JP4220601B2 - 圧延機のロールクロス位置決め制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板材を圧延機における油圧式ロールクロス機構の共振を抑制制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
延延機におけるロールのペアクロス機構は、従来電動機構によってクロス角の調節を行っていた。しかし、この電動機構は機械構造が複雑である。このため、クロス機構を油圧化することで構造を単純にする必要がある。
【0003】
図5は、油圧化されたクロス機構の概略構成である。図5において、21は上下のワークロール、22は上下のバックアップロールである。ワークロール21とバックアップロール22のロールチョック21a、22aは、被圧延板材30の入側、出側の両側からハウジング23に支持した第1油圧シリンダ24と第2油圧シリンダ25とによって水平方向から支持されている。
【0004】
第1、第2油圧シリンダ24、25の各々には、油柱位置検出器26及びサーボ弁27が装着されており、この油柱位置検出器26及びサーボ弁27はコントローラ28にそれぞれ電気的に接続されている。図5では、下バックアップロール22の第2油圧シリンダ25の制御系だけを代表して示している。
【0005】
図6はコントローラ28の構成の第1の従来例である。以下これを「従来例1」と称する。図6において、この従来例は、油柱位置検出器26からの油柱フィードバック信号31と、設定された油柱リファレンス信号32が合流する減算部33と、制御ゲイン乗算部34とで構成され、制御ゲイン乗算部34で乗算された油柱リファレンス信号34aをサーボ弁27へ発し、サーボ弁27を調整制御するようにしている。
【0006】
図7はコントローラ28の構成の第2の従来例である。以下これを「従来例2」と称する。図7において、従来例は、従来例1の制御ゲイン乗算部34とサーボ弁27との間にバンドストップフィルタ35を追加して設け、バンドストップフィルタ35で振動成分を消去した油柱リファレンス信号35aをサーボ弁27へ発し、サーボ弁27を調整制御するようにしている。
【0007】
図2(b)、(c)は、前記従来例1及び従来例2の制御系でサーボ弁27への指令信号に顕われる周波数特図(サーボ弁開度指令値からシリンダ位置への周波数応答特性を示す。)、図3(b)、(c)は、従来例1及び2の制御系による油柱調整の時間とシリンダ位置の応答図、図4(b)、(c)は、従来例1及び2においてワークロール間に被圧延板材30が噛込んだ時の油柱調整の時間とシリンダ位置の応答図である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来例1による制御の場合、図2(b)のように、ある周波数帯で急増する振動モードが顕われる。そして、シリンダ変位の時間応答では、図3(b)のように、油柱調整が指令されたシリンダ設定位置へ緩やかなカーブで進行し、迅速な応答が得られない。また、応答性を上げるために制御ゲインを上げると、破線で示すように調整値が安定し難くなる問題がある。また板噛込時間応答では、図4(b)のように、板噛込力による圧延機側の振動影響し、この振動が減衰されるまで、シリンダ位置が設定位置に静止されない問題がある。
【0009】
従来例2による制御の場合は、図2(c)のように、ある周波数帯で急減する振動モードが顕われる。そして、シリンダ油柱の調整静止までの応答時間は、図3(c)のように、従来例1の場合よりは改善されるが、除去した周波数モードの影響で未だ十分な応答時間の短縮は達成されていない。
【0010】
また、板噛込時間応答では、図4(c)のように、板噛込時の圧延機側の振動の影響は解消されない。すなわち、図5で示すコントローラ28以外のところから固有振動モードが印加されるため、従来例1〔図4(b)〕の場合と同様に圧延機の振動の影響が解消されない。
【0011】
従来例1のようにクロス機構を油圧化した場合に、油柱の持つ固有振動及びハウジングの持つ固有振動により安定な制御を実現するには、図3(b)のように、制御ゲインを一定以下にしなければならず、このために、高応答の制御性能が出せない。
【0012】
また、従来例2のように固有振動モードを除去する制御方法では、図3(c)のように、固有振動数に相当する周波数帯での制御性能(追従性能)が損なわれる問題がある。
本発明は、上述した従来の油圧クロス機構の問題を解決し、応答性及び精度の良い油圧式クロス機構の制御方法を提供することを目的とした。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係るロールクロス位置決め制御方法は、油柱位置検出器によって油圧クロスシリンダの油注位置を検出してフィードバック出力し、この検出信号によって油柱リファレンス信号を補正してサーボ弁を作動させ、圧延機の油圧ロールクロス機構を制御する方法において、基準油柱リファレンス信号のリファレンス値から前記油柱フィードバック信号のフィードバック値を差引いた偏差に制御ゲインを乗算し、この制御ゲイン乗算値からバンドストップフィルタ通して油柱の持つ固有振動成分及びハウジングの持つ固有振動成分を消去した値と、前記制御ゲイン乗算値からバンドパス機能を持つフィルタ系を通して前記油柱の持つ固有振動成分だけを抽出した値とを加算した信号でサーボ弁を調整制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明に係るロールクロス位置決め制御方法は、上記請求項1の発明において、前記バンドパス機能を持つフィルタ系として、位相シフト器、バンドパスフィルタ及び増幅器からなる配列を用いたことを特徴とする。
【0015】
本発明においては、前記バンドパス機能をもつフィルタ系で補正された油柱の固有振動モードを加えた加算器のリファレンス信号で、サーボ弁が制御されることで、シリンダ位置調整時のステップ応答、板噛込時応答が円滑化され、高い応答性でロールクロス機構をオンライン制御できるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態にかかる油圧クロス機構の制御系のコントローラのブロック図である。なお、油圧機及び制御系において、従来と同一の要素は、図5〜図7と同一の符号で示す。
