JP4223872B2 - 品質改良用食塩代替物及び品質改良用食塩代替物を用いた加工食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通常の食塩と比べ塩味において何ら遜色が無く、且つ加工食品の加熱歩留向上や加熱調理後の食感(弾力感・ジューシー感)向上といった品質改良効果を有する海藻灰由来の品質改良用食塩代替物及び該品質改良用食塩代替物を用いた加工食品に関するものである。
【002】
【従来の技術】
食塩は、古来より食品の保存性向上や塩味の付与といった目的以外に、特に魚介類や畜肉を主原料とする塩蔵魚類、焼き魚類、煮魚類、焼肉類、蒲鉾や竹輪等の練り物類、ソーセージ類、ハム類、ハンバーグ類、ギョウザ類、シュウマイ類、から揚げ類、カツ類、天ぷら類等においては、食塩を加えることで、魚介類や畜肉中の塩溶性たんぱく質を溶出させて加熱調理した際の弾力ある独特の食感を得る為や肉類の保水性を高めて加熱加工時の加熱歩留りを改善するとともにジューシーな食感を得る為といった食塩のもつ品質改良効果によって加工食品を「美味しく」する目的で使用されている。
【003】
しかし、近年では、特に魚介類や畜肉を主原料とする加工食品において、食塩を加えることで得られる保水性や弾力感の向上・ジューシー感の向上といった品質改良効果だけでは、消費者の求めるニーズには充分に対応できず、また、加工時の加熱歩留りも充分ではない。
【004】
食塩の持つ品質改良向上効果には限界があり、例えその使用量を増やしても、歩留り向上効果や食感改良効果は充分には期待できない。また、昨今の低塩志向から食塩そのものの使用量を減らす傾向にある。
【005】
周知のとおり、食塩の代替として海藻の灰化物から抽出した藻塩があるが、従来、藻塩の利用は、海藻の灰化物から種々の方法でミネラル分を抽出し、それら抽出物を天然ミネラル剤として提供することが目的であったり、また Naの摂取量を減らすことを目的とした食塩の代替物であったりして、もっぱら栄養面からの利用であり、魚介類や畜肉類を主原料とする加工食品の加熱歩留り改善や食感改良等の品質改良を目的とする利用はなされていなかった。
【006】
食塩の代替として海藻の灰化物から抽出した藻塩について、様々な研究が行われており、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3にも開示されている。
【007】
【特許文献1】
特開昭48−87046号公報
【特許文献2】
特開平4−108357号公報
【特許文献3】
特開2000−4823号公報
【008】
特許文献1には、海藻灰を水抽出したものとその水抽出残渣をpH5以下の酸性条件下で水抽出したものを、pH6〜8.5に調整した海藻ミネラルの製造方法が開示されているが、これは天然総合ミネラル剤として提供することを目的とするもので、加工食品の品質改良効果を目的とするものではない。そして、これら抽出物は塩酸や有機酸を加えてpHを調整される為、得られる天然総合ミネラル剤の酸消費量は低く品質改良効果は期待できない。
【009】
特許文献2には、ハンター白度30以上の海藻灰化物をpH5〜14、好ましくは5〜8の抽出条件下で水抽出したものを濃縮又は乾燥して得られた海藻ミネラルと食品添加物用酸類/又はこの塩類、塩化カリウム、蛋白質関連化合物、核酸関連化合物、及び糖類からなるナトリウムイオン含量が低い食塩代替物が開示されているが、これも加工食品の品質改良を目的とするものではない。そして、この文献ではハンター白度が30以上だと得られる海藻ミネラルに異臭がなくなり良好な製品が得られるとしている。しかし、海藻を高温で焼成するほどにハンター白度を30以上に高めることができるが、例えばワカメ葉体部を900℃以上で海藻を灰化した場合には、ハンター白度が30以上であっても得られる海藻ミネラルの酸消費量は低下し、抽出して得られる海藻ミネラルの品質改良効果が低下してしまう。
【010】
