態の存在を全く反映させていないことになる。
【0024】
以上のように考えると、本件発明者等は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法の重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いて、D50/DIAで算出される値を凝集度として捉えることとしたのである。即ち、同一ロットの銅粉においてD50とDIAとの値が同一精度で測定できるものと仮定して、上述した理論で考えると、凝集状態のあることを測定値に反映させるD50の値は、DIAの値よりも大きな値になると考えられる。
【0025】
このとき、D50の値は、表面処理銅粉の粉粒の凝集状態が全くなくなるとすれば、限りなくDIAの値に近づいてゆき、凝集度であるD50/DIAの値は、1に近づくことになる。凝集度が1となった段階で、粉粒の凝集状態が全く無くなった単分散粉と言えるのである。但し、現実には、凝集度が1未満の値を示す場合もある。理論的に考え真球の場合には、1未満の値にはならないのであるが、現実には、真球ではなく1未満の凝集度の値が得られることになるようである。なお、本件明細書における走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて1000倍の倍率で観察される銅粉の画像から200個の粉粒を任意に選択し、画像解析を用いて得られる円相当平均径である。この画像解析は、旭エンジニアリング株式会社製のIP−1000PCを用いて、円度しきい値10、重なり度20として円形粒子解析を行うものである。
【0026】
以上に述べてきた表面処理銅粉は、優れた耐薬品酸化性、耐高温雰囲気酸化性を備えるが故に、有機ビヒクルと混合して導電性ペーストに加工して、この導電性ペーストを用いて引き回した回路及び電極等を焼成し、有機ビヒクルを除去する脱媒過程において酸化が進行することなく、脱媒終了後の継続加熱による粉粒の焼結時にも粉粒表面の酸化を最小限に抑制することができる。そのため、焼成された回路及び電極等の酸化による電気抵抗の上昇を効果的に抑制することが可能となるのである。
【0027】
<表面処理銅粉の製造方法> 以上に述べてきた表面処理銅粉は、以下の湿式処理プロセスを用いて製造することが好ましい。製造に要する時間を最も短縮化することが可能であり、しかも、製造プロセスの単純化が図れるためトータルで考えたときの生産コストの低減化が可能となるからである。
【0028】
本件発明に係る導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法は、以下のように製造方法Aと製造方法Bとに大別して捉えられる。即ち、銅粉スラリーに添加するのは、ケイ素化合物塩(例えば、ケイ酸ナトリウム等)、水溶性のアルミニウム化合物塩(例えば、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等)、水溶性のスズ化合物塩(スズ酸ナトリウム、硫酸スズ、塩化スズ等)、水溶性の亜鉛化合物塩(硫酸亜鉛、塩化亜鉛、亜鉛酸ナトリウム等)、水溶性のジルコニウム化合物塩(硝酸ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム、ジルコニウム酸ナトリウム等)、水溶性のチタン化合物塩(硫酸チタン、塩化チタン、シュウ酸チタン酸カリウム等)であるから、銅粉スラリーがアルカリ性を呈する場合と酸性を呈する場合とが考えられる。従って、アルカリ性になった銅粉スラリー(本件明細書では、「アルカリ性銅粉スラリー」と称している。)と、酸性になった銅粉スラリー(本件明細書では、「酸性銅粉スラリー」と称している。)とで、pH調整操作が異なるのである。
【0029】
本件発明に係る製造方法Aとは、「銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の塩基性化合物塩を添加しアルカリ性銅粉スラリーとし、このアルカリ性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を加えて溶液pHを3〜6の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、 その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法。」である。
【0030】
この製造方法の特徴は、銅粉スラリーに水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を添加して一旦アルカリ溶液となった場合を対象としているのである。そして、このアルカリ溶液の状態から、アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて、溶液pHを酸性領域にもっていくことで、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成するのである。その後、粉粒表面にある被膜を形成した銅粉を濾別採取して、洗浄し、乾燥することで粉粒上の被膜から一定量の水分を飛ばして、水を化合した酸化物若しくは水酸化物被膜としての表面処理層を銅粉の粉粒上に形成するのである。
【0031】
ここで、「アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて溶液pHを3〜6の範囲に調整」としたのは、溶液pHが3より、酸性側になると、銅粉の粉粒表面への目的の被膜の形成速度が速く不均一な被膜を形成し、同時に一旦生成した被膜の再溶解が起こりやすくなり、結果として良好な被膜が得られないのである。一方、溶液pHが6よりもアルカリ性側になると、銅粉の粉粒表面に形成させる被膜の形成反応が著しく低下し、銅粉の粉粒表面での被膜の密着性が低下するため、均一で密着性に優れた良好な被膜の形成が困難となるようである。
【0032】
本件明細書で言う「アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液」とは、通説どおり水に溶解させると水素イオンが生じる酸のことであり、少なくとも硫酸、塩酸、酢酸の水溶液の使用が可能である。そして、このアウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を用いて、溶液pHを調整する際には、アウレニウスの定義による酸を含んだ溶液の添加速度を適度にゆっくりと設定し、溶液のpH変化を緩やかに起こさせることで、目的の被膜形成が良好に行え、その被膜の均一性も向上するのである。
