JP3951603B2 - ポンプ用逆止弁及びこれを使用したポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、圧電素子等のアクチュエータによりピストンあるいはダイヤフラムなどの可動壁を振動させることでポンプ室内の容積を変更し、吸入及び吐出動作を行なうポンプ用逆止弁及びこれを使用したポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子は、1周期の変位は小さいが応答周波数が高く、素子の共振周波数までの間は、高周波で駆動するほど出力エネルギが大きく取れる特性を有している。このため、ダイアフラムポンプに代表されるような可動壁を駆動する往復動ポンプの駆動源として圧電素子(若しくは、圧電素子のような特性を有するアクチュエータ)を使用する場合には、高周波駆動できるポンプ構成とすることで、ポンプの出力エネルギが大きくなり、電動モータを用いるものより小型軽量なポンプ構成となる。
【0003】
ところで、高周波駆動できるポンプ構成とするためには、可動壁の変位に伴い排除される体積(排除体積)分の動作流体がポンプ内を通過する通過時間を短くする必要がある。この通過時間を短くする一つの方法として、ポンプを構成している逆止弁を通過する動作流体の抵抗(流体抵抗)を減らす方法が知られており、具体的な技術として、例えば特開平5−288151号公報(先願技術1と称する)には、逆止弁を多数使用することが記載されており、日本機械学会論文集(C編)60巻571号956ページの「圧電素子を動力源とする油圧式アクチュエータに関する研究」(先願技術2と称する)には、流量をQとして並列配置した弁の個数をnとし、弁の損失をQ3 /n2 に比例するという記載から、弁を並列配置して流体抵抗を低減することが記載されている。
【0004】
また、圧電素子を駆動源としたポンプに使用する逆止弁の具体的な技術として、例えば特開平5−172060号公報(先願技術3と称する)には、シリコンゴム製で放射状のアームを持つ円形弁が記載されており、金属材料を弁体に用いた小型逆止弁としては、日本機械学会論文集(C編)59巻564号213ページの「圧電素子を動力源とする油圧式アクチュエータに関する研究」(先願技術4と称する)にピアノ線によって位置規制された円盤型逆止弁が記載され、日本機械学会論文集(C編)65巻631号215ページの「共振駆動を用いた高パワー密度の圧電マイクロポンプ」(先願技術5と称する)にリード弁を逆止弁として使用することが記載されている。
【0005】
一方、ダイヤフラムポンプに代表されるような可動壁を弾性支持する往復動ポンプでは、その弾性と可動壁自体の質量等の関係から決まる共振周波数が温度等の影響で変動しやすく、様々な環境で、最適な駆動周波数を選択する必要があり、温度による共振周波数の変動を小さくする先願技術として、例えば、特開平11−236880号公報(先願技術6と称する)に、振動板をバネ座金の付勢力により挟持することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電素子を駆動素子としたポンプを高周波駆動するために排除体積分の動作流体の通過時間を短くするためには、ポンプ室内の流体抵抗を減らすことも無視できない。ところが、前述した先願技術1及び先願技術2は、ポンピ室の流体抵抗を減らすことに関して何等開示していなかった。
【0007】
一方、ポンプ用逆止弁として示した先願技術3は、アーム部の伸長によって動作するため、その構造では高速駆動時に内部損失の大きいゴムを使用する必要があり、その結果、応答性の低下と弁の寿命が短いという課題がある。また、先願技術4及び先願技術5の逆止弁は、円盤型弁、リード弁ともに十分な弁リフト量を確保しなければ流路断面積が確保できず損失が発生し、逆に十分な弁リフト量を確保すると弁の高速移動が必要で応答性が悪化するという課題がある。また、円盤型弁においては、弁体の位置規制構造の複雑さから直径4mm程度が小型化の限界であり、圧電素子を用いたポンプの目的の小型化をも阻害していた。
