JP4116295B2 - 透湿防水布帛およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、布帛表面に熱可塑性ポリエーテル−エステル系エラストマーからなる層が積層された、透湿防水布帛に関する。さらに詳しくは、透湿性に優れ、かつ洗濯処理後においても耐水圧性が優れた透湿防水布帛、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透湿防水布帛は、例えば衣料用に用いる場合、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出する機能(透湿性)と、雨が衣服内に入ることを防ぐ機能(防水性)との両立が必要とされる。そして、これらの機能を両立させる手段としては繊維からなる基布の片側面に、ポリテトラフルオロエチレンまたはポリウレタン系エラストマーからなるフィルムをラミネートする方法、または、ポリウレタン系エラストマーをコーティングする方法が採用されてきた。しかしながら、これらの防水布帛は、廃棄時などに燃焼させた場合、人体に対して毒性を持ったガスが発生する場合があるなどの環境問題を有していた。そのため、基布にラミネートまたはコーティングするポリマー材料として、透湿性と防水性とを両立しながら、環境への問題がないものが切望されてきた。
【0003】
そして、ポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)は、優れた耐熱性および機械特性を有し、そのフィルムは適度な弾性を有することから風合い面でも優れており、しかも、燃焼時に有毒なガスが発生しないことから、前記のポリテトラフルオロエチレンおよびポリウレタン系エラストマーの代替品として有望視されている。
【0004】
このようなPEEを用いた透湿防水布帛としては、米国特許第4493870号公報には、PEEをフィルム状にしたものを、基布の表面にラミネートしたものが開示されている。しかし、基布とPEEフィルムとを固定する接着剤として一般的に用いられるウレタン系樹脂を使用した場合には、焼却時に少量ながら有毒ガスが発生する場合があるため、基布とPEEフィルムとをどう一体化するかという問題があった。その問題を解決する方法として、特開2000−290878号公報には皮膜形成性の異なる2種のPEEのみを基布の表面に直接コートする方法が開示されている。しかしながら、いずれの方法によっても初期の透湿性および防水性は優れているものの、一般家庭で行われる水による洗濯を行った場合にはフィルムが破損しやすく、防水性が大幅に低下するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を鑑みなされたもので、その目的は、ポリエーテル−エステル系エラストマーのみが基布に積層された、柔軟でかつ十分な透湿性を有しながらも、水による洗濯後も高度の耐水圧を有する透湿防水布帛およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の透湿防水布帛は、繊維材料からなる基布に、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)が積層された透湿防水布帛において、
PEEが2種のPEE(PEEAとPEEB)からなり、基布へのそれらPEEの積層方法が、PEEAからなるフィルム層をPEEBからなるバインダーを介して基布上に接着させた透湿防水布帛であって、かつPEEAとPEEBとが下記(a)〜(d)の要件を同時に具備することを特徴とする。
(a)PEEAが、ポリエチレングリコール残基をPEEAの重量を基準として5〜25%含んでいること。
(b)PEEAのフィルム層の厚みが、5〜50μmの範囲にあること。
(c)PEEBの融点がPEEAの融点より20℃以上低いこと;および
(d)PEEBの目付が2〜20g/m2の範囲であること。
【0007】
また、一つの本発明の透湿防水布帛の製造方法は、PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)であり、かつPAGの一成分であるポリエチレングリコール残基を重量基準で5〜25重量%含んだPEEAからなる厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成し、
有機溶剤に、PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を溶解させた溶液を、該PEEAフィルム上または繊維材料からなる基布上に、乾燥後のPEEB固形分目付が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、
PEEB固形分が該PEEAフィルムと該基材の間となるように、該PEEAフィルムと該基布を張り合わせ、熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度で熱接着させることを特徴とする。さらに該PEEB溶液の塗布面が該PEEAフィルム上であることが好ましい。
【0008】
また、もう一つの本発明の透湿防水布帛の製造方法は、PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)であり、かつPAGの一成分であるポリエチレングリコール残基を重量基準で5〜25重量%含んだPEEAからなる厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成し、
PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を溶融状態で、繊維材料からなる基布上に付着量が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、
