JP4223826B2 - 部品剥がし工具及び部品剥がし装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着剤(感圧性接着剤)によって固定された部品やラベル等の剥離、特に、複写機・プリンタ等のOA機器の部品リサイクルまたはリユースにおける再使用可能部品の分離・分解工程で使用される部品剥がし工具ないし装置で、剥がし対象部品の種類に応じた剥がし方法を用いることを特徴とする部品剥がし工具、部品剥がし装置及び部品剥がし方法に関する。剥がしている途中で部品がちぎれたり、被着体に糊(粘着剤)が残りにくく、しかも狭い溝や凹内面に貼られた部品を剥がすことができ、プラスチックフィルム付発泡ウレタン等の比較的腰の強い部品や、薄いデカルシール等の比較的端部をめくりおこしにくい部品も剥がすことが可能な部品剥がし工具、部品剥がし装置及び部品剥がし方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリなどの電子写真技術を用いた画像形成装置においては、画像を形成させる現像部周辺の部品に、トナーの漏れ防止用としてウレタン発泡体、モルトプレン、フエルトなどを数多く使用している。これらの部品は、粘着剤ないし両面粘着テープで、前記画像形成装置の構造部材などに固定されていることが多い。このように、ウレタン発泡体、モルトプレン、フエルトなどからなる部品(以下被剥対象部材と呼ぶ)は、粘着剤ないし両面粘着テープで樹脂ケース等の被着体に貼り付けられている。
【0003】
一方、前述した画像形成装置では、各部品をリサイクルまたはリユースすることが望まれている。磨耗やへたりによる劣化などの経年変化などにより、リサイクルまたはリユース時に前述した被剥対象部材を樹脂ケース等の被着体から除去する必要がある。
【0004】
現在、前述した画像形成装置の分解・リサイクル工程において、粘着剤により被着体に固定された被剥対象部材を剥がす作業は作業者がヘラやペンチを用いて行なっている。しかし、これらの工具による剥がし作業では、接着剤などが被着体表面に残留したり、被剥対象部材がちぎれることがあり、これらが問題となっている。
【0005】
すなわち、ヘラやペンチで剥がした場合、剥がしの起点部で粘着剤が被着体に残りやすく、残った粘着剤を除去する作業が必要となる。また、貼られてから長期間経過した被剥対象部材では、粘着力の増大や強度の低下のため、被剥対象部材をつまんで引っ張った際に途中で切れやすくなる。これらは、リサイクル工程での作業能率を低下させる問題になっている。
【0006】
また、これらの剥がし作業は、比較的熟練を要する作業であり、作業者による品質のばらつきもあるため、機械化、自動化することが望まれている。
【0007】
粘着テープ、ラベルを剥がす従来工法としてスクレーパ部材状ツールを用いること(特許文献1及び特許文献2参照)が提案されている。スクレーパ部材状ツール100を用いて被剥対象部材102を剥がした場合、図15に示すように、スクレーパ部材100が粘着剤層107の上に乗り上げて粘着剤層107(即ち糊などの接着剤)が被着体101の表面に残留しやすい問題がある.
【0008】
なお、図19に示された被剥対象部材102は、両面粘着テープ103とこの両面粘着テープ103の一方の粘着剤層107に貼られた発泡ウレタン層105とからなる。両面粘着テープ103は、合成樹脂からなる基材層106と、この基材層106の両表面に積層された一対の粘着剤層107とを備えている。一対の粘着剤層107が発泡ウレタン層105に貼られているとともに、他方の粘着剤層107が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材102は、被着体101の表面に貼り付けられている。
【0009】
上述の問題点を解決する方法として、本発明の出願人は、被着体との摩擦係数が比較的高い摩擦部材を用いる剥がし工具および工法(特許文献3ないし特許文献7参照)を提案している。例えば、特許文献3及び特許文献5においては、被剥対象部材に摩擦力を作用させる摩擦部材を用いることで、被着体を傷つけず、被着体への接着剤の残留や被剥対象部材のちぎれを発生しにくくしている。
【0010】
さらに、特許文献4では、前述した摩擦部材の剥がし効果をさらに高めた回転式の工具ないし工法を提案している。さらに、特許文献6では、狭い部分や凹部内面に貼られた被剥対象部材に対応し、剥がした被剥対象部材が貼り付きにくいベルト方式の剥離工具、方法および装置を提案している。さらに、特許文献7では、被着体に干渉しにくいよう退避可能な挟持手段を備えた剥離工具を提案している。
【0011】
【特許文献1】
特開平6−92544号公報
【特許文献2】
特開平7−24780号公報
【特許文献3】
特開2002−263632号公報
【特許文献4】
特開2002−282832号公報
【特許文献5】
特開2002−316087号公報
【特許文献6】
特願2001−299102号
【特許文献7】
特願2002−176771号
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記提案により、複写機のトナーカートリッジ等、複雑な形状を有する被着体の狭い部分や凹部内面に貼られた部品を剥がすことが可能になった。
【0013】
残された課題として、前述した摩擦部材を用いても、プラスチックフィルム等で補強された比較的腰の強い被剥対象部材やデカルシール等の薄い被剥対象部材は、摩擦力だけでは剥がし力が不足して剥がすことができない場合がある。また、段差部や角部に貼られた被剥対象部材を剥がす場合、摩擦部材では被着体などの磨耗が著しくなる。
【0014】
さらに、段差部や角部に貼られた被剥対象部材をスクレーパ部材で剥がす場合、スクレーパ部材が被着体に引っかかり、うまく剥がせなかったり工具や装置に過負荷が加わったりする恐れがある。また、ベルト方式の剥離工具を繰り返し使用しているうちに、剥がした被剥対象部材が摩擦部材(ベルト等)に貼り付いて剥がし動作の妨げになる場合がある。
【0015】
したがって、本発明の目的は、プラスチックフィルム付発泡ウレタン等の比較的腰の強い被剥対象部材や、デカルシールなどの薄い被剥対象部材を確実に剥がすことが可能な部品剥がし工具、部品剥がし装置及び部品剥がし方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の部品剥がし工具(被着体に貼りつけられた被剥対象部材を剥がす部品剥がし工具)は、前記被剥対象部材の端部に当接する曲面部を有する摩擦部材と、前記被剥対象部材の端部に当接するエッジ部を有するスクレーパ部材と、が設けられ、そして、前記スクレーパ部材には、前記被剥対象部材の端部を引っ掛けることが可能な段差部が、設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1に記載の部品剥がし工具において、前記スクレーパ部材が、被剥対象部材を剥がす際に、該被剥対象部材に押し付けられるように設けられ、そして、前記被剥対象部材に押し付けられる前記スクレーパ部材に加わる力が所定の値になると、前記スクレーパ部材を前記被剥対象部材から離せる逃がし機構が、前記部品剥がし工具に設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項2に記載の部品剥がし工具において、前記逃がし機構が、前記摩擦部材を支持する工具本体と、前記工具本体に揺動自在に支持され、かつ、前記スクレーパ部材を支持する支持部材と、前記スクレーパ部材のエッジ部が前記被剥対象部材に近づく方向に前記支持部材を付勢する付勢手段と、前記支持部材と当接するように前記工具本体に設けられて、前記付勢手段の付勢力により前記スクレーパ部材が前記被剥対象部材に近づく方向に前記支持部材が変位することを規制するストッパと、を備えたことを特徴とする
【0019】
請求項4に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具において、前記摩擦部材が、回転駆動される駆動プーリと従動プーリとに掛け渡されて前記駆動プーリと前記従動プーリの周りを回転するように、輪状に形成され、そして、前記摩擦部材を前記駆動プーリと前記従動プーリとから脱落することを防止する案内手段が、前記部品剥がし工具に設けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具において、前記部品剥がし工具が、被着体から剥がした被剥対象部材を保持する保持手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項5に記載の部品剥がし工具において、前記保持手段は、互いに接離自在に設けられかつ互いの間に前記被剥対象部材を挟持する一対の部材を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項6に記載の部品剥がし工具において、前記一対の部材として、前記摩擦部材とスクレーパ部材とのうち少なくとも一方を用いたことを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1ないし請求項7のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具において、前記摩擦部材とスクレーパ部材との一方を選択して、前記被着体から被剥対象部材を剥がす摩擦部材とスクレーパ部材を切り換える切り換え手段を備えたことを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項8に記載の部品剥がし工具において、前記切り換え手段は、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材との相対的な位置を変更する位置変更手段であることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項8に記載の部品剥がし工具において、前記切り換え手段は、前記摩擦部材とスクレーパ部材とが並ぶ第1の位置と、前記摩擦部材とスクレーパ部材とのうち一方の隣りから他方が退避した第2の位置とに亘って、前記他方をスライドさせるスライド機構であることを特徴とする。
【0026】
請求項11に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項10に記載の部品剥がし工具において、前記他方が前記第1の位置に位置付けられると、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とが互いに当接して、剛性が高くなることを特徴とする。
【0027】
請求項12に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1に記載の部品剥がし工具において、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とを支持するとともに掴むことが可能な把持部を備え、前記被着体に対する前記把持部の姿勢を変化させることで、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とのうち一方を選択して前記被着体から被剥対象部材を剥がす摩擦部材とスクレーパ部材を切り換えることが可能なことを特徴とする。
【0028】
請求項13に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1に記載の部品剥がし工具において、前記スクレーパ部材は、被剥対象部材を剥がす際に、該被剥対象部材に押し付けられるとともに、前記段差部は、前記被剥対象部材の端部を引っ掛ける際に、前記被着体の表面上に位置付けられる第1の面と、前記被剥対象部材の表面上に位置付けられる第2の面と、前記第1の面と第2の面とに連なるとともに前記被剥対象部材の端部に相対する段差面とにより形成されており、前記段差面の前記第1の面と第2の面との双方に直交する方向の幅が、前記スクレーパ部材が押し付けられて圧縮した被剥対象部材の厚みより狭いことを特徴とする。
【0029】
