JP4229558B2 - 透湿防水布帛およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透湿防水布帛に関し、さらに詳しくは、基布表面に熱可塑性ポリエーテル−エステル系エラストマーからなるコーティング層が形成された透湿性に優れ、且つ、高度の耐水圧を有する透湿防水布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
透湿防水布帛は、例えば、衣料用に用いる場合、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出する機能(透湿性)と、雨が衣服内に入ることを防ぐ機能(防水性)との両立が必要とされる。そして、これらの機能を両立させる手段としては、繊維からなる基布の片側面に、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリウレタン系エラストマーからなるフィルムをラミネートする方法、または、ポリウレタン系エラストマーをコーティングする方法が採用されてきた。しかしながら、これらの透湿防水布帛は、廃棄などで燃焼した場合、人体に対して毒性を持ったガスを発生するなどの環境問題を有していた。そのため、基布にラミネートまたはコーティングされるポリマー材料として、透湿性と防水性とを両立しながら、環境への問題がないものが切望されてきた。
【0003】
そして、ポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)は、優れた耐熱性および機械特性を有し、そのフィルムは適度な弾性を有することから風合面でも優れており、しかも、燃焼時に有毒なガスが発生しないことから、前記のポリテトラフルオロエチレンおよびポリウレタン系エラストマーの代替品として有望視されている。
【0004】
このようなPEEを用いた透湿防水布帛としては、長鎖エステルを構成するポリアルキレングリコール(PAG)の少なくとも70重量%以上が、分子鎖内部の炭素と酸素との原糸数の比が2.0〜2.4であるPEEをフィルム状にしたものを、基布の表面にラミネートしたものが米国特許第4493870号公報に開示されている。該公報によれば、透湿性および防水性に優れ、しかも、環境問題のない透湿防水布帛が得られる。
【0005】
しかしながら、本発明者らが、さらに上記透湿防水布帛を検討していくと、基布とPEEとの間には両者を固定する接着剤が使用されるため、その接着剤としてウレタン系樹脂を使用した場合、少量ながら有毒ガスが発生すること、および、別途フィルムを成形する工程等が必要なためコーティング法に比べ工程コストが高いことといった、ラミネート法特有の問題が内在していることが解った。さらに、本発明者らは、前掲の公報で用いるPEEをコーティング法で基布の表面に配設したとしても、長鎖エステル構成するPAGの70重量%以上が分子鎖内部の炭素と酸素との原糸数の比が2.0〜2.4であることから、透湿性が高い反面、コーティング層が面方向に均一な厚みで形成し難いというPEE自体の問題も内在していることを究明した。
【0006】
このコーティング層の問題について、さらに詳述すると、PEEの透湿性は、分子鎖内部存在する親水性のPAGによって生起されるため、PAGの中でも特に親水性の高いポリエチレングリコールを多く含有するPEEほど高い透湿性を呈する。しかしながら、その反面、このようなポリエチレングリコールを多く含有するPEEは、基布表面にコーティングする際、基布内部に浸透し易いという問題が内在していたのである。すなわち、このようなPEEを実際に基布表面にコーティングすると、得られるコート層の厚みはコート量の割に薄く、しかも該浸透の度合いで基布表面の各部分でコート層の厚みに斑が多発して、前掲の公報のラミネートような高度の防水性とはほど遠い、防水性の乏しいものしか得られなかったのである。
【0007】
したがって、前掲の公報のPEEを基布表面に配設する方法を、単にラミネート法からコーティング法に変えただけでは、面方向に均一な厚みの樹脂層が形成できず、該厚みが不均一なために厚みの薄い部分から水が浸入して防水性、すなわち、耐水圧の乏しい防水基布しか得られなかったのである。勿論、樹脂層の厚みを厚くすれば、耐水圧は向上できるが、このような方法では、基布の柔軟性や樹脂層の透湿性が低下してしまう。そのため、PEEをコーティング法で基布表面に均一に配設された透湿防水布帛は未だ提供されていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上述のポリエーテルエステル系エラストマーを基布にコーティングする際に、該エラストマーが基布内部に浸透し易いという問題を解決し、柔軟で且つ十分な透湿性を有しながらも、高度の耐水圧を有する透湿防水布帛およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意検討した結果、透湿性の優れた従来のポリエーテル−エステル系エラストマーを基布表面にコーティングする前に、まず皮膜形成性の優れたポリエーテル−エステル系エラストマーを基布にコーティングすれば、透湿性の優れた前記エラストマーでも面方向に均一な厚みのコート層を形成できる、すなわち、透湿性を維持しつつ皮膜形成性を向上できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
かくして本発明によれば、繊維材料からなる基布に、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)が積層された透湿防水布帛において、
