JP4848579B2 - 人体洗浄装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えばシャワーや温水洗浄便座等の特に人体の洗浄を行う人体洗浄装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の人体洗浄装置としては、例えば、特開平5−33377号公報に記載されるようなものがあった。図9は洗浄水の供給系を示す概略図である。図9において、1はポンプで、ポンプ1の上流側には給水配管2が接続され、下流側には空気混入部3が接続されている。空気混入部3にはコンプレッサー5が接続されており、内部にセラミックを素材とした円筒状の吸引ヘッド4が設けてある。また、空気混入部3の下流側には熱交換器6およびノズル装置7が設けてある。この構成により、給水配管から供給された洗浄水はポンプ1によって加圧され空気混入部3へと至る。空気混入部3ではコンプレッサー5から供給された空気が、吸引ヘッド4により微細化されて洗浄水中に流入する。さらに空気混入部3を経た洗浄水は熱交換器6へと至り、ここで適温にまで加熱された後、ノズル装置7より噴出される。このことにより、ノズル装置7から噴出される洗浄水は気泡を含み、やわらかな体感が得られるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、空気の混入を熱交換器よりもさらに上流で行っており、また吸引ヘッドを介して微細化された空気が洗浄水中に混入されるため、洗浄水中には混入当初細かな気泡が含まれるが、その一部は流路内において複数の気泡が一体となり、また流路の様々な凹凸により再度微細化されたりという現象を繰り返し、結果的に径の大きな気泡や微細な気泡が洗浄水中に不規則に入り乱れてノズル装置7に至る。その結果、噴流はしぶき状の不規則な断続流としてノズル装置7から噴出され、洗浄音や使用者の体感において不快なものとなる。また、大きな径の気泡は体積の圧縮率も高いため、噴出時に一気に膨張し、洗浄水を広い範囲に拡散させてしまい、噴流のもつ運動エネルギーが広範囲に分散されてしまうため、ロスが大きく、また使用者にとって不快な洗浄水の飛び散りにもつながる。また、仮に微細なままノズル装置7までたどり着いたとしても、そこから噴出される噴流は、微細な気泡を含んだやわらかな連続流となってしまい、洗浄水量を多くすれば非常に体感に優れた噴流が得られるが、気泡を含まない噴流と比較して洗浄水量を低減するといった効果は得られない。
【0004】
そのため、大量の気泡を混入することによる節水効果はもとより、節電のために瞬間型の熱交換器を採用すると、特に水温の低下する厳寒期にはその沸かし上げ能力の不足が生じることで洗浄水量が不足し、洗浄力、洗浄水の体感強さに不満がでるなどの不具合点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、水源から供給される洗浄水の流量調節を行う流量調節手段と、前記洗浄水を加熱する加熱手段と、温水管を介して前記加熱手段と接続される洗浄水噴出手段と、前記洗浄水噴出手段に設けられ一端を前記温水管に接続され他端を噴出流路に接続された内部流路と、前記加熱手段から供給される洗浄水を前記噴出流路から各々独立した略球状の水塊として連続的に噴出せしめる水塊噴出手段と、前記加熱手段と前記洗浄水噴出手段とを接続する前記温水管に接続される気体混入部と、制御器とを備え、前記水塊噴出手段は、前記気体混入部において洗浄水中に気体を強制的に混入可能であるとともに、少なくとも前記噴出流路内における気液の混合状態が均一なスラグ流を形成可能な気体供給手段とし、前記気体供給手段は、ポンプモータの回転数に連動して気体の供給圧力に周期的かつ少なくとも微少な脈動を与えうるエアポンプとし、前記制御器は、前記流量調節手段によって調節される洗浄流量に応じて前記気体供給手段を制御し、気体の供給圧力の脈動周期および混入する気体の量を可変する構成としたものである。
【0006】
