JP4228961B2 - 低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液およびリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板 - Google Patents

低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液およびリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、クロム化合物を含まず、また従来のリン酸系絶縁被膜の焼付け温度よりも低温での焼付け製造が可能で、しかも歪取焼鈍前後の識別性に優れ、さらに被膜特性にも優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液およびリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板に関するものである。
電磁鋼板には、通常、電気絶縁性を確保するために絶縁被膜が被覆される。この絶縁被膜には、電気絶縁性以外にも、鉄心製造工程や最終製品で種々の特性が要求されるため、用途に応じて各種の被膜が用いられている。大別すると次の3種類である。(1) 半有機系被膜、(2) 無機系被膜、(3) 有機系被膜。
電磁鋼板は、通常、打ち抜いたのち、積層・固定されてモータや変圧器の鉄心に加工されるが、この時に発生する加工歪みを除去して磁気特性を改善させるために、 700℃以上の温度で歪取焼鈍を施される場合が多い。
このような歪取焼鈍を行う用途には、上述した(1) 半有機系被膜や(2) 無機系被膜が用いられている。 (1)と(2) の被膜の大きな違いは樹脂の有無であるが、樹脂の有無によって被膜特性のバランスに差異が生じるため、重視する特性に応じて (1)と(2) は使いわけられている。
(1) 半有機系被膜や(2) 無機系被膜には、クロム酸系、リン酸系、無機コロイド系など種々の主剤が用いられているが、中でもクロム酸系は各種特性に優れているため、広く用いられている。
近年、6価クロム含有被膜は、安全上の観点から排除される傾向にある。一方、3価クロム系被膜は、安全上の問題はないが、処理液の段階で6価クロムを含有する場合が多く、製造工程での有害性が高いため、人体に直接付着しないよう、設備や保護具を厳しく管理した上での製造が必要となる。
このため、製品中だけでなく、製造時にも有害となる可能性のあるクロムの使用を取り止める検討がなされていて、かような被膜としてリン酸系の半有機被膜が提案されている。
例えば、特許文献1には、リン酸二水素アルミニウムを含有する無機質系水溶液とpH1〜3の合成樹脂水性エマルションとを混合した水性液からなる電磁鋼板絶縁被膜用組成物が開示されている。これによれば、確かに、有害な6価クロムを含有しないため、厳しい管理をしなくても安全な製造が可能となる。しかしながら、かような絶縁被膜が形成された電磁鋼板を歪取焼鈍した場合、歪取焼鈍前後での色調変化が非常に小さいため、磁気特性が回復するまでの適正な歪取焼鈍がなされたかどうかを色調変化で判別することが極めて困難で、簡便な評価が難しいという問題があった。
また、特許文献2には、固形分換算で、リン酸Al、リン酸Ca、リン酸Znの1種または2種以上とpH4〜10の合成エマルション5〜300重量部を含有する無方向性電磁鋼板用表面処理剤が開示されている。これによると、リン酸Caを配合した場合は、歪取焼鈍前後の色調が変化して歪取焼鈍が適正になされたかどうかの判定がし易くはなったものの、リン酸Al単体の場合のような低温での焼付けではリン溶出が生じる問題があるため、焼付け温度を高めに設定しなければならず、完全にリン溶出を抑制できるまで温度を上げると、配合した樹脂が熱分解して打抜性等が劣化するという問題が生じることが判明した。また、厚膜時に表面が先に硬化してふくれという外観不良が発生したり、リン酸と電磁鋼板のFeとが化学反応を起こして白化という外観不良が発生することも判明した。
特開平5−78855号公報 特開平7−166365号公報
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、クロム化合物を含まず、リン酸系絶縁被膜での被膜特性を確保するための焼付け温度の低温化が可能で、良好な焼付け後外観を有し、しかも歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液を、この処理液を用いて得られる歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、リン酸系被膜の低温焼付けを可能にすると共に、優れた焼付け後外観および歪取焼鈍前後の識別性を実現するために、被膜成分について種々検討を重ねた結果、
a)低温焼付けのためには、周期表のIA、IIA族の金属を低減する必要がある、
b)歪取焼鈍前後の識別性を確保するためには、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を共存させることが有効である、
