JP4225014B2 - ポリチオウレタンおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリチオウレタンおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリチオウレタンは、優れた光学特性を有することから、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスクなどの光学製品を構成する樹脂材料として有用である。
従来、ポリチオウレタンとしては、1,3−オキサゾリジン−2−チオンなどの硫黄含有複素環式化合物を開環重合して得られるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、ポリチオウレタンを得るための硫黄含有複素環式化合物を製造する方法としては、アミノアルコールを塩基の存在下で二硫化炭素と反応させ、その生成物と過酸化水素とを反応させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−228697号公報
【特許文献2】
特開平10−36358号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なポリチオウレタンおよびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリチオウレタンは、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする。
【化3】
〔一般式(2)において、R 1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示す。〕
【0009】
本発明のポリチオウレタンの製造方法は、下記一般式(1)で表される1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を重合開始剤の存在下に開環重合することを特徴とする。
【化4】
〔一般式(1)において、R 1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示す。〕
【0010】
本発明のポリチオウレタンの製造方法においては、重合開始剤がカチオン重合開始剤であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物は、上記一般式(1)で表されるものである。一般式(1)において、R1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示し、その好ましい具体例としては、メチル基、エチル基などが挙げられる。
【0012】
本発明の1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物は、以下の工程(イ)および工程(ロ)を経由して製造することができる。
工程(イ):
セリンと、炭素数が1〜2のアルコールと、塩化チオニルとを反応させることにより、下記一般式(3)で表されるセリンアルキルエステル塩酸塩を合成する。
工程(ロ):
適宜の反応溶媒中において、工程(イ)によって得られたセリンアルキルエステル塩酸塩を、塩基の存在下に二硫化炭素と反応させ、その後、得られた生成物と過酸化水素と反応させることにより、上記一般式(1)で表される1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を合成する。
【0013】
【化5】
〔一般式(3)において、R1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示す。〕
【0014】
工程(イ)において、セリンとしては、光学活性体すなわちL−セリンまたはD−セリンを用いることが好ましく、これにより、光学活性を有する1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を得ることができ、当該1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を用いることにより、光学活性を有するポリチオウレタンを得ることができる。
アルコールの具体例としては、メタノール、エタノールなどが挙げられる。
アルコールの使用割合は、セリン1モルに対して例えば1.0〜1.5モルである。
塩化チオニルの使用割合は、セリン1モルに対して例えば3.0〜4.0モルである。
工程(イ)における反応条件としては、反応温度が25〜30℃、反応時間が24〜48時間である。
また、工程(イ)によって得られたセリンアルキルエステル塩酸塩は、ジエチルエーテルなどの溶剤によって洗浄した後、工程(ロ)に供することが好ましい。
【0015】
工程(ロ)において、反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノールなどを用いることができる。
塩基としては、トリエチルアミン、ピリジンなどを用いることができる。
塩基の使用割合は、セリンアルキルエステル塩酸塩1モルに対して例えば2.0〜2.2モルである。
二硫化炭素の使用割合は、セリンアルキルエステル塩酸塩1モルに対して例えば1.2〜1.5モルである。
過酸化水素の使用割合は、セリンアルキルエステル塩酸塩1モルに対して例えば0.15〜2.0モルである。
工程(ロ)における反応条件としては、反応温度が0〜25℃、反応時間が0.5〜1.0時間である。
また、工程(ロ)によって得られた1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物は、溶媒抽出処理、シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶処理などによって単離・精製することが好ましい。
工程(イ)および工程(ロ)における反応式を以下に示す。
【0016】
【化6】
〔上記反応式において、R1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示す。〕
【0017】
本発明のポリチオウレタンは、上記一般式(2)で表される繰り返し単位を有するものである。
このポリチオウレタンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定されたポリスチレン換算による数平均分子量Mnが、例えば2700〜41000であり、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比率が、例えば1.09〜1.14である。
【0018】
本発明のポリチオウレタンは、適宜の重合溶媒中において、上記一般式(1)で表される1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物(以下、「特定のオキサゾリジンチオン化合物」ともいう。)を重合開始剤の存在下に開環重合することによって製造することができる。