請求項14に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1に記載の部品剥がし工具において、前記段差部を、複数備えたことを特徴とする。
【0030】
請求項15に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1に記載の部品剥がし工具において、前記段差部は、前記被剥対象部材の端部を引っ掛ける際に、前記被着体の表面上に位置付けられる第1の面と、前記被剥対象部材の表面上に位置付けられる第2の面と、前記第1の面と第2の面とに連なるとともに前記被剥対象部材の端部に相対する段差面とにより形成されており、前記段差面の前記第1の面と第2の面との双方に直交する方向の幅を変更可能とする段差調整手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
請求項16に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1ないし請求項15のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具において、前記摩擦部材に付着した前記被剥対象部材を除去する第1の除去手段を備えたことを特徴とする。
【0032】
請求項17に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項16に記載の部品剥がし工具において、前記第1の除去手段は、前記被剥対象部材を前記摩擦部材から掻き落とす回転ブラシであることを特徴とする。
【0033】
請求項18に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項16または請求項17に記載の部品剥がし工具において、前記第1の除去手段に付着した前記被剥対象部材を除去する第2の除去手段を備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項19に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項18に記載の部品剥がし工具において、前記第2の除去手段は、櫛状のブレードであることを特徴とする。
【0035】
請求項20に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項18または請求項19に記載の部品剥がし工具において、前記第2の除去手段に付着した前記被剥対象部材を除去する第3の除去手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
請求項21に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項20に記載の部品剥がし工具において、前記第3の除去手段は、前記第2の除去手段に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする。
【0037】
請求項22に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項18に記載の部品剥がし工具において、前記第2の除去手段は、前記第1の除去手段に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする。
【0038】
請求項23に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項16に記載の部品剥がし工具において、前記第1の除去手段は、前記摩擦部材に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする。
【0039】
請求項24に記載の本発明の部品剥がし工具は、請求項1ないし請求項23のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具において、前記被着体から剥がした被剥対象部材を回収する回収手段を備えたことを特徴とする。
【0040】
請求項25に記載の本発明の部品剥がし装置は、請求項1ないし請求項24のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具と、被剥対象部材を貼り付けた被着体を固定する被着体固定手段と、前記部品剥がし工具を前記被着体固定手段に固定された被剥対象部材に対し相対的に移動する工具移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態にかかる部品剥がし工具及び部品剥がし装置を図1ないし図11を参照して説明する。本発明の部品剥がし工具及び部品剥がし装置は、図6(a)ないし図6(e)に示すプラスチックケースなどの被着体1に貼られた粘着部品などの被剥対象部材2を前記被着体1から剥がす工具及び装置である。
【0042】
図6(a)に示す被剥対象部材2は、両面粘着テープ3とこの両面粘着テープ3の一方の粘着剤層4に貼られた発泡ウレタン層5とからなる。両面粘着テープ3は、合成樹脂からなる基材層6と、この基材層6の両表面に積層された一対の粘着剤層4とを備えている。一対の粘着剤層4が発泡ウレタン層5に貼られているとともに、他方の粘着剤層4が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材2は、被着体1の表面に貼り付けられている。
【0043】
図6(b)に示す被剥対象部材2は、発泡ウレタン層5と、この発泡ウレタン層5に積層された粘着剤層7とを備えている。粘着剤層7は、発泡ウレタン層5の表面に粘着剤が塗布されて得られる。粘着剤層7が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材2は、被着体1の表面に貼り付けられている。
【0044】
図6(c)に示す被剥対象部材2は、両面粘着テープ3と、プラスチックフィルム8と、両面粘着テープ3と、発泡ウレタン層5とが順に積層されて得られる。両面粘着テープ3は、図6(a)に示した両面粘着テープ3と同様に、基材層と、この基材層の両表面に積層された一対の粘着剤層とを備えている。被剥対象部材2は、両面粘着テープ3の一方の粘着剤層にプラスチックフィルム8が貼られ、このプラスチックフィルム8に両面粘着テープ3の一方の粘着剤層が貼られ、両面粘着テープ3の他方の粘着剤層に発泡ウレタン層5が貼られて得られる。両面粘着テープ3の他方の粘着剤層が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材2は、被着体1の表面に貼り付けられる。
【0045】
図6(d)に示す被剥対象部材2は、プラスチックフィルム8と、このプラスチックフィルム8に積層された粘着剤層7とを備えている。粘着剤層7は、プラスチックフィルム8の表面に粘着剤が塗布されて得られる。粘着剤層7が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材2は、被着体1の表面に貼り付けられている。
【0046】
図6(e)に示す被剥対象部材2は、紙などからなるラベル8と、このラベル8に積層された粘着剤層7とを備えている。粘着剤層7は、ラベル8の表面に粘着剤が塗布されて得られる。粘着剤層7が被着体1の表面に貼り付けられて、被剥対象部材2は、被着体1の表面に貼り付けられている。
【0047】
また、前述した被着体1としては、画像形成装置としての複写機やプリンターのトナーカートリッジ、トナーボトル、現像ユニット、外装カバーなどを用いることができる。被着体1の材質としては、各種プラスチック(ABS、PS、PPEなど)や金属(鉄、アルミ、SUS鋼など)である。
【0048】
前述した図6(a)ないし図6(e)に示す被剥対象部材2は、トナー飛散防止、各種表示などの目的で複写機の現像ユニットなどに多数使用されている.
【0049】
部品剥がし装置10は、図2に示すように、ベース板11と、このベース板11上に設置された被着体固定手段としての被着体固定治具12と、ベース板11上に設置された工具移動手段としての多関節ロボット13と、回収装置14と、制御装置15と、部品剥がし工具16とを備えている。ベース板11は、工場のフロア上などに設置される。ベース板11は、平板状に形成されている。
【0050】
被着体固定治具12は、被剥対象部材2を貼り付けた被着体1を固定する。被着体固定治具12は、被着体1に合わせた固定方法が選択されて、選択された方法により被着体1を固定する。
【0051】
多関節ロボット13は、先端に部品剥がし工具16を取り付ける。多関節ロボット13は、部品剥がし工具16を被着体固定治具12に固定された被着体1に対し相対的に移動させる。被剥対象部材12の貼られている位置や表面の形状によって、多関節ロボット13に要求される動作自由度は異なる。
【0052】
貼られた被剥対象部材12が限定されているのであれば、多関節ロボット13は、2〜3自由度程度でも十分機能を果たすことができる。多関節ロボット13は、6自由度であるのが望ましい。多関節ロボット13は、6自由度であれば、部品剥がし工具16の姿勢を変化させることができるので、多種多様な被剥対象部材2及びさまざまな形状の被着体1に対応することができる。
【0053】
回収装置14は、ベース板11上に設置されている。回収装置14は、後述の吸引回収ダクト24なとと接続されたホース17と、このホース17と接続された吸引回収装置18とを備えている。吸引回収装置18は、ホース17内の気体を吸引する即ち負圧を発生する。回収装置14は、吸引回収装置18で発生した負圧により、被剥対象部材2を吸引回収ダクト24内に吸い込む。回収装置14は、吸引回収装置18内に設けられた図示しないフィルタ手段で被剥対象部材2を分離する。
【0054】
制御装置15は、多関節ロボット13や回収装置14や部品剥がし工具16などと接続しており、これらの動作を制御して、部品剥がし装置10全体の制御をつかさどる。
【0055】
部品剥がし工具16は、図1に示すように、工具本体としてのベースアングル19と、支持部材としてのモータベース部20と、摩擦機構21と、スクレーパ機構22と、除去機構23と、回収手段としての吸引回収ダクト24とを備えている。
【0056】
ベースアングル19は、直交する2つの面からなるL字形状に形成されており、一方の面にロボット取付部25を、もう一方の面に揺動軸26およびストッパ57を設けている。ロボット取付部25は、多関節ロボット13の先端に取り付けられる。ロボット取付部25は、多関節ロボット13等の工具移動手段に部品剥がし工具16を取り付ける部分である。ロボット取付部25として、ロボットハンド用ツールチェンジャなどを使用しても良い。また、部品剥がし工具16を手動で使用する場合には、作業員などが掴むことができる工具把持部をロボット取付部25に取り付けても良い。
【0057】
モータベース部20は、平板状に形成されている。モータベース部20の平面形状は、四角形の2つの隅が切り落とされて、六角形状に形成されている。モータベース部20の一つの隅部20aには、揺動軸26が取り付けられている。また、揺動軸26は、ベースアングル19に取り付けられている。モータベース部20は、該揺動軸26を中心として揺動自在にベースアングル19に支持されている。
【0058】
摩擦機構21は、支持アーム27と、駆動源としての図示しないモータと、このモータにより回転駆動される駆動プーリ28と、案内手段としてのベルトガイド29と、従動プーリ30と、摩擦部材31とを備えている。
【0059】
支持アーム27は、板状に形成されており、一端部がモータベース部20に取り付けられている。支持アーム27は、部品剥がし工具16が多関節ロボット13に取り付けられると、モータベース部20から被着体固定治具12に固定された被着体1に向かって伸びている。
【0060】
モータは、モータベース部20に取り付けられている。モータは、駆動プーリ28を回転駆動することで、摩擦部材31をベルト駆動させるトルクを発生する。モータは、回転数を可変できる。また、モータの出力トルクが不足する場合は、モータと駆動プーリ28との間に減速器を設けてもよい。モータとして電動モータを用いることができる。さらに、モータとして空気力を用いたモータを使用してもよい。
