JP4180220B2 - 凝集沈殿装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、沈殿槽内で被処理液中の懸濁物質等を凝集・沈殿させて被処理液を清澄化する凝集沈殿装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
凝集沈殿装置は、沈降分離方式の水処理装置の一種であり、原廃水等の被処理液に含まれている懸濁物質等を高分子凝集剤のような適当な添加剤により凝集しフロックとし、被処理液から懸濁物質等を沈殿除去しようとするものである。
【0003】
この種の凝集沈殿装置としては、特公平1−38523号公報によって開示されたものが知られている。この公報に記載された凝集沈殿装置は、沈殿槽内の中心に筒状のミキシングチャンバが直立状態で設けられており、このミキシングチャンバ内に被処理液と添加剤が導入されて被処理液中の懸濁物質等がフロックに凝集され、その後、この凝集フロックを含む被処理液がミキシングチャンバから沈殿槽内に送られて、懸濁物質等が被処理液から沈殿分離されるようになっている。
【0004】
被処理液は、比較的太径の被処理液導入管により槽外部からミキシングチャンバ内の上部に導入される。一方、添加剤については、ミキシングチャンバの上部から一括して導入される場合もあるが、近年では凝集効果を向上させるために、上下方向に複数段に配置された注入ノズルによってミキシングチャンバ内に注入される方式が採られるようになってきている(図1参照)。
【0005】
各注入ノズルには添加剤供給ポンプを接続し、各注入ノズルによる添加剤の注入量を個別に制御できるようにすることが好ましい。しかしながら、注入ノズルと同数のポンプを設けることは、コストがかかり、保守管理にも手間がかかる。このため、従来においては、1台の添加剤供給ポンプと複数本の注入ノズルとの間に分配器を配置し、この分配器により添加剤が各注入ポンプに均等に分配されるよう図っている。
【0006】
図3に示すように、従来一般の分配器1は、添加剤供給ポンプ(図示しない)からの添加剤を安定して流す流路室2と、この流路室2に隣接配置され且つ注入ノズルからの導管3にそれぞれ接続された小室4a〜4fとを備えている。流路室2と小室4a〜4fとの間には三角堰5が設けられており、流路室2を流れる添加剤が各小室4a〜4fに等量ずつ流れ込み、ひいては注入ノズルに供給されるようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の構成では、常に添加剤が注入ノズルに均等に分配されるとは限らないという問題点がある。すなわち、添加剤は一般に高分子化合物からなり、粘性が高く、温度等の変化によっても粘度が変化するため、流路室2を流れる添加剤の液面に勾配がつき、下流側の小室4fへの添加剤流入量よりも上流側の小室4aに流入する量の方が多くなる場合がある。
【0008】
このような問題に対しては、分配器1から注入ノズルまでの各導管3にはバルブ6が設けられているので、このバルブ6により流量を調整することも考えられる。しかし、粘性流体である添加剤の流量をバルブ6により正確に制御することは困難であり、バルブ6の本来の目的は、注入ノズル間での添加剤注入量の比率を調整するためであるので、各注入ノズルに添加剤が均等に配分されることが前提となる。
【0009】
注入ノズルからミキシングチャンバ内に注入される添加剤の量ないしはその比率が不安定であると、凝集効果が一定せず、被処理液の清澄化に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、複数の注入ノズルに対して添加剤を均等に分配することができ、それによって極めて清澄化された処理済み液を得ることができる凝集沈殿装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、沈殿槽と、沈殿槽内に立設されたミキシングチャンバと、ミキシングチャンバ内に供給された被処理液中の懸濁物質等を凝集させフロックを形成するための添加剤をミキシングチャンバ内に注入すべく、ミキシングチャンバ内に配置された複数の注入ノズルと、添加剤供給源と、添加剤供給源からの添加剤を受け注入ノズルに分配する分配器とを具備する凝集沈殿装置において、分配器を、一端が添加剤受口となっており他端が閉鎖され且つ水平に配置されたヘッダ管と、ヘッダ管の外周面上部に立設され、注入ノズルにそれぞれ接続された複数本の立上がり管とから構成したことを特徴としている。