PEEが皮膜形成性の異なる2種のPEE(PEEAとPEEB)からなり、基布へのそれらPEEの積層状態が、基布の表面に直接PEEAからなるコート層を配置し、該PEEAコート層のさらに上にPEEBからなるコート層を配置した状態であって、且つ、PEEAとPEEBとが
(a)PEEAを構成するPAGが、重量を基準として、ポリテトラメチレングリコール残基を少なくとも90重量%含んでいること;
(b)PEEBを構成するPAGが、重量を基準として、ポリエチレングリコール残基を少なくとも50重量%含んでいること;
(c)PEEAとPEEBとのコート層の厚みの合計が、5〜50μmの範囲にあること;および
(d)PEEAとPEEBとを併せた全コート層中占めるPEEAのコート層の割合が、重量を基準として、5〜40重量%の範囲にあること
を同時に具備することを特徴とする透湿防水布帛が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、有機溶剤にAG、DCおよびポリテトラメチレングリコール残基を重量を基準として少なくとも90重量%含んだPAGからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)を、該溶剤の重量を基準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液を繊維材料からなる基布の表面に0.5〜10g/m2の量でコートした後、該溶剤を除去して基布の表面に直接PEEAコート層を形成する工程と、
有機溶剤にAG、DCおよびポリエチレングリコール残基を重量を基準として少なくとも50重量%含んだPAGからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を、該溶剤の重量を基準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液をPEEAコート層の基布との積層界面とは反対側の表面に5〜30g/m2の量でコートした後、該溶剤を除去してPEEAコート層のさらに上にPEEBコート層を形成する工程とを含むことを特徴とする透湿防水布帛の製造方法も提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の透湿防水布帛は、環境に対する問題が少ないポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)を繊維からなる基布の表面に積層したものであり、従来のコーティングによる積層では為し得なかった高度の透湿性と耐水圧とを兼備させたものである。具体的には、皮膜形成性の異なる2種のPEE、すなわち、皮膜形成性の優れたPEE(PEEA)を第1段目のコート層として、基布の表面に直接コートした後、該PEEAコート層のさらに上に透湿性の優れたPEE(PEEB)を第2段目のコート層としてコートすることで、コートする際のPEEの基布内部への浸透を抑制し、同一コート量に対して厚く均一なコート層を形成したものである。なお、本発明でいうPEEとは、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるものを意味し、また、該PEEAコート層のさらに上とは、 PEEAコート層の基布との積層界面とは反対の表面側を意味する。
【0013】
そして、本発明の最も重要な部分は、従来のように透湿性の優れたPEE(例えば、PEEB)を基布の少なくとも片側面に直接コーティングするのではなく、皮膜形成性の優れたPEEAをコーティングした後に、PEEAからなるコート層の上にPEEBをコーティングすることにある。すなわち、基布表面にPEEAからなる厚みの均一なコート層をまず形成することで、皮膜形成性の劣るPEEBでも均一なコート層が形成されるのである。そのため、基布表面にPEEBをコーティングした後にPEEAをコーティングしたもの、またはPEEAとPEEBとの組成物を単一層でコーティングしたものは、本発明の透湿防水布帛には含まれない。なお、ここでいう“皮膜形成性の優れた”とは、基布とPEEとの界面の接着力確保に必要なPEEの浸透を除く、すなわち基布とPEEとの剥離が問題にならない範囲で過剰に基布内部に浸透するPEEの量が極めて少ないことを意味する。
【0014】
また、本発明のもう一つの重要な部分は、皮膜形成性の優れたPEEAと透湿性に優れたPEEBとを組合せることにある。一般に、コート層全体の厚みは、十分な耐水圧を確保することから5μm以上必要であり、他方得られた透湿防水布帛の風合いを損なわないためには、50μm以下である必要がある。このようなコート層の厚みが限られた状況下においては、PEEAのようなコート量当たりの透湿性が低いコート層のみではコート量当たりの透湿性が高い透湿防水布帛は得られない。すなわち、本発明は皮膜形成において問題にならない範囲でPEEAのコート量を可及的に減らしつつ、コート量当たりの透湿性が優れたPEEBを併用することで、コート層全体のコート量当たりの透湿性を高めたものである。したがって、高いコート量当たりの透湿性を確保するために、コート層全体に占めるPEEAのコート量は、重量比で高々40%である。他方、下限については、皮膜形成において問題がなければ限定する必要はないが、5%もあれば十分である。好ましい該重量比は5〜30%である。なお、ここでいうコート層の厚みとは、基布表面に形成されたすべてのコート層の厚みであり、基布内部に浸透したPEEAの厚みは含まない。
【0015】
以下、本発明の透湿防水布帛のコート層を形成するPEEAおよびPEEBの要件について述べる。