【0008】
さらに、往復動ポンプとして示した先願技術6は、ポンプ自体の温度による可動板の変位への影響は防止できるが、他の要因による影響を防ぐことが不可能である。例えば、シリコンゴムでできた流体室に、動作流体を圧送して変形させるようなフレキシブルアクチュエータの駆動原としてポンプを用いるような場合、シリコンゴム製の流体室や動作流体自体が温度によって膨張する等の影響を受け、全体圧力の変化等が生じると、この全体圧力の変化がダイヤフラムの変形に影響を与え、結果的に可動版の共振周波数の変化をもたらしてしまうのである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長寿命と高速動作時の内部損失の低減を可能とし、高速応答性に優れたポンプ用逆止弁及びそれを使用したポンプを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、請求項1記載の発明は、ピストンあるいはダイヤフラム等の容積が変更可能なポンプ室を備えたポンプに用いられるポンプ用逆止弁において、リング状流路と、このリング状流路を開閉する、螺旋状アームで支持されたリング状薄板を具備しているようにしたことを特徴とするポンプ用逆止弁である。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のポンプ用逆止弁において、前記リング状流路の外径を3mm以下とした。また、請求項3記載の発明は、ピストンあるいはダイヤフラム等の可動壁により容積が変更可能なポンプ室と、ポンプ室へ動作流体を流入させる流入管路と、ポンプ室から流体を流出させる流出管路とを備えたポンプにおいて、流入管路内もしくは流出管路の少なくともどちらか一方は、弁を構成する複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、ポンプ室中心に対して周方向に略等距離間隔で配置されており、他の一方の管路が有するノズルは、前記複数のノズルが配置されている位置よりも、ポンプ室中心に近い位置に配置されているとともに、前記ノズルに、請求項1又は2記載のポンプ用逆止弁を設けたことを特徴とするポンプである。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載のポンプにおいて、前記複数のノズルは、前記ポンプ室の中心位置から距離の異なる、複数の周上に配置されている。また、請求項5記載の発明は、ピストンあるいはダイヤフラム等の可動壁により容積が変更可能なポンプ室と、ポンプ室へ動作流体を流入させる流入管路と、ポンプ室から流体を流出させる流出管路とを備えたポンプにおいて、流入管路内もしくは流出管路の少なくともどちらか一方は、弁を構成する複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、各ノズルに対する流体の最大移動距離が略等しい位置に配置されており、他の一方の管路を有するノズルは、前記複数のノズルが配置されている位置よりも、ポンプ室中心に近い位置に配置されているとともに、前記ノズルに、請求項1又は2記載のポンプ用逆止弁を設けている。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載のポンプにおいて、前記複数のノズルは、吸入管路を有するノズルであり、前記ポンプ室中心に近い位置に配置されているノズルは、吐出管路を有するノズルである。
【0014】
一方、第1形態のポンプ制御方法は、ピストン、或いはダイヤフラム等の可動壁により容積が変更可能なポンプ室と、前記可動壁を駆動するアクチュエータとを有するポンプにおいて、前記可動壁の共振周波数を演算する可変周波数手段を備え、当該可変周波数手段が、前記ポンプ室内の環境に応じて前記アクチュエータを制御するようにしたポンプ制御方法である。
【0015】