上記発明によれば、同一流量における連続流の場合と比較して使用者の体感する洗浄強さおよび汚れに対する洗浄力が大幅に向上するため、使用する水量を大幅に低減しても洗浄体感および洗浄力に優れた洗浄が実現可能で、大きな節水効果が得られる。また、これに付随して瞬間型の熱交換器でも沸き上げ可能な水量での洗浄が成立し、その結果、装置の大幅な省エネが実現できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかる人体洗浄装置は、水源から供給される洗浄水の流量調節を行う流量調節手段と、前記洗浄水を加熱する加熱手段と、温水管を介して前記加熱手段と接続される洗浄水噴出手段と、前記洗浄水噴出手段に設けられ一端を前記温水管に接続され他端を噴出流路に接続された内部流路と、前記加熱手段から供給される洗浄水を前記噴出流路から各々独立した略球状の水塊として連続的に噴出せしめる水塊噴出手段と、前記加熱手段と前記洗浄水噴出手段とを接続する前記温水管に接続される気体混入部と、制御器とを備え、前記水塊噴出手段は、前記気体混入部において洗浄水中に気体を強制的に混入可能であるとともに、少なくとも前記噴出流路内における気液の混合状態が均一なスラグ流を形成可能な気体供給手段とし、前記気体供給手段は、ポンプモータの回転数に連動して気体の供給圧力に周期的かつ少なくとも微少な脈動を与えうるエアポンプとし、前記制御器は、前記流量調節手段によって調節される洗浄流量に応じて前記気体供給手段を制御し、気体の供給圧力の脈動周期および混入する気体の量を可変する構成としたものである。
【0008】
そして、水塊噴出手段が、洗浄水を連続流ではなく、独立した略球状の水塊の状態にするとともに連続して噴出するので、洗浄噴流が人体に与える刺激感が増し、快適な人体洗浄が実現できる。
【0009】
また、気体供給手段が噴出流路内における気液の混合状態を均一なスラグ流とするので、噴出流路内では洗浄水中に栓状の大気泡(以下気栓と記す)が形成され、この洗浄水と気栓が交互に流れるといった様相を呈する。そのため、当然のことながら噴出流路からは水塊と気栓が交互に噴出され、噴出される水塊は表面張力の作用により個々が独立した略球状の水塊となり、噴流の刺激感、洗浄力が向上する。また、洗浄水中に気体を強制的に混入すると、流路を流れる流体の体積が増大し、それに伴い流速を増大させることができるとともに、流路内において圧縮されていた気栓は噴出直後、大気開放状態となることで一気に膨張し、水塊を進行方向に加速するという作用を有するため、体感および洗浄力、節水性に優れた人体洗浄装置が実現できる。
【0010】
また、気体供給手段が気体を強制的に混入する際にその供給圧力を周期的に脈動させるので、洗浄水中に含まれる気栓の形成周期が一定になり、結果として噴出流路から噴出される水塊の大きさを均一にできるとともに、水塊噴出の周期もほぼ一定になるため、使用者の感じる体感を大きく向上できる。
【0011】
そして、気体供給手段が混入する気体の脈動周期および量を可変することで、単位時間あたりに噴出される水塊の数を可変できるとともに、洗浄水と気体の混入バランスを常に最適にすることが可能となり、また、体感上の強さを可変することが可能となるため、使用者の好みに応じた快適な洗浄が実現できる。
【0012】
本発明の請求項にかかる人体洗浄装置は、請求項に記載の人体洗浄装置の構成に加え、気体供給手段から供給される気体の流量Qgと洗浄水流量Qwの関係は0.8≦(Qg/Qw)≦1.3とし、望ましくは(Qg/Qw)≒1.2としたものである。
【0013】
そして、気体供給手段が強制的に混入する気体の流量を洗浄水流量とほぼ等量に調節するので、流路内において洗浄水と気栓をほぼ同体積ずつ交互に流すことができ、スラグ流の均一性が常に保たれるとともに、噴出される水塊も均一になり、洗浄時の快適性が増す。また、このスラグ流の均一化を図る際、気体は圧縮性を有するため、水の約1.2倍程度の混入量としておくことで、さらに均一性を保つことができるが、1.3倍を越えると、流路の圧力損失が増大することに相まって気栓の圧縮率が極度に高くなるため、噴出時の気栓の膨張が激しさを増し、水塊を破壊してしまいかねない。
【0014】
本発明の請求項にかかる人体洗浄装置は、請求項1または2に記載の人体洗浄装置の構成に加え、気体供給手段が接続される気体混入部の下流側において、温水管から内部流路および噴出流路に至る流路断面形状を略円形に構成するとともに、前記温水管から前記内部流路に至る流路断面積をほぼ一定もしくは徐変する構成としたものである。
【0015】
そして、流路断面が略円形であるので、流路内面における表面張力が効果的に作用し、洗浄水と気体が流路内で各々独立した状態になりやすく、また流路断面積をほぼ一定もしくは徐変する構成とすることで、流路内の流れが非常に円滑なものとなり、独立した気体の固まりが渦の発生等によって細かく分断されることが回避できるため、より一様なスラグ流を噴出することが可能となり、結果として均一な略球状の水塊となった洗浄水を噴出することが可能となり、使用時の快適性が向上する。
