JP4233135B2 - 6−(2−(r)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(r)−カルボン酸誘導体およびその製造方法 - Google Patents
6−(2−(r)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(r)−カルボン酸誘導体およびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体およびその製造方法に関する。さらに詳しくは本発明は、式(I)
【化25】
〔式中、R1は式OZ(Zは水素原子、アルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)
【化26】
(式中、R2およびR3はメチル基またはフェニル基を示すが、一方がメチル基を示すときは他方はフェニル基である)を有する基を示す〕で表される6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体およびその製造方法に関する。本発明の化合物(I)は糖尿病、高血糖症および肥満症に対して予防または治療効果を有する1,4−ベンゾジオキサン酸誘導体の合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは先に糖尿病、高血糖症および肥満症の予防または治療剤として有用な式(XVII)
【化27】
〔式中、Aはアリール基または(C3〜C8)シクロアルキル基を示し、R1′およびR2′は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子、(C1〜C6)アルキル基、トリフルオロメチル基、(C1〜C6)アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基またはアリール(C1〜C6)アルキルオキシ基(ここでアリール基、アルキルオキシ基またはアリール(C1〜C6)アルキルオキシ基は場合により1または2個のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示し、またはR1′とR2′とは一緒になって−OCH2O−を示し、R3′は水素原子または(C1〜C6)アルキル基を示し、R4′は水素原子またはCO2R5′(R5′は水素原子または(C1〜C6)アルキル基を示す)を示し、Xは式
【0003】
【化28】
(式中、nは1または2を示す)を有する2価の基を示す〕で表される1,4−ベンゾジオキサン誘導体を開発し、特許出願した(WO 96/35685)。WO 96/35685には上記1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造方法としていくつかの製法が記載されており、その1つとして、式(XVIII)
【化29】
(式中、A、R1′およびR2′は前述したものと同一意義を有する)を有する化合物と式(XIX)
【0004】
【化30】
(式中、R3′、R4′およびR5′は前述したものと同一意義を有する)を有する化合物を反応させて上記1,4−ベンゾジオキサン誘導体を得る方法が記載されている。
【0005】
本発明の化合物(I)において、R1が式OZで、Zが水素原子または(C1〜C4)アルキル基である場合、上記式(XIX)で表される化合物の一般式の定義に包含されるものであるが、WO 96/35685には本発明化合物(I)は具体的には記載されておらず、またその製造方法についても全く記載されていない。従って本発明化合物(I)は新規な化合物である。
上記1,4−ベンゾジオキサン誘導体(XVII)は3個の不斉炭素原子を有する場合、理論的に8個の立体異性体が存在する。一般にある化合物の立体異性体が他の立体異性体と生体内における挙動を異にし、その薬理作用が異なることが知られている。事実、上記化合物(XVII)においてもそのβ3作動活性が立体異性体間で最大1000倍異なる場合があることがWO 96/35685の試験例1に示されている。
【0006】
例えば、式(XX)
【化31】
を有する(2R,2′R,2″R)−6−{2−〔2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル〕アミノ}プロピル−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−カルボン酸エチルエステル(実施例28)のβ3作動活性は1.0×10-10(脂肪分解モルEC50値)であるのに対して、その立体異性体の1つである(2S,2′S,2″R)−6−{2−〔2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル〕アミノ}プロピル−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−カルボン酸エチルエステル(実施例31)のβ3作動活性は1.0×10-7(脂肪分解モルEC50値)であり(WO 96/35685、第138頁表1参照)、その活性には1000倍の開きがある。従ってこれらの化合物を医薬として利用する場合、最も薬理活性の強い立体異性体を高純度で効率よく製造することが望まれる。
【0007】
WO 96/35685においては、上記化合物(XX)は、次に反応式で示すように、(R)−(−)−2−アミノ−1−(3−クロロフェニル)エタノール(XXI)を(R)−6−アセトニル−2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−2−カルボン酸メチルエステル(XXII)と反応させて化合物(XXIII)を得、化合物(XXIII)を接触還元してジアステレオ混合物(XXIV)を得、これをジtert−ブチルジカーボネートと反応させてN−tert−ブトキシカルボニルジアステレオ混合物(XXV)を得、この混合物をカラムクロマトグラフィー処理によりジアステレオマーを分離して化合物(XXVI)と化合物(XXVII)を得、化合物(XXVI)をエタノール中濃塩酸で処理することによって製造されている(WO 96/35685の実施例28および製造例58参照)。
【0008】
【化32】
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
WO 96/35685に記載の上記化合物(XX)の製造法においては、イミノ化合物(XXIII)を接触還元すると生成物はジアステレオ混合物(XXIV)として得られるのでこれを分離が容易な誘導体(XXV)に変換した後、ジアステレオマーの分離をしなければならず、また、生成物の半分が不要な立体異性体(XXVII)となってしまうという問題点がある。
そこで本発明者らは、立体異性体を分離する必要がない1,4−ベンゾジオキサン誘導体の製造方法を提供すべく、鋭意研究の結果本発明を完成するに至った。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は第一に、式(I)
【化33】
〔式中、R1は式OZ(Zは水素原子、アルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)
【化34】
(式中、R2およびR3はメチル基またはフェニル基を示すが、一方がメチル基を示すときは他方はフェニル基である)を有する基を示す〕で表される6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体に関する(第一発明)。