該基布のPEEB付着面に上記PEEAフィルムを貼り合わせることを特徴とする。
【0009】
さらに、いずれの本発明の製造方法においても、PEEAフィルムを溶融法によって作成することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透湿防水布帛は、環境に対する問題が少ないポリエーテル−ポリエステル系エラストマー(PEE)のみを繊維からなる基布の表面に積層したものであり、従来の積層品ではなし得なかった、初期および水による洗濯後の両方において、高度の透湿性と耐水圧とを兼備させたものである。具体的には、繊維材料からなる基布上に、透湿性と耐洗濯性とに優れたPEE(PEEA)をフィルム層として、接着性の優れたPEE(PEEB)をバインダーとして接着することで、耐洗濯後の透湿性、耐水圧をともに満足させたものである。なお、本発明でいうPEEとは、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるものを意味する。
【0011】
以下、本発明の透湿防水布帛のコート層を形成するPEEAおよびPEEBの要件について述べる。
本発明の透湿防水布帛におけるPEEAは、PAG、AGおよびDCからなるPEEであって、PAGの一成分としてのポリエチレングリコールを、重量を基準として、PEEA全重量に対して5〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%含んだものである。PEEA中のポリエチレングリコールが5重量%未満であると、十分な透湿性を得ることができない。また、25重量%より大きい場合には、水による洗濯時にPEEAフィルム層が破損するために洗濯後の耐水圧が低下する。また、PEEAを構成するPAGに占めるポリエチレングリコールの割合としては、重量基準で20〜60重量%が好ましい。
【0012】
また、PEEAが透湿防水布帛の最外層である場合は、耐磨耗性の高いPEEAが好ましい。このようなPEEAとしては、PEEAを構成するAGが、エチレングリコールとテトラメチレングリコールとの混合物であって、該AG中に占めるエチレングリコールの割合が30モル%以上のものである。これは、該AG中に占めるエチレングリコールを少なくとも30モル%共存させることで十分な耐摩耗性を確保したのである。さらに好ましいAG中に占めるエチレングリコールとテトラメチレングリコールとのモル比は、35:65〜50:50の範囲である。
【0013】
PEEAの固有粘度(IV)については、十分な皮膜形成性およびフィルム層の皮膜強度を維持するために、0.8〜1.4の範囲にあるものが好ましい。またPEEAの融点については150〜200℃であることが、作業性の面から好ましい。また、加工後のフィルム厚さを一定に保つためには、PEEB塗布時に用いる溶剤、例えば1,3−ジオキソラン、による塗付加工温度での溶解性が低いことが好ましい。
【0014】
本発明の透湿防水布帛におけるPEEBは、PEEAと同様に、PAG、AGおよびDCからなるPEEである。また、重量を基準として、該PAGの50重量%以上が、ポリテトラメチレングリコールで占められたものが好ましく、また、PEEBの透湿性を向上させるためには、PAGの残りの成分の一部をポリエチレングリコールとしても良い。
【0015】
また、本発明のPEEBはもともとPEEAと組成が近似していることから親和性が高く、PEEAとPEEBとの界面の結合力は高いが、より接着力を高めるためには、本発明ではPEEBの融点はPEEAの融点よりも20℃以上低いことが必要である。それによって、PEEBバインダーを用いてPEEAフィルムと基材を接着させた後、さらに熱カレンダーを行いPEEBを溶融させ接着性をより強固にすることができる。PEEBを効率良く溶融させる為にはPEEBの融点の10℃以上の加熱が必要であり、フィルム層のPEEAが同時に溶融しないようにPEEBの融点はPEEAの融点より20℃以上低い必要がある。さらには両者の融点に30〜100℃の差が有ることが好ましい。20℃未満であると、PEEBを溶解させた際にPEEAフィルム層も溶解し、高い耐水圧が得られない。PEEBの融点としては50〜150℃、さらには70〜130℃であることが作業性の点から好ましい。
【0016】
PEEBの柔軟性を高めるために、PEEB中のAGにおいて、テトラメチレングリコールの占める割合を上げることも好ましい。好ましいAG中に占めるテトラメチレングリコールの割合は、80〜100モル%である。
【0017】
次にPEEAおよびPEEBに共通の要件について以下に述べる。
PEEAおよびPEEBを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種が挙げられ、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体である。もちろん、このジカルボン酸の一部(通常、全ジカルボン酸成分を基準として30モル%以下)を、他のジカルボン酸やオキシカルボン酸成分に置換えてもよい。
【0018】
PEEAおよびPEEBを構成するPAGとしては、前述の要件を満足していれば、ポリエチレングリコール残基、ポリ−1,2−プロピレングリコール残基、ポリ−1,3−プロピレングリコール残基、ポリテトラメチレングリコール残基、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体の残基、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体の残基などが一部配されていてもよい。また、該PAGグリコールの数平均分子量については、600〜8000、特に1000〜5000の範囲が好ましい。数平均分子量が600未満であると、十分な機械的物性が得難く、8000を超えると、相分離が発生し易いことからPEEの調整が困難になる。