特許文献3には、海藻及び植物を焼成して得られる灰化物を海水及び/又は海水由来の水系溶媒で抽出することでpH6〜8の条件下での抽出を行うことができるようになり、高アルカリに起因した問題から開放され、また、植物由来の人々にとって栄養学的に有用な種々のミネラル塩を含有する植物ミネラル塩を安定かつ安価に提供することを目的とする技術が開示されているが、前記各文献と同様に、加工食品の品質改良を目的とするものではなく、得られる植物ミネラルの酸消費量は低く、品質改良効果も低いものである。
【011】
このように、従来の海藻灰化物抽出物由来の食塩代替物物は栄養面からの利用であり、加工食品の加熱歩留り改善や食感改良等の品質改良を目的とする利用はなされておらず、製造方法に関しても海藻灰化物からの抽出物を得る為の制約条件は海藻の灰化温度や抽出に用いる溶媒の種類、pHで管理するものであった。
【012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、食塩の塩味と比べ何ら遜色なく、また、栄養的に有用な天然由来の微量ミネラルを含む食塩の代替物として加工食品に用いることができ、且つ食塩と同等の使用量で、加工食品の品質改良効果に優れた海藻灰由来の品質改良用食塩代替物及び該品質改良用食塩代替物を用いて品質改良がなされた加熱歩留りや食感の優れた食品を提供することを目的とする。
【013】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする魚介類の品質改良用食塩代替物である。
【014】
また、本発明は、300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする畜肉類の品質改良用食塩代替物である。
【015】
また、本発明は、300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする魚介類及び/又は畜肉類を主原料とする加工食品の品質改良用食塩代替物である。
【016】
また、本発明は、海藻灰化物由来の品質改良用食塩代替物を食塩の代替品として用いた魚介類及び/又は畜肉類を主原料とする加工食品である。
【017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【018】
実施の形態1
【019】
特定の灰化温度並びに灰化時間で灰化した海藻灰を水で浸漬抽出し、次に残渣を濾過し、得られた抽出液を煮詰めた後乾燥させた後、粉砕して品質改良用食塩代替物を得る。この際、該品質改良用食塩代替物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/L以上となるように灰化温度並びに灰化時間を特定することが必要である。なお、酸消費量が多くなればなるほど品質改良効果は大となるが、本発明においては100mmol/L程度が最大となる。
【020】
本発明における酸消費量とは、JIS(日本工業規格)の規格番号JISK0101:1998(工業用水試験方法)収載の、試料溶液に溶けているアルカリをpH8.3に中和するのに要する水素イオンの量(酸の量)を、試料溶液1Lについてのmmolで表したものである。
【021】
図1、図2及び図3に示すとおり、品質改良用食塩代替物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/L以上の品質改良用食塩代替物を用いることで、魚介類、畜肉類のpHが高められ、たんぱく質の保水性と水への溶解性が増大し、加熱調理時の歩留まりを改善するとともに、ジューシーな食感となり、また、たんぱく質溶出液が加熱調理時に含水した状態で加熱ゲル化し弾力感に優れた食感になる。
【022】
ワカメ葉体部を原料として用いて、種々の酸消費量の品質改良用食塩代替物を製造し、これらの品質改良用食塩代替物を溶かした浸漬液にエビを漬け込み、次にエビを取り出し、97〜100℃で1分間ボイル加熱調理した後とりだし、室温(25℃)で20分間放冷した場合における酸消費量と加熱歩留との関係を図1に示し、酸消費量と官能評価(ジューシー感)との関係を図2に示し、酸消費量と官能評価(弾力感)との関係を図3に示す。
【023】
原料となる海藻は、ワカメ、アラメ、かじめ、ホンダワラ、昆布、ヒジキ等いずれもでも良く。好ましくは食塩の成分となるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のミネラル含量が多い海藻及び部位である。燐が多い原料及び部位は灰化によって酸性物質が発生し、酸消費量が低くなる為、原料として適さない。
