JP4219080B2 - 海苔網薬剤処理装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、海苔の養殖場に展張されている海苔網に対して、酸処理等の各種薬剤処理を行う海苔網薬剤処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
一般に、海苔養殖は海苔網に浮き子を取付けて海面部分に浮かすようにして展張して錨で止める浮き流し方式や、海中に立設した支柱に海苔網を係留して展張した支柱方式により行なわれている。この両方式の使い分けは、養殖場の立地条件により決定されている。
【0003】
このような海苔養殖においては、海苔網に海水の水垢やゴミ等の浮遊物が付着したり、雑菌が繁殖したりする等、海苔の品質を低下させる要因がある。
【0004】
そこで、高品質で健康な海苔を育成し、収穫率を向上させるために、海苔の刈り取りから刈り取りの間に、二回から三回程度、海苔網に対して酸処理に代表される各種の薬剤を用いた薬剤処理作業が行なわれている。また、海苔の刈り取り直後にも海苔網に対して酸処理に代表される各種の薬剤を用いた薬剤処理作業が行なわれている。
【0005】
本出願人は特開平3−43028号公報、特開平4−228015号公報等において、海苔網の下に潜って海苔網の長尺方向に進行しながら、海苔の刈り取りを行ったり、処理槽内に所定のpH値に調整した処理液を入れ、この処理槽内の処理液に海苔網を浸漬通過させることによって薬剤処理を自動的に行う海苔作業船を提案している。
【0006】
更に、本出願人は特開平8−37968号公報において、処理槽内に所定のpH値に調整した処理液を入れ、この処理槽内の処理液に海苔網を浸漬通過させることによって薬剤処理を行う場合に、処理液のpH値を薬剤処理の効果的な範囲内に保持することのできる海苔網薬剤処理装置を提案している。即ち、海水を含む海苔網が処理液中に浸漬されることによって処理液が海水により希釈された場合に、必要量の薬剤を添加して処理液のpH値を薬剤処理の効果的な範囲内に保持するようにしている。
【0007】
本発明は、処理液のpH値を薬剤処理の効果的な範囲内に保持することができ、更に、処理液が海水の水垢やゴミ、海苔の屑等の浮遊物による品質劣化を確実に防止でき、処理液の繰り返し利用を図ることができ、処理液の無駄を省くとともに、処理液を海中に捨てることを防止して自然環境の汚染を確実に防止することができ、に優しい劣化した処理液による海苔自身の劣化を確実に防止することのできる海苔網薬剤処理装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するため本発明の海苔網薬剤処理装置は、海苔網処理槽と、濾過槽と、処理液収納槽と、薬剤を前記処理液収納槽内へ供給する薬剤供給手段と、希釈剤を前記処理液収納槽内へ供給する希釈剤供給手段と、前記処理液収納槽内に供給された薬剤および希釈剤からなる処理液のpH値を検出するpH検出手段と、前記海苔網処理槽内と処理液収納槽内との間で処理液を循環せしめる循環手段と、前記海苔網処理槽内の処理液を濾過槽内を通して処理液収納槽に還流させる還流手段と、前記pH検出手段による検出結果に基づいて前記処理液収納槽内の処理液のpH値を所定範囲内に保持するように前記処理液収納槽内への薬剤および/または希釈剤の供給量を制御する制御手段とを有することを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明の海苔網薬剤処理装置によれば、海苔網処理槽において海苔網等の薬剤処理が十分に施され、その薬剤処理に施された処理液は処理液収納槽に循環送給され、当該処理液収納槽内で処理液のpH値を所定範囲内に保持するように制御され、その後この処理液が海苔網処理槽へ循環手段を通して循環送給され、再度海苔網等の薬剤処理に施される。薬剤処理が終了した後には、海苔網処理槽内の薬剤処理に施された処理液は還流手段を通して浮遊物等と一緒に濾過槽に循環送給され、処理液を劣化させる要因となる浮遊物等を確実に濾過して除去され、処理液のみが処理液収納槽に還流され、当該処理液収納槽内で処理液のpH値を所定範囲内に保持するように制御されて、次の薬剤処理に供されるので、処理液の無駄を省くとともに、処理液を海中に捨てることを防止して自然環境の汚染を確実に防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態により説明する。