【0012】
このような構成においては、分配管のヘッダ管の内面には添加剤から一定の圧力が作用し、従って各立上り管には添加剤が均等に分配される。
【0013】
また、各立上がり管を流れる添加剤の圧力をより一定とするために、立上がり管は同一高さ位置にて屈曲されていることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明による凝集沈殿装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明による凝集沈殿装置を示す部分断面図である。同図に示す凝集沈殿装置10は、原廃水等の被処理液から懸濁物質や凝集フロックを沈降分離し、清澄化された上澄液を処理済み液として取り出すことのできる沈殿槽12と、その内側に配置され、被処理液中の懸濁物質等を予め凝集しフロック化するためのミキシングチャンバ14とを備えるタイプのものである。このタイプの凝集沈殿装置10は、処理対象となる被処理液の特性に応じて、いわゆるスラッジブランケット型運転やスラリー循環型運転が可能で、排水処理、製紙白水回収、DIP排水回収、苛性化緑液清澄、用水処理、無機物沈殿洗浄処理等の各種用途に適用することができる。
【0016】
図示の凝集沈殿装置10における沈殿槽12は、凝集沈殿装置10を設置するエリアに設けられたコンクリート等の基礎16上に鋼板製の側壁18を固定して形成されている。側壁18の上縁部には架台20が架け渡されている。架台20は、主として、各種メンテナンス作業時に作業員の作業スペースとされるものである。この架台20の中央部からはミキシングチャンバ14が垂設されている。ミキシングチャンバ14は細長い略円筒形状であり、例えば、沈殿槽12の槽深のおよそ3分の2程度の全長を有する。ミキシングチャンバ14は、その中心軸線を沈殿槽12の中心軸線と一致させた状態で架台20に固定される。これにより、ミキシングチャンバ14は、沈殿槽12内に直立状態で固定されると共に、ミキシングチャンバ14の下端と沈殿槽12の底面との間に所定の間隔(空間)が形成される。
【0017】
ミキシングチャンバ14の上部には、系外ポンプ等に接続された被処理液流入管22と連通する導入管24が接続されている。すなわち、この凝集沈殿装置10では、被処理液流入管22を通して供給された原廃水等の被処理液が、先ず、導入管24を介してミキシングチャンバ14内に導入されることになる。
【0018】
また、ミキシングチャンバ14には、被処理液中の懸濁物質等を凝集させフロックを形成する各種添加剤を注入するための注入ノズル26が複数配置されている。ミキシングチャンバ14内に導入する添加剤としては主として高分子凝集剤が用いられるが、被処理液及びその含有物質によって適宜選定されることは勿論である。各注入ノズル26は、ミキシングチャンバ14の高さ方向に沿って配設され、例えば図示実施形態では、ミキシングチャンバ14の上段部、中段部及び下段部に各1本ずつ設けられる。また、図示実施形態では、各注入ノズル26はミキシングチャンバ14の側壁を貫通して固定され、注入ノズル26の末端はミキシングチャンバ14の外側に配置されている。
【0019】
各注入ノズル26の末端は導管28の一端に接続されており、これらの導管28はミキシングチャンバ14の外面に沿って上方に延びている。各導管28の他端は、沈殿槽12の上部、例えば架台20等の適当な支持体にて支持された1台の分配器30に接続されている。分配器30には、沈殿槽12の外部に配置された添加剤供給ポンプ32の吐出口から延びる添加剤供給管34が接続されている。従って、添加剤供給ポンプ32を駆動することにより、添加剤貯蔵タンク等の添加剤供給源36から添加剤が所定流量で分配器30に供給されるようになっている。
【0020】
分配器30は、図2に明示するように、比較的太径のヘッダ管38を備えている。ヘッダ管38の一端は添加剤受口となっており、添加剤供給管34に接続されている。また、他端は閉じられている。このヘッダ管38は、その中心軸線が水平となるように架台20に固定されている。分配器30は、更に、ヘッダ管38の上部から垂直方向上方に立設された比較的細径の立上がり管40を複数本備えている。これらの立上がり管40は同一形状、同一寸法であり、所定の同一高さ位置にて逆U字状に屈曲されている。立上がり管40の本数は導管28、すなわち注入ノズル26と同数であり、それぞれ対応の導管28と適当な管継手42により接続されている。また、各立上がり管40の先端部分にはバルブ44が取り付けられている。