【0033】
乾燥に関しては、その手法に特段の制限はなく、銅粉の粉粒表面に形成した被膜から、十分に水分を蒸発させることが出来る方法であれば、大気加熱乾燥、真空加熱乾燥等の雰囲気も問題ではない。但し、乾燥温度は、表面処理層の不必要な酸化を防止するため、100℃以下の温度で適当な乾燥条件を採用することが望ましいのである。この乾燥に関しては、以下に述べる製造方法Bにおいても、同様に考えられる。
【0034】
本件発明に係る製造方法Bとは、「銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の酸性化合物塩を添加し酸性銅粉スラリーとし、この酸性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を加えて溶液pHを8〜11の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした導電性ペースト用の表面処理銅粉の製造方法。」である。
【0035】
この製造方法Bの特徴は、銅粉スラリーに水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を添加して一旦酸性溶液となった場合を対象としているのである。そして、この酸性溶液の状態から、アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて、溶液pHを酸性領域にもっていくことで、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成するのである。その後、粉粒表面にある被膜を形成した銅粉を濾別採取して、洗浄し、乾燥することで粉粒上の被膜から一定量の水分を飛ばして、水を化合した酸化物若しくは水酸化物被膜としての表面処理層を銅粉の粉粒上に形成するのである。
【0036】
ここで、「アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて溶液pHを8〜11の範囲に調整」としたのは、溶液pHが11より、アルカリ性側になると、銅粉の粉粒表面への目的の被膜の形成速度が速く不均一な被膜を形成し、同時に一旦生成した被膜の再溶解が起こりやすくなり、結果として良好な被膜が得られないのである。一方、溶液pHが8よりも酸性側になると、銅粉の粉粒表面に形成する被膜の形成反応が著しく低下し、銅粉の粉粒表面での被膜の密着性が低下するため、均一で密着性に優れた良好な被膜の形成が困難となるようである。
【0037】
本件明細書で言う「アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液」とは、通説どおり水に溶解させると水酸イオンが生じるもののことであり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等の水溶液の使用が可能である。そして、このアウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を用いて、溶液pHを調整する際には、アウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液の添加速度を適度にゆっくりと設定し、溶液のpH変化を緩やかに起こさせることで、目的の被膜形成が良好に行え、その被膜の均一性も向上するのである。
【0038】
そして、以上に述べた製造方法に用いる銅粉は、予め銅粉の粉粒の予備酸化処理を施しておくと、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上を用いて得られる被膜の形成が容易になり、密着性に優れるようになる傾向を示すようである。従って、銅粉の表面を大気中で加熱することによる大気酸化、若しくは溶液中での化成処理による酸化処理を施しておくことが望ましいのである。
【0039】
そして、表面処理銅粉は、必要に応じて粉粒の凝集状態を破壊する解粒処理を行い、使用目的に応じた分散性の調整を行うのである。ここで言う分散性の調整とは、上述した凝集度の調整の意味になる。従って、解粒処理とは、この凝集した状態にある粉体を、一粒一粒の粉粒に分離することを言うのである。
【0040】
単に解粒処理を行うことを目的とするのであれば、解粒の行える手段として、高エネルギーボールミル、高速導体衝突式気流型粉砕機、衝撃式粉砕機、ゲージミル、媒体攪拌型ミル、高水圧式粉砕装置等種々の物を用いることが可能である。ところが、表面処理銅粉を用いた導電性ペーストの粘度を可能な限り低減させることを考えると、表面処理銅粉の比表面積を可能な限り小さなものとすることが求められる。
【0041】
このような認識に基づいて、本件発明者等が鋭意研究した結果、以下に述べる二つの解粒手法を採用することが好ましいのである。この二つの方法に共通することは、表面処理銅粉の粉粒が装置の内壁部、攪拌羽根、粉砕媒体等の部分と接触することを最小限に抑制し、凝集した粉粒同士が相互に衝突し合い、しかも、解粒が十分可能な方法である点である。即ち、粉粒の表面を傷つけ、表面粗さを増大させる可能性が最も少ないものである。そして、十分な粉粒同士の衝突を起こさせることで、凝集状態にある粉粒を解粒し、同時に、粉粒同士の衝突による粉粒表面の平滑化の可能な手法を採用したのである。
【0042】
解粒処理を行う一つの手法としては、凝集状態にある乾燥した表面処理銅粉に対し、遠心力を利用した風力サーキュレータを用いるのである。ここで言う「遠心力を利用した風力サーキュレータ」とは、エアをブロワーして、凝集した表面処理銅粉を円周軌道を描くように吹き上げてサーキュレーションさせ、このときに発生する遠心力により粉粒同士を気流中で相互に衝突させることで解粒作業を行うのである。かかる場合、遠心力を利用した市販の風力分級器を用いることも可能であるが、あくまでも分級を目的としたものではなく、風力分級器がエアをブロワーして、凝集した銅粉を円周軌道を描くように吹き上げるサーキュレータの役割を果たすのである。
【0043】
また、もう一つの解粒手法としては、凝集状態にある表面処理銅粉を含有した表面処理銅粉スラリーを、遠心力を利用した流体ミルを用いて解粒処理するのである。ここで言う「遠心力を利用した流体ミル」とは、表面処理銅粉スラリーを円周軌道を描くように高速でフローさせ、このときに発生する遠心力により凝集した粉粒同士を溶媒中で相互に衝突させ、解粒作業を行うために用いるのである。