また、第2形態のポンプ制御方法は、第1形態のポンプ制御方法において、前記ポンプ室内の動作流体の温度を検出する温度センサを備え、前記温度センサの検出結果を前記可変周波数手段の演算値とするようにした。また、第3形態のポンプ制御方法は、第1又は第2形態のポンプ制御方法において、前記ポンプ室の内部、流入側、流出側の少なくとも一箇所の動作流体の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサの検出結果に基づいて流体送出量を演算する圧力−流体送出量変換手段とを備え、当該圧力−流体送出量変換手段が、前記アクチュエータを制御するようにした。
【0016】
また、第4形態のポンプ制御方法は、第1形態乃至第3形態の何れかに記載のポンプ制御方法において、前記ポンプ室内の動作流体の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出結果に基づいて前記圧力−流体送出量変換手段の流体送出量を補正する補正手段とを備えるようにした。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。先ず、図1は、圧電素子を駆動源とした一般的なポンプ2の構造を縦断面で示すものであり、円筒形状のケース4内の底部に圧電素子6を配置し、圧電素子6の上部に積層した状態で円形のダイヤフラム8を配置している。ダイヤフラム8は、外周縁がケース4の内壁に固定支持されて弾性変形自在となっている。
【0018】
ダイヤフラム8とケース4の上壁との間の狭い空間がポンプ室10であり、このポンプ室10に向けて、吸入逆止弁Avを設けた吸入ノズルA、吐出逆止弁Bvを設けた吐出ノズルBが開口している。そして、吸入ノズルAに流入管路12が接続し、吐出ノズルBに流出管路16が接続している。
そして、圧電素子6に交流電圧が供給されることによってダイヤフラム8が振動してポンプ室10の容積が連続的に変化し、ポンプ室10の容積が増大するときが吸入行程となり、吸入逆止弁Avが開いて吸入管路12側から動作流体が流入し、ポンプ室10の容積が減少するときが吐出行程となり、吐出逆止弁Bvが開いて吐出ノズル16側から動作流体が流出する。なお、図1は、吐出行程時のポンプ2内部を示している。
【0019】
次に、本発明に係るノズルの配置位置の第1実施形態について図2を参照して説明する。
図2は、ポンプ室10に連通する複数のノズルの配置位置を平面視で模式的に示した図であり、実線の円S1が円形のダイヤフラム8の外形線(平面視で見たポンプ室10の外形線)であり、この外形線S1内に納まっている複数の白抜きの丸(○印)が吸入ノズルAの配置位置、黒丸(●印)が吐出ノズルBの配置位置である。吐出ノズルBは、ポンプ室10の中心位置に配置されている。複数の吸入ノズルAは、ダイヤフラム8の外形線S1に近い位置において、ポンプ室10の中心位置から所定距離の、円周(ダイヤフラム外径と相似な図形の周)上に等距離間隔で配置されている。
【0020】
ここで、ポンプ室10内の排除体積分を満たすために、1つの吸入ノズルAから吸入された流体が到達するべき最も離れた位置までの直線的な距離を、最大移動距離L A と称すると、図2に示したものは、各吸入ノズルAの最大移動距離L A が等しい値r1となるように配置されている。
一方、本発明に沿っていない場合のノズルの配置を図4に示す。
【0021】
ここで、平板間の距離が一定である平行平板間の流体抵抗Rは、定数C、流路の平均断面積S、平均流路長さLとすると、R=C×(L/S)として記述される。
図2と図4とで、1つの吸入ノズルAが受け持つ流路の平均断面積S、平均流路長Lを見比べると、流路の平均断面積Sは図2の方が大きく、平均流路長Lは図2の方が短いことがわかる。
【0022】
従って、複数のノズルは、本発明のように配置することでポンプ室10内の流体抵抗を効果的に削減することができる。その結果、流量が増えるので、吸入行程で排除体積分の流体を吸入するまでの時間が少なくて済み、ポンプをより高周波駆動することが可能となる。
