本発明は車両の駆動装置に係り、特に、電動機などを小型化する技術に関するものである。
エンジンの出力を第1電動機および出力軸へ分配する動力分配機構と、その動力分配機構の出力軸と駆動輪との間に設けられた第2電動機とを、備えた車両が知られている。例えば、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動装置がそれである。このようなハイブリッド車両の駆動装置では、動力分配機構が差動機構として機能するように例えば遊星歯車装置で構成され、その差動作用によりエンジンからの動力の主部を駆動輪へ機械的に伝達し、そのエンジンからの動力の残部を第1電動機から第2電動機への電気パスを用いて電気的に伝達することにより、エンジンを最適な作動状態に維持しつつ車両を走行させることが可能となり、燃費が向上させられる。
特開2003−127681号公報
特開平11−198670号公報
特開平11−198668号公報
特開平11−217025号公報
WO 03/016749A1公報
一般に、無段変速機は車両の燃費を良くする装置として知られている一方、有段変速機のような歯車式伝動装置は伝達効率が良い装置として知られている。しかし、それ等の長所を兼ね備えた動力伝達機構は未だ存在しなかった。例えば、上記のような従来の車両の駆動装置では、第1電動機から第2電動機への電気エネルギの電気パスすなわち車両の駆動力の一部を電気エネルギで伝送する伝送路を含むため、エンジンの高出力化に伴ってその第1電動機を大型化させねばならないとともに、その第1電動機から出力される電気エネルギにより駆動される第2電動機も大型化させねばならないので、駆動装置が大きくなるという問題があった。或いは、エンジンの出力の一部が一旦電気エネルギに変換されて駆動輪に伝達されるので、高速走行などのような車両の走行条件によってはかえって燃費が悪化する可能性があった。上記動力分配機構が電気的に変速比が変更される変速機例えば電気的CVTと称されるような無段変速機として使用される場合も、同様の課題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、駆動装置を小型化できたり、あるいはまた、燃費が向上させられる車両の駆動装置を提供することにある。
本発明者等は、以上の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、第1電動機および第2電動機は、エンジン出力が比較的小さい常用出力域ではそれほどの大きさを要しないが、高出力走行時のようにエンジンの高出力域例えば最大出力域であるときにはそれに見合う容量或いは出力を備えるために大きなものが必要となることから、そのようなエンジンの出力が大きい領域であるときには、専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力を駆動輪へ伝達するような状態とすると、第1電動機および第2電動機が小型となって車両の駆動装置がコンパクトとなるという点を見いだした。あるいはまた、同様に専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力を駆動輪へ伝達するような状態とすると、高速走行時には、エンジンの出力の一部が第1電動機により一旦電気エネルギに変換されて第2電動機により駆動輪に動力伝達するための電気パスが無くなって動力と電気との間の変換損失が抑制されるので燃費が一層向上するという点を見いだした。本発明は、このような知見に基づいて為されたものである。
すなわち、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置において、(a)前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよびその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b)前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備え、その第4キャリヤによって回転可能に支持された互いに噛み合う一対の遊星歯車を有するダブルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは非回転部材に連結され、その第2キャリヤは第1クラッチを介してその第4サンギヤに選択的に連結されるとともに第3クラッチを介してその第3サンギヤに選択的に連結され、その第2リングギヤは前記伝達部材に連結され、その第3サンギヤは第1ブレーキB1を介して非回転部材に選択的に連結され、その第3キャリヤおよびその第4キャリヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3リングギヤおよびその第4リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結され、その第4サンギヤは第1クラッチを介して前記第2キャリヤに選択的に連結されたものであり、(c)前記切換ブレーキおよび切換クラッチの一方および他方が択一的に係合されることで、前記動力分配機構が複数段の変速機として機能することにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで有段変速機が構成され、(d)前記切換ブレーキが係合されることにより、前記自動変速機の変速段と併せて最高速固定変速段が達成され、(e)前記切換ブレーキおよび切換クラッチが解放されることで、前記動力分配機構が無段変速機として機能し、前記自動変速機の変速で定まる前記伝達部材の回転速度に対して整合させるために、その動力分配機構が前記自動変速機の変速に対して無段階的に反対方向に変速されることにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで総合変速比が無段階的に達成されることを特徴とするものである。
このようにすれば、車両の駆動装置内の動力分配機構が、電気的な無段変速機として作動可能な差動状態と、これを非作動とするロック状態とに選択的に切り換えられることから、電気的に変速比が変更させられる変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する歯車式伝動装置の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。例えば、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域では、上記動力分配機構が差動状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、高速走行では動力分配機構がロック状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジンの出力が駆動輪へ伝達されて電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行では上記動力分配機構がロック状態とされるので、電気的に変速比が変更させられる変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、電動機が発生すべき電気的エネルギ換言すれば電動機が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその電動機或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。また、前記自動変速機は、変速比のレンジ幅が広いギヤ段を有するように構成されているので、その自動変速機を利用することによって駆動力が幅広く得られる。
また、好適には、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置において、(a)前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよびその第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b)前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備え、その第2キャリヤによって回転可能に支持された互いに噛み合う一対の遊星歯車を有するダブルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備えるシングルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは前記第1リングギヤに連結され、その第2キャリヤは非回転部材に連結され、その第2リングギヤは第3クラッチを介してその第3リングギヤに選択的に連結され、その第3サンギヤおよび第4サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第3キャリヤおよびその第4リングギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3リングギヤは第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第4キャリヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結されたものであり、(c)前記切換ブレーキおよび切換クラッチの一方および他方が択一的に係合されることで、前記動力分配機構が複数段の変速機として機能することにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで有段変速機が構成され、(d)前記切換ブレーキが係合されることにより、前記自動変速機の変速段と併せて最高速固定変速段が達成され、(e)前記切換ブレーキおよび切換クラッチが解放されることで、前記動力分配機構が無段変速機として機能し、前記自動変速機の変速で定まる前記伝達部材の回転速度に対して整合させるために、その動力分配機構が前記自動変速機の変速に対して無段階的に反対方向に変速されることにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで総合変速比が無段階的に達成されることを特徴とする。このようにすれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られる。
また、好適には、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置において、(a)前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b)前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備えるシングルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備えるシングルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2キャリヤおよび第3リングギヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第3サンギヤおよび第4サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第3キャリヤおよびその第4リングギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第4キャリヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結されたものであり、(c)前記切換ブレーキおよび切換クラッチの一方および他方が択一的に係合されることで、前記動力分配機構が複数段の変速機として機能することにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで有段変速機が構成され、(d)前記切換ブレーキが係合されることにより、前記自動変速機の変速段と併せて最高速固定変速段が達成され、(e)前記切換ブレーキおよび切換クラッチが解放されることで、前記動力分配機構が無段変速機として機能し、前記自動変速機の変速で定まる前記伝達部材の回転速度に対して整合させるために、その動力分配機構が前記自動変速機の変速に対して無段階的に反対方向に変速されることにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで総合変速比が無段階的に達成されることを特徴とする。このようにすれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られる。