【0044】
上述した解粒処理は、必要に応じて複数回を繰り返して行うことも可能であり、要求品質に応じて、解粒処理のレベルの任意選択が可能である。解粒処理の施された表面処理銅粉は、凝集状態が破壊され新たな粉体特性を備えることになるのである。そして、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50と画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下とすることが、最も望ましいのである。ここで言う凝集度が1.7以下となると、導電性ペースト用途に特に適した分散状態が確保できていると言えるのである。
【0045】
以上のような製造方法を用いることで、本件発明に係る表面処理銅粉を、効率よく製造することが可能となるのである。この表面処理銅粉は、有機ビヒクルと混合して導電性ペーストに加工して、主に焼結回路及び導体を形成する際の脱媒過程で酸化進行することが無くなるのである。また、本件発明に係る表面処理銅粉は有機ビヒクルを構成する溶媒に対する耐酸化抵抗力が強く、変質しにくい傾向にある。従って、次のような利点が得られるのである。
【0046】
本件発明に係る表面処理銅粉は、テルピネオール系導電性ペーストにおいて、次のような有用性を発揮するのである。テルピネオール系導電性ペーストの粘度における特徴は、導電性ペーストに加工した直後の粘度が最も高く、時間の経過と共に粘度が低下していく傾向にある。このように経時的に低下していく粘度を初期粘度に戻すことは、事後的調整としては殆ど不可能であり、テルピネオール系導電性ペーストの粘度の経時変化を可能な限り抑制する技術が強く求められていた。ところが、本件発明に係る表面処理銅粉と、テルピネオール系樹脂と混合して得られる導電性ペーストは、前述した経時変化が小さくなるのである。
【0047】
従って、上述したように導電性ペースト粘度の経時変化が小さいと言うことは、導電性ペーストとしての粘度管理が容易になり、導電性ペーストの品質変動が小さいと言うことになる。導電性ペーストを使用する分野の中でも、導電性ペーストを用いて製造する回路の厚さ、幅、回路エッジの直線性等に高い精度が要求されるプリント配線板製造分野において、特に有用なものとなるのである。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態を通じて、比較例と対比しつつ、本件発明に関し、より詳細に説明する。
【0049】
第1実施形態: 本実施形態では、ケイ酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。
【0050】
ここで用いた芯材となる銅粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積粒径D50の値が4.18μm、タップ充填密度4.8g/cm3、比表面積が0.29m2/gであった。ここでの「タップ充填密度の測定」には、試料重量を120gとして、パウダーテスターPT−E(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて測定した。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した重量累積粒径D50のの測定は、0.1gの粉体をSNディスパーサント5468の0.1%水溶液(サンノプコ社製)と混合し、超音波ホモジナイザ(日本精機製作所製 US−300T)で5分間分散させた後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置 Micro Trac HRA 9320−X100型(Leeds+Northrup社製)を用いて行った。比表面積は、粉体試料2.00gを75℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定したものである。
【0051】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0052】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gのケイ酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0053】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の硫酸溶液を加え、pH4になるように調整した。溶液pHが4になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0054】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は250℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0055】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、テルピネオール系導電性ペーストを製造した。ここで製造したテルピネオール系導電性ペーストは、表面処理銅粉を80重量部、バインダーとなる有機ビヒクルを20質量部の組成として、これらを混合して1時間の混錬を行ってテルピネオール系導電性ペーストを得たのである。このときの有機ビヒクルは、テルピネオール93質量部、エチルセルロース7質量部の組成を持つものを用いた。
【0056】
以上のようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると880Pa・s、一週間経過後の粘度は712Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると19.1%であった。なお、本件明細書における粘度の測定には、東機産業社製の粘度計であるRE−105Uを用いて、0.5rpmの回転数で測定したものである。
【0057】
第2実施形態: 本実施形態では、基本的に第1実施形態と同様の方法でケイ酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。第1実施形態と異なるのは、銅粉の予備酸化を行わなかった点である。従って、この実施形態に関する詳細な説明は、重複した記載を避けるため省略することとする。
