JP4228379B2 - 流体制御弁 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体通孔から異物が進入することを防止する流体制御弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平5−306783号公報に開示されているように、軸方向に往復移動自在にスプール(弁部材)を収容するスリーブ(収容部材)に複数のポート(流体通孔)を形成し、スプールが軸方向に往復移動することにより、ポート間を流れる流体流量を制御する流体制御弁が知られている。このような流体制御弁では、軸方向に隣接するポートの周方向位置をずらし周方向に離して形成している。ポート間のシール長がスリーブの軸方向ではなく軸の斜め方向に形成されるので、隣接するポート間の距離を短くしてもポート間のシール長を確保することができる。したがって、スリーブの軸長を短くし流体制御弁を小型化できる。ここで述べるシール長とは、スリーブの内周壁および外周壁における両方のシール長を表している。
【0003】
流体中には異物が混入していることがあり、スプールとスプールを往復移動自在に収容するスリーブとの摺動部に流体通孔から異物が進入すると、スプールが摺動不良を起こすおそれがある。特開平5−306783号公報に開示されている流体制御弁では、流体が流入する供給ポートを網目部分で覆うことにより、供給ポートから弁内に異物が進入することを防止している。網目部分は脚部の弾力性によりスリーブに取り付けられている。網目部分の取り付け構造として、スリーブの外周壁に設けた溝に脚部が嵌合するものと、脚部が供給ポートからスリーブ内に入り込んでいるものとがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フィルタおよび脚部は流体をシールする部材ではないので、外周壁に形成した溝を流体が満たすと考えられる。スリーブの外周壁に溝を設けると、スリーブの内周壁におけるシール長は変化しないが、スリーブの外周壁において溝に隣接するポートと溝とのシール長が短くなる。シール長を長くするためには、スリーブの軸長を長くしなければならない。特開平5−306783号公報に開示されている流体制御弁では、供給ポートだけを網目部分で覆っている。しかし、流体が弁内に流入するポートが隣接している場合、異物が弁内に進入することを防止するため、隣接する両方のポートの周方向に溝が形成される。したがって、隣接する溝と溝とのシール長を確保するため、さらにスリーブを長くする必要がある。
【0005】
また、スリーブ内に脚部が入り込む構造では、溝が周方向に延びていないため隣接するポートと溝とのシール長は確保できる。しかしながら、網目部分の周方向長さを十分に確保できないので、網目部分の面積をポートの通路面積よりも大きくすることが困難である。網目部分の面積が小さいと網目部分が異物で早く詰まるおそれがある。
本発明の目的は、軸長を延ばすことなく隣接流体通孔間の流体の漏れを防止し、隣接流体通孔から異物が進入することを防止する流体制御弁を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の流体制御弁によると、収容部材の外周壁において隣接流体通孔の少なくとも一つの周囲に凹部を形成し、この凹部にフィルタ部を嵌合しているので、隣接流体通孔から異物が弁内に進入することを防止している。
また、凹部と共に収容部材の周方向に一周するように設けられる溝であって、凹部よりも収容部材の軸方向の幅が狭い溝を形成し、この溝に取付部を嵌合している。軸方向における溝の幅が凹部の幅よりも狭いので、収容部材の軸長を延ばすことなく隣接する溝と凹部とのシール長を収容部材の外周壁において確保できる。
本発明の請求項2記載の流体制御弁によると、フィルタ部の面積が流体通孔の通路面積よりも広いので、フィルタ部が目詰まりを起こしにくい。
【0007】
本発明の請求項3に記載した構成の流体制御弁では、第1流体通孔、流入通孔および第2流体通孔から異物が進入する可能性があるので、収容部材の軸方向に隣接するこれら3つの隣接流体通孔にフィルタ部材を取り付けることが望ましい。収容部材の軸長を長くすることなく、隣接する溝と凹部とのシール長を確保できる。
本発明の請求項4記載の流体制御弁によると、電磁駆動部により弁部材を駆動するので、弁部材の移動位置を高精度に制御できる。したがって、弁部材を中間位置に保持し流体流量を高精度に調整できる。
本発明の請求項5記載の流体制御弁によると、流体通孔は、互い違いに収容部材の径方向反対側に配置される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図に基づいて説明する。