【024】
なお、未利用であったり、形状が悪いために海藻としてそのまま市販するには商品価値が低いもの、特に、国内、海外で養殖が盛んなワカメ、昆布等の乾燥品の商品規格から外れたものを利用すればより経済的である。
【025】
前記の原料となる海藻を、乾燥・粗粉砕した後灰化する。灰化する際の原料となる海藻の乾燥方法、海藻の水分、海藻のカットサイズには、特に制約はないが、原料となる海藻の保管性(保存性)や灰化の効率を考慮すると、海藻の水分は16%以下が望ましく、海藻のカットサイズは数mm程度であると海藻の焼成時にかさばらず生産性が向上する。
【026】
海藻の灰化方法は、灰化装置として食品衛生的に問題がなければ、特に制約はなく、海藻を灰化温度400〜1000℃で3〜6時間加熱し、灰化できるものであれば良く、熱源がガスや電気である焼成炉による灰化が一般的である。
【027】
本発明に係る水を用いてpH値を調整することなく海藻灰化物から抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって、該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/L以上である品質改良用食塩代替物を得るためには、海藻の種類、部位により、灰化温度、時間を調整する必要がある。
【028】
即ち、海藻としてワカメ葉体部を用いた場合、灰化温度が、特に900℃以上になると、得られる品質改良用食塩代替物の酸消費量が低くなってしまい、品質改良効果が不充分となる。また同様に、灰化温度が250℃以下の場合も酸消費量が低くなってしまい、品質改良効果が不充分となる。
【029】
海藻として昆布仮根部の様なカルシウム含量が多い原料海藻を用いた場合は、灰化温度が900℃以上であっても、抽出に用いる水量を多くすることで、得られる品質改良用食塩代替物の酸消費量を高めることができる。このことは、900℃以上で灰化することでミネラルの一部が酸消費量の高い難水溶性の成分となり、抽出に用いる水量を多くすることで、この酸消費量が高い難水溶性の成分がより多く溶け出す為と考えられる。灰化温度が400℃以下の場合は、ワカメ葉体部と同様に、得られる品質改良用食塩代替物の酸消費量は低く、品質改良効果が不充分である。
【030】
なお、ヒ素のように栄養学的に必須の元素ではあるものの過剰摂取により毒性を示すものや水銀のような有害元素を揮散させるためには、灰化温度は600℃以上にすることが望ましい。
【031】
従って、原料海藻がワカメ葉体部の場合は、品質改良効果を充分に発揮できる酸消費量の高い品質改良用食塩代替物を得る為には、灰化温度は300〜800℃が好ましく、更に600〜800℃が最適である。
【032】
原料海藻が昆布仮根部の場合は、品質改良効果を充分に発揮できる酸消費量の高い品質改良用食塩代替物を得る為には、灰化温度は500℃以上が好ましく、前記ヒ素、水銀を揮散させたり、灰化温度が900℃以上になると難水溶性の成分が多くなることから、原料海藻の灰化温度は600〜800℃が最適である。
【033】
次に、灰化処理した海藻からの品質改良用食塩代替物の抽出方法について説明する。
【034】
抽出に用いる水としては脱イオン水、蒸留水、水道水等が使用でき、抽出方法としては、海藻灰化物1部量に対し5〜100部量の水で抽出すれば良い。ただし抽出に用いる水量はこの範囲に限定されるものではないが、カルシウム含量の多い海藻原料を900℃以上で灰化した海藻灰の場合は難水溶性の成分が発生するため、抽出に用いる水量が多いほど、難水溶性の成分がより多く溶出することを考慮する必要がある。
【035】
通常、海藻灰の水抽出液はpH9〜13のアルカリ性を呈するが、本発明においてはこの抽出液を塩酸や有機酸等の酸性物質でpH調整することなく水抽出することで品質改良効果が高い品質改良用食塩代替物が得られる。
【036】
海藻灰からの水抽出の際に、無機酸、有機酸等でpH調整したり、海藻灰から海藻ミネラルを抽出し分離した後に、抽出物に無機酸、有機酸を加えpH調整した場合は酸消費量が低下し品質改良効果は低減してしまう。
