本発明は車両の駆動装置に係り、特に、電動機などを小型化する技術に関するものである。
エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する動力分配機構と、その動力分配機構の出力軸と駆動輪との間に設けられた第2電動機とを、備えた車両が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動装置がそれである。このようなハイブリッド車両の駆動装置では、動力分配機構が差動機構として機能するように例えば遊星歯車装置で構成され、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪へ機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、エンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させることが可能となり、燃費が向上させられる。
特開2003−127681号公報
特開平11−198670号公報
特開平11−198668号公報
特開平11−217025号公報
WO 03/016749A1公報
一般に、無段変速機は車両の燃費を良くする装置として知られている一方、有段変速機のような歯車式伝動装置は伝達効率が良い装置として知られている。しかし、それ等の長所を兼ね備えた動力伝達機構は未だ存在しなかった。例えば、上記のような従来の車両の駆動装置では、第1電動機から第2電動機への電気エネルギの電気パスすなわち車両の駆動力の一部を電気エネルギで伝送する伝送路を含むため、エンジンの高出力化に伴ってその第1電動機を大型化させねばならないとともに、その第1電動機から出力される電気エネルギにより駆動される第2電動機も大型化させねばならないので、駆動装置が大きくなるという問題があった。或いは、エンジンの出力の一部が一旦電気エネルギに変換されて駆動輪に伝達されるので、高速走行などのような車両の走行条件によってはかえって燃費が悪化する可能性があった。上記動力分配機構が電気的に変速比が変更される変速機例えば電気的CVTと称されるような無段変速機として使用される場合も、同様の課題があった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、駆動装置を小型化できたり、あるいはまた、燃費が向上させられる車両の駆動装置を提供することにある。
本発明者等は、以上の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、第1電動機および第2電動機は、エンジン出力が比較的小さい常用出力域ではそれほどの大きさを要しないが、高出力走行時のようにエンジンの高出力域例えば最大出力域であるときにはそれに見合う容量或いは出力を備えるために大きなものが必要となることから、そのようなエンジンの出力が大きい領域であるときには、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力を駆動輪へ伝達するような状態とすると、第1電動機および第2電動機が小型となって車両の駆動装置がコンパクトとなるという点を見いだした。あるいはまた、同様に専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力を駆動輪へ伝達するような状態とすると、高速走行時には、エンジンの出力の一部が第1電動機により一旦電気エネルギに変換されて第2電動機により駆動輪に動力伝達するための電気パスが無くなって動力と電気との間の変換損失が抑制されるので燃費が一層向上するという点を見いだした。本発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた第2電動機と、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機とを備えた車両の駆動装置であって、前記動力分配機構を、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態と、これを非差動の複数段の変速機として機能する複数の定変速状態とのいずれかに選択的に切換える差動状態切換装置を、含み、その差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機を構成し、その差動状態切換装置によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成される無段変速機を構成することにある。
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、駆動輪と動力伝達可能に連結された第2電動機と、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機とを備えた車両の駆動装置であって、前記動力分配機構を、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態と、これを非差動の複数段の変速機として機能する複数の定変速状態とのいずれかに選択的に切換える差動状態切換装置を、含み、その差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機を構成し、その差動状態切換装置によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成される無段変速機を構成することにある。
このようにすれば、差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機を構成し、その差動状態切換装置によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成されることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域では、上記動力分配機構が差動状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、高速走行では動力分配機構がロック状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行では上記動力分配機構がロック状態とされるので、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、電動機が発生すべき電気的エネルギ換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
ここで、好適には、請求項3にかかる発明では、前記動力分配機構は、前記エンジンに連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有するものであり、前記差動状態切換装置は、前記差動状態とするためにその第1要素、第2要素、および第3要素を相互に相対回転可能とするとともに、前記複数の定変速状態のいずれかとするためにその第1要素、第2要素、および第3要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか或いはその第2要素を非回転状態とするものである。このようにすれば、差動状態切換装置により差動状態と複数の定変速状態のいずれかとに選択的に切換えられ得る動力分配機構が簡単に構成される。
また、好適には、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた第2電動機と、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機とを備えた車両の駆動装置であって、前記動力分配機構を、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態と、変速比の複数段の変速機として機能する複数の定変速状態のいずれかとに選択的に切換える差動状態切換装置を、含み、その差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機を構成し、その差動状態切換装置によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成される無段変速機を構成することにある。
このようにすれば、差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機を構成し、その差動状態切換装置によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成されることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域では、上記動力分配機構が差動状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、高速走行では動力分配機構が定変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行では上記動力分配機構が定変速状態とされるので、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、電動機が発生すべき電気的エネルギ換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
ここで、好適には、請求項5にかかる発明では、前記動力分配機構は、前記エンジンに連結された第1要素と前記第1電動機に連結された第2要素と前記伝達部材に連結された第3要素とを有するものであり、前記差動状態切換装置は、前記差動状態とするためにその第1要素、第2要素、および第3要素を相互に相対回転可能とするとともに、前記複数の定変速状態のいずれかとするためにその第1要素、第2要素、および第3要素のうちの少なくとも2つを相互に連結するか或いはその第2要素を非回転状態とするものである。このようにすれば、差動状態切換装置により差動状態と定変速状態とに選択的に切換えられ得る動力分配機構が簡単に構成される。
また、好適には、請求項6にかかる発明では、前記動力分配機構は遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤであり、前記差動状態切換装置は、前記キャリヤ、サンギヤ、リングギヤのうちのいずれか2つを相互に連結するクラッチおよびそのサンギヤを非回転部材に連結するブレーキを備えたものである。このようにすれば、動力分配機構の軸方向寸法が小さくなるとともに、例えば1つの遊星歯車装置によって動力分配機構が簡単に構成される。
また、好適には、請求項7にかかる発明では、前記遊星歯車装置はシングルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、動力分配機構の軸方向寸法が小さくなるとともに、動力分配機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また、好適には、請求項8にかかる発明では、前記差動状態切換装置は、前記シングルピニオン型遊星歯車装置を変速比が1である変速機とするために前記キャリヤとサンギヤを相互に連結し、前記シングルピニオン型遊星歯車装置を変速比が1より小さい増速変速機とするために前記サンギヤを非回転状態とするものである。このようにすれば、動力分配機構が1つのシングルピニオン型遊星歯車装置によって単段または複数段の定変速比を有する変速機として簡単に構成される。
また、好適には、請求項9にかかる発明では、前記遊星歯車装置はダブルピニオン型遊星歯車装置である。このようにすれば、動力分配機構の軸方向寸法が小さくなるとともに、動力分配機構が1つのダブルピニオン型遊星歯車装置によって簡単に構成される。
また、好適には、請求項10にかかる発明では、前記差動状態切換装置は、前記ダブルピニオン型遊星歯車装置を変速比が1である変速機とするために前記キャリヤとサンギヤを相互に連結し、前記ダブルピニオン型遊星歯車装置を変速比が1より大きい減速変速機とするために前記サンギヤを非回転状態とするものである。このようにすれば、動力分配機構が1つのダブルピニオン型遊星歯車装置によって単段または複数段の定変速比を有する変速機として簡単に構成される。
また、好適には、請求項11にかかる発明では、前記自動変速機は有段式自動変速機である。このようにすれば、差動状態とされた動力分配機構と有段式自動変速機とで電気的に変速比が変化させられる変速機例えば無段変速機が構成され、ロック状態或いは定変速状態とされた動力分配機構と有段式自動変速機とで有段式自動変速機が構成される。
また、好適には、上記の駆動装置において、前記自動変速機は設定可能な変速比が1より大きい減速変速機である。このようにすれば、例えば第2電動機が前記伝達部材に連結される場合には、前記自動変速機の出力軸に対して低トルクの出力でよいので、第2電動機が一層小型化される。
また、好適には、請求項12に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置、第3遊星歯車装置、および第4遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置、第3遊星歯車装置、および第4遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって5つの回転要素が構成されるとともに、その5つの回転要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその5つの回転要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、第7要素、および第8要素としたとき、その第4要素は第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第5要素は第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第7要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第8要素は第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第1クラッチ、第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキ、第3ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項13に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備えるシングルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤおよびその第3サンギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第4リングギヤは第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤ、その第3キャリヤ、およびその第4キャリヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第3リングギヤおよびその第4サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されたものである。
また、好適には、請求項14に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって4つの要素が構成されるとともに、その4つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその4つの要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、および第7要素としたとき、その第4要素は第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第5要素は第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第7要素は第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第1クラッチ、第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項15に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤおよびその第3サンギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3キャリヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤおよびその第3リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第2リングギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されたものである。
また、好適には、請求項16に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって4つの要素が構成されるとともに、その4つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその4つの要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、および第7要素としたとき、その第4要素は第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第4クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結され、その第5要素は第3クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第7要素は第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ、第4クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項17に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるダブルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置とを有し、その第3サンギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第4クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結され、その第2キャリヤおよびその第3キャリヤは第3クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤおよびその第3リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第2サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結されたものである。
また、好適には、請求項18に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第3要素、および第1要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって4つの要素が構成されるとともに、その4つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその4つの要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、および第7要素としたとき、その第4要素は第3クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第5要素は第2クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第7要素は第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項19に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたダブルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるダブルピニオン型の第3遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは第3クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤおよびその第3キャリヤは第2クラッチを介して前記エンジンに選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤおよびその第3リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第3サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されたものである。
また、好適には、請求項20に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置、第3遊星歯車装置、および第4遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置、第3遊星歯車装置、および第4遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって5つの回転要素が構成されるとともに、その5つの回転要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその5つの回転要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、第7要素、および第8要素としたとき、その第4要素は第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第5要素は第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第7要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第8要素は前記伝達部材に連結され、その第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキ、第3ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項21に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備えるシングルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤおよびその第3サンギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第4リングギヤは第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤ、その第3キャリヤ、およびその第4キャリヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第3リングギヤおよびその第4サンギヤは前記伝達部材に連結されたものである。