【0011】
本発明は第二に、式(III)
【化35】
〔式中、R1は式OZ(Zは水素原子、アルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)
【化36】
(式中、R2およびR3はメチル基またはフェニル基を示すが、一方がメチル基を示すときは他方はフェニル基である)を有する基を示す〕を有する6−ホルミル−1,4−べンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体を式(IV)
【化37】
(式中、R4は(C1〜C4)アルキル基、(C1〜C4)アルコキシ基、ベンジルオキシ基またはトリフルオロメチル基を示す)で表される化合物と反応させて式(V)
【0012】
【化38】
(式中、R1およびR4は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(V)をアルコリシスに付して式(VI)
【化39】
(式中、R1およびR4は前述したものと同一意義を有し、R5は(C1〜C4)アルキル基を示す)で表される化合物を得、得られた化合物(VI)を不斉還元に付して式(VII)
【0013】
【化40】
(式中、R1、R4およびR5は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(VII)を還元して式(VIII)
【化41】
(式中、R1およびR4は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(VIII)をジフェニルジスルフィドまたはハロゲン化剤と反応させて式(IX)
【0014】
【化42】
(式中、R1およびR4は前述したものと同一意義を有し、R6はフェニルチオ基またはハロゲン原子を示す)で表される化合物を得、得られた化合物(IX)を還元して式(X)
【0015】
【化43】
(式中、R1およびR4は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(X)を加水分解することからなる式(I)
【化44】
(式中、R1はOH基を示す)で表される6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体の製造方法に関する(第二発明)。
【0016】
本発明は第三に、式(III)
【化45】
〔式中、R1は式OZ(Zは水素原子、アルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)
【化46】
(式中、R2およびR3はメチル基またはフェニル基を示すが、一方がメチル基を示すときは他方はフェニル基である)を有する基を示す〕を有する6−ホルミル−1,4−べンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体を1級アミンと反応させてイミンを形成させた後、ニトロエタンと反応させて式(XI)
【化47】
(式中、R1は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(XI)を式(XII)
【0017】
【化48】
(式中、R7およびR8は(C1〜C4)アルキル基またはフェニル基を示すが、一方がアルキル基であるときは他方はフェニル基である)で表される化合物と反応させて式(XIII)
【化49】
(式中、R1、R7およびR8は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(XIII)を還元して式(XIV)
【0018】
【化50】
(式中、R1、R7およびR8は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(XIV)を還元に付すことからなる式(I)
【化51】
(式中、R1は前述したものと同一意義を有する)で表される6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体の製造方法に関する(第三発明)。
【0019】
本発明は第四に、式(III)
【化52】
〔式中、R1は式OZ(Zは水素原子、アルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)
【化53】
(式中、R2およびR3はメチル基またはフェニル基を示すが、一方がメチル基を示すときは他方はフェニル基である)を有する基を示す〕を有する6−ホルミル−1,4−べンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体をニトロエタンと反応させて式(XV)
【0020】
【化54】
(式中、R1は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(XV)を還元して式(XVI)
【化55】
(式中、R1は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物を得、得られた化合物(XVI)を還元することを特徴とする式(I)
【化56】
(式中、R1は前述したものと同一意義を有する)で表される6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体の製造方法に関する(第四発明)。
【0021】
本明細書を通じて、アルカリ金属の具体例としてはリチウム、カリウムおよびナトリウムがあげられる。(C1〜C4)アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチルがあげられ、アリール基の具体例としては、フェニル、α−ナフチルおよびβ−ナフチルがあげられ、(C1〜C4)アルコキシ基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシがあげられる。
【0022】
第一発明において、式(I)を有する化合物の例としては、
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸、
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸メチルエステル、
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸エチルエステル、
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド、
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(R)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド、
などがあげられる。
【0023】
第二発明の第1工程は、化合物(III)を化合物(IV)と反応させて化合物(V)を得ることからなり、反応は溶媒の存在下または非存在下に、塩基およびカルボン酸無水物存在下に行われる。使用される溶媒としては、反応に影響を与えない限り制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物、またはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の水素化アルカリ金属塩;が挙げられる。反応は好適には、無水酢酸中、塩基として酢酸ナトリウムを用い、40℃ないし200℃で、0.5時間ないし12時間反応させることにより行われる。
【0024】