【0061】
駆動プーリ28は、モータベース部20に回転自在に支持されている。駆動プーリ28は、モータにより、図中の矢印A1,B1方向に回転駆動される。
【0062】
ベルトガイド29は、一対設けられ、それぞれ板状に形成されている。一対のベルトガイド29は、図4(b)に示すように、支持アーム27の他端部を挟んだ状態で、この支持アーム27の他端部に固定されている。ベルトガイド29は、プーリ28,30に掛け渡された摩擦部材31と当接して、この摩擦部材31がこれらのプーリ28,30から脱落することを防止する。
【0063】
従動プーリ30は、図4に示すように、ベルトガイド29間に掛け渡された先端プーリピン32によりベルトガイド29に対し回転自在に支持されている。先端プーリピン32は、円柱状に形成されており、両端部がベルトガイド29に圧入固定されている。従動プーリ30は、先端プーリピン32に対して滑らかに回転する。
【0064】
摩擦部材31は、輪状に形成されている。摩擦部材31は、ベルト状に形成されており、所謂無端ベルトとなっている。摩擦部材31の表面が被剥対象部材2との間に十分な摩擦力を生じかつ被剥対象部材2の粘着剤が付着しにくく、被着体1を傷つけない。摩擦部材31は、軟質でかつ耐磨耗性および耐クラッキング性にすぐれた材質からなる。
【0065】
摩擦部材31として、一般的なポリウレタン、クロロプレンなどからなるタイミングベルトを使用してもよい。被剥対象部材2を被着体1から剥がすためには20N程度の力が必要であるため、摩擦部材31として、十分な回転トルクが得られるように、裏面に歯が付いたタイミングベルトなどの使用が望ましい.また、摩擦部材31として、表面にも歯がついたタイプのベルトを使用すれば、表面に被剥対象部材2が貼り付きにくく、かつ大きな剥がし力が得られる。
【0066】
摩擦部材31は、駆動プーリ28と、従動プーリ30とに掛け渡される。摩擦部材31は、従動プーリ30と駆動プーリ28との間で張力が付与され、駆動プーリ28からの回転駆動力により、図1中の矢印A2,B2に沿って、これらプーリ28,30の周りを回転する。摩擦部材31は、先端プーリピン32から外れないようベルトガイド29で幅方向の位置ずれが規制されいている。
【0067】
摩擦部材31は、被剥対象部材2に接触できるよう、先端部31a(従動プーリ30の近傍)でベルトガイド29から突出している。また、先端部31aは、従動プーリ30の外周面上に位置して該従動プーリ30の外形に沿って曲面をなしている。前述した先端部31aは、本明細書に記した曲面部をなしている。摩擦部材31の先端部31aは、被着体1から被剥対象部材2を剥がす際に、被剥対象部材2の端部に当接する。即ち、摩擦部材31の先端部31aは、被剥対象部材2の端部に当接可能である。
【0068】
スクレーパ機構22は、スライド機構としてのシリンダ33と、チャックアーム34と、チャックレバー35と、スクレーパ部材36とを備えている。シリンダ33として、軽量、大発生力、高速度などの点でエアシリンダを用いるのが良い。シリンダ33は、シリンダ本体37と、このシリンダ本体37内に加圧された気体が供給されるとシリンダ本体37から伸縮するシャフト38とを備えている。
【0069】
シリンダ本体37は、モータベース部20に取り付けられている。シャフト38の伸縮方向は、支持アーム27の長手方向と平行である。シャフト38は、シリンダ本体37から伸長すると従動プーリ30即ち摩擦部材31の先端部31aに近づく。シリンダ33は、シャフト38を伸長させることで、図1中に実線で示すスクレーパ部材36を摩擦部材31の先端部31aと並ぶ第1の位置に位置付ける。第1の位置では、スクレーパ部材36と摩擦部材31の先端部31aとが互いに隣り合っているとともに、互いに接触する。
【0070】
シリンダ33は、シャフト38を縮小させることで、図1中二点鎖線で示すスクレーパ部材36を、摩擦部材31の先端部31aから離れた(退避した)第2の位置に位置付ける。第2の位置では、スクレーパ部材36は、摩擦部材31の先端部31aから退避している。こうして、シリンダ33は、第1の位置と第2の位置とに亘って、スクレーパ部材36をスライドさせる。
【0071】
また、シリンダ33は、第1の位置と第2の位置とに亘ってスクレーパ部材36をスライドさせることで、前記摩擦部材31とスクレーパ部材36との相対的な位置を変更する。第1の位置と第2の位置とに亘ってスクレーパ部材36をスライドすることで、スクレーパ部材36と摩擦部材31の先端部31aとが互いに接離する。
【0072】
さらに、シリンダ33は、第1の位置と第2の位置とに亘ってスクレーパ部材36をスライドさせることで、摩擦部材31とスクレーパ部材36とのうち一方を選択して、前記被着体1から被剥対象部材2を剥がす。このように、シリンダ33は、前記被着体1から被剥対象部材2を剥がす摩擦部材31とスクレーパ部材36を切り換える。シリンダ33は、本明細書に記した切り換え手段と位置変更手段とをなしている。
【0073】
チャックアーム34は、ナット39などにより、シリンダ33のシャフト38に固定されている。チャックアーム34は、シリンダ33のシャフト38から支持アーム27と平行に被着体1に向かって伸びている。
【0074】
チャックレバー35は、一対設けられており、それぞれV字状に形成されている。チャックレバー35は、チャックアーム34の先端部を挟んでいる。チャックレバー35の中央部にチャックレバー軸40が取り付けられている。チャックレバー軸40は、チャックアーム34に取り付けられている。チャックレバー35は、チャックレバー軸40を中心として、チャックアーム34に回転自在に支持されている。
【0075】
チャックレバー35は、図示しないねじりバネにより、図1中に二点鎖線で示す姿勢に向かって、チャックレバー軸40を中心とした回転方向の両方向に付勢されている。このため、チャックレバー35は、外力が作用しないと、図1中に二点鎖線で示す姿勢になる。また、図1中に二点鎖線で示す姿勢では、チャックレバー35の一端部は、摩擦部材31の先端部31aから離れている。
【0076】
スクレーパ部材36は、両側面を一対のチャックレバー35で挟まれている。スクレーパ部材36は、一対のチャックレバー35に固定されている。スクレーパ部材36は、被着体1から被剥対象部材2を剥がす際に、被着体1の表面と平行に位置付けられる平坦面41と、この平坦面41の両端に設けられた鋭角部42と角部43と、取付部44とを備えている。
【0077】
鋭角部42は、先端が鋭角の刃状に形成されている。角部43は、先端が略90度程度の刃状に形成されている。鋭角部42は、角部43より摩擦部材31寄りに配されている。角部43は、本明細書に記したエッジ部をなしている。角部43は、スクレーパ部材36で被着体1から被剥対象部材2を剥がす際に、被剥対象部材2の端部に当接する。即ち、角部43は、被剥対象部材2の端部に当接可能である。取付部44は、鋭角部42及び角部43よりチャックレバー35寄りに設けられており、このチャックレバー35に固定されている。
【0078】
被着体1がABS、PS等の樹脂の場合、スクレーパ部材36は、被着体1を傷つけないように、被着体1と同等の硬度の樹脂からなるのが良い。また、被着体1が金属の場合や、被着体1の傷が品質上問題とならない場合は、スクレーパ部材36は、金属性からなっても良い。本実施形態のスクレーパ部材36では、角部43と、取付部44との間にフック状の段差部45を設けている。
【0079】
段差部45は、スクレーパ部材36で被剥対象部材2を被着体1から剥がす際に、被着体1の表面上に位置付けられる平坦面41と、被剥対象部材2の表面上に位置付けられる第2の面46(図9などに示す)と、前記平坦面41と第2の面46とに連なり被剥対象部材2の端部と相対する段差面47により形成されている。
【0080】
また、段差面47の平坦面41と第2の面46との双方に直交する方向の幅(段差部45の高さ)は、被剥対象部材2の圧縮時の厚みよりやや小さくするのが好ましい。段差部45は、段差面47が被剥対象部材2の端部と相対するように位置付けられて、被剥対象部材2に引っ掛けられる。このため、段差部45は、被剥対象部材2の端部を引っ掛けることが可能である。なお、平坦面41は、本明細書に記した第1の面に相当する。
【0081】
また、スクレーパ部材36が鋭角のエッジ部を有していると、図19に示すように粘着材層107を破断して、被着体101の表面に糊が残りしやすい。このため、スクレーパ部材36の角部43の角度は90度程度が望ましい。
【0082】
前述した構成によれば、スクレーパ機構22は、シリンダ33のシャフト38が伸長すると、チャックレバー35の他端部35bがベルトガイド29に接触する。さらに、シャフト38が伸長すると、チャックレバー35が図1中の時計回りに回転する。チャックレバー35は、スクレーパ部材36が摩擦部材31の先端部31aに接触して押し付けられるまで回転する。
【0083】
そして、図1に実線で示すように、スクレーパ部材36が第1の位置に位置付けられて、スクレーパ部材36と摩擦部材31の先端部31aとの間に、被剥対象部材2を挟持することができる。また、摩擦部材31を交換する場合、チャックレバー35を図1中の反時計回りに回転させれば、摩擦部材31を着脱することができる。
【0084】
また、スクレーパ部材36は、前述した第1の位置において、角部43を被剥対象部材2の端部に押し付けることにより、被着体1から前述した被剥対象部材2を剥がす。前述したスクレーパ部材36は、挟持時に被剥対象部材2を確実に固定する機能と、解放時に被剥対象部材2が付着しにくい機能が求められる。このため、スクレーパ部材36は、フッ素系コーティングなどの非粘着処理を施して、被剥対象部材2に接触する面を粗面にするのが良い。さらに、スクレーパ部材36には、被剥対象部材2の挟持を検出する挟持センサが取り付けられている。
【0085】
スクレーパ部材36と摩擦部材31の先端部31aとは、被着体1から剥がした被剥対象部材2を保持する保持手段をなしている。スクレーパ部材36と摩擦部材31の先端部31aとは、シリンダ33のシャフト38の伸縮により互いに接離自在に設けられた一対の部材をなしている。
【0086】
除去機構23は、第1の除去手段としての回転ブラシ48と、第2の除去手段としての櫛状のブレード49と、第3の除去手段としての噴射ノズル50とを備えている。
【0087】
回転ブラシ48は、モータベース部20に回転自在に支持されている。回転ブラシ48は、駆動プーリ28とに掛け渡された無端ベルト51により、駆動プーリ28の回転駆動力により、摩擦部材31の移動方向と逆向きに回転する。回転ブラシ48の外周部の毛52(図11に示す)は、摩擦部材31の表面に接触している。図1では、摩擦部材31が図中の矢印A2,B2方向に回転すると、回転ブラシ48は、無端ベルト51の作用により図中の矢印A3,B3方向に回転する。
【0088】
回転ブラシ48は、回転駆動されることで、摩擦部材31に付着した被剥対象部材2を掻き落とす。回転ブラシ48には、十分な掻き落とし力を備えつつ摩擦部材31を傷つけず、さらに被剥対象部材2が付着しにくいことが必要である。そのため、回転ブラシ48の毛52は、弾性を有した比較的軟らかい材質で、さらに被剥対象部材2との接触面積を小さくするのがよい。毛52としてナイロン等の毛材を用いた回転ブラシ48は、この条件を満足し、さらに被剥対象部材2の表面が接触により変形することにより、被剥対象部材2の付着防止及び分離効果がいっそう高い。
【0089】
また、回転ブラシ48は、前述したように摩擦部材31の表面の移動方向と反対方向に回転させることで、固定型のブラシより、摩擦部材31との間を被剥対象部材2が通過しにくくして、被剥対象部材2の掻き落とし効果を高めている。
【0090】
櫛状のブレード49は、モータベース部20に取り付けられており、回転ブラシ48の近傍に配されている。櫛状のブレード49の縁部は、回転ブラシ48の毛52内に侵入している。櫛状のブレード49は、回転ブラシ48に付着した被剥対象部材2が再び摩擦部材31に付着することを防止するために、回転ブラシ48に付着した被剥対象部材2を除去する。