【0021】
このような構成の分配器30においては、添加剤供給ポンプ32を駆動して添加剤をヘッダ管38内に供給すると、ヘッダ管38の一端は閉じられているため、ヘッダ管38の内面には添加剤から同一の圧力が作用し、各立上がり管40を添加剤が同一圧力で上昇する。立上がり管40は同一形状、同一寸法であり、同一高さ位置で屈曲されているため、分配器30に供給された添加剤は、粘性の程度に拘わらず、各立上がり管40から導管28、そして注入ノズル26に均等に分配、供給される。
【0022】
また、この構成では、添加剤供給源36から分配器30までのラインにおいて添加剤と大気との接触を防止することができるので、添加剤に気泡が混入することを回避することができる。また、何らかの原因により分配器30に達する前に気泡が添加剤に混入した場合にも、ヘッダ管38に空気抜き管39を設けておきそのバルブ41を開放すれば、気泡を外部に排出することができるので、注入ノズル26から気泡がミキシングチャンバ14内に吹き出されることはない。
【0023】
更に、ミキシングチャンバ14内には、被処理液と添加剤とを混合し撹拌するためのミキサ装置46が内蔵されている。ミキサ装置46は、ミキシングチャンバ14と同軸となるよう架台20において上端部が回転可能に支持され、そこから垂下された中空のミキサ筒体48と、その外周面に取り付けられた複数のミキサ羽根50とから構成されている。また、ミキサ装置46のミキサ筒体48は、架台20上に載置されたミキサ駆動装置52により凝集沈殿装置10の運転時に回転駆動されるようになっている。
【0024】
ミキサ筒体48の内部にはセンタシャフト54が挿通されている。このセンタシャフト54も、ミキシングチャンバ14と同軸に配置された状態で架台20から回転可能に垂設されており、架台20上に載置された駆動装置56によって回転駆動される。このセンタシャフト54は、コンクリート基礎16の中央部に設けられた汚泥引抜き用凹部58まで垂直に延びている。
【0025】
ミキシングチャンバ14の下端部に隣接するセンタシャフト54の部分には、ミキシングチャンバ14内の被処理液を沈殿槽12内に分配供給するためのディストリビュータ60が設けられている。ディストリビュータ60は、基本的には、センタシャフト54に同軸に固定されミキシングチャンバ14の下端部を閉じるよう配置されたカップ状の回転支持体62と、回転支持体62の内部と連通し且つ回転支持体62の外周面から径方向外方に水平に延びる複数本の吐出管64とから構成されている。各吐出管64には、その長手方向に沿って一列に複数の吐出孔が穿設されている。凝集沈殿装置10の運転時には、ディストリビュータ60が駆動装置56によってセンタシャフト54と共に回転され、ミキシングチャンバ14内の凝集フロックを含む被処理液は吐出管64の吐出孔から円を描きながら沈殿槽12内に吐出され分配供給される。
【0026】
センタシャフト54の下端部分には、更に、ディストリビュータ60と共に回転するレーキ66が取り付けられている。レーキ66は、吐出管64から吐出された被処理液中の凝集フロックが沈降して形成する汚泥を撹拌すると共に、槽底面中央の汚泥引抜き用凹部58に汚泥を掻き寄せるためのものである。これにより、沈殿槽12内のディストリビュータ60よりも下方の領域に濃縮汚泥層Aが形成される。汚泥引抜き用凹部58に集められた汚泥は、基礎16に形成された汚泥引抜管68を通して系外に排出される。
【0027】
次に、上述した凝集沈殿装置10を用いて被処理液を清澄化する手順について簡単に説明する。
【0028】
先ず、被処理液流入管22及び導入管24から、被処理液をミキシングチャンバ14内に供給する。また、添加剤供給ポンプ32を駆動して添加剤を分配器30に供給すると、添加剤は分配器30のヘッダ管38から各立上がり管40に等圧で且つ均等に分配され、導管28から注入ノズル26に送られ、添加剤がミキシングチャンバ14内に注入される。そして、ミキシングチャンバ14内の被処理液と添加剤とは、ミキサ駆動装置52によって回転駆動されるミキサ装置46によって撹拌され、被処理液中の懸濁物質等が凝集して凝集フロックを形成する。
【0029】