本発明の透湿防水布帛にかかるPEEAは、PAG、AGとジカルボンとからなるPEEであって、重量を基準として、該PAGの少なくとも90重量%がポリテトラメチレングリコールで占められたものである。ポリテトラメチレングリコールが90重量%未満では、十分な皮膜形成性が得られず、基布表面にPEEAをコーティングする際に、PEEA自体が基布内部に過剰に浸透し易くなる。
【0016】
また、PEEAは、元々PEEBと組成が近似していることから親和性が高く、PEEAとPEEBとの界面の結合力は高いが、PEEAは基布とPEEBとの間で両者を担持する役割もあることから、さらに透湿防水布帛の変形の際に両者の変形の差を緩和し易い、すなわち、柔軟性の高いものが好ましい。PEEAの柔軟性を高める具体的な手段としては、PEEA中のAGにおいて、テトラメチレングリコールの占める割合を上げることなどがある。好ましいAG中に占めるテトラメチレングリコールの割合は、80〜100モル%である。
【0017】
PEEBは、PEEAと同様にPAG、AGとDCとからなるPEEであって、重量を基準として、該PAGの少なくとも50モル%がポリエチレングリコールで占められたものである。PAG中のポリエチレングリコールが50重量%未満では、PEEAをコーティングしたことによる透湿性の低下を補って、更に十分な透湿性を確保するまでには至らない。好ましいPAG中のポリエチレングリコールの割合は80〜100重量%である。
このような、PAG中のポリエチレングリコールの割合が高いPEEBを用いても、本発明ではPEEBがコーティングされる面にPEEAによって厚みの均一なコート層が形成されているので、得られた透湿防水布帛のコート層は厚みの均一なものである。
【0018】
また、PEEBが透湿防水布帛の厚み方向に対して最外層に配置される場合は、耐摩耗性の高いPEEBが好ましい。このようなPEEBとしては、PEEBを構成するAGが、エチレングリコールとテトラメチレングリコールとの混合物であって、該AG中に占めるエチレングリコールの割合が30モル%以上のものである。これは、該AG中に占めるエチレングリコールを少なくとも30モル%共存させることで十分な耐摩耗性が確保したのである。さらに好ましいAG中に占めるエチレングリコールとテトラメチレングリコールとのモル比は、50:50〜35:65の範囲である。
【0019】
次にPEEAおよびPEEBに共通の要件について以下に述べる。
PEEAおよびPEEBを構成するDC成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−DC、ナフタレン−2,7−DC、ジフェニル−4,4'−DC、ジフェノキシエタンDC、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族DC、1,4−シクロヘキサンDC等の脂環式DC、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族DCまたはこれらのエステル形成性誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられ、好ましいのはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−DCまたはこれらのエステル形成誘導体である。もちろん、このDCの一部(通常、全DCを基準として30モル%以下)を、他のDCやオキシカルボン酸成分に置換えてもよい。
【0020】
PEEAおよびPEEBを構成するPAGとしては、前述の要件を満足していれば、ポリエチレングリコール残基、ポリ1,2−プロピレングリコール残基、ポリ1,3−プロピレングリコール残基、ポリテトラメチレングリコール残基、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体の残基、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体の残基などが一部配されていてもよい。また、該PAGグリコールの数平均分子量ついては、600〜8000、特に1000〜5000の範囲が好ましい。数平均分子量が600未満であると、十分な機械的物性が得難く、8000を超えると、相分離が発生し易いことからPEEの調整が困難になる。
PEEAおよびPEEBを構成するAGとしては、前述の要件を満足していれば、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、トリメチレングリコール残基またはテトラメチレングリコール残基などが一部配されていてもよい。
【0021】
PEEAおよびPEEBを構成するPAGとAGおよびDCとの重量比(PAG/(AG+DC))は、30:70〜70:30、特に40:60〜60:40の範囲であることが好ましい。AGが30重量%未満では、得られたPEEの融点が低くなり易く、他方70重量%を越えると、十分な柔軟性が発現し難い。
【0022】
PEEAおよびPEEBの固有粘度は、十分な皮膜形成性およびコート層の皮膜強度を維持するために、0.8〜1.4の範囲にあるものが好ましい。なお、PEEAおよびPEEBの中には、各種安定剤、紫外線吸収剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
【0023】
ところで、本発明で用いる基布は、特に限定はされず、任意のもの採用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系合成繊維、ポリアクリロニトリル系合成繊維、ポリビニル系合成繊維、トリアセテート等の半合成繊維あるいはポリエチレンテレフタレート/木綿やナイロン6/木綿等の混合繊維からなる織物、編物、不織布等が挙げられ、こららの表面にコート層を配置すれば良い。なお、基布の表面とは、基布の片側面または両側面の一部または全部である。