第二発明の第2工程は、化合物(V)をアルコリシスに付して化合物(VI)を得ることからなり、通常アルコール溶媒中、塩基存在下に行われる。使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。使用される塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;が挙げられる。反応は、通常、氷冷下から加熱還流下に好適に行われる。反応時間は、試薬、温度、溶媒等によって異なるが通常、1時間ないし6時間である。反応は好適には、酢酸ナトリウムの存在下、メタノール溶媒中、2ないし4時間加熱還流することにより行われる。
【0025】
第二発明の第3工程は、化合物(VI)を不斉還元に付して化合物(VII)を得ることからなり、溶媒および不斉触媒の存在下、水素添加を行うことにより行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;水、またはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される不斉触媒は、通常、対応する触媒有機金属と不斉な配位子から調製される。使用される触媒金属としては、例えばRhCl3・3H2O、〔RhCl(COD)〕2、〔RhCl(NBD)〕2、〔Rh(NBD)2〕+BF4 -、〔Rh(NBD)2〕+CLO4 -、〔Rh(COD)2〕+BF4 -、〔Rh(COD)2〕+CLO4 -等のロジウム錯体;〔RuCl2(benzene)〕2、RuCl2(SbPh3)3、〔Ru(OAc)2(COD)〕等のルテニウム錯体;イリジウム錯体等が用いられる(ここで、CODは1,5−シクロオクタジエンを表し、NBDはノルボルナジエンを表し、OAcはアセチル基を表し、Phはフェニル基を表す。不斉配位子としては、例えば、(R,R)−DIOP、(S,S)−DIOP、(R,R)−DIPAMP、(S,S)−DIPAMP、(S,S)−CHIRAPHOS、(R,R)−CHIRAPHOS、(S)−PROPHOS、(R)−PROPHOS、(S)−PHENPHOS、(R)−PHENPHOS、(R,R)−NORPHOS、(S,S)−NORPHOS、(S,S)−BPPM、(R,R)−BPPM、(R)−BINAP、(S)−BINAP、CAMPHOS等のホスフィン配位子が使用される(以下に、不斉配位子として使用可能な配位子の構造を記載する)。
【0026】
【化57】
【0027】
このとき不斉配位子は、還元される基質、および還元後の所望の絶対立体配置によって任意に選択される。還元は、通常、大気圧〜50kgf/cm2の圧力の水素ガス下に行われる。反応温度は、15℃〜100℃の範囲で好適に行われる。使用される不斉触媒の量は、反応基質、温度、水素圧等により異なるが、通常基質に対して、0.01mol%〜2mol%の範囲で好適に行われる。反応時間は、反応温度、水素圧、触媒等によって異なるが、通常、1時間ないし24時間である。反応は、好適には、アルコール溶媒、特にメタノールまたはエタノール中で、0.1mol%〜0.2mol%の不斉触媒(〔Rh(NBD)2〕+ClO4 -と(R,R)−DIPAMPから調製した触媒:〔Rh(NBD)(DIPAMP)〕+ClO4 -)を用い、大気圧〜10kgf/cm2の圧力の水素ガス下で、50℃ないし80℃で、5時間ないし12時間行われる。
【0028】
第二発明の第4工程は、化合物(VII)を還元に付して化合物(VIII)を得ることからなり、通常溶媒の存在下に還元剤を用いて行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;水、またはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等が好適に用いられる。反応温度は、還元剤、溶媒等によって異なるが、通常−50℃〜加熱還流下に行われる。反応時間は、反応温度、試薬等によって異なるが、通常30分間〜24時間である。反応は好適には、アルコール類特にメタノール、エタノールまたはイソプロパノールを溶媒とし、水素化ホウ素ナトリウムの存在下、15〜20時間加熱還流することにより行われるか、あるいは水素化ホウ素リチウムの存在下、10〜35℃で5〜6時間反応することにより行われる。
【0029】
第二発明の第5工程は、化合物(VIII)をジフェニルジスルフィドまたはハロゲン化剤と反応させて化合物(IX)を得ることからなり、反応は通常溶媒の存在下に行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;水、ピリジン、アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒が用いられる。反応は、通常リン試薬の存在下に行われる。使用されるリン試薬としては、例えば、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト等のホスファイト類が挙げられる。反応は、試薬として、ジフェニルジスルフィド;あるいはヨウ素、臭素、塩素等のハロゲン化剤を用いて好適に行われる。反応は場合により、塩基を加えることができる。使用される塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;イミダゾール等が好適に用いられる。反応温度は、通常氷冷下から加熱還流の範囲で行われる。反応時間は試薬、温度等により異なるが、通常、1時間ないし24時間である。反応は好適には、ピリジン溶媒中、ジフェニルジスルフィド、トリn−ブチルホスフィンを用いて、10℃〜40℃で3時間ないし18時間行われる。
【0030】
第二発明の第6工程は、化合物(IX)を還元して化合物(X)を得ることからなり、反応は通常溶媒の存在下に行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン類;水またはこれらの混合溶媒が用いられる。反応は触媒を用いた水素化条件下に行われ、使用される触媒として例えば、ラネーニッケル、パラジウム炭素、水酸化パラジウム等が用いられる。反応は水素雰囲気下で行われるか、あるいは、水素添加したラネーニッケルを用いて行われる。反応温度は、通常10℃から加熱還流の範囲で行われ、反応時間は試薬、温度により異なるが、通常1時間ないし10時間である。反応は、場合により大気圧から30kgf/cm2の水素ガス下に行われる。好適には、エタノール溶媒中、水素添加したラネーニッケルを用い、6時間から8時間加熱還流することにより行われる。
【0031】
第二発明の第7工程は、化合物(X)を加水分解して化合物(I)を得ることからなり、反応は通常含水溶媒中で行われる。反応は酸の存在下に好適に行われる。使用される酸は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸のような無機酸類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。反応に使用される溶媒は水単独あるいは水と有機溶媒の混合溶媒で行われ、有機溶媒としては反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;アセトニトリル、ピリジンまたはこれらの混合溶媒が用いられる。水と有機溶媒の混合比率は、水:有機溶媒 1:99〜99:1(v/v)の範囲内で好適に行われる。反応温度は、20℃ないし加熱還流下に行われる。反応時間は、使用される溶媒、試薬、温度により異なるが、通常1時間ないし96時間である。反応は好適には、酢酸と水(1:1、v/v)の混合溶媒中、塩酸または硫酸存在下、24時間ないし72時間加熱還流することにより好適に行われる。