【0016】
本発明の請求項にかかる人体洗浄装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体洗浄装置の構成に加え、噴出流路を略円筒形状に構成するとともに、温水管から内部流路および前記噴出流路に至る流路において、前記噴出流路の断面積を最も小さく構成し、前記内部流路と前記噴出流路の接合部分の流路断面積を徐変する徐変部分を備えて構成するものである。
【0017】
そして、噴出流路を深さ方向に所定の距離を有した略円筒形状に構成したので、流路内を流れてきた洗浄水が噴出後、より略球状に形成されやすくなり、また、内部流路と噴出流路の接合部分に断面積を徐変する徐変部分を設けたので、断面積の大きい内部流路から小さい噴出流路へスラグ流が流れ込む際にも渦の発生等による気栓の分断を防止でき、均一な略球状の水塊を噴出することが可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、図1〜図8を参照しながら説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例における人体洗浄装置の概観を示すものである。図1において、人体洗浄装置としての温水洗浄便座は便器8上に設置され、温水洗浄便座本体9、便蓋10、使用者が座るための便座11等から構成されており、また水道から洗浄水の供給を受けるための給水配管(図示せず)および壁面のコンセントから電源供給を受けるための電気ケーブル12が備えてある。また、温水洗浄便座内部には使用者が肛門の洗浄を行うためのおしり洗浄機能、小用後の女性局部を洗浄するビデ洗浄機能、洗浄後の人体局部を乾燥するための乾燥機能、寒冷時にトイレ空間を暖房する部屋暖房機能等を備えており、各々の操作は壁面に取り付けたリモートコントローラ13(以下、リモコンと略す)によってなされる。また、便座11には使用者の存在を検知する検知手段としての着座スイッチ14が備えてある。なお、この着座スイッチ14は、本実施例では便座の下向きの変位を検知する機械的なスイッチを便座のヒンジ部に設け、使用者が便座に座って装置を使用としている状態もしくは便座から立ち上がり、装置の使用を終了したことを検知可能な構成としたが、方式としては便座の静電容量を検知する方式や、さらには赤外線や超音波等を用いて使用者の便座への着座を検知する、もしくはトイレルームに入室、退室したことを検知する方式、さらには例えばトイレの照明に連動して使用者の存在を検知する方式等でも検知手段としての応用が可能である。
【0020】
次に図2はリモコン13の概観を示すものである。図2においてリモコン13には使用者が洗浄の開始を入力可能なおしりスイッチ15、第2のおしりスイッチ16、女性が小用後や生理時に主に用いるビデスイッチ17、洗浄の停止を入力する停止スイッチ18、さらには乾燥機能や脱臭機能の入り切りを行う乾燥スイッチ19や脱臭スイッチ20、また、それぞれの機能のレベルあわせを行うためのレベルスイッチ21等を設けてある。そして使用者が行う操作信号は赤外線信号によって温水洗浄便座本体へと送られ、無線で本体の操作が可能な構成となっている。
【0021】
図3は本実施例における人体洗浄装置の水回路を表すブロック図である。図3において、まず、水源である水道配管22からの分岐流れを温水洗浄便座本体9内へと接続する接続管23は、給水管24に接続される。この給水管24には流量調節手段としての電磁弁25および減圧弁26、圧力過昇による水回路の破損を防止するリリーフ弁27等の様々な機能部品が設けてあり、さらに入水温度を検知する入水サーミスタ28および洗浄水の流量を計測する流量センサー29を経て、加熱手段としての熱交換器30へと接続される。
【0022】
熱交換器30は板状のセラミックヒータ31とその両面に設けた蛇行する加熱流路32から構成されており、熱交入口33に供給された常温の洗浄水は、この蛇行する加熱流路32を流れながらセラミックヒータ31から熱を受け取り、熱交出口34に至るまでの間に適温に加熱される仕組みである。そのため、必要に応じて適温の温水を供給可能で、使用時に備えて温水を保温貯溜しておく必要性がないため、非常に省エネ性に優れ、また連続して加熱可能であるため、長時間の使用や複数の使用者による連続使用の際にも湯切れの心配がなく、非常に使い勝手のよい温水供給手段となっている。
【0023】