c)塗布焼付け時のふくれ不良を排除するためには、沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃の化合物を配合するのが有効である、
d)被膜白化等の外観不良を改善するためには、ノニオン系界面活性剤を配合すればよいことの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを 除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を含む化合物を金属合計量換算で10〜50重量部、周期表のIA、IIA族の金属を含む化合物を金属合計量換算で3重量部以下、沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃である化合物を気化する気体の重量として0.1〜20重量部およびノニオン系界面活性剤を0.001〜2重量部含むことを特徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
(2)上記(1)において、前記処理液中に、樹脂を固形分換算で10〜150重量部含むことを特徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
(3)上記(1)または(2)において、前記処理液中に、Al含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合物をB換算で10重量部以下含むことを特徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
(4)上記(1)、(2)または(3)に記載の処理液を、鋼板の片面または両面に、片面当たり:0.1〜4.0 g/m2塗布し、焼付けたことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電 磁鋼板。
(5)鋼板の片面または両面に、P:32重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を合計で10〜50重量部含む絶縁被膜を、片面当たりの目付量:0.1〜4.0 g/m2の範囲でそなえることを 特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
(6)上記(5)において、前記絶縁被膜中に、樹脂を固形分換算で10〜150重量部含むことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
(7)上記(5)または(6)において、前記絶縁被膜中に、Al含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合物をB換算で10重量部以下含むことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
本発明によれば、リン酸系絶縁被膜の低温焼付けが可能なだけでなく、焼付け後の被膜外観に優れ、さらには歪取焼鈍前後の識別性にも優れたリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板を得ることができる。
また、本発明では、被膜成分のバランスにも留意しているので、絶縁被膜としての各種被膜特性にも優れている。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明では、対象とする電磁鋼板については特に制限はなく、従来公知の電磁鋼板いずれもが適用可能である。
本発明では、上記の電磁鋼板の表面に、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種ま たは2種以上の金属を含む化合物を金属合計量換算で10〜50重量部、周期表のIA、IIA族の金属を含む化合物を金属合計量換算でが3重量部以下、沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃である化合物を気化する気体の重量として0.1〜20重量部およびノニオ ン系界面活性剤を0.001〜2重量部含有し、さらに必要に応じて、樹脂を固形分換算で10 〜150重量部、さらにはAl含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合 物をB換算で10重量部以下含む絶縁被膜処理液を、塗布、焼付けてリン酸系絶縁被膜を形成するのであるが、本発明における最大の特徴は、電磁鋼板の表面に塗布・焼付ける絶縁被膜処理液の成分組成にある。
すなわち、本発明では、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、周期表のIIIA 、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を含む化合物を金属合計量換算で10〜50重量部配合する。