【0019】
PEEAおよびPEEBを構成するAGとしては、前述の要件を満足していれば、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、トリメチレングリコール残基またはテトラメチレングリコール残基などが一部配されていてもよい。
【0020】
PEEAおよびPEEBを構成するPAGとAGおよびDCとの重量比(PAG/(AG+DC))は、25/75〜75/25、特に40/60〜60/40の範囲であることが好ましい。(AG+DC)が25重量%未満では、得られたPEEの融点が低くなり易く、他方75重量%を越えると、十分な柔軟性が発現し難い。
【0021】
なお、PEEAおよびPEEBの中には、各種安定剤、紫外線吸収剤等が必要に応じて配合されていてもよい。
【0022】
さらに本発明に用いられるPEEAは、該PEEAから形成された厚さ15μmのフィルムを水温40℃にて30分間処理した後の面積膨潤率が、5%未満であることが好ましい。面積膨潤率が5%以上のフィルムの場合には、水による洗濯により耐水圧が低下する傾向にある。
【0023】
本発明で用いる基布は、特に限定はされず、任意のものを採用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系合成繊維、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド系合成繊維、ポリアクリロニトリル系合成繊維、ポリビニル系合成繊維、トリアセテート等の半合成繊維あるいはポリエチレンテレフタレート/木綿、ナイロン6/木綿等の混合繊維からなる織物、編物、不織布等が挙げられ、これらの表面にPEEを積層すれば良い。なお、基布の表面とは、基布の片側面または両側面の一部または全部である。
【0024】
PEEAのフィルム層の厚みは、十分な耐水圧を確保することから5μm以上必要であり、他方得られた透湿防水布帛の風合いを損なわないためには、50μm以下である必要があり、さらには10〜20μmが好ましい。またその厚さバラツキが小さいほど性能が安定するため、厚さ変動は平均厚さの±50%以内であることが、さらには±30%以内であることが好ましい。PEEBのバインダーからなる層の厚さは接着力を満足させる限度において薄いことが好ましく、PEEAとPEEBからなる層の厚さの合計が50μmを超えないことが好ましい。このような被覆層の厚みが限られた状況下においては、PEEAのようなコート量当たりの透湿性が高く、耐洗濯性に優れたものが必要とされる。なお、ここでいう被覆層の厚みとは、基布表面に形成された被覆層の厚みであり、基布内部に一部のみが浸透したPEEBの部分は除外し、層状となった部分のみである。
【0025】
PEEBの塗布量については、乾燥後の固形分目付で2〜20g/m2の範囲が好ましく、特に5〜10g/m2の範囲が好ましい。PEEBの固形分塗布量が2g/m2未満では満足する接着性が得られず、洗濯によってフィルム層が破損しやすく洗濯後の耐水圧が向上し難い。他方、固形分塗布量が20g/m2を越えると、十分な透湿性が得にくい。また、透湿性を確保するためには、被覆層全体に占めるPEEBの塗付量は低い方が良く、乾燥後の重量比で高々70%まで、好ましくは5〜40%である。さらに風合を向上させるために、PEEBを全面に塗布せず、ドット、メッシュ、斜線などのグラビア柄で塗布することが好ましい。
【0026】
本発明の透湿防水布帛のループ硬さは8N以下、好ましくは5N以下、さらには4N以下であることが好ましい。ここで、布帛の風合の柔らかさを示すループ硬さは、JIS L 1096 C法のループ圧縮法によって測定したものである。ところで、本発明の透湿防水布帛は、PEEAからなるフィルム層の上、すなわち外表面側に、PEEAとポリマー組成が異なる他のポリマー材料からなる最外表面被覆層も少量なら配置しても良い。なお、最外表面に配置するポリマー材料としては、例えば、透湿防水布帛に撥水性などの機能を付加できることから、フッ素系樹脂などの撥水樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。そして、これら最外表面の被覆層の全被覆層中に占める割合は、透湿性や柔軟性を確保する観点から低い方が好ましく、せいぜい20%までが好ましい。
【0027】
さらに本発明の透湿防水布帛は、初期の耐水圧が50kPa以上であることが好ましく、さらには50kPa以上、または500kPa以下であることが好ましい。また、洗濯10回後の耐水圧が、初期の耐水圧の50%以上、さらに好ましくは60%以上であることが好ましい。そしてもっとも好ましくは、洗濯10回後の耐水圧も、50kPa以上であることである。また、本発明の透湿防水布帛は、透湿度が3000g/m2・24h以上であることが好ましく、または10000g/m2・24h以下であることが好ましい。これらの特性値が下限未満の場合、蒸れなどが生じやすい。また、本発明の透湿防水布帛は、そのPEEAフィルムと繊維質基材との剥離強力が6.0N/25mm以上であることが好ましく、さらには10N/25mm以上であることが好ましい。
【0028】
次に、本発明の透湿防水布帛を製造する方法の例として、別の本発明である透湿防水布帛を製造する方法について、以下に述べる。
【0029】