なお本実施例においては、ヒータは熱密度に優れた板状のセラミックヒータを用いたが、シーズヒータやマイカヒータ、さらには燃焼の熱を利用するなど様々な応用が考えられることは言うまでもない。また、熱交出口34の近傍には温水サーミスタ35が設けてあり、熱交換器30によって加熱された洗浄水の温度を検出する。
【0024】
熱交換器30の下流には温水管36を介して流路切換弁37が接続されており、この流路切換弁37は先述の温水管36が接続される入口流路38と第1出口流路39、第2出口流路40、第3出口流路41がモータ42によって選択的に連通される構成となっている。なお、本実施例で用いた流路切換弁37は入口流路38と第1出口流路39、第2出口流路40、第3出口流路41の連通面積を可変することで水路の切換に加え、選択された流路に流れる洗浄水の流量も可変可能な流量調節手段としての役割も果たす。
【0025】
この流路切換弁37の下流側においては、第1出口流路39に温水管の一部をなすおしりホース43および洗浄水噴出手段としてのおしりノズル44が、第2出口流路40に同じく温水管の一部をなすビデホース45および洗浄水噴出手段としてのビデノズル46が、第3出口流路41にクリーニングホース47およびクリーニングノズル48が各々接続されている。また、おしりノズル44の先端部には噴出流路としてのおしり噴出流路49が、ビデノズル46の先端部には同じく噴出流路としてのビデ噴出流路50が備えてある。なお、おしり噴出流路49およびビデ噴出流路50は、使用時に人体の被洗浄部、つまり肛門もしくは女性の局部に向けて洗浄水を噴出する構成となっているが、クリーニングノズル48は便器ボウル表面に水を散布する構成となっており、人体にはそこから噴出される洗浄水がかからないよう位置および向きが決められている。また、おしりノズル44およびビデノズル46には各々下面にラック(図示せず)が形成してあり、ノズル駆動モータ51に設けたピニオンギアと噛み合うことで待機時と使用時の噴出流路位置の可変が可能な構成となっている。さらにおしりノズル44およびビデノズル46が待機状態(収納状態)にある時にはおしり噴出流路49およびビデ噴出流路50はカバー(図示せず)が覆い被さる構成となっており、待機状態では仮に洗浄水が噴出しても、人体にかかることはない。
【0026】
また、同じく流路切換弁37の下流側においては、おしりホース43上に設けた第1の気体混入部52に第1のエアホース54が、ビデホース45上に設けた第2の気体混入部53に第2のエアホース55が接続されている。これらの第1、第2のエアホース54、55はソレノイド式の三方弁であるエア切換弁56に接続され、さらにこのエア切換弁56上流側には気体供給手段としてのエアポンプ57がエアホース58を介して接続してある。このエアポンプ57から供給される気体はエア切換弁56によって流路が決定された後、おしりホース43もしくはビデホース45へと供給され、そこを流れる温水中に強制的に混入されるが、その途中には気体の供給方向に圧力がかかった場合にのみ開成する逆止弁59を設けてある。また、第1のエアホース54、第2のエアホース55およびエアホース58は、おしりホース43およびビデホース45と比較して細い管径としてある。具体的には、気体流路系は内径2mm外径4mm、水路系は内径3mm外径6mmであるが、これは水に比べ気体の圧力損失が格段に低いことに起因するもので、気体流路系に細いホースを用いることで省スペース化が図れる。さらにはここで気体は圧縮流体であるため、ホースの管径が太く内部の体積が大きいと、洗浄水が一気に逆流した場合等には、逆止弁59のような構成を設けていても、水の侵入により信頼性が低下する等の課題があり、この防止にも効果的である。
【0027】
なお、本実施例では、気体流路切換の信頼性を向上させるため、エア切換弁56はソレノイド式の電磁三方弁を用いているが、水圧を利用して流路を切り換えるいわゆるシャトル弁のような構成も容易に考えられる。さらにまた、逆止弁59はゴム製のいわゆるダックビルと呼ばれる部材を用い、万が一、エアポンプ57の不具合やおしりホース43もしくはビデホース45における圧力の過昇等が生じた場合にも、エア切換弁56もしくはエアポンプ57に洗浄水が流入することを防止し、その信頼性を向上させている。しかしながら、逆止の機能を有するものであれば、アンブレラ弁やスプリングを用いた一般的な逆止弁でも応用が可能である。
【0028】