【0024】
ところで、本発明の透湿防水布帛は、基布と第一段目のPEEAからなるコート層とが基布中へのPEEの浸透を抑制するために直接結合している必要があるが、第一段目のPEEAからなるコート層と第二段目のPEEBからなるコート層との間には、前述のPEEAおよびPEEBとポリマー組成が異なる第3のPEEからなる中間のコート層を少量なら介在させて良い。勿論、第2段目のPEEBからなるコート層のさらに上、すなわち、外表面側に、PEEBとポリマー組成が異なる他のポリマー材料からなる最外表面のコート層も少量なら配置して良い。なお、 第3のPEEとしては、PEEAとPEEBとの中間の性質を持つものが好ましく、例えば、PEE中のPAGがPEGとポリテトラメチレングリコールとの混合物であって、両者の重量比が11:89〜49:51のものが挙げられる。また、PEEBとポリマー組成が異なる他のポリマー材料としては、例えば、フッ素系樹脂などの撥水樹脂、シリコーン樹脂、前述の第3のPEEまたはPEEAなどが挙げられ、透湿防水布帛に撥水性などの機能を付加できることから、フッ素系樹脂などの撥水樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。そして、これら中間のコート層および最外表面のコート層の全コート層中に占める割合は、透湿性を確保する観点から、それぞれ高々20重量%である。
【0025】
次に、本発明の透湿防水布帛を製造する方法の一例として、もう一つの本発明である透湿防水布帛を製造する方法について、以下に述べる。
本発明の透湿防水布帛は、PEEAおよびPEEBを溶解可能な溶剤で溶解した溶液を、基布表面上にコーティングした後、乾式法もしくは湿式法により溶剤を除去することで得られる。PEEAおよびPEEBを溶解可能な溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンの1種もしくは2種以上の有機溶剤が挙げられるが、沸点が低く、毒性が少ないことから1,3−ジオキソランが好ましく、特に有機溶剤の重量を基準として、80重量%以上が1,3−ジオキソランであるものが好ましい。なお、PEEAまたはPEEBを、該溶剤の重量を基準としてPEEを2〜30重量%溶解させるのが好ましく、特に40〜60℃の温度で5〜20重量%溶解させるのが好ましい。
【0026】
基布表面にコーティングする方法としては、任意のコーティング法、例えばナイフコーター等を用いたコーティング法が採用され、まず基布上にPEEAのコート層を作製し、次にPEEBのコート層を作製することにより、高い透湿性と耐水圧を有する均一なコート層が得られる。
PEEAのコート量については、0.5〜10g/m2の範囲が好ましく、特に1〜5g/m2の範囲が好ましい。PEEAのコート量が0.5g/m2未満であると均一な薄膜を形成し難く、したがって、PEEBも不均一になり易いので耐水圧が向上し難い。他方、コート量が10g/m2を越えると、十分な透湿性が得にくい。また、PEEBのコート量については、5〜30g/m2の範囲が好ましく、特に10〜20g/m2の範囲が好ましい。PEEBが5g/m2未満であると十分な耐水圧が得にくく、他方、コート量が30g/m2を越えると、得られた透湿防水布帛の風合いが硬くなり易く、また十分な透湿性も得難くなる。
【0027】
1,3−ジオキソラン等の有機溶剤の除去ついては、70〜170℃、好ましくは70〜150℃での乾熱下で溶剤を除去する乾式法、PEEが不溶で、且つ1,3−ジオキソランなどの有機溶剤が可溶な溶液、例えば温水等で1,3−ジオキソランを抽出した後、乾燥を行う湿式法などを採用すればよい。
【0028】
このようにして得られた本発明の透湿防水布帛は、PEEAおよびPEEBコート層が、その面方向に均一な厚さで形成されており、高い耐水圧と透湿性とを有する。しかも、本発明の透湿防水布帛は、最外層にPEEBコート層を形成し、且つ、該PEEBを構成するAG中に占めるエチレングリコールの割合を30モル%以上とすれば、前述の高い耐水圧と透湿性に加えて、高い耐摩耗性をも有する。
【0029】
ところで、本発明の透湿防水布帛は、以下のような方法を採用すれば、さらに耐水圧、透湿性または柔軟性を向上できる。そこで、それら好ましい態様について、以下述べる。
まず、耐水圧を向上させるには、本発明の透湿防水布帛へ、さらに撥水処理を施すことが好ましい。撥水処理剤としては、パラフィン系撥水剤、ポリシロキサン系撥水処理剤およびフッ素系撥水処理剤など従来任意のものが採用でき、その処理方法も、パディング法およびスプレー法等の方法で行えばよい。撥水処理をする時期は、PEEAまたはPEEBをコーティングする前後何れでもよく、特に好ましいのは、PEEAをコーティングする前に、予め撥水処理を施す方法である。これは、 PEEAを基布にコーティングする前に予め基布に撥水処理を施しておくことで、 PEEA溶液の基布内部への浸透を抑制できるからである。なお、この場合の撥水処理剤の添加量は、基布重量を基準として、0.1〜2.0%の範囲にあることが好ましい。
【0030】