【0032】
第三発明の第1工程は、化合物(III)を溶媒の存在下または非存在下で1級アミンと反応させてイミンを形成させた後、ニトロエタンと反応させて化合物(XI)を得ることからなる。使用される溶媒としては、反応に影響を与えない限り制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;またはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。好適には、1〜1.2当量のシクロヘキシルアミンの存在下、ベンゼンまたはトルエン中、生成する水を除去しながら20℃ないし加熱還流下、1時間ないし12時間反応を行うことによりイミンが形成される。形成されたイミンは、溶媒交換により酢酸溶媒中、ニトロエタンの存在下に、20℃ないし加熱還流下に、1時間ないし12時間反応を行い、一般式(XI)で表される化合物が製造される。
【0033】
第三発明の第2工程は、化合物(XI)を化合物(XII)と反応させて化合物(XIII)を得ることからなり、反応は溶媒中、通常塩基の存在下に行われる。使用される溶媒としては、反応に影響を与えない限り制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;またはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のtert−ブトキシド類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等の水素化アルカリ金属塩が挙げられる。反応は、好適には、エーテル類、特にテトラヒドロフラン中、化合物(XI)と水素化アルカリ金属、特に水素化ナトリウムを反応させ、アルコキシドを発生させた後、化合物(XII)を加え、0.5時間ないし12時間反応させることにより行われる。反応温度は、好適には−90℃ないし10℃で行われる。
【0034】
第三発明の第3工程は、化合物(XIII)を還元に付して化合物(XIV)を得ることからなり、触媒の存在下接触水素化を行うことにより行われる。反応は通常溶媒中で行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えない限り制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;またはこれらの混合溶媒が用いられる。反応は触媒の存在下に行われ、使用される触媒としては、例えばパラジウム−炭素、酸化白金、水酸化パラジウム、ラネーニッケル等の接触水素化触媒が用いられる。反応は、大気圧の水素ガス、あるいは中圧ないし高圧の水素ガス雰囲気下に行われるか、蟻酸塩を水素ドナーとして行われる。反応は好適にはアルコール溶媒特にメタノール、エタノール中、パラジウム−炭素触媒下、大気圧の水素ガス雰囲気下に10℃ないし40℃で、1時間ないし24時間で行われる。
【0035】
第三発明の第4工程は、化合物(XIV)を酸性条件下の還元に付して化合物(I)を得ることからなり、ベンジル位エーテル結合を還元する工程である。反応は通常酸性条件下に行われる。使用される酸としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファスルホン酸等のスルホン酸類;三弗化ホウ素ジエチルエーテルコンプレックス、三塩化アルミニウム等のルイス酸;およびこれらの混合物が挙げられる。還元剤としては、通常ヒドリド還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリエチルシラン等、あるいは第3工程と同様な接触水素化による還元が行われる。使用される溶媒は、反応に影響を与えない限り制限はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸エステル類;またはこれらの混合溶媒が用いられる。反応は好適には、還元剤としてトリエチルシランを用いて、トリフルオロ酢酸溶媒下に、氷冷ないし50℃で、30分間ないし12時間反応を行うことにより行われる。上記第4工程を接触水素化で行う場合、上記第3工程と第4工程は、場合により同一容器内で行われる。すなわち、第3工程の反応条件において、酸を加えることにより行われる。
【0036】
第四発明の第1工程は、化合物(III)をニトロエタンと反応させて化合物(XV)を得ることからなり、反応は通常溶媒の存在下に、不斉触媒を用いて行われる。溶媒としては反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;アセトニトリル、ピリジンまたはこれらの混合溶媒が用いられる。不斉触媒は通常、金属錯体と不斉配位子より調製される。金属錯体としては、例えば、ランタントリクロリド(LaCl3)、ランタントリイソプロポキシド(La(OiPr)3)、ネオジムトリクロリド(NdCl3)、ネオジムトリイソプロポキシド(Nd(OiPr)3)、サマリウムトリクロリド(SmCl3)、サマリウムトリイソプロポキシド(Sm(OiPr)3)、ユーロピウムトリクロリド(EuCl3)、ユーロピウムトリイソプロポキシド(Eu(OiPr)3)、ガドリニウムトリクロリド(GdCl3)、ガドリニウムトリイソプロポキシド(Gd(OiPr)3)、プラセオジムトリクロリド(PrCl3)、プラセオジムトリイソプロポキシド(Pr(OiPr)3)、プロメチウムトレクロリド(PmCl3)、プロメチウムトリイソプロポキシド(Pm(OiPr)3)等が挙げられる。不斉配位子としては、例えば(R)−BINOL、(S)−BINOL、(R)−BINAP、(S)−BINAP等が挙げられる(下記に構造を示す。ここで、RおよびSは、それぞれの光学異性体の絶対立体配置を示す)。
【0037】
【化58】
このとき不斉配位子は、反応される基質および反応後の所望の絶対立体配置によって任意に選択される。不斉配位子としてBINOLを用いる場合、場合により対応するBINOLアルコキシドより不斉錯体を調製することができる。BINOLアルコキシドとしては例えば、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等が挙げられる。使用される触媒の量は反応基質、反応温度等により異なるが、通常、反応基質に対し0.01mol%〜10mol%である。反応は、−70℃〜30℃の温度範囲で好適に行われる。反応時間は、触媒種、基質、反応温度によって異なるが通常24時間〜168時間である。
反応は、好適には、金属錯体としてサマリウムトリクロリド(SmCl3)、またはサマリウムトリイソプロポキシド(Sm(OiPr)3)、またはランタントリクロリド(LaCl3)、またはランタントリイソプロポキシド(La(OiPr)3)を用い(S)−ビナフトール((S)−BINOL)を不斉配位子として用いて調製した不斉触媒を基質に対して1mol%〜5mol%を用い、テトラヒドロフラン中、−60〜−30℃で、60時間〜80時間行われる。
【0038】