次に図4〜6を用いて流路切換弁37について詳述する。流路切換弁37はハウジング60とハウジング60内に回転可能に挿入された弁体61および弁体61を回転駆動するモータ42によって構成される。まず、ハウジング60には入口流路38、第1出口流路39、第2出口流路40、第3出口流路41が構成してあり、第1出口流路39と第2出口流路40は断面A−Aにて対向して位置するとともに、第3出口流路41は断面B−Bに示すとおり、前記2つの出口流路とは異なる断面位置に設けてある。次に弁体61であるが、ハウジング60に挿入した際に入口流路38に常時連通する形で弁内部流路62が設けてあり、また、この内部流路62から分岐して第1の弁体出口63、第2の弁体出口64が構成されている。この第1の弁体出口63はハウジング60の第1出口流路39および第2出口流路40に、また第2の弁体出口64はハウジング60の第3出口流路41に対応して位置が決められており、弁体61の回転角度によって、入口流路38と第1出口流路39、第2出口流路40、第3出口流路41の連通度合いを可変できる構成となっている。なお、それぞれの流路に対して内部リークの防止、もしくは外部漏れを防止するためにシール部材としてOリング65を備えてあるが、これはモータの負荷を軽減するためにはXリングやVパッキンなどの特殊Oリングを用いると効果的である。さらにモータ42であるが、ここではオープン制御でも精度よく位置決めのできる減速ギア内蔵型のステッピングモータを採用し、その出力軸を弁体61に挿入する形で取り付けてある。なお、モータ42の原点位置はストッパ66を弁体61に設け、ステッピングモータ特有の脱調動作を利用して位置決めを行う。本実施例ではモータ42としてステッピングモータを採用したが、位置決めの精度さえ確保できれば、ブラシタイプの汎用DCモータ等の利用も可能であるし、回転型のソレノイド等、様々なアクチュエータの応用が考えられることは言うまでもない。さらにまた、本実施例では回転型の流路切換弁を用いたが、直動型やダイヤフラムを用いたもの、さらには円盤タイプの弁体で複数流路の切換えを行うものなども容易に応用可能である。
【0029】
また、制御器67は入水サーミスタ28、流量センサー29、温水サーミスタ35、さらにはトイレルームの温度を検知する気温検知手段である気温サーミスタ68等からの信号を取込み、また内部に備えた計時回路69等を用いて様々な演算を行い、電磁弁25、セラミックヒータ31、流路切換弁37、エアポンプ57、ノズル駆動モータ51等を電気的な信号によって制御する。さらに、制御器67はリモコン13と赤外線を利用して信号のやり取りを行っており、使用者からの指示はリモコン13に設けた複数の入力スイッチによってなされる。
【0030】
次に図7を用いて洗浄水噴出手段の一つであるおしりノズル44について詳述する。図7はおしりノズル44の断面図を示すものである。おしりノズル44は内部に内部流路70を形成してあり、内部流路70の一端はおしりホース43が接続される接続部71に連通する構成としてある。また、反対側の一端は内部流路70が洗浄噴流の進行方向が適切となるよう大きく湾曲し、おしり噴出流路49へと接続される。なお、ここで取り上げる流路は全て円形断面をしており、内部流路70の大きく湾曲しているも例外ではない。また、図8に示すφA、φB、φC、φDの関係はφA≧φB>φC>φDで滑らかに接合し、図示していないがおしりホース43の内径は接続部71の内径φAと同等に構成してある。さらにまた、おしり噴出流路49と内部流路70の接合部には、流路の急拡大や急縮小によって生じる渦の発生を最低限に押さえる目的で、その断面積が徐々に変化する徐変部分72を設けてある。
【0031】
次に図8を用いて水塊噴出手段であり気体供給手段でもあるエアポンプ57について説明する。図9はエアポンプ57の断面構成図を示すものである。ここで用いたエアポンプ57は一般的にローリング式とよばれるもので、駆動手段としてポンプモータ73を備え、このポンプモータ73の回転運動を、傾斜ピン74を用いた一種のクランク機構によって往復運動に変換し、ゴム製のダイヤフラム75、76を交互に押すことで空気を圧送する構成としている。なお、図示していないが、当然のことながらポンプであるので吸引口、吐出口には逆止弁が構成されており、気体は一定方向に送り出される。
【0032】