【0058】
この実施形態で得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は245℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0059】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると800Pa・s、一週間経過後の粘度は640Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.0%であった。
【0060】
第3実施形態: 本実施形態では、アルミン酸ナトリウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0061】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉100gに対し、50gの過酸化水素水を1時間かけて、ゆっくりと添加して、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0062】
そして、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。次に、この銅粉スラリーに14gのアルミン酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0063】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は280℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0064】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると825Pa・s、一週間経過後の粘度は672Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると18.5%であった。
【0065】
第4実施形態: 本実施形態では、スズ酸ナトリウムを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0066】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0067】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gのスズ酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0068】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は260℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0069】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると840Pa・s、一週間経過後の粘度は630Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると25.0%であった。
【0070】
第5実施形態: 本実施形態では、ケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムとを用いて混合組成の表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0071】
本実施形態における混合層を備えた表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0072】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに、各々7gのケイ酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムを加え、30分間の攪拌を行った。この30分間の攪拌が終了すると、以下第1実施形態と同様にして、表面処理銅粉を得たのである。
【0073】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は300℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0074】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると850Pa・s、一週間経過後の粘度は700Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると17.6%であった。
【0075】
第6実施形態: 本実施形態では、硫酸アルミニウムを用いて形成した表面処理層を備えた表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉100gに対し、50gの過酸化水素水を1時間かけて、ゆっくりと添加して、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0077】
そして、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。次に、この銅粉スラリーに14gの硫酸アルミニウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0078】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10になるように調整した。溶液pHが10になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0079】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は283℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0080】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると790Pa・s、一週間経過後の粘度は630Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.3%であった。
【0081】