また、好適には、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置であって、(a)前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b)前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備え、その第2キャリヤによって回転可能に支持された互いに噛み合う一対の遊星歯車を有するダブルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備えるシングルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは第3クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第2キャリヤは第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第2リングギヤおよびその第3リングギヤは第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3サンギヤおよびその第4サンギヤは第1クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結され、その第3キャリヤおよびその第4リングギヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第3ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第4キャリヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結されたものであり、(c)前記切換ブレーキおよび切換クラッチの一方および他方が択一的に係合されることで、前記動力分配機構が複数段の変速機として機能することにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで有段変速機が構成され、(d)前記切換ブレーキが係合されることにより、前記自動変速機の変速段と併せて最高速固定変速段が達成され、(e)前記切換ブレーキおよび切換クラッチが解放されることで、前記動力分配機構が無段変速機として機能し、前記自動変速機の変速で定まる前記伝達部材の回転速度に対して整合させるために、その動力分配機構が前記自動変速機の変速に対して無段階的に反対方向に変速されることにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで総合変速比が無段階的に達成されることを特徴とする。このようにすれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られる。
また、好適には、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、エンジンの出力を第1電動機および伝達部材へ分配する動力分配機構と、その伝達部材と駆動輪との間に設けられた有段式の自動変速機と、その伝達部材とその駆動輪との間に設けられた第2電動機とを備えた車両の駆動装置であって、(a)前記動力分配機構は、第1サンギヤ、第1キャリヤ、および第1リングギヤを備え、その第1キャリヤは前記エンジンに連結され、その第1サンギヤは前記第1電動機に連結され、その第1リングギヤは前記伝達部材に連結されたシングルピニオン型の第1遊星歯車装置と、その第1キャリヤと第1サンギヤとを連結する切換クラッチおよび第1サンギヤを非回転部材に連結する切換ブレーキとを備えたものであり、(b)前記自動変速機は、第2サンギヤ、第2キャリヤ、および第2リングギヤを備え、その第2キャリヤによって回転可能に支持された互いに噛み合う一対の遊星歯車を有するダブルピニオン型の第2遊星歯車装置と、第3サンギヤ、第3キャリヤ、および第3リングギヤを備えるシングルピニオン型の第3遊星歯車装置と、第4サンギヤ、第4キャリヤ、および第4リングギヤを備え、その第4キャリヤによって回転可能に支持された互いに噛み合う一対の遊星歯車を有するダブルピニオン型の第4遊星歯車装置とを有し、その第2サンギヤは非回転部材に連結され、その第2キャリヤは前記伝達部材に連結されるとともに第4クラッチを介して第3サンギヤに選択的に連結され、その第2リングギヤは第1クラッチを介して第4サンギヤに選択的に連結されるとともに第3クラッチを介してその第3サンギヤに選択的に連結され、その第3サンギヤは第1ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3キャリヤおよびその第4キャリヤは第2クラッチを介して前記伝達部材に選択的に連結されるとともに第2ブレーキを介して非回転部材に選択的に連結され、その第3リングギヤおよびその第4リングギヤは前記自動変速機の出力回転部材に連結されたものであり、(c)前記切換ブレーキおよび切換クラッチの一方および他方が択一的に係合されることで、前記動力分配機構が複数段の変速機として機能することにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで有段変速機が構成され、(d)前記切換ブレーキが係合されることにより、前記自動変速機の変速段と併せて最高速固定変速段が達成され、(e)前記切換ブレーキおよび切換クラッチが解放されることで、前記動力分配機構が無段変速機として機能し、前記自動変速機の変速で定まる前記伝達部材の回転速度に対して整合させるために、その動力分配機構が前記自動変速機の変速に対して無段階的に反対方向に変速されることにより、その動力分配機構と前記自動変速機とで総合変速比が無段階的に達成されることを特徴とする。このようにすれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置10を説明する骨子図である。図1において、駆動装置10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12と表す)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された差動機構としての動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の自動変速機20と、この自動変速機20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この駆動装置10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、走行用の駆動力源としてのエンジン8と図示しない一対の駆動輪との間に設けられている。なお、駆動装置10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の駆動装置10を表す部分においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
動力分配機構16は、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に合成し或いは分配する機械的機構であって、エンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配し、或いはエンジン8の出力とその第1電動機M1の出力とを合成して伝達部材18へ出力させる。第2電動機M2は伝達部材18と一体的に回転するように設けられているが、伝達部材18から出力軸22までの間のいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
動力分配機構16は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。なお、第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1はZS1/ZR1で表される。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とトランスミッションケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、および第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能な差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、例えば無段変速状態とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が電気的にその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで変化させられる差動状態例えば変速比γ0が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する差動状態例えば無段変速状態とされる。
この状態で、エンジン8の出力で車両走行中に上記切換クラッチC0が係合させられて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合させられると、第1遊星歯車装置24の3要素S1、CA1、R1が一体回転させられるロック状態である非差動状態とされることから、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、動力分配機構16は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態とされる。次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて第1サンギヤS1が非回転状態とされるロック状態である非差動状態とされると、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は変速比γ0が「1」より小さい値に固定された増速変速機として機能する定変速状態とされる。このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、動力分配機構16を、差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な差動状態(無段変速状態)と、非差動状態例えば電気的な無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化をロックするロック状態、すなわち1または2種類の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。
自動変速機20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびダブルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備えている。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、互いに噛み合う一対の第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、第2遊星歯車装置のギヤ比ρ2はZS2/ZR2、第3遊星歯車装置のギヤ比ρ3はZS3/ZR3、第4遊星歯車装置のギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
自動変速機20では、第2サンギヤS2は非回転部材であるケース12に連結され、第2キャリヤCA2は第1クラッチC1を介して第4サンギヤS4に選択的に連結されるとともに第3クラッチC3を介して第3サンギヤS3に選択的に連結され、第2リングギヤR2は伝達部材18に連結され、第3サンギヤS3は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第3キャリヤCA3および第4キャリヤCA4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3および第4リングギヤS4は自動変速機20の出力軸22に連結され、第4サンギヤS4は第一クラッチC1を介して第2キャリヤCA2に選択的に連結されている。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2は従来の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された駆動装置10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第7速ギヤ段(第7変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機20とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機20とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「4.148」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.370」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3クラッチC3の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.556」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.155」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、および第3クラッチC3の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.859」程度である第5速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.686」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、切換ブレーキB0および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.527」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合により、変速比γRが例えば「3.394」程度である後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、自動変速機20の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機20とから構成される駆動装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標であり、4本の横軸のうちの横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横軸XGが伝達部材18の回転速度を示し、横線Xbが伝達部材18の回転を入力回転とし第2遊星歯車装置26により減速させられた回転速度を示している。