JP4232384B2 - 衛生洗浄装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、人体に不快感を与えないようにするため洗浄に用いる洗浄水を適切な温度に調整する加熱装置が備えられている。このような加熱装置には、主に貯湯式加熱装置および瞬間式加熱装置がある。
【0003】
貯湯式加熱装置は、予め所定量の洗浄水を貯えるとともに内蔵した加熱ヒータにより洗浄水を所定の温度に加熱する温水タンクを備え、人体の局部を洗浄する際に、予め温水タンク内で所定の温度に加熱した洗浄水を水道圧を利用するかもしくはギアポンプまたはベーンポンプ等により圧送してノズルより噴出させる方法を採用している。
【0004】
この貯湯式加熱装置においては、温水タンクに加熱された洗浄水が常に一定量貯湯されているため、使用者は洗浄水の流量を多くすることにより高い洗浄感および洗浄力を得ることができる。
【0005】
しかしながら、貯湯式加熱装置においては、人体の局部を洗浄する際まで、予め温水タンク内の洗浄水を所定の温度に維持し続けなければならない。そのため、加熱ヒータに常時電力を供給する必要があることから消費電力が大きくなる。また、複数の人が連続して局部を洗浄し、予め温水タンク内で所定の温度に加熱した洗浄水の量以上を使用した際、温水タンク内の洗浄水の温度が所定の温度以下に低下して人体に不快感を与えてしまう。
【0006】
一方、瞬間式加熱装置は、人体の局部を洗浄する際に、洗浄水を昇温速度に優れたセラミックヒータ等の加熱ヒータにより所定の温度に加熱し、水道圧を利用するかもしくはポンプ等により圧送してノズルより噴出させる方法を採用している。
【0007】
そのため、瞬間式加熱装置においては、予め洗浄水を所定の温度に維持し続ける必要がなく、使用時のみ加熱ヒータに電力を供給すればよいので消費電力を抑制することができる。また、長時間の洗浄や、トイレの連続使用等により多量の洗浄水を人体の局部の洗浄に用いた際でも、洗浄水の温度が所定の温度以下に低下して人体に不快感を与えることを防止することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、瞬間式加熱装置を用いた衛生洗浄装置では、洗浄水の瞬間的な昇温が求められるため、使用者の局部に噴出する洗浄水の流量を多くすることが難しい。つまり、瞬間式加熱装置を用いた衛生洗浄装置においては、ノズルより噴出する洗浄水の流量が制限される。それにより、高い洗浄感および洗浄力を得ることが難しい。一方、貯湯式加熱装置を用いた衛生洗浄装置では、洗浄水の流量を多くすることにより高い洗浄感および洗浄力を得ることができるが、水の消費量が多くなる。
【0009】
本発明の目的は、少ない流量で高い洗浄感および洗浄力を得ることができる衛生洗浄装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る衛生洗浄装置は、給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、洗浄水を噴出する噴出手段と、給水源からの洗浄水を加圧して噴出手段へ送り出すポンプとを備え、ポンプは、給水源からの洗浄水を吸引するための吸引口および噴出手段へ供給される洗浄水を吐出するための吐出口を有するシリンダ部と、シリンダ部内に摺動自在に設けられるピストン部と、ピストン部をシリンダ部内で往復運動させる駆動手段と、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吸引口を開路状態にし、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吸引口を閉路状態にする吸引側弁部と、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吐出口を開路状態にし、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吐出口を閉路状態にする吐出側弁部とを備え、前記吸引側弁部は、前記吸引口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吸引口を開放するように曲折する可動片を有する吸引側弾性体シートを含み、前記吐出側弁部は、前記吐出口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吐出口を開放するように曲折する可動片を有する吐出側弾性体シートを含み、前記吸引口と前記吐出口とは前記シリンダ部を内部に有するケースの同一面に配置して、前記ケースの同一面において一体に形成した前記吸引側弾性体シートと前記吐出側弾性体シートとを介して前記ポンプの外部と連通することを特徴としたものである。
【0011】
本発明に係る衛生洗浄装置においては、ポンプにより加圧された洗浄水が噴出手段へ送り出され、噴出手段により洗浄水が人体に噴出される。ポンプのシリンダ部内においては、駆動手段によりピストン部が往復運動し、シリンダ部の内部空間に圧力変動が与えられる。そして、吸引側弁部により、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吸引口が開路状態となり、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吸引口が閉路状態となる。さらに、吐出側弁部により、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吐出口が開路状態となり、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吐出口が閉路状態となる。それにより、給水源からの洗浄水が吸引口を通じてシリンダ部内に吸引され、シリンダ部内に吸引された洗浄水が吐出口を通じて噴出手段へ供給される。
【0012】
これにより、吸引した洗浄水を高圧で人体に噴出することができるので、使用者は少ない流量の洗浄水で高い洗浄感および高い洗浄力を得ることができるとともに、水の使用量を削減することができる。また、洗浄水に圧力変動が与えられるので、使用者は心地よい刺激を得ることができる。さらに、洗浄水を人体の局部に噴出するときの噴出圧の範囲が広がり、使用者の好みに応じた洗浄を実現することが可能となる。さらに、本発明に係る衛生洗浄装置が備えるポンプは小型で高圧を得ることができるので、衛生洗浄装置の小型化が実現でき、省スペース化が図られる。この場合、吸引側弾性体シートにより吸引口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吸引側弾性体シートに設けられた可動片が曲折し、吸引口が開放される。また、吐出側弾性体シートにより吐出口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吐出側弾性体シートに設けられた可動片が曲折し、吐出口が開放される。これにより、吸引側弁部および吐出側弁部の構造が単純となるため、吸引側弁部および吐出側弁部が容易に製作される。そして、前記吸引口と前記吐出口とは前記シリンダ部を内部に有するケースの同一面に配置して、前記ケースの同一面において一体に形成した前記吸引側弾性体シートと前記吐出側弾性体シートとを介して前記ポンプの外部と連通するので、この場合、吸引側弁部および吐出側弁部の構造が単純となるため、吸引側弁部および吐出側弁部がさらに容易に製作される。
【0013】
シリンダ部の内部空間は、ピストン部により第1の内部空間と第2の内部空間とに分割され、吸引口は、第1の内部空間に連通する第1の吸引口と、第2の内部空間に連通する第2の吸引口とを含み、吐出口は、第1の内部空間に連通する第1の吐出口と、第2の内部空間に連通する第2の吐出口とを含み、吸引側弁部は、シリンダ部の第1の内部空間の圧力低下に伴って第1の吸引口を開路状態にし、シリンダ部の第1の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吸引口を閉路状態にする第1の吸引側弁部と、シリンダ部の第2の内部空間の圧力低下に伴って第2の吸引口を開路状態にし、シリンダ部の第2の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吸引口を閉路状態にする第2の吸引側弁部とを含み、吐出側弁部は、シリンダ部の第1の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吐出口を開路状態にし、シリンダ部の第1の内部空間の圧力低下に伴って第1の吐出口を閉路状態にする第1の吐出側弁部と、シリンダ部の第2の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吐出口を開路状態にし、シリンダ部の第2の内部空間の圧力低下に伴って第2の吐出口を閉路状態にする第2の吐出側弁部とを含んでもよい。
【0014】
この場合、ピストン部によりポンプのシリンダ部内に設けられた第1の内部空間と第2の内部空間には、駆動手段によるピストン部の往復運動の基づく圧力変動が与えられる。そして、第1の吸引側弁部により、第1の内部空間の圧力低下に伴って第1の吸引口が開路状態となり、第1の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吸引口が閉路状態となる。また、第2の吸引側弁部により、第2の内部空間の圧力低下に伴って第2の吸引口が開路状態となり、第2の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吸引口が閉路状態となる。さらに、第1の吐出側弁部により、シリンダ部の第1の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吐出口が開路状態となり、シリンダ部の第1の内部空間の圧力低下に伴って第1の吐出口が閉路状態となる。また、第2の吐出側弁部により、シリンダ部の第2の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吐出口が開路状態となり、シリンダ部の第2の内部空間の圧力低下に伴って第2の吐出口が閉路状態となる。
【0015】
それにより、給水源からの洗浄水が第1の吸引口を通じてシリンダ部の第1の内部空間に吸引され、同時にシリンダ部の第2の内部空間の洗浄水が第2の吐出口を通じて噴出手段へ供給される。また、シリンダ部の第1の内部空間の洗浄水が第1の吐出口を通じて噴出手段へ供給され、同時に給水源からの洗浄水が第2の吸引口を通じてシリンダ部の第2の内部空間に吸引される。
【0016】
このようにして、複動式のピストンポンプが実現され、シリンダ部の第1の内部空間と第2の内部空間にはピストン部の往復運動に伴い交互に圧力変動が与えられるので、一回のピストン部の往復運動により吐出される洗浄水の量が単動式のピストンポンプと比較して多くなる。したがって、駆動手段の動力を低減することによりピストン部の往復運動により生じる振動および騒音を低減することができる。
【0017】
第1の吸引側弁部は、第1の吸引口を閉塞するように配置されるとともにシリンダ部の第1の内部空間の圧力低下に伴って第1の吸引口を開放するように曲折する可動片を有する第1の吸引側弾性体シートを含み、第2の吸引側弁部は、第2の吸引口を閉塞するように配置されるとともにシリンダ部の第2の内部空間の圧力低下に伴って第2の吸引口を開放するように曲折する可動片を有する第2の吸引側弾性体シートを含み、第1の吐出側弁部は、第1の吐出口を閉塞するように配置されるとともにシリンダ部の第1の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吐出口を開放するように曲折する可動片を有する第1の吐出側弾性体シートを含み、第2の吐出側弁部は、第2の吐出口を閉塞するように配置されるとともにシリンダ部の第2の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吐出口を開放するように曲折する可動片を有する第2の吐出側弾性体シートを含んでもよい。
【0018】