ここに、上記金属の配合量が10重量部より少ないと、歪取焼鈍前後での色調変化が非常に小さく、歪取焼鈍が適正になされたかどうかを被膜の色調で判別することが難しく、一方50重量部を超えると色調変化は飽和する。
なお、被膜の状態では、上記の各金属は合計で、P:32重量部に対して10〜50重量部の配合割合となる。
ここに、周期表でIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIII、IB族に属する金属であれば、各種の金属が適用可能であるが、例えば、La,Ce,Nd,Mn,Co,Ni,CuおよびNi等が有利に適合する。特にNiは、少量でも被膜色調を黒っぽく変化させるため、とりわけ好適である。
上記の金属を含む化合物としては、水に可溶なものなら各種の形態が可能であり、例えば水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩等があげられる。なお、塩化物、硝酸塩、硫酸塩は、耐食性が損なわれるため避けることが好ましい。
周期表でIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIII、IB族に属する金属を配合した場合に歪取焼鈍前後の色調が好適に変化する理由については、まだ明確に解明されたわけではないが、これらの金属は遷移金属であり、光を選択吸収する性質があるため、電子状態の変化によって色調が変化するものと推定される。
また、本発明では、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、周期表のIA、IIA族の金属を含む化合物の量を、金属合計量換算で3重量部以下に抑制する。というのは、周期表のIA、IIA族の金属の合計量が3重量部超であると、300℃以下の焼付けでべとつきを防止するのが困難となるからである。
なお、被膜の状態では、上記の各金属は合計で、P:32重量部に対して3重量部以下の配合割合となる。
さらに、本発明では、厚膜時のふくれを防止するために、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃である化合物を気化する気体の重量として 0.1〜20重量部配合する。ここに、かような化合物の配合割合が、1重量部未満では厚膜時にふくれによる外観不良を十分に阻止できず、一方20重量部超になるとそれ以上の改善効果が少なくなる。
沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃の範囲に入る物質であればいずれも、ふくれを防止することが可能であり、各種の水溶性有機溶剤で沸点が110〜250℃の化合物や、110〜250℃で分解して気体が発生する化合物が好適に適用可能である。しかしながら、OH基を2個以上有するグリコールは還元剤として働き、リン酸塩の脱水反応を阻害して低温焼付け性を劣化させるため避けることが好ましい。この点、グリコールの誘導体であるエーテルやアルコール類はOH基を1個持っていても、還元剤としての反応性は低いため、好適に使用することができる。また、カルボン酸類も好適に適用できる。さらに、塩を用いる場合には、種類としては、IA、IIA族の金属塩は避けることが好ましく、これらを使用する場合には、IA、IIA族金属の合計量が3重量部以下になるようにする必要がある。
また、本発明では、塗布時にリン酸と鉄が一部で反応して被膜が白化するのを抑制するために、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、ノニオン系界面活性剤を0.001〜2重量部配合する。ここに、ノニオン系界面活性剤の配合割合が0.001重量部未満では、被膜の白化防止効果に乏しく、一方2重量部超では改善効果が飽和する。
なお、後述する樹脂として、エマルション樹脂を配合する場合は、合成時にノニオン系界面活性剤が添加されていることが多いため、この量を勘案して所定量範囲に調整する必要がある。
さらに、本発明において、打抜性を重視する場合には、リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、樹脂を固形分換算で10〜150重量部の範囲で配合することができる。ここに、樹脂の配合割合が10重量部未満では打抜性の改善効果に乏しく、一方150 重量部を超えてもそれ以上の打抜性の向上は望めず、むしろTIG 溶接性が劣化する傾向にある。
用いる樹脂の種類は特に制限されることはなく、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂および酢酸ビニル樹脂等各種の樹脂が使用可能である。樹脂の形態としては、水に溶解、分散可能であれば形態は特に規定するものではなく、水溶性、エマルション、ディスパーションおよび粉末樹脂等の各種形態が可能である。