また、共線図に示される縦線Y1乃至Y10はそれぞれの遊星歯車装置の回転要素を表し、左から順に第1回転要素RE1乃至第10回転要素RE10と呼ぶこととする。動力分配機構16の3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素RE1に対応する第1サンギヤS1、第2回転要素RE2に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。すなわち、縦線Y1とY2との間隔を1に対応するとすると、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応するものとされる。さらに、自動変速機20の7本の縦線Y4乃至Y10は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2、第5回転要素RE5に対応する第2キャリヤCA2、第6回転要素RE6に対応する第2リングギヤR2、第7回転要素RE7に対応する第3サンギヤS3、第8回転要素RE8に対応する互いに連結された第3キャリヤCA3および第4キャリヤCA4、第9回転要素RE9に対応する互いに連結された第3リングギヤR3および第4リングギヤR4、第10回転要素RE10に対応する第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。すなわち、各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が1に対応するものされ、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応するものとされる。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の駆動装置10は、動力分配機構(無段変速部)16において、第1遊星歯車装置24の3回転要素の1つである第2回転要素RE2(第1キャリヤCA1)が入力軸14に連結されるとともに切換クラッチC0を介して他の回転要素の1つである第1サンギヤS1と選択的に連結され、その他の回転要素の1つである第1回転要素RE1(第1サンギヤS1)が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、残りの回転要素である第3回転要素RE3(第1リングギヤR1)が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を前記伝達部材18を介して自動変速機(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
図4および図5は上記図3の共線図の動力分配機構16部分に相当する図である。図4は上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態の一例を表している。例えば、第1電動機M1の発電による反力を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が下降或いは上昇させられる。
また、図5は切換クラッチC0の係合により有段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態を表している。つまり、第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると一体回転するので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で自動変速機20へ入力される。
また、自動変速機20において第4回転要素RE4は非回転部材であるケース12に連結され、第5回転要素RE5は第1クラッチC1を介して第10回転要素RE10に選択的に連結されるとともに第3クラッチC3を介して第7回転要素RE7に選択的に連結され、第6回転要素RE6は伝達部材18に連結され、第7回転要素RE7は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第8回転要素RE8は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に連結され、第9回転要素RE9は出力軸22に連結され、第10回転要素RE10は第1クラッチC1を介して第5回転要素RE5に選択的に連結されている。
自動変速機20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第10回転要素RE10の回転速度を示す縦線Y10と横線Xbとの交点と第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L4と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第3クラッチC3とが係合されることにより決まる斜めの直線L5と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第6速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で伝達部材18に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。また、第3クラッチC3と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で後進ギヤRの出力軸22の回転速度が示される。
図6は、本実施例の駆動装置10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、前記自動変速機20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
上記電子制御装置40には、図6に示す各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を示す信号、M(モータ走行)モードを指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度に対応する車速信号、自動変速機20の作動油温を示す油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、各駆動輪の車輪速を示す車輪速信号、駆動装置10を有段変速機として機能させるために動力分配機構16を定変速状態に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を示す信号、駆動装置10を無段変速機として機能させるために動力分配機構16を無段変速状態に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を示す信号、第1電動機M1の回転速度NM1を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2を表す信号などが、それぞれ供給される。また、上記電子制御装置40からは、スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン8の点火時期を指令する点火信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、動力分配機構16や自動変速機20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、上記油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図7は、駆動装置10の制御方法すなわち電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。切換制御手段50は、例えば図8に示す予め記憶された関係(切換マップ)から実際のエンジン回転速度NEとハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えばエンジン出力トルクTEとに基づいて、それらのエンジン回転速度NEとエンジン出力トルクTEとで表される車両状態が駆動装置10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは駆動装置10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定する。そして、切換制御手段50は、有段変速制御領域であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可(禁止)とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速制御を許可する。このときの有段変速制御手段54は、変速線図記憶手段56に予め記憶された図示しない変速線図に従って自動変速制御を実行する。図2は、このときの変速制御において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、C3、B0、B1、B2の作動の組み合わせを示している。この有段自動変速制御モードの第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられることにより動力分配機構16が固定の変速比γ0が1の副変速機として機能しているが、第7速では、その切換クラッチC0の係合に替えて切換ブレーキB0が係合させられることにより動力分配機構16が固定の変速比γ0が例えば0.7程度の副変速機として機能している。すなわち、この有段自動変速制御モードでは、副変速機として機能する動力分配機構16と自動変速機20とを含む駆動装置10全体が所謂自動変速機として機能している。
上記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速機20の出力トルクTOUT、エンジン出力トルクTE、車両加速度や、例えばアクセル開度或いはスロットル開度(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度NEとによって算出されるエンジン出力トルクTEなどの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量或いはスロットル開度に基づいて算出されるエンジン出力トルクTEや要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
しかし、上記切換制御手段50において、エンジン回転速度NEとエンジン出力トルクTEとで表される車両状態が無段制御領域内であると判定した場合は、前記動力分配機構16を電気的な無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは変速線図記憶手段56に予め記憶された変速線図に従って自動変速することを許可する信号を出力する。後者の場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、前述のように、自動変速機20の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
上記ハイブリッド制御手段52は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第1電動機M1および/または第2電動機M2との駆動力の配分を最適になるように変化させる。例えば、そのときの走行車速において、アクセルペダル操作量や車速から運転者の要求出力を算出し、運転者の要求出力と充電要求値から必要な駆動力を算出し、エンジンの回転速度とトータル出力とを算出し、そのトータル出力とエンジン回転速度NEとに基づいて、エンジン出力を得るようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。ハイブリッド制御手段52は、その制御を自動変速機20の変速段を考慮して実行したり、或いは燃費向上などのために自動変速機20に変速指令を行う。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速および自動変速機20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、動力分配機構16が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立した予め記憶された最適燃費率曲線に沿ってエンジン8が作動させられるように駆動装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように動力分配機構16の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御することになる。
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通して電気エネルギが第2電動機M2或いは第1電動機M1へ供給され、その第2電動機M2或いは第1電動機M1から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、動力分配機構16の電気的CVT機能によってモータ走行させることができる。
前記図8の関係に示されるように、エンジン8の出力トルクTEが予め設定された所定値TE1以上の高トルク領域(高出力走行領域)、エンジン回転速度NEが予め設定された所定値NE1以上の高回転領域すなわちエンジン回転速度NEとトータル変速比γTとで一意的に決められる車両状態の1つである車速が所定値以上の高車速領域、或いはそれらエンジン8の出力トルクTEおよび回転速度NEから算出される出力が所定以上の高出力領域が、有段制御領域として設定されているので、前記有段変速制御がエンジン8の比較的高出力トルク、比較的高回転速度、或いは比較的高出力時において実行され、前記無段変速制御がエンジン8の比較的低出力トルク、比較的低回転速度、或いは比較的低出力時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。図8における有段制御領域と無段制御領域との間の境界線は、例えば高車速判定値の連なりである高車速判定線および高出力走行判定値の連なりである高出力走行判定線に対応している。