この場合、第1の吸引側弾性体シートにより第1の吸引口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って第1の吸引側弾性体シートに設けられた可動片が曲折し、第1の吸引口が開放される。また、第2の吸引側弾性体シートにより第2の吸引口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って第2の吸引側弾性体シートに設けられた可動片が曲折し、第2の吸引口が開放される。さらに、第1の吐出側弾性体シートにより第1の吐出口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って第1の吐出側弾性体シート設けられた可動片が曲折し、第1の吐出口が開放される。また、第2の吐出側弾性体シートにより第2の吐出口が閉塞され、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って第2の吐出側弾性体シート設けられた可動片が曲折し、第2の吐出口が開放される。これにより、吸引側弁部および吐出側弁部の構造が単純となるため、吸引側弁部および吐出側弁部が容易に製作される。
【0019】
そして、前記吸引口および前記吐出口は前記シリンダ部を内部に有するケースの同一面に配置して、前記ケースの同一面において一体に形成した前記第1および第2の吸引側弾性体シートと前記第1および第2の吐出側弾性体シートを介して前記ポンプの外部と連通するよう構成されてもよい。この場合、第1の吸引側弁部、第2の吸引側弁部、第1の吐出側弁部および第2の吐出側弁部の構造が単純となるため、第1の吸引側弁部、第2の吸引側弁部、第1の吐出側弁部および第2の吐出側弁部がさらに容易に製作される。
【0020】
駆動手段は、回転力を発生する回転型駆動装置と、回転型駆動装置により発生された回転力を往復運動に変換する変換手段とを含んでもよい。
【0021】
この場合、回転型駆動装置により発生した回転力は、変換手段により往復運動に変換される。これにより、ポンプの小型化および軽量化が実現される。
【0022】
変換手段は、回転型駆動装置により発生された回転力を減速する減速機構と、減速機構により減速された回転力をピストン部の往復運動に変換する変換機構とを含んでもよい。
【0023】
この場合、回転型駆動装置により発生した回転力は減速機構により減速され、減速機構により減速された回転力は変換機構によりピストン部の往復運動に変換される。これにより、減速機構および変換機構により構成される変換手段の構造が単純となり、製作が容易となる。
【0024】
減速機構は、ウォームとウォームホイールとにより構成されるウォームギアを含んでもよい。この場合、回転型駆動装置により発生した回転力はウォームギアにより減速される。これによりポンプの小型化が実現する。
【0025】
変換機構は、減速機構により減速された回転力により回転する回転部材と、回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材と、偏心部材に取り付けられた一端部とピストン部に取り付けられた他端部とを有する伝達部材とを含んでもよい。
【0026】
この場合、回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材は減速機構により減速された回転力により回転し、偏心部材に取り付けられた伝達部材の一端部は偏心部材の回転に応じて回転運動し、伝達部材の他端部は偏心部材の回転に応じて往復運動する。これにより、駆動手段より発生する回転力が、効率的にピストン部の上下運動に変換される。
【0027】
変換機構は、減速機構により減速された回転力により回転する回転部材と、回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材と、ピストン部に連結されるとともに往復運動に平行な第1の方向に移動可能に設けられた第1の伝達部材と、偏心部材の運動に伴って移動するとともに第1の伝達部材に対して第1の方向に交差する第2の方向に移動可能に設けられた第2の伝達部材とを含んでもよい。
【0028】
この場合、回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材は減速機構により減速された回転力により回転する。また、ピストン部に連結されるとともに偏心部材に取り付けられた第1の伝達部材は、偏心部材の回転に応じてピストン部の往復運動に平行な第1の方向に移動する。さらに、ピストン部に連結されるとともに偏心部材に取り付けられた第2の伝達部材は、偏心部材の回転に応じて第1の方向に交差する第2の方向に移動する。
【0029】
これにより、ピストン部の上下運動の直進性が向上し、シリンダ部とピストン部との摺動部からシリンダ部内に導入された洗浄水の外部への漏出が低減される。
【0030】
変換手段の摺動部に潤滑剤を収納する潤滑剤収納部が設けられてもよい。この場合、変換手段の動作時に、潤滑剤収納部に収納された潤滑剤が変換手段の摺動部に浸透する。これにより、変換手段の摺動部には常に潤滑剤が浸透し、摩擦力が低減される。そして、駆動部の駆動力が効率的にピストン部へと伝達される。
【0031】
変換手段を収納する第1の筐体をさらに備え、第1の筐体は、内部と外部とを連通する孔を有してもよい。この場合、この場合、シリンダ部に導入される洗浄水が第1の筐体内部に漏出した場合においても、漏出した洗浄水は、第1の筐体内部に滞留することなく孔を通じて外部へ流出する。これにより、第1の筐体内部に洗浄水が滞留して変換手段が洗浄水の抵抗を受けることが防止される。
【0032】
ピストン部の外周面に断面X字形状のパッキンが装着されてもよい。この場合、シリンダ部内に圧力変動が与えられた場合においても、ピストン部とシリンダ部との摺動部より洗浄水が漏出することが確実に防止される。
【0033】
シリンダ部およびピストン部は、樹脂により形成されてもよい。この場合、シリンダ部およびピストン部の加工が容易となる。また、ポンプの軽量化が図られる。さらに、ポンプの製作の低コスト化が図られる。
【0034】
給水源から供給された洗浄水を加熱してポンプに供給する加熱手段をさらに備えてもよい。この場合、給水源から供給された洗浄水は加熱手段により加熱され、ポンプに供給される。これにより、使用者は、適度に加熱された洗浄水により局部を洗浄することができる。
【0035】
加熱手段は、給水源から供給された洗浄水を流動させつつ加熱する瞬間式加熱装置であってもよい。この場合、衛生洗浄装置の使用時にのみ洗浄水の加熱が行われるため、消費電力を最小限に抑えることができ、さらに、洗浄水を貯える貯水タンクが不必要となるため省スペース化が実現できる。また、洗浄時間が長くなった場合でも、洗浄水の温度の低下が生じない。
【0036】
前記ポンプを収容する衛生洗浄装置の本体ケーシングを備え、前記ポンプは、前記本体ケーシングの内部に弾性体を介して取り付けられてもよい。この場合、ポンプにより発生する振動および騒音が低減される。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図である。
【0039】
図1に示すように、便器600上に衛生洗浄装置100が装着される。タンク700は、水道配管に接続されており、便器600内に洗浄水を供給する。
【0040】
衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400および蓋部500により構成される。
【0041】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。さらに、本体部200には、ノズル部30を含む洗浄水供給機構が設けられるとともに、制御部が内蔵されている。本体部200の制御部は、後述するように遠隔操作装置300により送信される信号に基いて、洗浄水供給機構を制御する。さらに、本体部200の制御部は、便座部400に内蔵されたヒータ、本体部200に設けられた脱臭装置(図示せず)および温風供給装置(図示せず)等の制御も行う。
【0042】
図2は図1の遠隔操作装置300の一例を示す模式図である。
【0043】
図2に示すように、遠隔操作装置300は、複数のLED(発光ダイオード)301、複数の調整スイッチ302、おしりスイッチ303、刺激スイッチ304、停止スイッチ305、ビデスイッチ306、乾燥スイッチ307および脱臭スイッチ308を備える。
【0044】
使用者により調整スイッチ302、おしりスイッチ303、刺激スイッチ304、停止スイッチ305、ビデスイッチ306、乾燥スイッチ307および脱臭スイッチ308が押下操作される。それにより、遠隔操作装置300は、後述する衛生洗浄装置100の本体部200に設けられた制御部に所定の信号を無線送信する。本体部200の制御部は、遠隔操作装置300より無線送信される所定の信号を受信し、洗浄水供給機構等を制御する。
【0045】
例えば、使用者が、おしりスイッチ303またはビデスイッチ306を押下操作することにより図1の本体部200のノズル部30が移動して洗浄水が噴出する。刺激スイッチ304を押下操作することにより図1の本体部200のノズル部30から人体の局部に刺激を与える洗浄水が噴出される。停止スイッチ305を押下操作することによりノズル部30からの洗浄水の噴出が停止する。
【0046】
また、乾燥スイッチ307を押下操作することにより人体の局部に対して衛生洗浄装置100の温風供給装置(図示せず)より温風が噴出される。脱臭スイッチ308を押下操作することにより衛生洗浄装置100の脱臭装置(図示せず)により周辺の脱臭が行われる。
【0047】
調整スイッチ302は、水勢調整スイッチ302a,302b、温度調整スイッチ302c,302dおよびノズル位置調整スイッチ302e,302fを含む。
【0048】
使用者が、ノズル位置調整スイッチ302e,302fを押下操作することにより図1の衛生洗浄装置100の本体部200のノズル部30の位置が変化し、温度調整スイッチ302c,302dを押下操作することにより、ノズル部30より噴出される洗浄水の温度が変化する。また、水勢調整スイッチ302a,302bを押下操作することにより、ノズル部30より噴出される洗浄水の水量、圧力および噴出形態等が変化する。本実施の形態では、洗浄水の水勢が周期的な圧力変動における変動中心の圧力、変動幅および変動周期(変動周波数)を変化させることにより調整される。調整スイッチ302の押下に伴って複数のLED(発光ダイオード)301が点灯する。
【0049】
以下、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置100の本体部200について説明を行う。図3は、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置100の本体部200の構成を示す模式図である。
【0050】
図3に示す本体部200は、制御部4、分岐水栓5、ストレーナ6、逆止弁7、定流量弁8、止水電磁弁9、流量センサ10、熱交換器11、温度センサ12a,12b、ポンプ13、切替弁14およびノズル部30を含む。また、ノズル部30は、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3を含む。
【0051】
図3に示すように、水道配管201に分岐水栓5が介挿される。また、分岐水栓5と熱交換器11との間に接続される配管202に、ストレーナ6、逆止弁7、定流量弁8、止水電磁弁9、流量センサ10および温度センサ12aが順に介挿されている。さらに、熱交換器11と切替弁14との間に接続される配管203に、温度センサ12bおよびポンプ13が介挿されている。
【0052】
まず、水道配管201を流れる浄水が、洗浄水として分岐水栓5によりストレーナ6に供給される。ストレーナ6により洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。次に、逆止弁7により配管202内における洗浄水の逆流が防止される。そして、定流量弁8により配管202内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。
【0053】
また、ポンプ13と切替弁14との間にはリリーフ管204が接続され、止水電磁弁9と流量センサ10との間には、逃がし水配管205が接続されている。リリーフ配管204には、リリーフ弁206が介挿されている。リリーフ弁206は、配管203の特にポンプ13の下流側の圧力が所定値を超えると開成し、異常時の機器の破損、ホースの外れ等の不具合を防止する。一方、定流量弁8によって流量が調節され供給される洗浄水のうちポンプ13で吸引されない洗浄水を逃がし水配管205から放出する。これにより、水道供給圧に左右されることなくポンプ13には所定の背圧が作用することになる。