さらに、各種の被膜特性を重視する場合、Al含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合物をB換算で10重量部以下配合してもよい。例えば、TIG溶接性を重視する場合には、Al含有化合物を配合するのが効果的であるが、30重量部を超えると改善効果が飽和するため、30重量部以下とする。とはいえ、1重量部未満では改善効果がほとんどないため、1重量部以上とするのが好ましい。Al化合物の形態は特に問わないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム等各種の形態が適用可能である。
また、歪取焼鈍後の被膜密着性や耐食性を向上するためには、B含有化合物を配合するのが効果的であるが、10重量部を超えると効果が飽和するため、10重量部以下とする。とはいえ、0.2重量部未満では改善効果がほとんどないため、0.2重量部以上とするのが好ましい。B含有化合物としてはホウ酸、ホウ酸塩等が好適に適用できる 。
なお、被膜の状態では、P:32重量部に対して、Al:30重量部以下、B:10重量部以下の配合割合となる。
上記した絶縁被膜処理液を鋼板の片面または両面に塗布して、絶縁被膜を形成するが、かかる絶縁被膜処理液の塗布量は、鋼板片面当たり: 0.1〜4.0 g/m2程度(乾燥後)とすることが好ましい。塗布量が 0.1 g/m2に満たないと均一塗布するのが困難となって、耐食性の劣化を招き、一方4.0 g/m2超であると密着性が劣化する。なお、被膜の目付量は、アルカリ剥離による重量測定法で測定することができる。
かくして得られた被膜付き電磁鋼板は、鋼板の片面または両面に、P:32重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を合計で10〜50重量部含む絶縁被膜を、片面当たりの目付量:0.1〜4.0 g/m2の範囲でそなえるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板となる。
なお、リン酸系被膜の造膜反応は、脱水縮合反応の進行によるリン酸化合物の不溶性化であるため、これらの脱水反応を促進する促進剤を添加しても良い。促進剤としては、酸化剤が好適である。
また、耐食性等をさらに向上させるために、各種防錆剤を添加してもよいし、耐スティキング性を向上させるために無機コロイドを配合しても良い。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
表1に示す薬剤を含む絶縁被膜処理液を、Si:0.35mass%およびAl:0.003 mass%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる電磁鋼板(0.5 mm厚)の表面に、ロールコーターを用いて片面当たりの目付量が表1に示す値となるように塗布し、最高到達板温が300℃になるように焼付けて、リン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板を作製した。なお、目付量の調整は、塗液濃度の調整およびロールコーターの調整で行った。
かくして得られた各供試材の、リン溶出量、塗布焼付け後外観、耐食性、密着性、TIG溶接性、耐溶剤性および打抜性について調査した。
さらに、ドライ窒素雰囲気中にて750℃、2hで歪取焼純を行った際の、歪取焼純前後における色調変化、耐スティキング性、耐食性および密着性についても調査を行った。
得られた結果を表2に示す。
なお、各特性の評価は次のようにして行った。
<リン溶出量>
沸騰水浸漬10分後のP溶出量(100cm2当たり)で評価した。
◎:20μg以下
○:20μg超〜50μg
△:50μg超〜100μg
×:100μg超
<塗布焼付け後外観>
◎:極めて良好、ふくれおよび白化なし
○:良好(ふくれおよび白化ほとんどなし)
△:若干不良(ふくれ若干ありまたは白化若干あり)
×:不良(ふくれありまたは白化あり)
<歪取焼鈍前後の色調変化>
CO:10%、H2:10%、CO2:5%、残部N2で、露点:15℃の雰囲気中にて、800℃,2hの歪取焼鈍後の外観を調査した。
◎:歪取焼鈍前後の色調差大
○:歪取焼鈍前後の色調差中
△:歪取焼鈍前後の色調差小
×:歪取焼鈍前後の色調差ほとんどなし
<製品板耐食性>
JIS Z 2371の規定に準拠する塩水噴霧試験(35℃)を行い、5h後の赤錆面積率で評価した。
◎:0〜15%
○:15%超〜30%
△:30%超〜50%
×:50%超〜100 %
<製品板密着性>
20mmφで 180°曲げ戻し試験後の被膜剥離率で評価した。
◎:剥離なし
○:剥離20%以下
△:剥離20%超、剥離40%以下
×:剥離40%超〜全面剥離
<TIG 溶接性>
下記の条件で溶接を行い、ブローホールの生じない最大溶接速度で評価した。
・電極:Th−W 2.6mmφ
・加圧力:9.8 MPa
・電流: 120A
・シールドガス:Ar(6リットル/min)
◎:800mm/分以上
○:600mm/分以上〜800mm/分未満
△:400mm/分以上〜600mm/分未満
×:400mm/分未満
<耐溶剤性>