特定のオキサゾリジンチオン化合物の開環重合に用いられる重合溶媒の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリルなどが挙げられる。
また、重合溶媒としては、乾燥処理されたものを用いることが好ましい。
【0019】
重合開始剤としては、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。かかるカチオン重合開始剤の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸メチル等のトリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸、BF3 O(C2 H5 )2 などが挙げられ、これらの中では、高い収率でポリチオウレタンが得られる点で、トリフルオロメタンスルホン酸メチル等のトリフルオロメタンスルホン酸アルキルエステルが好ましい。
このようなカチオン重合開始剤を用いることにより、分子量の制御を行うことが可能であり、しかも、安定な成長末端を有するリビングポリマーであるポリチオウレタンを得ることができる。
重合開始剤の使用割合は、特定のオキサゾリジンチオン化合物1モルに対して0.1〜0.02モルである。
また、重合条件としては、反応温度が20〜50℃、反応時間が5.0〜18時間である。
カチオン重合開始剤としてトリフルオロメタンスルホン酸メチルを用いる場合には、以下に示す反応経路によりポリチオウレタンが合成されると推測される。
【0020】
【化7】
〔上記反応過程を示す式において、R1 は炭素数が1〜2のアルキル基を示す。〕
【0021】
本発明においては、特定のオキサゾリジンチオン化合物として、光学活性を有するものを用いることにより、光学活性を有するポリチオウレタンを得ることができ、また、互いに対称な旋光性を有するブロックからなるブロック共重合体であるポリチオウレタンを得ることができる。
また、本発明のポリチオウレタンは、リンビングポリマーとして得ることができるため、他のモノマーとのブロック共重合が可能であり、これにより、種々の特性を付与することができる。
そして、本発明のポリチオウレタンは、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、その他の光学製品を構成する樹脂材料として有用である。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、以下の実施例において、ポリチオウレタンの数平均分子量および重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定したポリスチレン換算によるものである。
【0023】
〈合成例1〉
温度−10℃で塩化チオニル52ミリリットル(714mmol)をメタノール240ミリリットルに添加して混合し、得られた混合溶液に、左旋光を示すL−セリン25g(238mmol)を添加し、当該混合溶液を室温で12時間撹拌した。得られた反応溶液をロータリーエバポレーターにより濃縮した後、500ミリリットルのエチルエーテルで洗浄した。
得られた反応生成物について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定および赤外吸収スペクトル(IR)の測定を行ったところ、L−セリンメチルエステル塩酸塩であることが確認され、その融点は161〜162℃であり、収率は98%であった。核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果を以下に示す。
【0024】
1H NMR(DMSO−d6 , 270Mz):δ=3.75(s,3H, −OCH3 ), 3.82(m,2H,−CH2 −),4.10(br s,1H, >CH−),8.58(br s,3H,−NH2 ・HCl)ppm.
13C NMR(DMSO−d6 ,67.5 Mz):δ=52.99(−OCH3 ),54.66(>CH−),59.66(−CH2 −),168.93(C=O)ppm.
【0025】
得られたL−セリンメチルエステル塩酸塩31.1g(200mmol)を200ミリリットルのテトラヒドロフランに懸濁させ、得られた懸濁液に、トリエチルアミン55.4ミリリットル(400mmol)を0℃の窒素ガス雰囲気下でゆっくりと添加し、当該懸濁液を10分間撹拌した。その後、得られた混合液に二硫化炭素22.8g(300mmol)をゆっくり添加し、当該混合液を室温で1時間撹拌し、更に30%の過酸化水素水40ミリリットルをゆっくり室温で添加した。このとき、混合液の発熱(沸騰)が見られた。
次いで、この混合液を室温まで冷却して濾過し、得られた濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた濃縮液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500ミリリットルを添加し、室温で30分撹拌し、その後、真空ポンプにより濃縮してトリエチルアミンを除去し、この濃縮液に5規定の塩酸水溶液により中和を行った。次いで、濃縮液を濾過し、酢酸エチルにより抽出した後、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥処理し、更に、ロータリーエバポレーターにより濃縮した。その後,得られた濃縮液をシリカゲルクロマトグラフィー(アセトン:クロロホルム=0.5:9.5)により精製し、酢酸エチルおよひn−ヘキサンにより再結晶処理を2回行うことにより、無色の固体(単結晶)を得た。
【0026】
この反応生成物について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定、赤外吸収スペクトル(IR)の測定、元素分析測定および単結晶X線解析を行ったところ、下記式(1)で表される1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物であることが確認された。以下、この1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を「モノマー(1)」とする。
モノマー(1)の融点は55〜56℃、比旋光度[α]D 25は5.39°(c=1.0g/dL,DMF)、収率は79%であった。モノマー(1)の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果、赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果および元素分析測定結果、並びに単結晶X線解析結果を以下に示す。また、モノマー(1)の 1H NMRスペクトル図を図1に示す。
【0027】
1H NMR(CDCl3 ,270Mz):δ=3.85(s,3H,−OCH3 ),4.69(dd,J=5.94,9.72,1H,>CH−),4.82−4.93(m,2H,−CH2 −),8.15(broad s,1H,−NH−)ppm.