【0091】
ただの板状のスクレーパ部材53では、図11(a)に示すように、スクレーパ部材53が回転ブラシ48の外周面に接触しているので、スクレーパ部材53と回転ブラシ48とのの間を被剥対象部材2が通過してしまう可能性がある。しかしながら、櫛状のブレード49を用いることで、該櫛状のブレード49を回転ブラシ48の毛52の中に位置付けることができる。そして、図11(b)に示すように、櫛状のブレード49で回転ブラシ48の毛52を梳くようにすることで確実に被剥対象部材2を除去することができる。
【0092】
噴射ノズル50は、モータベース部20に取り付けられている。噴射ノズル50の開口部は、櫛状のブレード49に相対している。噴射ノズル50内には、図示しない加圧気体供給源より加圧された気体が供給される。噴射ノズル50は、櫛状のブレード49に付着した被剥対象部材2を除去するため、加圧された気体を櫛状のブレード49に吹き付けて、被剥対象部材2を吹き飛ばす。
【0093】
噴射ノズル50は、被剥対象部材2の付着側と反対側から加圧された気体を吹き付けるのがよい。また、図1中に点線で示すように、回転ブラシ48に加圧された気体を吹き付ける噴射ノズル54を設けても良く、摩擦部材31に加圧された気体を吹き付ける噴射ノズル55を設けても良い。
【0094】
これらの噴射ノズル50,54,55は、本明細書に記したエア吹き付け手段をなしている。噴射ノズル55は、本明細書に記した第1の除去手段をなしている。噴射ノズル54は、本明細書に記した第2の除去手段をなしている。
【0095】
吸引回収ダクト24は、ベースアングル19に取り付けられている。吸引回収ダクト24の開口部は回転ブラシ48と相対している。吸引回収ダクト24には、前述したホース17を介して吸引回収装置18が接続している。吸引回収ダクト24は、開口部を通して、回転ブラシ48、櫛状のブレード49、噴射ノズル50などで分離(除去)された被剥対象部材2を吸い込む。吸い込まれた被剥対象部材2は、前述した吸引回収装置18で回収する。
【0096】
また、前述した部品剥がし工具16は、付勢手段としてのコイルばね56と、ストッパ57とを備えている。コイルばね56は、ベースアングル19のロボット取付部25と、モータベース部20との間に設けられている。コイルばね56は、図9(b)などに示すように、被剥対象部材2を被着体1から剥がす際に、スクレーパ部材36の角部43が被剥対象部材2に近づく方向に、モータベース部20を図1中の矢印Cに沿って付勢している。
【0097】
ストッパ57は、ベースアングル19から立設しており、かつモータベース部20と接触する。ストッパ57は、モータベース部20と当接すると、コイルばね56の付勢力により更にスクレーパ部材36の角部43が被剥対象部材2に近づく方向に、モータベース部20が変位することを規制する。
【0098】
前述したベースアングル19と、モータベース部20と、コイルばね56と、ストッパ57は、本明細書に記した逃がし機構を構成している。逃がし機構は、被着体1の端部に合わせて貼られた被剥対象部材2を剥がす場合などに、被着体1にスクレーパ部材36の段差部45などが引っかかって、部品剥がし工具16に過負荷が加わるのを防止する。
【0099】
前述した構成の逃がし機構によれば、被剥対象部材2を剥がしていて、スクレーパ部材36が、図5中に二点鎖線で示す位置で被着体1の段差部や角部に引っかかることがある。このとき、さらに、部品剥がし工具16を図5中の矢印Dに沿って移動して、被剥対象部材2を剥がそうとすると、被剥対象部材2または被着体1からの反力が前述したコイルばね56の付勢力などの設定した値よりも大きくなる。
【0100】
すると、モーターベース部20は、揺動軸26を中心として図5中の矢印Eに沿って回転する。部品剥がし工具16の移動方向Dに対し揺動軸26がスクレーパ部材36の角部43より先にあるため、モーターベース部20の回転によりスクレーパ部材36はやや上昇する。そして、スクレーパ部材36の引っかかりがはずれる。
【0101】
こうして、スクレーパ部材36が、被着体1などに引っかかると、モータベース部20が図5中に実線で示す位置まで回転(変位)して、スクレーパ部材36の角部43が被剥対象部材2から離れる。このように、逃がし機構は、被剥対象部材2に押し付けられるスクレーパ部材36に被剥対象部材2などからの反力により加わる力が予め定められる所定の値になると、前記スクレーパ部材36が被剥対象部材2から離れることを許容する。
【0102】
以上の動作により、逃がし機構により、部品剥がし工具16に過大な負荷が発生して部品剥がし工具16や被着体2を破損することを防止できる。特に自動装置で剥がし動作を行う際には有効である。スクレーパ部材36が外れる力の設定は、揺動軸26とスクレーパ部材36の角部43との位置関係、被着体1への押付力、コイルばね56の付勢力(強さ)などで任意に設計ないし調整することができる。
【0103】
また、前述した構成の部品剥がし工具16は、スクレーパ部材36が第1の位置に位置付けられると、摩擦部材31の先端部31a(曲面部に相当)とスクレーパ部材36とが互いに当接する。このため、摩擦部材31の先端部31a(曲面部に相当)とスクレーパ部材36とが互いに当接すると、摩擦部材31の先端部31a(曲面部に相当)とスクレーパ部材36とが離れている状態より剛性が向上する(剛性が高くなる)。
【0104】
前述した構成の部品剥がし工具16及び部品剥がし装置10を用いて、被着体1から被剥対象部材2を剥がす際には、まず、被着体固定治具12に被着体1を固定する。このとき、被剥対象部材2を上方に向けておく。そして、多関節ロボット13の先端に部品剥がし工具16を取り付けるとともに、回収装置14のホース17を部品剥がし工具16の吸引回収ダクト24に接続する。
【0105】
そして、制御装置15に予め記憶されている動作パターンにしたがって、多関節ロボット13、回収装置14及び部品剥がし工具16の動作を制御して、被着体1から被剥対象部材2を剥がす。
【0106】
本実施形態では、スクレーパ部材36、摩擦部材31やこれらのスクレーパ部材36と摩擦部材31との間に被剥対象部材2を挟むなどの複数の剥がし手段を備えている。このため、図6(a)〜(e)に示す被剥対象部材2の特性に合わせて、前述した複数の剥がし手段を組み合わせて、被着体1から被剥対象部材2を剥がすことができる。特に、これまで摩擦部材31のみでは剥がすことができなかった図6(c)〜(e)に示す被剥対象部材2を剥がすことが可能になった。
【0107】
例えば、図6(a)に示すように、被剥対象部材2が発泡ウレタン層5と両面粘着テープ3とからなり、比較的柔軟で、ちぎれにくい(両面粘着テープ3の基材層6の強度が十分ある)場合には、図3(a)で示す工程に沿って、被剥対象部材2を剥がす。
【0108】
まず、図7(a)に示すように、被剥対象部材2が被着体1に貼り付けられた状態で、ステップS1aでは、シリンダ33のシャフト38を縮小しておく。そして、駆動プーリ28を回転して、矢印A2に沿って回転している摩擦部材31の先端部31aを被剥対象部材2の端部に図7中の矢印D(被着体1の表面)に沿って押し付ける。そして、摩擦部材31で、図7(b)及び図7(c)に示すように、被剥対象部材2の端部を徐々に被着体1から剥がす。そして、ステップS2aにすすむ。
【0109】
その後、ステップS2aでは、シリンダ33のシャフト38を伸長して、摩擦部材31の先端部31aとスクレーパ部材36との間に被着体1から剥がれて丸まった被剥対象部材2の端部を挟む。そして、図7(d)に示すように、部品剥がし工具16で被剥対象部材2を引っ張る。所謂ピール剥がしで、被剥対象部材2を被着体1から剥がす。そして、剥がした被剥対象部材2をステップS10で回収する。
【0110】
前述した摩擦部材31による剥がしはスクレーパ部材36による剥がしと異なり両面粘着テープ3の粘着剤層7を切断しにくいため、ピール剥がしと同様に糊残りしにくく、被着体1の再生品質を維持することができる。
【0111】
また、図6(a)に示すように被剥対象部材2が発泡ウレタン層5と両面粘着テープ3とからなる場合や、図6(b)に示すように被剥対象部材2が発泡ウレタン層5と粘着剤層7とからなり、比較的柔軟でちぎれやすい(被剥対象部材2の引っ張り強度が小さい)場合には、図3(b)で示す工程に沿って、被剥対象部材2を剥がす。
【0112】
まず、図8(a)に示すように、被剥対象部材2が被着体1に貼り付けられた状態で、ステップS1bでは、シリンダ33のシャフト38を縮小しておく。そして、駆動プーリ28を回転して、矢印A2に沿って回転している摩擦部材31の先端部31aを被剥対象部材2の端部に図8中の矢印D(被着体1の表面)に沿って押し付ける。そして、摩擦部材31で、図8(b)及び図8(c)に示すように、被剥対象部材2の端部を徐々に被着体1から剥がす。そして、ステップS2bにすすむ。
【0113】
ステップS2bは、さらに摩擦部材31を回転させながら、被着体1の表面と平行に、矢印Dに沿って移動させて、図8(d)に示すように、被剥対象部材2の残りの部分を剥がす。
【0114】
そして、シリンダ33のシャフト38を伸長して、被着体1から剥がされて丸まった被剥対象部材2の端部を、図8(e)に示すように、摩擦部材31の先端部31aとスクレーパ部材36との間につかむ。そして、被剥対象部材2を被着体1から完全に剥がす。そして、剥がした被剥対象部材2をステップS10で回収する。
【0115】
このように、ちぎれやすい被剥対象部材2の場合、ピール剥がしをすると被剥対象部材2が破断しやすい。しかしこの場合、被剥対象部材2の粘着力が大きくても被剥対象部材2と摩擦部材31との間に滑りが発生して力を逃がすため、被剥対象部材2に過大な引張り力が作用しにくく、被剥対象部材2がちぎれにくい。また、被剥対象部材2に力が作用する場所が徐々に移動して行くため、被剥対象部材2に応力が加わる時間が短く、被剥対象部材2がちぎれにくい。
【0116】
ステップS2bは、摩擦部材31を被着体1に押し付けずに少し浮かせた状態で移動させてもよい。この場合、被着体1と摩擦部材31の摩擦がなくなるので摩擦部材31の磨耗が少なくなり、モータの消費電力も小さくて済む。
【0117】
また、図6(c)に示すように、被剥対象部材2が発泡ウレタン層5と両面粘着テープ3とPETフィルム等のプラスチックフィルム2と両面粘着テープ3とからなり、プラスチックフィルム2で強化された発泡ウレタン層5を有して比較的硬く、ちぎれにくいことがある。また、図6(d)に示すように、被剥対象部材2がプラスチックフィルム8からなる樹脂シート層と粘着剤層7とからなる樹脂製デカルシールであり、比較的薄く、ちぎれにくいことがある。このように、被剥対象部材2の引っ張り強度が大きい場合には、図3(f)で示す工程に沿って、被剥対象部材2を剥がす。
【0118】
まず、図9(a)に示すように、被剥対象部材2が被着体1に貼り付けられた状態で、ステップS1fでは、シリンダ33のシャフト38を伸長させておく。そして、図9(b)に示すように、スクレーパ部材36の角部43を被剥対象部材2の端部に接触させて、スクレーパ部材36を矢印D(被着体1の表面)に沿って、被剥対象部材2に押し付ける。このときの押し付け力は0.5〜3N程度である。そして、図9(c)に示すように、被剥対象部材2の端部をスクレーパ部材36でめくり起こして、ステップS2fに進む。
【0119】
ステップS2fでは、シリンダ33のシャフト38を縮小して、スクレーパ部材36を摩擦部材31の先端部31aから退避させる。そして、駆動プーリ28を回転駆動して、摩擦部材31を矢印A2に沿って回転させて、図9(d)に示すように、被剥対象部材2の端部に押し付ける。矢印Dに沿って、被着体1の表面に平行に、部品剥がし工具16を移動させる。このときの摩擦部材31の押し付け力は0.5〜3N程度である。図9(e)に示すように、十分なつかみ代が得られるまで5〜20mm程度、被剥対象部材2の端部を剥がして、ステップS3fにすすむ。
【0120】
