JP4223651B2 - 凝集沈殿装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、沈殿槽内で被処理液中の懸濁物質等を凝集・沈殿させて被処理液を清澄化する凝集沈殿装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
凝集沈殿装置は、沈降分離方式の水処理装置の一種であり、原廃水等の被処理液に含まれている懸濁物質等を適当な添加剤により凝集しフロック化し、被処理液から懸濁物質等を沈殿除去しようとするものである。
【0003】
この種の凝集沈殿装置としては、特公平1−38523号公報によって開示されたものが知られている。この公報に記載された凝集沈殿装置においては、懸濁物質等の凝集を行う筒状のミキシングチャンバが沈殿槽内の中心に直立状態で設けられており、ミキシングチャンバ内の凝集フロックを有する被処理液は、ディストリビュータにより沈殿槽の内部空間(ミキシングチャンバ内は除く。本明細書においては、この内部空間を「沈殿空間」と称する)に分配供給されるようになっている。
【0004】
沈殿槽内の沈殿空間では、被処理液中の凝集フロックが沈降分離し、沈殿槽の底部にて濃縮された汚泥層を形成する。その一方で、沈殿槽の上部には上澄液が上昇していき、液面部の上澄液は清澄なものとなる。この清澄化された上澄液は、沈殿槽の上部に設けられたトラフ(集水樋)により集水され、このトラフに連通する流出口から槽外部に取り出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記型式の凝集沈殿装置は、排水処理や製紙白水回収等の各種用途に用いられるものであるが、近年では、各種工業製品の品質向上、環境保全といった見地から、より一層清澄化された処理済み液を得ることができる凝集沈殿装置に対するニーズが高まっている。
【0006】
そこで、本発明は、極めて清澄化された処理済み液を得ることができる凝集沈殿装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためには、沈殿槽内の沈殿空間内で生ずる上昇流が槽全域にわたり可能な限り均等であることが望ましい。しかしながら、従来の凝集沈殿装置においては上昇流に若干の乱れが生じている。この乱れは種々の原因によるものと考えられるが、本発明者らは鋭意研究を進めた結果、トラフの配置構成にその一因があることを見出した。
【0008】
従来一般の凝集沈殿装置においては、沈殿槽の外周部分に1本の環状トラフが取り付けられている。このトラフは断面形状がU字状である。このような形状のトラフの場合、堰部分(垂直側板部分)の近傍の上澄液がその上縁を越え、トラフ内に流れ込むこととなる。このため、前述したようにトラフは沈殿槽の外周部分1本だけ設置されているので、沈殿槽の側壁に沿う上昇流が槽中心部を上昇する流れよりも速くなり、沈殿槽内での均等な上昇流の形成を阻害すると考えられる。
【0009】
以上の研究結果を踏まえ、本発明は、沈殿槽内で被処理液中の懸濁物質や凝集フロック等を沈降分離させて被処理液を清澄化する凝集沈殿装置において、沈殿槽内に直立状態で配設されており、被処理液及び添加剤が導入され混合・撹拌されるミキシングチャンバと、ミキシングチャンバ内の被処理液を沈殿槽とミキシングチャンバとの間の沈殿空間に分配供給するためのディストリビュータと、沈殿槽の上部に互いに同心円状に配置された複数の環状トラフとを備えたことを特徴としている。
【0010】
この構成では、沈殿槽の中心側に設置される環状トラフにも上澄液が流入するため、沈殿槽の中心側における上昇流の流速が沈殿槽の側壁近傍における上昇流の流速に近似したものとなり、全体として均等な上昇流が得られる。
【0011】
また、上澄液が越流する環状トラフにおける堰部分の越流液負荷が全ての堰部分について同一となるよう複数の環状トラフが位置決めされ且つ寸法決めされていると、より均等な上昇流を得ることができる。
【0012】
