JP3378229B2 - 透湿防水布帛およびその製造方法 - Google Patents

透湿防水布帛およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、布帛表面に熱可塑
性ポリエーテル−エステル系エラストマーからなるコー
ティング層が形成された、透湿防水布帛に関する。さら
に詳しくは、透湿性に優れ、かつ洗濯処理後においても
耐水圧性が優れた透湿防水布帛、およびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】透湿防水布帛は、例えば衣料用に用いる
場合、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出する
機能(透湿性)と、雨が衣服内に入ることを防ぐ機能
(防水性)との両立が必要とされる。そして、これらの
機能を両立させる手段としては繊維からなる基布の片側
面に、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリウレタン
系エラストマーからなるフィルムをラミネートする方
法、または、ポリウレタン系エラストマーをコーティン
グする方法が採用されてきた。しかしながら、これらの
防水布帛は、廃棄時などに燃焼させた場合、人体に対し
て毒性を持ったガスが発生するなどの環境問題を有して
いた。そのため、基布にラミネートまたはコーティング
するポリマー材料として、透湿性と防水性とを両立しな
がら、環境への問題がないものが切望されてきた。
【0003】そして、ポリエーテル−エステル系エラス
トマー(PEE)は、優れた耐熱性および機械特性を有
し、そのフィルムは適度な弾性を有することから風合い
面でも優れており、しかも、燃焼時に有毒なガスが発生
しないことから、前記のポリテトラフルオロエチレンお
よびポリウレタン系エラストマーの代替品として有望視
されている。
【0004】このようなPEEを用いた透湿防水布帛と
しては、長鎖エステルを構成するポリアルキレングリコ
ール(PAG)の少なくとも70重量%以上が、分子鎖
内部の炭素と酸素の原子数の比が2.0〜2.4である
PEEをフィルム状にしたものを、基布の表面にラミネ
ートしたものが米国特許第4493870号公報に開示
されている。しかしながら、このものは初期の透湿性お
よび防水性は優れているものの、一般家庭で行われる水
による洗濯を行った場合には、フィルムが破損しやす
く、防水性が大幅に低下するという問題があった。ま
た、基布とPEEフィルムとを固定する接着剤として一
般的に用いられるウレタン系樹脂を使用した場合には、
焼却時に少量ながら有毒ガスが発生するため、基布とP
EEフィルムとをどう一体化するかという問題があっ
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術を鑑みなされたもので、その目的は、ポリエーテル−
エステル系エラストマーのみが基布に積層された、柔軟
でかつ十分な透湿性を有しながらも、水による洗濯後も
高度の耐水圧を有する透湿防水布帛およびその製造方法
を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の透湿防水布帛
は、繊維材料からなる基布に、ポリアルキレングリコー
ル残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)
およびジカルボン酸残基(DC)からなるポリエーテル
−エステル系エラストマー(PEE)が積層された透湿
防水布帛において、PEEが2種のPEE(PEEAと
PEEB)からなり、基布へのそれらPEEの積層状態
が、基布の表面に直接PEEAからなるコート層を配置
し、該PEEAコート層のさらに上にPEEBからなる
コート層を配置した状態であって、かつ、PEEAとP
EEBとが下記(a)〜(d)の要件を同時に具備する
ことを特徴とする。 (a)PEEAを構成するPAGが、ポリテトラメチレ
ングリコール残基を、PAGの重量を基準として、少な
くとも70重量%含んでいること; (b)PEEBが、ポリエチレングリコール残基を、P
EEBの重量を基準として、5〜25重量%含んでいる
こと; (c)PEEAとPEEBとのコート層の厚みの合計