図9は手動変速操作装置であるシフト操作装置46の一例を示す図である。シフト操作装置46は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー48を備えている。そのシフトレバー48は、例えばクラッチC1、クラッチC2およびクラッチC3のいずれもが係合されないような駆動装置10内つまり自動変速機20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速機20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、駆動装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションは、「P」ポジションおよび「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは車両を走行させるときに選択される走行ポジションである。また、「D」ポジションは最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「6」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー48の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー48がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかへ切り換えられる。例えば、「M」ポジションにおける「D」レンジ乃至「L」レンジの7つの変速レンジは、駆動装置10の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また自動変速機20の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。また、シフトレバー48はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。また、シフト操作装置46にはシフトレバー48の各シフトポジションを検出するための図示しないシフトポジションセンサが備えられており、そのシフトレバー48のシフトポジションや「M」ポジションにおける操作回数等を電子制御装置40へ出力する。
例えば、「D」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、図8に示す予め記憶された切換マップに基づいて切換制御手段50により駆動装置10の変速状態の自動切換制御が実行され、ハイブリッド制御手段52により動力分配機構16の無段変速制御が実行され、有段変速制御手段54により自動変速機20の自動変速制御が実行される。例えば、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には駆動装置10が例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第7速ギヤ段の範囲で自動変速制御され、或いは駆動装置10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には駆動装置10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と自動変速機20の第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御される。この「D」ポジションは駆動装置10の自動変速制御が実行される制御様式である自動変速走行モード(自動モード)を選択するシフトポジションでもある。
或いは、「M」ポジションがシフトレバー48の操作により選択された場合には、変速レンジの最高速側変速段或いは変速比を越えないように、切換制御手段50、ハイブリッド制御手段52、および有段変速制御手段54により駆動装置10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。例えば、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には駆動装置10が各変速レンジで駆動装置10が変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御され、或いは駆動装置10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には駆動装置10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と各変速レンジに応じた自動変速機20の変速可能な変速段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる駆動装置10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。この「M」ポジションは駆動装置10の手動変速制御が実行される制御様式である手動変速走行モード(手動モード)を選択するシフトポジションでもある。
上述のように、本実施例によれば、エンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18へ分配する動力分配機構16には、その動力分配機構16を差動作用が作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態と、差動作用が不能な非差動状態例えば定変速比を有する変速機として作動可能な定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置としての切換クラッチC0および切換ブレーキB0が設けられていることから、車両の低中速走行および低中出力走行となるようなエンジンの常用出力域では動力分配機構16が無段変速状態とされてハイブリッド車両の燃費性能が確保されるが、高速走行或いはエンジン8の高回転域では動力分配機構16が定変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて動力と電気との間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。また、エンジン8の高出力域では動力分配機構16が定変速状態とされて無段変速状態として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となるので、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギすなわち第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて、換言すれば第1電動機M1の保障すべき電気的反力を小さくできてその第1電動機M1や第2電動機M2、或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。或いは、エンジン8の高出力(トルク)域で動力分配機構16が定変速状態とされると同時に自動変速機20の変速が行われるので、例えば図10に示すようなアップシフトに伴うエンジン回転速度NEの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン8の回転速度の変化が発生する。或いは、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。これによって、ユーザは、例えば図10に示すリズミカルなエンジン回転速度NEの変化を楽しむことができる。
また、本実施例によれば、動力分配機構16が、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1を3要素とするシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24によって簡単に構成される利点がある。
また、本実施例によれば、第2電動機M2が自動変速機20の入力回転部材である伝達部材18に連結されていることから、その自動変速機20の出力軸22に対して低トルクの出力でよくなるので、第2電動機M2が一層小型化される利点がある。
また、本実施例によれば、動力分配機構16と駆動輪38との間に自動変速機20が直列に介装されており、その動力分配機構16の変速比とその自動変速機20の変速比とに基づいて総合変速比が形成されることから、変速機のレンジ幅が広いギヤ段を有する自動変速機20の変速比を利用を利用することによって駆動力が幅広く得られるようになるので、動力分配機構16における無段変速制御すなわちハイブリッド制御の効率が一層高められる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、他の例の電子制御装置40の制御作動の要部を示す機能ブロック線図であり、切換制御手段50が、高車速判定手段62、高出力走行判定手段64、電気パス機能判定手段66を備えて図12に示す関係に基づいて切換制御する点において、図7の実施例と相違している。
図11において、高車速判定手段62は、ハイブリッド車両の車両状態の1つを表す実際の車速Vが高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1以上の高車速となったか否かを判定する。高出力走行判定手段64は、ハイブリッド車両の車両状態の1つを表す駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速機20の出力トルクTOUTが高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1以上の高トルク(高駆動力)走行となったか否かを判定する。つまり、高出力走行判定手段64では車両の駆動力を直接或いは間接的に示す駆動力関連パラメータに基づいて車両の高出力走行が判定される。電気パス機能判定手段66は、駆動装置10を無段変速状態とするための制御機器の機能低下が判定される故障判定条件の判定を、第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下に基づいて、例えば第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や故障とか低温による機能低下或いは不全の発生に基づいて判定する。
変速段判断手段67は、駆動装置10が有段変速状態に切り換えられて動力分配機構16と自動変速機20とで駆動装置10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合に駆動装置10がいずれの変速段とされるかを、例えば変速線図記憶手段56に予め記憶された図12に示す変速線図から車速Vおよび出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて駆動装置10の変速すべき変速段を判断する。また、変速段判断手段67により判断された変速段は駆動装置10の有段/無段の変速状態に拘わらず有段変速制御手段54による自動変速機20の変速制御の基になるものでもあり、また増速側ギヤ段判定手段68による増速側ギヤ段判定の基になるものでもある。
増速側ギヤ段判定手段68は、駆動装置10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、変速段判断手段67により判断された駆動装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第7速ギヤ段であるか否かを判定する。これは、駆動装置10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合に、第1速乃至第6速では切換クラッチC0が係合させられ、或いは第7速では切換ブレーキB0が係合させられるようにするためである。
切換制御手段50は、所定条件としての高車速判定手段62による高車速判定、高出力走行判定手段64による高出力走行判定、電気パス機能判定手段66による電気パス機能不全の判定の少なくとも1つが発生した場合は、有段変速制御領域であると判定して、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可(禁止)とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対して予め設定された有段変速時の変速制御例えば変速段判断手段67により判断された変速段に従って実行される自動変速機20の変速制御を許可し、増速側ギヤ段判定手段68による第7速ギヤ段判定に基づいて切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれか係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。よって、駆動装置10全体すなわち動力分配機構16および自動変速機20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、高車速判定手段62による高車速判定、増速側ギヤ段判定手段68による第7速ギヤ段判定がされる場合には、切換制御手段50は動力分配機構16が固定の変速比γ0の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、高出力走行判定手段64による高出力走行判定或いは増速側ギヤ段判定手段68により第7速ギヤ段でないと判定される場合には、切換制御手段50は動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、切換制御手段50によって所定条件に基づいて駆動装置10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、動力分配機構16が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、駆動装置10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