環状トラフは少なくとも2本であり、その場合、大径の環状トラフを沈殿槽の側壁に沿って配置し、小径の環状トラフを沈殿槽の側壁とミキンシグチャンバの中間部に配置することになる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明による凝集沈殿装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明による凝集沈殿装置を示す部分断面図である。同図に示す凝集沈殿装置10は、原廃水等の被処理液から懸濁物質や凝集フロックを沈降分離し、清澄化された上澄液を処理済み液として取り出すことのできる沈殿槽12と、その内側に配置され、被処理液中の懸濁物質等を予め凝集しフロック化するためのミキシングチャンバ14とを備えるタイプのものである。このタイプの凝集沈殿装置10は、処理対象となる被処理液の特性に応じて、いわゆるスラッジブランケット型運転やスラリー循環型運転が可能で、排水処理、製紙白水回収、DIP排水回収、苛性化緑液清澄、用水処理、無機物沈殿洗浄処理等の各種用途に適用することができる。
【0015】
図示の凝集沈殿装置10における沈殿槽12は、槽深4000〜5000mm程度、槽径1500〜30000mm程度でのものであるが、これらの寸法については沈殿槽の設置スペース、被処理液の性状や量等に応じて任意に設定されるものである。沈殿槽12は、凝集沈殿装置10に設置するエリアに設けられたコンクリート等の基礎16上に鋼板製の側壁18を固定して形成されている。
【0016】
沈殿槽12の側壁上縁部には架台20が架け渡されている。架台20は、主として、各種メンテナンス作業時に作業員の作業スペースとされるものである。この架台20の中央部からはミキシングチャンバ14が垂設されている。ミキシングチャンバ14は細長い略円筒形状であり、例えば、沈殿槽12の槽深のおよそ3分の2程度の全長を有する。ミキシングチャンバ14は、その中心軸線を沈殿槽12の中心軸線と一致させた状態で架台20に固定される。これにより、ミキシングチャンバ14は、沈殿槽12内に直立状態で固定されると共に、ミキシングチャンバ14の下端と沈殿槽12の底面との間に所定の間隔(空間)が形成される。
【0017】
ミキシングチャンバ14の上部には、系外ポンプ等に接続された被処理液流入管22と連通する導入管24が接続されている。すなわち、この凝集沈殿装置10では、被処理液流入管22を通して供給された原廃水等の被処理液が、先ず、導入管24を介してミキシングチャンバ14内に導入されることになる。
【0018】
また、ミキシングチャンバ14には、被処理液中の懸濁物質等を凝集させフロックを形成する各種添加剤を注入するための注入ノズル26が複数配置されている。ミキシングチャンバ14内に導入する添加剤としては高分子凝集剤等が用いられるが、被処理液及びその含有物質によって適宜選定されることは勿論である。各注入ノズル26は、ミキシングチャンバ14の高さ方向に沿って配設されている。
【0019】
更に、図1に示すように、ミキシングチャンバ14には、被処理液と添加剤とを混合し撹拌するためのミキサ装置が内蔵されている。ミキサ装置は、ミキシングチャンバ14と同軸となるよう架台20において上端部が回転可能に支持され、そこから垂下された中空のミキサ筒体28と、その外周面に取り付けられた複数のミキサ羽根30とから構成されている。また、ミキサ筒体28は、架台20上に載置されたミキサ駆動装置32により凝集沈殿装置10の運転時に回転駆動されるようになっている。
【0020】
ミキサ筒体28の内部にはセンタシャフト34が挿通されている。このセンタシャフト34も、ミキシングチャンバ14と同軸に配置された状態で架台20から回転可能に垂設されており、架台20上に載置された駆動装置36によって回転駆動される。このセンタシャフト34は、コンクリート基礎16の中央部に設けられた汚泥引抜き用凹部38まで垂直に延びている。
【0021】
ミキシングチャンバ14の下端部に隣接するセンタシャフト34の部分には、ミキシングチャンバ14内の被処理液を沈殿槽12内に分配供給するためのディストリビュータ40が設けられている。ディストリビュータ40は、基本的には、センタシャフト34に同軸に固定されミキシングチャンバ14の下端部を閉じるよう配置されたカップ状の回転支持体42と、回転支持体42の内部と連通し且つ回転支持体42の外周面から径方向外方に水平に延びる複数本の吐出管44とから構成されている。各吐出管44には、その長手方向に沿って一列に複数の吐出孔が穿設されている。凝集沈殿装置10の運転時には、ディストリビュータ40が駆動装置36によってセンタシャフト34と共に回転され、ミキシングチャンバ14内の凝集フロックを含む被処理液は吐出管44の吐出孔から円を描きながら沈殿槽12内に吐出され分配供給される。