が、5〜50μmの範囲にあること;および (d)PEEAとPEEBとを併せた全コート層中に占
めるPEEAのコート層の割合が、重量を基準として、
5〜70重量%の範囲にあること。
【0007】また、本発明の透湿防水布帛の製造方法
は、有機溶剤に、AG、DC、およびポリテトラメチレ
ングリコール残基を重量基準で少なくとも70重量%含
んだPAGから構成されたポリエーテル−エステル系エ
ラストマー(PEEA)を、重量を基準として、2〜3
0重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液を繊維材料か
らなる基布の表面に、乾燥後のPEEA目付が0.5〜
10g/m2の量となるようにコートした後、該溶剤を
除去して基布の表面に直接PEEAコート層を形成する
工程と、有機溶剤に、PAG、AGおよびDCからなる
ポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)で
あり、かつPAGの一成分であるポリエチレングリコー
ル残基を重量基準で5〜25重量%含んだPEEBを、
重量を基準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準
備し、該溶液をPEEAコート層の基布との積層界面と
は反対側の表面に乾燥後のPEEB目付が5〜30g/
2の量となるようにコートした後、該溶剤を除去して
PEEAコート層のさらに上にPEEBコート層を形成
する工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透湿防水布帛は、環境に対する問題が少ないポ
リエーテル−ポリエステル系エラストマー(PEE)の
みを繊維からなる基布の表面に積層したものであり、従
来の積層品ではなし得なかった、初期および水による洗
濯後の両方において、高度の透湿性と耐水圧とを兼備さ
せたものである。具体的には、要求特性の異なる2種の
PEE、すなわち皮膜形成性に優れたPEE(PEE
A)を第1番目の層として、基布の表面に直接積層し、
該PEEAコート層のさらに上に透湿性と耐洗濯性とに
優れたPEE(PEEB)を積層することで、耐洗濯後
の透湿性、耐水圧をともに満足させたものである。仮
に、PEEAのみでは透湿性等が達成できず、逆にPE
EBのみでは使用時や洗濯時に積層部分の接着がはが
れ、PEE層が破損してしまう。なお、本発明でいうP
EEとは、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、
アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸
残基(DC)からなるものを意味し、また、該PEEA
コート層のさらに上とは、PEEAコート層の基布との
積層界面とは反対の表面を意味する。
【0009】一般に、コート層全体の厚みは、十分な耐
水圧を確保することから5μm以上必要であり、他方得
られた透湿防水布帛の風合いを損なわないためには、5
0μm以下である必要があり、さらには10〜30μm
が好ましい。このようなコート層の厚みが限られた状況
下においては、PEEAのようなコート量当たりの透湿
性が低いコート層のみではコート量当たりの透湿性が高
い透湿防水布帛は得られない。すなわち、本発明では皮
膜形成において問題にならない範囲でPEEAのコート
量を減らしつつ、コート量当たりの透湿性と耐洗濯性と
に優れたPEEBを併用することで、コート量当たりの
透湿性を高めたものである。したがって、高いコート量
当たりの透湿性を確保するためには、コート層全体に占
めるPEEAのコート量は低いほうが良く、重量比で高
々70%まで、好ましくは40%までである。他方下限
については、皮膜形成に問題が無ければ限定する必要は
無いが、普通は5%、おおくとも10%もあれば十分で
ある。なお、ここでいうコート層の厚みとは、基布表面
に形成された全てのコート層の厚みであり、基布内部に
浸透したPEEAの厚みは含まない。
【0010】以下、本発明の透湿防水布帛のコート層を
形成するPEEAおよびPEEBの要件について述べ
る。本発明の透湿防水布帛におけるPEEAは、PA
G、AGおよびDCからなるPEEであって、重量を基