また、図2では、吐出ノズルBをポンプ室10の中心に配置しているが、このように、吐出ノズルBを、吸入ノズルAを配置した位置よりもポンプ室10の中心に近くになるように配置すると、吐出ノズルBからポンプ室の周囲までの距離がほぼ等しくなり、ポンプ室10から吐出する流体に対するポンプ室10内の流体抵抗を少なくすることができるため、吐出行程でも排除体積分の流体を吐出するまでの時間が少なくて済み、ポンプをより高周波駆動することが可能となる。さらに、図示していない吸入管路12と流出管路16を、立体的に交差させることなく配置させることができるため、吸入管路12と流出管路16の形状が単純になり、これら管路内の流体抵抗を増やさないで複数のノズルを配置することができる。
【0023】
次に、本発明に係るノズルの配置位置の第2実施形態について図3を参照して説明する。
本実施形態は、図3に示すように、ポンプ室10の中心位置に吐出ノズルBが配置されているとともに、第1実施形態よりも数の多い吸入ノズルAが、ポンプ室10の中心位置から距離の異なる複数の円周(ダイヤフラムと外径の相似な図形の周)上である、吐出ノズルBの近くと、ダイヤフラム8の外形線S1に近い位置に配置されている。また、各吸入ノズルAの最大移動距離LA が等しい値r2となるようにも配置されている。
【0024】
多くの吸入ノズルAを配置する方法としてS1に近い位置にだけ配置することを考えられるが、そのような配置よりは、図3のようにポンプ室10の中心位置から距離の異なる複数の周上に、周方向に等距離間隔で配置した方が、1つの吸入ノズルAが受け持つ流路の平均断面積Sを大きく、平均流路長Lを短くでき、流体抵抗を小さくできる。
【0025】
さらに、図3のように、ポンプ室10の中心位置から複数の周までの距離を、各吸入ノズルAの最大移動距離LA を等しくするような関係に決めることで、ポンプ室10の中心位置からノズルを配置する複数の周までの距離を合理的に定めて配置することができ、より流体抵抗を減らすことができる。
従って、本発明による配置によって、吸入ノズルAから流入する流体に対するポンプ室10内の流体抵抗を効果的に削減することができ、その結果、流量が増えるので、吸入行程で排除体積分の流体を吸入するまでの時間が少なくて済み、ポンプをより高周波駆動することが可能となる。
【0026】
また、図3では、吐出ノズルBをポンプ室10の中心に配置しているが、このように、吐出ノズルBを、吸入ノズルAを配置した位置よりもポンプ室10の中心に近くなるように配置すると、吐出ノズルBからポンプ室10の周囲までの距離がほぼ等しくなり、ポンプ室から吐出する流体に対するポンプ室10内の流体抵抗を少なくすることができるため、吐出行程でも排除体積分の流体を吐出するまでの時間が少なくて済み、ポンプをより高周波駆動することが可能となる。さらに、図示していない吸入管路と12と流出管路16を、立体的に交差させることなく配置させることができるため、吸入管路と12と流出管路16の形状が単純になり、これら管路内の流体抵抗を増やさないで複数ノズルを配置することができる。
【0027】
以上、第1及び第2実施形態では、吸入ノズルAが複数である場合を示している。これは動作流体が液体の場合、ポンプを駆動した時にポンプ室10内外に発生する圧力差が、吐出行程よりも吸入行程の方が少ないためである。具体的には、吸入行程ではポンプ室10内の圧力は真空状態までしか低下しないが、吐出行程では、ダイヤフラム8を駆動するアクチュエータの発生力に関係して圧力を上昇させることができるからである。
【0028】
一方、ポンプ室10内の圧力差、流体抵抗、流量の関係は、圧力差/流体抵抗=流量の関係を有している。従って、吸入行程で圧力差が少ない場合には、吸入ノズルを大きくして流体抵抗を減らす必要があるが、この際、1つの大きな吸入ノズルAを設け、逆止弁を構成するための弁板をそのノズルに取り付けると、吐出行程で発生するポンプ室10内の高圧力で弁板がたわみ易く、破壊され易くなる問題が生じる。そこで、吸入ノズルAの総面積が吐出ノズルBの総面積よりも大きくなる関係を保ちながら、吸入ノズルAを複数個にしているのである。