【0022】
センタシャフト34の下端部分には、更に、ディストリビュータ40と共に回転するレーキ46が取り付けられている。レーキ46は、吐出管44から吐出された被処理液中の凝集フロックが沈降して形成する汚泥を濃縮すると共に、槽底面中央の汚泥引抜き用凹部38に汚泥を掻き寄せるためのものである。
【0023】
また、沈殿槽12の上部には、ディストリビュータ40から供給され増加する被処理液を回収する環状トラフ50,52が設けられている。図示実施形態では、環状トラフ50,52は大径と小径の2本あり、図2に明示するように、互いに同心円状に配置されている。これらの環状トラフ50,52は沈殿槽12の側壁18上部に形成された流出口54と連通している。環状トラフ50,52については、以下で更に詳細に説明する。
【0024】
ディストリビュータ40から分配供給された被処理液は、沈殿槽12の上部で環状トラフ50,52により回収されるので、沈殿槽12内で上昇し、スラッジブランケット型運転の場合にあってはディストリビュータ40の上方にスラッジブランケット層Bを形成する。また、被処理液中の凝集フロックのうち、沈殿槽12内で沈降分離したものは、ディストリビュータ40よりも下方の領域に汚泥層Aを形成する。沈殿槽12の底部ではレーキ46によって汚泥層Aが濃縮されると共に、槽中央部の汚泥引抜き用凹部38に汚泥が掻き寄せられるので、汚泥層Aは濃縮された均質なものとなる。汚泥引抜き用凹部38に集められた汚泥は、基礎16に形成された汚泥引抜管48を通して系外に排出される。一方、上昇流中には微細フロックその他の微細粒子も含まれるが、これらの微細フロック等はスラッジブランケット層Bの大きなフロックによって捕捉され、上昇流から除去される。このようにして、上昇流からフロックその他の粒子類が沈降除去され、清澄な上澄液が沈殿槽12内を上昇し、清澄層Cが形成される。そして、上澄液は処理済み液として環状トラフ50,52の中に越流し、最終的には流出口54から系外に取り出される。
【0025】
各環状トラフ50,52は断面U字状をなし、上方が開放され、垂直の縦板部分(堰部分)の上縁を越えて上澄液がトラフ50内に流入するようになっている。前述したように、本実施形態では、環状トラフ50,52は大径のものと小径のものとの2本あり、互いに同心円上に配置されている。これらの環状トラフ50,52は、ミキシングチャンバ14と沈殿槽12の側壁18との間で放射状に延びる複数本の水平バー56により、沈殿槽12に取り付けられている。また、大径の環状トラフ50と小径の環状トラフ52とは、両者間で径方向に延びる1本のU字状の連結流路部材58により連通されており、この連結流路通路58の外側端部は流出口54に開放されている。連結流路部材58の深さは環状トラフ50,52の深さよりも大きいことが、回収液を流出口54に円滑に導くために好ましい。また、連結流路部材54の縦板部分の上縁も、環状トラフ50,52の堰部分の上縁と同一高さにし、この部分からも上澄液が越流するようにしてもよい。
【0026】
大径の環状トラフ50は、従来のものと同様に沈殿槽12の側壁18の内周面に接した状態で取り付けられている。従って、槽中心側の堰部分50a側からのみ上澄液が越流する。なお、図示実施形態では、環状トラフ50は側壁18を構成部分としているので、トラフ自体はL字状のものが用いられている。一方、小径の環状トラフ52は、ミキシングチャンバ12と槽側壁18との間の所定位置に配置されており、槽中心側と槽外側の両堰部分52a.52bから上澄液が越流する。
【0027】
なお、上澄液が越流する堰部分50a,52a,52bの上縁は直線的なものであってもよいが、トラフ50,52全体を高精度で水平に配置することは困難であるため、堰部分50a,52a,52bの上縁にV形ノッチを等間隔に配置したものとすることが好適である。これにより、ノッチの大きさを調整することで、環状トラフ50,52の全周にわたり上澄液を均等に越流させることができる。
【0028】