一つの本発明の透湿防水布帛の製造方法としては、PEEAからなる厚さ5〜50μmのフィルムを作成し、有機溶剤にPEEBを溶解させた溶液を、該PEEAフィルム上または繊維材料からなる基布上に、乾燥後のPEEB固形分目付が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、PEEB固形分が該PEEAフィルムと該基材の間となるように、該PEEAフィルムと該基布を張り合わせ、熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度で熱接着させる方法である。
【0030】
PEEAのフィルムを作成する方法としては従来公知のいずれの方法でもよく、例えば離型紙上に溶融法または溶剤キャスト法によって製膜されるが、耐洗濯耐久性に優れるのは、PEEAフィルムを溶融法によって作成する製造方法である。
【0031】
一方、溶剤キャスト法は工程中に高温を必要としないため生産性に優れる。この溶剤キャスト法を採用する場合、PEEAが溶解可能な溶剤としてはジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンの1種もしくは2種以上の有機溶剤が挙げられるが、沸点が低く、毒性が少ないことから1,3−ジオキソランが好ましく、特に使用する有機溶剤の重量を基準として、80%以上が1,3−ジオキソランである溶剤が好ましい。PEEAを溶剤キャスト法にて塗布する場合には、該溶剤の重量を基準としてPEEAを2〜30重量%溶解させるのが、特に50〜65℃の温度で5〜20重量%溶解させるのが作業性の面などから好ましい。このように常温で溶解しにくいPEEAと溶剤の組み合せを選択した場合には、バインダー用のPEEB溶液に1,3−ジオキソラン等のPEEAの溶剤が含まれていたとしても常温ではフィルム層を溶解しにくいため、塗付加工時のフィルム層の厚さの変動を抑えることができる。1,3−ジオキソラン等の溶剤の除去ついては、溶剤の沸点以上PEEAの融点未満の温度、好ましくは100〜160℃での乾熱下で溶剤を除去する乾式法を採用することが好ましい。
【0032】
バインダーとなるPEEB溶解物を作製するために用いるPEEBを溶解可能な溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンの1種もしくは2種以上の有機溶剤が挙げられるが、沸点が低く、毒性が少ないことから1,3−ジオキソランが好ましく、特に使用する有機溶剤の重量を基準として、80重量%以上が1,3−ジオキソランである溶剤が好ましい。なお、PEEBを、重量を基準として該溶剤に2〜30重量%溶解させることが好ましく、特に40〜65℃の温度で5〜20重量%溶解させることが好ましい。1,3−ジオキソランのように、常温ではPEEAを溶解しにくい溶剤を用いることにより、バインダー用のPEEB溶解物によるフィルム層の厚さ変動を抑えることができる。
【0033】
該PEEAフィルムと繊維材料からなる基布を張り合わせる前に上記PEEB溶解物を塗布する方法としては、任意のコーティング法、例えばナイフコーターおよびグラビアコート等が採用される。PEEBをバインダーとする場合、PEEB溶液の塗布面はPEEAフィルム上でも基布上でも構わないが、基布上ではPEEB溶解物の染込みが大きく、軟らかい風合いが得られにくい傾向にあるので、風合を重視する場合には該PEEB溶液の塗布面が該PEEAフィルム上であることがより好ましい。逆に接着性を重視する場合には、PEEBを基布上に塗布することが好ましい。
【0034】
このようにして得られたPEEAフィルムあるいは基布にPEEBが付着したものを張り合わせ、PEEAフィルム、PEEB、繊維材料からなる基布との積層体を作成する。このとき、PEEB溶解物をWetの状態のまま基材に張り合わせても良いし、70〜120℃で30秒〜5分程度乾燥させてから張り合わせても良い。その後熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度にて熱接着させる。熱カレンダー温度は50〜150℃、さらには100〜130℃が好ましい。
【0035】
もう一つの別の製造方法としては、PEEAからなる厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成し、PEEBを溶融状態で、繊維材料からなる基布上に付着量が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、該基布のPEEB付着面に上記PEEAフィルムを貼り合わせることを特徴とする。
【0036】
PEEAのフィルムを作成する方法としては従来公知のいずれの方法でもよく、例えば上述のように離型紙上に溶融法または溶剤キャスト法によって製膜される。溶剤を使用しない溶融法は、作業環境及び排ガスの問題が少なく、好ましい方法であり、例えばT−ダイ法などによって、厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成する。
【0037】
次に樹脂メルターなどを用いてPEEBを加熱して溶融状態とし、繊維材料からなる基布上に付着量が2〜20g/m2の範囲となるように塗布する。このときのPEEBの温度としては80〜140℃が好ましく、さらには90〜130℃が好ましい。塗布する方法としては、従来公知の方法を用いれば良く、任意のコーティング法、例えばナイフコーターおよびグラビアコート等が採用される。このときより透湿性を向上させるためには、PEEBを全面に塗布せず、ドット、メッシュ、斜線などのグラビア柄で塗布することが好ましい。PEEBの付着面積としては50%以下が好ましく、さらには5〜20%が最も好ましい。その後、該基布のPEEB付着面に上記PEEAフィルムを貼り合わせる。PEEB溶融物は基布上に塗布することによって高いアンカー効果が得られ、高い接着力を発現する。また、有機溶剤に溶解した場合と異なり、濃度が100%で粘度を高粘度に保ち易いため、基布への染込みも制御でき、軟らかい風合いを得ることができる。フィルム上に塗布した場合には、フィルムの熱に対する寸法安定性が悪いため、加工性に問題が生じる。