準として、該PAGの少なくとも70重量%が、より好
ましくは90重量%以上が、さらに好ましくは95重量
%以上がポリテトラメチレングリコールで占められたも
のである。ポリテトラメチレングリコールが70重量%
未満では、PEEA自体が基布内部に過剰に浸透するた
めにコート層を形成しにくく、また出来上がった布帛も
硬くなり過ぎる。また、PEEAの透湿性を向上させる
ためには、PAGの残りの成分の一部をポリエチレング
リコールとしても良い。
【0011】また、PEEAはもともと後述するPEE
Bと組成が近似していることから親和性が高く、PEE
AとPEEBとの界面の結合力は高いが、PEEAは基
布とPEEBとの間で両者を担持する役割もあることか
ら、さらに透湿防水布帛の変形の際に両者の変形の差を
緩和し易い、すなわち、柔軟性の高いものが好ましい。
PEEAの柔軟性を高める具体的な手段としては、PE
EA中のAGにおいて、テトラメチレングリコールの占
める割合を上げることなどがある。好ましいAG中に占
めるテトラメチレングリコールの割合は、80〜100
モル%である。
【0012】PEEBは、PEEAと同様にPAG、A
GおよびDCからなるPEEであって、PAGの一成分
としてのポリエチレングリコールを、重量を基準とし
て、PEEB全重量に対して5〜25重量%、さらに好
ましくは10〜20重量%含んだものである。PEEB
中のポリエチレングリコールが5重量%未満であると、
十分な透湿性を得ることができない。また、25重量%
より大きい場合には、水による洗濯時にPEEBコート
層が破損するために洗濯後の耐水圧が低下する。また、
PEEBを構成するPAGに占めるポリエチレングリコ
ールの割合としては、重量基準で20〜60重量%が好
ましい。
【0013】また、PEEBが透湿防水布帛の厚み方向
に対して最外層に配置される場合は、耐磨耗性の高いP
EEBが好ましい。このようなPEEBとしては、PE
EBを構成するAGが、エチレングリコールとテトラメ
チレングリコールとの混合物であって、該AG中に占め
るエチレングリコールの割合が30モル%以上のもので
ある。これは、該AG中に占めるエチレングリコールを
少なくとも30モル%共存させることで十分な耐摩耗性
が確保したのである。さらに好ましいAG中に占めるエ
チレングリコールとテトラメチレングリコールとのモル
比は、30:70〜50:50の範囲である。
【0014】次にPEEAおよびPEEBに共通の要件
について以下に述べる。PEEAおよびPEEBを構成
するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフ
タル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン
酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−
4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン
酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカ
ルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂
環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、
セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカ
ルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体からなる
群より選ばれた少なくとも1種が挙げられ、好ましくは
テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジ
カルボン酸またはこれらのエステル形成誘導体である。
もちろん、このジカルボン酸の一部(通常、全ジカルボ
ン酸成分を基準として30モル%以下)を、他のジカル
ボン酸やオキシカルボン酸成分に置換えてもよい。
【0015】PEEAおよびPEEBを構成するPAG
としては、前述の要件を満足していれば、ポリエチレン
グリコール残基、ポリ−1,2−プロピレングリコール