エンジンのバルブタイミング調整装置の油圧制御弁に本発明の流体制御弁を適用した一実施例を図2に示す。作動油としてエンジンの潤滑油が使用されている。図2は、油圧制御弁1の径方向外側に突出する樹脂材17と後述するフィルタ部材60とを同一断面で示すように、突出している樹脂材17の根本で断面を折り曲げている。図2は電磁駆動部10への電流供給を遮断した状態を示している。
【0009】
油圧制御弁1は、電流を供給することにより磁気吸引力を発生する電磁駆動部10、ならびに、可動部材20とともに弁部材としてのスプール40が往復移動するスプール制御弁30からなる。スプール40が往復移動することにより、遅角油圧室75および進角油圧室76に供給する作動油量と、遅角油圧室75および進角油圧室76から排出する作動油量とを調整する。電磁駆動部10のヨーク11とスプール制御弁30の収容部材としてのスリーブ31とは固定コア12によりかしめ固定されている。
【0010】
電磁駆動部10は、ヨーク11、固定コア12、ボビン15、ボビン15に巻回されたコイル16、および可動部材20を有している。ヨーク11および固定コア12は固定子を構成している。ヨーク11、固定コア12および可動部材20の可動コア21は磁性材で形成されており、磁気回路を構成している。
ヨーク11は内周筒部11aを有しており、内周筒部11aの内周側に可動部材20を収容している。固定コア12は内周筒部12aおよび外周筒部12bを有している。
【0011】
ボビン15およびコイル16は内周筒部11aおよび内周筒部12aと外周筒部12bとの間に収容されている。ボビン15およびコイル16は樹脂材17により固定されている。コイル16は、巻端をターミナル18に接続しており、ターミナル18から制御電流を供給される。コイル16に制御電流が供給されると、スプール40と当接している付勢手段としてのスプリング50の付勢力に抗し、可動コア21は固定コア12の内周筒部12aに向け吸引される。スプリング50の付勢力はスリーブ31の軸方向、つまり可動部材20の往復移動方向の一方である図2の矢印B方向に働く。コイル16に電流を供給することにより発生する磁力は、可動部材20の往復移動方向の他方である図2の矢印A方向に可動コア21を吸引するように働く。
【0012】
可動部材20は、可動コア21と、可動コア21の軸中央に圧入されているシャフト22とを有している。シャフト22は軸受部材25、26により両端を軸受けされている。
Oリング29は、固定コア12とスリーブ31との間に配設され、固定コア12とスリーブ31との間から作動油が漏れ出すことを防止している。
【0013】
スプール制御弁30は、スリーブ31およびスプール40を有している。スリーブ31の所定の周壁位置に、作動油が通過する複数の流体通孔32、33、34、35、36が形成されている。図示していないが、流体通孔32、33、34、35、36と連通する流体通孔を有するハウジングがスリーブ31の外周壁に当接している。スリーブ31の流体通孔と油路とを接続する接続部材をハウジングに取り付けている。流体通孔32、33、34、35、36は互い違いにスリーブ31の径方向反対側に配置されている。流体通孔32、33、34、35、36は、スリーブ31の軸方向に隣接している流体通孔同士がスリーブ31の軸方向および周方向に離れて形成されている隣接流体通孔である。流体通孔間のシールは、スリーブ31の内周側においては、スリーブ31の内周壁とスプール40の各大径部との当接により行われ、スリーブ31の外周においては、スリーブ31の外周壁とハウジングの内周壁との当接により行われる。
【0014】
ポンプ70は油タンク71から吸い上げた作動油を油路72から流入通孔としての流体通孔34に供給している。第1ドレイン通孔としての流体通孔32、第2ドレイン通孔としての流体通孔36はそれぞれ油路73、74を介し油タンク71に向け開放されている。第1流体通孔としての流体通孔33は油路78を介して進角油圧室76と連通し、第2流体通孔としての流体通孔35は油路77を介して遅角油圧室75と連通している。
【0015】
図1に示すように、スリーブ31の外周壁には、流体通孔33、34、35の周囲に環状の凹部33a、34a、35aが形成されている。凹部33a、34a、35aからスリーブ31の周方向反対側に溝33b、34b、35bが形成されている。溝33b、34b、35bの途中に矩形溝33c、34c、35cが形成されている。スリーブ31の軸方向において、各溝の幅は流体通孔を含む各凹部の幅よりも狭い。
【0016】
図1、図3および図4に示すように、スリーブ31の外周壁において、溝34bと凹部35aとのシール長d2は、溝34bと凹部33aとのシール長d1よりも長い。また、凹部34aと溝35bとのシール長d4は、凹部34aと溝33bとのシール長d3よりも長い。
【0017】