【037】
海藻灰からの水抽出際に、海水及び海水由来の塩類や塩化カリ、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシムを加えた場合、海藻灰からの海藻ミネラルが溶解し難くなり、得られた品質改良用食塩代替物の酸消費量は低い物となり、加工食品の改良効果は低減してしまう。
【038】
海藻灰からの水抽出の際に、水溶液においてアルカリ性を呈する水酸化ナトリウム、水酸化カリ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩類、やクエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム等の有機塩を加えて抽出した場合、得られる品質改良用食塩代替物の酸消費量は、海藻灰によるものだけでなくなり、海藻灰由来の天然の品質改良効果を有する品質改良用食塩代替物を提供する本発明の趣意とは異なる。
【039】
海藻灰の抽出液のpH値や海藻灰から濾過して得られた海藻ミネラル乾燥物の水溶液のpH値が高いからといって得られる海藻ミネラルの品質改良効果が優れていというわけではなく、単純にpH値もって測れるものではない。海藻ミネラルそのものの酸消費量で規定することによって、はじめて品質改良効果の高低を表すことができる。
【040】
すなわち、pHは水素イオン濃度の対数値であるため、海藻灰の抽出に用いる水量でそのpHが変化し、抽出、濾過、乾燥して得られる品質改良用食塩代替物の品質改良効果を正確に表すことができない場合があり、また、海藻灰及び海藻灰から抽出、濾過、乾燥して得られる海藻ミネラルの塩類構成の違いにより、一概にそのpH値をもって品質改良効果を表すことはできないのである。
【041】
ワカメ葉体部を原料として用いて、種々の酸消費量の品質改良用食塩代替物を製造し、これらの品質改良用食塩代替物の1%水溶液のpHと酸消費量との関係を図4に示す。
【042】
次に、海藻灰を水抽出する際の抽出温度は、低温抽出でも高温抽出でも、得られる品質改良用食塩代替物の加工食品における品質改良効果に差はなく、任意の水温度で良い。
【043】
水抽出する際に、海藻灰の浸漬時間は、海藻灰からの品質改良用食塩代替物の回収率に影響を及ぼす為、極力浸漬時間を長く設けた方が望ましく、最低10分〜48時間の間で設定するのが望ましい。
【044】
海藻灰の抽出液と抽出残渣の分離には、濾過、遠心分離等の公知の方法で用いれば良い。
【045】
次に、水抽出液を膜濃縮、減圧濃縮、通常気圧下での加熱蒸発濃縮等、噴霧乾燥、凍結減圧乾燥、通常圧力下での加熱蒸発乾燥等の公知の方法にて、濃縮又は乾燥して品質改良用海藻食塩代替物を得る。
【046】
なお、本発明では、抽出残渣と分離した抽出液を乾燥せずに、抽出液そのものや濃縮したものを品質改良用食塩代替物溶液として、加工食品に供することもできる。
【047】
ワカメ葉体部を原料として用い、抽出液量を変化させた場合の灰化温度、酸消費量の変化を図5に示す。
【048】
同様に、昆布仮根部を原料として用い、抽出液量を変化させた場合の灰化温度、酸消費量の変化を図6に示す。
【049】
実施の形態2
【050】
前記のようにして得られた品質改良用食塩代替物の乾燥物、その水溶液、抽出残渣と分離した抽出液やその濃縮液は、食塩を使用する加工食品、例えば魚介類や畜肉類を主原料とする塩蔵魚類、焼き魚類、煮魚類、焼肉類、蒲鉾や竹輪等の練り物類、ソーセージ類、ハム類、ハンバーグ類、ギョウザ類、シュウマイ類、から揚げ類、カツ類、天ぷら類等において、通常に使用する食塩の一部若しくは全量を代替するにより、加工食品を加熱処理する際の加熱歩留りが向上した、喫食する際の加熱調理後の食感の弾力が付与されたジューシーな食感を有す加工食品となる。
【051】
本発明において、品質改良用食塩代替物の加工食品への使用量は、特に制限はなく、乾燥物換算として、加工食品に対し通常使用する食塩量の一部又は全部を代替すれば品質改良効果が得られるが、食塩の代替として、10%以上代替することが好ましい。また、塩蔵魚等のように多量の食塩を撒布するような加工食品の場合は、加工食品100質量部に対し、品質改良用食塩代替物の使用量は20質量部程度である。