【0011】
図1は本発明に係る海苔網薬剤処理装置の1実施形態の構成を説明する模式図である。
【0012】
図1に示すように、本実施例の海苔網薬剤処理装置1は、海苔網処理槽2と、濾過槽3と、処理液収納槽4と、薬剤を前記処理液収納槽4内へ供給する薬剤供給手段5と、希釈剤を前記処理液収納槽4内へ供給する希釈剤供給手段6と、前記処理液収納槽4内に供給された薬剤および希釈剤からなる処理液のpH値を検出するpH検出手段7と、前記海苔網処理槽2内と処理液収納槽4内との間で処理液を循環せしめる循環手段8と、前記海苔網処理槽2内の処理液を濾過槽3内を通して処理液収納槽4に還流させる還流手段9と、前記pH検出手段7による検出結果に基づいて前記処理液収納槽4内の処理液のpH値を所定範囲内に保持するように前記処理液収納槽4内への薬剤および/または希釈剤の供給量を制御する制御手段10とにより形成されている。これらの構成各部は図示しない海苔作業船内に設置される。
【0013】
各部の構成について更に説明する。
【0014】
前記海苔網処理槽2は、図示しない海苔網を処理液Wを用いて薬剤処理するためのものであり、処理液収納槽4より高い位置に配設されている。そして、海苔網処理槽2の内部には、海苔網処理槽2の槽壁11の高さより低く形成された1対の隔壁12、12が相互に対向するようにして設けられており、槽壁11と隔壁12により区画された2つの外部区画13、13と、2つの隔壁13により区画された内部区画14とにより内部が3分割されている。この内部区画14の内部に500〜3000リットル程度の処理液Wが必要に応じて満たされ、海苔網を薬剤処理するように構成されている。従って、内部区画14内の容量を超えて内部区画14内に処理液Wが供給された場合には、処理液Wは、隔壁12を越えて外部区画13内に、いわゆるオーバーフローするように構成されている。
【0015】
前記濾過槽3は、20〜30リットル程度の上面中央部に開口17を備えた外部容器16と、この外部容器16の内部の中央部に形成されていて上面中央部に開口19を備えた内部容器18とを有している。内部容器18の外周部は海水の水垢やゴミ、海苔の屑等の浮遊物を濾過する金網等のフィルタ20が設けられている。また、内部容器18内の開口19の真下部分には内部に供給される処理液Wを外周方向に分散させる山形屋根状の分散体21が設置されている。
【0016】
前記処理液収納槽4は、少なくとも海苔網処理槽2および濾過槽3内の処理液の合計量を収容できる容量のタンク状に形成されている。そして、処理液収納槽4の内部には、処理液Wを構成する後述する薬剤22および希釈剤23が供給されるようになっている。さらに、処理液収納槽4の底部には、処理液収納槽4内に満たされた処理液Wを必要に応じて外部へ排出するためのドレンコック24が設けられている。この処理液収納槽4内には、処理液収納槽4内に満たされた処理液Wの液面の位置を検出するレベルセンサ25が配設されている。このレベルセンサ25としては、処理液収納槽4内の処理液Wの液面の位置が、所定の位置に位置するかどうかを検出して、その検出信号を制御手段10に送出できるものであればよく、例えば、フロートスイッチと称されるフロート式センサ、差圧式センサ、超音波式センサ、静電容量式センサ等から選択することができる。
【0017】
前記薬剤供給手段5は、薬剤タンク33内の薬剤22を電磁弁により開閉される自動操作弁26が取着されている薬剤供給配管34を通して処理液収納槽4へ供給するように構成されている。そして、薬剤タンク33の底部には、薬剤タンク33内に満たされた薬剤22を必要に応じて外部へ排出するためのドレンコック35が設けられている。また、薬剤タンク33は処理液収納槽4より高い位置に配設されている。
【0018】
前記希釈剤供給手段6は、希釈剤23として海水を用い、希釈剤用ポンプ27により海中から海水を希釈剤供給配管36を通して処理液収納槽4内へ直接供給するように構成されている。
【0019】