図2に示すように、スプール40は、スリーブ31の内壁に軸方向に摺動可能に支持されている。スプール40は、スリーブ31の内径とほぼ同じ径を有するランド部である大径部41、42、43、44と、これら大径部を連結する小径部とから構成されている。スプール40の可動部材20側端面はシャフト22の端面と当接している。
スプリング50は一方の端部をスプール40の反可動部材20側の端面に当接し、他方の端部をプレート51に当接している。スプリング50は図1の矢印B方向にスプール40を付勢している。プレート51は、円環状の薄板であり、中央に貫通孔51aが形成されている。
【0018】
図1に示すように、フィルタ部材60は、フィルタ部61および取付部64からなる。フィルタ部61は、ステンレスの薄板で網目状に形成されているメッシュ部62とメッシュ部62をインサート成形している環状部63とからなる。メッシュ部62の面積は流体通孔33、34、35の通路面積よりも大きい。取付部64は環状部63と樹脂で一体成形され、環状部63からそれぞれ周方向反対側に延びている。取付部64の反環状部側に凹凸が形成されている。図5の(A)に示すように、取付部64の途中に薄肉部64aが形成されているので、取付部64を容易に開くことができる。したがって、スリーブ31にフィルタ部材60を取り付ける作業が容易になる。互いの凹凸が嵌合することにより、フィルタ部61はスリーブ31に取り付けられている。各フィルタ部61は凹部33a、34a、35aに嵌合し、各取付部64は溝33b、34b、35bに嵌合している。フィルタ部材60は作動油をシールしないので、流体通孔33、34、35のいずれかに作動油が流れていると、凹部および溝を作動油が満たす。
【0019】
次に油圧制御弁1の作動について説明する。
(1) 図2はコイル16に電流を供給していない状態を示し、可動コア21には磁気吸引力が作用しておらず、スプール40および可動部材20はスプリング50の付勢力により図2に示す位置にある。このとき、スプール制御弁30の流体通孔34と流体通孔35との間が連通し、流体通孔33と流体通孔34との間および流体通孔35と流体通孔36との間が遮断されることにより、ポンプ70から流体通孔34、35を通り作動油が遅角油圧室75に供給される。同時に、流体通孔32と流体通孔33との間が連通するので、進角油圧室76の作動油が油タンク71へ排出される。
【0020】
(2) コイル16に制御電流が供給されると、スプリング50の付勢力に抗し可動コア21が図2の矢印A方向、つまり内周筒部12aに向けて吸引される。スプール40は可動部材20とともに図2の矢印A方向に移動し、プレート51に係止される。すると、スプール制御弁30の流体通孔33と流体通孔34との間が連通し、流体通孔34と流体通孔35との間および流体通孔33と流体通孔32との間が遮断されることにより、ポンプ70から流体通孔34、33を通り進角油圧室76に作動油が供給される。同時に流体通孔35と流体通孔36との間が連通するので、遅角油圧室75の作動油が油タンク71へ排出される。
【0021】
スプール40の位置は、可動コア21に働く磁気吸引力とスプリング50の付勢力との釣り合いにより決定される。コイル16に供給する電流値と発生する磁力とは比例するので、コイル16に供給する電流値を制御することによりスプール40の位置を線形制御できる。したがって、遅角油圧室75および進角油圧室76に供給または両油圧室から排出される作動油量はスプール40の位置により調整できる。
【0022】
バルブタイミング調整装置をカムで駆動する場合、カムの変動トルクは遅角側に大きく働く。したがって、変動トルクに抗してバルブタイミングを進角側に設定するため、進角油圧室76に加える油圧は遅角油圧室75に加える油圧よりも高い。進角油圧室76に作動油を供給する場合、凹部33a、34a、および溝33b、34bを作動油が満たし、凹部35aおよび溝35bはドレイン圧に開放されることがある。また、遅角油圧室75に作動油を供給する場合、凹部34a、35a、および溝34b、35bを作動油が満たし、凹部33aおよび溝33bはドレイン圧に開放されることがある。したがって、進角油圧室76に作動油を供給するときの溝34bと凹部35aとの差圧は、遅角油圧室75に作動油を供給するときの溝34bと凹部33aとの差圧よりも高い。また、進角油圧室76に作動油を供給するときの凹部34aと溝35bとの差圧は、遅角油圧室75に作動油を供給するときの凹部34aと溝33bとの差圧よりも高い。本実施例では、溝34bと凹部35aとのシール長d2を溝34bと凹部33aとのシール長d1よりも長く、凹部34aと溝35bとのシール長d4を凹部34aと溝33bとのシール長d3よりも長くなるように設定することにより、差圧の高い側のシール長を長くしている。
【0023】