また、好適には、請求項22に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよび/またはその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび/または切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の定変速状態に切換えられるものであり、(b) 前記自動変速機は、第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置を備え、その第2遊星歯車装置および第3遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤの一部が互いに連結されることによって4つの要素が構成されるとともに、その4つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその4つの要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、第6要素、および第7要素としたとき、その第4要素は第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第5要素は第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第6要素は前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第7要素は前記伝達部材に連結され、その第2クラッチ、第1ブレーキ、第2ブレーキの係合作動の組み合わせに応じて多段に変速されるものである。
また、好適には、請求項23に係る発明の要旨とするところは、(a) 前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび/またはその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b) 前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤおよびその第3サンギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3キャリヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤおよびその第3リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第2リングギヤは前記伝達部材に連結されたものである。
また、好適には、請求項24にかかる発明では、前記動力分配機構は第1軸心上に配設され、前記自動変速機はその第1軸心に平行な第2軸心上に配設され、その動力分配機構とその自動変速機とはその第1軸心上とその第2軸心上とに配設される一対の部材によって構成される前記伝達部材を介して動力伝達可能に連結されているものである。このようにすれば、動力分配機構と自動変速機とが同一の軸心上に配設される場合に比較して駆動装置の軸心方向の寸法が短縮される。これにより、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心および第2軸心が車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。
また、好適には、請求項25にかかる発明では、前記第2電動機は、前記第1軸心上に配設されているものである。このようにすれば、駆動装置における前記第2軸心の軸心方向の寸法が短縮される。
また、好適には、請求項26にかかる発明では、前記第2電動機は、前記第2軸心上に配設されているものである。このようにすれば、駆動装置における前記第1軸心の軸心方向の寸法が短縮される。
また、好適には、請求項27にかかる発明では、前記伝達部材は、前記動力分配機構に対して前記エンジンの反対側に配設されているものである。言い換えれば、前記動力分配機構は、前記エンジンと前記伝達部材との間に配設されている。このようにすれば、駆動装置における前記第1軸心の軸心方向の寸法が短縮される。
また、好適には、請求項28にかかる発明では、前記自動変速機の出力回転部材にデフドライブギヤを備え、そのデフドライブギヤはその自動変速機に対して前記伝達部材の反対側に配設されているものである。言い換えれば、前記自動変速機は、前記伝達部材とデフドライブギヤとの間に配設されている。このようにすれば、前記第2軸心の軸心方向の寸法が短縮される。
また、好適には、請求項29にかかる発明では、前記動力分配機構で入力回転を反転して前記自動変速機に出力すると共に前記第3ブレーキの係合により後進走行用のギヤ比が達成されるものである。このようにすれば、後進走行時には、自動変速機に負の回転すなわち前進走行時の伝達部材の回転方向とは反対方向となる回転が入力されるので、例えばその自動変速機内で自動変速機への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機の出力回転部材から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。例えば駆動装置の小型化を目的として自動変速機に第1クラッチが備えられなくとも後進走行用のギヤ段が達成され得る。また、第3ブレーキの係合により無段変速させられる動力分配機構の出力である自動変速機への入力回転が減速されて自動変速機からの出力回転となるので、後進走行用のギヤ比が任意に設定され得る。例えば、第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
また、好適には、請求項30にかかる発明では、前記動力分配機構で入力回転を反転して前記自動変速機に出力すると共に前記第2ブレーキの係合により後進走行用のギヤ比が達成されるものである。このようにすれば、後進走行時には、自動変速機に負の回転すなわち前進走行時の伝達部材の回転方向とは反対方向となる回転が入力されるので、例えばその自動変速機内で自動変速機への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機の出力回転部材から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。例えば駆動装置の小型化を目的として自動変速機に第1クラッチが備えられなくとも後進走行用のギヤ段が達成され得る。また、第2ブレーキの係合により無段変速させられる動力分配機構の出力である自動変速機への入力回転が減速されて自動変速機からの出力回転となるので、後進走行用のギヤ比が任意に設定され得る。例えば、第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
また、好適には、請求項31にかかる発明では、前記動力分配機構で入力回転を反転して前記自動変速機に出力すると共に前記第2クラッチの係合により後進走行用のギヤ比が達成されるものである。このようにすれば、後進走行時には、自動変速機に負の回転すなわち前進走行時の伝達部材の回転方向とは反対方向となる回転が入力されるので、例えばその自動変速機内で自動変速機への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機の出力回転部材から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。例えば駆動装置の小型化を目的として自動変速機に第1クラッチが備えられなくとも後進走行用のギヤ段が達成され得る。また、第2クラッチの係合により無段変速させられる動力分配機構の出力である自動変速機への入力回転がそのまま自動変速機からの出力回転となるので、後進走行用のギヤ比が任意に設定され得る。例えば、第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
また、好適には、請求項32にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた第2電動機と、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機と、前記動力分配機構を、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態とこれを非差動の複数段の変速機として機能する複数の定変速状態とのいずれかに選択的に切換える差動状態切換装置とを、備えた車両用駆動装置の制御方法であって、(a) 前記差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を段階的に形成させ、その差動状態切換装置によって差動状態とすることにより電気的な無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を無段階に形成させることにある。
このようにすれば、車両の駆動装置内の動力分配機構によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を段階的に形成させ、その差動状態切換装置によって差動状態とすることにより電気的な無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を無段階に形成させることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車速およびエンジントルクで表される車両状態が低中車速および低中エンジン出力となるようなエンジンの常用出力域では、上記動力分配機構が差動状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、高車速では動力分配機構がロック状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高エンジン出力では上記動力分配機構がロック状態とされるので、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が低中車速および低中エンジン出力となって、電動機が発生すべき電気的エネルギ換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
また、好適には、請求項33にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、駆動輪と動力伝達可能に連結された第2電動機と、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機と、前記動力分配機構を、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態とこれを非差動の複数段の変速機として機能する複数の定変速状態とのいずれかに選択的に切換える差動状態切換装置とを、備えた車両用駆動装置の制御方法であって、(a) 前記差動状態切換装置によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を段階的に形成させ、その差動状態切換装置によって差動状態とすることにより電気的な無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を無段階に形成させることにある。
このようにすれば、車両の駆動装置内の動力分配機構によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を段階的に形成させ、その差動状態切換装置によって差動状態とすることにより電気的な無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比を無段階に形成させることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車速およびエンジントルクで表される車両状態が低中車速および低中エンジン出力となるようなエンジンの常用出力域では、上記動力分配機構が差動状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、高車速では動力分配機構がロック状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高エンジン出力では上記動力分配機構がロック状態とされるので、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が低中車速および低中エンジン出力となって、電動機が発生すべき電気的エネルギ換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
また、好適には、請求項34にかかる発明では、前記伝達部材と前記駆動輪との間に設けられた自動変速機をさらに備え、前記動力分配機構の変速比とその自動変速機の変速比とに基づいて総合変速比が形成され、車両状態に基づいて前記動力分配機構の変速比とその自動変速機の変速比とを制御して総合変速比が設定されるものである。このようにすれば、自動変速機の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになるので、動力分配機構における無段変速制御の効率が一層高められる。また、車両状態に合わせた適切な車両駆動力が得られる。
また、好適には、請求項35にかかる発明では、前記車両状態は車両の駆動力関連値で表されるものである。このようにすれば、燃費を考慮した駆動装置の総合変速比が設定され適切な車両駆動力が得られる。
また、好適には、請求項36にかかる発明では、前記車両状態は車速で表されるものである。このようにすれば、燃費を考慮した駆動装置の総合変速比が設定され適切な車両駆動力が得られる。
また、好適には、請求項37にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置であって、(a) 前記動力分配機構は、サンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって3つの要素が構成され、その3つの要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第1要素、および第3要素としたとき、或いはその3つの要素を一端から他端へ向かって順番に第2要素、第3要素、および第1要素としたとき、その第1要素は前記エンジンに連結され、その第2要素は前記第1電動機に連結され、その第3要素は前記伝達部材に連結される第1遊星歯車装置と、その第2要素を第1要素に連結するための切換クラッチおよびその第2要素を非回転部材に連結する切換ブレーキとを含み、その切換クラッチおよび切換ブレーキの解放により差動状態に切換えられ、その切換クラッチまたは切換ブレーキの係合により変速比固定の複数の定変速状態のいずれかに切換えられるものであり、(b) 前記切換クラッチまたは切換ブレーキの係合によって前記複数の定変速状態のいずれかに切り換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機が構成され、その切換クラッチおよび切換ブレーキの解放によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成される無段変速機が構成され、(c)後進走行時には、前記動力分配機構で前記伝達部材の回転が前進走行時に対して反転され前記自動変速機に入力されるものである。
このようにすれば、車両の駆動装置内の動力分配機構において、前記切換クラッチまたは切換ブレーキの係合によって前記複数の定変速状態のいずれかに切換えられることにより変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が段階的に形成される有段変速機が構成され、その切換クラッチおよび切換ブレーキの解放によって差動状態とされることにより無段変速機として機能させられる前記動力分配機構と前記自動変速機とに基づいて総合変速比が無段階に形成される無段変速機が構成されて、それらが選択的に切り換えられることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。また、後進走行時には、自動変速機に負の回転すなわち前進走行時の伝達部材の回転方向とは反対方向となる回転が入力されるので、例えばその自動変速機内で自動変速機への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機の出力回転部材から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。
また、好適には、請求項38にかかる発明では、自動変速機は互いに噛み合うサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤを有する遊星歯車装置を備え、その遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって少なくとも3つの回転要素が構成されるとともに、その少なくとも3つの回転要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその少なくとも3つの回転要素を一端から他端へ向かって順番に第4要素、第5要素、および第6要素としたとき、その第4要素は前記伝達部材に動力伝達可能に連結され、その第5要素は前記自動変速機の出力回転部材に動力伝達可能に連結され、その第6要素はブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、前記ブレーキの係合により後進走行用のギヤ比が達成されるものである。このようにすれば、互いに噛み合う第4要素、第5要素、および第6要素のうちの第4要素が無段変速させられる動力分配機構の出力である自動変速機への入力回転とされ第6要素が回転停止されて、第5要素は第4要素の回転すなわち自動変速機への入力回転が減速された回転速度とされる。よって、自動変速機への入力回転が減速されて自動変速機からの出力回転となるので、後進走行用のギヤ比が任意に設定され得る。例えば、第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
また、好適には、請求項39にかかる発明では、自動変速機は互いに噛み合うサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤを有する遊星歯車装置を備え、その遊星歯車装置のサンギヤ、キャリヤ、およびリングギヤによって少なくとも3つの回転要素が構成されるとともに、その第4要素は前記伝達部材に動力伝達可能に連結され、その第5要素は前記自動変速機の出力回転部材に動力伝達可能に連結され、前記自動変速機はその遊星歯車装置の回転要素を一体回転させるためのクラッチをさらに備え、前記クラッチの係合により後進走行用のギヤ比が達成されるものである。このようにすれば、クラッチによって自動変速機の回転要素が一体回転させられることから、無段変速させられる動力分配機構の出力である自動変速機への入力回転がそのまま自動変速機からの出力回転となるので、後進走行用のギヤ比が任意に設定され得る。例えば、第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置10を説明する骨子図である。図1において、駆動装置10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12と表す)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された差動機構としての動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の自動変速機20と、この自動変速機20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この駆動装置10は、車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、走行用の駆動力源としてのエンジン8と一対の駆動輪38との間に設けられて、図7に示すように動力を差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。なお、駆動装置10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の駆動装置10を表す部分においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
動力分配機構16は、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に合成し或いは分配する機械的機構であって、エンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配し、或いはエンジン8の出力とその第1電動機M1の出力とを合成して伝達部材18へ出力させる。第2電動機M2は伝達部材18と一体的に回転するように設けられているが、伝達部材18から出力軸22までの間のいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とトランスミッションケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1がそれぞれ相互に相対回転可能な差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、例えば無段変速状態とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が電気的にその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで変化させられる差動状態例えば変速比γ0が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する差動状態例えば無段変速状態とされる。
この状態で、エンジン8の出力で車両走行中に上記切換クラッチC0が係合させられて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合させられると、第1遊星歯車装置24の3要素S1、CA1、R1が一体回転させられるロック状態である非差動状態とされることから、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、動力分配機構16は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態とされる。次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて第1サンギヤS1が非回転状態とされるロック状態である非差動状態とされると、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態とされる。このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、動力分配機構16を、差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な差動状態(無段変速状態)と、非差動状態例えば電気的な無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化をロックするロック状態、すなわち1または2種類の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