【052】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【053】
【実施例1〜5】
中国産ワカメの葉体部を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分7.2%まで乾燥したワカメ葉体部20gを次に記載する灰化、浸漬抽出方法で処理し品質改良用食塩代替物を得た。またそれぞれの濾過、乾燥して得られた品質改良用食塩代替物1%(W/V%)濃度溶液の酸消費量の測定結果並びに各処理条件を表1に示す。
【054】
<灰化、抽出、濾過、乾燥処理方法>
灰化方法は電気炉(イスズ製作所;NMR13E)を用い、種々の温度、時間で行った。次に灰化によって得られた海藻灰に種々の蒸留水量、時間にて、攪拌しながら水温25℃で浸漬抽出を行った。次に抽出液をNo.5Aの濾紙で濾過し、得られた抽出液を煮詰めながら水分を蒸発させ、120℃で6時間乾燥させた後、粉砕し品質改良用食塩代替物を得た。
【055】
【表1】
【056】
【実施例6〜9】
北海道産養殖昆布の仮根部を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分6.5%まで乾燥した昆布仮根部20gを前記に記載した灰化、浸漬抽出方法で処理し品質改良用食塩代替物を得た。またそれぞれの濾過、乾燥して得られた品質改良用食塩代替物1%(W/V%)濃度溶液の酸消費量の測定結果並びに各処理条件を表2に示す。
【057】
【表2】
【058】
【実施例10】
中国産ホンダワラを洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分6.8%まで乾燥したホンダワラ20gを前記に記載した灰化、浸漬抽出方法で処理し品質改良用食塩代替物を得た。また得られた品質改良用食塩代替物1%(W/V%)濃度溶液の酸消費量の測定結果並びに各処理条件を表3に示す。
【059】
【表3】
【060】
【比較例1〜3】
中国産ワカメの葉体部を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分7.2%まで乾燥したワカメ葉体部20gを前記に記載した灰化、浸漬抽出方法で処理し海藻ミネラルを得た。またそれぞれの濾過、乾燥して得られた海藻ミネラル1%(W/V%)濃度溶液の酸消費量の測定結果並びに各処理条件を表4に示す。なお、本比較例1〜3で用いたワカメ葉体部は、実施例1〜5に使用したものと同時に粉砕、脱水、洗浄、乾燥したものである。
【061】
【表4】
【062】
【比較例4、5】
北海道産昆布の仮根部を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分6.5%まで乾燥した昆布仮根部20gを、前記記載の灰化、浸漬抽出方法で処理した後、濾過、乾燥して得られた海藻ミネラル1%濃度溶液の酸消費量の測定結果及び処理条件を表5に示す。なお、本比較例4、5で用いた昆布仮根部は、実施例6〜9に使用したものと同時に粉砕、脱水、洗浄、乾燥したものである。
【063】
【表5】
【064】
【比較例6】
中国産ワカメの葉体部を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分7.2%まで乾燥したワカメ葉体部20gを、電気炉(イスズ製作所;NMR13E)を用い、500℃で3時間灰化した。次にこの海藻灰1質量部に対し4質量部の蒸留水を加え、25℃で1時間、攪拌しながら浸漬抽出し、次に抽出液をNo.5Aの濾紙で濾過した。濾物に対し、この浸漬抽出操作を3回繰り返し、得られた抽出液を併せ、塩酸でpH7.0に調整後、エバポレータで1/10体積程度になるまで減圧濃縮した。濃縮液を煮詰めながら水分を蒸発させ、更に150℃で一晩乾燥させた後、粉砕し海藻ミネラルを得た。尚、本比較例6で用いたワカメ葉体部は、実施例1〜5に使用したものと同時に粉砕、脱水、洗浄、乾燥したものである。このときの灰化条件、浸漬抽出条件、各歩留、及び得られた海藻ミネラルの1%濃度水溶液の酸消費量の測定結果及び各処理条件を表6に示す。