【0029】
従って、動作流体が気体等で、吐出行程、吸入行程での圧力差にあまり差がない場合には、吐出ノズルが複数であっても構わない。
次に、図5から図8は、本発明に係る逆止弁、すなわち、図1で示した吸入逆止弁Av、吐出逆止弁Bvの具体例な実施形態を示すものであり、本実施形態の逆止弁の説明を容易にするために、図9に従来の逆止弁の動作状態の縦断面図で示し、図10に従来の逆止弁の上面図を示している。
【0030】
図5から図8に示すように、本実施形態の逆止弁の弁ケース104は、カップ状で中心に内側弁座となる突起が形成され、弁座の周囲には、複数の流入孔203が開けられている。外側弁座103は、リング状で貫通し直径の異なる中心穴が開けられている。直径の小さい中心穴は、直径が3mm以下であるが、前記弁ケース104の内側弁座となる突起よりわずかに大きく、両者が組み合わされリング状流路201が形成される。外側弁座103の直径の大きい中心穴は、周方向流路202を構成している。
【0031】
弁体101は、金属薄板をエッチングして製作され、2重のリングを螺旋状アームが接続する形状となる。弁体101は弁押えリング102を弁ケース104に圧入することで外側リングが押さえられ、弁ケース104に固定される。
次に、本実施形態の逆止弁の動作について図8に基いて説明する。図中矢印は流体の流れを示す。図8において流体は、図下方から上方へは流れることが可能で、逆方向には逆止弁の作用によって流れが阻止される。
【0032】
流入側と流出側の圧力差が小さい場合や、流入側より流出側の圧力が大きい場合、弁体101の内側リングは、弁ケース104の突起と、外側弁座103に流体圧力や弁体101の螺旋状アーム部の弾性によって圧接する。弁体101の内側リングの内周はリング状流路201の内周より小さく、外周はリング状流路201の外周より大きくなっているためリング状流路は閉鎖され、その結果、流体の流れも阻止される。
【0033】
流入側の圧力が流出側より十分高くなると、圧力差によって弁体101の内側リングを図中上方に移動する力が発生する。その結果、弁体101の螺旋状アーム部が変形して、弁体101の内側リングが上方に移動し流体の流路が構成される。流体は弁体101の内側リングの内側と外側の両方から流出することができ、従って外側にしか流失できない円盤型弁や、従来例を示した図9及び図10のようにリード弁の自由端方向にしか流出できないリード弁より、同一断面積の流路を確保するための弁の移動量が小さくて済む。そのため、弁の高速応答が可能になり、高速動作が可能な圧電ポンプ等の逆止弁に応用することで、小型高性能ポンプが構成できるのである。
【0034】
また、本実施形態の逆止弁はアーム部を螺旋状にすることで、アーム部の伸縮ではなく主に曲がりを利用して弁の動きに対応するため、弁体を薄くすることで弱い圧力でも十分な弁リフトが確保できる。従って、シリコンゴム等に比較して高剛性の金属材料を弁体に用いることができ、長寿命と高速動作時の内部損失の低減を可能にした。
【0035】
さらに、高速応答性に優れ大きな流路を確保できるリング弁を、簡単な構造で実現できるため、リング状流路の外径を3mm以下に構成できる。リング状流路の外径を3mm以下にすることで、弁全体の外径が約5mmとなり、ダイヤフラムポンプ等の圧力室の底面に吸入側、吐出側の二つの弁を並べて配置しても、ポンプの圧力室の内径を10mm以下、ポンプ本体の外径を15mm以下にすることができる。
【0036】
ポンプの外径を15mm以下に構成したポンプは、ほぼ、人間の指の太さの中にポンプを内蔵することができる。近年、高齢化社会等の要求により、人間の身近で人間をサポートするロボットが求められているが、本発明のポンプとシリンダ等で構成されるアクチュエータユニットを用いることで人間の手と同サイズのロボットハンドが構成でき、人間の生活環境にある人間のために設計された機器や道具類を扱うことが可能なロボットが構成できるのである。