例えば、判定車速V1は、高速走行において駆動装置10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において駆動装置10が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機M1の反力トルクをエンジンの高出力域まで対応させないで第1電動機M1を小型化するために、例えば第1電動機M1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機M1の特性に応じて設定されることになる。
しかし、上記高車速判定手段62による高車速判定、高出力走行判定手段64による高出力走行判定、電気パス機能判定手段66による電気パス機能不全の判定のいずれも発生しないときは、駆動装置10全体として無段変速状態が得られるために切換制御手段50は、動力分配機構16を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか或いは変速段判断手段67により判断された変速段に従って自動変速機20を自動変速することを許可する信号を出力する。このように、切換制御手段50により所定条件に基づいて無段変速状態に切り換えられた動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速機20の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図12は、自動変速機20の変速判断の基となる変速線図記憶手段56に予め記憶された変速線図(関係)であり、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図(変速マップ)の一例である。図12の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。また、図12の破線は切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための所定条件を定める判定車速V1および判定出力トルクT1を示しており、高車速判定値である判定車速V1の連なりと高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高車速判定線と高出力走行判定線を示している。さらに、図12の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。この図12は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)でもある。よって車両の所定条件は、この切換線図から実際の車速Vと出力トルクTOUTとに基づいて定められてもよい。すなわち、この図12は変速マップと所定条件との関係を示す図であるともいえる。なお、この切換線図を含めて変速マップとして変速線図記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。上記変速線図や切換線図等は、実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。
また、上記図12に示す有段制御領域と無段制御領域とは前記図8に示すようにエンジン8の出力トルクTEとエンジン回転速度NEとで設定される有段制御領域と無段制御領域との別の実施例でもあり、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高出力トルクとなる高駆動トルク時、或いはエンジン8の比較的高回転速度となる高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低出力トルクとなる低駆動トルク時、或いはエンジン8の比較的低回転速度となる低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
図13は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち図11の実施例における駆動装置10の切換制御作動を示すフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
先ず、高車速判定手段62に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、ハイブリッド車両の実際の車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速となったか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合は高出力走行判定手段64に対応するS2において、ハイブリッド車両の実際の駆動トルク或いは自動変速機20の出力トルクTOUTが予め設定された判定トルクT1以上の高トルク(高駆動力)となったか否かが判定される。このS2の判断が否定される場合は電気パス機能判定手段66に対応するS3において、第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パス(電気エネルギ伝達経路)に関連する機器の機能低下が、例えば第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの機能低下、例えば故障(フェイル)とか低温による機能不全が発生したか否かで判定される。
上記S3の判断が否定される場合は切換制御手段50に対応するS4において、動力分配機構16が無段変速可能とされるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、変速段判断手段67により判断された変速段に従って自動変速機20を自動変速することを許可する信号が出力される。したがって、動力分配機構16が無段変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速機20の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置10全体としてトータル変速比γTが無段階となる無段変速状態が得られるようになる。
上記S1、S2、S3の判断のうちで少なくとも1つが肯定される場合は変速段判断手段67に対応するS5において、駆動装置10がいずれの変速段とされるかが例えば車両状態に基づいて変速線図記憶手段56に予め記憶された図12に示す変速線図に従って判断される。そして、増速側ギヤ段判定手段68に対応するS6において、上記S5において判断された駆動装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第7速ギヤ段であるか否かが判定される。
上記S6の判断が肯定される場合には切換制御手段50に対応するS8において、動力分配機構16が固定の変速比γ0の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御が不許可すなわち禁止とする信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、S5において判断された変速段に従って駆動装置10全体として第7速ギヤ段とされるように自動変速機20を第6速ギヤ段に自動変速することを許可する信号が出力される。また、上記S6の判断が否定される場合には切換制御手段50に対応するS7において、動力分配機構16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令が油圧制御回路42へ出力される。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御が不許可すなわち禁止とする信号が出力されるとともに、有段変速制御手段54には、S5において判断された変速段に従って第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段の範囲で自動変速機20を自動変速することを許可する信号が出力される。したがって、S7およびS8において動力分配機構16が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速機20が有段変速機として機能することにより、駆動装置10全体が有段変速状態となり所謂有段自動変速機として機能させられる。
このように、本実施例によれば、前述の実施例と同様にエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18へ分配する動力分配機構16に加えて、その動力分配機構16には駆動装置10を変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動可能な無段変速状態と有段の変速機として作動可能な有段変速状態とに選択的に切換えるための差動状態切換装置としての切換クラッチC0および切換ブレーキB0が設けられ、切換制御手段50によって所定条件に基づいて駆動装置10が無段変速状態および有段変速状態のいずれかに自動的に切り替えられることから、電気的な無段変速機の燃費改善効果と機械的に動力を伝達する有段変速機の高い伝達効率との両長所を兼ね備えた駆動装置が得られる。すなわち、エンジンの常用出力域例えば図12に示す車速Vが判定車速V1以下且つ出力トルクTOUTが判定出力トルクT1以下となる無段制御領域では駆動装置10が無段変速状態とされてハイブリッド車両の通常の市街地走行すなわち車両の低中速走行および低中出力走行での燃費性能が確保されると同時に、高速走行例えば図12に示す車速Vが判定車速V1以上となる有段制御領域では駆動装置10が有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて無段変速状態とされた場合の動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されるので、燃費が向上させられる。また、高出力走行例えば図12に示す実際の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1以上となる有段制御領域では駆動装置10が有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて無段変速状態として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となるので、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギすなわちが第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできてその第1電動機M1や第2電動機M2、或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
また、前述の実施例の効果に加えて、本実施例によれば、切換制御手段50により車両の所定条件に基づいて駆動装置10が無段変速状態から有段変速状態へ切り換えられるとき、その車両の所定条件に応じて切換制御手段50により差動状態切換装置として機能するブレーキB0或いはクラッチC0が制御されることで有段変速状態での複数段のいずれかへの切換先が変更されるので、高速走行や高出力走行等の車両走行状況に合わせた適切な変速段が得られる。
また、本実施例によれば、車両の所定条件は、判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとする予め記憶された切換線図から実際の車速Vと出力トルクTOUTとに基づいて定められるものであるので、切換制御手段50による高車速判定または高出力走行判定が簡単に判定される。
また、本実施例によれば、車両の所定条件は、駆動装置10を無段変速状態とするための制御機器の機能低下を判定する故障判定条件であり、切換制御手段50はその故障判定条件が成立した場合に駆動装置10を有段変速状態とするものであるので、駆動装置10が無段変速状態とされない場合でも有段変速状態とされることで、有段走行ではあるが無段走行と略同様の車両走行が確保される。
また、本実施例によれば、動力分配機構16が、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1を3要素とするシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24によって簡単に且つ動力分配機構16の軸方向寸法が小さく構成される利点がある。さらに、動力分配機構16には油圧式摩擦係合装置すなわち第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とを相互に連結する切換クラッチC0および第1サンギヤS1をトランスミッションケース12に連結する切換ブレーキB0が設けられているので、切換制御手段50により駆動装置10の無段変速状態と有段変速状態とが簡単に制御される。
図14は本発明の他の実施例における駆動装置80の構成を説明する骨子図、図15はその駆動装置80の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図16はその駆動装置80の変速作動を説明する共線図である。