自動変速機20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備えている。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
自動変速機20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3は従来の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された駆動装置10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機20とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機20とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
しかし、駆動装置10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、自動変速機20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機20とから構成される駆動装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標であり、3本の横軸のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横軸XGが伝達部材18の回転速度を示している。また、動力分配機構16の3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。すなわち、縦線Y1とY2との間隔を1に対応するとすると、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応するものとされる。さらに、自動変速機20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。すなわち、図3に示すように、各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が1に対応するものされ、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応するものとされる。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の駆動装置10は、動力分配機構(無段変速部)16において、第1遊星歯車装置24の3回転要素(要素)の1つである第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14に連結されるとともに切換クラッチC0を介して他の回転要素の1つである第1サンギヤS1と選択的に連結され、その他の回転要素の1つである第2回転要素RE2(第1サンギヤS1)が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、残りの回転要素である第3回転要素RE3(第1リングギヤR1)が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を前記伝達部材18を介して自動変速機(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
図4および図5は上記図3の共線図の動力分配機構16部分に相当する図である。図4は上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態の一例を表している。例えば、第1電動機M1の発電による反力を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が下降或いは上昇させられる。
また、図5は切換クラッチC0の係合により有段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態を表している。つまり、第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、上記3回転要素が一体回転するので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で自動変速機20へ入力される。
また、自動変速機20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速機20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第8回転要素RE8に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。また、第2クラッチC2と第3ブレーキB3とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。
図6は、本実施例の駆動装置10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、前記自動変速機20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
上記電子制御装置40には、図6に示す各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を示す信号、M(モータ走行)モードを指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度に対応する車速信号、自動変速機20の作動油温を示す油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、各駆動輪の車輪速を示す車輪速信号、駆動装置10を有段変速機として機能させるために動力分配機構16を定変速状態に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を示す信号、駆動装置10を無段変速機として機能させるために動力分配機構16を無段変速状態に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を示す信号、第1電動機M1の回転速度NM1を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2を表す信号などが、それぞれ供給される。また、上記電子制御装置40からは、スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン8の点火時期を指令する点火信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、動力分配機構16や自動変速機20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、上記油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図7は、駆動装置10の制御方法すなわち電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。切換制御手段50は、例えば図8に示す予め記憶された関係(切換マップ)から実際のエンジン回転速度NEとハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えばエンジン出力トルクTEとに基づいて、それらのエンジン回転速度NEとエンジン出力トルクTEとで表される車両状態が駆動装置10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは駆動装置10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定する。そして、切換制御手段50は、有段変速制御領域であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可(禁止)とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速制御を許可する。このときの有段変速制御手段54は、変速線図記憶手段56に予め記憶された図示しない変速線図に従って自動変速制御を実行する。図2は、このときの変速制御において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。この有段自動変速制御モードの第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられることにより動力分配機構16が固定の変速比γ0が1の副変速機として機能しているが、第5速では、その切換クラッチC0の係合に替えて切換ブレーキB0が係合させられることにより動力分配機構16が固定の変速比γ0が例えば0.7程度の副変速機として機能している。すなわち、この有段自動変速制御モードでは、副変速機として機能する動力分配機構16と自動変速機20とを含む駆動装置10全体が所謂自動変速機として機能している。
上記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速機20の出力トルクTOUT、エンジン出力トルクTE、車両加速度や、例えばアクセル開度或いはスロットル開度(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度NEとによって算出されるエンジン出力トルクTEなどの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量或いはスロットル開度に基づいて算出されるエンジン出力トルクTEや要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
しかし、上記切換制御手段50において、エンジン回転速度NEとエンジン出力トルクTEとで表される車両状態が無段制御領域内であると判定した場合は、前記動力分配機構16を電気的な無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは変速線図記憶手段56に予め記憶された変速線図に従って自動変速することを許可する信号を出力する。後者の場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、前述のように、自動変速機20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
上記ハイブリッド制御手段52は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第1電動機M1および/または第2電動機M2との駆動力の配分を最適になるように変化させる。例えば、そのときの走行車速において、アクセルペダル操作量や車速から運転者の要求出力を算出し、運転者の要求出力と充電要求値から必要な駆動力を算出し、エンジンの回転速度とトータル出力とを算出し、そのトータル出力とエンジン回転速度NEとに基づいて、エンジン出力を得るようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。ハイブリッド制御手段52は、その制御を自動変速機20の変速段を考慮して実行したり、或いは燃費向上などのために自動変速機20に変速指令を行う。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速および自動変速機20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、動力分配機構16が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立した予め記憶された最適燃費率曲線に沿ってエンジン8が作動させられるように駆動装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように動力分配機構16の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御することになる。
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通して電気エネルギが第2電動機M2或いは第1電動機M1へ供給され、その第2電動機M2或いは第1電動機M1から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、動力分配機構16の電気的CVT機能によってモータ走行させることができる。
前記図8の関係に示されるように、エンジン8の出力トルクTEが予め設定された所定値TE1以上の高トルク領域(高出力走行領域)、エンジン回転速度NEが予め設定された所定値NE1以上の高回転領域すなわちエンジン回転速度NEとトータル変速比γTとで一意的に決められる車両状態の1つである車速が所定値以上の高車速領域、或いはそれらエンジン8の出力トルクTEおよび回転速度NEから算出される出力が所定以上の高出力領域が、有段制御領域として設定されているので、前記有段変速制御がエンジン8の比較的高出力トルク、比較的高回転速度、或いは比較的高出力時において実行され、前記無段変速制御がエンジン8の比較的低出力トルク、比較的低回転速度、或いは比較的低出力時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。図8における有段制御領域と無段制御領域との間の境界線は、例えば高車速判定値の連なりである高車速判定線および高出力走行判定値の連なりである高出力走行判定線に対応している。
図9は手動変速操作装置であるシフト操作装置46の一例を示す図である。シフト操作装置46は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー48を備えている。そのシフトレバー48は、例えば図2の係合作動表に示されるようにクラッチC1およびクラッチC2のいずれもが係合されないような駆動装置10内つまり自動変速機20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速機20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、駆動装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションは、「P」ポジションおよび「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。また、「D」ポジションは最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「4」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー48の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー48がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかへ切り換えられる。例えば、「M」ポジションにおける「D」レンジ乃至「L」レンジの5つの変速レンジは、駆動装置10の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また自動変速機20の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。また、シフトレバー48はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。また、シフト操作装置46にはシフトレバー48の各シフトポジションを検出するための図示しないシフトポジションセンサが備えられており、そのシフトレバー48のシフトポジションや「M」ポジションにおける操作回数等を電子制御装置40へ出力する。
例えば、「D」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、図8に示す予め記憶された切換マップに基づいて切換制御手段50により駆動装置10の変速状態の自動切換制御が実行され、ハイブリッド制御手段52により動力分配機構16の無段変速制御が実行され、有段変速制御手段54により自動変速機20の自動変速制御が実行される。例えば、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には駆動装置10が例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速制御され、或いは駆動装置10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には駆動装置10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と自動変速機20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御される。この「D」ポジションは駆動装置10の自動変速制御が実行される制御様式である自動変速走行モード(自動モード)を選択するシフトポジションでもある。
或いは、「M」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、変速レンジの最高速側変速段或いは変速比を越えないように、切換制御手段50、ハイブリッド制御手段52、および有段変速制御手段54により駆動装置10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。例えば、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には駆動装置10が各変速レンジで駆動装置10が変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御され、或いは駆動装置10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には駆動装置10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と各変速レンジに応じた自動変速機20の変速可能な変速段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。この「M」ポジションは駆動装置10の手動変速制御が実行される制御様式である手動変速走行モード(手動モード)を選択するシフトポジションでもある。
上述のように、本実施例によれば、エンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18へ分配する動力分配機構16には、その動力分配機構16を差動作用が作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態と、差動作用が不能な非差動状態例えば定変速比を有する変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置としての切換クラッチC0および切換ブレーキB0が設けられていることから、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域では動力分配機構16が無段変速状態とされてハイブリッド車両の燃費性能が確保されるが、高速走行或いはエンジン8の高回転域では動力分配機構16が定変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて動力と電気との間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。また、エンジン8の高出力域では動力分配機構16が定変速状態とされて無段変速状態として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となるので、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギすなわちが第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて、換言すれば第1電動機M1の保障すべき電気的反力を小さくできてその第1電動機M1や第2電動機M2、或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。或いは、エンジン8の高出力(トルク)域で動力分配機構16が定変速状態とされると同時に自動変速機20の変速が行われるので、例えば図10に示すようなアップシフトに伴うエンジン回転速度NEの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン8の回転速度の変化が発生する。或いは、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。これによって、ユーザは、例えば図10に示すリズミカルなエンジン回転速度NEの変化を楽しむことができる。
また、本実施例によれば、動力分配機構16が、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1を3要素とするシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24によって簡単に構成される利点がある。
また、本実施例によれば、動力分配機構16と駆動輪38との間に自動変速機20が直列に介装されており、その動力分配機構16の変速比とその自動変速機20の変速比とに基づいて総合変速比が形成されることから、その自動変速機20の変速比を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになるので、動力分配機構16における無段変速制御すなわちハイブリッド制御の効率が一層高められる。
また、本実施例によれば、動力分配機構16が定変速状態とされるとき、その動力分配機構16が自動変速機20の一部であるかの如く機能して変速比が1より小さいオーバドライブギヤ段である第5速が得られる利点がある。
また、本実施例によれば、第2電動機M2が自動変速機20の入力回転部材である伝達部材18に連結されていることから、その自動変速機20の出力軸22に対して低トルクの出力でよくなるので、第2電動機M2が一層小型化される利点がある。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、他の例の電子制御装置40の制御作動の要部を示す機能ブロック線図であり、切換制御手段50が、高車速判定手段62、高出力走行判定手段64、電気パス機能判定手段66を備えて図12に示す関係に基づいて切換制御する点において、図7の実施例と相違している。