【0054】
次いで、流量センサ10は、配管202内を流れる洗浄水の流量を測定し、制御部4に測定流量値を与える。また、温度センサ12aは、配管202内を流れる洗浄水の温度を測定し、制御部4に温度測定値を与える。
【0055】
続いて、熱交換器11は、制御部4により与えられる制御信号に基いて、配管202を通して供給された洗浄水を所定の温度に加熱する。温度センサ12bは、熱交換器11により所定の温度に加熱された洗浄水の温度を測定し、制御部4に温度測定値を与える。
【0056】
ポンプ13は、熱交換器11により加熱された洗浄水を制御部4により与えられる制御信号に基いて、切替弁14に圧送する。切替弁14は、制御部4により与えられる制御信号に基いて、ノズル部30のおしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3のいずれか1つに洗浄水を供給する。それにより、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3のいずれか1つより洗浄水が噴出される。また、切替弁14は、制御部4により与えられる制御信号に基いて、ノズル部30より噴出される洗浄水の流量を調整する。それにより、ノズル部30より噴出される洗浄水の流量が変化する。
【0057】
制御部4は、図1の遠隔操作装置300から無線送信される信号、流量センサ10から与えられる測定流量値および温度センサ12a,12bから与えられる温度測定値に基き止水電磁弁9、熱交換器11、ポンプ13および切替弁14に対して制御信号を与える。
【0058】
図4は熱交換器11の構造の一例を示す一部切り欠き断面図である。
【0059】
図4に示すように、樹脂ケース504内に曲折された蛇行配管510が埋設されている。蛇行配管510に接触するように平板状のセラミックヒータ505が設けられている。矢印Yで示すように、洗浄水が、給水口511から蛇行配管510内に供給され、蛇行配管510中を流れる間に、セラミックヒータ505により効率よく加熱され、排出口512から排出される。
【0060】
図3の制御部4は、温度センサ12bより与えられる温度測定値に基いて、熱交換器11のセラミックヒータ505の温度をフィードバック制御する。
【0061】
本実施の形態においては、制御部4がフィードバック制御により熱交換器11のセラミックヒータ505の温度を制御することとしたが、これに限定されず、フィードフォワード制御によりセラミックヒータ505の温度を制御してもよく、あるいは、温度上昇時には、フィードフォワード制御によりセラミックヒータ505を制御し、定常時には、フィードバック制御によりセラミックヒータ505を制御する複合的な制御を行ってもよい。
【0062】
次に、本実施の形態に係るポンプ13について図5〜図14に基づき説明する。図5は、本実施の形態に係るポンプ13の構成を示す模式的断面図である。図6は、図5に示すポンプ13のA−A線断面図である。図7は、図5に示すポンプ13のB−B線断面図である。
【0063】
図5および図6によれば、ポンプ13は、外観上モータ130およびケース50a,50b,50cにより構成されている。なお、図6に示すようにケース50a,50cにより第1の筐体60Aが形成され、ケース50a,50b,50cにより第2の筐体60Bが形成されている。なお、ケース50aには吐出ポート55aおよび吸引ポート55bが設けられている。
【0064】
図5によればモータ130の軸131は、第1の筐体60Aの一側面より第1の筐体60Aの内部に挿入され、軸131に後述のウォーム132が取り付けられている。第1の筐体60Aの内部には、ウォーム132と連動するウォームホイール133が軸134により回転可能に取り付けられている。ウォームホイール133は偏心輪(クランク軸)135を有し、ウォームホイール133の偏心輪135にはピストンロッド136が取り付けられている。ピストンロッド136の上端部は、第2の筐体60B内部において、ピストン137にピン59を介して取り付けられている。
【0065】
第1の筐体60Aを形成するケース50aの底面には、第1の筐体60A内部に流入する液体を外部に排出するために水抜き孔awが設けられている。
【0066】
上記に示すポンプ13の主な構成部位の材質は、以下の通りである。ケース50a,50cの材質は、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene resin)であり、ケース50b、ウォーム132、ウォームホイール133およびピストン137の材質はポリアセタールであり、ウォームホイール133に設けられる偏心輪135の材質はポリアセタールであり、ピストンロッド136材質はポリアミドである。
【0067】
図5および図6によれば、第2の筐体60B内部には、円柱状空間139が形成されている。円柱状空間139内には、ピストン137が設けられている。ピストン137の外周部には、X字パッキン138が装着されている。ピストン137により円柱状空間139には、ポンプ室139aが形成される。
【0068】
図5〜図7によれば、ポンプ室139aには、洗浄水吐出口51aおよび洗浄水吸引口51bが設けられている。ポンプ室139aは、洗浄水吐出口51a、ケース50bに設けられた洗浄水導水路51x、弁シート52および吐出ポート55a内に形成された洗浄水導水路54aを介してポンプ13の外部と連通可能である。
【0069】
さらに、ポンプ室139aは、洗浄水吸引口51b、ケース50bに設けられた洗浄水導水路51y、弁シート52および吸引ポート55b内に形成された洗浄水導水路54bを介してポンプ13の外部と連通可能である。ケース50aとケース50bとの接続状態については後述する。
【0070】
上記に示す吐出ポート55aおよび吸引ポート55bには、外部より洗浄水を吸引または吐出するためのチューブが連結される。このため、吐出ポート55aおよび吸引ポート55bの先端はニップル形状を有する。これにより、吐出ポート55aおよび吸引ポート55bに連結されるチューブが強固に固定される。
【0071】
ここで、図7〜図9に基づきケース50aとケース50bとの接続状態について説明する。図8は、弁シート52の外観斜視図である。図9は、ケース50a,50bおよび弁シート52の模式的組立図である。
【0072】
図7によれば、ケース50aとケース50bとは、弁シート52を介して接続されている。初めに、図8に基づき弁シート52について説明する。
【0073】
弁シート52は、可動リップ部52aおよび固定シール部52bより形成される。ここで、可動リップ部52aは弁シート52の一部が馬蹄形に打ち抜かれることにより半楕円形状に形成され、弁シート52の中心に関して左右対称に形成されている。固定シール部52bは、弁シート52の可動リップ部52aを除いた部位を示す。
【0074】
弁シート52の材質は、NBR(アクリルニトリルブタジエンゴム:acrylonitrile butadiene rubber)である。また、本実施の形態においては弁シート52の厚さは0.5mmである。
【0075】
上記に示す弁シート52を介して、ケース50aおよびケース50bは次のように接続される。
【0076】
図9に示すように、ケース50aのケース50bとの接続面には、溝状に形成された弁シート保持部53a、洗浄水吐出口56aおよび洗浄水吸引口56bが設けられている。洗浄水吐出口56aおよび洗浄水吸引口56bは、弁シート保持部53aの内部に左右対称に設けられている。また、ケース50bのケース50aとの接続面には、突起状に形成された弁シート保持部53b、洗浄水吐出口56aおよび洗浄水吸引口56bが設けられている。洗浄水吐出口56aおよび洗浄水吸引口56bは、弁シート保持部53bの内部に左右対称に設けられている。
【0077】
ケース50aにおいて、洗浄水吐出口56aの周辺には空間53kが設けられており、洗浄水吸引口56bの周辺には、弁座53が設けられている。ケース50bにおいては、洗浄水吐出口56aの周辺に弁座53が設けられ、洗浄水吸引口56bの周辺に空間53kが設けられている。
【0078】
図9に示すように、ケース50aのケース50bとの接続面の一角を角pとし、角pの対角に位置する他の角を角qとし、ケース50bのケース50aとの接続面の一角を角rとし、角rの対角に位置する他の角をsとした場合、ケース50bの角rはケース50aの角pに接続され、ケース50bの角sはケース50aの角qに接続される。なお、ケース50aおよびケース50bの弁シート保持部53a,53bの間には弁シート52が挿入される。
【0079】
以下の説明において、洗浄水吐出口51aおよび洗浄水導水路51x,54aを洗浄水吐出系とし、洗浄水吸引口51bおよび洗浄水導水路51y,54bを洗浄水吸引系とする。
【0080】
図7によれば、弁シート52の中央部および両端部に位置する固定シール部52bは、ケース50aの弁シート保持部53aおよびケース50bの弁シート保持部53bにより形成される間隙L1に保持されている。
【0081】
本実施の形態において、間隙L1の間隔は0.4mmである。この間隙L1に、上述の厚さ0.5mmの弁シート52の固定シール部52bが保持されることにより、洗浄水吐出系と洗浄水吸引系とが確実に分離される。
【0082】
弁シート52を中央部を境に洗浄水吐出系側と洗浄水吸引系側とに分けた場合、弁シート52の洗浄水吐出系側の可動リップ部52aはケース50bに設けられた弁座53と接触している。一方、弁シート52の洗浄水吸引系側の可動リップ部52aは、ケース50aに形成された弁座53と接触している。
【0083】
弁シート52の可動リップ部52aは、ポンプ室139a内部の圧力状態に応じて、洗浄水吐出系および洗浄水吸引系の各流路の開閉動作を行う。つまり、ポンプ室139a内部の圧力が高い場合、洗浄水吐出系側の可動リップ部52aは矢印mの方向に曲折し、ポンプ室139a内部の圧力が低い場合、洗浄水吸引系側の可動リップ部52aは矢印nの方向に曲折する。
【0084】
図10は、図5のポンプ13のウォームホイール133の構造を示す模式的構造図である。ここで、図10(a)は、ウォームホイール133の偏心輪135側の一側面を示す模式図であり、図10(b)は、図10(a)に示すウォームホイール133のC−C線断面図である。また、図10(c)は、ウォームホイール133の他側面を示す模式図である。
【0085】
図10(a)において、ウォームホイール133は、その回転中心に軸保持孔33cを有し、回転中心から偏心して偏心輪135が設けられている。ここで、偏心輪135には、グリス収納部33aおよびスリット33bが設けられている。
【0086】
ポンプ13の稼動時において、グリス収納部33a内にグリスが収納されている場合、グリス収納部33aに収納されているグリスは、ウォームホイール133の回転とともに遠心力によりスリット33bから外部へ漏脱する。そして、漏脱したグリスは、偏心輪135のピストンロッド136との摺動部34aに浸透する。これにより、偏心輪135とピストンロッド136との間に生じる摩擦係数が減少する。
【0087】
さらに、ポンプ13の稼動時において、グリス収納部33aに収納されているグリスは
、軸保持孔33cに取り付けられる軸134に常に接触しているので、軸保持孔33cの軸134との摺動部34bに浸透する。これにより、軸保持孔33cと軸134との間に生じる摩擦係数が減少する。
【0088】
図10(b)によれば、上述のグリス収納部33aは、偏心輪135内部に形成されている。一方、ウォームホイール133の他側面には、グリス収納部33dが形成されている。ポンプ13の稼動時において、グリス収納部33d内部にグリスが収納されている場合、グリス収納部33dに収納されているグリスは、ウォームホイール133のケース50aとの摺動部34cに浸透する。これにより、ウォームホイール133とケース50aとの間に生じる摩擦係数が減少する。
【0089】
図10(c)によれば、ウォームホイール133の他側面において、上述のグリス収納部33dは、ウォームホイール133の回転中心から同心円状に形成されている。
【0090】