駆動装置80は、前述の実施例と同様にシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進6段の自動変速機86とを備えている。自動変速機86は、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置82とシングルピニオン型の第3遊星歯車装置88とシングルピニオン型の第4遊星歯車装置90とを備えている。自動変速機86の第2サンギヤS2は第1リングギヤR1に連結され、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結され、第2リングギヤR2は第3クラッチC3を介して第3リングギヤR3に選択的に連結され、第3サンギヤS3および第4サンギヤS4は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3および第4リングギヤR4は第2クラッチC2を介して
伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第4キャリヤCA4は変速機86の出力軸22に連結されている。
以上のように構成された駆動装置80では、例えば、図15の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第7速ギヤ段(第7変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置80では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機86とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機86とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置80が有段変速機として機能する場合には、図15に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.742」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.003」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3クラッチC3の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.343」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、および第3クラッチC3の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.773」程度である第5速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.634」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.487」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合により後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置80が無段変速機として機能する場合には、図15に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機86が有段変速機として機能することにより、自動変速機86の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機86に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置80全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図16は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機86から構成される駆動装置80において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図16における自動変速機86の4本の縦線Y4乃至Y10は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2キャリヤCA2を、第5回転要素RE5に対応する第2リングギヤR2を、第6回転要素RE6に対応する第2サンギヤS2を、第7回転要素RE7に対応する第3サンギヤS3を、第8回転要素RE8に対応する互いに連結された第3キャリヤCA3および第4リングギヤR4を、第9回転要素RE9に対応する第4キャリヤCA4を、第10回転要素RE10に対応する互いに連結された第3サンギヤS3および第4サンギヤS4をそれぞれ表している。また、自動変速機86において第7回転要素RE7は第3クラッチC3を介して第5回転要素RE5に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12選択的に連結され、第8回転要素RE8は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第9回転要素RE9は自動変速機86の出力軸22に連結され、第10回転要素RE10は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速機86では、図16に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第10回転要素RE10(S3,S4)の回転速度を示す縦線Y10と横線X2との交点と第8回転要素RE8(CA3、R4)の回転速度を示す縦線Y8と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第9回転要素RE9(CA4)の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平の直線L4と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる斜めの直線L5と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第6速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第6回転要素RE6に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。また、第3クラッチC3と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置80においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機86とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図17は本発明の他の実施例における駆動装置92の構成を説明する骨子図、図18はその駆動装置92の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図19はその駆動装置92の変速作動を説明する共線図である。
駆動装置92は、前述の実施例と同様に有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進7段の自動変速機96とを備えている。自動変速機96は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置94とシングルピニオン型の第3遊星歯車装置98とシングルピニオン型の第4遊星歯車装置100とを備えている。自動変速機96の第2サンギヤS2は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3サンギヤS3および第4サンギヤS4は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3および第4リングギヤR4は第2クラッチC2および第3クラッチC3を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第4キャリヤCA4は自動変速機96の出力軸22に連結されている。
以上のように構成された駆動装置92では、例えば、図18の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第8速ギヤ段(第8変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置92では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機96とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機96とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置92が有段変速機として機能する場合には、図18に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.777」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.228」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.693」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.301」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第3クラッチC3の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第5速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.750」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.557」程度である第7速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第2ブレーキB2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.438」程度である第8速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2、第1ブレーキB1および第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置92が無段変速機として機能する場合には、図18に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機96が有段変速機として機能することにより、自動変速機96の第1速乃至第7速の各ギヤ段に対しその自動変速機96に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置92全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図19は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機96から構成される駆動装置92において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図19における自動変速機96の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、およびY8は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2を、第5回転要素RE5に対応する互いに連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第6回転要素RE6に対応する相互に連結された第2リングギヤR2(C3を介して)、第3キャリヤCA3、および第4リングギヤR4を、第7回転要素RE7に対応する第4キャリヤCA4を、第8回転要素RE8に対応する互いに連結された第3サンギヤS3および第3サンギヤS3をそれぞれ表している。また、自動変速機96において第4回転要素RE4は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は自動変速機96の出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速機96では、図19に示すように、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8(S3,S4)の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6(R2、CA3、R4)の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第9回転要素RE7(CA4)の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる水平の直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる水平の直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および第2ブレーキB2とが連結させられることによる決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第7速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第6回転要素RE6および第8回転要素RE8に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第2ブレーキB2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L8と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第8速の出力軸22の回転速度が示される。また、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および第3ブレーキB3とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置92においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機96とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図20は本発明の他の実施例における駆動装置110の構成を説明する骨子図、図21はその駆動装置110の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図22はその駆動装置110の変速作動を説明する共線図である。