以上のように構成された人体洗浄装置について、以下その作用、動作を説明する。まず、使用者がトイレに入室し、便座11に座ると、着座スイッチ14によって使用者の存在が検知される。この検知信号に基づいて制御器67は流路切換弁37を駆動し、温水管36とクリーニングホース47を連通せしめた後、電磁弁25を開成し、流量センサー29からの信号により流水が確認されると即座にセラミックヒータ31への通電を開始する。ここで給水管24から供給される洗浄水は温水となってクリーニングノズル48から噴出されるが、その際、制御器67は温水サーミスタ35の温度信号と内部に設けた計時回路69によってカウントされる時間によって演算を行い、周囲の温度環境を推定する。そしてこの推定した値に準じて制御器67はクリーニングノズル48からの放水の時間を決定する。つまり、温水サーミスタ35から得られる温水の温度信号が所定値になるまでにかかる時間を計時し、所要時間が長ければ給水温、雰囲気温度ともに低いと判断し、長めに加熱放水を行う。逆に所要時間が短ければ短時間で加熱放水を終了する。これは冷え切った流路を加熱するための動作であり、特に厳寒期には洗浄水の噴出を早めるために非常に有効である。また、便器に大便が付着することを防止する意味においても、使用者が用便をする前に便器表面をぬらす行為は非常に効果的である。
【0033】
次に、使用者が用便後、リモコン13に設けたおしりスイッチ15を押すと、制御器67は流路切換弁37を駆動し、温水管36とクリーニングホース47を連通せしめた後、電磁弁25を開成し、流量センサー29からの信号により流水が確認されるとともにセラミックヒータ31への通電を開始する。その後、ノズル駆動モータ51を駆動し、おしりノズル44を待機位置から使用位置へと突出させる。そして、熱交換器30で加熱される洗浄水の温度が所定値1(約36℃)に達したことが温水サーミスタ35からの信号で検知されると、流路切換弁37を駆動し、温水管36とおしりホース43を連通せしめる。この状態で温水はおしり噴出流路49から噴出され、人体被洗浄部の洗浄を開始する。ここでさらに、洗浄水の温度が所定値2(38℃)に達すると、エア切替弁56はエアポンプ57とおしりホース43の流路を開成し、またエアポンプ57は空気の供給を開始する。空気の供給が始まると、逆止弁59を通過して洗浄水とほぼ等量の空気が供給されるため、おしり噴出流路49からは空気が混入された洗浄水が勢いよく噴出され、体感、洗浄力ともに好適な洗浄が行われる。
【0034】
このとき噴出される洗浄水は、概略球状の水塊となっており、この球状の水塊が繋がることなく独立した状態で連射される。これは、流路内を気体と液体が混合して、つまり気液二相流として流れる場合、気体の混合比率が高くなるに従い、小気泡を含んだ気泡流、大気泡が栓状に流れるスラグ流、噴霧状態の噴霧流、中央が気相で壁面が液相となる環状流といった様相変化を呈するが、一般的に温水洗浄便座のような人体洗浄装置で用いられる流路径(約φ2〜4mm程度)の場合、液相と気相の比率をほぼ同等とすることで、流路内の流れが上記スラグ流の様相を呈することに起因する。流路内においてスラグ流の様相を呈する流れは、気相と液相がほぼ独立して交互に流れており、その流れを乱すことなく、つまり洗浄水中に存在する気栓を分断することなく噴出させれば、洗浄水の塊と気栓が交互に噴出し、結果として洗浄水が独立した水塊の状態で連射されることになる。ここで、噴出した水塊は表面張力の作用で概略球状となり、また、流路内において圧縮されていた気栓が一気に膨張することで、水塊はその進行方向に大きく加速される。これらの事象はいくつかの実験において確認済みであり、気体流量Qgと洗浄水流量Qwの関係を0.8≦(Qg/Qw)≦1.3とすることで流路内の流れをスラグ流とすることができ、結果として洗浄水を水塊状態で噴出させることが可能となる。なお、気体は圧縮性の性質を有していることから、流路内において均一なスラグ流を形成するには混入気体の流量を洗浄水量よりも多めに設定することが望ましいが、洗浄水量の1.3倍を越える量の気体を混入すると、スラグ流から噴霧流へと流れの様相が変化する臨界点に近づくとともに、気栓の膨張エネルギーが大きすぎて噴出された水塊を破壊することにもつながるため、気体の混入比率は上記範囲内に収めることが望ましい。実験による結果では流路径がφ2〜4mmの場合、(Qg/Qw)≒1.2において、最も安定したスラグ流を得られることが確認できた。
【0035】