図11は、図5のウォーム132の形状を示す模式図である。ここで図11(a)はウォーム132の一側面を示す模式図であり、図11(b)は、図11(a)に示すウォーム132を矢印Vの方向より見た場合の模式図である。
【0091】
図11(a)および図11(b)によれば、ウォーム132は、3本の歯32a,32b,32cを有している。そして、3本の歯32a,32b,32cは、それぞれらせん状に形成されている。これにより、ウォーム132が回転することによりウォームホイール133に与えられる動力伝達効率が向上する。
【0092】
なお、図5に示す通りウォーム132の一端は図5に示すモータ130の軸131に保持され、ウォーム132の他端に設けられた回転保持部32Hは、ポンプ13のケース50aの一部に回転可能に取り付けられる。
【0093】
図12は、図5のウォーム132の動作に伴うピストンロッド136の動作を示す動作説明図である。以下の説明において、図12に示すように偏心輪135内の軸134と対向する点を点Paとする。
【0094】
図12(a)において、ウォーム132はモータ130の駆動により矢印R1の方向に回転を開始する。そして、ウォーム132の回転に応じてウォームホイール133は矢印R2の方向に回転を開始する。さらに、偏心輪135内の点Paは矢印R3の方向に回転を開始する。なお、矢印R3はウォームホイール133の回転中心から点Paまでの距離を半径とした円上に存在する。
【0095】
図12(b)において、ウォーム132がモータ130の駆動により矢印R1の方向に回転し、ウォームホイール133を矢印R2の方向に90度回転させた場合、偏心輪135内の点Paは矢印R3の方向に90度回転する。この回転動作が継続されることにより、偏心輪135内の点Paは軸134を中心に360度回転する。これにより、偏心輪135に取り付けられたピストンロッド136のピストン連結部159は矢印Zの方向に上下運動する。
【0096】
以下に、図13に基づきポンプ13の動作を説明する。図13は、ポンプ13の動作を示す模式的断面図である。以下の説明において、図13に示すように円柱状空間139内部のピストン137の移動可能な上端を上死点K1とし、下端を下死点K2とする。
【0097】
図13(a1)は、稼動開始時におけるポンプ13の内部状態を示し、図13(a2)は、図13(a1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0098】
図13(a1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて稼動を開始する。ウォーム132は矢印R1の方向に回転を開始し、ウォームホイール133は矢印R2の方向に回転を開始する。ここで、ポンプ13の稼動開始時において、偏心輪135内の点Paは軸134の上方に位置し、ピストン137は円柱状空間139内の上死点K1に位置する。図13(a2)に示す通り、ポンプ13の稼動開始時にポンプ室139a内部に流体の流れは存在しない。
【0099】
図13(b1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を下降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図13(b2)は、図13(b1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0100】
図13(b1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の左側に移動し、円柱状空間139の内部でピストン137は上死点K1より下降する。
【0101】
円柱状空間139内でのピストン137の下降に伴い、ポンプ室139aの容積は増大し、ポンプ室139a内の圧力が低下する。図13(b2)によれば、ポンプ室139a内の圧力の低下に伴い、弁シート52の洗浄水吸引系側の可動リップ部52aがケース50b側に曲折している。これにより、供給用洗浄水W1が吸引ポート55bより洗浄水吸引系を介してポンプ室139a内部に導入される。
【0102】
図13(c1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内の下死点K2に位置した場合のポンプ13の内部状態を示し、図13(c2)は、図13(c1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0103】
図13(c1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作を停止する。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の下側に移動し、円柱状空間139の内部でピストン137は下死点K2に移動する。この状態で、ピストン137は下降動作を停止し、図13(c2)に示す通り、ポンプ室139a内部に流体の流れは存在しない。
【0104】
図13(d1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を上降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図13(d2)は、図13(d1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0105】
図13(d1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吐出動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の右側に移動し、円柱状空間139の内部でピストン137は下死点K2より上昇する。
【0106】
円柱状空間139内でのピストン137の上昇に伴い、ポンプ室139aの容積は減少し、ポンプ室139a内の圧力が上昇する。図13(d2)によれば、ポンプ室139a内の圧力の上昇に伴い、弁シート52の洗浄水吐出系側の可動リップ部52aがケース50a側に曲折している。これにより、ポンプ室139a内部の吐出用洗浄水W2が、洗浄水吐出系より吐出ポート55aを介してポンプ13の外部へ吐出される。
【0107】
図14は、図5のポンプ13のポンプ室139aの圧力変化を示す図である。図14の縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示す。
【0108】
図14に示すように、ポンプ13の吸引ポート55bに圧力Pxの洗浄水が供給される。この場合、図5のピストン137が上下方向に運動することにより、ポンプ室139a内の洗浄水の圧力が変化する。それにより、ポンプ13の吐出ポート55aより吐出される洗浄水の圧力Poutは、太い実線で示すように、圧力Pkを中心として上下に周期的に変化する。
【0109】
このように、ポンプ13においては、ピストン137が上下運動を行うことにより、ポンプ室139a内の洗浄水に対して圧力が加えられ、吸引ポート55bより導入された供給用洗浄水が昇圧されて吐出ポート55aから吐出用洗浄水として吐出される。
【0110】
図15(a)は切替弁14の縦断面図であり、図15(b)は図15(a)の切替弁14のA−A線断面図であり、図15(c)は図15(a)の切替弁14のB−B線断面図である。
【0111】
図15に示す切替弁14は、モータ141、内筒142および外筒143により構成される。
【0112】
外筒143内に内筒142が挿入され、モータ141の回転軸が内筒142に取り付けられている。モータ141は、制御部4により与えられる制御信号に基いて回転動作を行う。モータ141が回転することにより内筒142が回転する。
【0113】
図15(a),(b),(c)に示すように、外筒143の一端には、洗浄水入口143aが設けられ、側部の対向する位置に洗浄水出口143b,143cが設けられ、側部の洗浄水出口143b,143cと異なる位置に洗浄水出口143dが設けられている。内筒142の互いに異なる位置に孔142e,142fが設けられている。孔142eの周辺には、図15(b)に示すように、面取り部が形成されている。内筒142の回転により、孔142eが外筒143の洗浄水出口143bまたは143cと対向可能になっており、孔142fが外筒143の洗浄水出口143dと対向可能になっている。
【0114】
洗浄水入口143aには、図3の配管203が接続され、洗浄水出口143bには、おしりノズル1が接続され、洗浄水出口143cには、ビデノズル2が接続され、洗浄水出口143dには、ノズル洗浄用ノズル3が接続されている。
【0115】
図16は図15の切替弁14の動作を示す断面図である。
【0116】
図16(a)に示すように、モータ141が回転せず、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143dと同じ側にある場合、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143b,143cのいずれにも対向せず、かつ内筒142の孔142fが外筒143の洗浄水出口143dに対向しない。したがって、洗浄水が洗浄水出口143b,143c,143dのいずれからも流出しない。
【0117】
次に、図16(b)に示すように、モータ141が内筒142を45度回転させた場合には、内筒142の孔142eの周囲の面取り部の一部が外筒143の洗浄水出口143bに対向する。したがって、少量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して、矢印W1で示すように洗浄水出口143bから流出する。
【0118】
また、図16(c)に示すように、モータ141が内筒142を90度回転させた場合には、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143bに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して、矢印W2で示すように洗浄水出口143bから流出する。
【0119】
さらに、モータ141が内筒142を270度回転させた場合には、内筒142の孔142eが外筒143の洗浄水出口143cに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して洗浄水出口143cから流出する。
【0120】
また、モータ141が内筒142を180度回転させた場合には、内筒142の孔142fが外筒143の洗浄水出口143dに対向する。したがって、多量の洗浄水が洗浄水入口143aより内筒142の内部を通過して洗浄水出口143dから流出する。
【0121】
以上のように、制御部4からの制御信号に基いてモータ141が回転することにより内筒142の孔142e,142fのいずれかが外筒143の洗浄水出口143b〜143dのいずれかに対向した場合には洗浄水が流出し、内筒142の孔142e,142fのいずれもが外筒143の洗浄水出口143b〜143dのいずれにも対向しない場合には洗浄水が流出しない。
【0122】
次に、図3のノズル部30のおしりノズル1について説明する。図17は図3のノズル部30のおしりノズル1の断面図である。なお、図3のノズル部30のビデノズル2の構成および動作は図17のおしりノズル1と同様である。
【0123】
図17に示すように、おしりノズル1は、円筒状のピストン部20、円筒状のシリンダ部21、シールパッキン22およびスプリング23により構成される。
【0124】
ピストン部20の洗端近傍には、洗浄水を噴出するための噴出孔25が形成されている。ピストン部20の後端には、フランジ形状のストッパ部26が設けられている。また、ストッパ部26には、シールパッキン22が装着されている。ピストン部20の内部には、後端面から噴出孔25に連通する流路27が形成されている。
【0125】
一方、シリンダ部21は、先端側の径小部分と後端側の径大部分とからなる。それにより、径小部分と径大部分との間に、ストッパ部26がシールパッキン22を介して当接可能なストッパ面21bが形成されている。シリンダ部21の後端面には、洗浄水入口24が設けられ、シリンダ部21の先端面には、開口部21aが設けられている。シリンダ部21の内部空間が温度変動緩衝部28となる。洗浄水入口24は、シリンダ部21の中心軸とは異なる位置に偏心して設けられている。洗浄水入口24は、図3の切替弁14の洗浄水出口143bに接続されている。
