JP4218716B2 - 芳香族ポリイミド粉末、及び該芳香族ポリイミド粉末からなる成形体 - Google Patents

芳香族ポリイミド粉末、及び該芳香族ポリイミド粉末からなる成形体 Download PDF

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Description

この発明は、例えば主要単位として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分、少量単位として2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分を、芳香族ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンを有する極めて高いレベルの耐熱性を保持しているとともに、特に曲げ強度や引張強度が大きく、伸びの大きい芳香族ポリイミド粉末成形体に使用される芳香族ポリイミド粉末、及び該芳香族ポリイミド粉末からなる成形体に関するものである。
従来、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミン成分とからなるポリイミド粉末成形体の製法としては、例えば特許文献1、特許文献2などに記載されている。これらの文献によると、上記成形体は耐熱性、寸法安定性、圧縮強度等の機械的強度に優れていることが示されている。
しかし、上記の公知文献に記載されているポリイミド粉末は、融点(またはガラス転移温度)が実質的に測定されず、加熱圧縮成形時の粉体どうしの融着が充分でないためか、機械的強度のうち特に曲げ強度や引張強度が必ずしも充分に満足できるものではなかった。また、成形体を切削加工等によって種々の形状に二次加工するさいに、伸びと曲げ強度や引張強度が充分大きくないためか、成形時に欠けたりして生産性が高くないという問題点が指摘されている。
このため、成形体の伸びおよび機械強度を大きくするために加熱圧縮成形時の粉体どうしの融着性を改良するための試みがなされた。例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミン成分とから得られるポリイミドに熱可塑性ポリイミドを混合して得られるポリイミド粉末を圧縮成形する方法が試みられたが、性質の全く異なる両成分の均一混合が困難であり、得られる成形体の機械的強度および伸びは未だ満足できるレベルに達するものではなく、また耐熱性が却って低下するという問題点が指摘されている。従って、従来の技術では、耐熱性、機械的強度および伸びを併せて満足する芳香族ポリイミド粉末成形体を得ることができなかったのである。
特開昭61−241326号公報 特開平1−266134号公報
この発明の目的は、従来公知の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミンとを主成分とするポリイミド粉末成形体のような、耐熱性と寸法安定性、圧縮強度等を低下させることなく、機械的強度および伸びを高いレベルで有している芳香族ポリイミド粉末成形体の製法に好適に用いることができる芳香族ポリイミド粉末、及び該芳香族ポリイミド粉末からなる成形体を提供することである。
この発明者らは、前記の課題を達成するために鋭意検討した結果、ポリイミド粉末として、高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミドと非結晶性ポリイミドとの特定の組合せおよび構造にすることによって、前記の矛盾する物性を両立することができることを見出し、この発明を完成したものである。
すなわち、この発明は、ガラス転移温度(Tg)が室温〜400℃の温度範囲では観測されない高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミドから主としてなる固形分を非結晶性ポリイミドからなる被覆層で覆ってなり、対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)が0.4以上であり、広角X線回折法により結晶化度が確認されることを特徴とする芳香族ポリイミド粉末に関する。
また、この発明は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物および2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物からなり2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類を全芳香族テトラカルボン酸成分に対して0.5モル%以上30モル%未満の割合で含むビフェニルテトラカルボン酸類50〜100モル%と他の芳香族テトラカルボン酸類0〜50モル%とからなる芳香族テトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミンを80モル%以上の割合で含む芳香族ジアミン成分とから得られることを特徴とする前記の芳香族ポリイミド粉末、さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸成分およびパラフェニレンジアミンを80モル%以上含む芳香族ジアミン成分とからなり、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分が全芳香族テトラカルボン酸成分中0.5モル%以上30モル%未満の範囲にあり、平均粒子径が0.5〜100μmであることを特徴とする前記の芳香族ポリイミド粉末に関する。