【0038】
このようにして得られた基布上にPEEBが付着したものを、PEEBの付着面とフィルム面とを貼り合わせる。このとき、PEEBを溶融状態のままフィルムに貼り合わせても良いし、冷却後熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度にて熱接着させてもよい。もちろん、PEEBを溶融状態のままフィルムに貼り合わせ後、熱カレンダーすることにより、より強力な接着力が得ることができる。熱カレンダー温度は50〜150℃、さらには100〜130℃が好ましく、圧力は100〜1000N/cm、好ましくは200〜500N/cmが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の透湿防水布帛の耐水圧をより向上させるには、PEEAフィルムは溶融法により作成することが最も好ましい。エラストマーを溶媒に溶解して得た溶剤キャスト法によるフィルムでは、生産性こそ優れるものの薄層フィルム作成時に気泡の混入を起しやすく、ピンホール孔が生じる傾向にあるからである。特に洗濯をおこなった場合、溶剤キャスト法によるものでは、気泡混入部分のフィルム厚が薄いため、洗濯によりピンホール孔が発生しやすい。すなわち、洗濯10回後の耐水圧の測定時に、欠点が生じやすいのである。それに対して溶融法によって作成されたフィルムでは、気泡が存在せずピンホール欠点が生じにくい。薄層フィルムにピンホール欠点が生じている場合、耐水圧測定時に数箇所から水滴が流れ出ることで判断できる。ちなみにピンホール欠点個所が無い場合には、布帛とフィルムとの接着が破壊された部分が風船状になり、その部分が破れることによって水が流れ出る。
【0040】
さらに本発明の透湿防水布帛に撥水処理を施すことが好ましい。撥水処理をする時期は、PEE層を接着する前後の何れでもよいが、熱キュアが必要とされる場合には、PEE層の接着前に行うことが好ましい。
【0041】
このような撥水処理剤としては、パラフィン系撥水剤、ポリシロキサン系撥水処理剤およびフッ素系撥水処理剤など従来公知のものが採用でき、その処理方法も、パディング法およびスプレー法等、従来公知の方法で行えばよい。
【0042】
このようにして得られた本発明の透湿防水布帛は、均一にPEEが被覆されており、水による洗濯後にも高い耐水圧と透湿性とを有する。さらに、本発明の透湿防水布帛のPEEAを構成するAG中に占めるエチレングリコールの割合を30モル%以上とした場合には、前述の高い耐水圧と透湿性に加えて、高い耐摩耗性をも有する。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれにより制限されるものではない。実施例において、各物性値の測定は下記の方法により行い、また、実施例で使用したPEEは、下記の方法により作製した。なお、実施例中の「部」は、「重量部」を表わす。
【0044】
(1)PEEの固有粘度(IV)
フェノールとテトラクロロエタンとの混合溶剤(重量比=6:4)を用い、35℃の温度条件下で固有粘度(IV)を測定した。
【0045】
(2)融点
示差走査型熱量計(TA instrument製 DSC29290)を用いて、窒素気流中10℃/分の昇温速度で測定した。
【0046】
(3)エチレングリコール/テトラメチレングリコール含有率
90MHz FT−NMR(日立製作所製 R1900)を用いて定量した。
【0047】
(4)透湿度
JIS L−1099法のA−1法(塩化カルシウム法)に準拠して行い、24時間当たりに換算して、単位g/m2・24hであらわした。
【0048】
(5)耐水圧
JIS L−1092法のB法(高水圧法)中の静水圧法に準拠して行った。ただし、透湿防水布帛の測定時には、布帛面から水圧をかけ、PEEフィルム面からの水漏れを測定した。このとき基本的には試験片の裏側に3か所から水が出たときの水圧を記録した。しかし、測定時に布帛とPEEフィルムが剥離し、1か所から大量に水が出たときには、そのことを注記し、その水圧を記録した。
また、PEEフィルム単独の耐水圧を測定する場合には、フィルムの水圧のかかる側の反対側に、撥水処理をしたポリエステル布帛(耐水圧5.88kPa)を重ね、同様に測定した。
【0049】
(6)洗濯10回後の耐水圧(L10後耐水圧)
JIS L 0217の付表1番号103に規定されている洗濯操作を1サイクル(1回)とし、これに従って10サイクル(10回)の洗濯(L10)を繰返し行い、その後(5)の耐水圧試験を行った。
【0050】
(7)面積膨潤率
PEEからなる、タテ10cm×ヨコ10cm×厚さ15μmの大きさのフィルムを、40℃の水に30分間浸漬処理し、以下の式により面積膨潤率を算出した。
膨潤率(%)=(浸漬後面積/浸漬前面積−1)×100
【0051】
(8)透湿防水布帛の剥離強度
JIS K−6301を参考にし、試験片(2.5cm×9cm)のフィルム面と同サイズの布粘着テープ(日東電工No.750)をマングルにて貼り合せ、1kPa/cm2条件のマングルにて圧着させた後、試験片と布粘着テープとを引張試験機の相互に向かい合ったチャック間(20mm)にセットし、50mm/minの引張り速度でチャック間の距離を広げることで基布と被覆層とを剥離させ、初期の剥離を除いた平均応力を読み取り、サンプルの幅25mm当たりの応力に換算したものを剥離強力とした。試験片の破壊無しに布粘着テープが剥がれたときは、「10>」と表記した。
【0052】
(9)フィルム強度、フィルム伸度
試験片(1cm幅×9cm長さ)のフィルムの上下2cmをチャックでつまみ、試験長5cmを引張速度50mm/分でテストし、フィルム強度とフィルム伸度を求めた。