【0126】
ピストン部20は、ストッパ部26が温度変動緩衝部28内に位置し、先端部が開口部21aから突出するように、シリンダ部21内に移動可能に挿入されている。
【0127】
さらに、スプリング23は、ピストン部20のストッパ部26とシリンダ部21の開口部21aの周縁との間に配設されており、ピストン部20をシリンダ部21の後端側に付勢する。
【0128】
ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間に微小隙間が形成され、ピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間に微小隙間が形成されている。
【0129】
次いで、図17のおしりノズル1の動作について説明する。図18は図17のおしりノズル1の動作を説明するための断面図である。
【0130】
まず、図18(a)に示すように、シリンダ部21の洗浄水入口24より洗浄水が供給されない場合、ピストン部20が、スプリング23の弾性力により矢印Xの方向と逆方向に後退し、シリンダ部21内に収容されている。その結果、ピストン部20は、シリンダ部21の開口部21aより最も突出していない状態となる。このとき、シリンダ部21内には、温度変動緩衝部28が形成されない。
【0131】
次いで、図18(b)に示すように、シリンダ部21の洗浄水入口24より洗浄水の供給が開始された場合、洗浄水の圧力によりピストン部20がスプリング23の弾性力に抗して矢印Xの方向に徐々に前進する。それにより、シリンダ部21内に温度変動緩衝部28が形成されるとともに温度変動緩衝部28に洗浄水が流入する。
【0132】
洗浄水入口24がシリンダ部21の中心軸に対して偏心した位置に設けられているので、温度変動緩衝部28に流入した洗浄水は、矢印Vで示すように渦巻状に還流する。温度変動緩衝部28の洗浄水の一部は、ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間を通して、ピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間の微小隙間から流れ出るとともに、ピストン部20の流路27を通して噴出孔25から噴出される。
【0133】
ピストン部20がさらに前進すると、図18(c)に示すように、ストッパ部26がシールパッキン22を介してシリンダ部21のストッパ面21bに水密に接触する。それにより、ピストン部20のストッパ部26の外周面とシリンダ部21の内周面との間の微小隙間からピストン部20の外周面とシリンダ部21の開口部21aの内周面との間の微小隙間に至る流路が遮断される。したがって、温度変動緩衝部28の洗浄水が、ピストン部20内の流路27を通して噴出孔25のみから噴出される。
【0134】
上記の構造を有するピストンポンプでは、吸引した洗浄水を高い圧力で吐出することができるとともに、洗浄水に周期的な圧力変動を与えることができる。
【0135】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ピストンポンプにより洗浄水を高圧で人体に噴出することができる。したがって、少ない流量の洗浄水で高い洗浄感および高い洗浄力を得ることができるとともに、水の使用量を削減することができる。これにより、洗浄水の瞬間的な加熱がより効率的に実現される。また、洗浄水に圧力変動が与えられるので、使用者が心地よい刺激を得ることができる。さらに、洗浄水を人体の局部に噴出するときの噴出圧の範囲が広がり、使用者の好みに応じた洗浄を実現することが可能となる。
【0136】
また、ピストンポンプは小型で高圧を得ることができるので、衛生洗浄装置本体の小型化も実現でき、省スペース化が図られる。
【0137】
さらに、本実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるピストンポンプは、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミドおよびNBR等の樹脂により形成されているため、製作費用を低減できる。
【0138】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置は、ポンプの構成および動作を除き第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と同様の構成および動作を有する。
【0139】
以下に、第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるポンプの構成および動作について図19〜図23に基づき説明する。
【0140】
図19は、第2の実施の形態に係るポンプ13の構成を示す模式的断面図である。第2の実施の形態に係るポンプ13は、ウォームホイール133からピストン137への動力の伝達がスライド枠361およびスロット枠362により行われていることを除き、第1の実施の形態に係るポンプ13と同様の構造を有する。
【0141】
図20は、第2の実施の形態に係るポンプ13のスライド枠361およびスロット枠362がウォームホイール133に取り付けられている様子を示す模式図である。図21は、図19に示すポンプ13のA−A線断面図である。
【0142】
図19〜図21によれば、正方形状のスロット枠362には、偏心輪135と同様の形状を有する円形状の孔が設けられている。これにより、スロット枠362は偏心輪135と摺動可能に取り付けられている。
【0143】
また、スライド枠361には長方形状の孔が設けられており、スロット枠362はスライド枠361の長方形状の孔に取り付けられている。この場合、スロット枠362の上下の辺は、スライド枠361の長方形状の孔の上下の辺と接触しており、左右方向に摺動可能である。
【0144】
さらに、図19および図20に示すように、スライド枠361の両側面には、ケース50aと摺動可能に接触するガイド部363が設けられている。これにより、スライド枠361は偏心輪135の動作に応じて上下方向に動作する。そして、スライド枠361に取り付けられたピストンロッド360が、第2の筐体60B内部に設けられたピストン137の上下運動を行う。
【0145】
図22は、図19のウォーム132の動作に伴うピストン運動360、スライド枠361およびスロット枠362の動作を示す動作説明図である。以下の説明において、図22に示すように偏心輪135内の軸134と対向する点を点Paとする。
【0146】
図22(a)において、ウォーム132はモータ130の駆動により矢印R1の方向に回転を開始する。そして、ウォーム132の回転に応じてウォームホイール133は矢印R2の方向に回転を開始する。さらに、偏心輪135内の点Paは矢印R3の方向に回転を開始する。なお、矢印R3はウォームホイール133の回転中心から点Paまでの距離を半径とした円上に存在する。
【0147】
図22(b)において、ウォーム132がモータ130により矢印R1の方向に回転し、ウォームホイール133を矢印R2の方向に90度回転させた場合、偏心輪135内の点Paは矢印R3の方向に90度回転する。
【0148】
上記に示す回転動作が行われることにより、偏心輪135に取り付けられているスロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の内部を左方向に移動する。さらに、スライド枠361は、偏心輪135に取り付けられたスロット枠362を保持しているため、偏心輪135の回転に伴い下方向に移動する。
【0149】
その後、ウォーム132の回転に伴い、偏心輪135内のPaは軸134を中心に360度回転する。これにより、偏心輪135に取り付けられたスロット枠362は矢印Xの方向に往復運動し、スロット枠362が取り付けられたスライド枠361は矢印Yの方向に上下運動する。以上に示す動作に伴いピストン137が上下運動を行い、ポンプ13が稼動する。
【0150】
以下に、図23に基づきポンプ13の動作を説明する。図23は、ポンプ13の動作を示す模式的断面図である。以下の説明において、図23に示すように円柱状空間139内部のピストン137の移動可能な上端を上死点K1とし、下端を下死点K2とする。
【0151】
図23(a1)は、稼動開始時におけるポンプ13の内部状態を示し、図23(a2)は、図23(a1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0152】
図23(a1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて稼動を開始する。ウォーム132は矢印R1の方向に回転を開始し、ウォームホイール133は矢印R2の方向に回転を開始する。ここで、ポンプ13の稼動開始時において、偏心輪135内の点Paは軸134の上側に位置し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の中心に位置する。そして、ピストンロッド360に設けられたピストン137は円柱状空間139内の上死点K1に位置する。図23(a2)に示す通り、ポンプ13の稼動開始時にポンプ室139a内部に流体の流れは存在しない。
【0153】
図23(b1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を下降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図23(b2)は、図23(b1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0154】
図23(b1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の左側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の左側に移動する。そして、スライド枠361はスロット枠362の移動に伴って下降する。これにより、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139内部の上死点K1より下降する。
【0155】
円柱状空間139内でのピストン137の下降に伴い、ポンプ室139aの容積は増大し、ポンプ室139a内の圧力が低下する。図23(b2)によれば、ポンプ室139a内の圧力の低下に伴い、弁シート52の洗浄水吸引系側の可動リップ部52aがケース50b側に曲折している。これにより、供給用洗浄水W1が吸引ポート55bより洗浄水吸引系を介してポンプ室139a内部に導入される。
【0156】
図23(c1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内の下死点K2に位置した場合のポンプ13の内部状態を示し、図23(c2)は、図23(c1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0157】
図23(c1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作を停止する。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の下側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の中心に移動する。この状態で、スライド枠361は下降を停止する。このとき、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139内部の下死点K2に位置する。この状態で、ピストン137は下降動作を停止し、図23(c2)に示す通り、ポンプ室139a内部に流体の流れは存在しない。
【0158】
図23(d1)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を上降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図23(d2)は、図23(d1)に示すポンプ13のB−B線断面を示す。
【0159】