次に、透湿性を向上させるには、PEEAからなるコート層を、該コート層中に空隙が散在した多孔質構造とすすることが好ましい。該多孔質構造には、空隙がそれぞれ独立している独立孔と、各空隙が連結している連通孔との2種類がある。独立孔については、PEEを溶解する有機溶剤中に、該溶剤よりもPEEに対する溶解性が乏しく、且つ、沸点が高い、水または他の有機溶剤を分散させ、コーティング後に、乾式法で低沸点側の有機溶剤を除去した後、高沸点側の水または他の有機溶剤を除去すれば良い。具体的には、有機溶剤が1,3-ジオキソラン、該剤に分散させるものが水、トルエンまたは酢酸エチル、および、該分散量が1,3-ジオキソランの重量を基準として、5〜50重量%の範囲が好ましい。他方、連通孔については、湿式法で溶剤を除去すれば良い。このようにして得られるコート層は、コート層の中央部分で透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向に裁断した断面を見たとき、該断面中に平均孔径が0.1〜10μmの範囲にある空隙が形成される。また、これらの空隙、すなわち、独立孔または連通孔の該断面中に占める割合は、断面の面積を基準として、5〜50%の範囲にあることが好ましい。なお、平均孔径が0.1μm未満または空隙の面積が5%未満では、空隙による透湿性の改善効果が乏しくなり易く、他方、平均孔径が10μmを越えるまたは空隙の面積が50%を越えると、得られる透湿防水布帛の耐水圧が急激に低下し易くなる。
【0031】
このようにして得られるコート層内に独立孔または連通孔を有する形透湿防水布帛は、耐水圧や械的強度が若干低下するものの、透湿性が格段に向上する。なお、これら独立孔または連通孔を形成するコート層は、PEEAコート層、PEEBコート層または両方でもよく、耐水圧や機械的強度の低下を縮小できることから、特にPEEAコート層に独立孔または連通孔を形成し、PEEBコート層には独立孔または連通孔を形成しないか、または形成するとしても前記空隙の面積を高々20%に抑えたものが好ましい。
【0032】
最後に、柔軟性を向上させるには、基布の表面に位置する繊維とPEEAとの結合状態を、PEEAコート層中に固定される繊維が自由に動けるような状態にすれば良い。具体的な結合状態は、透湿防水布帛の厚み方向に沿った断面を見たとき、PEEAコート層と基布との結合力を受け持つPEEAによって外周表面を完全に被覆された繊維(アンカー繊維)の一部を、外周表面の少なくとも90%がPEEBとの間に空隙を有する揺動可能なアンカー繊維(可動アンカー繊維)に置き換えたものである。特に好ましいのは、アンカー繊維の本数が、透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向に沿って、20〜1000本/cmの範囲にあり、且つ、本数を基準として、該アンカー繊維の20〜90%が可動アンカー繊維に置換されたものである。該アンカー繊維の本数が20本/cm未満または可動アンカー繊維の割合が90%を越えると、基布とPEEAコート層との剥離強度が低下し易く、他方、可動アンカー繊維の割合が20%未満では、柔軟性の向上効果が乏しくなり易く、また、アンカー繊維の本数が1000本/cmを越えると得られる透湿防水布帛が硬くなり易い。
【0033】
このような可動アンカー繊維を形成するには、PEEAのコート層を基布表面に形成する前に、基布重量を基準として、基布に0.5〜50重量%の水を含浸させれば良い。これは、基布の表面に水が存在することで、基布の表面に位置する繊維とPEEAとの直接的な接触が抑制されからである。なお、アンカー繊維の本数および可動アンカー繊維の本数は、基布に含浸させる水中にPEEAを溶解させるのに用いた有機溶剤を混在させたり、または、基布に含浸させる水の量を変更させたりすることで、容易に調整できる。これは、コーティング時のPEEA溶液の基布への浸透の度合いや繊維とPEEAとの直接的な接触の度合い変化するためである。なお、この方法によると、コーティングの際に、繊維間に水が介在するので、基布自体の柔軟性および通気性を向上できるという利点もある。
【0034】
以上、本発明の透湿防水布帛の更に好ましい態様について説明したが、これらは、単独で使用しても良いし、勿論、組合せて使用しても良い。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。実施例において、各物性値の測定は下記の方法により行い、また、実施例で使用したPEEは、下記の方法により作製した。なお、実施例中の「部」は、「重量部」を表わす。
【0036】
(1)PEEの固有粘度
フェノールとテトラクロロエタンとの混合溶剤(重量比=6:4)を用い、35℃の温度条件下で固有粘度を測定した。
【0037】
(2)融点
示差走査型熱量計(TA instrument製 DSC29290)を用いて、窒素気流中10℃/分の昇温速度で測定した。
【0038】
(3)エチレングリコール/テトラメチレングリコール含有率
90MHz FT−NMR(日立製作所製 R1900)を用いて定量した。
【0039】
(4)透湿度試験
JIS L−1099法のA−1法(塩化カルシウム法)に準拠して行った。
【0040】
(5)耐水圧試験
JIS L−1092法のB法(高水圧法)に準拠して行い、静水圧法で測定した。
【0041】
(6)摩擦試験
摩擦試験機II型(JIS L−0849法)の摩擦子の先端に乾燥状態の摩擦用白綿布をかぶせ、試験片上の10cmの間を毎分30回の往復の速度で、100回往復摩擦を繰り返す。
試験後に樹脂層に破壊が見られなかったら耐摩耗性が「○」、実用上問題ない程度で若干樹脂層に破壊が見られたら耐摩耗性が「△」、実用上問題となるような破壊が樹脂層に見られたら耐摩耗性が「×」とする。なお、ここでいう実用上問題となる樹脂層の破壊とは、摩擦試験後に耐水圧が50%以下に低下するものを意味し、樹脂層に破壊が見られないとは、摩擦試験後に耐水圧が90%以上であるものを意味する。
【0042】
(7)アンカー繊維および可動アンカー繊維の測定