ステップS3fでは、駆動プーリ28即ち摩擦部材31の回転を停止して、シリンダ33のシャフト38を伸長して、摩擦部材31の先端部31aとスクレーパ部材36との間に被着体1から剥がれた被剥対象部材2の端部を挟持する。そして、図9(f)に示すように、部品剥がし工具16で被剥対象部材2を引っ張って、被剥対象部材2を被着体1から剥がす。所謂ピール剥がしを行う。
【0121】
そして、シリンダ33のシャフト38を縮小して、スクレーパ部材36を退避させて、被剥対象部材2を剥がす時と駆動プーリ28を逆向きの回転して、摩擦部材31を図1中の矢印B2に沿って逆回転する。摩擦部材31に付着している被剥対象部材2は、掻き落とし回転ブラシ48まで運ばれた後、回転ブラシ48で掻き落とされて、摩擦部材31から分離除去される。
【0122】
摩擦部材31から除去された被剥対象部材2は、吸引回収ダクト24内に吸いこまれて吸引回収装置18に回収される。こうして、剥がした被剥対象部材2をステップS10で回収する。
【0123】
回転ブラシ48に被剥対象部材2が付着しても、櫛状のブレード49で、濾し取られる。このため、被剥対象部材2が再び摩擦部材31に付着しない。また、櫛状のブレード49にたまった(付着した)被剥対象部材2は、エア吹き付け手段としての噴射ノズル50から噴射された気体により吹き飛ばされ、吸引回収ダクト24内に吸いこまれて、吸引回収装置18に回収される。
【0124】
図6(c)に示すようなプラスチックフィルム8で強化された被剥対象部材2や図6(d)に示すように薄いフィルム状の被剥対象部材2の場合、被剥対象部材2の端部に摩擦力を加えただけでは、端部をめくり起こすことが難しい。しかし、被剥対象部材2の端部をスクレーパ部材36でめくり起こすことできっかけをつくってやると摩擦部材31で剥がすことが可能になる。
【0125】
また、この場合、スクレーパ部材36でめくり起こす長さはごく僅か(0.5〜2mm)で十分であり、スクレーパ部材36で問題となる糊残りを少なくすることができる。
【0126】
また、本実施形態の場合、スクレーパ部材36が、被剥対象部材2の端部を剥がす際にも、被剥対象部材2を掴む際にも用いられるため、部品剥がし工具16を小型化することができる。また、スクレーパ部材36が突出して第1の位置の状態では、スクレーパ部材36を摩擦部材31(支持アーム27)が支える構造になり、部品剥がし工具16の剛性が向上する。スクレーパ部材36が進退可能な可動式であっても剥がしに必要な剛性を確保することができる。
【0127】
また、図6(e)に示すように、紙製デカルシールなどの被剥対象部材2が、紙などからなるラベル8などの紙製シートと粘着剤層7とからなり、比較的硬くちぎれやすい場合または比較的薄くちぎれやすい場合(引っ張り強度が小さい場合)がある。被剥対象部材2が、長尺部品で、ピール剥がしするには、部品剥がし工具16の移動距離が長すぎる場合がある。これらの場合には、図3(d)で示す工程に沿って、被剥対象部材2を剥がす。
【0128】
まず、図10(a)に示すように、被剥対象部材2が被着体1に貼り付けられた状態で、ステップS1dでは、シリンダ33のシャフト38を伸長しておく。そして、図10(b)に示すように、スクレーパ部材36の角部43を被剥対象部材2の端部に接触させて、スクレーパ部材36を矢印D(被着体1の表面)に沿って、被剥対象部材2の端部に押し付ける。そして、図10(c)に示すように、被剥対象部材2の端部をスクレーパ部材36でめくり起こす。このときのスクレーパ部材36の押し付け力は0.5〜3N程度である。そして、ステップS2dに進む。
【0129】
ステップS2dでは、シリンダ33のシャフト38を縮小させて、スクレーパ部材36を摩擦部材31の先端部31aから退避させる。駆動プーリ28を回転駆動して、摩擦部材31を矢印A2に沿って回転させて、図10(d)に示すように、被剥対象部材2の端部に接触させる。摩擦部材31の先端部31aを矢印D(被着体1の表面)に沿って、被剥対象部材2の端部に押し付け、被着体1の表面に平行に部品剥がし工具16を移動させる。このときの、摩擦部材31の先端部31aの押し付け力は0.5〜3N程度である。十分なつかみ代が得られるまで、5〜20mm程度、被剥対象部材2の端部を剥がす。
【0130】
さらに、摩擦部材31を回転させながら、被着体1の表面と平行に移動させて、図10(e)及び図10(f)に示すように被剥対象部材2を順に剥がして、被剥対象部材2の残りの部分を剥がす。シリンダ33のシャフト38を伸長して、被着体1から剥がされて丸まった被剥対象部材2の端部を摩擦部材31の先端部31aとスクレーパ部材36との間につかんで、図10(g)に示すように被着体1から完全に剥がす。そして、剥がした被剥対象部材2をステップS10で回収する。
【0131】
このように、前述した図8(b)などに示された動作パターンと同様に、摩擦部材31を利用して剥がすことで、ちぎれやすい被剥対象部材2でもちぎれずに剥がすことが可能になる.
【0132】
本実施形態によれば、被剥対象部材2の端部に当接する曲面部としての先端部31aを有する摩擦部材31と、被剥対象部材2の端部に当接するエッジ部としての角部43を有するスクレーパ部材36の両者を備えている。このことにより、被剥対象部材2の腰が強い場合や薄い場合など、摩擦部材31のみでは端部を剥がしにくい場合であっても、スクレーパ部材36で端部をめくり起こすことができる。したがって、プラスチックフィルム8付発泡ウレタン層5等の比較的腰の強い被剥対象部材2や、デカルシールなどの薄い被剥対象部材2を確実に剥がすことが可能となる。
【0133】
さらに、端部をめくり起こした後は摩擦部材31を押しつけて剥がすことにより、スクレーパ部材36のみで剥がす場合に比べて被着体1に糊が残りにくくきれいに剥がすことができる。また、被剥対象部材2の強度が低くちぎれやすい場合であっても、摩擦部材31の押付で剥がすことにより、被剥対象部材2の同一箇所に力を加え続けることがなく、摩擦部材31と被剥対象部材2との滑り作用により力を逃がして過度の剥がし力が被剥対象部材2に加わることを防ぐため、ピール剥がしに比べて被剥対象部材2がちぎれにくく、きれいに剥がすことができる。
【0134】
また、逃がし機構が、スクレーパ部材36に所定の値を超える力が加わることを防止する。このため、部品剥がし工具16が不意に破損することを防止できる。逃がし機構が、前述したベースアングル19とモータベース部20とコイルばね56とストッパ57とからなるので、逃がし機構は、スクレーパ部材36に所定の値を超える力が加わることを確実に防止できる。
【0135】
また、摩擦部材31が輪状に形成され、この摩擦部材31がプーリ28,30の周りを回転する。さらに、ベルトガイド29が摩擦部材31の脱落を防止する。このため、摩擦部材31の先端部31aを挿入することで、比較的狭い箇所に設けられた被剥対象部材2も確実に除去できる。
【0136】
さらに、摩擦部材31とスクレーパ部材36とで被剥対象部材2を掴むことができる。このため、剥がした後の被剥対象部材2を回収装置14などに運ぶことができ、複数の被剥対象部材2の連続剥がし作業を、単一の工具で行うことができる。さらに、所謂ピール剥がしを行うことができる。
【0137】
さらに、摩擦部材31とスクレーパ部材36とで被剥対象部材2を掴むことができるので、部品剥がし工具16の小型化及び軽量化を図ることができる。さらに、剥がし作業から保持作業に移る際に、工具の姿勢を大きく変化させることなくスムーズに切り換えることができるので、短時間で効率よく剥がすことができる。
【0138】
また、シリンダ33のシャフト38を伸縮させて、摩擦部材31とスクレーパ部材36を切り換えることができる。被剥対象部材2の特性に応じて、適切に剥がし作業を行うことができる。
【0139】
さらに、シリンダ33のシャフト38を伸長して、スクレーパ部材36に摩擦部材31の先端部31aが接触すると、スクレーパ部材36などを支持アーム27と摩擦部材31などで支えることとなる。このため、部品剥がし工具16の剛性が向上して、被剥対象部材2をスクレーパ部材36で剥がす際に、不意に部品剥がし工具16が破損することを確実に防止できる。
【0140】
また、回転ブラシ48と櫛状のブレード49と噴射ノズル50と回収手段としての吸引回収ダクト24を備えているので、除去した被剥対象部材2が再度摩擦部材31に付着することを防止できる。したがって、確実に被剥対象部材2を被着体1から剥がすことができる。また、剥がした被剥対象部材2が周囲に散乱することを防止できる。
【0141】
前述した実施形態では、被剥対象部材2を回収するために吸引回収ダクト24、ホース17及び吸引回収装置18を用いている。しかしながら、本発明では、これらの代わりに、図12に示す双対回転ローラ式の回収装置60を用いてもよい。
【0142】
回転ローラ式の回収装置60は、図12に示すように、板状の装置本体61と、一対の回転ブラシ62と、一対の掻き落とし歯車63と、モータ64とを備えている。一対の回転ブラシ62は、互いに並べられており、装置本体61に回転自在に支持されている。一対の回転ブラシ62は、モータ64により図12中の矢印Fに沿って、互いに逆向きに同回転数で回転される。
【0143】
掻き落とし歯車63は、互いに並べられており、装置本体61に回転自在に支持されているとともに、回転ブラシ62の下方に配されている。一対の掻き落とし歯車63は、モータ64により図12中の矢印Gに沿って、互いに逆向きに同回転数で回転される。掻き落とし歯車63は、回転ブラシ62から被剥対象部材2を掻き落とす。モータ64は、前述した矢印F,Gに沿って、回転ブラシ62及び掻き落とし歯車63を回転させる。
【0144】
前述した構成の回転ローラ式の回収装置60は、部品剥がし工具16の摩擦部材31の先端部31aとスクレーパ部材36との間に挟まれた被剥対象部材2が、回転ブラシ62間に供給される。そして、回収装置60は、回転ブラシ62から掻き落とし歯車63が被剥対象部材2を掻き落として、該被剥対象部材2を回収する。
【0145】
また、前述した実施形態の変形として、工具移動手段としての多関節ロボット13の動作自由度の一部を、被着体固定治具12に持たせて、被着体1も移動する構成としても良い。さらに、部品剥がし工具16を固定して、被着体1のみを移動させる構成でも良い。
【0146】
また、摩擦部材31とスクレーパ部材36との間に被剥対象部材2を挟んで、ピール剥がしを行う。即ち、前記スクレーパ部材36と前記摩擦部材31とのうち一方を用いて、被着体1から被剥対象部材2を剥がした後、剥がした被剥対象部材2と、剥がしたスクレーパ部材36と摩擦部材31とのうち一方とを接触させたまま、剥がした被剥対象部材2を保持して、被着体1から剥がすことがある。
【0147】
しかしながら本発明では、摩擦部材31とスクレーパ部材36とは別体の一対の部材を設けて、これらの部材間に被剥対象部材2を挟んでも良い。さらに、本発明では、摩擦部材31とスクレーパ部材36とのうち少なくとも一方と、他の部材との間に被剥対象部材2を挟んでも良い。
【0148】
また、本発明では、被剥対象部材2を挟むことに限らず、種々の手段で被剥対象部材2を保持しても良い。勿論、被剥対象部材2を挟むことに限らず、被剥対象部材2を保持する保持手段を設けても良い。
【0149】
さらに、シリンダ33に限らず、摩擦部材31とスクレーパ部材36との相対位置を変更する手段を種々の方法で実現しても良い。さらに、摩擦部材31とスクレーパ部材36を切り換える手段を、シリンダ33に限らず、種々の方法で実現しても良い。
【0150】
さらに、前述した第1の実施形態では、図3(c)に示すように、スクレーパ部材36を被剥対象部材2の端部に押し付けて、この端部をめくり上げた後、スクレーパ部材36と摩擦部材31とで挟んで、ピール剥がしを行っても良い。また、前述した第1の実施形態では、図3(e)に示すように、スクレーパ部材36を被剥対象部材2の端部に押し付けて、この端部をめくり上げた後、スクレーパ部材36を更に被剥対象部材2に押し付けて、最後までスクレーパ部材36で被剥対象部材2を剥がしても良い。
【0151】