【0017】
図1において、本実施形態では、コントローラ28は、油柱位置検出器26からの油柱フィードバック系10と、予め設定された基準油柱リファレンス32及び前記油柱フィードバック系10からの信号31を合流する減算部33と、制御ゲイン乗算部34と、制御ゲイン乗算部34から出力されるリファレンス信号34aをバックストップ処理する第一の補正系11と、第一の補正系11と並行して制御ゲイン乗算部34から出力されるリファレンス信号34aをバックパス処理する第二の補正系12と、第一、第二の補正系11,12から出力されるリファレンス信号11a、12aを合流する加算部13とで構成され、加算部13から出力されるリファレンス信号13aで、サーボ弁27を調整制御するようにしている。
【0018】
油柱フィードバック系10と第一の補正系11は、従来例2と同様であり、第二補正系12は、位相シフト器14と、バンドパスフィルタ15と、増幅器16とで構成されている。
【0019】
本実施形態による制御系では、制御ゲイン乗算部34が発進するリファレンス信号34a、言い換えれば、油柱フィードバック信号31と、設定された基準油柱リファレンス32との差を基にした開度指令値34aが、第一補正系11のバンドストップフィルタ35により、油柱の持つ固有振動モード及びハウジングの持つ固有振動モードを除去され、リファレンス信号11aとして加算器13へ伝達される。
【0020】
同時に、並行する第二補正系12によって、開度指令値34aから、油柱の固有振動モードだけが抽出され、リファレンス信号12aとして、加算部13へ伝達される。
【0021】
このとき、まず第二補正系12の位相シフト器14は、固有振動モードの振動周期位相を反転状態にシフトする。また、バンドパスフィルタ15は、油柱の持つ固有振動モードのみを抽出して通過させる。そして、この補正された固有振動モードだけが増進器16で増幅されて加算部13へ伝達される。また、このとき、位相シフト器14による振動周期のシフトで、油柱の固有振動モードを打ち消す作用をもたせることができる。
【0022】
そして、第二補正系12で補正された油柱の固有振動モードを加えた加算器13のリファレンス信号13aで、サーボ弁27が制御されることで、シリンダ位置調整時のステップ応答、板噛込時応答が円滑化され、高い応答特性でロールクロス機構をオンライン制御できるようになる。
【0023】
図2(a)、図3(a)、図4(a)は、本実施形態の制御系による、油柱振動モードの周波数特性、油柱調整時のステップ応答時間、板噛込応答時間を、従来例の場合と比較して示している。図2(a)及び図3(a)において、破線は比較のため従来例2を示すものである。
【0024】
従来例2では、共振周波数帯の振動モードが除去され、その周波数モードでの追従動作が損なわれていたが、図2(a)で示すように、本発明によるロールクロス位置決め制御系では、油柱振動モードが、位相シフト器14による位相シフト作動で、振動を打ち消す動作として利用でき、位置決め精度の更なる向上を図ることができる。
【0025】
この結果、図3(a)で示すように、サーボ弁27の作動後の油柱(シリンダ位置)調整に時間応答が円滑になり、従来よりも短縮される効果が得られる。ちなみに図3(a)中では、点線が従来例2〔図3(c)〕による時間応答であり、油柱の調整にあたって優れた応答時間の短縮が得られる。
【0026】
また、図4(a)で示すように、板噛込時においても、油柱振動モードを積極的に打ち消す動作により板噛込力に対して滑らかな油柱変動で応答し、設定されたシリンダ制御位置へ短時間で静定される効果が得られる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように、本発明の構成によれば、油圧ロールクロス構成のシリンダ制御用電気油圧サーボ弁の制御において、油柱及びハウジングの固有振動モードによる制御ゲインの制約が軽減され、高応答の制御性能を実現できる。
また、固有振動モードを全く除去するのではなく、必要な量だけ調整して投入することで、より高応答の制御性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に示すブロック線図である。
【図2】本発明及び従来例の周波数特性を示す線図である。
【図3】本発明及び従来例のシリンダ位置の時間応答を示す線図である。
【図4】本発明及び従来例の板噛み込時におけるシリンダ位置の時間応答を示す線図である。
【図5】従来のロールのペアクロス機構を示す概略構成の図である。
【図6】図5の装置のコントローラ28を示すブロック線図である。
【図7】図5の装置のコントローラ28の別の構成を示すブロック線図である。
【符号の説明】
10 油柱フィードバック系
11 第1補正系
12 第2補正系
13 加算部

Claims (2)

  1. 油柱位置検出器によって油圧クロスシリンダの油柱位置を検出してフィードバック出力し、この検出信号によって油柱リファレンス信号を補正してサーボ弁を作動させ、圧延機の油圧ロールクロス機構を制御する方法において、
    基準油柱リファレンス信号のリファレンス値から前記油柱フィードバック信号のフィードバック値を差引いた偏差に制御ゲインを乗算し、この制御ゲイン乗算値からバンドストップフィルタを通して油柱の持つ固有振動成分及びハウジングの持つ固有振動成分を消去した値と、前記制御ゲイン乗算値からバンドパス機能を持つフィルタ系を通して前記油柱の持つ固有振動成分だけを抽出した値とを加算した信号でサーボ弁を調整制御することを特徴とする圧延機のロールクロス位置決め制御方法。
  2. 前記バンドパス機能を持つフィルタ系として、位相シフト器、バンドパフィルタ及び増幅器からなる配列を用いたことを特徴とする請求項1に記載の圧延機のロールクロス位置決め制御方法。
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