残基、ポリ−1,3−プロピレングリコール残基、ポリ
テトラメチレングリコール残基、エチレンオキシドとプ
ロピレンオキシドとの共重合体の残基、エチレンオキシ
ドとテトラヒドロフランとの共重合体の残基などが一部
配されていてもよい。また、該PAGグリコールの数平
均分子量については、600〜8000、特に1000
〜5000の範囲が好ましい。数平均分子量が600未
満であると、十分な機械的物性が得難く、8000を超
えると、相分離が発生し易いことからPEEの調整が困
難になる。
【0016】PEEAおよびPEEBを構成するAGと
しては、前述の要件を満足していれば、エチレングリコ
ール残基、プロピレングリコール残基、トリメチレング
リコール残基またはテトラメチレングリコール残基など
が一部配されていてもよい。
【0017】PEEAおよびPEEBを構成するPAG
とAGおよびDCとの重量比(PAG/(AG+D
C))は、30/70〜70/30、特に40/60〜
60/40の範囲であることが好ましい。(AG+D
C)が30重量%未満では、得られたPEEの融点が低
くなり易く、他方70重量%を越えると、十分な柔軟性
が発現し難い。
【0018】PEEAおよびPEEBの固有粘度(I
V)については、十分な皮膜形成性およびコート層の皮
膜強度を維持するために、0.8〜1.4の範囲にある
ものが好ましい。なお、PEEAおよびPEEBの中に
は、各種安定剤、紫外線吸収剤等が必要に応じて配合さ
れていてもよい。
【0019】さらに本発明に用いられるPEEBは、該
PEEBから形成された厚さ15μmのフィルムを水温
40℃にて30分間処理した後の面積膨潤率が、5%未
満であることが好ましい。面積膨潤率が5%以上のフィ
ルムの場合には、水による洗濯により耐水圧が低下する
傾向にある。
【0020】本発明で用いる基布は、特に限定はされ
ず、任意のものを採用することができる。例えば、ポリ
エチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維、
ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系合成繊維、
ポリアクリロニトリル系合成繊維、ポリビニル系合成繊
維、トリアセテート等の半合成繊維あるいはポリエチレ
ンテレフタレート/木綿、ナイロン6/木綿等の混合繊
維からなる織物、編物、不織布等が挙げられ、これらの
表面にコート層を配置すれば良い。なお、基布の表面と
は、基布の片側面または両側面の一部または全部であ
る。
【0021】ところで、本発明の透湿防水布帛は、基布
と第一番目のPEEAからなるコート層とが基布中への
PEEの浸透を抑制するために直接結合している必要が
あるが、第一番目のPEEAからなるコート層と第二番
目のPEEBからなるコート層との間には、前述のPE
EAおよびPEEBとポリマー組成が異なる第三のPE
Eからなる中間のコート層を少量なら介在させても良
い。また、第二段目のPEEBからなるコート層の上、
すなわち外表面側に、PEEBとポリマー組成が異なる
他のポリマー材料からなる最外表面のコート層も少量な
ら配置しても良い。なお、中間に介在する第三のPEE
としては、PEEAとPEEBとの中間の性質を持つも
のが好ましく、例えば、PEE中のPAGがポリエチレ
ングリコールとポリテトラメチレングリコールの混合物
であって、両者の重量比が1:99〜20:80のもの
が挙げられる。また、最外表面に配置するPEEBとポ
リマー組成が異なる他のポリマー材料としては、例え
ば、フッ素系樹脂などの撥水樹脂、シリコーン樹脂、前
述の第三のPEEまたはPEEAなどが挙げられ、透湿
防水布帛に撥水性などの機能を付加できることから、フ
ッ素系樹脂などの撥水樹脂やシリコーン樹脂が好まし
い。そして、これら中間のコート層および最外表面のコ
ート層の全コート層中に占める割合は、透湿性を確保す
る観点から低いほうが好ましく、それぞれせいぜい20
%までが好ましい。
【0022】さらに本発明の透湿防水布帛は、初期の耐
水圧が50kPa以上であり、かつ洗濯10回後の耐水
圧が、初期の耐水圧の50%以上、さらに好ましくは6
0%以上であることが好ましい。そしてもっとも好まし
くは、洗濯10回後の耐水圧も、50kPa以上である