この際、任意のタイミングでバルブ44を開閉して添加剤の注入、注入停止を適宜コントロールすることができる。これにより、添加剤による効果が長時間持続すると共に、沈降性の良好な凝集フロックが形成されることになる。また、立上がり管40から注入ノズル26に流れる添加剤は同一圧力となっており、管路の断面面積も全て等しくされているので、バルブ44の開度を調整することで、注入ノズル26間における添加剤注入量の比率(割合い)を調整することが可能となる。これにより、ミキシングチャンバ14内での懸濁物質等の凝集効果を各注入ノズル26の周辺領域毎に細かく制御することができる。
【0030】
凝集フロックを含む被処理液は、ミキシングチャンバ14の下端部に配置されたディストリビュータ60における回転支持体62から吐出管64の吐出孔を通って沈殿槽12内に供給される。これにより、沈殿槽12内には均等な上昇流が発生し、ディストリビュータ60の上方に、良好なスラッジブランケット層Bが形成される。
【0031】
また、被処理液中の凝集フロックのうち、沈殿槽12内で沈降分離したものは、沈殿槽12の底部で汚泥層Aを形成する。沈殿槽12の底部ではレーキ66によって汚泥層Aが撹拌されると共に、槽中央部の汚泥引抜き用凹部58に掻き寄せられるので、汚泥層Aは濃縮された均質なものとなる。汚泥引抜き用凹部58からは汚泥が随時引抜かれる。
【0032】
一方、上昇流中には微細フロックその他の微細粒子も含まれるが、これらの微細フロック等はスラッジブランケット層Bの大きなフロックによって確実に捕捉され、上昇流から除去される。このようにして、上昇流からフロックその他の粒子類が沈降除去され、極めて清澄な上澄液が沈殿槽12内を上昇し、清澄層Cが形成される。そして、上澄液は処理済み液として沈殿槽12の上部の流出口68から流出する。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、注入ノズルが3本であるため、分配器30の立上がり管40も3本としたが、その数は上記実施形態に限られない。また、各立上がり管40にバルブ44を設ける必要はなく、導管28であってもよいし、添加剤供給管34にバルブを設けて、一括して注入のオンオフ制御を行ってもよい。
【0034】
更に、上記実施形態では、ポンプ32によりヘッダ管38まで添加剤を圧送することとしているが、ヘッドが得られるならばポンプ以外の手段を用いることもできる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明による凝集沈殿装置では、添加剤を複数の注入ノズルのそれぞれに均等に供給することができ、被処理液中の懸濁物質等の凝集を効果的に行うことが可能となり、ひいては極めて清澄化された処理済み液を得ることができる。これは、各種工業製品の品質向上や環境保全にも大いに寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された凝集沈殿装置を示す断面図である。
【図2】図1の凝集沈殿装置における添加剤の分配器を拡大して示す斜視図である。
【図3】従来の凝集沈殿装置における添加剤の分配器を示す斜視図である。
【符号の説明】
10…凝集沈殿装置、12…沈殿槽、14…ミキシングチャンバ、26…注入ノズル、28…導管、30…分配器、32…添加剤供給ポンプ、34…添加剤供給管、36…添加剤供給源、38…ヘッダ管、40…立上がり管、44…バルブ。
Claims (2)
- 沈殿槽と、前記沈殿槽内に立設されたミキシングチャンバと、前記ミキシングチャンバ内に供給された被処理液中の懸濁物質等を凝集させフロックを形成するための添加剤をミキシングチャンバ内に注入すべく、前記ミキシングチャンバ内に配置された複数の注入ノズルと、添加剤供給源と、前記添加剤供給源からの添加剤を受け前記注入ノズルに分配する分配器とを具備し、前記ミキシングチャンバ内のフロックを含有する被処理液を沈殿槽内に供給して被処理液から懸濁物質及びフロックを沈殿分離させる凝集沈殿装置であって、
前記分配器は、一端が添加剤受口となっており他端が閉鎖され且つ水平に配置されたヘッダ管と、前記ヘッダ管の外周面上部に立設され、前記注入ノズルにそれぞれ接続された複数本の立上がり管とを備えることを特徴とする凝集沈殿装置。 - 前記立上がり管は同一高さ位置にて屈曲されていることを特徴とする請求項1に記載の凝集沈殿装置。
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