駆動装置110は、前述の実施例と同様にシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進6段の自動変速機112とを備えている。自動変速機112は、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置114とシングルピニオン型の第3遊星歯車装置116とシングルピニオン型の第4遊星歯車装置118とを備えている。自動変速機112の第2サンギヤS2は第3クラッチC3を介して伝達部材18に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2および第3リングギヤR3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3サンギヤS3および第4サンギヤS4は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3および第4リングギヤR4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第4キャリヤCA4は自動変速機112の出力軸22に連結されている。
以上のように構成された駆動装置110では、例えば、図21の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第7速ギヤ段(第7変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置110では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機112とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機112とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置110が有段変速機として機能する場合には、図21に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.742」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.003」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第3クラッチC3および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.343」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2および第3クラッチC3の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、第3クラッチC3および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.773」程度である第5速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2、および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.634」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第2ブレーキB2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.487」程度である第7速ギヤ段が成立させられる。また、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第3ブレーキB3の係合により、後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置110が無段変速機として機能する場合には、図21に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機112が有段変速機として機能することにより、自動変速機112の第1速乃至第6速の各ギヤ段に対しその自動変速機112に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置110全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図22は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112から構成される駆動装置110において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図22における自動変速機112の7本の縦線Y4乃至Y10は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2キャリヤCA2を、第5回転要素RE5に対応する第2リングギヤR2を、第6回転要素RE6に対応する第2サンギヤS2を、第7回転要素RE7に対応する第3リングギヤR3を、第8回転要素RE8に対応する互いに連結された第3キャリヤCA3および第4リングギヤR4を、第9回転要素RE9に対応する第4キャリヤCA4を、第10回転要素RE10に対応する互いに連結された第3サンギヤS3および第4サンギヤS4をそれぞれ表している。また、自動変速機112において第4回転要素RE4は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3クラッチC3を介して伝達部材18に選択的に連結され、第7回転要素RE7は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第8回転要素RE8は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第9回転要素RE9は自動変速機112の出力軸22に連結され、第10回転要素RE10は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結される。
自動変速機112では、図22に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第10回転要素RE10(S3,S4)の回転速度を示す縦線Y10と横線X2との交点と第8回転要素RE8(CA3、R4)の回転速度を示す縦線Y8と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第9回転要素RE9(CA4)の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる水平の直線L4と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2、第3クラッチC3、および第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L5と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第6速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第6回転要素RE6、第8回転要素RE8、および第10回転要素RE10に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2、第2ブレーキB2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示される。また、第3クラッチC3、第1ブレーキB1、および第3ブレーキB3とが係合させられることにより決まる斜めの直線LRと出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で後進Rの出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置110においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機112とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
図23は本発明の他の実施例における駆動装置120の構成を説明する骨子図、図24はその駆動装置120の変速段と油圧式摩擦係合装置の係合の組み合わせとの関係を示す係合表、図25はその駆動装置120の変速作動を説明する共線図である。
駆動装置120は、前述の実施例と同様にシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを有する動力分配機構16と、その動力分配機構16と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進8段の自動変速機122とを備えている。自動変速機122はダブルピニオン型の第2遊星歯車装置124とシングルピニオン型の第3遊星歯車装置126とダブルピニオン型の第4遊星歯車装置128とを備えている。自動変速機122の第2サンギヤS2はケース12に連結され、第2キャリヤCA2は伝達部材18に連結されるとともに第4クラッチC4を介して第3サンギヤS3に選択的に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して第4サンギヤS4に選択的に連結されるとともに第3クラッチC3を介して第3サンギヤS3に選択的に連結され、第3サンギヤS3は第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第3キャリヤCA3および第4キャリヤCA4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3および第4リングギヤR4は自動変速機122の出力軸22に連結されている。
以上のように構成された駆動装置120では、例えば、図24の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第9速ギヤ段(第9変速段)のいずれか或いは第1後進ギヤ段または第2後進ギヤ段が選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、動力分配機構16は前述した無段変速機として作動可能な無段変速状態に加え、1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動可能な定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、駆動装置120では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機122とで有段変速機が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた動力分配機構16と自動変速機122とで無段変速機が構成される。
例えば、駆動装置120が有段変速機として機能する場合には、図24に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ1が最大値例えば「4.597」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.274」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3クラッチC3の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.864」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第4クラッチC4の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.464」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.231」程度である第5速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2および第4クラッチC4の係合により、変速比γ6が第5速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第6速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2および第3クラッチC3の係合により、変速比γ7が第6速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.824」程度である第7速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第2クラッチC2および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ8が第7速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.685」程度である第8速ギヤ段が成立させられ、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ9が第8速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.526」程度である第9速ギヤ段が成立させられる。また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2の係合により、変速比γR1が例えば「4.056」程度である第1後進ギヤ段が成立させられ、第4クラッチC4および第2ブレーキB2の係合により、変速比γR2が例えば「2.176」程度である第2後進ギヤ段が成立させられる。