ことである。また、本発明の透湿防水布帛は、透湿度が
3000g/m2・24h以上であることが好ましい。
これらの特性値が下限未満の場合、蒸れなどが生じやす
い。
【0023】次に、本発明の透湿防水布帛を製造する方
法の一例として、もう一つの本発明である透湿防水布帛
を製造する方法について、以下に述べる。本発明の透湿
防水布帛は、PEEAおよびPEEBを溶解可能な溶剤
で溶解した溶液を、基布表面上にコーティングした後、
乾式法もしくは湿式法により溶剤を除去することで得ら
れる。
【0024】PEEAおよびPEEBを溶解可能な溶剤
としては、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3
−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレ
ンの1種もしくは2種以上の有機溶剤が挙げられるが、
沸点が低く、毒性が少ないことから1,3−ジオキソラ
ンが好ましく、特に有機溶剤の重量を基準として、80
重量%以上が1,3−ジオキソランであるものが好まし
い。なお、PEEAまたはPEEBを、重量を基準とし
て該溶剤に2〜30重量%溶解させることが好ましく、
特に40〜65℃の温度で5〜20重量%溶解させるこ
とが好ましい。
【0025】布帛表面にコーティングする方法として
は、任意のコーティング法、例えばナイフコーター等を
用いたコーティング法が採用され、まず布帛上にPEE
Aのコート層を作成し、次にPEEBのコート層を作成
することにより、高い透湿性と耐水圧を有する均一なコ
ート層が得られる。
【0026】コートする際に、PEEBを直接コーティ
ングした場合には、十分な皮膜形成性がないため、PE
EB自体が基布内部に過剰に浸透しやすい。そこで、皮
膜形成性の優れたPEEAを第1段目のコート層とし
て、基布の表面に直接コートした後、該PEEAコート
層のさらに上に透湿性と耐洗濯性の優れたPEEBを第
2段目のコート層としてコートすることで、コートする
際のPEEの基布内部への浸透を抑制し、少ないコート
量で厚く均一なコート層を形成する。すなわち、基布表
面にPEEAからなる厚みの均一なコート層をまず形成
することで、皮膜形成性の劣るPEEBでも均一なコー
ト層が形成されるのである。なお、ここでいう“皮膜形
成性の優れた”とは、基布とPEEとの界面の接着力確
保に必要なPEEの浸透を除く、すなわち基布とPEE
との剥離が問題にならない範囲で、過剰に基布内部に浸
透するPEEの量が極めて少ないことを意味する。
【0027】PEEAのコート量については、乾燥後の
重量目付で0.5〜20g/m2の範囲が好ましく、特
に1〜10g/m2の範囲が好ましい。PEEAの乾燥
目付が0.5g/m2未満であると均一な薄膜を形成し
難く、したがって、PEEBも不均一になり易いので耐
水圧が向上し難い。他方、乾燥目付が20g/m2を越
えると、十分な透湿性が得にくい。
【0028】またPEEBのコート量については、乾燥
後の重量目付で5〜30g/m2の範囲が好ましく、特
に10〜20g/m2の範囲が好ましい。PEEBの乾
燥目付が5g/m2未満であると十分な耐水圧が得にく
く、他方、乾燥目付が30g/m2を越えると、得られ
た透湿防水布帛の風合いが硬くなり易く、また十分な透
湿性も得難くなる。
【0029】なお、さらに付け加えれば、PEEAとP
EEBとを併せた全コート層中に占めるPEEAのコー
ト層の割合は、重量を基準として、5〜70重量%、好
ましくは10〜40重量%の範囲であり、PEEAとP
EEBとを併せた全コート層の厚みの合計は、5〜50
μm、好ましくは10〜30μmの範囲であることも必
要である。
【0030】1,3−ジオキソラン等の溶剤の除去つい
ては、70〜170℃、好ましくは70〜150℃での
乾熱下で溶剤を除去する乾式法、PEEが不溶で、かつ
溶剤が可溶な溶液、例えば温水等で1,3−ジオキソラ
ン等の溶剤を抽出した後、乾燥を行う湿式法などを採用
すればよい。
【0031】さらに、本発明の透湿防水布帛の耐水圧を
より向上させるには、本発明の透湿防水布帛にさらに撥
水処理を施すことが好ましい。撥水処理をする時期は、
PEEAおよびPEEBをコーティングする前後何れで