第7実施形態: 本実施形態では、硫酸スズを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0082】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0083】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gの硫酸スズを加え、30分間の攪拌を行った。
【0084】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH9.5になるように調整した。溶液pHが9.5になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0085】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は257℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0086】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると800Pa・s、一週間経過後の粘度は605Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると24.4%であった。
【0087】
第8実施形態: 本実施形態では、硫酸亜鉛を用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0088】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0089】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに14gの硫酸亜鉛を加え、30分間の攪拌を行った。
【0090】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH9になるように調整した。溶液pHが9になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0091】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は260℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0092】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると820Pa・s、一週間経過後の粘度は650Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると20.7%であった。
【0093】
第9実施形態: 本実施形態では、塩化酸化ジルコニウムを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0094】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0095】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに10gの塩化酸化ジルコニウムを加え、30分間の攪拌を行った。
【0096】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10になるように調整した。溶液pHが10になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0097】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は280℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0098】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると850Pa・s、一週間経過後の粘度は620Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると27.1%であった。
【0099】
第10実施形態: 本実施形態では、硫酸チタンを用いて表面処理層を形成した表面処理銅粉を製造し、従来品との耐酸化性を比較した。更に、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造し、当該導電性ペーストの粘度の変化率を測定したのである。ここで用いた芯材となる銅粉は、第1実施形態で用いたと同様のものであるため、重複した記載を避けるため、ここでの説明は省略する。
【0100】
本実施形態における表面処理銅粉の製造は、以下に述べる各工程を経て製造した。最初に銅粉の予備酸化を行った。ここでは、芯材となる銅粉を120℃の大気雰囲気下で60分間の加熱を行い、粉粒の表面を均一に酸化させた。
【0101】
次に、予備酸化処理の終了した銅粉100gを、純水1000mlに対して加え分散させ銅粉スラリーとした。そして、この銅粉スラリーに10gの硫酸チタンを加え、30分間の攪拌を行った。
【0102】
前記30分間の攪拌が終了すると、攪拌状態を継続して徐々に濃度1wt%の水酸化ナトリウム溶液を加え、pH10.5になるように調整した。溶液pHが10.5になった状態で60分間の攪拌を継続し、直ちに粉体を濾別採取し、洗浄し、70℃の温度で5時間の乾燥処理を行い、表面処理銅粉を得たのである。
【0103】
以上のようにして得られた表面処理銅粉を用い、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は270℃であった。この値は、以下の各比較例と対比すると明らかになるが、酸化開始温度が高くなっている。
【0104】
続いて、当該表面処理銅粉を用いて、第1実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。このようにして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると835Pa・s、一週間経過後の粘度は675Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると19.2%であった。
【0105】