また、スラグ流は表面張力が作用して気相と液相が分離していることから、流路の断面形状は円形状が最適であり、内部流路70、おしり噴出流路49はもとより徐変部分72、接続部71等、全ての流路の断面形状を円形状とすることで、均一なスラグ流の形成がなされる。しかしながら、一旦、均一なスラグ流が形成されても、流路に凹凸や急拡大部、急縮小部等の流れに渦を生じさせる箇所が存在すると、気栓が分断され、流れの中に小気泡が混在してしまうことから、先述の通り、図7に示すφA、φB、φC、φDの関係はφA≧φB>φC>φDとして滑らかに接合するとともに、おしりホース43の内径も接続部71の内径φAとほぼ同等に構成してある。また、内部流路70とおしり噴出流路49の接合部には徐変部分72を設け、気栓の分断を最小限に抑えている。このような構成にすることで、均一なスラグ流が乱れることなくおしり噴出流路49へと至るため、噴出される水塊の独立性、均一性が増し、快適な噴流を得ることが可能となる。また、φB>φCとすることで、流路内の上流から下流にかけての急激な圧力低下による気栓の成長が防止できるとともに、流路内の不要な圧力損失の上昇を防止できるという効果も得られる。
【0036】
さらにまた、エアポンプ57はその構成により、供給される気体の圧力が微少ではあるが脈動しており、この脈動に同期して気体が混入され、スラグ流の気栓部分が形成される。気体が一定圧力で洗浄水の流れの中に混入される場合には、流路内の気体混入部において気泡が次第に成長し、最終的にもぎ取られるような挙動で気栓が形成されるが、これは洗浄水の流れの乱れに依存する部分が多く、気栓の形成される周期は一定とは言い難い。これに対して、本実施例における人体洗浄装置の構成では、エアポンプ57からの気体の供給圧力がポンプモータ73の回転数に連動して脈動することで、気栓の形成が非常に周期的なものとなり、より均一なスラグ流の形成が実現できる。また、ポンプモータ73の回転数を可変する際にも、脈動の周期が連動して変化するため、常に最適な気栓の形成タイミングが得られる。
【0037】
本実施例では、流路切換弁37の下流側に第1の気体混入部52、第2の気体混入部53を設け、空気が混入されたあとの気液二相流が流路切換弁37の内部を通過しない構成としてある。これは、気液二相流が管路を流れる際にその圧力損失が非常に大きくなることに対する解決策であり、無駄な圧力損失上昇による機器の複雑化、大型化を防止するものである。また、流路切換弁37は内部の流路が複雑な構成をしているため、均一なスラグ流が流れ込んでも、内部で気栓の分断が生じ、スラグ流の均一さが損なわれることも防止している。
【0038】
なお、洗浄水の噴出中も制御器67は、リモコン13で入力される信号や、入水サーミスタ28、流量センサー29、温水サーミスタ35等の信号を常に監視し、セラミックヒータ31への通電量や流路切換弁37の開度、さらにはエアポンプ57に備えたポンプモータ73の回転数等を制御している。例えば、使用者がレベルスイッチ21を操作し、洗浄の強さレベルを上げた場合、制御器67は流量センサー29の信号を見ながら、洗浄水の流量が所定量になるよう流路切換弁37の開度を大きくしていくが、それと同時にポンプモータ73の回転数を制御し、常に最適なスラグ流が形成されるよう動作する。この場合、洗浄水の流量が増え、エアポンプ57の供給する気体量および単位時間あたりの圧力の脈動数も増加するため、流れの中に存在する気栓の数が増加し、結果的に噴出される水塊の数も増加する。逆に洗浄の強さレベルを下げる操作がなされた場合には、制御器67は洗浄水の流量を減らすとともに、エアポンプ57の供給する気体量および単位時間あたりの圧力の脈動数を減少させるので、結果的に噴出される水塊の数は減少する。このように単位時間あたりに噴出される水塊の数を可変することで、使用者の体感強さを大きく変えることが可能で、好みに応じた洗浄が実現できる。
【0039】
また、例えば水道配管22の給水圧力が極端に低く、設定流量に到達しきれないといった事態が生じると、それに応じてエアポンプ57を制御し、気体の混入量および圧力の脈動周期を最適な状態へと可変する。また、平常時は温水サーミスタ35で検知される温水温度と設定温度を比較演算し、セラミックヒータ31の通電量を制御するが、なんらかの異常で高温の温水が流出した場合には、制御器67は流路切換弁37を制御し、連通流路をおしりホース43からクリーニングホース47側へと変更するとともにエアポンプ57の動作を停止し、さらには電磁弁16を即座に閉止する。さらにまた、厳寒期に給水温度が極端に低下し、供給できる温水温度が設定値に到達しない場合には、流路切換弁37の連通開度を調節し、温水温度が設定値まで上昇可能な流量にまで洗浄水を絞る。