13C NMR(CDCl3 ,64.5Mz): δ=53.23(−OCH3 ),57.01(−CH<),71.99(−CH2 −),168.97(C=O),189.93(C=S)ppm.
IR(KBr):3317,1743(−COOCH3 ),1504(C=S),1234,1187,1025,964,571cm-1;
elemental analysiscalcd(%) for C5 H7 NO3 S C:37.26,H:4.38,N:8.69,S:19.89;found C:37.17,H:4.26,N:8.70,S:19.85.
Crystal data for C5 H7 NO3 S,M=161.18,orthorhombic,space group P21 21 21 ,a=10.420(5),b=17.286(8),c=7.829(4)Å, V=1410(2)Å,Z=8,ρ=1.518g/cm3 , μ=4.03cm-1,F(000)0)=672,R=0.022,Rw =0.024.
【0028】
【化8】
【0029】
〈実施例1〉
合成例1で合成したモノマー(1)480mg(3.0mmol)に、窒素雰囲気下で乾燥ジクロロメタン6.0ミリリットルを添加し、30℃で10分撹拌した。得られた混合溶液に重合開始剤としてトリフルオロメタンスルホン酸メチル10マイクロリットル(モノマー(1)に対する比率が3.04mol%)を素早く添加し、当該混合溶液を30℃の窒素雰囲気下で18時間撹拌することにより重合反応を行った。得られた反応溶液を大過剰のメタノールに投入することにより、反応生成物を沈殿させ、これをフィルターによって濾別した後、40℃で12時間真空乾燥することにより、無色の固体を得た。
【0030】
得られた反応生成物について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定、赤外吸収スペクトル(IR)の測定および元素分析測定を行ったところ、下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリチオウレタンであることが確認された。このポリチオウレタンの数平均分子量Mnは6700、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は1.14、比旋光度[α]D 30は−140.3°、反応転化率は100%、収率は99%以上であった。核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果、赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果および元素分析測定結果を以下に示す。また、 1H NMRスペクトル図を図2に示す。
【0031】
1H NMR(270Mz,DMSO−d6 ):δ=2.96−3.04(m,1H,−CH2 −),3.26−3.05(m,1H,−CH2 −),3.64(s,3H,−OCH3 ),4.31 (q,J=6.2Mz,1H,>CH−),8.89(d,J=7.56Mz,NH)ppm;
13C NMR(64.5Mz,DMSO−d6 ):δ =29.58(−CH2 −),52.30(−OCH3 ),54.37(>CH−),165.87(−SCONH−),170.38(−COOMe)ppm;
IR(KBr):3301,1743,1658,1512,1203cm-1;
elemental analysis calcd(%) for (C5 H7 NO3 S) C:37.26,H:4.38,N:8.69,S:19.89;found C:37.22,H:4.40,N:8.97,S:19.86.
【0032】
【化9】
【0033】
〈合成例2〉
L−セリンの代わりにD−セリンを用いたこと以外は合成例1と同様にして、D−セリンメチルエステル塩酸塩および下記式(3)で表される1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を合成した。以下、この1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物を「モノマー(2)」とする。
【0034】
【化10】
【0035】
D−セリンメチルエステル塩酸塩の融点は、159〜160℃、収率は99%であった。また、D−セリンメチルエステル塩酸塩の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果を以下に示す。
1H NMR(DMSO−d6 ,270Mz):δ=3.75(s,3H,−OCH3 ),3.78(m,2H,−CH2 −),4.14(br s,1H,>CH−),8.52 (br s,3H,−NH2 −HCl)ppm.
13C NMR(DMSO−d6 ,67.5 Mz):δ=52.90(−OCH3 ),54.63(>CH−),59.34(−CH2−),168.97(C=O)ppm.