図23(d1)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吐出動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の右側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の右側に移動する。そして、スライド枠361はスロット枠362の移動に伴って上昇する。これにより、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139の内部の下死点K2より上昇する。
【0160】
円柱状空間139内でのピストン137の上昇に伴い、ポンプ室139aの容積は減少し、ポンプ室139a内の圧力が上昇する。図23(d2)によれば、ポンプ室139a内の圧力の上昇に伴い、弁シート52の洗浄水吐出系側の可動リップ部52aがケース50a側に曲折している。これにより、ポンプ室139a内部の吐出用洗浄水W2が、洗浄水吐出系より吐出ポート55aを介してポンプ13の外部へ吐出される。
【0161】
以上に示すポンプ13の稼動時におけるポンプ室139aの圧力変化は、第1の実施の形態において図14に示した圧力変化と同様である。
【0162】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ポンプ13内部におけるピストン137は、ピストンロッド360、スライド枠361およびスロット枠362により保持されている。これにより、ポンプ13の稼動時にピストン137には上下方向にのみ駆動力が伝達され、上下運動の直進性が向上する。それにより、ピストン137の外周部に装着されるX字パッキン138に、水平方向の負荷が生じないため、ポンプ室139aの密閉性が向上し、ポンプ13の稼動効率が向上する。
【0163】
上記の構造を有するピストンポンプでは、吸引した洗浄水を高い圧力で吐出することができるとともに、洗浄水に周期的な圧力変動を与えることができる。
【0164】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ピストンポンプにより、洗浄水を高圧で人体に噴出することができる。したがって、少ない流量の洗浄水で高い洗浄感および高い洗浄力を得ることができるとともに、水の使用量を削減することができる。これにより、洗浄水の瞬間的な加熱がより効率的に実現される。また、洗浄水に圧力変動が与えられるので、使用者が心地よい刺激を得ることができる。さらに、洗浄水を人体の局部に噴出するときの噴出圧の範囲が広がり、使用者の好みに応じた洗浄を実現することが可能となる。
【0165】
また、ピストンポンプは小型で高圧を得ることができるので、衛生洗浄装置本体の小型化も実現でき、省スペース化が図られる。
【0166】
さらに、本実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるピストンポンプは、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミドおよびNBR等の樹脂により形成されているため、製作費用を低減できる。
【0167】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る衛生洗浄装置は、ポンプの構成および動作を除き第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と同様の構成および動作を有する。
【0168】
以下に、第3の実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるポンプの構成および動作について図24〜図30に基づき説明する。
【0169】
図24は、第3の実施の形態に係るポンプ13の構成を示す模式的断面図である。第3の実施の形態に係るポンプ13は、2つのポンプ室を有する複動型のピストンポンプである。なお、第3の実施の形態に係るポンプ13においては、第2の実施の形態と同様、ウォームホイール133からピストン137への動力の伝達がスライド枠361およびスロット枠362により行われている。
【0170】
図25は、第3の実施の形態に係るポンプ13のスライド枠361およびスロット枠362がウォームホイール133に取り付けられている様子を示す模式図である。図26は、図24に示すポンプ13のA−A線断面図である。
【0171】
図24〜図26によれば、第3の実施の形態に係るポンプ13のケース50a,50cにより形成される第1の筐体60A内部の構成は、第2の実施の形態に係るポンプ13の第1の筐体60A内部の構成と同様である。以下に、第3の実施の形態に係るポンプ13のケース50a,50b,50cにより形成される第2の筐体60B内部の構成について説明する。
【0172】
第3の実施の形態に係るポンプ13の第2の筐体60Bは、ケース50a、ケース50bおよびポンプ室形成体50eにより形成されている。ここで、第2の筐体60B内部の円柱状空間139にはピストン137が設けられており、ピストン137により円柱状空間139がポンプ室139aとポンプ室139bとに分割される。なお、ピストン137の外周部には、X字パッキン138が装着されている。
【0173】
図24〜図26によれば、ポンプ室139aには洗浄水吐出口51aおよび洗浄水吸引口51bが設けられ、ポンプ室139bには洗浄水吐出口51cおよび洗浄水吸引口51dが設けられている。
【0174】
洗浄水吐出口51a,51cおよび洗浄水吸引口51b,51dは、第1および第2の実施の形態に係るポンプの構造と同様に、ケース50bに設けられる洗浄水導水路および吐出ポート55cにより、またはケース50bに設けられる洗浄水導水路および吸引ポート55dにより外部と連通している。吐出ポート55cおよび吸引ポート55dの先端は、第1および第2の実施の形態に係るポンプの構造と同様、ニップル形状を有する。
【0175】
図26によれば、ケース50aとケース50bとは、弁シート523を介して接続されている。以下、図27に基づき、本実施の形態におけるケース50aとケース50bとの接続状態および弁シート523の形状について説明する。図27は、ケース50a,50bおよび弁シート523の模式的組立図である。
【0176】
図27に示すように、ケース50aのケース50bとの接続面には、溝状に形成された弁シート保持部53a、洗浄水吐出口56a,56cおよび洗浄水吸引口56b,56dが設けられている。また、ケース50bのケース50aとの接続面には、突起状に形成された弁シート保持部53b、洗浄水吐出口56a,56cおよび洗浄水吸引口56b,56dが設けられている。
【0177】
ケース50aにおいて、洗浄水吐出口56a,56cの周辺には空間53kが設けられており、洗浄水吸引口56b,56dの周辺には、弁座53が設けられている。ケース50bにおいては、洗浄水吐出口56a,56cの周辺に弁座53が設けられ、洗浄水吸引口56b,56dの周辺に空間53kが設けられている。
【0178】
本実施の形態に係る弁シート523は、上述の第1および第2の実施の形態に係る弁シート52と同様の形状を有する2つの弁シートがシート連結部52cを介して連結されることにより形成されている。
【0179】
ケース50aとケース50bとの接続は、第1の実施の形態と同様に次のように行われる。図27に示すように、ケース50aのケース50bとの接続面の一角を角pとし、角pの対角に位置する他の角を角qとし、ケース50bのケース50aとの接続面の一角を角rとし、角rの対角に位置する他の角をsとした場合、ケース50bの角rはケース50aの角pに接続され、ケース50bの角sはケース50aの角qに接続される。なお、ケース50aおよびケース50bの弁シート保持部53a,53bの間には弁シート523が挿入される。
【0180】
上記に示すように、ケース50a、ケース50bおよび弁シート523が組み立てられることにより、弁シート523の可動リップ部52aは、各ポンプ室139a,139b内部の圧力状態に伴い第1の実施の形態と同様の動作を行う。
【0181】
以下に、図28および図29に基づきポンプ13の動作を説明する。図28および図29は、ポンプ13の動作を示す模式的断面図である。以下の説明において、図28に示すように円柱状空間139内部のピストン137の移動可能な上端を上死点K1とし、下端を下死点K2とする。
【0182】
図28(a)は、稼動開始時におけるポンプ13の内部状態を示し、図29(a)は、図28(a)に示すポンプ13のB−B線断面を示し、図29(e)は、図28(a)に示すポンプ13のC−C線断面を示す。
【0183】
図28(a)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて稼動を開始する。ウォーム132は矢印R1の方向に回転を開始し、ウォームホイール133は矢印R2の方向に回転を開始する。ここで、ポンプ13の稼動開始時において、偏心輪135内の点Paは軸134の上側に位置し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の中心に位置する。そして、ピストンロッド360に設けられたピストン137は円柱状空間139内の上死点K1に位置する。図29(a)および図29(e)に示す通り、ポンプ13の稼動開始時にポンプ室139aおよびポンプ室139b内部に流体の流れは存在しない。
【0184】
図28(b)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を下降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図29(b)は、図28(b)に示すポンプ13のB−B線断面を示し、図29(f)は、図28(b)に示すポンプ13のC−C線断面を示す。
【0185】
図28(b)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作および吐出動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の左側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の左側に移動する。そして、スライド枠361はスロット枠362の移動に伴って下降する。これにより、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139内部の上死点K1より下降する。
【0186】
円柱状空間139内でのピストン137の下降に伴い、ポンプ室139aの容積は増大し、ポンプ室139bの容積は減少する。そして、ポンプ室139a内の圧力が低下し、ポンプ室139b内の圧力が上昇する。
【0187】
図29(b)によれば、ポンプ室139a内の圧力の低下に伴い、弁シート523の洗浄水吸引系側の可動リップ部52aがケース50b側に曲折している。これにより、供給用洗浄水W1が吸引ポート55dより洗浄水吸引系を介してポンプ室139a内部に導入される。
【0188】
また、図29(f)によれば、ポンプ室139b内の圧力の上昇に伴い、弁シート523の洗浄水吐出系側の可動リップ部52aがケース50a側に曲折している。これにより、ポンプ室139a内部の吐出用洗浄水W2が、洗浄水吐出系より吐出ポート55cを介してポンプ13の外部へ吐出される。
【0189】
図28(c)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内の下死点K2に位置した場合のポンプ13の内部状態を示し、図29(c)は、図28(c)に示すポンプ13のB−B線断面を示し、図29(g)は、図28(c)に示すポンプ13のC−C線断面を示す。
【0190】
図28(c)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作および吐出動作を停止する。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の下側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の中心に移動する。この状態で、スライド枠361は下降を停止する。このとき、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139内部の下死点K2に位置する。この状態で、ピストン137は下降動作を停止し、図29(c)および図29(g)に示す通り、ポンプ室139a内部に流体の流れは存在しない。