第四発明の第2工程は、化合物(XV)を還元して化合物(XVI)を得ることからなり、ニトロ基を還元する工程である。反応は触媒の存在下接触水素化を行うか、または還元剤により還元を行うか、または水素化物による還元により行う。反応は、通常溶媒の存在下に行われる。使用される溶媒としては反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;またはこれらの混合溶媒が用いられる。接触水素化を行う場合、使用される触媒としては<例えばパラジウム−炭素、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル等の接触水素化触媒が用いられ、通常、大気圧から50kgf/cm2の圧力の水素ガス下に行われる。還元剤を用いる場合、使用される還元剤としては、例えば金属ナトリウム、金属リチウム、二塩化スズ、沃化サマリウム、鉄粉、亜鉛粉等が用いられる。水素化物を用いる場合、使用される還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等が用いられる。反応は、通常、−78℃〜30℃の範囲で好適に行われる。反応時間は試薬、温度等により異なるが、通常1時間ないし48時間である。反応は好適には、パラジウム−炭素、または酸化白金存在下、大気圧の水素ガス下、メタノールまたはエタノール中、15℃〜30℃で8ないし12時間行われる。
【0039】
第四発明の第3工程は、化合物(XVI)を還元に付して化合物(I)を得ることからなり、反応は通常、酸存在下に還元剤により行われる。使用される酸は、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸のような無機酸類;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。反応に使用される溶媒は、反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒が用いられる。使用される還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素塩類;トリエチルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルシラン等のシラン類が好適に用いられる。反応温度は、20℃ないし加熱還流下に行われる。反応時間は、使用される触媒、試薬、温度により異なるが、通常1時間ないし48時間である。反応は好適には、トリフルオロ酢酸溶媒中、トリエチルシラン存在下、1時間ないし24時間加熱還流することにより好適に行われる。
【0040】
上記、第3工程は、接触水素化でも行うことができる。反応に使用される溶媒は反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒が用いられる。接触水素化を行う場合、使用される触媒としては例えば、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル等の接触水素化触媒が用いられ、通常、大気圧から50kgf/cm2の圧力の水素ガス下に行われる。反応は場合により酸の存在下に行われる。使用される酸は、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸のような無機酸類;酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。好適には、アルコール溶媒中、パラジウム炭素触媒下、無機酸を加え、大気圧から10kgf/cm2の圧力の水素ガス下、20℃ないし50℃で、1ないし24時間反応することにより行われる。
【0041】
上記第二〜第四発明において出発物質として使用される6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサンー2−(R)−カルボン酸誘導体(III)は公知化合物であって、(±)−6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−カルボン酸と(S)−1−フェニルエチルアミンとを縮合させて、6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(2−R体)と6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(2−S体)の混合物を得、この混合物を分別結晶法により精製し、必要により加水分解することにより得られる(WO 96/35685参照)。
不要な立体異性体である上記2−S体は、塩基で処理することにより、所望の2−R体(化合物(III))に変換することができる。
【0042】
上記変換反応は通常、溶媒中上記2−S体を塩基で処理することにより行われる。使用される溶媒は反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;アセトニトリル、ピリジン、水またはこれらの混合溶媒が用いられ、反応は塩基の存在下に好適に行われる。使用される塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等のアルコキシド類;1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(DABCO)、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(DBU)等のジアザビシクロ類;水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム等の水素化物が挙げられる。反応は、上記2−S体に対し、1モル%当量〜3モル当量の塩基存在下に、15℃ないし加熱還流下に行われる。反応時間は試薬、溶媒、温度等により異なるが、通常1時間ないし150時間である。反応は、好適にはアルコール溶媒、特にメタノールまたはエタノール中、5モル%当量ないし1モル当量のDBUまたはDBN存在下、15℃ないし加熱還流下、3時間ないし100時間反応させることにより2−S体と2−R体のほぼ1:1の平衡混合物に達して終結する。2−S体と2−R体を分別再結晶またはシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離する。
【0043】
糖尿病、高血糖症および肥満症の予防または治療剤として有用な前記化合物(XVII)は、本発明の化合物(I)を前記式(XVIII)
【化59】
(式中、A、R1′およびR2′は前述したものと同一意義を有する)で表される化合物と塩基の存在下、有機溶媒中で縮合させ、化合物(I)においてR1がOZ(Zはアルカリ金属または(C1〜C4)アルキル基を示す)を有する基または式(II)を有する基である場合は、必要により中和もしくは加水分解し、あるいはさらに所望によりエステル化することにより得られる。
【0044】