前記pH検出手段6は、処理液収納槽4内に供給された薬剤22および希釈剤23からなる処理液WのpH値を検出し、その検出信号を制御手段10に送出できるものであればよく、本実施例においては、pHセンサにより構成されている。
【0020】
前記循環手段8は、海苔網処理槽2内の内部区画14から各外部区画13へオーバーフローした処理液Wを自然落下により処理液収納槽4内へ戻す処理液復帰配管28のみにより形成された処理液復帰系8aと、処理液収納槽4内の処理液Wを海苔網処理槽2の内部区画14内へ送給するために、処理液収納槽4内の処理液Wを処理液供給用ポンプ31により処理液供給配管32を通して海苔網処理槽2の内部区画14内へ送給するように構成された処理液送給系8bとによって構成されている。処理液復帰配管28には仕切弁28aが設けられている。
【0021】
前記還流手段9は、海苔網処理槽2内の内部区画14内の処理液Wを自然落下により底部から濾過槽4内へ戻す処理液復帰配管15により形成された処理液復帰系9aと、濾過槽3内の処理液Wを内へ送給するために、濾過槽3内の処理液Wを処理液供給用ポンプ29により処理液還流配管30を通して処理液収納槽4内へ送給するように構成された処理液送給系9bとによって構成されている。処理液復帰配管15には仕切弁15aが設けられている。
【0022】
前記制御手段10は、図示しないメモリ、CPU等から構成されている。この制御手段10には、pHセンサ7により検出された処理液収納槽4内の処理液WのpH値の検出信号と、レベルセンサ25により検出された処理液収納槽4内に満たされた処理液Wの液面の位置の検出信号とがそれぞれ入力されるようになっている。
【0023】
そして、制御手段10は、pHセンサ7により検出された処理液収納槽4内の処理液WのpH値の検出結果(検出値)に基づいて、この検出値が、予め設定された海苔網に対する処理に効果的なpH値の範囲内か否かを判断し、pH値が予め設定された範囲より小さい場合には、希釈剤用ポンプ27を駆動して処理液収納槽4に希釈剤23としての海水を供給し、pH値が予め設定された範囲より大きい場合には、自動操作弁を20を開状態になるように駆動して処理液収納槽4に薬剤22を供給するようにされている。この、制御手段10は、循環手段8bおよび還流手段9bの処理液供給用ポンプ31、29を常に駆動して、それぞれ濾過槽3内の処理液Wを処理液収納槽4内へ送給したり、処理液収納槽4内の処理液Wを海苔網処理槽2内へ供給するようにされている。
【0024】
また、制御手段10は、レベルセンサ25により検出された処理液収納槽4内に満たされた処理液Wの液面の位置の検出結果に基づいて、処理液収納槽4内の処理液Wの液面の位置が、所定の範囲内に位置するか否かを判断し、所定の範囲内に位置しない(処理液Wが少ない)場合には、自動操作弁20および/または希釈剤用ポンプ27を駆動して処理液収納槽4に薬剤22および/または希釈剤23を供給して、処理液収納槽4内の液面の位置を所定の範囲内に位置させるようにされている。
【0025】
すなわち、本実施形態の制御手段10は、少なくとも処理液WのpH値を制御するpH値制御部37と、処理液収納槽4内の処理液Wの量を制御する処理液量制御部38とを有している。
【0026】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0027】
本実施例の海苔網薬剤処理装置1は、処理液収納槽4内で、薬剤22および希釈剤23を調合して所定の範囲内のpH値の処理液Wを形成し、この所定の範囲内のpH値とされた処理液Wを処理液収納槽4から海苔網処理槽2の内部区画14内へ循環手段8bを通して供給する。
【0028】
海苔網はこの内部区画14内の処理液W内を浸漬通過することにより所定の薬剤処理を確実に施される。次ぎに、海苔網処理槽2内で海苔網への薬剤処理に用いられ外部区画13内にオーバーフローした処理液Wは、図示しないフィルタによって浮遊物等を除去されてから処理液収納槽3内へ循環手段8aを通して自然落下によって供給される。
【0029】
次ぎに、処理液Wが処理液収納槽4内へ循環されると、前記のようにして処理液収納槽4内の処理液WのpH値が所定の範囲内に保持され、かつ、処理液収納槽4内の処理液Wの量が所定の範囲内に保持されるように、薬剤22および/または希釈剤23が処理液収納槽4内に供給される。