また、この発明は、前記の芳香族ポリイミド粉末からなることを特徴とするポリイミド粉末成形体に関する。
この発明の芳香族ポリイミド粉末は、成形の際に粉末粒子表面のポリマ−溶融が充分で、かつ相互に融合し合って結合することが可能であり、耐熱性と機械的強度、伸びが高度にバランスした成形品を得られる。
この発明における芳香族ポリイミド粉末は、ガラス転移温度(Tg)が室温〜400℃の温度範囲では観測れない高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミドから主としてなる固形分、好適には3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミンより誘導されるポリイミド固形分(粒子)を非結晶性ポリイミドからなる被覆層で覆ってなり、対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)による測定によって高分子量とみなすことができる、広角X線回折法により結晶化度が確認され、好適には高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミド粒子の表面を非結晶性のポリイミドポリマ−からなる被覆層で覆ってなる2層構造を有する前記の対数粘度が0.4以上、特に0.5〜3の粒子である。すなわち、粒子の内層部分は結晶性芳香族ポリイミドであるのに対し、その外層は非結晶性ポリイミドの薄い層の2層構造となっている粉末である。
前記の非結晶性のポリイミドによる被覆は、結晶性芳香族ポリイミド粒子のほぼ全面であることが好ましいが、これは必ずしも必須ではなく、ポリイミド粉末の粒子表面のある部分(例えば40%以下)であれば結晶性芳香族ポリイミド粒子面が表面層を形成していてもよい。この発明のポリイミド粉末によれば、成形の際に粉末粒子表面のポリマ−溶融が充分で、かつ相互に融合し合って結合するため、耐熱性と機械的強度、伸びが高度にバランスした成形品が得られると考えられる。
この発明における芳香族ポリイミド粉末を、この発明の一実施例の粉末の透過型電子顕微鏡による断面写真図である図1、従来のポリイミド粉末の断面写真図である図2、およびこの発明の一実施例の粉末と従来のポリイミド粉末の両方の広角X線回折法(WAXS)によるX線回折スペクトル図である図3を用いて説明する。
図1において、この発明のポリイミド粉末の内層部分は、図2と同様に結晶構造の明瞭な構造となっており、その外層に内層とは異なる無定形の非結晶性芳香族ポリイミドである被覆層でほぼ全面を薄く覆ってなる構造である。
また、図3において、非結晶性芳香族ポリイミドを導入したこの発明の粉末の方が従来のもの(後述の比較例1のもの)よりも低い結晶化度を有すことが明らかである。これらの強度〔cps〕とピ−ク位置(2θ)とを観察すると、2θが11.2929、18.4398、21.0729、23.1386、24.2767、25.7922、27.6764、29.0357に結晶性ポリイミドに基づくピ−クが認められる。
この発明における芳香族ポリイミドの粉末は、好適には次の方法、すなわち、結晶性芳香族ポリイミドを与える芳香族テトラカルボン酸成分、例えば好適には3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物、および非結晶性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分、例えば好適には2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物(いずれも好適には酸二無水物)を主成分とし、非結晶性ポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分(好適には2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類)を全テトラカルボン酸成分に対して約0.5モル%以上30モル%未満、特に1モル%以上25モル%未満、その中でも特に1.5モル%以上20モル%未満の割合で含む芳香族テトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミンを全ジアミン成分に対して少なくとも約80モル%以上の割合で含む芳香族ジアミン成分とを、略等モル量を公知の方法で有機極性溶媒中で、重合およびイミド化、ついで反応系からの粉末回収によって製造される、高分子量の芳香ポリイミドからなる平均粒子径(一次粒子)が0.5〜100μm、特に1〜50μmの粉末である。