また、前述した実施形態では、シリンダ33のシャフト38の伸縮によりスクレーパ部材36が移動するようになっている。しかしながら、本発明では、摩擦部材31をシリンダ33のシャフト38の伸縮などにより移動するようにしても良い。
【0152】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる部品剥がし工具を、図13及び図14を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0153】
本実施形態の部品剥がし工具16は、作業員が手動で、被剥対象部材2を剥がす際に用いられる。部品剥がし工具16は、図13に示すように、一対の棒状部材65を備えている。これらの棒状部材65の中央部が互いに回転自在に連結されて、部品剥がし工具16は、ペンチ状に形成されている。
【0154】
一方の棒状部材65の一端部65aには、スクレーパ部材36が取り付けられ、他方の棒状部材65の一端部65aには、摩擦部材31が取り付けられている。こうして、スクレーパ部材36と摩擦部材31とは、互いに隣り合う状態に並べられている。また、一対の棒状部材65が中央部を中心として回転することで、スクレーパ部材36と摩擦部材31とは、互いに接離する。
【0155】
スクレーパ部材36および摩擦部材31は、ねじなどにより、棒状部材65の一端部65aに固定されている。スクレーパ部材36および摩擦部材31は、棒状部材65の一端部65aから容易に交換できる構造となっている。スクレーパ部材36の材質は、前述した第1の実施形態と同様に、樹脂、金属など用途に合わせて選択する。摩擦部材31の材質は、ポリウレタン等の耐磨耗性のある粘弾性体を使用する。また、摩擦部材31の外表面には、曲面部31aが形成されている。
【0156】
また、棒状部材65の他端部65bは、スクレーパ部材36と摩擦部材31とを支持しているとともに、作業員が掴むことが可能になっている。他端部65bは、本明細書に記した把持部をなしている。
【0157】
把持部としての他端部65bを軸として、部品剥がし工具16の姿勢を回転させることで、図14(a)に示すように摩擦部材31を用いたり、図14(b)に示すようにスクレーパ部材36を用いることができる。摩擦部材31とスクレーパ部材36とを切り替えることができる。また、図14(c)に示すように、部品剥がし工具16の姿勢を変化させて、スクレーパ部材36の鋭角部42を用いることもできる。
【0158】
このように、本実施形態の部品剥がし工具16は、被着体1に対する他端部65bの姿勢を変化させることで、摩擦部材31とスクレーパ部材36とのうち一方を選択して被着体1から被剥対象部材2を剥がす摩擦部材31とスクレーパ部材36を切り換えることが可能となっている。
【0159】
また、本実施形態では、棒状部材65の一端部65aに設けられたスクレーパ部材36と摩擦部材31が保持手段を兼ねている。中央部を中心として棒状部材65を回転させる即ち他端部65bを開閉することで、スクレーパ部材36と摩擦部材31とを開閉できる。そして、スクレーパ部材36と摩擦部材31との間に剥がした被剥対象部材2を挟持することができる。
【0160】
また、本実施形態では、第1の実施形態で説明したのと同様、被剥対象部材2に合わせて、摩擦部材31とスクレーパ部材36とを適宜組み合わせて用いるのがよい。
【0161】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、摩擦部材31とスクレーパ部材36とを適宜切り換えることで、種々の被剥対象部材2を被着体1から確実に剥がすことができる。
【0162】
また、本実施形態では、作業員が手で保持して被剥対象部材2を被着体1から剥がす部品剥がし工具16を記載している。しなかしながら、本実施形態の部品剥がし工具16を、前述した第1の実施形態に示した多関節ロボット13等の工具移動手段に取り付けても良い。そして、本実施形態の部品剥がし工具16を自動装置化することも可能である。
【0163】
次に、本発明の第3の実施形態にかかる部品剥がし工具を、図15ないし図17を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0164】
本実施形態の部品剥がし工具16も、前述した第2の実施形態と同様に、作業員が手動で被剥対象部材2を被着体1から剥がす際に用いられる。
【0165】
本実施形態の部品剥がし工具16は、図15に示すように、ドライバー状の工具本体66と、この工具本体66の先端部にスクレーパ部材36と摩擦部材31を取り付けている。
【0166】
工具本体66の先端部には、図17(a)ないし(d)に示す複数の段差部45を有するスクレーパ部材67に交換したり、図16に示す段差部45の高さを調節できるスクレーパ部材68に交換することも可能である。
【0167】
図17(a)ないし(d)に示されたスクレーパ部材67は、立方体(平行六面体状)の部材本体69と、この部材本体69の各面から突出した突出部材70とを一体に備えている。前述した段差部45は、部材本体69と突出部70との間に形成されている。段差部45は、第1の実施形態と同様に、面41,46,47により形成されている。
【0168】
また、段差面47の前記平坦面41と第2の面46との双方に直交する方向の幅は、段差部45毎に異なる。また、前記幅は、段差部45の高さに相当する。
【0169】
段差部45は、段差面47が被剥対象部材2の端部と相対するように位置付けられて、被剥対象部材2に引っ掛けられる。このため、段差部45は、被剥対象部材2の端部を引っ掛けることが可能である。このとき、平坦面41は被着体1の表面上に位置付けられ、第2の面46は被剥対象部材2の表面上に位置付けられる。
【0170】
そして、段差面47が被剥対象部材2の端部に近づく方向に、段差部45が押圧されることにより、被剥対象部材2を除去する。また、前述した段差面47の幅即ち段差部45の高さは、剥がす被剥対象部材2を圧縮した時の厚みより若干小さくするのが望ましい。
【0171】
また、図16に示すスクレーパ部材68は、前述した工具本体66に取り付けられる本体部71と、この本体部71にスライド自在に支持されたスクレーパ部72と、前記本体部71に回転自在に支持された調整ねじ73とを備えている。スクレーパ部72の外表面には、図16(b)に示すように、歯74が複数刻まれている。調整ねじ73には、図16(b)に示すように、前記歯74と噛み合うウォーム75が一体に形成されている。スクレーパ部材68は、調整ねじ73を回転させることで、スクレーパ部72の本体部71からの突出量を変更する。
【0172】
このスクレーパ部材68では、段差部45は、本体部71とスクレーパ部72との間に設けられている。この段差部45も同様に平坦面41と第2の面46と段差面47とから形成されている。また、スクレーパ部材68には、摩擦部材31も一体に取り付けられている。なお、前述した歯74と調整ねじ73は、本明細書に記した段差調整手段をなしている。
【0173】
さらに、本実施形態の部品剥がし工具16は、シリンダ76と、挟持部材77とを備えている。シリンダ76は、工具本体66に固定されたシリンダ本体78と、このシリンダ本体78から伸縮自在なシャフト79とを備えている。挟持部材77は、シャフト79に取り付けられている。シャフト79が伸縮することで、挟持部材77がスクレーパ部材36,67,68及び摩擦部材31に接離する。接離とは、近づいたり離れたりすることである。挟持部材77とスクレーパ部材36,67,68は、本明細書に記した保持手段を構成する一対の部材をなしている。
【0174】
本実施形態の部品剥がし工具16は、シリンダ76のシャフト79を縮小した状態で、任意の段差部45を被剥対象部材2の端部に引っ掛ける。そして、段差面47が被剥対象部材2に近づく方向に、部品剥がし工具16を被着体1の表面に沿って移動して、被剥対象部材2を被着体1から剥がす。
【0175】
また、被剥対象部材2を被着体1から剥がした後、シャフト79を伸長して、挟持部材77をスクレーパ部材36,67,68に近づける。すなわち、挟持部材77を前進させる。そして、スクレーパ部材36,67,68と挟持部材77との間に被剥対象部材2を挟持する。
【0176】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、スクレーパ部材36,67,68と、摩擦部材31と、スクレーパ部材36,67,68と挟持部材77との間に挟むことを選択することによって、多種多様な被剥対象部材2を被着体1から確実に剥がすことができる。
【0177】
また、スクレーパ部材36,67,68が段差部45を有している。このことにより、被剥対象部材2の端部に段差部45を引っ掛けて剥がすことができる。また、段差面47の幅即ちスクレーパ部材36,67,68の段差部45の高さが、被剥対象部材2の圧縮した状態の厚みより小さい。このことにより、被剥対象部材2を剥がす際に、スクレーパ部材36,67,68が被着体1に接触せずに、被着体1を傷つけることを防止できる。
【0178】
また、被着体1の端部や段差部に合わせて貼られた被剥対象部材2であっても、前述した高さが厚みより小さいので、被着体1の端部や段差部にスクレーパ部材36,67,68が引っ掛かることを防止できる。確実に被剥対象部材2を剥がすことができ、部品剥がし工具16や被着体1に過負荷が加わることがない。
【0179】
図17に示されたスクレーパ部材67は、段差部45を複数備えている。これらの段差部45の高さは互いに異なる。このため、部品剥がし工具16の姿勢を変えることで、任意の高さの段差部45で、被剥対象部材2を剥がすことができる。このことにより、厚みの異なる複数の被剥対象部材2に1つの部品剥がし工具16で対応することができる。
【0180】
また、図16に示すスクレーパ部材68では、調整ねじ73にウォーム75が一体となっており、スクレーパ部72にウォーム75と噛み合う歯74が刻まれている。調節ねじ73を回転させることで、スクレーパ部材68の段差面47の幅即ち段差部45の高さを、被剥対象部材2に合わせて調節可能としている。このことにより、厚みの異なる複数の被剥対象部材2に1つの部品剥がし工具16で対応することができる。
【0181】
また、本実施形態では、作業員が手で保持して被剥対象部材2を被着体1から剥がす部品剥がし工具16を記載している。しかしながら、本実施形態の部品剥がし工具16を、第2の実施形態と同様に、前述した第1の実施形態に示した多関節ロボット13等の工具移動手段に取り付けても良い。そして、本実施形態の部品剥がし工具16を自動装置化することも可能である。また、本実施形態の部品剥がし工具16は、厚みの異なる複数の被剥対象部材2が被着体1の端部や段差部に貼られている場合に適している。
【0182】
次に、本発明の第4の実施形態にかかる部品剥がし工具を、図18を参照して説明する。なお、前述した第1ないし第3の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0183】
本実施形態の部品剥がし工具16は、作業員が手動で被剥対象部材2を被着体1から剥がしても良いし、前述した第1の実施形態の多関節ロボット13等の工具移動手段に取り付けて自動装置化してもよい。
【0184】
部品剥がし工具16は、図18に示すように、作業員に保持されたり移動手段に取り付けられる工具本体66と、摩擦部材31と、回転駆動部80と、スクレーパ部材36とを備えている。摩擦部材31は、円柱状または円筒状に形成されており、その軸芯を中心として工具本体66の先端部に回転自在に支持されている。
【0185】
回転駆動部80は、工具本体66に回転自在に支持された一対のプーリ81と、これらのプーリ81間に掛け渡された輪状の無端ベルト82とを備えている。一方のプーリ81は、図示しないモータにより回転駆動される。他方のプーリ81は、摩擦部材31とともに回転する。回転駆動部80は、モータからの回転駆動力を一方のプーリ81、無端ベルト82、他方のプーリ81に順に伝達して、摩擦部材31を回転させる。このように、摩擦部材31は、図示しないモータの駆動力をプーリ81から無端ベルト82などを介して伝えられることによって回転駆動される。