【0037】
次に、図11及び図12に示すものは、第1、第2実施形態で示したポンプのように、圧電素子(アクチュエータ)を駆動源とし、この圧電素子を駆動してダイヤフラムを往復変位させることでポンプ室の容積変化を行うポンプ20と、このポンプ20を駆動させる駆動装置22、ポンプ20の駆動により対象物Wを昇降させる昇降機構24とを備えた装置を示す第3実施形態である。
【0038】
ポンプ20には、制御弁(図示せず)を介してシリコンゴム製のリザーバ流体室26及びアクチュエータ流体室28が接続しており、リザーバ流体室26からアクチュエータ流体室28に向けて動作流体が流動するようにポンプ20を駆動すると、図12に示すようにアクチュエータ流体室28の容積拡大により対象物Wが上昇し、アクチュエータ流体室28からリザーバ流体室26に向けて動作流体が流動するようにポンプ20を駆動すると、図11に示すように、アクチュエータ流体室28の容積減少により対象物Wが下降するようになっている。
【0039】
ここで、ポンプ20内には、動作流体の温度を測定する温度センサ30と、動作流体の圧力を測定する圧力センサ32が配設されており、これらセンサが検出した情報は、駆動装置22に入力する。
駆動装置22は、ポンプ20の圧電素子に駆動信号SDを出力する駆動回路33と、温度−周波数相関変更回路34と、可変周波数回路36、圧力−流体送出量相関変更回路38、温度補正回路40とを備えている。
【0040】
駆動回路33が圧電素子に出力する駆動信号SDは、所定の周波数の正弦波信号であり、可変周波数回路32から所定の駆動周波数fdが入力される。
また、温度−駆動周波数相関変更回路34は、温度センサ30が測定した動作流体の温度変化に対応して最適な駆動周波数をデータマップ化した記憶部を備えた回路である。つまり、ダイヤフラムは、共振周波数領域では往動変位が大きくなるが、その共振周波数は温度の影響で変動しやすく、この温度−駆動周波数相関変更回路34において動作流体の温度変化に対応した最適な駆動周波数を設定する。
【0041】
また、圧力−流体送出量相関変更回路38は、圧力センサ32が測定したポンプ室内の動作流体の圧力に基づいて、アクチュエータ流体室28側の動作流体の絶対量を演算等により算出する回路であり、前記動作流体の絶対量を算出することで現在の装置の駆動量を判断する。
また、温度補正回路40は、圧力−流体送出量相関変更回路38で算出した動作流体の絶対量を、温度センサ30が測定した動作流体の温度で補正する回路である。温度が変化するとダイヤフラムは膨張、或いは収縮して動作流体の絶対量が変化するので、この温度補正回路40で補正された動作流体の絶対量は高精度の値となる。
【0042】
そして、可変周波数回路36は、温度−駆動周波数相関変更回路34から最適な駆動周波数が入力し、温度補正回路40から現在のアクチュエータ流体室28側の動作流体の絶対量が入力し、これらの値に基づいて、駆動周波数fdを可変周波数回路36に入力する。
そして、可変周波数回路46から駆動周波数fdが入力した駆動回路33は、圧電素子に対して、現在の動作流体の温度に最適な駆動信号SDを出力する。
【0043】
本実施形態によると、動作流体の温度に対応してダイヤフラムが共振周波数領域で往動変位するように、圧電素子に対して最適な値の駆動信号SDを入力して制御しているので、最も効率の良いポンプ20の駆動状態を実現することができる。
また、ポンプ20内に設けた温度センサ30及び圧力センサ32からの測定情報に基づいて、アクチュエータ流体室28側の動作流体の絶対量を高精度に把握するようにしているので、高精度のアクチュエータ駆動を行うことができる。
【0044】
次に、図13から図15は、第3実施形態に対してセンサの配置位置と、駆動装置の構成が異なる第4実施形態の装置を示すものである。
本実施形態の圧力センサ32は、リザーバ流体室26側のポンプ内流路に配設されており、リザーバ流体室26内の圧力を測定している。そのため、圧力センサ32の測定情報は、リザーバ流体室26内に十分な圧力で動作流体が封入されているものとすると、リザーバ流体室26内の体積と相関関係にある。