【0053】
(10)風合い評価
熟練者5名により、製造した各サンプルに対して官能検査を行い、触感による相対的な比較を行った。なお、評価結果は、以下の通りとした。
○:柔軟な風合いを有し、かつ、屈曲時に樹脂層のすれる音がしないもの。
△:柔軟な風合いを有するが、屈曲時に樹脂層のすれる音がするもの。
×:ペーパーライクな風合いであるか、または屈曲時に樹脂層のすれる音がするもの。
【0054】
(11)ループ硬さ
JIS L1096 6.20.3 C法(ループ圧縮法)により、ループ硬さ(単位;N)を求めた。
【0055】
[参考例1](PEEA用PEEの作製)
テレフタル酸ジメチル(DMT)194部、エチレングリコール(EG)43.3部、テトラメチレングリコール(TMG)72部、ポリエチレングリコール(PEG)(平均分子量4000)124部、及び触媒としてテトラブチルチタネート0.391部を蒸留装置を備えた反応容器に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下、220℃で反応缶中に生成するメタノールを系外に除去しながら210分間エステル交換させた。エステル交換反応終了後、このエステル交換反応物を撹袢装置、窒素導入口、減圧口及び蒸留装置を備えた240℃に加熱された反応容器に移し、反応混合物に熱安定剤としてスミライザーGS(住友化学工業(株)製)を0.31部添加し窒素置換した後、常圧で約10分、1995〜2660Pa(15〜20mmHg)で約30分、更に13.3Pa(0.1mmHg)で255℃まで昇温し重縮合反応を行い、所定の溶融粘度に到達した後、酸化防止剤としてスミライザーGA−80(住友化学工業(株)製)を0.62部添加して反応終了とし、常法によりチップ化した。得られたPEEAの固有粘度(IV)は1.163、融点は176℃、EG/TMGのモル比は33/67であった。
【0056】
また、PEEを構成するPAGの一部をポリエチレングリコール(PEG)からポリテトラメチレングリコール(PTMG)(平均分子量2000)に表1のように置換えた以外は、前記方法と同様にして、PEEを作成した。
【0057】
それぞれのPEEを5部、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン95部に完全に溶解させた後、ガラス板上にキャストし、150℃の乾熱下で10分間乾燥および熱処理を行いPEEからなるフィルムを作製した。得られたフィルムの性能を表1に示す。(以下溶解フィルムという。)
【0058】
【表1】
Figure 0004116295
【0059】
さらに一部のPEEを220℃で溶融し、T−ダイ法により厚さ15μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの性能を表2に示す。(以下溶融フィルムという。)
【0060】
【表2】
Figure 0004116295
【0061】
また、PEG/全PEEが17%の時の溶解フィルムと溶融フィルムの性能を、表3に示す。
【0062】
【表3】
Figure 0004116295
【0063】
[参考例2](PEEB用PEEの作製)
イソフタル酸ジメチル(IMT)31.5部、テトラメチレングリコール(TMG)18.1部及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)32.7部を反応容器中に仕込んで、エステル交換反応を行いモノマーを得た。その後昇温減圧しつつ重縮合反応を行ってPEEを得た。なお、PTMGは数平均分子量1000のものを用いた。このPEEの融点は107℃であった。
【0064】
[参考例3](基布Aの準備)
ポリエステル布帛に撥水処理剤(フッ素系撥水処理剤LS−317、明成化学株式会社製)が基布重量に対して1.0wt%となるように処理を行った。この基布Aの耐水圧は5.88kPa(600mmH2O)で透湿度は9000g/m2・24hであった。
【0065】
[実施例1]
参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が50/50(PEG/全PEE重量比17%)のPEEAを10部、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン90部に完全に溶解させた後、離型紙上にキャストし、150℃の乾熱下で3分間熱処理を行い厚さ15μmのフィルムを作成した。次に参考例2により得られたPEEB25部を、1,3−ジオキソラン75部に完全に溶解させ、#32のグラビアコーターにより、上記PEEAフィルム上に乾燥後固形分が10g/m2となるように塗布し、80℃で溶剤の除去を行い、該PEEB塗布面と基布Aとを貼り合わせ、120℃の熱カレンダーにて200N/cmの線圧をかけ熱処理を行った。得られた布帛の性能を表4、表5、表7に示す。
【0066】
[実施例2、3および比較例1、2]
PEEBの塗布量を表4の通りに変更した以外は実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表4に示す。
【0067】
[実施例4、5および比較例3、4]
PEEAフィルムの厚みを表4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表4に併せて示す。
【0068】
[実施例6]
PEEBをPEEAフィルム面に塗布する変わりに、ポリエステル布帛に塗布し、該布帛のPEEB塗布面にPEEAフィルムを貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表4に併せて示す。
【0069】
【表4】
Figure 0004116295