【065】
【表6】
【066】
【比較例7】
中国産ワカメの葉体を洗浄し、数cmにカットした後、脱水し、水分7.2%まで乾燥したワカメの葉体部20gを、電気炉(イスズ製作所;NMR13E)を用い、900℃で4時間灰化した。次に灰化によって得られた海藻灰1質量部に対し5質量部の塩濃度10%になるように天日塩を溶解させた海水を加え、25℃で1時間攪拌しながら浸漬抽出し、次に抽出液をNo.5Aの濾紙で濾過した。抽出液を煮詰めながら水分を蒸発させ、更に120℃で6時間乾燥させた後、粉砕し海藻ミネラルを得た。尚、本比較例7で用いたしたワカメの葉体部は、実施例1〜5に使用したものと同時に脱水、洗浄、乾燥したものである。このときの灰化条件、浸漬抽出条件、各歩留、及び得られた海藻ミネラルの1%濃度水溶液の酸消費量の測定結果及び各処理条件を表7に示す。
【067】
【表7】
【068】
【実施例11〜13、比較例8〜12】
実施例6、8、9の品質改良用食塩代替物、比較例4〜7の海藻ミネラルおよび精製塩を用いて塩蔵鮭を次記記載する塩蔵処理方法並びに加熱調理方法で製造し、その加熱調理歩留測定と、表8に記載する官能評価基準により食感(ジューシー感)、及び塩味の官能評価を行った。その結果を表9に示す。
【069】
<塩蔵処理方法と条件、加熱調理方法、官能評価>
精製塩90質量部に対し実施例6、8、9の品質改良用食塩代替物、比較例4〜7の海藻ミネラルをそれぞれ10質量部加えて一部代替した塩を調整する。次に、三枚におろした後切り身にした鮭100質量部に対し、それぞれ品質改良用食塩代替物及び海藻ミネラルで一部代替した塩、及び精製塩をそれぞれ20質量部撤布し、16時間、4℃の冷蔵下で塩蔵する。次に、水道水で鮭切り身に撤布した品質改良用食塩代替物及び海藻ミネラルで一部代替した塩及び精製塩を洗い流す。次に、コンベクションオーブン(マルゼン社・SSC−06)を用い、200℃で16分加熱調理した後取り出し、室温(25℃)で1時間放冷し、加熱調理歩留を測定し、成人男・女12名からなるパネラーによって食感(ジューシー感)、塩味の官能評価を行った。食感(ジューシー感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とする。評価基準は表8に示す。
【070】
<評価基準>
【表8】
【071】
【表9】
【072】
【実施例14〜16、比較例13〜18】
実施例1、3、4の品質改良用食塩代替物、比較例1〜3、比較例6、7の海藻ミネラル及び精製塩をそれぞれ溶かした浸漬液に、エビを漬け込み、次記に記載する浸漬液条件と方法、加熱調理方法により加工調理エビを製造し、その加熱調理歩留測定と、表10に記載する官能評価基準により食感(ジューシー感、弾力感)及び塩味の官能評価を行った。その結果を表11に示す。
【073】
<浸漬液条件と方法、加熱調理方法及び官能評価>
実施例1、3、4の品質改良用食塩代替物、比較例1〜3、比較例6、7の海藻ミネラル、及び精製塩それぞれを水道水に溶かし3.5%濃度(W/V%)に調整する。次に、冷蔵下で自然解凍したベトナム産のサイズ100/200の冷凍エビ約300gを浸漬液に30分間浸漬する。浸漬液とエビは同質量部とした。次にエビを取り出し、97〜100℃で1分間ボイル加熱調理した後取り出し、室温(25℃)で20分間放冷し、加熱調理歩留を測定し、成人男・女10名からなるパネラーによって食感(ジューシー感、弾力感)、塩味の官能評価を行った。食感(ジューシー感、弾力感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とした。評価基準は表10に示す。
【074】
<評価基準>
【表10】
【075】
【表11】
【076】
【実施例17、18、比較例19】
実施例2、5の品質改良用食塩代替物、及び精製塩をそれぞれを用いて調整したピックル液を所定の大きさにカットした鶏肉に、減圧したタンブラーでマッサージ処理することで浸透させた後、オーブン加熱調理して加工調理鶏肉を製造し、その加熱調理歩留測定と、表8に記載する官能評価基準により食感(ジューシー感)及び塩味の官能評価を行った。その結果を表12に示す。