上記縮合反応は、通常溶媒中で塩基の存在下に行われる。使用される溶媒は反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;アセトニトリル、ピリジン、水またはこれらの混合溶媒が用いられる。反応は塩基の存在下に好適に行われる。使用される塩基は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸銀等の炭酸塩類;トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類が挙げられる。反応は場合により、添加剤を加えることができる。使用される添加剤は反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、沃化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、沃化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、沃化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、沃化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、沃化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、沃化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、臭化テトラヘプチルアンモニウム、沃化テトラヘプチルアンモニウム、水酸化テトラヘプチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、沃化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム等の相間移動触媒が挙げられる。反応は場合によりシリル化剤の存在下に行われる。シリル化剤としては、例えばクロロトリメチルシラン、トリメチルシリルアセタミド等が挙げられる。反応は化合物(I)に対し、1モル当量〜10モル当量の化合物(XVIII)を使用し、化合物(XVIII)を反応の最初に全て加えるかあるいは場合により一定時間間隔で化合物(XVIII)を化合物(I)に少量ずつ加える方法により行われる。反応は、氷冷下ないし加熱還流下で行われる。反応時間は溶媒、当量、温度によって異なるが、通常1時間ないし72時間である。反応は、好適には、化合物(I)に対し、1モル当量ないし3モル当量の化合物(XVIII)をアセトン−水(1:1、v/v)の混合溶媒中、塩基として炭酸カリウムを用いて24ないし48時間加熱還流するか、あるいは化合物(I)に対し、1モル当量ないし3モル当量の化合物(XVIII)をn−プロパノール−水(1:1、v/v)の混合溶媒中、塩基としてトリエチルアミンを用いて24ないし48時間加熱還流することで行われる。
【0045】
上記加水分解または中和工程は、酸の存在下に水中または水−有機溶媒混合溶媒中で行われる。使用される酸は、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸のような無機酸類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸等のスルホン酸類が挙げられる。反応に使用される溶媒は水単独あるいは水と有機溶媒の混合溶媒で行われ、有機溶媒としては反応に影響を与えなければ何でもよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等の有機アミン類;アセトニトリル、ピリジンまたはこれらの混合溶媒が用いられる。水と有機溶媒の混合比率は、水:有機溶媒 1:99〜99:1(v/v)の範囲内で好適に行われる。反応温度は、20℃ないし加熱還流下に行われる。反応時間は、使用される溶媒、試薬、温度により異なるが、通常1時間ないし48時間である。反応は好適には、酢酸と水(1:1(v/v))の混合溶媒中、塩酸または硫酸存在下、12時間ないし24時間加熱還流することにより好適に行われる。
【0046】
【発明の実施の態様】
次に実施例および参考例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1(出発物質の製造例)
1)6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXVIII)および6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXIX)の製造
【化60】
(±)−6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−カルボン酸と(S)−1−フェニルエチルアミンとを縮合させて標記化合物を製造した。
【0047】
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド:〔α〕D 27=+14.0°(c 1.0、クロロホルム)
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド:〔α〕D 26=+41.3°(c 1.0、クロロホルム)
2)6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドの異性化
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(52%ジアステレオ過剰率)のメタノール溶液に0.1モル当量の1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(DBU)を加え12時間加熱還流し、6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(12.3%のジアステレオ過剰率)を得た。ジアステレオ過剰率(de(SS)%)は、高速液体クロマトグラフィー(以下に条件を記載する)により、以下の式により算出した。
<高速液体クロマトグラフィー条件>
カラム:Nucleosil(GLサイエンス社製シリカゲル細口径50Å、シリカゲル平均粒径5μm)4.6mmφ×250mm
移動相:酢酸エチル/ヘキサン=1/2(v/v)
検出:紫外吸収 280nm
流速:1.0ml/min
<ジアステレオ過剰率>
【数1】
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドの紫外吸収面積値:A
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドの紫外吸収面積値:B
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドのジアステレオ過剰率:de(SS)%
本実施例で、6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドのジアステレオ過剰率が減少することはすなわち、6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(S)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドが、6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミドへ異性化することを意味する。
【0048】
実施例1
6−(2−メチル−2−オキサゾリン−5−オン−4−イルメチレン)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXX)
【化61】
6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(30g)、N−アセチルグリシン(15g)、酢酸ナトリウム(10g)、無水酢酸(34g)の混合物を170℃で1時間加熱した。反応液をクロロホルムに溶解して水洗した後、常法により精製し標題化合物を19g得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.57(d, J=7Hz, 3H), 2.39(s, 3H), 4.17(dd, J=7Hz, 12Hz, 1H), 4.58(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.77(dd, J=2Hz, 7Hz, 1H), 5.19(quint, J=7Hz, 1H), 6.72(d, J=8Hz, 1H), 7.01(d, J=8Hz, 1H), 7.02(s, 1H), 7.21〜7.31(m, 5H), 7.56(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 7.82(d, J=2Hz, 1H);