【0070】
[比較例5〜7]
(融点155℃のバインダー用PEECの作製)
テレフタル酸ジメチル(DMT)210部、イソフタル酸(IA)63.6部、テトラメチレングリコール(TMG)193.3部およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)199部を反応容器中に仕込んで、エステル交換反応を行い、モノマーを得た。その後昇温減圧しつつ重縮合反応(239℃、225分)を行ってPEECを得た。なおPTMGは平均分子量2500のものを用いた。このPEECの融点は155℃であった。
【0071】
(布帛の作成)
バインダーとしてこのPEEC15部を用い、50℃の1,3−ジオキソラン85部に完全に溶解させ、グラビアコーターにより、上記PEEAフィルム上に乾燥後固形分が10g/m2となるように塗布したものを表5の熱カレンダー温度で処理すること以外は実施例1と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表5に示す。
【0072】
【表5】
Figure 0004116295
【0073】
[実施例7]
参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が50/50(PEG/全PEE重量比17%)のPEEAからなる厚さ15μmのフィルムをT−ダイ法により作製した。次に参考例2により得られたPEEBを樹脂メルター((株)平野テクシード製)により120℃で溶融し、20ドット(半径0.3mmの円が1インチ間に20ケ)のグラビアコーターで、基布A上に10g/m2となるように塗布し、上記PEEAフィルムと貼り合わせ、150℃の熱カレンダーにて200N/cmの線圧をかけ熱処理を行った。得られた布帛の性能を表6に併せて示す。
【0074】
[実施例8、9および比較例8、9]
PEEBの塗布量を表6の通りに変更した以外は実施例7と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表6に示す。
【0075】
[実施例10、11および比較例10、11]
PEEAフィルムの厚みを表6の通りに変更した以外は、実施例7と同様にして透湿防水布帛を作成した。布帛の性能を表6に併せて示す。
【0076】
【表6】
Figure 0004116295
【0077】
[実施例12]
参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が50/50(PEG/全PEE重量比17%)のPEEAからなる厚さ15μmのフィルムをT−ダイ法により作製した。次に参考例2により得られたPEEB25部を、50℃の1,3−ジオキソラン75部に完全に溶解させ、20ドット(半径0.3mmの円が1インチ間に20ケ)のグラビアコーターで、上記PEEAフィルム上に乾燥後固形分が10g/m2となるように塗布し、80℃で溶剤の除去を行い、該PEEB塗布面と基布Aとを貼り合わせ、120℃の熱カレンダーにて200N/cmの線圧をかけ熱処理を行った。得られた布帛の性能を表7に示す。
【0078】
比較例12
PEG/PTMG重量比が50/50(PEG/全PEE重量比17%)のPEEAの替わりに、参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が100/0(PEG/全PEE重量比35%)のPEEAを用いた以外は、実施例10と同様に行った。得られた布帛の性能を表7に併せて示す。
【0079】
[比較例13
参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が100/0(PEG/全PEE重量比35%)のPEEAからなる厚さ15μmのフィルムをT−ダイ法により作製した。そのフィルムを基布A上に熱融着させた。
【0080】
バインダー層が無いために、剥離接着力が弱いものであった。得られた布帛の性能を表7に併せて示す。
【0081】
[比較例14
(融点172℃の比較用PEEDの作製)
テレフタル酸ジメチル(DMT)278部、イソフタル酸(IA)42部、テトラメチレングリコール(TMG)220部及びポリテトラメチレングリコール(PTMG)400部を反応容器中に仕込んで、エステル交換反応を行いモノマーを得た。その後昇温減圧しつつ重縮合反応(239℃、245分)を行ってPEEを得た。なお、PTMGは数平均分子量2000のものを用いた。このPEEの融点は172℃であった。
【0082】
(布帛の作成)
このPEED10部を、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン90部に完全に溶解させ、ナイフコーターにより、該基布上に、乾燥後の目付が5g/m2になるようにクリアランスを調整してコートした後、130℃の乾熱下で1分間熱処理を行い、第1段目のコート層を形成した。続いて、参考例1により得られたPEG/PTMG重量比が100/0(PEG/全PEE重量比35%)のPEEA7部を、60℃に加熱された1,3−ジオキソラン93部に完全に溶解させ、乾燥後の目付が15g/m2になるようにコーティングした後、150℃乾熱下で3分間熱処理を行い、第2段目のコート層を形成した。
【0083】
凹凸の存在する基布上に直接コートしているために、コート層にピンホール欠点が発生しやすかった。特に10回洗濯後にその欠点が顕著であった。得られた布帛の性能を表7に併せて示す。
【0084】
[比較例15
PEG/PTMG重量比が100/0(PEG/全PEE重量比35%)のPEEAの替わりに、参考例1で得られたPEG/PTMG重量比が50/50(PEG/全PEE重量比17%)のPEEAを用いた以外は、比較例14と同様に行った。
【0085】