【0045】
本実施形態の駆動装置44は、ポンプ20の圧電素子に駆動信号SDを出力する駆動回路33と、可変周波数回路36と、駆動周波数設定回路46とを備えている。そして、駆動装置44は、図12に示すように、リザーバ流体室26からアクチュエータ流体室28に向けて動作流体が流動するようにポンプ20が駆動する際に、所定時間の停止時間を設けて断続的に駆動信号SDを出力する。
【0046】
ここで、図14の第1駆動区間では、周波数をスイープ駆動しながら最適な駆動周波数fdを求めており、以降の第2、第3…駆動区間では、検出した最適な駆動周波数fdに基づいて駆動を行っている。
第1駆動区間では、駆動周波数設定回路48が、図15のフローチャートで示す動作を行う。
【0047】
図15のフローチャートに基づいて説明すると、駆動周波数設定回路48の動作を説明すると、先ず、ステップS2において、第1駆動区間の時間T1 が経過しているか否かを判断する。第1駆動区間の時間T1 が経過していない場合には、ステップS4に移行し、周波数をスイープ駆動する。次いで、ステップS6に移行し、単位時間当たりの圧力変化ΔPと、その周波数fdを記憶する。次いで、周波数fdを駆動周波数として可変周波数回路36に出力する。
【0048】
そして、第1駆動区間の時間T1 が経過していない場合には、ステップS8から再度ステップS4に移行して、前述したステップを繰り返す。
そして、第1駆動区間の時間T1 が経過した場合には、ステップS10に移行し、記憶している複数の単位時間当たりの圧力変化ΔPの中から、最大の圧力変化ΔPmax を算出する。次いで、ステップS12に移行し、最大の圧力変化ΔPmax に対応した最適な周波数fdmax を設定する。
【0049】
次に、図14を参照しながら本実施形態の動作を説明する。駆動回路33からスイープ駆動した周波数fdに基づいて駆動信号SDを出力していくと、所定の時間t1 において、リザーバ流体室26内が最大の圧力変化ΔPmax となり、駆動周波数設定回路48は、最大の圧力変化ΔPmax 及び最適な周波数fdmax を記憶する。
【0050】
第1駆動区間が経過した後、第2駆動区間の開始と同時に、駆動回路33は、最適な周波数fdmax に対応した駆動信号SDを出力し、次回移行の第3…駆動区間においても、最適な周波数fdmax に対応した駆動信号SDを出力し続ける。
本実施形態によると、単位時間当たりで圧力変化が大きいとき(最大の圧力変化ΔPmax )の周波数fdmax を求め、その周波数fdmax に対応した駆動信号SDを圧電素子に入力しているので、効率の良いポンプ20の駆動状態を実現することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1及び請求項2記載のポンプ用逆止弁によると、長寿命と高速動作時の内部損失の低減を可能にし、高速応答性に優れた大きな流路を確保できる小型のポンプ用逆止弁を提供することができる。
【0052】
また、請求項3から請求項6記載のポンプによると、ポンプ室内の流体抵抗を効果的に削減することができ、その結果、流量が増えるので、排除体積(可動壁の変位に伴い排除される体積)分の流体がポンプ室内を通過する通過時間を短くできる。従って、ポンプをより高周波駆動することが可能となり、小型化で高出力のポンプが実現できる。また、高速応答のポンプ用逆止弁と組み合わせるため、ポンプをより一層高周波駆動することが可能となり、より小型で高出力のポンプが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アクチュエータとして圧電素子を使用した一般的なポンプの構造を示す縦断面である。
【図2】本発明に係るポンプの第1実施形態のノズルの配置位置を示した図である。
【図3】本発明に係るポンプの第2実施形態のノズルの配置位置を示した図である。