もよいが、PEEAをコーティングする際に、PEEA
を溶剤に溶解した溶液の布帛内部への浸透をさらに抑制
できることから、PEEAおよびPEEBをコーティン
グする前に予め撥水処理を施した布帛を使用するのが特
に好ましい。
【0032】このような撥水処理剤としては、パラフィ
ン系撥水剤、ポリシロキサン系撥水処理剤およびフッ素
系撥水処理剤など従来任意のものが採用でき、その処理
方法も、パディング法およびスプレー法等、従来任意の
方法で行えばよい。
【0033】このようにして得られた本発明の透湿防水
布帛は、均一にPEEが被覆されており、水による洗濯
後にも高い耐水圧と透湿性とを有する。さらに、本発明
の透湿防水布帛のPEEBを構成するAG中に占めるエ
チレングリコールの割合を30モル%以上とした場合に
は、前述の高い耐水圧と透湿性に加えて、高い耐摩耗性
をも有する。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明する
が、本発明はこれにより制限されるものではない。実施
例において、各物性値の測定は下記の方法により行い、
また、実施例で使用したPEEは、下記の方法により作
製した。なお、実施例中の「部」は、「重量部」を表わ
す。
【0035】(1)PEEの固有粘度(IV) フェノールとテトラクロロエタンとの混合溶剤(重量比
=6:4)を用い、35℃の温度条件下で固有粘度(I
V)を測定した。
【0036】(2)融点 示差走査型熱量計(TA instrument製 D
SC29290)を用いて、窒素気流中10℃/分の昇
温速度で測定した。
【0037】(3)エチレングリコール/テトラメチレ
ングリコール含有率 90MHz FT−NMR(日立製作所製 R190
0)を用いて定量した。
【0038】(4)透湿度試験 JIS L−1099法のA−1法(塩化カルシウム
法)に準拠して行い、24時間当たりに換算して、単位
g/m2・24hであらわした。
【0039】(5)耐水圧試験 JIS L−1092法のB法(高水圧法)中の静水圧
法に準拠して行った。
【0040】(6)洗濯10回後の耐水圧(L10耐水
圧) JIS L 0217の付表1番号103に規定されて
いる洗濯操作を1サイクル(1回)とし、これに従って
10サイクル(10回)の洗濯(L10)を繰返し行
い、その後(5)の耐水圧試験を行った。
【0041】(7)摩擦試験 摩擦試験機II形(JIS L−0849法)の摩擦子の
先端に乾燥状態の摩擦用白綿布をかぶせ、試験片上の1
0cmの間を毎分30回の往復の速度で、100回往復
摩擦を繰り返す。
【0042】試験後に樹脂層に破壊が見られなかったら
耐摩耗性が「○」、実用上問題ない程度で若干樹脂層に
破壊が見られたら耐摩耗性が「△」、実用上問題となる
ような破壊が樹脂層に見られたら耐摩耗性が「×」とす
る。なお、ここでいう実用上問題となる樹脂層の破壊と
は、摩擦試験後に耐水圧が50%以下に低下するものを
意味し、樹脂層に破壊が見られないとは、摩擦試験後に
耐水圧が90%以上であるものを意味する。
【0043】(8)面積膨潤率 PEEからなる、タテ10cm×ヨコ10cm×厚さ1
5μmの大きさのフィルムを、40℃の水に30分間浸
漬処理し、以下の式により面積膨潤率を算出した。 膨潤率(%)=(浸漬後面積/浸漬前面積−1)×10
【0044】(9)参考例1(PEEB用PEEの作
製) テレフタル酸ジメチル(DMT)194部、エチレング
リコール(EG)43.3部、テトラメチレングリコー
ル(TMG)72部、ポリエチレングリコール(PE
G)(平均分子量4000)124部、及び触媒として
テトラブチルチタネート0.391部を蒸留装置を備え
た反応容器に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下、
220℃で反応缶中に生成するメタノールを系外に除去
しながら210分間エステル交換させた。エステル交換
反応終了後、このエステル交換反応物を撹袢装置、窒素
導入口、減圧口及び蒸留装置を備えた240℃に加熱さ
れた反応容器に移し、反応混合物に熱安定剤としてスミ
ライザーGS(住友化学工業(株)製)を0.31部添加
し窒素置換した後、常圧で約10分、1995〜266
0Pa(15〜20mmHg)で約30分、更に13.