前記の方法によれば、結晶性芳香族ポリイミドの微小粒子を生成させながら高分子化、イミド化後、非結晶性ポリイミドを不溶性にしてポリイミド粉末を析出させた後、粉末回収してポリイミド粉末を得ることができる。この方法によれば重合およびイミド化に特別の操作を加えなくても、2層構造を有するポリイミド粉末であって、残存反応溶媒が少なく、均一な粒子形成を容易に行うことができる。この場合、非結晶性ポリイミドの割合が多くなると、粒子が多くの溶媒を含みペ−スト状となり、粉末を回収するための操作が複雑になる。
この発明のポリイミド粉末は、2種のポリイミドが実質的に共重合していないが、このことは結晶化度が組成比とほぼ一致していることから確認される。一方、結晶性芳香族ポリイミド粉末をあらかじめ添加した系で非結晶性ポリイミドを生成させる方法では、2種(結晶性ポリイミド、非結晶性ポリイミド)の混合物になって、非結晶性ポリイミドで被覆した粒子は得られず、このような混合物から得られる成形体は物性が不十分である。
前記の芳香族テトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類のみを前記の割合で使用することが粉末成形体の高いレベルの物性(特に機械的強度と使用時の耐熱性)から望ましいが、ビフェニルテトラカルボン酸類の一部、好適には50モル%以下、特に20モル%以下を他の芳香族テトラカルボン酸類で置き換えてもよい。
これらの芳香族テトラカルボン酸類としては、ピロメリット酸またはその酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸またはその酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンまたはその酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンまたはその酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エ−テルまたはその酸二無水物などを挙げることができる。
また、前記のパラフェニレンジアミンは粉末成形品の物性と重合・イミド化の操作の簡単さから単独で使用することが望ましいが、物性を実質的に損なわない範囲でその少量部、好適には約20モル%以下を他の芳香族ジアミン、ジアミノポリシロキサンなどのジアミンで置き換えてもよい。例えば、このようなジアミンとしては、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(4−アミノフェニル)ジメチルシラン、1,4−ビス(4−アミノ−フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−フェノキシ)ベンゼンなどを挙げることができる。
この発明において、前記の芳香族ポリイミドの粉末を金型内に充填し、圧力および熱を同時あるいは別々に加えて成形してポリイミド粉末成形体を製造する。前記の芳香族ポリイミドの粉末はそのまま使用するか、あるいは前記粉末から予備成形体を形成するかして、成形温度200〜600℃、好ましくは250〜550℃、特に好ましくは300〜500℃、および成形圧力300〜10000kg/cm、好ましくは500〜8000kg/cm、特に好ましくは600〜6000kg/cmで圧縮成形することによって好適に製造することができる。これらの温度や圧力は前記の範囲内であれば任意に選択すればよい。
あるいは、前記の芳香族ポリイミド粉末を、好適には充分乾燥(前焼成)した後あるいはその予備成形体を、成形温度:室温〜350℃、成形圧力300〜10000kg/cm、好ましくは500〜8000kg/cm、より好ましくは600〜6000kg/cmで圧縮成形した成形体を、非圧縮下、200〜600℃、好ましくは250〜500℃にて後焼結することにより製造するものである。この方法によって得られる成形体は、前述の加熱圧縮成形により得られた成形体と比較して、総合的な特性は低下するが、並列処理ができるなど生産性に優れているという特徴がある。
さらに、この発明の粉末成形体の製法においては、シリカ、マイカ、カオリン、アスベスト、窒化ほう素、酸化アルミニウム、酸化鉄、グラファイト、硫化モリブデン、硫化鉄などの無機充填剤、あるいは、ふっ素樹脂などの有機充填剤などの各種の充填剤を前記のポリイミド粉末と混合(内部添加、外部添加のいずれの方法で配合したものでもよい。)して使用することができる。
この発明の製法において、ポリイミド粉末成形体を製造する装置としては、例えば、4柱式油圧式プレス、高圧ホットプレスなどを挙げることができる。また、前記の予備成形体は、例えば、ロ−タリ−プレス、タブレットマシ−ンを使用する方法によって形成することが好ましい。
この発明の方法によって得られるポリイミド粉末成形体は、前述の特定の芳香族ポリイミド粉末から得られるものであり、従来公知の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類とパラフェニレンジアミンとから得られるポリイミド粉末成形体の優れた耐熱性、寸法安定性等を低下させることなく、機械的強度や伸びを向上させることができる。