IR(KBr) νmax cm-1 3341, 1768, 1657, 1504, 1260;
〔α〕D 28=−44.1°(c 0.11;クロロホルム)。
【0049】
実施例2
6−(Z)−(2−アセチルアミノ−2−メトキシカルボニル−1−エチレン)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXXI)
【化62】
6−(2−メチル−2−オキサゾリン−5−オン−4−イルメチレン)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(19g)、酢酸ナトリウム(10g)のメタノール(100ml)懸濁液を3時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し、残留物をクロロホルムに溶解して水洗した後、常法により精製し標題化合物を18g得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.56(d, J=7Hz, 3H), 1.71(br, 0.6H), 2.14(s, 2.4H), 3.83(s, 3H), 4.11(dd, J=8Hz, 12Hz, 1H), 4.53(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.71(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 5.18(quint, J=8Hz, 1H), 6.75(d, J=8Hz, 1H), 6.93(d, J=8Hz, 1H), 7.01(d, J=8Hz, 1H), 7.08(s, 1H), 7.20〜7.31(m, 7H);
IR(KBr) νmax cm-1 3278, 1716, 1681, 1516, 1268;
〔α〕D 28=−7.3°(c 1.0;クロロホルム)。
【0050】
実施例3
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−メトキシカルボニルエチル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXXII)
【化63】
6−(Z)−(2−アセチルアミノ−2−メトキシカルボニル−1−エチレン)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド14.57g、メタノール(60ml)および別途調製した〔Rh(NBD)(DIPAMP)〕+ClO4 -錯体−メタノール溶液(Tetrahedron、40巻、p1255、1984年記載の方法に準じて調製)の混合物をオートクレーブ中にて15kgf/cm2の水素ガス下、70℃にて9.5時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去後、常法により精製し標題化合物を13.3g(92%、93.7%de)得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.57(d, J=7Hz, 3H), 1.99(d, 3H), 3.00(dd, J=6Hz, 14Hz, 1H), 3.07(dd, J=6Hz, 14Hz, 1H), 3.73(s, 3H), 4.09(dd, J=8Hz, 12Hz, 1H), 4.53(dd, J=2H, 12H, 1H), 4.68(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 4.83(td, J=6Hz, 8Hz, 1H), 5.18(quint, J=8Hz, 1H), 5.89(d, J=8Hz, 1H), 6.61(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.64(d, J=2Hz, 1H), 6.77(d, J=8Hz, 1H), 6.87(d, J=8Hz, 1H), 7.20〜7.32(m, 5H);
IR(KBr) νmax cm-1 3341, 1732, 1654, 1536, 1272;
〔α〕D 27=+95.4°(c 1.1;クロロホルム)。
【0051】
実施例4
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXXIII)
【化64】
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−メトキシカルボニルエチル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド13.63gのメタノール150ml懸濁液に水素化ホウ素ナトリウムを加え、70℃にて撹拌した。原料が消失した後、反応溶媒を減圧留去し残留物をクロロホルムに溶解して水洗した後、常法により精製し標題化合物を8.13g得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.55(d, J=7Hz, 3H), 1.96(s, 3H), 2.77(d, J=7Hz, 2H), 3.52〜3.60(m, 1H), 3.60〜3.70(m, 1H), 4.08(br, 1H), 4.11(dd, J=8Hz, 12Hz, 1H), 4.52(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.68(dd, J=2Hz, 8Hz,1H), 5.17(quint, J=8Hz, 1H), 5.76(br-d, J=8Hz, 1H), 6.74(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.75(s, 1H), 6.78(d, J=8Hz, 1H), 6.90(d, J=8Hz, 1H), 7.10〜7.32(m, 5H);
IR(KBr) νmax cm-1 3325, 1646, 1536, 1308, 1260, 1131;
〔α〕D 24=+13.1°(c 1.08;メタノール)。
【0052】
実施例5
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−フェニルチオプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXXIV)
【化65】