3Pa(0.1mmHg)で255℃まで昇温し重縮合
反応を行ない、所定の溶融粘度に到達した後、酸化防止
剤としてスミライザーGA−80(住友化学工業(株)
製)を0.62部添加して反応終了とし、常法によりチ
ップ化した。得られたPEEBの固有粘度(IV)は
1.163、融点は176℃、EG/TMGのモル比は
33/67であった。
【0045】また、PEEを構成するPAの一部をポリ
エチレングリコール(PEG)からポリテトラメチレン
グリコール(PTMG)(平均分子量2000)に表1
のように置き換えた以外は、前記方法と同様にして、P
EEを作成し、それぞれのPEEを5部、60℃に加熱
された1,3−ジオキソラン95部に完全に溶解させた
後、ガラス板上にキャストし、150℃の乾熱下で10
分間乾燥および熱処理を行いPEEからなるフィルムを
作製した。得られたフィルムの性能を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】(10)参考例2(PEEA用PEEの作
製) テレフタル酸ジメチル(DMT)210部、イソフタル
酸(IA)63.6部、テトラメチレングリコール(T
MG)193.3部及びポリテトラメチレングリコール
(PTMG)199部を反応容器中に仕込んで、エステ
ル交換反応を行いモノマーを得た。その後昇温減圧しつ
つ重縮合反応を行ってPEEを得た。なお、イソフタル
酸はスラリー状のものを、PTMGは数平均分子量20
00のものを用いた。このPEEの固有粘度(IV)は
1.0で、融点は170℃であった。
【0048】[実施例1〜4、比較例1〜4]ポリエス
テル布帛に撥水処理剤(フッ素系撥水処理剤LS−31
7、明成化学株式会社製)が基布重量に対して1.0w
t%となるように処理した、耐水圧が5.88kPa
(600mmH2O)で透湿度が9000g/m2・24
hの基布を準備した。
【0049】そして、前記参考例2により得られたPE
E(PEEA)10部を、60℃に加熱された1,3−
ジオキソラン90部に完全に溶解させ、ナイフコーター
により、該基布上に、乾燥後の目付が5g/m2になる
ようにクリアランスを調整してコートした後、130℃
の乾熱下で1分間熱処理を行い、第1段目のコート層を
形成した。続いて、前記参考例1により得られたPEE
B7部を、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン9
3部に完全に溶解させ、乾燥後の目付が15g/m2
なるようにコーティングした後、150℃乾熱下で3分
間熱処処理を行い、第2段目のコート層を形成した。
【0050】それぞれの実施例および比較例に使用した
PEEBにおける、重量を基準としたPEGの含有量
は、表2に示した。得られた透湿防水布帛の、透湿性、
耐水圧性および洗濯10回後の耐水圧の性能を表2に併
せて示した。
【0051】
【表2】
【0052】[実施例5および比較例5]第1段目のP
EEAコート層を構成する参考例2のPEEに含まれる
PAG中のPEGとPTMGとの重量比を、表3に示す
ように変更した以外は、実施例1と同様にして透湿防水
布帛を作成した。得られた透湿防水布帛の性能を表3に
示す。
【0053】[比較例6]第1段目のPEEAコート層
を形成しなかった以外は実施例1と同様にして透湿防水
布帛を作成した。得られた透湿防水布帛の性能を表3に
示す。
【0054】
【表3】
【0055】[実施例6および比較例7、8]参考例1
のPEEに含まれるAG中のエチレングリコール(E
G)とテトラメチレングリコール(TMG)とのモル比
を表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にし
て、透湿防水布帛を作製した。得られた透湿防水布帛の
性能を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
【発明の効果】本発明の透湿防水布帛は、ポリエーテル
−エステル系エラストマーのみが基布に積層されている
ため、廃棄時に焼却処理することが容易である。また、
柔軟でかつ十分な透湿性を有しながらも、水による洗濯
後も高度の耐水圧を有するので、家庭での洗濯が可能な
優れた透湿防水布帛である。また、本発明の製造方法に
よれば、あらかじめ皮膜形成性の優れたPEEAにより
厚さの均一なコート層を形成した後、透湿性の優れたP
EEBをコーティングするため、皮膜形成性の劣るPE
EBでも均一に布帛表面を被覆することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2000−119970(JP,A) 特開 平11−107170(JP,A) 特開2000−96449(JP,A) 特開2000−96450(JP,A) 特開 平6−316872(JP,A) 特開2000−290878(JP,A) 特開 平2−139233(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 15/00 - 15/715 B32B 1/00 - 35/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維材料からなる基布に、ポリアルキレ
    ングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残
    基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるポ
    リエーテル−エステル系エラストマー(PEE)が積層
    された透湿防水布帛において、 PEEが2種のPEE(PEEAとPEEB)からな
    り、基布へのそれらPEEの積層状態が、基布の表面に
    直接PEEAからなるコート層を配置し、該PEEAコ
    ート層のさらに上にPEEBからなるコート層を配置し
    た状態であって、かつ、PEEAとPEEBとが下記
    (a)〜(d)の要件を同時に具備することを特徴とす
    る透湿防水布帛。 (a)PEEAを構成するPAGが、ポリテトラメチレ
    ングリコール残基を、PAGの重量を基準として、少な
    くとも70重量%含んでいること; (b)PEEBが、ポリエチレングリコール残基を、P
    EEBの重量を基準として、5〜25重量%含んでいる
    こと; (c)PEEAとPEEBとのコート層の厚みの合計
    が、5〜50μmの範囲にあること;および (d)PEEAとPEEBとを併せた全コート層中に占
    めるPEEAのコート層の割合が、重量を基準として、
    5〜70重量%の範囲にあること。
  2. 【請求項2】 PEEAおよびPEEBに含まれるDC
    が、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、ナフタレン
    −2,6−ジカルボン酸残基からなる群より選ばれた少
    なくとも1種である請求項1記載の透湿防水布帛。
  3. 【請求項3】 PEEAおよびPEEBに含まれるPA
    Gの数平均分子量がそれぞれ600〜8000の範囲に
    ある請求項1記載の透湿防水布帛。
  4. 【請求項4】 PEEAおよびPEEBに含まれるPA
    Gと、AGおよびDCとの重量比(PAG/(AG+D
    C))が、それぞれ30/70〜70/30の範囲にあ
    る請求項1記載の透湿防水布帛。
  5. 【請求項5】 PEEAおよびPEEBの固有粘度(I
    V)が、0.8〜1.4の範囲である請求項1記載の透
    湿防水布帛。
  6. 【請求項6】 PEEBに含まれるAGが、エチレング
    リコール残基とテトラメチレングリコール残基とを含ん
    でいて、かつ、モル数を基準として、前者を少なくとも
    30モル%含んでいる請求項1記載の透湿防水布帛。
  7. 【請求項7】 PEEBから形成されたフィルムの40
    ℃水、30分間処理による面積膨潤率が、5%未満であ
    る請求項1〜6のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  8. 【請求項8】 PEEAに含まれるAGが、モル数を基
    準として、テトラメチレングリコール残基を少なくとも
    80モル%含んでいる請求項1記載の透湿防水布帛。
  9. 【請求項9】 透湿防水布帛の初期の耐水圧が50kP
    a以上であり、かつ洗濯10回後の耐水圧が、初期の耐
    水圧の50%以上である請求項1〜8のいずれか1項に
    記載の透湿防水布帛。
  10. 【請求項10】 透湿防水布帛の透湿度が3000g/
    2・24h以上である請求項1〜9のいずれか1項に
    記載の透湿防水布帛。
  11. 【請求項11】 有機溶剤に、AG、DC、およびポリ
    テトラメチレングリコール残基を重量基準で少なくとも
    70重量%含んだPAGから構成されたポリエーテル−
    エステル系エラストマー(PEEA)を、重量を基準と
    して、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該溶液
    を繊維材料からなる基布の表面に、乾燥後のPEEA目
    付が0.5〜10g/m2の量となるようにコートした
    後、該溶剤を除去して基布の表面に直接PEEAコート
    層を形成する工程と、 有機溶剤に、PAG、AGおよびDCからなるポリエー
    テル−エステル系エラストマー(PEEB)であり、か
    つPAGの一成分であるポリエチレングリコール残基を
    重量基準で5〜25重量%含んだPEEBを、重量を基
    準として、2〜30重量%溶解させた溶液を準備し、該
    溶液をPEEAコート層の基布との積層界面とは反対側
    の表面に乾燥後のPEEB目付が5〜30g/m2の量
    となるようにコートした後、該溶剤を除去してPEEA
    コート層のさらに上にPEEBコート層を形成する工程
    とを含むことを特徴とする透湿防水布帛の製造方法。
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