以下、この発明の実施例を示す。以下の各例において、ポリイミド粉末成形体の種々の物性は、次の試験方法によって測定したものである。
(i) 曲げ試験:ASTM D−790 測定温度23℃において、曲げ強度(kg/cm)を求めた。
(ii)引張試験:ASTM D−638に準じて、測定温度23℃において、引張強度(kg/cm)を求めた。
〔実施例1〕
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1275gと、パラフェニレンジアミン(PPD)60.47g(0.559モル)とを、撹拌機、還流冷却器(水分離器付き)、温度計、窒素導入管を備えた容量2Lの四ツ口セパラブルフラスコに、60℃において添加し、その混合液に窒素ガス流通と撹拌をしながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)148.08g(0.503モル)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)16.45g(0.0559モル)とをほぼ同時に添加し、約20分間で100℃まで昇温し、各モノマ−成分をNMP溶媒に均一に溶解した溶液を調製した。次いで、その溶液を窒素ガス流通と撹拌を継続しながら、溶媒と生成水とを還流させ、生成水を除去しながら、約30分間で190℃まで昇温した。芳香族ポリイミドの析出は内温165℃付近から始まった。内温が190℃に達した後、反応を3時間継続し、反応を完結させた。
その後、反応液を冷却し、芳香族ポリイミド粉末を濾別し、その粉末をアセトンで洗浄し、さらに減圧乾燥器中で150℃で10時間乾燥し、次いで300℃にて常圧乾燥を30分間行い、芳香族ポリイミド粉末202.1g(理論収率98.6%)を得た。この芳香族ポリイミド粉末は、透過型電子顕微鏡による観察(断面図を示す)から結晶性ポリイミド粒子の表面の全部を非結晶性のポリイミドからなる被覆層で覆ってなる2層構造を有しており、そのポリマ−の対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)が0.62であり、平均粒径(一次粒子)は6μmであり、広角X線回折法(ル−ランド法)による解析で結晶化度は38%であった。またガラス転移温度は400℃まで観測されなかった。このポリイミド粉末をポリイミド粉末−Aと称する。
〔比較例1〕
実施例1において、a−BPDAを用いずテトラカルボン酸成分としてs−BPDAのみを164.53g(0.559モル)を用いた以外は、同様な操作を繰り返した。得られた粉末は202.5g(理論収率98.8%)、このポリイミド粉末は対数粘度が0.65、平均粒子が8μm、透過型電子顕微鏡による観察(断面図を示す)から結晶化度が43%であり、ガラス転移温度が400℃まで測定されなかった。このポリイミド粉末をポリイミド粉末−Bと称する。
〔比較例2〕
実施例1において、s−BPDAを用いずテトラカルボン酸成分としてa−BPDAのみを164.53g(0.559モル)を用いた以外は、同様な操作を繰り返した。粉末は得られず、糊状の固形分が得られた。
〔実施例2〕
ポリイミド粉末−Aを、円筒形(直径60mm、高さ60mm)の金型内に充填し、350℃に加熱されたオ−ブン内に入れて、減圧下約3時間の前焼成を行い、その前焼成されたポリイミド粉末に、圧力2000kg/cmを加えて350℃で10分間加圧し、前記の圧力下に約120分間で昇温して480℃の温度とし、この圧力と温度で30分間維持し、この間に揮発分などのガス抜きをする本焼成を行い、そして、加圧状態を停止して、圧縮成形機から取り出し成形品をさらにオ−ブン内で450℃、2時間の後焼成を行った後放冷して、ポリイミド粉末成形体(直径60mm、高さ10mmの円柱)を得た。このポリイミド粉末成形体を切削加工して、ポリイミド粉末成形体からなる板(試験片)を作成し、曲げ試験を行った。曲げ強度は1700kg/cmであった。粉末成形体は良好な切削加工性(二次加工性)を示した。
〔比較例3〕
ポリイミド粉末として、ポリイミド粉末−Bを使用したほかは実施例2と同様に加熱圧縮成形を行って、ポリイミド粉末成形体を得た。その成形体の曲げ強度は1070kg/cmであった。
〔実施例3〕
ポリイミド粉末−Aを300℃に加熱されたオ−ブンに入れて常圧下、約1時間前焼成し、次に円筒形(直径30mm、高さ30mm)の金型内に充填し、圧力2000kg/cmを加えて常温で10分間加圧し、放圧した後金型から取り出した成形品を300℃に加熱されたオ−ブン内に入れて、約120分かけて480℃の温度とし、この温度で30分間維持し、次いで放冷してポリイミド粉末成形体(直径30mm、高さ3mmの円柱)を得た。このポリイミド粉末成形体を切削加工して試験片を作成した。この試験片の引張強度は850kg/cmであった。
〔比較例4〕
ポリイミド粉末−Bを使用したほかは、実施例3と同様にしてポリイミド粉末成形体を得た。その成形体についての引張強度は450kg/cmであった。
〔実施例4〕