沸騰キシレン中に6時間浸漬後の被膜減量(1m2当たり)で評価した。
◎:0.02g以下
○:0.02g超〜0.05g
△:0.05g超〜0.1 g
×:0.1 g超
<打抜性>
15mmφスチールダイスにおいて、かえり高さが50μmに達するまでの打ち抜き数で評価した。
◎:50万回超
○:30万回超、50万回以下
△:10万回超、30万回以下
×:10万回以下
<耐スティキング性>
50mm角の鋼板10枚を重ねて荷重(200g/cm2)をかけながら窒素雰囲気中にて 750℃、2h焼鈍したのち、鋼板上に分銅:500gを落下させ、5分割するときの落下高さで評価した。
◎:20cm以下
○:20cm超〜30cm
△:30cm超〜40cm
×:40cm超
<焼鈍板耐食性>
恒温恒湿試験(50℃、相対湿度:80%)による14日後の赤錆面積率で評価した。
◎:0〜10%
○:10%超〜20%
△:20%超〜30%
×:30%超〜100 %
<焼鈍板密着性>
20mmφで 180°曲げ戻し試験後の被膜剥離率で評価した。
◎:剥離なし
○:剥離20%以下
△:剥離20%超、剥離40%以下
×:剥離40%超〜全面剥離
Figure 0004228961
Figure 0004228961
表2から明らかなように、本発明に従う絶縁被膜処理液を用いて作製された絶縁被膜付き電磁鋼板はいずれも、300 ℃という低温の焼付けでも、リン溶出の問題がほとんどなく、また耐食性、密着性、TIG 溶接性、耐溶剤性および打抜性に優れ、さらに歪取焼鈍前後における色調変化が大きく、歪取焼鈍後の耐スティキング性、耐食性および密着性にも優れている。
これに対し、比較例1〜3はいずれも、絶縁被膜処理液中に多量のIA〜IIA族金属が含まれているため、リン溶出が著しかった。
比較例4は、沸点または気体を発生する分解点が82℃という低温の化合物を用いたため、塗布焼付け後の被膜外観に劣っていた。
比較例5は、沸点または気体を発生する化合物を全く含まないため、やはり塗布焼付け後の被膜外観に劣っていた。
比較例6は、ノニオン系界面活性剤を含んでいないため、やはり塗布焼付け後の被膜外観に劣っていた。
比較例7は、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く)、VIIA、VIII、IB族の金属の量が少なすぎたため、歪取焼鈍前後での色調変化が小さかった。

Claims (7)

  1. リン酸(H3PO4換算で):100重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを除く )、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を含む化合物を金 属合計量換算で10〜50重量部、周期表のIA、IIA族の金属を含む化合物を金属合計量換算で3重量部以下、沸点または気体を発生する分解点が110〜250℃である化合物を気化する気体の重量として0.1〜20重量部およびノニオン系界面活性剤を0.001〜2重量部含むことを特徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
  2. 請求項1において、前記処理液中に、樹脂を固形分換算で10〜150重量部含むことを特 徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
  3. 請求項1または2において、前記処理液中に、Al含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合物をB換算で10重量部以下含むことを特徴とする、低温焼付けが可能で歪取焼鈍前後の識別性に優れる電磁鋼板用リン酸系絶縁被膜処理液。
  4. 請求項1,2または3に記載の処理液を、鋼板の片面または両面に、片面当たり:0.1 〜4.0 g/m2 (乾燥後)塗布し、焼付けたことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
  5. 鋼板の片面または両面に、P:32重量部に対して、周期表のIIIA、IVA、VIA(Crを 除く)、VIIA、VIII、IB族のうちから選んだ1種または2種以上の金属を合計で10〜 50重量部含む絶縁被膜を、片面当たりの目付量:0.1〜4.0 g/m2の範囲でそなえることを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
  6. 請求項5において、前記絶縁被膜中に、樹脂を固形分換算で10〜150重量部含むことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
  7. 請求項5または6において、前記絶縁被膜中に、Al含有化合物をAl換算で30重量部以下および/またはB含有化合物をB換算で10重量部以下含むことを特徴とする、歪取焼鈍前後の識別性に優れるリン酸系絶縁被膜付き電磁鋼板。
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