【0036】
モノマー(2)の融点は54〜55℃、比旋光度[α]D 25は−5.41°(c=1.0g/dL,DMF)、収率は82%であった。モノマー(2)の核磁気共鳴スペクトル(NMR)の測定結果、赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果および元素分析測定結果、並びに単結晶X線解析結果を以下に示す。
【0037】
1H NMR(CDCl3 ,270Mz):δ=3.85(s,3H,−OCH3 ),4.74(dd,J=5.67,9.86,1H,>CH−),4.82−4.94(m,2H,−CH2 −),8.43(broad s,1H,−NH−)ppm;
13C NMR(CDCl3 ,64.5Mz):δ=53.10(−OCH3 ),57.00(−CH2−),71.99(>CH−),169.13(C=O),189.73(C=S)ppm;
IR(KBr):3309,1743,1504,1241,1188,1025,957,571 cm-1;
elemental analysis calcd(%) for C5 H7 NO3 S C:37.26,H:4.38,N:8.69, S:19.89;found C:37.33,H:4.37,N:8.77,S:20.02.
Crystal data for C5 H7 NO3 S,M=161.18,rthorhombic,space group P21 21 21 ,a=10.433(4),b=17.257(7),c=7.824(3)Å,V=1418.6(9)Å3 ,Z=8,ρ=1.520g/cm3 ,m=4.03cm-1,F(000)=672,R=0.021,Rw =0.023.
【0038】
〈実施例2〜5〉
下記表1に従って、重合開始剤の種類若しくは使用割合または重合反応時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリチオウレタンを合成した。
得られたポリチオウレタンの数平均分子量Mn、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)、比旋光度[α]D 30、反応転化率および収率を下記表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
〈実施例6〉
モノマー(1)および重合開始剤(トリフルオロメタンスルホン酸メチル)の使用量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして合計5種類のポリチオウレタンを合成し、各ポリチオウレタンの数平均分子量Mnおよび数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)を測定した。
重合開始剤に対するモノマー(1)の比率と、得られたポリチオウレタンの数平均分子量Mnおよび数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)との関係を図3に示す。
図3から明らかなように、重合開始剤に対するモノマー(1)の比率が増加すると、これにほぼ正比例してポリチオウレタンの数平均分子量Mnが増加しており、この重合系においては連鎖移動がなく、得られるポリチオウレタンの分子量の制御が可能であることが確認された。また、数平均分子量の値に関わらず、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)がほぼ一定の値を示しており、分子量分布の狭いポリマーを安定して得られることが確認された。
【0041】
〈実施例7〉
重合反応時間を変更したこと以外は、実施例1と同様にして合計9種類のポリチオウレタンを合成し、各重合反応における反応転化率並びに各ポリチオウレタンの数平均分子量Mnおよび数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)を測定した。
重合反応時間と、反応転化率およびモノマー(1)の最終濃度[M]に対する初期濃度[M]0 の比率との関係を図4に示し、反応転化率と、得られたポリチオウレタンの数平均分子量Mnおよび数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)との関係を図5に示す。
図4および図5から、この重合系においては、停止反応がないことが推測される。
【0042】
〈実施例8〉
合成例1で合成したモノマー(1)480mg(3.0mmol)に、窒素雰囲気下で乾燥ジクロロメタン6.0ミリリットルを添加し、30℃で10分撹拌した。得られた混合溶液に重合開始剤としてトリフルオロメタンスルホン酸メチル24マイクロリットル(1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物に対する比率が7.29mol%)を素早く添加し、当該混合溶液を30℃の窒素雰囲気下で22時間撹拌し、反応転化率が100%となったことを確認した。得られたポリチオウレタンの数平均分子量Mnは2800、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)は1.14であった。このポリチオウレタンをポリマー(a)とする。
次いで、ポリマー(a)を含む反応溶液に、当該ポリマー(a)の合成に使用したモノマー(1)と等濃度で等モル量のモノマー(1)を含むジクロロメタン溶液を添加し、当該反応溶液を30℃の窒素雰囲気下で22時間撹拌した。得られた反応溶液を大過剰のメタノールに投入することにより、反応生成物を沈殿させ、これをフィルターによって濾別した後、40℃で12時間真空乾燥することにより、無色の固体のポリチオウレタンを得た。このポリチオウレタンの数平均分子量Mnは5200、数平均分子量に対する重量平均分子量の比率(Mw/Mn)は1.14、比旋光度[α]D 30は−132.2°であった。このポリチオウレタンをポリマー(b)とする。