透湿防水布帛の厚み方向に沿って裁断したときの断面を、電子顕微鏡によって1500倍に拡大し、該断面中のELによって完全に外表面を被覆された繊維の本数を、透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向に沿って100本測定し、100本測定するのに要した長さ(cm)で100本を割ったものをアンカー繊維の本数(本数/cm)とした。また、該アンカー繊維の中に存在する、繊維の外周表面の90%以上がPEEとの間に空隙を有する繊維(可動アンカー繊維)の本数も測定し、可動アンカー繊維の本数をアンカー繊維の本数(100本)で割ったものを可動アンカー繊維率(%)とした。
なお、上述の測定に供する繊維は、繊維軸に沿った断面では、ELに被覆されているのかどうかが判別し難いので、繊維の繊維軸に対して60〜120度の範囲で裁断されているものであり、基布が織物の場合は、経糸に垂直な断面と緯糸に垂直な断面の2つを測定した。
【0043】
(8)剥離試験
JIS K−6301を参考にし、試験片(2cm×9cm)のコーティング面に融着テープを熱融着させた後、試験片と融着テープとを引張試験機の相互に向かい合ったチャック間(50mm)にセットし、50mm/minの引張り速度でチャック間の距離を広げることで基布とコート層とを剥離させ、初期の剥離を除いた平均応力を読み取り、サンプルの幅25mm当たりの応力に換算したものを剥離強力とした。
【0044】
(9)風合い評価
熟練者5名により、製造した各サンプルに対して官能検査を行い、触感による相対的な比較を行った。なお、評価結果は、以下の通りとした。
○:柔軟な風合いを有し、屈曲時に樹脂層のすれる音がしないもの。
△:柔軟な風合いを有するが、屈曲時に樹脂層のすれる音がするもの。
×:ペーパーライクな風合いで、且つ、屈曲時に樹脂層のすれる音がするもの。
【0045】
(10)コート層中の空隙の平均孔直径および空隙率
PEEAまたはPEEBコート層のそれぞれの厚み方向における中央部分で透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向に裁断したときの断面を、電子顕微鏡によって750倍に拡大し、1辺100μmの正方形の断面中に存在する空隙の個数とそれぞれの面積を測定した。そして、それら空隙の面積の平均を算出し、該平均空隙面積から円形にした場合の平均直径を求め、それを空隙の平均孔直径とした。また、全空隙の面積を10000μm2で割って、空隙率を求めた。
【0046】
(11)参考例1
テレフタル酸ジメチル(DMT)194部、エチレングリコール(EG)43.3部、テトラメチレングリコール(TMG)72部、ポリエチレングリコール(PEG)(平均分子量4000)124部、及び触媒としてテトラブチルチタネート0.391部を蒸留装置を備えた反応容器に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下、220℃で反応缶中に生成するメタノールを系外に除去しながら210分間エステル交換させた。エステル交換反応終了後、このエステル交換反応物を撹袢装置、窒素導入口、減圧口及び蒸留装置を備えた240℃に加熱された反応容器に移し、反応混合物に熱安定剤としてスミライザーGS(住友化学工業(株)製)を0.31部添加し窒素置換した後、常圧で約10分、1995〜2660Pa(15〜20mmHg)で約30分、更に13.3Pa(0.1mmHg)で255℃まで昇温し重縮合反応を行ない、所定の溶融粘度に到達した後、酸化防止剤としてスミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)を0.62部添加して反応終了とし、常法によりチップ化した。得られたPEEBの固有粘度は1.163cm3/g、融点は176℃、EG/TMGのモル比は33/67であった。
【0047】
また、PTMGの一部をポリエチレングリコール(PEG)に表1のように置き換えた以外は、前記方法と同様にして、PEEを作成し、それぞれのPEEを5部、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン95部に完全に溶解させた後、ガラス板上にキャストし、150℃の乾熱下で10分間乾燥および熱処理を行いPEEからなるフィルムを作製した。得られたフィルムの性能を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004229558
【0049】
(12)参考例2
テレフタル酸ジメチル(DMT)210部、イソフタル酸(IA)63.6部、テトラメチレングリコール(TMG)193.3部及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)199部を反応容器中に仕込んで、エステル交換反応を行いモノマーを得た。その後昇温減圧しつつ重縮合反応を行ってPEEAを得た。なお、イソフタル酸はスラリー状のものを、PTMGは数平均分子量2000のものを用いた。このPEEAの固有粘度は1.0で、融点は170℃であった。
【0050】
[実施例1]
ポリエステル布帛に撥水処理剤(フッ素系撥水処理剤LS−317、明成化学株式会社製)が基布重量に対して1.0wt%となるように処理した、耐水圧が5.88kPa(600mmH2O)で透湿度が9000g/m2・24hの基布を準備した。
そして、前記参考例2により得られたPEE10部を、60℃に加熱されたエチレンホルマール90部に完全に溶解させ、ナイフコーターにより、該基布上に、コート量が5g/m2になるようにクリアランスを調整してコートした後、130℃の乾熱下で1分間熱処理を行い、第1段目のコート層を形成した。続いて前記参考例1により得られたPEE(PEG/PTMGの重量比が100/0)7部、60℃に加熱されたエチレンホルマール93部に完全に溶解させ、コート量が15g/m2になるようにコーティングした後、150℃乾熱下で3分間熱処処理を行い、第2段目のコート層を形成した。得られた透湿防水布帛は、高い透湿性と耐水圧性とを有するものであった。