【0030】
従って、本実施形態によれば、処理液収納槽4内の処理液WのpH値をpH検出手段7によってリアルタイムで検出しながら、処理液WのpH値を所定範囲内とするための薬剤22および/または希釈剤23の処理液収納槽4内への供給を確実に制御することができる。そして、小容量の処理液収納槽4を用いるので、処理液収納槽4内の処理液Wの量が少なく、処理液WのpH値を制御する規模を小さくすることができ、処理液収納槽4内でpH値の異なる薬剤22と希釈剤23とを混合した場合に、処理液収納槽4内のpH値(濃度)を迅速に均一とし、薬剤22と希釈剤23とを混合した場合の応答性を確実に向上させ、処理液WのpH値を所定の範囲内に確実に保持することができる。
【0031】
そして、所定の範囲内のpH値とされた処理液Wは、再び処理液収納槽4から海苔網処理槽2へ供給され、海苔網の薬剤処理に供される。
【0032】
このような薬剤処理が終了すると、海苔網処理槽2の内部区画14内の薬剤処理に施された処理液Wは自然落下によって還流手段9aを通して浮遊物等と一緒に濾過槽3に循環送給される。そして、開口17、19を順に経て濾過槽3の内部容器18内に供給された処理液Wは、分散体21によって外周部へ分散され、当該内部容器18のフィルタ20によって処理液Wを劣化させる要因となる海水の水垢やゴミ、海苔の屑等の浮遊物が確実に濾過される。内部容器18内に残留した浮遊物は適宜な方法によって外部に取り出されるようになっている。このようにして濾過槽3の外部容器16と内部容器18との間に流出した浮遊物等を確実に濾過して除去された処理液Wのみが、次の処理液収納槽4内に還流手段9bを通して還流される。本実施の形態によれば、処理液Wの無駄を省くとともに、処理液Wを海中に捨てることを防止して自然環境の汚染を確実に防止することができる。
【0033】
このように本実施形態においては、処理液Wが海水の水垢やゴミ、海苔の屑等の浮遊物によって品質劣化するのを確実に防止でき、処理液Wの無駄を省くとともに、処理液Wの繰り返し利用を図ることができ、劣化した処理液による海苔自身が劣化することを確実に防止することができる。
【0034】
なお、本発明は、前記各実施例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の海苔網薬剤処理装置によれば、処理液のpH値を所定の範囲内に確実に保持することができ、海苔網への薬剤処理を効果的にかつ効率よく行うことができる、処理液が海水の水垢やゴミ、海苔の屑等の浮遊物による品質劣化を確実に防止でき、処理液の繰り返し利用を図ることができ、処理液の無駄を省くとともに、処理液を海中に捨てることを防止して自然環境の汚染を確実に防止することができ、劣化した処理液による海苔自身の劣化を確実に防止することができるという極めて優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の海苔網薬剤処理装置の1実施形態をの構成を説明する模式図
【符号の説明】
1 海苔網薬剤処理装置
2 海苔網処理槽
3 濾過槽
4 処理液収納槽
5 薬剤供給手段
6 希釈剤供給手段
7 pH検出手段
8、8a、8b、8c 循環手段
9、9a、9b 還流手段
10 制御手段
22 薬剤
23 希釈剤
W 処理液
Claims (1)
- 海苔網処理槽と、濾過槽と、処理液収納槽と、薬剤を前記処理液収納槽内へ供給する薬剤供給手段と、希釈剤を前記処理液収納槽内へ供給する希釈剤供給手段と、前記処理液収納槽内に供給された薬剤および希釈剤からなる処理液のpH値を検出するpH検出手段と、前記海苔網処理槽内と処理液収納槽内との間で処理液を循環せしめる循環手段と、前記海苔網処理槽内の処理液を濾過槽内を通して処理液収納槽に還流させる還流手段と、前記pH検出手段による検出結果に基づいて前記処理液収納槽内の処理液のpH値を所定範囲内に保持するように前記処理液収納槽内への薬剤および/または希釈剤の供給量を制御する制御手段とを有することを特徴とする海苔網薬剤処理装置。
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