【0186】
スクレーパ部材36は、バネ支持部83で工具本体66と連結されている。図18中の矢印Hに沿って、工具本体66の姿勢を変化させることで、被剥対象部材2の端部に当接させられる。また、スクレーパ部材36は、バネ支持部83を中心として、摩擦部材31に近づけられることで、摩擦部材31との間に被剥対象部材2を挟むことができる。
【0187】
前述した構成によれば、摩擦部材31のみでは剥がしにくい被剥対象部材2の場合、まずスクレーパ部材36で被剥対象部材2の端部をめくり起こす。その後、摩擦部材31を回転させて、該摩擦部材31で残りの被剥対象部材2を剥がす。最後に、スクレーパ部材36を矢印Iに沿って摩擦部材31に近づけて、剥がした被剥対象部材2を保持し、廃棄処理等することができる。
【0188】
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様に、スクレーパ部材36と、摩擦部材31と、スクレーパ部材36と摩擦部材31との間に挟むことを選択することによって、多種多様な被剥対象部材2を被着体1から確実に剥がすことができる。
【0189】
前述した実施形態では、電子写真複写機、レーザプリンタ、ファクシミリなどの電子写真技術を用いた画像形成装置のプラスチックケースなどの被着体1から、粘着部品などの被剥対象部材2を剥がすことを記載している。しかしながら、本発明の部品剥がし工具16、部品剥がし装置10及び部品剥がし方法を、各種の電化製品、輸送機械、食品包装ラベルなどの分解リサイクル技術に適用しても良いことは勿論である。
【0190】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0191】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明によれば、被着体に貼りつけられた被剥対象部材を剥がす部品剥がし工具において、前記被剥対象部材の端部に当接する曲面部を有する摩擦部材と、前記被剥対象部材の端部に当接するエッジ部を有するスクレーパ部材と、が設けられ、そして、前記スクレーパ部材には、前記被剥対象部材の端部を引っ掛けることが可能な段差部が、設けられている。このことにより、被剥対象部材が腰が強い場合や薄い部品の場合など、摩擦部材のみでは端部が剥がしにくい場合であっても、スクレーパ部材で端部をめくり起こすことができる。したがって、プラスチックフィルム付発泡ウレタン等の比較的腰の強い被剥対象部材や、デカルシールなどの薄い被剥対象部材を確実に剥がすことが可能となる。また、スクレーパ部材が段差部を有しているので、被剥対象部材の端部に段差部を引っ掛けて剥がすことができる。
【0192】
さらに、端部をめくり起こした後は摩擦部材を押しつけて剥がすことにより、スクレーパ部材のみで剥がす場合に比べて被着体に糊が残りにくくきれいに剥がすことができる。また、被剥対象部材の強度が低くちぎれやすい場合であっても、摩擦部材の押付で剥がすことにより、被剥対象部材の同一箇所に力を加え続けることがなく、摩擦部材と被剥対象部材との滑り作用により力を逃がして過度の剥がし力が被剥対象部材に加わることを防ぐため、ピール剥がしに比べて被剥対象部材がちぎれにくく、きれいに剥がすことができる。
【0193】
請求項2に記載の本発明によれば、スクレーパ部材で剥がす際に所定の力が加わると、逃がし機構がスクレーパ部材を被剥対象部材から離れることを許容する。このため、スクレーパ部材に所定の力を越える力が作用することを防止できる。したがって、被着体の端部に貼られた被剥対象部材を剥がす場合など、スクレーパ部材が被着体にひっかかっても、逃がし機構によりスクレーパ部材が被剥対象部材から離れて、該被剥対象部材の端部から外れるため、工具や被着体に過負荷が加わって工具や被着体を破損することを防止できる。
【0194】
請求項3に記載の本発明によれば、スクレーパ部材が被剥対象部材から離れることを許容する逃がし機構が、工具本体に揺動自在に設けられた支持部材と支持部材を付勢する付勢手段と支持部材に設けられたストッパで構成されている。このことにより、スクレーパ部材を逃がす機構を簡単に実現できる。また、付勢手段の付勢力を調節したり、支持部材の支点位置を変えることにより動作する所定の力を容易に調整できる。
【0195】
請求項4に記載の本発明によれば、摩擦部材が輪状であり、この輪状(ベルト状)の摩擦部材を駆動プーリと従動プーリとに掛け渡して、これらのプーリの回りに回転させる。さらに、案内手段は、摩擦部材が駆動プーリと従動プーリなどから脱落することを防止する。このことにより、工具全体を移動させることなく摩擦部材により被剥対象部材に連続的に摩擦力を作用することができる。また、摩擦部材が輪状であるので、狭い場所であっても工具先端即ち摩擦部材を入れることができる。
【0196】
請求項5に記載の本発明によれば、剥がした被剥対象部材を保持する保持手段を備えたことにより、剥がした後の被剥対象部材を回収装置まで運ぶことができ、複数の被剥対象部材の連続剥がし作業を単一の工具で遂行することができる。
【0197】
請求項6に記載の本発明によれば、保持手段を一対の部材間に被剥対象部材をを挟む挟持方式とすることにより保持力を高くすることが容易である。比較的ちぎれにくい被剥対象部材であれば、該被剥対象部材の端部を剥がした後、挟持した後引っ張って、所謂ピール剥がしで剥がすことができる。
【0198】
請求項7に記載の本発明によれば、摩擦部材またはスクレーパ部材またはその両者が剥がした被剥対象部材を挟持する一対の部材を兼ねることにより、工具の構成要素を減らして小型軽量化することができる。また、摩擦部材とスクレーパ部材とのうち少なくとも一方と剥がした被剥対象部材を接触させた状態のまま保持動作に移ることができ、剥がした被剥対象部材と保持手段との位置関係が安定して確実に保持することができる。
【0199】
また、剥がし動作から保持動作へ移るときに工具全体の姿勢を大きく変化させることなくスムーズに切り替えることができるので、短時間で効率よく剥がすことができる。
【0200】
請求項8に記載の本発明によれば、摩擦部材とスクレーパ部材とのうち一方を選択して、被剥対象部材の剥がす作業に用いる切り替え手段を有している。このことにより、被剥対象部材の特性に合わせてこれらを切り替えて、選択的に使用することができる。
【0201】
請求項9に記載の本発明によれば、摩擦部材とスクレーパ部材の切り替え手段として摩擦部材とスクレーパ部材の相対位置を変更する位置変更手段を用いている。このことにより、工具全体の姿勢を変化させることなく切り替えることができる。切り替え前後の剥がし動作がスムーズにつながるので、短時間で効率よく剥がすことができる。
【0202】
請求項10に記載の本発明によれば、摩擦部材とスクレーパ部材の切り替え手段として、摩擦部材とスクレーパ部材とのうち一方の隣りから退避した位置まで他方をスライドさせるスライド機構を用いている。このことにより、シリンダ等の簡単な機構で、位置変更手段を実現できる。また、摩擦部材とスライド部材とのうち一方を使用しているときに、他方が退避していることにより剥がし動作の妨げになりにくい。
【0203】
請求項11に記載の本発明によれば、第1の位置に位置付けられると、摩擦部材とスクレーパ部材とが互いに当接して剛性を高める。このことにより、スライド機構などの剛性が不足していても剥がし力に抗することができる。剛性が小さい機構で実現できるので、工具を軽量化することができる。
【0204】
請求項12に記載の本発明によれば、被剥対象部材の端部に当接する曲面部を有する摩擦部材と、被剥対象部材の端部に当接するエッジ部を有するスクレーパ部材の両者を備えている。このことにより、被剥対象部材が腰が強い場合や薄い部品の場合など、摩擦部材のみでは端部が剥がしにくい場合であっても、スクレーパ部材で端部をめくり起こすことができる。したがって、プラスチックフィルム付発泡ウレタン等の比較的腰の強い被剥対象部材や、デカルシールなどの薄い被剥対象部材を確実に剥がすことが可能となる。
【0205】
さらに、端部をめくり起こした後は摩擦部材を押しつけて剥がすことにより、スクレーパ部材のみで剥がす場合に比べて被着体に糊が残りにくくきれいに剥がすことができる。また、被剥対象部材の強度が低くちぎれやすい場合であっても、摩擦部材の押付で剥がすことにより、被剥対象部材の同一箇所に力を加え続けることがなく、摩擦部材と被剥対象部材との滑り作用により力を逃がして過度の剥がし力が被剥対象部材に加わることを防ぐため、ピール剥がしに比べて被剥対象部材がちぎれにくく、きれいに剥がすことができる。
【0206】
摩擦部材とスクレーパ部材を支持した把持部の姿勢を変化させることにより、摩擦部材とスクレーパ部材とのうち一方を用いて、被剥対象部材を剥がすことができる。このため、工具自身の可動部分を減らすことができ、軽量で単純な工具とすることができる。
【0207】
請求項13に記載の本発明によれば、段差面の幅即ちスクレーパ部材の段差部の高さが、被剥対象部材の圧縮した状態の厚みより小さい。このことにより、被剥対象部材を剥がす際に、スクレーパ部材が被着体に接触せずに、被着体を傷つけることを防止できる。また、被着体の端部や段差部に合わせて貼られた被剥対象部材であっても、前述した高さが厚みより小さいので、被着体の端部や段差部にスクレーパ部材が引っ掛かることを防止でき、工具や被着体に過負荷が加わることがない。
【0208】
請求項14に記載の本発明によれば、スクレーパ部材は、段差部を複数備えている。これらの段差部の高さは互いに異なるのが望ましい。このことにより、厚みの異なる複数の被剥対象部材に1つの工具で対応することができる。
【0209】
請求項15に記載の本発明によれば、スクレーパ部材の段差面の幅即ち段差部の高さを、被剥対象部材に合わせて調節可能な段差調整手段を備えている。このことにより、厚みの異なる複数の被剥対象部材に1つの工具で対応することができる。
【0210】
請求項16に記載の本発明によれば、摩擦部材から被剥対象部材を除去する第1の除去手段を備えたことにより、連続して複数の被剥対象部材を剥がす際に剥がした被剥対象部材が次の被剥対象部材を剥がす妨げになることがない。
【0211】
請求項17に記載の本発明によれば、第1の除去手段を回転ブラシとしている。回転ブラシが摩擦部材から被剥対象部材を物理的に掻き取ることにより、確実に摩擦部材から被剥対象部材を除去することができる。
【0212】
請求項18に記載の本発明によれば、第1の除去手段に付着した被剥対象部材を除去する第2の除去手段を備えたことにより、第1の除去手段に付着した被剥対象部材が摩擦部材などに再付着することを防止できる。
【0213】
請求項19に記載の本発明によれば、第2の除去手段が櫛状ブレードであることにより、第1の除去手段に付着した被剥対象部材を梳き取って確実に除去することができる。
【0214】
請求項20に記載の本発明によれば、第2の除去手段に付着した被剥対象部材を除去する第3の除去手段を備えたことにより、第2の除去手段に被剥対象部材がたまって性能が劣化するのを防止できる。
【0215】
請求項21に記載の本発明によれば、第3の除去手段としてエア吹き付け手段を用いることにより、簡単な構成で第3の除去手段を実現できる。
【0216】
請求項22に記載の本発明によれば、第2の除去手段としてエア吹き付け手段を用いることにより、簡単な構成で第2の除去手段を実現できる。
【0217】
請求項23に記載の本発明によれば、第1の除去手段としてエア吹き付け手段を用いることにより、簡単な構成で第1の除去手段を実現できる。
【0218】
請求項24に記載の本発明によれば、剥がした被剥対象部材を回収する回収手段を備えたことにより、連続して剥がす際に剥がした被剥対象部材が妨げになるのを防止できる。また、剥がした被剥対象部材が周囲に散乱するのを防止できる。
【0219】