【0040】
さらに次に使用者が洗浄を終え、リモコン13に設けた停止スイッチ18を押すと、制御器67は電磁弁25を閉止せしめた後、流路切換弁37を駆動し、温水管36とクリーニングホース47を連通せしめるとともに、ノズル駆動モータ51を駆動し、おしりノズル44を使用位置から待機位置へと収納する。この状態で所定時間経過後、制御器67はエア切換弁56を制御し、先ほど使用したおしりホース43側の流路を開成せしめるとともに、エアポンプ57を再度駆動し、おしりホース43およびおしりノズル44内部に残っている洗浄水を排出せしめる。この動作により、次に使用される際に流路内の冷水が排出された状態で洗浄が開始されるため、不快な冷水の噴出を大幅に低減することが可能となる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、瞬間型の加熱手段で適温にまで沸かし上げ可能な少量の洗浄水でも、十分な体感強さ、洗浄力の得られる人体の洗浄が可能で、節水性、省エネ性、快適性に優れた人体洗浄装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例における人体洗浄装置の概観図
【図2】 本発明の実施例におけるリモコンの概観図
【図3】 本発明の実施例における水回路を表すブロック図
【図4】 本発明の実施例における流路切換弁を示す断面図
【図5】 本発明の実施例における図4のA−A断面図
【図6】 本発明の実施例における図4のB−B断面図
【図7】 本発明の実施例におけるおしりノズルを示す断面図
【図8】 本発明の実施例におけるエアポンプを示す断面図
【図9】 従来の人体洗浄装置の水回路を表すブロック図
【符号の説明】
22 水道配管(水源)
25 電磁弁(流量調節手段)
26 減圧弁(流量調節手段)
30 熱交換器(加熱手段)
36 温水管
37 流路切換弁(流量調節手段)
43 おしりホース(温水管)
44 おしりノズル(洗浄水噴出手段)
45 ビデホース(温水管)
46 ビデノズル(洗浄水噴出手段)
49 おしり噴出流路(噴出流路)
50 ビデ噴出流路(噴出流路)
52 第1の気体混入部(気体混入部)
53 第2の気体混入部(気体混入部)
67 制御器
70 内部流路
72 徐変部分

Claims (4)

  1. 水源から供給される洗浄水の流量調節を行う流量調節手段と、
    前記洗浄水を加熱する加熱手段と、
    温水管を介して前記加熱手段と接続される洗浄水噴出手段と、
    前記洗浄水噴出手段に設けられ一端を前記温水管に接続され他端を噴出流路に接続された内部流路と、
    前記加熱手段から供給される洗浄水を前記噴出流路から各々独立した略球状の水塊として連続的に噴出せしめる水塊噴出手段と、
    前記加熱手段と前記洗浄水噴出手段とを接続する前記温水管に接続される気体混入部と、制御器とを備え、
    前記水塊噴出手段は、前記気体混入部において洗浄水中に気体を強制的に混入可能であるとともに、少なくとも前記噴出流路内における気液の混合状態が均一なスラグ流を形成可能な気体供給手段とし、前記気体供給手段は、ポンプモータの回転数に連動して気体の供給圧力に周期的かつ少なくとも微少な脈動を与えうるエアポンプとし、
    前記制御器は、前記流量調節手段によって調節される洗浄流量に応じて前記気体供給手段を制御し、気体の供給圧力の脈動周期および混入する気体の量を可変する
    人体洗浄装置。
  2. 気体供給手段から供給される気体の流量Qgと洗浄水流量Qwの関係は0.8≦(Qg/Qw)≦1.3とし、望ましくは(Qg/Qw)≒1.2とした請求項1に記載の人体洗浄装置。
  3. 気体供給手段が接続される気体混入部の下流側において、温水管から内部流路および噴出流路に至る流路断面形状を略円形に構成するとともに、前記温水管から前記内部流路に至る流路断面積をほぼ一定もしくは徐変する構成とした請求項1または2に記載の人体洗浄装置。
  4. 噴出流路を略円筒形状に構成するとともに、温水管から内部流路および前記噴出流路に至る流路において、前記噴出流路の断面積を最も小さく構成するとともに、前記内部流路と前記噴出流路の接合部分の流路断面積を徐変する徐変部分を備えてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体洗浄装置。
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