図11において、高車速判定手段62は、ハイブリッド車両の車両状態の1つを表す実際の車速Vが高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1以上の高車速となったか否かを判定する。高出力走行判定手段64は、ハイブリッド車両の車両状態の1つを表す駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速機20の出力トルクTOUTが高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1以上の高トルク(高駆動力)走行となったか否かを判定する。つまり、高出力走行判定手段64では車両の駆動力を直接或いは間接的に示す駆動力関連パラメータに基づいて車両の高出力走行が判定される。電気パス機能判定手段66は、駆動装置10を無段変速状態とするための制御機器の機能低下が判定される故障判定条件の判定を、第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下に基づいて、例えば第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や故障とか低温による機能低下或いは不全の発生に基づいて判定する。
変速段判断手段67は、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられて動力分配機構16と自動変速機20とで駆動装置10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合に駆動装置10がいずれの変速段とされるかを、例えば変速線図記憶手段56に予め記憶された図12に示す変速線図から車速Vおよび出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて駆動装置10の変速すべき変速段を判断する。また、変速段判断手段67により判断された変速段は駆動装置10の有段/無段の変速状態に拘わらず有段変速制御手段54による自動変速機20の変速制御の基になるものでもあり、また増速側ギヤ段判定手段68による増速側ギヤ段判定の基になるものでもある。
増速側ギヤ段判定手段68は、駆動装置10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、変速段判断手段67により判断された駆動装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。これは、駆動装置10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合に、第1速乃至第4速では切換クラッチC0が係合させられ、或いは第5速では切換ブレーキB0が係合させられるようにするためである。
切換制御手段50は、所定条件としての高車速判定手段62による高車速判定、高出力走行判定手段64による高出力走行判定、電気パス機能判定手段66による電気パス機能不全の判定の少なくとも1つが発生した場合は、有段変速制御領域であると判定して、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可(禁止)とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対して予め設定された有段変速時の変速制御例えば変速段判断手段67により判断された変速段に従って実行される自動変速機20の変速制御を許可し、増速側ギヤ段判定手段68による第5速ギヤ段判定に基づいて切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれか係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。よって、駆動装置10全体すなわち動力分配機構16および自動変速機20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、高車速判定手段62による高車速判定、増速側ギヤ段判定手段68による第5速ギヤ段判定、或いは高出力走行判定手段64による高出力走行判定であっても増速側ギヤ段判定手段68により第5速ギヤ段が判定される場合には、駆動装置10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切換制御手段50は動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、高出力走行判定手段64による高出力走行判定或いは増速側ギヤ段判定手段68により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、駆動装置10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために切換制御手段50は動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、切換制御手段50によって所定条件に基づいて駆動装置10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、動力分配機構16が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、駆動装置10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
例えば、判定車速V1は、高速走行において駆動装置10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において駆動装置10が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機M1の反力トルクをエンジンの高出力域まで対応させないで第1電動機M1を小型化するために、例えば第1電動機M1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機M1の特性に応じて設定されることになる。
しかし、上記高車速判定手段62による高車速判定、高出力走行判定手段64による高出力走行判定、電気パス機能判定手段66による電気パス機能不全の判定のいずれも発生しないときは、駆動装置10全体として無段変速状態が得られるために切換制御手段50は、動力分配機構16を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか或いは変速段判断手段67により判断された変速段に従って自動変速機20を自動変速することを許可する信号を出力する。このように、切換制御手段50により所定条件に基づいて無段変速状態に切り換えられた動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速機20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図12は、自動変速機20の変速判断の基となる変速線図記憶手段56に予め記憶された変速線図(関係)であり、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図(変速マップ)の一例である。図12の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。また、図12の破線は切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための所定条件を定める判定車速V1および判定出力トルクT1を示しており、高車速判定値である判定車速V1の連なりと高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高車速判定線と高出力走行判定線を示している。さらに、図12の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。この図12は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)でもある。よって車両の所定条件は、この切換線図から実際の車速Vと出力トルクTOUTとに基づいて定められてもよい。すなわち、この図12は変速マップと所定条件との関係を示す図であるともいえる。なお、この切換線図を含めて変速マップとして変速線図記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。上記変速線図や切換線図等は、実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。
また、上記図12に示す有段制御領域と無段制御領域とは前記図8に示すようにエンジン8の出力トルクTEとエンジン回転速度NEとで設定される有段制御領域と無段制御領域との別の実施例でもあり、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高出力トルクとなる高駆動トルク時、或いはエンジン8の比較的高回転速度となる高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低出力トルクとなる低駆動トルク時、或いはエンジン8の比較的低回転速度となる低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
図13は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち図11の実施例における駆動装置10の切換制御作動を示すフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
先ず、高車速判定手段62に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、ハイブリッド車両の実際の車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速となったか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合は高出力走行判定手段64に対応するS2において、ハイブリッド車両の実際の駆動トルク或いは自動変速機20の出力トルクTOUTが予め設定された判定トルクT1以上の高トルク(高駆動力)となったか否かが判定される。このS2の判断が否定される場合は電気パス機能判定手段66に対応するS3において、第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パス(電気エネルギ伝達経路)に関連する機器の機能低下が、例えば第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの機能低下、例えば故障(フェイル)とか低温による機能不全が発生したか否かで判定される。
上記S3の判断が否定される場合は切換制御手段50に対応するS4において、動力分配機構16が無段変速可能とされるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、変速段判断手段67により判断された変速段に従って自動変速機20を自動変速することを許可する信号が出力される。したがって、動力分配機構16が無段変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速機20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてトータル変速比γTが無段階となる無段変速状態が得られるようになる。
上記S1、S2、S3の判断のうちで少なくとも1つが肯定される場合は変速段判断手段67に対応するS5において、駆動装置10がいずれの変速段とされるかが例えば車両状態に基づいて変速線図記憶手段56に予め記憶された図12に示す変速線図に従って判断される。そして、増速側ギヤ段判定手段68に対応するS6において、上記S5において判断された駆動装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かが判定される。
上記S6の判断が肯定される場合には切換制御手段50に対応するS8において、動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御が不許可すなわち禁止とする信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、S5において判断された変速段に従って駆動装置10全体として第5速ギヤ段とされるように自動変速機20を第4速ギヤ段に自動変速することを許可する信号が出力される。また、上記S6の判断が否定される場合には切換制御手段50に対応するS7において、動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御が不許可すなわち禁止とする信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、S5において判断された変速段に従って第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速機20を自動変速することを許可する信号が出力される。したがって、S7およびS8において動力分配機構16が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、駆動装置10全体が有段変速状態となり所謂有段自動変速機として機能させられる。
このように、本実施例によれば、前述の実施例と同様にエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18へ分配する動力分配機構16に加えて、その動力分配機構16には駆動装置10を変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態と有段の変速機として作動可能な有段変速状態とに選択的に切換えるための差動状態切換装置としての切換クラッチC0および切換ブレーキB0が設けられ、切換制御手段50によって所定条件に基づいて駆動装置10が無段変速状態および有段変速状態のいずれかに自動的に切り替えられることから、電気的な無段変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する有段変速機の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。すなわち、エンジンの常用出力域例えば図12に示す車速Vが判定車速V1以下且つ出力トルクTOUTが判定出力トルクT1以下となる無段制御領域では駆動装置10が無段変速状態とされてハイブリッド車両の通常の市街地走行すなわち車両の低中速走行および低中出力走行での燃費性能が確保されると同時に、高速走行例えば図12に示す車速Vが判定車速V1以上となる有段制御領域では駆動装置10が有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて無段変速状態とされた場合の動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行例えば図12に示す実際の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1以上となる有段制御領域では駆動装置10が有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて無段変速状態として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となるので、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギすなわちが第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその第1電動機M1や第2電動機M2、或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
また、前述の実施例の効果に加えて、本実施例によれば、切換制御手段50により車両の所定条件に基づいて駆動装置10が無段変速状態から有段変速状態へ切り換えられるとき、その車両の所定条件に応じて切換制御手段50により差動状態切換装置として機能するブレーキB0或いはクラッチC0が制御されることで有段変速状態での複数段のいずれかへの切換先が変更されるので、高速走行や高出力走行等の車両走行状況に合わせた適切な変速段が得られる。
また、本実施例によれば、車両の所定条件は、判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとする予め記憶された切換線図から実際の車速Vと出力トルクTOUTとに基づいて定められるものであるので、切換制御手段50による高車速判定または高出力走行判定が簡単に判定される。
また、本実施例によれば、車両の所定条件は、駆動装置10を無段変速状態とするための制御機器の機能低下を判定する故障判定条件であり、切換制御手段50はその故障判定条件が成立した場合に駆動装置10を有段変速状態とするものであるので、駆動装置10が無段変速状態とされない場合でも有段変速状態とされることで、有段走行ではあるが無段走行と略同様の車両走行が確保される。
また、本実施例によれば、動力分配機構16が、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1を3要素とするシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24によって簡単に且つ動力分配機構16の軸方向寸法が小さく構成される利点がある。さらに、動力分配機構16には油圧式摩擦係合装置すなわち第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とを相互に連結する切換クラッチC0および第1サンギヤS1をトランスミッションケース12に連結する切換ブレーキB0が設けられているので、切換制御手段50により駆動装置10の無段変速状態と有段変速状態とが簡単に制御される。
図14は本発明の他の実施例における駆動装置70の構成を説明する骨子図、図15はその駆動装置70の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図16はその駆動装置70の変速作動を説明する共線図である。
駆動装置70は、前述の実施例と同様に例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速機72とを備えている。自動変速機72は、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26と例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
以上のように構成された駆動装置70では、例えば、図15の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第4速ギヤ段(第4変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置70では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機72とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機72とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置70が有段変速機として機能する場合には、図15に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.393」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
しかし、駆動装置70が無段変速機として機能する場合には、図15に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機72が有段変速機として機能することにより、自動変速機72の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速機72に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置70全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図16は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72から構成される駆動装置70において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図16における自動変速機72の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第3キャリヤCA3を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応し且つ相互に連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応する第2リングギヤR2をそれぞれ表している。また、自動変速機72において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速機72の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速機72では、図16に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(R2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5(CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第3速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第7回転要素RE7に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。また、第2クラッチC2と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置70においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図17は本発明の他の実施例における駆動装置80の構成を説明する骨子図、図18はその駆動装置80の有段変速作動のために変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図19はその駆動装置80の有段変速作動を説明する共線図、図20はその駆動装置80の無段変速作動のために変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図21はその駆動装置80の無段変速作動を説明する共線図である。