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド8.85gおよびジフェニルジスルフィド14.5gのピリジン(60ml)溶液を室温にて撹拌し、これに、トリ−n−ブチルホスフィン16.4mlを滴下し、室温下13.5時間撹拌した。反応液を酢酸エチルに溶解して水洗した後、常法により精製し、標題化合物を8.41g(白色結晶)得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.55(d, J=7Hz, 3H), 1.81(s, 3H), 2.84(d, J=7Hz, 2H), 3.00(dd, J=5Hz, 14Hz, 1H), 3.08(dd, J=5Hz, 14Hz, 1H), 4.10(dd, J=8Hz, 12Hz, 1H), 4.34(sextet, J=8Hz, 1H), 4.52(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.68(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 5.17(quint, J=7Hz, 1H), 5.50(d, J=8Hz, 1H), 6.70(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.72(s, 1H), 6.78(d, J=8Hz, 1H), 6.88(d, J=8Hz, 1H), 7.15〜7.40(m, 10H);
IR(KBr) νmax cm-1 3317, 2925, 1661, 1567, 1433, 1284;
〔α〕D 28=+32.7°(c 1.00;クロロホルム)。
【0053】
実施例6
6−(2−(R)−アセチルアミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド(XXXV)
【化66】
6−(2−(S)−アセチルアミノ−2−フェニルチオプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド1.02gのエタノール(60ml)懸濁液に、ラネーニッケル(W4)/エタノール懸濁液を加え、2.5時間加熱還流した。反応液をセライト濾過後、減圧留去し、残留物を常法により精製し、標題化合物を0.94g得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 1.08(d, J=7Hz, 3H), 1.55(d, J=7Hz, 3H), 1.93(s, 3H), 2.60(dd, J=7Hz, 14Hz, 1H), 2.73(dd, J=7Hz, 14Hz, 1H), 4.12(dd, J=8Hz, 12Hz, 1H), 4.19(quint, J=7Hz, 1H), 4.52(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.69(dd, J=3Hz, 8Hz, 1H), 5.18(quint, J=8Hz, 1H), 5.25(d, J=7Hz, 1H), 6.70(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.71(s, 1H), 6.77(d, J=8Hz, 1H), 7.20〜7.32(m, 5H);
IR(KBr) νmax cm-1 3294, 1661, 1634, 1547, 1516, 1284;
〔α〕D 27=+27.3°(c 3.16;クロロホルム)。
【0054】
実施例7
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸(XXXVI)
【化67】
6−(2−(R)−アセチルアミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−〔N−(S)−1−フェニルエチル〕カルボキサミド4.76gの酢酸−水(50ml−50ml)溶液に、濃硫酸(5ml)を加え74時間加熱還流した。反応溶媒を減圧留去し中和後、逆相中圧カラムクロマトグラフィー精製により標題化合物を2.37g得た。
1H-NMR(重水)δ 1.29(d, J=7Hz, 3H), 2.79(dd, J=8Hz, 14Hz, 1H), 2.87(dd, J=7Hz, 14Hz, 1H), 3.56(sext, J=7Hz, 1H), 4.36〜4.40(m, 2H), 4.73(dd, J=4Hz, 5Hz, 1H), 6.81(d, J=2Hz, 1H), 6.83(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.99(d, J=8Hz, 1H);
IR(KBr) νmax cm-1 2933, 1590, 1514, 1407, 1280, 1101;
〔α〕D 24=+24.1°(c 1.01;0.5規定塩酸水溶液)。
【0055】
参考例2
6−{〔2−(R)−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエチル〕−(2−(R)−アミノプロピル)}−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸(XXXVII)の製造例
【化68】
6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸1.0gのアセトニトリル−水(20ml−10ml)の懸濁液に(R)−m−クロロスチレンオキシド(0.65ml、日東化学社製)、トリエチルアミン(1.8ml)を加え、15.5時間加熱還流を行った。反応溶媒を減圧留去後、残渣を逆相中圧クロマトグラフィーにて精製し標題化合物を0.57g(収率;35%)得た。
1H-NMR(重クロロホルム)δ 0.87(d, J=6Hz, 3H), 2.02(t, J=12Hz, 1H), 2.43(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 2.84(t, J=12Hz, 1H), 3.05〜3.14(m, 2H), 4.16(dd, J=3Hz, 12Hz, 1H), 4.50(dd, J=2Hz, 12Hz, 1H), 4.68(t, J=2Hz, 1H), 5.13(dd, J=2Hz, 10Hz, 1H), 6.34(dd, J=2Hz, 8Hz, 1H), 6.44(d, J=2Hz, 1H), 6.75(d, J=8Hz, 1H), 7.30〜7.38(m, 3H), 7.47(s, 1H)。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、6−(2−(R)−アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体(I)およびその製造方法が提供される。本発明の化合物(I)は、糖尿病、高血糖症および肥満症に対して予防または治療効果を有する6−(2−(R)−置換アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体の合成中間体として有用である。
【0057】
本発明の化合物(I)は6−ホルミル−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体(III)から立体選択的に製造され、本発明の化合物(I)を(R)−スチレンオキシド誘導体と反応させることにより、従来公知の方法とは異なって立体異性体の分離の工程を要することなく上記目的化合物を製造することができ、また、出発物質(III)は光学分割が容易でありしかも不要な方の立体異性体を所望の立体異性体に変換することも容易である。従って本発明の化合物(I)を合成中間体として利用すると、上記6−(2−(R)−置換アミノプロピル)−1,4−ベンゾジオキサン−2−(R)−カルボン酸誘導体を工業的に有利に製造することができる。
Claims (3)
- 式(III)
- 式(III)
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