このように、外側の環状トラフ50の内側にもう1本、環状トラフ52を配置することにより、沈殿槽12の側壁18の近傍の上昇流が槽中心側の上昇流よりも高速になるという不安定な状態が是正される。すなわち、沈殿槽12の中心側に設置される環状トラフ52にも上澄液が流入するため、沈殿槽12の中心側における上昇流の流速が沈殿槽12の側壁近傍における上昇流の流速に近似したものとなり、全体として均等な上昇流が得られる。
【0029】
ここで、環状トラフ50,52の最適な位置及び溝幅について考察する。まず、各環状トラフ50,52の堰部分50a,52a,52bの周方向における単位長さ当たりの流入量を越流堰負荷と称することとすると、この越流堰負荷が各堰部分50a,52a,52bで等しくなった場合に、沈殿槽12内の上昇流を最も均等化するものと考えられる。
【0030】
今、沈殿槽12の側壁18の内周の半径をD1、大径の環状トラフ50の内側堰部分50aの内周の半径をD2、小径の環状トラフ52の外側堰部分52bの外周の半径をD 3 、小径の環状トラフ52の内側堰部分52aの内周の半径をD4、ミキシングチャンバの外周の半径をR1とすると、上記の最適となる関係は次式で表すことができる。
【0031】
【数2】
【0032】
このような関係に環状トレイ50,52を配置構成することで、沈殿槽12内の上昇流はより均等なものとなり、沈降分離効果が向上し、極めて清澄な上澄液を回収することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0034】
例えば、上記実施形態では環状トラフ50,52は2本のみとしているが、大型の沈殿槽では3本以上の環状トラフを同心円状に配置してもよい。その場合にも、各環状トラフの堰部分の越流堰負荷が等しくなるよう、寸法及び位置決めをすることが好ましい。
【0035】
また、上記の環状トラフ50,52は共に円形としているが、製造を容易化するために六角形や八角形のような多角形としてもよい。かかる場合、上記式は平均径にて計算すればよい。
【0036】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による凝集沈殿装置では、沈殿槽内に従来に比して格段に均等で安定した上昇流を形成することができるので、極めて清澄化された処理済み液を得ることができ、各種工業製品の品質向上や環境保全にも大いに寄与することが可能となる。
【0037】
また、装置の性能が向上することから、装置全体のコンパクト化を可能とするという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による凝集沈殿装置の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿っての概略断面図である。
【符号の説明】
10…凝集沈殿装置、12…沈殿槽、14…ミキシングチャンバ、16…基礎、18…側壁、50…大径の環状トラフ、52…小径の環状トラフ、50a,52a,52b…堰部分。54…流出口、56…水平バー、58…連結流路部材。
Claims (2)
- 沈殿槽内で被処理液中の懸濁物質や凝集フロック等を沈降分離させて被処理液を清澄化する凝集沈殿装置において、
前記沈殿槽内に直立状態で配設されており、被処理液及び添加剤が導入され混合・撹拌されるミキシングチャンバと、
前記ミキシングチャンバ内の被処理液を前記沈殿槽と前記ミキシングチャンバとの間の沈殿空間に分配供給するためのディストリビュータと、
前記沈殿槽の上部に互いに同心円状に配置された複数の環状トラフと
を備え、
前記複数の環状トラフが、前記沈殿槽の側壁に沿って配置される大径の環状トラフと、前記沈殿槽の前記側壁と前記ミキンシグチャンバの中間部に配置された小径の環状トラフであり、
前記大径の環状トラフ及び前記小径の環状トラフが、
を満たすように位置決めされ且つ寸法決めされている、凝集沈殿装置。 - 前記大径の環状トラフ及び前記小径の環状トラフの少なくとも一方が多角形の場合には、多角形の平均の半径を当該環状トラフについての前記半径として前記式を満たすように、前記大径の環状トラフ及び前記小径の環状トラフが位置決めされ且つ寸法決めされている、請求項1に記載の凝集沈殿装置。
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