以上説明した本発明の実施の形態を示す上記実施例では、スリーブ31の軸方向において、フィルタ部材60の取付部を64を嵌合する溝の幅を、流体通孔を含みフィルタ部材60のフィルタ部61を嵌合する凹部の幅よりも狭くしている。したがって、スリーブ31の軸長を長くすることなく隣接する凹部と溝とのシール長を確保できる。また、流体通孔33、34、35の通路面積よりもメッシュ部62の面積を大きくしているので、流体中の異物によりメッシュ部62が目詰まりを起こすことを低減している。本実施例のように作動流体としてエンジンの潤滑油を使用する油圧制御弁では、作動流体中に異物が混入しやすいので、効果的である。
【0024】
上記実施例では流体通孔がすべて隣接流体通孔であったが、同じ軸方向上に隣接して形成されている流体通孔と特許請求の範囲に記載した隣接流体通孔とが混在していてもよい。
また、メッシュ部62をステンレスで形成し、取付部64を樹脂で成形したが、フィルタ部材全体を樹脂で一体成形してもよい。また、フィルタ部材をステンレスで円弧状に形成し、円弧状に形成したフィルタ部材の弾性でスリーブにフィルタ部材を取り付けてもよい。この場合、溝は接続している必要はなく、フィルタ部材が嵌合できる範囲で形成されていればよい。
【0025】
上記の実施例では、電磁駆動部を構成するコイルに供給する電流値を制御することにより、弁部材であるスプールを中間位置に保持し、スプールの位置により流体流量を制御する油圧制御弁について説明した。これ以外にも、弁部材を中間位置に保持することなく流体通路を全開または全閉し、流体流量を二種類に制御する流体制御弁に本発明の構成を適用できる。また、電磁駆動部に代え、作動流体圧力でスプールを往復駆動する流体制御弁に本発明の構成を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるフィルタ部材を嵌合したスリーブの外周壁全周を示す展開図である。
【図2】本実施例による油圧制御弁を示す断面図である。
【図3】図2のIII 方向矢視図である。
【図4】図2のIV方向矢視図である。
【図5】(A)はスリーブに嵌合する前のフィルタ部材の状態を示し、(B)はスリーブに嵌合した後のフィルタ部材の状態を示している。
【符号の説明】
1 油圧制御弁(電磁弁)
10 電磁駆動部
11 ヨーク(固定子)
12 固定コア(固定子)
16 コイル
21 可動コア
30 スプール制御弁
31 スリーブ(収容部材)
32、33、34、35、36 流体通孔
33a、34a、35a 凹部
33b、34b、35b 溝部
40 スプール(弁部材)
41、42、43、44 大径部
50 スプリング(付勢手段)
60 フィルタ部材
61 フィルタ部
62 メッシュ部
63 環状部
64 取付部

Claims (5)

  1. 筒状の周壁を貫通し軸方向に離れている複数の流体通孔を有する収容部材であって、前記収容部材の軸方向に隣接する流体通孔のうち、前記収容部材の周方向に離れている隣接流体通孔があり、前記収容部材の外周壁において前記隣接流体通孔の少なくとも一つの周囲に凹部を形成し、前記凹部とともに周方向に一周するように設けられる溝であって、前記凹部よりも前記収容部材の軸方向の幅が狭い溝を形成している収容部材と、
    前記収容部材内に収容され前記収容部材の軸方向に移動することにより前記流体通孔間を流れる流体流量を制御する弁部材と、
    前記凹部に嵌合し前記隣接流体通孔を覆うフィルタ部、ならびに前記溝に嵌合し前記収容部材に前記フィルタ部を取り付ける取付部を有する複数のフィルタ部材と、
    を備え
    前記フィルタ部材は、前記収容部材の軸方向に複数並んで設けられることを特徴とする流体制御弁。
  2. 前記フィルタ部の面積は前記隣接流体通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の流体制御弁。
  3. 前記収容部材は、作動流体を排出する第1ドレイン通孔、作動流体が出入りする第1流体通孔、作動流体供給側から作動流体が流入する流入通孔、作動流体が出入りする第2流体通孔、作動流体を排出する第2ドレイン通孔を前記隣接流体通孔として前記収容部材の軸方向にこの順で有し、前記第1流体通孔、前記流入通孔および前記第2流体通孔を前記フィルタ部が覆っていることを特徴とする請求項1または2記載の流体制御弁。
  4. 少なくとも前記収容部材の軸方向の一方に前記弁部材を付勢する付勢手段と、前記収容部材の軸方向の他方に前記弁部材を駆動する電磁駆動部とを備えることを特徴とする請求項1、2または3記載の流体制御弁。
  5. 前記流体通孔は、互い違いに前記収容部材の径方向反対側に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体制御弁。
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