得られた透湿防水布帛の性能を表2、3,5および6に示す。
【0051】
[比較例1]
第1段目のコート層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。
得られた透湿防水布帛の性能を表2に示す。
【0052】
[実施例2及び比較例2]
第1段目のコート層を構成する参考例2のPEEに含まれるPAG中のPEGとPTMGとの重量比を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。
得られた透湿防水布帛の性能を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0004229558
【0054】
以下、表2について考察する。第1段目のコート層を形成するPEEが、PEEAのポリマー組成を満足し、且つ、第2段目のコート層を形成するPEEが、PEEBのポリマー組成を満足する実施例1及び2の透湿防水布帛は、厚みの均一なコート層が基布表面に形成されており、高い耐水圧と優れた透湿性とを具備していた。
【0055】
これに対して、第1段目のコート層を形成しなかった比較例1は、PEEBのポリマー組成を満足する第2段目のコート層を形成するPEEが基布の組織内部に浸透を防止するためのPEEAからなる第1段目のコート層がないため、多量に第2段目のコート層を形成するPEEが浸透し、厚みの不均一なコート層が基布表面に形成され、耐水圧の乏しいものとなった。また、第1段目のコート層を形成するPEEがPEEBのポリマー組成を満足する比較例2は、第1段目のコート層を形成するPEE自体の皮膜形成性が悪いことから、比較例1と同様に、コート層の厚みが不均一な耐水圧の乏しいものとあった。
【0056】
[実施例3及び4]
参考例1のPEEに含まれるAG中のEGとTMGとのモル比を表3の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、透湿防水布帛を作製した。
得られた透湿防水布帛の性能を表3に示す。
【0057】
【表3】
Figure 0004229558
【0058】
[実施例5〜7]
第1段目および第2段目のコート層を形成する際のそれぞれのコート量を表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、透湿防水布帛を作成した。
得られた透湿防水布帛の性能を表4に示す。
【0059】
【表4】
Figure 0004229558
【0060】
[実施例8]
第1段目のコート層を形成する前に、予め基布に界面活性剤(竹本油脂製、スルホネート系ノニオン活性剤TJC043)を0.5重量%含んだ水溶液を、基布重量を基準として40重量%含浸させた以外は実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表5に示す。
【0061】
[実施例9]
実施例8の基布に含浸させる水溶液として、界面活性剤のほかに1,3−ジオキソランを20重量%含んだものを用いた以外は、実施例8と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表5に示す。
【0062】
[実施例10]
実施例9の基布に含浸させる水溶液の量を、10重量%に変えた以外は、実施例9と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表5に示す。
【0063】
[実施例11]
実施例9の基布に含浸させる水溶液の量を、50重量%に変えた以外は、実施例9と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表5に示す。
【0064】
[実施例12]
実施例8の基布に含浸させる水溶液の量を、0.1重量%に変えた以外は、実施例8と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表5に示す。
【0065】
【表5】
Figure 0004229558
【0066】
以下、表5について、考察する。
可動アンカー繊維が20%以上存在する実施例9〜13は、実用に十分耐え得る高度の剥離強度を有しながら、極めて柔軟で、特に実施例8、9、11および12は屈曲時のガサツキ音さえもしない優れたものであった。
【0067】
[実施例13]
1,3−ジオキソランに溶解したPEEA溶液をコーティングした後の130℃の乾熱下での熱処理を、70℃の温水中での熱処理に置換した以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。
得られた透湿防水布帛の性能を表6に示す。
【0068】
【表6】
Figure 0004229558
【0069】
【発明の効果】
本発明の透湿防水布帛は、基布の表面に皮膜形成性の優れたPEEAにより厚さの均一なコート層を形成した後、該PEEAのコート層の上に透湿性の優れたPEEBをコーティングするため、皮膜形成性の劣るPEEBでも均一に布帛表面を被覆することができる。そのため、得られた透湿防水布帛は、高い耐水圧と透湿性とを有する。勿論、本発明により得られた透湿防水布帛は、燃焼時に有毒ガスを発生しないPEEを使用しているため、現在重要視されつつある廃棄処理の問題も解決することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の透湿防水布帛の厚み方向に沿った断面の拡大図である。