しかし、駆動装置120が無段変速機として機能する場合には、図24に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、動力分配機構16が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速機122が有段変速機として機能することにより、自動変速機122の第1速乃至第8速の各ギヤ段に対しその自動変速機122に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって駆動装置120全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
図25は、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機122から構成される駆動装置120において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放される場合、および切換クラッチC0または切換ブレーキB0が係合させられる場合の動力分配機構16の各要素の回転速度は前述の場合と同様である。
図25における自動変速機122の7本の縦線Y4乃至Y10は、左から順に、第4回転要素RE4に対応する第2サンギヤS2を、第5回転要素RE5に対応する第2リングギヤR2を、第6回転要素RE6に対応する第2キャリヤCA2を、第7回転要素RE7に対応する第3サンギヤS3を、第8回転要素RE8に対応する相互に連結された第3キャリヤCA3および第4キャリヤCA4を、第9回転要素RE9に対応する相互に連結された第3リングギヤR3および第4リングギヤR4を、第10回転要素に対応する第4サンギヤS4をそれぞれ表している。また、自動変速機122において第4回転要素RE4はケース12に連結され、第5回転要素RE5は第3クラッチC3を介して第7回転要素に選択的に連結されるとともに第1クラッチC1を介して第10回転要素に選択的に連結され、第6回転要素RE6は伝達部材18に連結され、第7回転要素RE7は第1ブレーキB1を介してケース12選択的にに連結され、第8回転要素RE8は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第9回転要素RE9は自動変速機122の出力軸22に連結され、第10回転要素RE10は第1クラッチC1を介して第5回転要素RE5に選択的に連結されている。
自動変速機122では、図24に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第10回転要素RE10(S4)の回転速度を示す縦線Y10と横線Xbとの交点と第8回転要素RE8(CA3、CA4)の回転速度を示す縦線Y8と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第9回転要素RE9(R3,R4)の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第3クラッチC3とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第4クラッチC4とが係合させられることにより決まる斜めの直線L4と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L5と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第4クラッチC4とが係合させられることにより決まる斜めの直線L6と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第6速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第3クラッチC3とが連結させられることによる決まる斜めの直線L7と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第7速の出力軸22の回転速度が示され、第2クラッチC2と第1ブレーキB1とが連結させられることによる決まる斜めの直線L8と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第8速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第8速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第6回転要素RE6に動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる斜めの直線L9と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第9速の出力軸22の回転速度が示される。また、第3クラッチC3と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線LR1と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第1後進ギヤ段の出力軸22の回転速度が示され、第4クラッチC4と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線LR2と出力軸22と連結された第9回転要素RE9の回転速度を示す縦線Y9との交点で第2後進ギヤ段の出力軸22の回転速度が示される。
本実施例の駆動装置120においても、無段変速部或いは第1変速部として機能する動力分配機構16と有段変速部或いは第2変速部として機能する自動変速機122とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例の駆動装置10、80、92、110、120は、動力分配機構16が差動状態と非差動状態とに切り換えられることで電気的な無段変速機としての機能する無段変速状態と有段変速機として機能する有段変速状態とに切り換え可能に構成されていたが、無段変速状態と有段変速状態との切換えは動力分配機構16の差動状態と非差動状態との切換えにおける一態様であり、例えば動力分配機構16が差動状態であっても動力分配機構16の変速比を連続的ではなく段階的に変化させて有段変速機として機能させられてもよい。言い換えれば、駆動装置10、80、92、110、120(動力分配機構16)の差動状態/非差動状態と、無段変速状態/有段変速状態とは必ずしも一対一の関係にある訳ではないので、駆動装置10、80、92、110、120は必ずしも無段変速状態と有段変速状態とに切り換え可能に構成される必要はなく、駆動装置10、80、92、110、120(動力分配機構16)が差動状態と非差動状態とに切換え可能に構成されれば本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また、前述の動力分配機構16には切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられていたが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は必ずしも両方備えられる必要はなく、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の一方のみが備えられていてもよい。また、上記切換クラッチC0は、サンギヤS1とキャリヤCA1とを選択的に連結するものであったが、サンギヤS1とリングギヤR1との間や、キャリヤCA1とリングギヤR1との間を選択的に連結するものであってもよい。要するに、第1遊星歯車装置24の3要素のうちのいずれか2つを相互に連結するものであればよい。
また、前述の実施例では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
また、前述の実施例では、動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪38との間の動力伝達経路に、有段式の自動変速機20、86、96、112、122が介装されていたが、例えば無段変速機(CVT)等の他の形式の動力伝達装置が設けられていてもよいし、必ずしも設けられていなくてもよい。その無段変速機(CVT)の場合には、動力分配機構16が定変速状態とされることで全体として有段変速状態とされる。有段変速状態とは、電気パスを用いないで専ら機械的伝達経路で動力伝達することである。或いは、上記無段変速機は有段変速機における変速段に対応するように予め複数の固定された変速比が記憶され、その複数の固定された変速比を用いて変速が実行されてもよい。
また、前述の実施例では、駆動装置10、80、92、110、120はエンジン8以外に第1電動機M1或いは第2電動機M2のトルクによって駆動輪38が駆動されるハイブリッド車両用の駆動装置であったが、例えば駆動装置10、80、92、110、120を構成する動力分配機構16がハイブリッド制御されない電気的CVTと称される無段変速機としての機能のみを有するような車両用の駆動装置であっても本発明は適用され得る。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、定変速状態では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。
また、前述の実施例ではシフトレバー48が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが変速段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速変速段が変速段として設定されてもよい。この場合には、「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へのシフトレバー48の操作に応じて、例えば駆動装置10では第1速ギヤ段乃至第7速ギヤ段の何れかへ変速段が切り換えられて変速が実行される。
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
図1の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
無段変速状態に切換えられたときの動力分配機構の状態の一例を表している図であって、図3の共線図の動力分配機構部分に相当する図である。
切換クラッチC0の係合により有段変速状態に切換えられたときの動力分配機構16の状態を表している図であって、図3の共線図の動力分配機構部分に相当する図である。
図1の実施例の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
図6の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
図7の切換制御手段において、無段制御領域と有段制御領域との切換制御に用いられる予め記憶された関係を示す図である。
シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
有段式変速機におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度の変化の一例である。
本発明の他の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図であって、図7に相当する図である。
図11の実施例の電子制御装置において、切換制御手段の切換作動を説明する図である。
図11の実施例における電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図14の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図14の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図17の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図2の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図20の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
図23の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
図23の実施例のハイブリッド車両の駆動装置が有段変速作動させられる場合における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
符号の説明
8:エンジン
10、80、92、110、120:駆動装置
12:トランスミッションケース(非回転部材)
14:入力軸
16、84、94:動力分配機構
18:伝達部材
20、86、96、112、122:有段式自動変速機
22:出力軸(出力回転部材)
24:第1遊星歯車装置
26、82、94、114、124:第2遊星歯車装置
28、88、98、116、126:第3遊星歯車装置
30、90、100、118、128:第4遊星歯車装置
38:駆動輪
M1:第1電動機
M2:第2電動機
C0:切換クッラッチ(差動状態切換装置)
B0:切換ブレーキ(差動状態切換装置)