駆動装置80は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置82と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構84と、その動力分配機構84と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進7段の自動変速機86とを備えている。本実施例の動力分配機構84のダブルピニオン型の第1遊星歯車装置82は、第1サンギヤS1、互いに噛み合う第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2、それら第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1および第2遊星歯車P2を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素として備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ1を有している。この動力分配機構84においては、前記動力分配機構16と同様に、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とトランスミッションケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられており、それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、変速比γ0が連続的に変化させられる無段変速機として機能する無段変速状態とされる一方、切換クラッチC0が係合させられると、変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態とされ、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、変速比γ0が「1」より大きい例えば1.7程度に固定された減速変速機として機能する定変速状態とされる。このように、本実施例でも、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、動力分配機構84を、変速比が連続的変化可能な無段変速機として作動可能な無段変速状態と、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
自動変速機86は、例えば「0.550」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置88と例えば「0.462」程度の所定のギヤ比ρ3を有するダブルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置90において、第3キャリヤCA3によって回転可能に支持された互いに噛み合う一対のピニオンP1およびP2を備えており、外周側のピニオンP2が第2遊星歯車装置88のピニオンと共通の部材で構成されるとともに、そのピニオンP2と噛み合う第3リングギヤR3および第3キャリヤCA3は第2遊星歯車装置88の第2リングギヤR2および第2キャリヤCA2と共通化されている。第3遊星歯車装置90の第3サンギヤS3は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第2遊星歯車装置88の第2サンギヤS2は第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結されるとともに第3クラッチC3を介して伝達部材18に選択的に連結され、第2キャリヤCA2および第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12と選択的に連結されるとともに第2クラッチC2を介して入力軸14と選択的に連結され、第2リングギヤR2および第3リングギヤR3は出力軸22と一体的に連結されている。
以上のように構成された駆動装置80では、例えば、図18の係合作動表に示すように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第7速ギヤ段(第7変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γが各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構84に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構84は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置80では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構84と自動変速機86とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構84と自動変速機86とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置80が有段変速機として機能する場合には、図18に示すように、第1クラッチC1、第2ブレーキB2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.763」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.457」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.739」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.244」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第2クラッチC2の係合により、変速比γ5が「1.000」である第5速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.811」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.645」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。また、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.162」程度である後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置80が無段変速機として機能する場合には、例えば図20に示されるように、係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が常時解放されることにより、動力分配機構84が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機86が前進3速の有段変速機として機能することにより、自動変速機86の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速機86に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置80全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図19は、動力分配機構84と自動変速機86から構成される駆動装置80において、切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれかが係合させられることによって達成される有段変速時の各ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表す共線図を示している。
図19において、動力分配機構84では、第1遊星歯車装置82の第1サンギヤS1(第2回転要素RE2)の回転を示す縦軸Y1、第1リングギヤR1(第3回転要素RE3)の回転を示す縦軸Y2、第1キャリヤCA1(第1回転要素RE1)の回転を示す縦軸Y3によって相対回転速度の関係が示される。第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段、および第6速ギヤ段乃至第7速ギヤ段において切換ブレーキB0が係合させられると、第1サンギヤS1の回転速度が零とされ且つ第1キャリヤCA1の回転速度がエンジン回転速度NEとされるので、横軸X1と縦軸Y1との交点と、エンジン回転速度NEを示す横軸X2と縦軸Y3との交点とを結ぶ直線L0と、縦軸Y2との交点が、第1リングギヤR1の相対回転速度すなわち伝達部材18の相対回転速度を示す。このときの伝達部材18の相対回転速度はエンジン回転速度NEを示す横軸X2よりも低いので、動力分配機構84が減速機として機能している。縦線Y4乃至縦線Y7では横線X3によってその減速回転速度が示される。また、第5速ギヤ段において切換ブレーキB0に替えて切換クラッチC0が係合させられると、第1遊星歯車装置82の第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、および第1キャリヤCA1がエンジン回転速度NEと同じ回転速度で一体回転するので、横軸X2と縦軸Y2との交点が、第1リングギヤR1の相対回転速度すなわち伝達部材18の相対回転速度を示す。このときの伝達部材18の相対回転速度はエンジン回転速度NEと同じであるので、動力分配機構84が変速比が1の固定変速機として機能している。縦線Y4乃至縦線Y7では横線X2によって回転速度が示される。
図19の共線図において、自動変速機86では、第1クラッチC1、切換ブレーキB0、および第2ブレーキB2が係合させられることにより、第7回転要素RE7(S3)の回転速度を示す縦線Y7と横線X3との交点と第5回転要素RE5(CA2,CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより、入力軸14の回転を示す横線X2と第5回転要素RE5の回転を示す縦線Y5との交点と第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7と横線X3との交点とを結ぶ斜めの直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。また、切換クラッチC0および第2クラッチC2が係合させられることにより、横軸X2と重なる直線L5と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。第2クラッチC2、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示される。第2クラッチC2、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。また、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、および第2ブレーキB2が係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。なお、図18或いは図19に示す第7速において、必ずしも切換ブレーキB0が係合させられる必要はない。また、同様に第5速において、第1クラッチC1または第3クラッチC3がさらに係合させられてもよい。
図20は駆動装置80において動力分配機構84が無段変速状態とされたときにおいて自動変速機86の変速制御作動を示す係合表であり、図21はそのときの作動を説明する共線図である。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される動力分配機構84の無段変速状態では、第1電動機M1の反力を制御することによってその回転速度は広範囲に制御され得ることから、直線L0は横線X2と縦線Y3との交点を回動中心として矢印に示す範囲で回動させられるので、その直線L0と縦線Y2との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度はエンジン回転速度NEを挟んで上下の範囲で変化させられる。このときの自動変速機86は、図21に示されるように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(S3)の回転速度を示す縦線Y7と横線X3との交点と第5回転要素RE5(CA2、CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。この結果、動力分配機構84が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機86が有段変速機として機能することにより、自動変速機86の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速機86に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置80全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
本実施例の駆動装置80においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図22は本発明の他の実施例における駆動装置92の構成を説明する骨子図、図23はその駆動装置92の有段変速作動のために変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図24はその駆動装置92の有段変速作動を説明する共線図、図25はその駆動装置92の無段変速作動のために変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図26はその駆動装置92の無段変速作動を説明する共線図である。
駆動装置92は、図1、図14と同様の、例えば「0.590」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換ブレーキB0とを有する動力分配機構94と、その動力分配機構94と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進8段の自動変速機96とを備えている。本実施例の動力分配機構94では、第1遊星歯車装置24の第1サンギヤS1をトランスミッションケース12に選択的に連結するための切換ブレーキB0が設けられているが、第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とを選択的に連結するための切換クラッチC0は設けられていない。動力分配機構94は、切換ブレーキB0が係合されているときには、第1リングギヤR1が第1キャリヤCA1に対して増速回転させられるので、変速比γ0が「1」より小さい例えば0.63程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態とされる。このように、本実施例では、上記切換ブレーキB0は、動力分配機構84を、変速比γ0が連続的変化可能な無段変速機として作動可能な無段変速状態と、変速比γ0が1より小さい単段の変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
自動変速機96は、例えば「0.435」程度の所定のギヤ比ρ2を有するダブルピニオン型の第2遊星歯車装置98と例えば「0.435」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置100とを備えている。ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置98において、第2キャリヤCA2によって回転可能に支持された互いに噛み合う一対のピニオンP1およびP2を備えており、外周側のピニオンP2が第3遊星歯車装置100のピニオンと共通の部材で構成されるとともに、そのピニオンP2と噛み合う第2リングギヤR2および第2キャリヤCA2は第3遊星歯車装置100の第3リングギヤR3および第3キャリヤCA3とそれぞれ共通化されている。第2遊星歯車装置98の第2サンギヤS2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第3遊星歯車装置100の第3サンギヤS3は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第4クラッチC4を介して入力軸14と選択的に連結され、第2キャリヤCA2および第3キャリヤCA3は第3クラッチC3を介して入力軸14と選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2および第3リングギヤR3は出力軸22と一体的に連結されている。
以上のように構成された駆動装置92では、例えば、図23の係合作動表に示すように、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第8速ギヤ段(第8変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γが各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構94に切換ブレーキB0が備えられており、切換ブレーキB0が係合作動させられることによって、動力分配機構94は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、一種類の変速比の単段の増速変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置92では、切換ブレーキB0を係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構94と自動変速機96とで有段変速機が構成され、切換ブレーキB0を係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構94と自動変速機96とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置92が有段変速機として機能する場合には、図23に示すように、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.538」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.226」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.769」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.345」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第3クラッチC3、第4クラッチC4、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値「1.000」である第5速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.796」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第4クラッチC4、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.703」程度である第7速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.629」程度である第8速ギヤ段が成立させられる。また、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.300」程度である後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置92が無段変速機として機能する場合には、例えば図25に示されるように、係合表の切換ブレーキB0が常時解放されることにより、動力分配機構94が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機96が前進2速の有段変速機として機能することにより、自動変速機96の第2速、第8速の各ギヤ段に対しその自動変速機96に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置92全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図24は、動力分配機構94と自動変速機96から構成される駆動装置92において、切換ブレーキB0が係合させられることによって達成される有段変速時の各ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表す共線図を示している。
図24において、動力分配機構94では、図3および図16と同様に、第1遊星歯車装置24の第1サンギヤS1(第2回転要素RE2)の回転を示す縦軸Y1、第1キャリヤCA1(第1回転要素RE1)の回転を示す縦軸Y2、第1リングギヤR1(第3回転要素RE3)の回転を示す縦軸Y3によって相対回転速度の関係が示される。有段変速時には切換ブレーキB0が各ギヤ段において係合させられて第1サンギヤS1の回転速度が零とされ、且つ第1キャリヤCA1の回転速度がエンジン回転速度NEとされるので、横軸X1と縦軸Y1との交点とエンジン回転速度NEを示す横軸X2と縦軸Y2との交点とを結ぶ直線L0と、縦軸Y3との交点が、第1リングギヤR1の相対回転速度すなわち伝達部材18の相対回転速度を示す。このときの伝達部材18の相対回転速度はエンジン回転速度NEを示す横軸X2よりも高いので、動力分配機構94が増速機として機能する。縦線Y4乃至縦線Y7では横線X3によってその増速回転速度が示される。
図24の共線図において、自動変速機96では、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1が係合させられることにより、第4回転要素RE4(S3)の回転速度を示す縦線Y4と横線X2との交点と第7回転要素RE7(S2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、および第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L4と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。第3クラッチC3、第4クラッチC4、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。第1クラッチC1、第3クラッチC3、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L6と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示される。第1クラッチC1、第4クラッチC4、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L7と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L8と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2、R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第8速の出力軸22の回転速度が示される。また、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、および第2ブレーキB2が係合させられることにより決まる斜めの直線LRと、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2、R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。なお、図23或いは図24に示す第1速、第3速、第5速、後進Rにおいては、必ずしも切換ブレーキB0が係合させられる必要はない。