【0191】
図28(d)は、ポンプ13の稼動によりピストン137が円柱状空間139内を上降する場合のポンプ13の内部状態を示し、図29(d)は、図28(d)に示すポンプ13のB−B線断面を示し、図29(h)は、図28(d)に示すポンプ13のC−C線断面を示す。
【0192】
図28(d)において、ポンプ13はモータ130の動作に応じて洗浄水の吸引動作および吐出動作を行う。この場合、モータ130の動作に応じて偏心輪135内の点Paは軸134の右側に移動し、スロット枠362はスライド枠361に設けられた長方形状の孔の右側に移動する。そして、スライド枠361はスロット枠362の移動に伴って上昇する。これにより、ピストンロッド360に設けられたピストン137は、円柱状空間139の内部の下死点K2より上昇する。
【0193】
円柱状空間139内でのピストン137の上昇に伴い、ポンプ室139aの容積は減少し、ポンプ室139bの容積は増大する。そして、ポンプ室139a内の圧力が上昇し、ポンプ室139b内の圧力が低下する。
【0194】
図29(d)によれば、ポンプ室139a内の圧力の上昇に伴い、弁シート523の洗浄水吐出系側の可動リップ部52aがケース50a側に曲折している。これにより、吐出用洗浄水W2が、洗浄水吐出系より吐出ポート55cを介してポンプ13の外部へ吐出される。
【0195】
また、図29(h)によれば、ポンプ室139a内の圧力の低下に伴い、弁シート523の洗浄水吸引系側の可動リップ部52aがケース50b側に曲折している。これにより、供給用洗浄水W1が吸引ポート55dより洗浄水吸引系を介してポンプ室139b内部に導入される。
【0196】
図30は図24のポンプ13の圧力変化を示す図である。図30の縦軸は圧力を示し、横軸は時間を示す。
【0197】
図30に示すように、ポンプ13のポンプ室139aに吸引ポート55dおよび洗浄水吸引系を介して圧力Piの洗浄水が供給される。この場合、図24のピストン137が上下方向に運動することにより、ポンプ室139a内の洗浄水の圧力PPaは、点線のように変化する。一方、ポンプ室139b内の洗浄水の圧力PPbは、破線のように変化する。ポンプ13のポンプ室139a,139bより吐出ポート55cおよび洗浄水吐出系を介して吐出される洗浄水の圧力Poutは、太い実線で示すように、圧力PPcを中心として上下に周期的に変化する。
【0198】
このように、本実施の形態に係るポンプ13においては、ピストン137が上下運動を行うことにより、ポンプ室139aまたはポンプ室139b内の洗浄水に対して交互に圧力が加えられ、吸引ポート55dより導入される洗浄水が昇圧されて吐出ポート55cから吐出される。
【0199】
上記の構造を有するポンプ13では、ピストン137の一回の上下運動に伴い2つのポンプ室139a,139bより洗浄水が吐出されるため、単動式のピストンポンプと比較して、モータ130の動力を低減した場合においても多量の洗浄水が吐出できる。したがって、本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ポンプ13のモータ130の動力を低減することにより、ピストン137の上下運動により生じる振動および騒音が低減できる。
【0200】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ポンプ13内部におけるピストン137は、ピストンロッド360、スライド枠361およびスロット枠362により保持されている。これにより、ポンプ13の稼動時にピストン137には上下方向にのみ駆動力が伝達され、上下運動の直進性が向上する。それにより、ピストン137の外周部に装着されるX字パッキン138には、水平方向の負荷が生じないため、ポンプ室139aの密閉性が向上し、ポンプ13の稼動効率が向上する。
【0201】
上記の構造を有するピストンポンプでは、吸引した洗浄水を高い圧力で吐出することができるとともに、洗浄水に周期的な圧力変動を与えることができる。
【0202】
本実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ピストンポンプにより、洗浄水を高圧で人体に噴出することができる。したがって、少ない流量の洗浄水で高い洗浄感および高い洗浄力を得ることができるとともに、水の使用量を削減することができる。これにより、洗浄水の瞬間的な加熱がより効率的に実現される。また、洗浄水に圧力変動が与えられるので、使用者が心地よい刺激を得ることができる。さらに、洗浄水を人体の局部に噴出するときの噴出圧の範囲が広がり、使用者の好みに応じた洗浄を実現することが可能となる。
【0203】
また、ピストンポンプは小型で高圧を得ることができるので、衛生洗浄装置本体の小型化も実現でき、省スペース化が図られる。
【0204】
さらに、本実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるピストンポンプは、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリアミドおよびNBR等の樹脂により形成されているため、製作費用を低減できる。
【0205】
(ポンプの設置例)
上記第1〜第3の実施の形態に係る衛生洗浄装置に用いられるポンプは、例えば以下に示す状態で、衛生洗浄装置の本体部200に設けられる。
【0206】
図31は、第1の実施の形態に係るポンプ13が弾性体により衛生洗浄装置の本体部200に懸架されている状態の一例を示す模式的断面図である。また、図32は、第1の実施の形態に係るポンプ13が弾性体により衛生洗浄装置の本体部200内に設置されている状態の一例を示す模式的断面図である。
【0207】
図31によれば、ポンプ13は、スプリングまたはゴム等の弾性体DNにより衛生洗浄装置の本体部ケーシングHC内部に懸架されている。図32によれば、ポンプ13は、スプリングまたはゴム等の弾性体DNにより衛生洗浄装置の本体部ケーシングHC内部に設置されている。
【0208】
以上に示すように、ポンプ13が弾性体DNを介して衛生洗浄装置の本体部200に設けられることにより、ポンプ13において発生する振動が外部に伝達されない。そして、ポンプ13の振動とともに発生する騒音が低減される。
【0209】
上記に示す弾性体DNのばね定数は、ポンプ13の定常時における振動数と、ポンプ13を弾性体DNにより保持する衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数とが大きく異なるように決定される。
【0210】
ここで、弾性体DNのばね定数をk、衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数をf、ポンプ13の質量をmおよび重力加速度をGとした場合、弾性体DNのばね定数kと衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数fとの関係は、次に示す数式(1)で表される。
【0211】
【数1】
Figure 0004232384
【0212】
そして、数式(1)に基づき弾性体DNのばね定数kが決定される。例えば、ポンプ13が0.4kgの質量を有し、定常時に25Hzで稼動する場合を想定する。この場合、ばね定数を0.01kg/mmとすると、衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数fは数式(1)に基づき約2.5Hzとなる。これにより、ポンプ13の定常時における振動数と、ポンプ13を弾性体DNにより保持する衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数とが大きく異なるので、弾性体DNによる効果的なポンプ13の振動の吸収が実現される。
【0213】
上記に示すように一般的には、弾性体のばね定数は小さく設定される。これにより、衛生洗浄装置の本体部200全体の固有振動数は低くなる。
【0214】
上記に示す第1〜3の実施の形態においては、水道配管が給水源に相当し、ノズル部が噴出手段に相当し、円柱状空間がシリンダ部に相当し、モータが駆動手段、回転型駆動装置に相当し、ポンプ室がシリンダ部の内部空間に相当する。また、弁シートが吸引側弾性体シートおよび吐出側弾性体シート、第1ならびに第2の吸引側弾性体シート、第1ならびに第2の吐出側弾性体シートに相当し、可動リップ部が可動片に相当し、弁座、弁シート保持部および洗浄水吐出口が第1および第2の吐出側弁部に相当し、弁座、弁シート保持部および洗浄水吐出口が第1および第2の吐出側弁部に相当する。さらに、ウォーム、ウォームホイール、偏心輪およびピストンロッドが変換手段に相当し、ウォームが減速機構に相当し、ウォームホイールが変換機構および回転部材に相当し、偏心輪が偏心部材に相当し、ピストンロッドが伝達部材に相当し、スライド枠が第1の伝達部材に相当し、スロット枠が第2の伝達部材に相当し、グリス収納部が潤滑剤収納部に相当し、熱交換器が加熱手段に相当し、本体部ケーシングが第2の筐体に相当する。
【0215】
なお、上記に示す第1〜第3の実施の形態に係る衛生洗浄装置においては、ポンプに用いられる減速手段としてウォームおよびウォームホイールが用いられているが、ウォームおよびウォームホイールに代えて平歯車、はすば歯車、かさ歯車またははすばかさ歯車等を用いてもよい。
【0216】
【発明の効果】
本発明に係る衛生洗浄装置においては、ポンプにより加圧された洗浄水が噴出手段へ送り出され、噴出手段により洗浄水が人体に噴出される。ポンプのシリンダ部内においては、駆動手段によりピストン部が往復運動し、シリンダ部の内部空間に圧力変動が与えられる。そして、吸引側弁部により、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吸引口が開路状態となり、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吸引口が閉路状態となる。さらに、吐出側弁部により、シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って吐出口が開路状態となり、シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って吐出口が閉路状態となる。それにより、給水源からの洗浄水が吸引口を通じてシリンダ部内に吸引され、シリンダ部内に吸引された洗浄水が吐出口を通じて噴出手段へ供給される。
【0217】
これにより、吸引した洗浄水を高圧で人体に噴出することができるので、使用者は少ない流量の洗浄水で高い洗浄感および高い洗浄力を得ることができるとともに、水の使用量を削減することができる。また、洗浄水に圧力変動が与えられるので、使用者は心地よい刺激を得ることができる。さらに、洗浄水を人体の局部に噴出するときの噴出圧の範囲が広がり、使用者の好みに応じた洗浄を実現することが可能となる。さらに、本発明に係る衛生洗浄装置が備えるポンプは小型で高圧を得ることができるので、衛生洗浄装置の小型化が実現でき、省スペース化が図られる。
【0218】
そして、吸引口と吐出口とはシリンダ部を内部に有するケースの同一面に設けて、ケースの同一面において一体に形成した吸引側弁部の吸引側弾性体シートと吐出側弁部の吐出側弾性体シートとを介してポンプの外部と連通することを特徴としたので、吸引側弁部および吐出側弁部の構造が単純となるため、吸引側弁部および吐出側弁部がさらに容易に製作される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】 図1の遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】 第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置の本体部の構成を示す模式図
【図4】 熱交換器の構造の一例を示す一部切り欠き断面図
【図5】 本実施の形態に係るポンプの構成を示す模式的断面図
【図6】 図5に示すポンプのA−A線断面図
【図7】 図5に示すポンプのB−B線断面図
【図8】 弁シートの外観斜視図
【図9】 ケースおよび弁シートの模式的組立図