【図2】従来の透湿防水布帛の厚み方向に沿った断面の拡大図である。
【符号の説明】
1 基布
2 PEEAからなるコート層
3 PEEBからなるコート層
4 アンカー繊維
5 可動アンカー繊維
6 PEEからなるコート層
7 空隙

Claims (14)

  1. 繊維材料からなる基布に、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)が積層された透湿防水布帛において、
    PEEが皮膜形成性の異なる2種のPEE(PEEAとPEEB)からなり、基布へのそれらPEEの積層状態が、基布の表面に直接PEEAからなるコート層を配置し、該PEEAコート層のさらに上にPEEBからなるコート層を配置した状態であって、且つ、PEEAとPEEBとが下記(a)〜(d)の要件を同時に具備することを特徴とする透湿防水布帛。
    (a)PEEAを構成するPAGが、重量を基準として、ポリテトラメチレングリコール残基を少なくとも90重量%含んでいること;
    (b)PEEBを構成するPAGが、重量を基準として、ポリエチレングリコール残基を少なくとも50重量%含んでいること;
    (c)PEEAとPEEBとのコート層の厚みの合計が、5〜50μmの範囲にあること;および
    (d)PEEAとPEEBとを併せた全コート層中占めるPEEAのコート層の割合が、重量を基準として、5〜40重量%の範囲にあること。
  2. PEEAおよびPEEBに含まれるDCが、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸残基からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の透湿防水布帛。
  3. PEEAおよびPEEBに含まれるPAGの数平均分子量が、それぞれ600〜8000の範囲にある請求項1記載の透湿防水布帛。
  4. PEEAおよびPEEBに含まれるPAGとAGおよびDCとの重量比(PAG/(AG+DC))が、それぞれ30:70〜70:30の範囲にある請求項1記載の透湿防水布帛。
  5. PEEAおよびPEEBの固有粘度(η)が、0.8〜1.4の範囲である請求項1記載の透湿防水布帛。
  6. PEEAに含まれるAGが、モル数を基準として、テトラメチレングリコール残基を少なくとも80モル%含んでいる請求項1記載の透湿防水布帛。
  7. PEEBに含まれるAGが、エチレングリコール残基とテトラメチレングリコール残基とを含んでいて、且つ、モル数を基準として、前者を少なくとも30モル%含んでいる請求項1記載の透湿防水布帛。
  8. 透湿防水布帛の耐水圧が、少なくとも98066.5Pa(10000mmH2O)である請求項1記載の透湿防水布帛。
  9. 透湿防水布帛の透湿度が、24時間で少なくとも5000g/m2である請求項1記載の透湿防水布帛。
  10. コート層の厚みの中央部分で透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向にPEEAまたはPEEBコート層を裁断した断面を見たとき、該断面中に平均直径0.1〜10μmの空隙が、コート層の断面の面積を基準として、5〜50%占める請求項1記載の透湿防水布帛。
  11. 透湿防水布帛の厚み方向に沿った断面のPEEAコート層と基布を構成する繊維との結合部分を見たとき、PEEAによって外周表面を完全に被覆された繊維(アンカー繊維)が、透湿防水布帛の厚み方向に対して垂直な方向に、20〜1000本/cmの範囲で存在し、且つ、本数を基準として、20〜90%のアンカー繊維が、その外周表面の少なくとも90%がPEEAとの間に空隙を有する揺動可能なアンカー繊維(可動アンカー繊維)である請求項1記載の透湿防水布帛。
  12. 有機溶剤にAG、DCおよびポリテトラメチレングリコール残基を重量を基準として少なくとも90重量%含んだPAGからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)を、該溶剤の重量を基準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液を繊維材料からなる基布の表面に0.5〜10g/m2の量でコートした後、該溶剤を除去して基布の表面に直接PEEAコート層を形成する工程と、
    有機溶剤にAG、DCおよびポリエチレングリコール残基を重量を基準として少なくとも50重量%含んだPAGからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を、該溶剤の重量を基準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液をPEEAコート層の基布との積層界面とは反対側の表面に5〜30g/m2の量でコートした後、該溶剤を除去してPEEAコート層のさらに上にPEEBコート層を形成する工程とを含むことを特徴とする透湿防水布帛の製造方法。
  13. 有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンまたはこれらの混合物である請求項12記載の透湿防水布帛の製造方法。
  14. PEEAのコート層を基布表面に形成する前に、基布重量を基準として、基布に0.5〜50重量%の水を含浸させる請求項13記載の透湿防水布帛の製造方法。
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