【077】
使用した鶏肉の処理条件と方法、浸漬液条件と方法、加熱調理方法と条件は次の通りである。
【078】
<鶏肉の処理条件と方法、浸漬液条件と方法、加熱調理方法、官能評価>
ピックル液は、水道水95質量部に、グルタミン酸ナトリウム0.5質量部、ホワイトペッパー0.5質量部、実施例2、5の品質改良用食塩代替物、及び精製塩、それぞれ4質量部加え調整する。次に冷蔵下で自然解凍し、約20g/ヶにカットしたブラジル産冷凍鶏もも肉100質量部にそれぞれ調整したピックル液20質量部加え、−60%まで減圧したタンブラー(ステファン社・VM60)を用い、30分間マッサージしながらピックル液を鶏肉に浸透させる。次に鶏肉を取り出し、コンベクションオーブンを用い170℃、10分間加熱調理した後取り出し、室温(25℃)で20分間放冷し、加熱調理歩留を測定し、成人男・女10名からなるパネラーによって食感(ジューシー感、)、塩味の官能評価を行った。食感(ジューシー感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とした。評価基準は表8に示す。
【079】
【表12】
【080】
【実施例19、比較例20】
実施例10の品質改良用食塩代替物及び精製塩、それぞれを用いてカマボコを製造し、カマボコの破断強度、くぼみ測定と、表13に記載する官能評価基準により塩味の官能評価を行った。その結果を表14に示す。
【081】
カマボコの作成条件と方法、破断強度・くぼみ測定条件、塩味の官能評価は次の通りである。
【082】
精製塩80質量部に対し、実施例10の品質改良用食塩代替物20質量部を加えて一部代替した塩を調整する。カッターミキサー(ステファン社・UMC5型)用い、2分間から摺りした洋上SA級すけそうすり身100質量部に対し、品質改良用食塩代替物で一部代替した塩、及び精製塩、それぞれ2.5質量部、水20質量部を加え、10分間塩摺りする。次に練り上がったすり身を、非通気性の折幅55mmのケーシングに充填し、直ちに90℃のお湯で30分間加熱し、カマボコを作成する。得られたカマボコは4℃の冷蔵下に18時間放置後、レオメーター(サン科学社・CR200D型)で直径5mmのプランジャーを用いて破断強度、くぼみを測定する。成人男・女10名からなるパネラーによって食感(弾力感)、塩味の官能評価を行った。食感(弾力感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とする。評価基準は表13に示す。
【083】
<評価基準>
【表13】
【084】
【表14】
【085】
【実施例20、比較例21】
実施例7の品質改良用食塩代替物及び精製塩、それぞれを用いてハンバーグを製造し、ハンバーグの加熱調理歩留、表10に記載する官能評価基準により食感(ジューシー感、弾力感)、塩味の官能評価を行った。その結果を表15に示す。
【086】
ハンバーグの作成条件と方法、加熱調理条件と官能評価方法は次の通りである。
【087】
<作成条件と方法、加熱調理条件と官能評価方法>
デンマーク産豚外モモをチョッパーで5mm目プレートを用いて挽肉としたもの90質量部、みじん切りした生玉ねぎ5質量部、パン粉1質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、グルタミン酸ナトリウム0.1質量部、水4.2質量部、実施例7の品質改良用食塩代替物、及び精製塩、それぞれ0.6質量部を加え、生地が均一になるまでミキサー(愛工舎製作所社・KM−230型)で20秒混合する。次に、得られたハンバーグ生地を70g/ヶの小判型に成型する。次にコンベクションオーブンを用い、180℃で10分間調理加熱した後取り出し、室温(25℃)で1時間放冷し、加熱歩留を測定し、成人男・女10名からなるパネラーによって食感(ジューシー感、弾力感)、塩味の官能評価を行った。食感(ジューシー感、弾力感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とする。評価基準は表10に示す。
【088】
【表15】
【089】
【実施例21、比較例22】