【図4】本発明に係るノズルの配置を説明するために本発明と異なるノズル配置のポンプを示す図である。
【図5】本発明に係るポンプ用逆止弁の縦断面図である。
【図6】本発明に係るポンプ用逆止弁の上面図である。
【図7】本発明に係るポンプ用逆止弁の底面図である。
【図8】本発明に係るポンプ用逆止弁の動作状態図である。
【図9】従来の逆止弁の動作状態の縦断面図である。
【図10】従来の逆止弁の上面図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態のポンプを使用した装置を示す図である。
【図12】第3実施形態において装置の作動状態を示す図である。
【図13】本発明に係る第4実施形態のポンプを使用した装置を示す図である。
【図14】第4実施形態においてアクチュエータを駆動する駆動装置の動作を示す図である。
【図15】第4実施形態における駆動周波数設定回路の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
2、20 ポンプ
6 圧電素子(アクチュエータ)
8 ダイヤフラム(可動壁)
10 ポンプ室
12 流入管路
16 流出管路
22、44 駆動装置
33 駆動回路
34 温度−駆動周波数相関変更回路
36 可変周波数回路(可変周波数手段)
38 圧力−流体送出量相関変更回路(圧力−流体送出量変換手段)
40 温度補正回路(補正手段)
46 駆動周波数設定回路
30 温度センサ
32 圧力センサ
101 弁体
102 弁押えリング
103 外側弁座
104 弁ケース
201 リング状流路
202 周方向流路
203 流入孔
301 リード弁弁体
302 弁押え
303 リード弁ケース
401 円形流路
A 吸入ノズル
B 吐出ノズル
Av 吸入逆止弁
Bv 吐出逆止弁
Claims (6)
- ピストンあるいはダイヤフラム等の容積が変更可能なポンプ室を備えたポンプに用いられるポンプ用逆止弁において、リング状流路と、このリング状流路を開閉する、螺旋状アームで支持されたリング状薄板を具備しているようにしたことを特徴とするポンプ用逆止弁。
- 前記リング状流路の外径を3mm以下としたことを特徴とする請求項1記載のポンプ用逆止弁。
- ピストンあるいはダイヤフラム等の可動壁により容積が変更可能なポンプ室と、ポンプ室へ動作流体を流入させる流入管路と、ポンプ室から流体を流出させる流出管路とを備えたポンプにおいて、
流入管路内もしくは流出管路の少なくともどちらか一方は、弁を構成する複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、ポンプ室中心に対して周方向に略等距離間隔で配置されており、他の一方の管路が有するノズルは、前記複数のノズルが配置されている位置よりも、ポンプ室中心に近い位置に配置されているとともに、前記ノズルに、請求項1又は2記載のポンプ用逆止弁を設けたことを特徴とするポンプ。 - 前記複数のノズルは、前記ポンプ室の中心位置から距離の異なる、複数の周上に配置されていることを特徴とする請求項3記載のポンプ。
- ピストンあるいはダイヤフラム等の可動壁により容積が変更可能なポンプ室と、ポンプ室へ動作流体を流入させる流入管路と、ポンプ室から流体を流出させる流出管路とを備えたポンプにおいて、
流入管路内もしくは流出管路の少なくともどちらか一方は、弁を構成する複数のノズルを有し、前記複数のノズルは、各ノズルに対する流体の最大移動距離が略等しい位置に配置されており、他の一方の管路を有するノズルは、前記複数のノズルが配置されている位置よりも、ポンプ室中心に近い位置に配置されているとともに、前記ノズルに、請求項1又は2記載のポンプ用逆止弁を設けたことを特徴とするポンプ。 - 前記複数のノズルは、吸入管路を有するノズルであり、前記ポンプ室中心に近い位置に配置されているノズルは、吐出管路を有するノズルであることを特徴とする請求項5記載のポンプ。
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