図25は駆動装置92において動力分配機構94が無段変速状態とされたときにおいて自動変速機96の変速制御作動を示す係合表であり、図26はそのときの作動を説明する共線図である。切換ブレーキB0が解放される動力分配機構94の無段変速状態では、第1電動機M1の反力を制御することによってその回転速度は広範囲に制御され得ることから、直線L0は横線X2と縦線Y2との交点を回動中心として矢印に例示する範囲で回動させられるので、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度はエンジン回転速度NEを挟んで上下の範囲で変化させられる。このときの自動変速機96は、図26に示されるように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが係合させられる低速段により、第7回転要素RE7(S2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X1との交点と第4回転要素RE5(S3)の回転速度を示す縦線Y4と横線X3との交点とを通る斜めの直線L2と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(R2、R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられる高速段により、水平な直線L8と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第8速の出力軸22の回転速度が示される。このとき、上記低速段では、例えば直線L0が破線に示す位置に回動させられると、直線L2が破線に示す位置まで回動させられて縦線Y6との交点も移動し、出力軸22の回転速度が無段階に変化させられる。同様に、高速段では、例えば直線L0が破線に示す位置に回動させられると、直線L8が破線に示す位置まで平行移動(下降)させられて縦線Y6との交点も移動し、出力軸22の回転速度が無段階に変化させられる。この結果、動力分配機構94が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機96が高速段および低速段の2段の有段変速機として機能することにより、自動変速機96の第2速、第8速の各ギヤ段に対しその自動変速機96に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置92全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
本実施例の駆動装置92においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構94と固定段の変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機96とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図27は本発明の他の実施例における駆動装置110の構成を説明する骨子図、図28はその駆動装置110の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図29はその駆動装置110の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図1乃至図3に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれている点および後進ギヤ段の成立方法が相違する。以下に、駆動装置110と駆動装置10との相違する部分について主に説明する。
駆動装置110は、駆動装置10と同様に例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、および例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有するシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を有して動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進4段の自動変速機112とを備えている。
自動変速機112では、駆動装置10と比較して第1クラッチC1が省かれているため駆動装置10において第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている第3リングギヤR3および第4サンギヤS4が常時伝達部材18に連結されている。すなわち、自動変速機112では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて伝達部材18に連結されている。
以上のように構成された駆動装置110では、例えば、図28の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では駆動装置10と比較して第1クラッチC1が省かれているが、駆動装置10と同様の第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段が得られている。これは、図2の係合作動表からも明らかなように駆動装置10において第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の各ギヤ段を成立させるための第1クラッチC1の係合による連結に替えて、駆動装置110では第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とを伝達部材18に常時連結させているためである。
また、駆動装置10と同様に動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置110では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機112とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機112とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置110が有段変速機として機能する場合には、図28に示すように、切換クラッチC0および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の全てが解放される。
しかし、駆動装置110が無段変速機として機能する場合には、図28に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機112が有段変速機として機能することにより、自動変速機112の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速機112に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置110全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ところで、例えば図1乃至図3に示す実施例では第2クラッチC2および第3ブレーキB3を係合すると共に、第4速ギヤ段または第5速ギヤ段で示す様に第2クラッチC2の係合により自動変速機20の各回転要素が一体回転させられて伝達部材18の回転速度がそのまま出力軸22から出力されないために第1クラッチC1が解放されて後進ギヤ段が成立させられた。しかし、本実施例では、伝達部材18の回転方向を第1速乃至第5速ギヤ段に対して反転させて自動変速機112へ出力することで、自動変速機112内では伝達部材18の回転方向を反転することなく後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。つまり、本実施例では自動変速機112に第1クラッチC1が備えられなくとも後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。
具体的には、例えばエンジン作動中において、動力分配機構16の無段変速機としての機能により動力分配機構16で入力回転方向すなわちエンジン8の回転方向が反転されて伝達部材18が負の回転速度とされる。そして伝達部材18の負の回転速度が自動変速機112に入力されると共に第3ブレーキB3が係合されることにより変速比γR1が任意の値である第1後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が成立させられる。変速比γR1は、通常は図1乃至図3に示す駆動装置10の場合と同様に「3.209」程度とされてよいが、例えば平坦路、坂路、悪路等の車両走行条件に基づいて伝達部材18の負の回転速度を変化させることで変更させてもよい。例えば、伝達部材18の負の回転速度の絶対値を低回転側へ変化させれば後進走行用の変速比γR1として第1速ギヤ段の変速比γ1よりも大きな値を得ることも可能である。
また、上記第1後進ギヤ段に替えて或いは加えて以下に示す様に第2後進ギヤ段が成立させられてもよい。その第2後進ギヤ段は第1後進ギヤ段と同様に伝達部材18の負の回転速度が自動変速機112に入力されると共に、第2クラッチC2が係合されることにより自動変速機112の各回転要素が一体回転させられその伝達部材18の負の回転速度がそのまま出力軸22から出力されることで、変速比γR2が任意の値である後進走行用のギヤ比が成立させられる。
図29は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112とから構成される駆動装置110において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。また、自動変速機112の第4回転要素RE4乃至第8回転要素RE8の各回転要素の構成も自動変速機20と同様である。
自動変速機112において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は伝達部材18に連結されている。
自動変速機112では、図29に示すように、第3ブレーキB3が係合させられることにより、伝達部材18に連結されて常時その伝達部材18の回転速度とされている第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第2ブレーキB2が係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第8回転要素RE8に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
また、切換クラッチC0および切換ブレーキB0がともに解放させられるとエンジン回転速度NEに対して無段的に変化させられる回転速度で第8回転要素RE8に動力分配機構16からの動力が入力される。この状態で、動力分配機構16の状態がエンジン8の回転方向を反転するように直線L0R1とされると第8回転要素RE8に負の回転速度が入力され且つ第3ブレーキB3が係合させられることにより決まる斜めの直線LR1と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1後進ギヤ比Rev1の出力軸22の回転速度が示される。また、同様に動力分配機構16の無段変速状態で、動力分配機構16の状態がエンジン8の回転方向を反転するように直線L0R2とされると第8回転要素RE8に負の回転速度が入力され且つ第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線LR2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2後進ギヤ比Rev2の出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置110においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図1乃至図3に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれているので、駆動装置110がより小型化されたり、軸方向の寸法がより短縮される。
また、本実施例の駆動装置110は、後進走行時には、伝達部材18の回転方向が第1速乃至第5速ギヤ段に対して反転させて自動変速機112へ出力されるので、自動変速機112内で自動変速機112への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機112の出力軸22から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。例えば駆動装置の小型化を目的として自動変速機に第1クラッチC1が備えられなくとも後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。また、第3ブレーキB3の係合或いは第2クラッチC2の係合により無段変速させられる動力分配機構16の出力である自動変速機112への入力回転が減速されて或いはそのまま自動変速機112からの出力回転となるので、変速比γRが任意の値である後進走行用のギヤ比が達成される。例えば第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
図30は本発明の他の実施例における駆動装置120の構成を説明する骨子図、図31はその駆動装置120の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図32はその駆動装置120の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図1乃至図3に示す実施例と比較して動力分配機構16と自動変速機20とが同じ軸心上に配設されていない点が主に相違する。以下に、駆動装置120と駆動装置10との相違する部分について主に説明する。
図30において、駆動装置120は車体に取り付けられるケース12内において第1軸心14c上に同心に回転可能に配設された入力軸14およびこの入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された動力分配機構16と、第1軸心14cに平行に配置される第2軸心32c上に同心に回転可能に配設される自動変速機20およびこの自動変速機20に連結されている出力回転部材としてのデフドライブギヤ32と、動力分配機構16と自動変速機20との間を動力伝達可能に連結する伝達部材としてのカウンタギヤ対CGを備えている。この駆動装置120は、車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両やRR(リヤエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、走行用の駆動力源としてのエンジン8と一対の駆動輪38との間に設けられて、動力をデフドライブギヤ32に噛み合わされるデフリングギヤ34、差動歯車装置36および一対の車軸37等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。
上記カウンタギヤ対CGは、第1軸心14c上に動力分配機構16と同心に回転可能に配設されて第1リングギヤR1に連結されるカウンタドライブギヤCG1と、第2軸心32c上に自動変速機20と同心に回転可能に配設されて第1クラッチC1および第2クラッチC2を介して自動変速機20に連結されるカウンタドリブンギヤCG2とを備え、カウンタドライブギヤCG1とカウンタドリブンギヤCG2とが常時噛み合わされた一対の部材としてのギヤ対によって構成されている。例えば、このカウンタギヤ対CGの減速比(=カウンタドライブギヤCG1の回転速度/カウンタドリブンギヤCG2の回転速度)を「1.000」程度とすれば、カウンタギヤ対CGは図1乃至図3に示す実施例における動力分配機構16と自動変速機20とを連結する伝達部材18に相当することになる。つまり、カウンタドライブギヤCG1は第1軸心14c側で伝達部材18の一部を構成する伝達部材に相当するものであり、カウンタドリブンギヤCG2は第2軸心32c側で伝達部材18の一部を構成する伝達部材に相当するものである。
ここで、図30を参照して駆動装置120を構成する各装置の配置(レイアウト)を説明する。カウンタギヤ対CGは、動力分配機構16に対してエンジン8の反対側の位置に動力分配機構16に隣接して配設されている。言い換えれば、動力分配機構16は、エンジン8とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して配設されている。第2電動機M2は、第1遊星歯車装置24とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、カウンタドライブギヤCG1に連結されている。デフドライブギヤ32は自動変速機20に対してカウンタギヤ対CGの反対側すなわちエンジン側の位置に配設されている。言い換えれば、自動変速機20は、カウンタギヤ対CGとデフドライブギヤ32(エンジン8)との間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して配設されている。カウンタギヤ対CGからデフドライブギヤ32に向かって順に、第2遊星歯車装置26、第3遊星歯車装置28、および第4遊星歯車装置30が配置されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は、カウンタギヤ対CGと第2遊星歯車装置26との間に位置するように配設されている。
本実施例では、動力分配機構16と自動変速機20とを連結する伝達部材が伝達部材18からカウンタギヤ対CGに替えられただけであり、動力分配機構16および自動変速機20の構成やそれらの連結関係は図1乃至図3に示す実施例と同様である。従って、図31の係合表および図32の共線図は、それぞれ図2の係合表および図3の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置120においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機20とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図1乃至図3に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機20とが配設されていないので、駆動装置120の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機20は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置120の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図33は本発明の他の実施例における駆動装置130の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図30乃至図32に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置が相違する。図33を参照して第2電動機M2の配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して第2軸心32c上に配設され、第2軸心32c側の伝達部材であるカウンタドリブンギヤCG2に連結されている。また、動力分配機構16および自動変速機20の構成やそれらの連結関係は図30乃至図32に示す実施例と同様であり、図33の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図31の係合表および図32の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置130においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機20とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図1乃至図3に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機20とが配設されていないので、駆動装置130の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機20は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置130の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第2軸心32c上に配設されているので、第1軸心14cの軸心方向の寸法が短縮される。
図34は本発明の他の実施例における駆動装置140の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図30乃至図32に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置、第1クラッチC1および第2クラッチC2の配置が相違する。図34を参照してそれらの配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、カウンタギヤ対CGに対して第1遊星歯車装置24の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、第1軸心14c側の伝達部材であるカウンタドライブギヤCG1に連結されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は、カウンタギヤ対CGに対して第2遊星歯車装置26の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第2軸心32c上に配設されている。また、動力分配機構16および自動変速機20の構成やそれらの連結関係は図30乃至図32に示す実施例と同様であり、図34の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図31の係合表および図32の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置140においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機20とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図1乃至図3に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機20とが配設されていないので、駆動装置140の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図35は本発明の他の実施例における駆動装置150の構成を説明する骨子図、図36はその駆動装置150の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図37はその駆動装置150の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図27乃至図29に示す実施例と比較して動力分配機構16と自動変速機112とが同じ軸心上に配設されていない点が主に相違する。また、図30乃至図32に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれている点および後進ギヤ段の成立方法が相違する。