【図10】 図5のポンプのウォームホイールの構造を示す模式的構造図
【図11】 図5のウォームの形状を示す模式図
【図12】 図5のウォームの動作に伴うピストンロッドの動作を示す動作説明図
【図13】 ポンプの動作を示す模式的断面図
【図14】 図5のポンプのポンプ室の圧力変化を示す図
【図15】 (a)切替弁の縦断面図
(b)切替弁のA−A線断面図
(c)切替弁のB−B線断面図
【図16】 図15の切替弁の動作を示す断面図
【図17】 図3のノズル部のおしりノズルの断面図
【図18】 図17のおしりノズルの動作を説明するための断面図
【図19】 第2の実施の形態に係るポンプの構成を示す模式的断面図
【図20】 第2の実施の形態に係るポンプのスライド枠およびスロット枠がウォームホイールに取り付けられている様子を示す模式図
【図21】 図19に示すポンプのA−A線断面図
【図22】 図19のウォームの動作に伴うピストン運動、スライド枠およびスロット枠の動作を示す動作説明図
【図23】 ポンプの動作を示す模式的断面図
【図24】 第3の実施の形態に係るポンプの構成を示す模式的断面図
【図25】 第3の実施の形態に係るポンプのスライド枠およびスロット枠がウォームホイールに取り付けられている様子を示す模式図
【図26】 図24に示すポンプのA−A線断面図
【図27】 ケースおよび弁シートの模式的組立図
【図28】 ポンプの動作を示す模式的断面図
【図29】 ポンプの動作を示す模式的断面図
【図30】 図24のポンプの圧力変化を示す図
【図31】 第1の実施の形態に係るポンプが弾性体により衛生洗浄装置の本体部に懸架されている状態の一例を示す模式的断面図
【図32】 第1の実施の形態に係るポンプが弾性体により衛生洗浄装置の本体部内に設置されている状態の一例を示す模式的断面図
【符号の説明】
11 熱交換器
13 ポンプ
30 ノズル部
33a,33d グリス収納部
33b スリット
51a,51c,56a 洗浄水吐出口
51b,51d,56b 洗浄水吸引口
52,523 弁シート
52a 可動リップ部
52b 固定シール部
53 弁座
53a,53b 弁シート保持部
53k 空間
60A 第1の筐体
60B 第2の筐体
130 モータ
132 ウォーム
133 ウォームホイール
135 偏心輪
136,360 ピストンロッド
137 ピストン
138 X字パッキン
139 円柱状空間
139a,139b ポンプ室
200 本体部
201 水道配管
361 スライド枠
362 スロット枠
363 ガイド部
523 弁シート
aw 水抜き孔
DN 弾性体DN
HC 本体部ケーシング
55a 吐出ポート
55b 吸引ポート

Claims (14)

  1. 給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、 洗浄水を噴出する噴出手段と、前記給水源からの洗浄水を加圧して前記噴出手段へ送り出すポンプとを備え、前記ポンプは、前記給水源からの洗浄水を吸引するための吸引口および前記噴出手段へ供給される洗浄水を吐出するための吐出口を有するシリンダ部と、前記シリンダ部内に摺動自在に設けられるピストン部と、前記ピストン部を前記シリンダ部内で往復運動させる駆動手段と、前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吸引口を開路状態にし、前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吸引口を閉路状態にする吸引側弁部と、前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吐出口を開路状態にし、前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吐出口を閉路状態にする吐出側弁部とを備え、前記吸引側弁部は、前記吸引口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吸引口を開放するように曲折する可動片を有する吸引側弾性体シートを含み、前記吐出側弁部は、前記吐出口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吐出口を開放するように曲折する可動片を有する吐出側弾性体シートを含み、前記吸引口と前記吐出口とは前記シリンダ部を内部に有するケースの同一面に配置して、前記ケースの同一面において一体に形成した前記吸引側弾性体シートと前記吐出側弾性体シートとを介して前記ポンプの外部と連通することを特徴とした衛生洗浄装置。
  2. 給水源から供給される洗浄水を人体に噴出する衛生洗浄装置であって、 洗浄水を噴出する噴出手段と、前記給水源からの洗浄水を加圧して前記噴出手段へ送り出すポンプとを備え、前記ポンプは、前記給水源からの洗浄水を吸引するための吸引口および前記噴出手段へ供給される洗浄水を吐出するための吐出口を有するシリンダ部と、前記シリンダ部内に摺動自在に設けられるピストン部と、前記ピストン部を前記シリンダ部内で往復運動させる駆動手段と、前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吸引口を開路状態にし、前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吸引口を閉路状態にする吸引側弁部と、前記シリンダ部の内部空間の圧力上昇に伴って前記吐出口を開路状態にし、前記シリンダ部の内部空間の圧力低下に伴って前記吐出口を閉路状態にする吐出側弁部とを備え、前記シリンダ部の内部空間は、前記ピストン部により第1の内部空間と第2の内部空間とに分割され、前記吸引口は、前記第1の内部空間に連通する第1の吸引口と、前記第2の内部空間に連通する第2の吸引口とを含み、前記吐出口は、前記第1の内部空間に連通する第1の吐出口と、前記第2の内部空間に連通する第2の吐出口とを含み、前記吸引側弁部は、前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力低下に伴って前記第1の吸引口を開路状態にし、前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力上昇に伴って前記第1の吸引口を閉路状態にする第1の吸引側弁部と、前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力低下に伴って前記第2の吸引口を開路状態にし、前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力上昇に伴って前記第2の吸引口を閉路状態にする第2の吸引側弁部とを含み、前記吐出側弁部は、前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力上昇に伴って前記第1の吐出口を開路状態にし、前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力低下に伴って前記第1の吐出口を閉路状態にする第1の吐出側弁部と、前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力上昇に伴って前記第2の吐出口を開路状態にし、前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力低下に伴って前記第2の吐出口を閉路状態にする第2の吐出側弁部とを含み、前記第1の吸引側弁部は、前記第1の吸引口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力低下に伴って前記第1の吸引口を開放するように曲折する可動片を有する第1の吸引側弾性体シートを含み、前記第2の吸引側弁部は、前記第2の吸引口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力低下に伴って前記第2の吸引口を開放するように曲折する可動片を有する第2の吸引側弾性体シートを含み、前記第1の吐出側弁部は、前記第1の吐出口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の前記第1の内部空間の圧力上昇に伴って前記第1の吐出口を開放するように曲折する可動片を有する第1の吐出側弾性体シートを含み、前記第2の吐出側弁部は、前記第2の吐出口を閉塞するように配置されるとともに前記シリンダ部の前記第2の内部空間の圧力上昇に伴って前記第2の吐出口を開放するように曲折する可動片を有する第2の吐出側弾性体シートを含み、前記吸引口および前記吐出口は前記シリンダ部を内部に有するケースの同一面に配置して、前記ケースの同一面において一体に形成した前記第1および第2の吸引側弾性体シートと前記第1および第2の吐出側弾性体シートを介して前記ポンプの外部と連通することを特徴とした衛生洗浄装置。
  3. 前記駆動手段は、回転力を発生する回転型駆動装置と、前記回転型駆動装置により発生された回転力を往復運動に変換する変換手段とを含むことを特徴とした請求項1または2のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  4. 前記変換手段は、前記回転型駆動装置により発生された回転力を減速する減速機構と、前記減速機構により減速された回転力を前記ピストン部の往復運動に変換する変換機構とを含むことを特徴とした請求項3記載の衛生洗浄装置。
  5. 前記減速機構は、ウォームとウォームホイールとにより構成されるウォームギアを含むことを特徴とした請求項4記載の衛生洗浄装置。
  6. 前記変換機構は、前記減速機構により減速された回転力により回転する回転部材と、前記回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材と、前記偏心部材に取り付けられた一端部と前記ピストン部に取り付けられた他端部とを有する伝達部材とを含むことを特徴とした請求項4または5に記載の衛生洗浄装置。
  7. 前記変換機構は、前記減速機構により減速された回転力により回転する回転部材と、前記回転部材の回転中心に対して偏心した位置に設けられた偏心部材と、前記ピストン部に連結されるとともに前記往復運動に平行な第1の方向に移動可能に設けられた第1の伝達部材と、前記偏心部材の運動に伴って移動するとともに前記第1の伝達部材に対して前記第1の方向に交差する第2の方向に移動可能に設けられた前記第2の伝達部材とを含むことを特徴とした請求項4または5に記載の衛生洗浄装置。
  8. 前記変換手段の摺動部に潤滑剤を収納する潤滑剤収納部が設けられたことを特徴とした請求項3〜7のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  9. 前記変換手段を収納する第1の筐体をさらに備え、前記第1の筐体は、内部と外部とを連通する孔を有することを特徴とした請求項3〜8のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  10. 前記ピストン部の外周面に断面X字形状のパッキンが装着されたことを特徴とした請求項1〜9のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  11. 前記シリンダ部および前記ピストン部は、樹脂により形成されることを特徴とした請求項1〜10のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  12. 前記給水源から供給された洗浄水を加熱して前記ポンプに供給する加熱手段をさらに備えたことを特徴とした請求項1〜11のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
  13. 前記加熱手段は、給水源から供給された洗浄水を流動させつつ加熱する瞬間式加熱装置であることを特徴とした請求項12記載の衛生洗浄装置。
  14. 前記ポンプを収容する衛生洗浄装置の本体ケーシングを備え、前記ポンプは、前記本体ケーシングの内部に弾性体を介して取り付けられることを特徴とした請求項1〜13のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
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