実施例3の品質改良用食塩代替物及び精製塩、それぞれを配合調整したピックル液をインジェクターを用い注入し、減圧したタンブラーでマッサージ処理した後、加熱調理、冷却してロースハムを製造し、該ロースハムを2mmの厚さにスライスする。そのロースハムのスライスしたものの破断強度の測定と表13記載の評価基準により食感(弾力感)及び塩味の官能評価を行った。その結果を表16に示す。
【090】
ロースハムの作成条件と方法、条件と方法及び塩味の官能評価は次の通りである。
【091】
<ロースハムの作成条件と方法、条件と方法及び塩味の官能評価>
ピックル液は水道水77質量部に、デキストリン9.0質量部、乾燥卵白4.0質量部、砂糖2.0質量部、グルタミン酸ナトリウム0.6質量部、ホワイトペッパー0.2質量部。ナツメグ0.2質量部、実施例3の品質改良用食塩代替物及び精製塩7質量部それぞれを加え調整する。次に冷蔵下で解凍したデンマーク産豚ロース肉100質量部に対し、インジェクター(ホルシュタイン、ウント、フゥールマン社・BI−52型)を用いて、それぞれ調整したピックル液30質量部を注入した後、−60%まで減圧したタンブラーで30分間マサージ処理を行ない、注入したピックル液を豚ロース全体に均一に浸透させる。次に豚ロースを取り出し、通気性の折幅133mmのケーシングに充填し、17時間冷蔵下で静置し、ピックル液と豚ロース肉を馴染ませる。次に燻煙機(アスカバコマット社・200G型)を用い、雰囲気温度60℃で60分間乾燥、薫煙処理を雰囲気温度70℃で60分間、更に中心温度が74℃になるまで雰囲気温度80℃でクッキングした後、速やかに冷水に漬けて冷却し、ロースハムとする。得られたロースハムを厚さ2mmにスライスし、レオーメーターで直径5mmのプランジャーを用いて破断強度を測定し、成人男・女10名からなるパネラーによって食感(弾力感)、塩味の官能評価を行った。食感(弾力感)、塩味の官能評価結果は各パネラーが4点満点で評価し、その平均値とした。評価基準は表13に示す。
【092】
【表16】
【093】
【発明の効果】
本発明に係る品質改良用食塩代替物を食塩の代替物として用いることにより魚介類及び/又は畜肉類の加工食品の加熱調理時の加熱歩留まりが向上するとともに、食感が改良される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワカメ葉体部を原料とした海藻灰から種々の条件により製造した品質改良用食塩代替物についての酸消費量と加熱歩留まりとの関係を表す図である。
【図2】ワカメ葉体部を原料とした海藻灰から種々の条件により製造した品質改良用食塩代替物についての酸消費量と官能評価(ジューシー感)との関係を表す図である。
【図3】ワカメ葉体部を原料とした海藻灰から種々の条件により製造した品質改良用食塩代替物についての酸消費量と官能評価(弾力感)との関係を表す図である。
【図4】ワカメ葉体部を原料とした海藻灰から種々の条件により製造した品質改良用食塩代替物についての品質改良用食塩代替物の1%水溶液のpHと酸消費量との関係を表す図である。
【図5】ワカメ葉体部を原料として用いて抽出液量を変化させた場合の灰化温度、酸消費量の変化を表す図である。
【図6】昆布の仮根部を原料として用いて抽出液量を変化させた場合の灰化温度、酸消費量の変化を表す図である。
Claims (4)
- 300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする魚介類の品質改良用食塩代替物。
- 300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする畜肉類の品質改良用食塩代替物。
- 300〜900℃で灰化した海藻灰化物からpH値を調整することなく抽出した水抽出物を乾燥して得られる乾燥物であって該乾燥物の1%水溶液の酸消費量が10mmol/Lから100mmol/Lであることを特徴とする魚介類及び/又は畜肉類を主原料とする加工食品の品質改良用食塩代替物。
- 食塩の代替品として、請求項3記載の品質改良用食塩代替物を用いた魚介類及び/又は畜肉類を主原料とする加工食品。
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