粉末成形体の伸びについて、比較例3と実施例3でそれぞれ得られた成形体について相対値(比較例3のものを1とする)で評価した結果、2.5倍の値であった。また、実施例2、3および比較例3、4で得られた粉末成形体について、耐熱性を熱重量減少測定により、寸法安定性を加熱収縮率により、圧縮強度を圧縮試験(ASTM D−695に準ずる方法)により評価したところ、いずれも実質的に差異は認められず、良好な耐熱性を示した。
〔実施例5〕
s−BPDAとa−BPDAとの割合を98:2(モル比)に変えた他は実施例1と同様に実施してポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は、実施例1で得られたポリイミド粉末(ポリイミド粉末−A)と同様に結晶性ポリイミド粒子の表面のほぼ全面を非結晶性のポリイミドからなる被覆層で覆ってなる2層構造を有しており、そのポリマ−の対数粘度が0.62であり、平均粒径が6μmであり、結晶化度(全体として)が36%であった。またガラス転移温度は400℃まで観測されなかった。このポリイミド粉末を用いて実施例2と同様に圧縮成形し、得られた試験片について曲げ強度を測定した結果、曲げ強度は1200kg/cmであった。
〔実施例6〕
s−BPDAとa−BPDAとの割合を85:15(モル比)に変えた他は実施例1と同様に実施してポリイミド粉末を得た。このポリイミド粉末は、実施例1で得られたポリイミド粉末(ポリイミド粉末−A)と同様に結晶性ポリイミド粒子の表面の全面を非結晶性のポリイミドからなる被覆層で覆ってなる2層構造を有しており、そのポリマ−の対数粘度が0.63であり、平均粒径が6μmであり、結晶化度(全体として)が28%であった。またガラス転移温度は400℃まで観測されなかった。このポリイミド粉末を用いて実施例2と同様に圧縮成形し、得られた試験片について曲げ強度を測定した結果、曲げ強度は1570kg/cmであった。
この発明の方法によれば、耐熱性と寸法安定性、圧縮強度等を低下させることなく、機械的強度および伸びが高いレベルで調和している芳香族ポリイミド粉末成形体を得ることができる。また、この発明の芳香族ポリイミド粉末は、成形の際に粉末粒子表面のポリマ−溶融が充分で、かつ相互に融合し合って結合することが可能であり、耐熱性と機械的強度、伸びが高度にバランスした成形品を得られる。
この発明の粉末の一例の透過型電子顕微鏡観察による断面写真図である。 従来の粉末の一例の透過型電子顕微鏡観察による断面写真図である。 この発明の粉末の一例と従来の粉末の一例の各々の広角X線回折法(WAXS)によるX線回折スペクトル図である。強度の大きいスペクトル図が従来の粉末のもので、強度の小さいスペクトル図がこの発明の粉末のスペクトル図を示す。

Claims (3)

  1. 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物および2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸あるいはその酸二無水物またはその酸と低級アルコ−ルとのエステル化物からなり2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類を全芳香族テトラカルボン酸成分に対して0.5モル%以上30モル%未満の割合で含むビフェニルテトラカルボン酸類50〜100モル%と他の芳香族テトラカルボン酸類0〜50モル%とからなる芳香族テトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミンを80モル%以上の割合で含む芳香族ジアミン成分とから得られる、ガラス転移温度(Tg)が室温〜400℃の温度範囲では観測されない高耐熱性の結晶性芳香族ポリイミドから主としてなる固形分を非結晶性ポリイミドからなる被覆層で覆ってなり、対数粘度(30℃、0.5g/100ml濃硫酸)が0.4以上であり、広角X線回折法により結晶化度が確認されることを特徴とする芳香族ポリイミド粉末。
  2. 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる芳香族テトラカルボン酸成分およびパラフェニレンジアミンを80モル%以上含む芳香族ジアミン成分とからなり、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分が全芳香族テトラカルボン酸成分中0.5モル%以上30モル%未満の割合で含むビフェニルテトラカルボン酸類50〜100モル%と他の芳香族テトラカルボン酸類0〜50モル%とからなる芳香族テトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミンを80モル%以上の割合で含む芳香族ジアミン成分とから得られる、平均粒子径が0.5〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリイミド粉末。
  3. 請求項1〜のいずれかに記載の芳香族ポリイミド粉末からなることを特徴とするポリイミド粉末成形体。
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