請求項25に記載の本発明によれば、剥がし工具が被剥対象部材の端部に当接する曲面部を有する摩擦部材と、被剥対象部材の端部に当接するエッジ部を有するスクレーパ部材の両者を備えている。このことにより、被剥対象部材が腰が強い場合や薄い部品の場合など、摩擦部材のみでは端部が剥がしにくい場合であっても、スクレーパ部材で端部をめくり起こすことができる。したがって、プラスチックフィルム付発泡ウレタン等の比較的腰の強い被剥対象部材や、デカルシールなどの薄い被剥対象部材を確実に剥がすことが可能となる。
【0220】
また、前記剥がし工具を移動させる工具移動手段と、被着体を固定する被着体固定手段を備えた部品剥がし装置とすることで、剥がし作業を省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態にかかる部品剥がし工具を示す図である。
【図2】 図1に示された部品剥がし工具を備えた部品剥がし装置の概略の構成を示す斜視図である。
【図3】 図2に示された部品剥がし装置で被着体から被剥対象部材を剥がす工程を示すフローチャートである。
【図4】 (a)は、図1に示された部品剥がし工具の摩擦部材の先端部を示す図である。
(b)は、図4(a)中のIVb−IVb線に沿う断面図である。
【図5】 図1に示された部品剥がし工具のスクレーパ部材が被剥対象部材の端部から離れる方向にモータベース部が回転することを説明する説明図である。
【図6】 図1に示された部品剥がし工具で被着体から剥がされる被剥対象部材を説明する説明図である。
【図7】 図6(a)に示された被剥対象部材を剥がす工程を示す説明図である。
【図8】 図6(a)及び図6(b)に示された被剥対象部材を剥がす工程を示す説明図である。
【図9】 図6(c)及び図6(d)に示された被剥対象部材を剥がす工程を示す説明図である。
【図10】 図6(e)に示された被剥対象部材を剥がす工程を示す説明図である。
【図11】 図1に示された部品剥がし工具の回転ブラシから被剥対象部材を除去する状態を説明する説明図である。
【図12】 図2に示された部品剥がし装置の回収装置の変形例を示す斜視図である。
【図13】 本発明の第2の実施形態にかかる部品剥がし工具を示す図である。
【図14】 図13に示された部品剥がし工具で被剥対象部材を剥がす工程を説明する説明図である。
【図15】 本発明の第3の実施形態にかかる部品剥がし工具を示す図である。
【図16】 図15に示された部品剥がし工具の工具本体に取り付けられるスクレーパ部材の変形例を説明する説明図である。
【図17】 図15に示された部品剥がし工具の工具本体に取り付けられるスクレーパ部材の他の変形例を説明する説明図である。
【図18】 本発明の第4の実施形態にかかる部品剥がし工具を示す図である。
【図19】 従来の部品剥がし工具の要部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
1 被着体
2 被剥対象部材
10 部品剥がし装置
12 被着体固定治具(被着体固定手段)
13 多関節ロボット(工具移動手段)
16 部品剥がし工具
19 ベースアングル(工具本体、逃がし機構)
20 モータベース部(支持部材、逃がし機構)
24 吸引回収ダクト(回収手段)
28 駆動プーリ
29 ベルトガイド(案内手段)
30 従動プーリ
31 摩擦部材
31a 先端部(曲面部、保持手段、部材)
33 シリンダ(スライド機構、切り換え手段、位置変更手段)
36 スクレーパ部材(保持手段、部材)
41 平坦面(第1の面)
43 角部(エッジ部)
45 段差部
46 第2の面
47 段差面
48 回転ブラシ(第1の除去手段)
49 櫛状のブレード(第2の除去手段)
50 噴射ノズル(第3の除去手段、エア吹き付け手段)
54 噴射ノズル(第2の除去手段、エア吹き付け手段)
55 噴射ノズル(第1の除去手段、エア吹き付け手段)
56 コイルばね(付勢手段、逃がし機構)
57 ストッパ(逃がし機構)
65b 他端部(把持部)
73 調整ねじ(段差調整手段)
74 歯(段差調整手段)
77 挟持部材(保持手段、部材)
Claims (25)
- 被着体に貼りつけられた被剥対象部材を剥がす部品剥がし工具において、
前記被剥対象部材の端部に当接する曲面部を有する摩擦部材と、前記被剥対象部材の端部に当接するエッジ部を有するスクレーパ部材と、が設けられ、そして、
前記スクレーパ部材には、前記被剥対象部材の端部を引っ掛けることが可能な段差部が、設けられている
ことを特徴とする部品剥がし工具。 - 前記スクレーパ部材が、被剥対象部材を剥がす際に、該被剥対象部材に押し付けられるように設けられ、そして、
前記被剥対象部材に押し付けられる前記スクレーパ部材に加わる力が所定の値になると、前記スクレーパ部材を前記被剥対象部材から離せる逃がし機構が、前記部品剥がし工具に設けられていることを特徴とする請求項1記載の部品剥がし工具。 - 前記逃がし機構が、
前記摩擦部材を支持する工具本体と、
前記工具本体に揺動自在に支持され、かつ、前記スクレーパ部材を支持する支持部材と、
前記スクレーパ部材の前記エッジ部が前記被剥対象部材に近づく方向に前記支持部材を付勢する付勢手段と、
前記支持部材と当接するように前記工具本体に設けられて、前記付勢手段の付勢力により前記スクレーパ部材が前記被剥対象部材に近づく方向に前記支持部材が変位することを規制するストッパと、
を備えたことを特徴とする請求項2記載の部品剥がし工具。 - 前記摩擦部材が、回転駆動される駆動プーリと従動プーリとに掛け渡されて前記駆動プーリと前記従動プーリの周りを回転するように、輪状に形成され、そして、
前記摩擦部材を前記駆動プーリと前記従動プーリとから脱落することを防止する案内手段が、前記部品剥がし工具に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具。 - 前記部品剥がし工具が、被着体から剥がした前記被剥対象部材を保持する保持手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具。
- 前記保持手段が、互いに接離自在に設けられ、かつ、互いの間に前記被剥対象部材を挟持する一対の部材を備えたことを特徴とする請求項5記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記一対の部材として、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とのうち少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項6記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材との一方を選択して、前記被着体から前記被剥対象部材を剥がす摩擦部材と前記スクレーパ部材を切り換える切り換え手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具。
- 前記切り換え手段が、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材との相対的な位置を変更する位置変更手段であることを特徴とする請求項8記載の部品剥がし工具。
- 前記切り換え手段が、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とが並ぶ第1の位置と、前記摩擦部材とスクレーパ部材とのうち一方の隣りから他方が退避した第2の位置とに亘って、前記他方をスライドさせるスライド機構であることを特徴とする請求項8記載の部品剥がし工具。
- 前記他方が前記第1の位置に位置付けられると、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とが互いに当接して剛性が高くなるように設けられていることを特徴とする請求項10に記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とを支持するとともに掴むことが可能な把持部を備えて、前記被着体に対する前記把持部の姿勢を変化させることで、前記摩擦部材と前記スクレーパ部材とのうち一方を選択して前記被着体から被剥対象部材を剥がす前記摩擦部材と前記スクレーパ部材を切り換えられるようにされていることを特徴とする請求項1に記載の部品剥がし工具。
- 前記スクレーパ部材が、被剥対象部材を剥がす際に、該被剥対象部材に押し付けられるように設けられ、
前記段差部が、前記被剥対象部材の端部を引っ掛ける際に、前記被着体の表面上に位置付けられる第1の面と、前記被剥対象部材の表面上に位置付けられる第2の面と、前記第1の面と第2の面とに連なるとともに前記被剥対象部材の端部に相対する段差面と、により形成され、そして、
前記段差面の前記第1の面と前記第2の面との双方に直交する方向の幅が、前記スクレーパ部材が押し付けられて圧縮した被剥対象部材の厚みより狭くなるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の部品剥がし工具。 - 前記部品剥がし工具が、前記段差部を複数備えたことを特徴とする請求項1に記載の部品剥がし工具。
- 前記段差部が、前記被剥対象部材の端部を引っ掛ける際に、前記被着体の表面上に位置付けられる第1の面と、前記被剥対象部材の表面上に位置付けられる第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とに連なるとともに前記被剥対象部材の端部に相対する段差面と、により形成され、そして、
前記段差面の前記第1の面と前記第2の面との双方に直交する方向の幅を変えられる段差調整手段が、前記部品剥がし工具に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の部品剥がし工具。 - 前記部品剥がし工具が、前記摩擦部材に付着した前記被剥対象部材を除去する第1の除去手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項16のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具。
- 前記第1の除去手段が、前記被剥対象部材を前記摩擦部材から掻き落とす回転ブラシであることを特徴とする請求項16に記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記第1の除去手段に付着した前記被剥対象部材を除去する第2の除去手段を備えたことを特徴とする請求項16または請求項17に記載の部品剥がし工具。
- 前記第2の除去手段が、櫛状のブレードであることを特徴とする請求項18に記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記第2の除去手段に付着した前記被剥対象部材を除去する第3の除去手段を備えたことを特徴とする請求項18または請求項19に記載の部品剥がし工具。
- 前記第3の除去手段が、前記第2の除去手段に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする請求項20に記載の部品剥がし工具。
- 前記第2の除去手段が、前記第1の除去手段に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする請求項18に記載の部品剥がし工具。
- 前記第1の除去手段が、前記摩擦部材に加圧した気体を吹き付けるエア吹き付け手段であることを特徴とする請求項16に記載の部品剥がし工具。
- 前記部品剥がし工具が、前記被着体から剥がした前記被剥対象部材を回収する回収手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項23のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工具。
- 請求項1から請求項24のうちいずれか一項に記載の部品剥がし工 具と、
被剥対象部材を貼り付けた被着体を固定する被着体固定手段と、
前記部品剥がし工具を、前記被着体固定手段に固定された被剥対象部材に対し相対的に移動する工具移動手段と、
を備えたことを特徴とする部品剥がし装置。
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