ポリマー(a)およびポリマー(b)のGPCプロファイルを図6に示す。
図6から明らかなように、ポリマー(a)にモノマー(1)を添加して更に重合することによって得られたポリマー(b)は、ポリマー(a)と相対的に同様の分子量分布状態を保ちながら、その数平均分子量が高分子量側にシフトしたことが確認された。この結果から、本発明に係るポリチオウレタンは、安定な成長末端を有することが理解される。
また、示差走査熱量計によって測定したポリマー(b)の示差熱量曲線を図7に示す。
【0043】
〈実施例9〉
合成例2で合成したモノマー(2)480mg(3.0mmol)に、窒素雰囲気下で乾燥ジクロロメタン6.0ミリリットルを添加し、30℃で10分撹拌した。得られた混合溶液に重合開始剤としてトリフルオロメタンスルホン酸メチル24マイクロリットル(1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物に対する比率が7.29mol%)を素早く添加し、当該混合溶液を30℃の窒素雰囲気下で22時間撹拌し、反応転化率が100%となったことを確認した。
次いで、反応溶液中に、合成例2で合成したモノマー(2)480mg(3.0mmol)が乾燥ジクロロメタン6.0ミリリットルに溶解されてなる溶液を添加し、当該反応溶液を30℃の窒素雰囲気下で22時間撹拌した。得られた反応溶液を大過剰のメタノールに投入することにより、反応生成物を沈殿させ、これをフィルターによって濾別した後、40℃で12時間真空乾燥することにより、無色の固体のポリチオウレタンを得た。このポリチオウレタンは、下記式(4)で表される構造を有し、その数平均分子量Mnは5000、比旋光度[α]D 30は131.6°、収率は99%であった。このポリチオウレタンをポリマー(c)とする。また、示差走査熱量計によって測定したポリマー(c)の示差熱量曲線を図7に示す。
【0044】
【化11】
【0045】
〈実施例10〉
実施例9において、ポリマー(a)を含む反応溶液に添加するモノマーとして、モノマー(1)の代わりにモノマー(2)を用いたこと以外は同様にしてポリチオウレタンを合成した。このポリチオウレタンは、下記式(5)で表される構造を有するブロック共重合体であり、その数平均分子量Mnは5700、比旋光度[α]D 30は2.85°、収率は99%であった。このポリチオウレタンをポリマー(d)とする。示差走査熱量計によって測定したポリマー(d)の示差熱量曲線を図7に示す。
また、ポリマー(a)およびポリマー(d)のGPCプロファイルを図8に示す。
図8から明らかなように、ポリマー(a)にモノマー(2)を添加して更に重合することによって得られたポリマー(d)は、ポリマー(a)と相対的に同様の分子量分布状態を保ちながら、その数平均分子量が高分子量側にシフトしたことが確認された。
【0046】
【化12】
【0047】
〔光学特性の評価〕
合成例1で合成したモノマー(1)、合成例2で合成したモノマー(2)、実施例8で合成したポリマー(b)、実施例9で合成したポリマー(c)および実施例10で合成したポリマー(d)について、円偏光二色性スペクトルを測定した。結果を図9に示す。
図9から明らかなように、モノマー(1)とモノマー(2)とは対称的なコットン効果が認められ、ポリマー(b)とポリマー(c)とは対称的なコットン効果が認められ、重合反応は、ラセミ化が起こらずに進行することが確認された。また、ポリマー(d)は、コットン効果がほとんど認められず、ポリマー(d)はステレオブロックポリマーであると推測される。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、新規なポリチオウレタンおよびその製造方法を提供することができる。
そして、本発明のポリチオウレタンは、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、その他の光学製品を構成する樹脂材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成例1で合成した1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物の 1H NMRスペクトル図である。
【図2】 実施例1で合成したポリチオウレタンの 1H NMRスペクトル図である。
【図3】 実施例6において測定した、重合開始剤に対するモノマーの比率と、ポリチオウレタンの数平均分子量および重量平均分子量に対する数平均分子量の比率との関係を示す図である。
【図4】 実施例7において測定した、重合反応時間と、モノマーの反応転化率およびモノマーの最終濃度に対する初期濃度の比率との関係を示す図である。
【図5】 実施例7において測定した、モノマーの反応転化率と、ポリチオウレタンの数平均分子量および重量平均分子量に対する数平均分子量の比率との関係を示す図である。
【図6】 実施例8で合成したポリチオウレタンのGPCプロファイルを示す図である。
【図7】 実施例8〜実施例10で合成したポリチオウレタンの示差熱量曲線を示す図である。
【図8】 実施例10で合成したポリチオウレタンのGPCプロファイルを示す図である。
【図9】 合成例1および合成例2で合成した1,3−オキサゾリジン−2−チオン化合物並びに実施例8〜実施例10で合成したポリチオウレタンの円偏光二色性スペクトルを示す図である。
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