比較例1: この比較例では、実施形態で用いた銅粉をそのまま用いて、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は150℃であった。この値は、上述した実施形態と比較すると極めて低く、低温加熱でも容易に酸化が開始する事が分かるのである。
【0106】
続いて、この銅粉を用いて、実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。こうして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると705Pa・s、一週間経過後の粘度は425Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると39.7%の低粘度化があり、大きな粘度変化が起きていることが分かった。
【0107】
比較例2: この比較例では、実施形態で用いたと同一の銅粉をオレイン酸で処理した表面処理銅粉を使用しているのである。
【0108】
この表面処理銅粉は、前記銅粉25kgを、オレイン酸0.025kgを溶解させた25リットルのメタノール溶液中に投入し、1時間の攪拌を行った。そして、吸引濾過することで、銅粉とメタノール溶液とを濾別し、分取した銅粉を70℃の温度で5時間の乾燥を行い、粒子表面にオレイン酸による表面処理層を形成したものである。
【0109】
この表面処理銅粉を用いて、示差熱分析装置により大気雰囲気下で酸化開始温度を測定した。その結果、酸化開始温度は170℃であった。この値は、上述した実施形態と比較すると極めて低く、低温加熱でも容易に酸化が開始する事が分かるのである。
【0110】
続いて、この銅粉を用いて、実施形態と同様のテルピネオール系導電性ペーストを製造した。こうして得られたテルピネオール系導電性ペーストの製造直後の粘度を測定すると826Pa・s、一週間経過後の粘度は450Pa・sであり、製造直後の粘度を基準に粘度の変化率として考えると45.5%の低粘度化があり、大きな粘度変化が起きていることが分かった。
【0111】
【発明の効果】
本件発明に係る水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか1種以上の成分からなる表面処理層を備えた表面処理銅粉は耐酸化性に優れており、その表面処理銅粉を用いて導電性ペーストを製造すると、粘度の経時変化を非常に小さなものとすることが可能となる。この表面処理銅粉の耐酸化性能は、低温焼成セラミック基板の回路、プリント配線板の回路作成に用いる導電性ペースト、チップ部品の電極形成等に用いると、酸化進行が遅いため、得られる導体回路が非常に優れた導電性能の確保することになる。そして、導電性ペーストの粘度の経時劣化が少ないと言うことは、工業的に大量に使用する際のペースト粘度の管理を省力化するものとなるのである。
Claims (13)
- 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のアルミニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のスズ化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性の亜鉛化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のジルコニウム化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のチタン化合物塩を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - 表面処理層を粉粒表面に備えた銅粉であって、
当該表面処理層は、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩から選ばれる2種以上の成分を用いて得られる被膜を形成し、乾燥させたものであることを特徴とする表面処理銅粉。 - レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量累積粒径D50が0.1〜10μmであり、且つ、当該重量累積粒径D50と走査電子顕微鏡像の画像解析により得られる平均粒径DIAとを用いてD50/DIAで表される凝集度の値が1.7以下である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の表面処理銅粉。
- 請求項1〜請求項8に記載のいずれかの表面処理銅粉の製造方法であって、
銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の塩基性化合物塩を添加しアルカリ性銅粉スラリーとし、
このアルカリ性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による酸を含んだ溶液を加えて溶液pHを3〜6の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、
その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした表面処理銅粉の製造方法。 - 請求項1〜請求項8に記載のいずれかの表面処理銅粉の製造方法であって、
銅粉を水に分散させた銅粉スラリーに、水溶性のケイ素化合物塩、水溶性のアルミニウム化合物塩、水溶性のスズ化合物塩、水溶性の亜鉛化合物塩、水溶性のジルコニウム化合物塩、水溶性のチタン化合物塩の内のいずれか一種以上の酸性化合物塩を添加し酸性銅粉スラリーとし、
この酸性銅粉スラリーにアウレニウスの定義による塩基を含んだ溶液を加えて溶液pHを8〜11の範囲に調整し、銅粉の粉粒表面に目的の成分の被膜を形成させ、
その後、当該粉粒を濾別採取し、洗浄し、乾燥させることを特徴とした表面処理銅粉の製造方法。 - 銅粉は、その粉粒表面が酸化処理されたものである請求項9又は請求項10に記載の表面処理銅粉の製造方法。
- 更に、表面処理銅粉の凝集状態を解消するための解粒処理工程を備えるものである請求項9〜請求項11のいずれかに記載の表面処理銅粉の製造方法。
- 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の表面処理銅粉を用いて製造したことを特徴とする導電性ペースト。
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