従って、本実施例では、動力分配機構16および自動変速機112の構成やそれらの連結関係については、動力分配機構16と自動変速機112とを連結する伝達部材が伝達部材18からカウンタギヤ対CGに替えられただけでその他は後進ギヤ段の成立方法を含めて図27乃至図29に示す実施例と同様であり、図36の係合表および図37の共線図はそれぞれ図28の係合表および図29の共線図と同様である。また、図35に示すように駆動装置150を構成する各装置の配置(レイアウト)および図27の伝達部材18に相当するカウンタギヤ対CGの構成は、第1クラッチC1が省かれている点が相違するだけで図30に示す実施例と同様である。
本実施例の駆動装置150においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図27乃至図29に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機112とが配設されていないので、駆動装置150の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機112は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置150の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図38は本発明の他の実施例における駆動装置160の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図35乃至図37に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置、第2クラッチC2の配置が相違する。図38を参照してそれらの配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、カウンタギヤ対CGに対して第1遊星歯車装置24の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、第1軸心14c側の伝達部材であるカウンタドライブギヤCG1に連結されている。第2クラッチC2は、カウンタギヤ対CGに対して第2遊星歯車装置26の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第2軸心32c上に配設されている。また、動力分配機構16および自動変速機112の構成やそれらの連結関係は図35乃至図37に示す実施例と同様であり、図38の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図36の係合表および図37の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置160においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図27乃至図29に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機112とが配設されていないので、駆動装置160の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図39は本発明の他の実施例における駆動装置170の構成を説明する骨子図、図40はその駆動装置170の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図41はその駆動装置170の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図14乃至図16に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれている点および後進ギヤ段の成立方法が相違する。以下に、駆動装置170と駆動装置70との相違する部分について主に説明する。
駆動装置170は、駆動装置70と同様に例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26および例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28を有して動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速機172とを備えている。
自動変速機172では、駆動装置70と比較して第1クラッチC1が省かれているため駆動装置70において第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている第2リングギヤR2が常時伝達部材18に連結されている。すなわち、自動変速機172では、第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は伝達部材18に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
以上のように構成された駆動装置170では、例えば、図40の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第4速ギヤ段(第4変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では駆動装置70と比較して第1クラッチC1が省かれているが、駆動装置70と同様の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段が得られている。これは、図15の係合作動表からも明らかなように駆動装置70において第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の各ギヤ段を成立させるための第1クラッチC1の係合による連結に替えて、駆動装置170では第2リングギヤR2を伝達部材18に常時連結させているためである。
また、駆動装置70と同様に動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置170では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機172とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機172とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置170が有段変速機として機能する場合には、図39に示すように、切換クラッチC0および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0および第2クラッチC2の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の全てが解放される。
しかし、駆動装置170が無段変速機として機能する場合には、図40に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機172が有段変速機として機能することにより、自動変速機172の第1速、第2速、第3速の各ギヤ段に対しその自動変速機172に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置170全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ところで、例えば図14乃至図16に示す実施例では第2クラッチC2および第2ブレーキB2を係合すると共に、第3速ギヤ段または第4速ギヤ段で示す様に第2クラッチC2の係合により自動変速機72の各回転要素が一体回転させられて伝達部材18の回転速度がそのまま出力軸22から出力されないために第1クラッチC1が解放されて後進ギヤ段が成立させられた。しかし、本実施例では、伝達部材18の回転方向を第1速乃至第4速ギヤ段に対して反転させて自動変速機172へ出力することで、自動変速機172内では伝達部材18の回転方向を反転することなく後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。つまり、本実施例では自動変速機172に第1クラッチC1が備えられなくとも後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。
具体的には、例えばエンジン作動中において、動力分配機構16の無段変速機としての機能により動力分配機構16で入力回転方向すなわちエンジン8の回転方向が反転されて伝達部材18が負の回転速度とされる。そして伝達部材18の負の回転速度が自動変速機172に入力されると共に第2ブレーキB2が係合されることにより変速比γR1が任意の値である第1後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が成立させられる。変速比γR1は、通常は図14乃至図16に示す駆動装置70の場合と同様に「2.393」程度とされてよいが、例えば平坦路、坂路、悪路等の車両走行条件に基づいて伝達部材18の負の回転速度を変化させることで変更させてもよい。例えば、伝達部材18の負の回転速度の絶対値を低回転側へ変化させれば後進走行用の変速比γR1として第1速ギヤ段の変速比γ1よりも大きな値を得ることも可能である。
また、上記第1後進ギヤ段に替えて或いは加えて以下に示す様に第2後進ギヤ段が成立させられてもよい。その第2後進ギヤ段は第1後進ギヤ段と同様に伝達部材18の負の回転速度が自動変速機172に入力されると共に、第2クラッチC2が係合されることにより自動変速機172の各回転要素が一体回転させられその伝達部材18の負の回転速度がそのまま出力軸22から出力されることで、変速比γR2が任意の値である後進走行用のギヤ比が成立させられる。
図41は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機172とから構成される駆動装置170において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。また、自動変速機172の第4回転要素RE4乃至第7回転要素RE7の各回転要素の構成も自動変速機72と同様である。
自動変速機172において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速機172の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は伝達部材18に連結されている。
自動変速機172では、図41に示すように、第2ブレーキB2が係合させられることにより、伝達部材18に連結されて常時その伝達部材18の回転速度とされている第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1ブレーキB1が係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第3速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第7回転要素RE7に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
また、切換クラッチC0および切換ブレーキB0がともに解放させられるとエンジン回転速度NEに対して無段的に変化させられる回転速度で第7回転要素RE7に動力分配機構16からの動力が入力される。この状態で、動力分配機構16の状態がエンジン8の回転方向を反転するように直線L0R1とされると第7回転要素RE7に負の回転速度が入力され且つ第2ブレーキB2が係合させられることにより決まる斜めの直線LR1と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1後進ギヤ比Rev1の出力軸22の回転速度が示される。また、同様に動力分配機構16の無段変速状態で、動力分配機構16の状態がエンジン8の回転方向を反転するように直線L0R2とされると第7回転要素RE7に負の回転速度が入力され且つ第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線LR2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2後進ギヤ比Rev2の出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置170においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機172とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図14乃至図16に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれているので、駆動装置170がより小型化されたり、軸方向の寸法がより短縮される。
また、本実施例の駆動装置170は、後進走行時には、伝達部材18の回転方向が第1速乃至第4速ギヤ段に対して反転させて自動変速機172へ出力されるので、自動変速機172内で自動変速機172への入力回転を反転させるための後進走行用のギヤ段を達成するための係合装置や歯車装置を備えなくても、自動変速機172の出力軸22から後進走行用に前進走行時に対して反転された回転が出力され得る。例えば駆動装置の小型化を目的として自動変速機に第1クラッチC1が備えられなくとも後進ギヤ段に相当する後進走行用のギヤ比が達成される。また、第2ブレーキB2の係合或いは第2クラッチC2の係合により無段変速させられる動力分配機構16の出力である自動変速機172への入力回転が減速されて或いはそのまま自動変速機172からの出力回転となるので、変速比γRが任意の値である後進走行用のギヤ比が達成される。例えば第1速ギヤ比よりも大きな後進走行用のギヤ比が得られる。
図42は本発明の他の実施例における駆動装置180の構成を説明する骨子図、図43はその駆動装置180の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図44はその駆動装置180の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図14乃至図16に示す実施例と比較して動力分配機構16と自動変速機72とが同じ軸心上に配設されていない点が主に相違する。以下に、駆動装置180と駆動装置70との相違する部分について主に説明する。
図42において、駆動装置180は車体に取り付けられるケース12内において第1軸心14c上に同心に回転可能に配設された入力軸14およびこの入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された動力分配機構16と、第1軸心14cに平行に配置される第2軸心32c上に同心に回転可能に配設される自動変速機72およびこの自動変速機72に連結されている出力回転部材としてのデフドライブギヤ32と、第1軸心14cと第2軸心32cとの間を動力伝達可能に連結する伝達部材としてのカウンタギヤ対CGを備えている。この駆動装置180は、車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両やRR(リヤエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、走行用の駆動力源としてのエンジン8と一対の駆動輪38との間に設けられて、動力をデフドライブギヤ32に噛み合わされるデフリングギヤ34、差動歯車装置36および一対の車軸37等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。
上記カウンタギヤ対CGは、第1軸心14c上に動力分配機構16と同心に回転可能に配設されて第1リングギヤR1に連結されるカウンタドライブギヤCG1と、第2軸心32c上に自動変速機72と同心に回転可能に配設されて第1クラッチC1および第2クラッチC2を介して自動変速機72に連結されるカウンタドリブンギヤCG2とを備え、カウンタドライブギヤCG1とカウンタドリブンギヤCG2とが常時噛み合わされた一対の部材としてのギヤ対によって構成されている。例えば、このカウンタギヤ対CGの減速比(=カウンタドライブギヤCG1の回転速度/カウンタドリブンギヤCG2の回転速度)を「1.000」程度とすれば、カウンタギヤ対CGは図14乃至図16に示す実施例における動力分配機構16と自動変速機72とを連結する伝達部材18に相当することになる。つまり、カウンタドライブギヤCG1は伝達部材18を構成する第1軸心14c側の伝達部材に相当するものであり、カウンタドリブンギヤCG2は伝達部材18を構成する第2軸心32c側の伝達部材に相当するものである。
ここで、図42を参照して駆動装置180を構成する各装置の配置(レイアウト)を説明する。カウンタギヤ対CGは、動力分配機構16に対してエンジン8の反対側の位置に動力分配機構16に隣接して配設されている。言い換えれば、動力分配機構16は、エンジン8とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して配設されている。第2電動機M2は、第1遊星歯車装置24とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、カウンタドライブギヤCG1に連結されている。デフドライブギヤ32は自動変速機72に対してカウンタギヤ対CGの反対側すなわちエンジン側の位置に配設されている。言い換えれば、自動変速機72は、カウンタギヤ対CGとデフドライブギヤ32(エンジン8)との間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して配設されている。カウンタギヤ対CGからデフドライブギヤ32に向かって順に、第2遊星歯車装置26および第3遊星歯車装置28が配置されている。第1クラッチC1および第2クラッチC2は、カウンタギヤ対CGと第2遊星歯車装置26との間に位置するように配設されている。
本実施例では、動力分配機構16と自動変速機72とを連結する伝達部材が伝達部材18からカウンタギヤ対CGに替えられただけであり、動力分配機構16および自動変速機72の構成やそれらの連結関係は図14乃至図16に示す実施例と同様である。従って、図43の係合表および図44の共線図は、それぞれ図15の係合表および図16の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置180においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図14乃至図16に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機72とが配設されていないので、駆動装置180の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機72は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置180の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図45は本発明の他の実施例における駆動装置190の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図42乃至図44に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置が相違する。図45を参照して第2電動機M2の配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、第1クラッチC1および第2クラッチC2とカウンタギヤ対CGとの間に位置するようにカウンタギヤ対CGに隣接して第2軸心32c上に配設され、第2軸心32c側の伝達部材であるカウンタドリブンギヤCG2に連結されている。また、動力分配機構16および自動変速機72の構成やそれらの連結関係は図42乃至図44に示す実施例と同様であり、図45の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図43の係合表および図44の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置190においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図14乃至図16に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機72とが配設されていないので、駆動装置190の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機72は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置190の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第2軸心32c上に配設されているので、第1軸心14cの軸心方向の寸法が短縮される。
図46は本発明の他の実施例における駆動装置200の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図42乃至図44に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置、第1クラッチC1および第2遊星歯車装置26の配置が相違する。図46を参照してそれらの配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、カウンタギヤ対CGに対して第1遊星歯車装置24の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、第1軸心14c側の伝達部材であるカウンタドライブギヤCG1に連結されている。第1クラッチC1および第2遊星歯車装置26は、カウンタギヤ対CGに対して第2クラッチC2および第3遊星歯車装置28の反対側の位置に、第1クラッチC1が第2遊星歯車装置26よりもカウンタギヤ対CGに隣接するように第2軸心32c上に配設されている。また、動力分配機構16および自動変速機72の構成やそれらの連結関係は図42乃至図44に示す実施例と同様であり、図46の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図43の係合表および図44の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置200においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機72とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図14乃至図16に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機72とが配設されていないので、駆動装置200の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図47は本発明の他の実施例における駆動装置210の構成を説明する骨子図、図48はその駆動装置210の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図49はその駆動装置210の変速作動を説明する共線図である。本実施例は、図39乃至図41に示す実施例と比較して動力分配機構16と自動変速機172とが同じ軸心上に配設されていない点が主に相違する。また、図42乃至図44に示す実施例と比較して第1クラッチC1が省かれている点および後進ギヤ段の成立方法が相違する。