PEGの比率が低いために、洗濯による耐水圧の低下率は低いものの、凹凸の存在する基布上に直接コートしているために、コート層にピンホール欠点が発生しやすい傾向にあった。得られた布帛の性能を表7に併せて示す。
【0086】
【表7】
Figure 0004116295
【0087】
【発明の効果】
本発明の透湿防水布帛は、ポリエーテル−エステル系エラストマーのみが基布に積層されているため、廃棄時に焼却処理することが容易である。また、柔軟でかつ十分な透湿性を有しながらも、高い剥離強度を有し、水による洗濯後も高度の耐水圧を有するので、家庭での洗濯が可能な優れた透湿防水布帛である。また、本発明の製造方法によれば、PEEAの膜厚を一定に保てるため、風合いの安定した透湿防水布帛を得ることができる。

Claims (14)

  1. 繊維材料からなる基布に、ポリアルキレングリコール残基(PAG)、アルキレングリコール残基(AG)およびジカルボン酸残基(DC)からなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEE)が積層された透湿防水布帛において、
    PEEが2種のPEE(PEEAとPEEB)からなり、基布へのそれらPEEの積層方法が、PEEAからなるフィルム層をPEEBからなるバインダーを介して基布上に接着させた透湿防水布帛であって、該透湿防水布帛の耐水圧が50kPa以上であり、かつPEEAとPEEBとが下記(a)〜(d)の要件を同時に具備することを特徴とする透湿防水布帛。
    (a)PEEAが、ポリエチレングリコール(PEG)残基をPEEAの重量を基準として5〜25%含んでいること。
    (b)PEEAのフィルム層の厚みが、5〜50μmの範囲にあること。
    (c)PEEBの融点がPEEAの融点より20℃以上低いこと;および
    (d)PEEBの目付が2〜20g/mの範囲であること。
  2. PEEAに含まれるAGが、エチレングリコール(EG)残基とテトラメチレングリコール(TMG)残基とを含んでいて、かつ、モル数を基準として、前者を少なくとも30モル%含んでいる請求項1記載の透湿防水布帛。
  3. PEEAから形成されたフィルムの40℃水、30分間処理による面積膨潤率が、5%未満である請求項1または請求項2に記載の透湿防水布帛。
  4. 透湿防水布帛の洗濯10回後の耐水圧が、初期の耐水圧の50%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  5. 透湿防水布帛の洗濯10回後の耐水圧が50kPa以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  6. 透湿防水布帛の透湿度が3000g/m2・24h以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  7. 透湿防水布帛の剥離強度が6.0N/25mm以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  8. 透湿防水布帛のループ硬さが5.0N以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の透湿防水布帛。
  9. PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)であり、かつPAGの一成分であるポリエチレングリコール(PEG)残基を重量基準で5〜25重量%含んだPEEAからなる厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成し、有機溶剤に、PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を溶解させた溶液を、該PEEAフィルム上または繊維材料からなる基布上に、乾燥後のPEEB固形分目付が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、PEEB固形分が該PEEAフィルムと該基材の間となるように、該PEEAフィルムと該基布を張り合わせ、熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度で熱接着させることを特徴とする透湿防水布帛の製造方法。
  10. 該有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレンまたはこれらの混合物である請求項9記載の透湿防水布帛の製造方法。
  11. 該PEEB溶液の塗布面が該PEEAフィルム上である請求項10記載の透湿防水布帛の製造方法。
  12. PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEA)であり、かつPAGの一成分であるポリエチレングリコール(PEG)残基を重量基準で5〜25重量%含んだPEEAからなる厚さ5〜50μmのPEEAフィルムを作成し、PAG、AGおよびDCからなるポリエーテル−エステル系エラストマー(PEEB)を溶融状態で、繊維材料からなる基布上に付着量が2〜20g/m2の範囲となるように塗布した後、該基布のPEEB付着面に上記PEEAフィルムを貼り合わせることを特徴とする透湿防水布帛の製造方法。
  13. 該基布と該PEEAフィルムを貼り合わせた後、熱カレンダーによりPEEAの融点未満、PEEBの融点以上の温度で熱接着させることを特徴とする請求項12記載の透湿防水布帛の製造方法。
  14. PEEAフィルムを溶融法によって作成した請求項9または12記載の透湿防水布帛の製造方法。
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