従って、本実施例では、動力分配機構16および自動変速機172の構成やそれらの連結関係については、動力分配機構16と自動変速機172とを連結する伝達部材が伝達部材18からカウンタギヤ対CGに替えられただけでその他は後進ギヤ段の成立方法を含めて図39乃至図41に示す実施例と同様であり、図48の係合表および図49の共線図はそれぞれ図40の係合表および図41の共線図と同様である。また、図47に示すように駆動装置210を構成する各装置の配置(レイアウト)および図39の伝達部材18に相当するカウンタギヤ対CGの構成は、第1クラッチC1が省かれている点が相違するだけで図42に示す実施例と同様である。
本実施例の駆動装置210においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機172とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図39乃至図41に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機172とが配設されていないので、駆動装置210の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。また、動力分配機構16および自動変速機172は、エンジン8(デフドライブギヤ32)とカウンタギヤ対CGとの間に配設されているので、駆動装置210の軸心方向の寸法が一層短縮される。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図50は本発明の他の実施例における駆動装置220の構成を説明する骨子図である。本実施例は、図47乃至図49に示す実施例と比較して第2電動機M2の配置および第2遊星歯車装置26の配置が相違する。図50を参照してそれらの配置(レイアウト)を説明する。第2電動機M2は、カウンタギヤ対CGに対して第1遊星歯車装置24の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接して第1軸心14c上に配設され、第1軸心14c側の伝達部材であるカウンタドライブギヤCG1に連結されている。第2遊星歯車装置26は、カウンタギヤ対CGに対して第2クラッチC2および第3遊星歯車装置28の反対側の位置にカウンタギヤ対CGに隣接するように配設されている。また、動力分配機構16および自動変速機172の構成やそれらの連結関係は図47乃至図49に示す実施例と同様であり、図50の実施例に対する係合表および共線図は図示はしていないがそれぞれ図48の係合表および図49の共線図と同様である。
本実施例の駆動装置220においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機172とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、図39乃至図41に示す実施例と比較して同一の軸心上に動力分配機構16と自動変速機172とが配設されていないので、駆動装置220の軸心方向の寸法がより短縮される。よって、一般的に駆動装置の軸心方向の寸法が車幅で制約されるFF車両用やRR車両用に横置き可能すなわち第1軸心14cおよび第2軸心32cが車幅方向と平行に搭載可能な駆動装置として好適に用いられ得る。さらに、第2電動機M2は第1軸心14c上に配設されているので、第2軸心32cの軸心方向の寸法が短縮される。
図51は、手動操作によって駆動装置10の変速状態を切り換えるための変速状態手動選択装置としてのシーソー型スイッチ44である。前述の実施例では、例えば図8或いは図12の関係図から車両状態の変化に基づく駆動装置10の変速状態の自動切換制御作動を説明したが、例えばシーソー型スイッチ44が手動操作されたことにより駆動装置10の変速状態が手動切換制御されてもよい。つまり、切換制御手段50は、スイッチ44の無段変速状態とするか或いは有段変速状態とするかの選択操作に従って優先的に変速機構10を無段変速状態と有段変速状態とに切り換える。例えば、ユーザは無段変速機のフィーリングや燃費改善効果が得られる走行を所望すれば駆動装置10が無段変速状態とされるように手動操作により選択すればよいし、また有段変速機の変速に伴うエンジン回転速度の変化によるフィーリング向上を所望すれば駆動装置10が有段変速状態とされるように手動操作により選択すればよい。また、スイッチ44に無段変速走行或いは有段変速走行の何れも選択されない状態である中立位置が設けられる場合には、スイッチ44がその中立位置の状態であるときすなわちユーザによって所望する変速状態が選択されていないときや所望する変速状態が自動切換のときには、駆動装置10の変速状態の自動切換制御作動が実行されればよい。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220は、動力分配機構16が差動状態と非差動状態とに切り換えられることで電気的な無段変速機としての機能する無段変速状態と有段変速機として機能する有段変速状態とに切り換え可能に構成されていたが、無段変速状態と有段変速状態との切換えは動力分配機構16の差動状態と非差動状態との切換えにおける一態様であり、例えば動力分配機構16が差動状態であっても動力分配機構16の変速比を連続的ではなく段階的に変化させて有段変速機として機能させられてもよい。言い換えれば、駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220(動力分配機構16)の差動状態/非差動状態と、無段変速状態/有段変速状態とは必ずしも一対一の関係にある訳ではないので、駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220は必ずしも無段変速状態と有段変速状態とに切り換え可能に構成される必要はなく、駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220(動力分配機構16)が差動状態と非差動状態とに切換え可能に構成されれば本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の自動変速機112は5つの回転要素を有し、第8回転要素RE8が伝達部材18に動力伝達可能に直結され、第7回転要素RE7が出力軸22に連結され、第6回転要素RE6が第3ブレーキB3を介してケース12に連結され、動力分配機構16で自動変速機112への入力回転方向がエンジン8の回転方向とは反転されて伝達部材18が負の回転速度とされると共に、第3ブレーキB3が係合されることで駆動装置110は後進走行用のギヤ比が達成されたが、自動変速機が少なくとも3つの回転要素を有し、少なくとも3つの回転要素の回転速度を直線上で表すことができる共線図上においてその少なくとも3つの回転要素を一端から他端へ向かって順番に少なくとも3つの回転要素のうちの1つ、他の1つ、および残りの一つとしたとき、少なくとも3つの回転要素のうちの1つが伝達部材18に動力伝達可能すなわち伝達部材に18に直結或いは伝達部材18にクラッチを介して連結され、他の1つが自動変速機の出力部材に動力伝達可能に連結され、残りの一つがブレーキを介して非回転部材に連結されるものであれば、動力分配機構で自動変速機への入力回転方向が反転されると共に、ブレーキが係合されることで駆動装置は後進走行用のギヤ比が達成され得る。但し、少なくとも3つの回転要素のうちの1つがクラッチを介して伝達部材18に連結される場合にはブレーキと共にクラッチも係合される。
例えば、自動変速機112において第3ブレーキB3の係合に替えて第1ブレーキB1或いは第2ブレーキB2の係合であっても駆動装置110は後進走行用のギヤ比が達成され得る。また、例えば自動変速機92において動力分配機構94で自動変速機92への入力回転方向が反転されると共に、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合されることで駆動装置は後進走行用のギヤ比が達成され得る。
また、前述の実施例の自動変速機112は5つの回転要素を有し、第8回転要素RE8が伝達部材18に動力伝達可能に直結され、第7回転要素RE7が出力軸22に連結され、さらに自動変速機112の各回転要素を一体回転させるための第2クラッチC2を有して、動力分配機構16で自動変速機112への入力回転方向がエンジン8の回転方向とは反転されて伝達部材18が負の回転速度とされると共に、第2クラッチC2が係合されることで駆動装置110は後進走行用のギヤ比が達成されたが、自動変速機が少なくとも3つの回転要素を有し、少なくとも3つの回転要素のうちの1つが伝達部材18に動力伝達可能すなわち伝達部材に18に直結或いは伝達部材18に動力伝達用クラッチを介して連結され、他の1つが自動変速機の出力部材に動力伝達可能に連結され、さらに自動変速機の各回転要素を一体回転させるためのクラッチを有するものであれば、動力分配機構で自動変速機への入力回転方向が反転されると共に、クラッチが係合されることで駆動装置は後進走行用のギヤ比が達成され得る。但し、少なくとも3つの回転要素のうちの1つが動力伝達用クラッチを介して伝達部材18に連結される場合にはクラッチと共に動力伝達用クラッチも係合される。例えば自動変速機92において動力分配機構94で自動変速機92への入力回転方向が反転されると共に、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合されることで駆動装置は後進走行用のギヤ比が達成され得る。
また、前述の実施例の動力分配機構16、84、94では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18或いはカウンタギヤ対CGに連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18或いはカウンタギヤ対CGは、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14の回転中心或いは第1軸心14c或いは第2軸心32cを回転中心として配置されて、第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18或いはカウンタギヤ対CGに連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18或いはカウンタギヤ対CGに連結されてもよい。
また、前述の動力分配機構16、84には切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられていたが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は必ずしも両方備えられる必要はなく、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の一方のみが備えられていてもよい。また、動力分配機構94には切換ブレーキB0が備えられていたが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の両方や、切換クラッチC0のみが備えられていてもよい。また、上記切換クラッチC0は、サンギヤS1とキャリヤCA1とを選択的に連結するものであったが、サンギヤS1とリングギヤR1との間や、キャリヤCA1とリングギヤR1との間を選択的に連結するものであってもよい。要するに、第1遊星歯車装置24の3要素のうちのいずれか2つを相互に連結するものであればよい。
また、前述の実施例の駆動装置10、70、120、130、140、180、190、200では、ニュートラル「N」とする場合には切換クラッチC0が係合されていたが、必ずしも係合される必要はない。反対に、駆動装置110、150、160、170、210、220では、ニュートラル「N」とする場合には切換クラッチC0が係合されてもよい。
また、前述の実施例では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
また、前述の実施例では、第2電動機M2が伝達部材18或いはカウンタギヤ対CGに連結されていたが、出力軸22或いはデフドライブギヤ32に連結されていてもよいし、自動変速機20、72、86、96、112、172内の回転部材に連結されていてもよい。
また、前述の実施例では、動力分配機構16、84、94の出力部材である伝達部材18或いはカウンタドライブギヤCG1と駆動輪38との間の動力伝達経路に、有段式の自動変速機20、72、86、96、112、172が介装されていたが、例えば無段変速機(CVT)等の他の形式の動力伝達装置が設けられていてもよいし、必ずしも設けられていなくてもよい。その無段変速機(CVT)の場合には、動力分配機構16、84、94が定変速状態とされることで全体として有段変速状態とされる。有段変速状態とは、電気パスを用いないで専ら機械的伝達経路で動力伝達することである。或いは、上記無段変速機は有段変速機における変速段に対応するように予め複数の固定された変速比が記憶され、その複数の固定された変速比を用いて変速が実行されてもよい。
また、前述の実施例では、駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220はエンジン8以外に第1電動機M1或いは第2電動機M2のトルクによって駆動輪38が駆動されるハイブリッド車両用の駆動装置であったが、例えば駆動装置10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220を構成する動力分配機構16、84、94がハイブリッド制御されない電気的CVTと称される無段変速機としての機能のみを有するような車両用の駆動装置であっても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の動力分配機構16、84、94は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16、84、94は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、定変速状態では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。
また、前述の実施例での伝達部材としてのカウンタギヤ対CGに替えて、例えば第1軸心14c上に配設されたスプロケットと第2軸心20cに配設されたスプロケットとがそれらスプロケットに巻き掛けられたチェーンにより作動的に連結されることで1組の伝達部材が構成されてもよい。また、スプロケットおよびそれらスプロケットに巻き掛けられたチェーンに替えて、例えばプーリおよびベルトなどで構成されてもよい。これらの場合には、エンジン8の回転方向と駆動輪38の回転方向との関係がカウンタギヤ対CGを用いる場合と反対となるので、例えばカウンタ軸が1軸追加される。
また、前述の実施例ではシフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが変速段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速変速段が変速段として設定されてもよい。この場合には、「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へのシフトレバー48の操作に応じて、例えば駆動装置10では第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の何れかへ変速段が切り換えられて変速が実行される。
また、前述の実施例のスイッチ44はシーソー型のスイッチであったが、例えば押しボタン式のスイッチ、択一的にのみ押した状態が保持可能な2つの押しボタン式のスイッチ、レバー式スイッチ、スライド式スイッチ等の少なくとも無段変速走行(差動状態)と有段変速走行(非差動状態)とが択一的に切り換えられるスイッチであればよい。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
無段変速状態に切換えられたときの動力分配機構の状態の一例を表している図であって、図3の共線図の動力分配機構部分に相当する図である。
切換クラッチC0の係合により有段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態を表している図であって、図3の共線図の動力分配機構部分に相当する図である。
図1の実施例の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
図6の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
図7の切換制御手段において、無段制御領域と有段制御領域との切換制御に用いられる予め記憶された関係を示す図である。
シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
有段式変速機におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度の変化の一例である。
本発明の他の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する図である。
図11の実施例の電子制御装置において、切換制御手段の切換作動を説明する図である。
図11の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図9の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図9の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図22の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図22の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
図22の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
図22の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図27の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図27の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図30の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図30の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図30に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図30に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図27に相当する図である。
図35の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図28に相当する図である。
図35の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図29に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図35に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図14に相当する図である。
図39の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図15に相当する図である。
図39の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図16に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図14に相当する図である。
図42の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図15に相当する図である。
図42の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図16に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図42に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図42に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図39に相当する図である。
図47の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図40に相当する図である。
図47の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図41に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図47に相当する図である。
切換装置としてのシーソー型スイッチであって変速状態を選択するためにユーザによって操作される変速状態手動選択装置の一例である。
符号の説明
8:エンジン
10、70、80、92、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220:駆動装置
12:トランスミッションケース(非回転部材)
14:入力軸
16、84、94:動力分配機構
18:伝達部材
20、72、86、96、112、172:有段式自動変速機
22:出力軸(出力回転部材)
24:第1遊星歯車装置
26:第2遊星歯車装置
28:第3遊星歯車装置
30:第4遊星歯車装置
32:デフドライブギヤ(出力回転部材)
38:駆動輪
82:ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置
88:第2遊星歯車装置
90:第3遊星歯車装置
98:第2遊星歯車装置
100:第3遊星歯車装置
M1:第1電動機
M2:第2電動機
C0:切換クッラッチ(差動状態切換装置)
B0:切換ブレーキ(差動状態切換装置)
CG:カウンタギヤ対(伝達部材)