JP2009096363A - 車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】変速部20の変速時に、その変速前後で動力伝達装置10の出力軸22上において略等パワーとなるように、変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0をその変速部20の変速中に制御するものであることから、変速部20での変速動作が実行された際における動力伝達装置10からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置10全体としてのトータル変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。
【選択図】図10
【解決手段】変速部20の変速時に、その変速前後で動力伝達装置10の出力軸22上において略等パワーとなるように、変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0をその変速部20の変速中に制御するものであることから、変速部20での変速動作が実行された際における動力伝達装置10からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置10全体としてのトータル変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。
【選択図】図10
Description
本発明は、車両用動力伝達装置の制御装置に関し、特に、変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を抑制するための改良に関する。
電動機に連結された回転要素を備えてその電動機の運転状態が制御されることによりエンジンからの入力回転と出力回転の差動状態が制御される差動部と、その差動部から駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する変速部とを、備えた車両用動力伝達装置が知られている。斯かる動力伝達装置において、前記変速部の変速動作が実行された際に段階的なエンジン回転速度の変化を抑制し、上記動力伝達装置全体としての等パワー変速を実現する技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置がそれである。
ところで、前記変速部の変速前後ではその変速部における動力の伝達効率が変化することが一般に知られている。本発明者等は、変速部の変速動作に起因するドライバビリティを向上させるための研究の過程において、前記従来の技術のように、変速動作前後における伝達効率の変化を考慮しない場合、斯かる変速前後での伝達効率の変化に起因して等パワー変速を維持できずにパワー変化が発生して違和感が生じるという不具合を新たに発見した。そして、斯かる不具合を解消するために鋭意研究を継続した一結果として本発明を為すに至った。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、入力回転要素と出力回転要素との差動状態を制御するための差動部と、その差動部から駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の制御装置であって、前記変速部の変速時に、その変速前後で動力伝達装置の出力軸上において略等パワーとなるように、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の変化に基づいて、その変速部に入力される駆動力源トルクをその変速部の変速中に制御することを特徴とするものである。
このようにすれば、入力回転要素と出力回転要素との差動状態を制御するための差動部と、その差動部から駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の制御装置において、前記変速部の変速時に、その変速前後で動力伝達装置の出力軸上において略等パワーとなるように、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の変化に基づいて、その変速部に入力される駆動力源トルクをその変速部の変速中に制御するものであることから、前記変速部の変速動作が実行された際における前記動力伝達装置からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置全体としての等パワー変速を実現することができる。すなわち、変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を抑制する車両用動力伝達装置の制御装置を提供することができる。
ここで、好適には、前記駆動力源トルクとして、前記差動部の入力回転要素に動力伝達可能に連結されたエンジンの出力トルクを制御するものである。このようにすれば、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の変化に基づいて、その変速部に入力される駆動力源トルクを実用的な態様で制御することができる。
また、好適には、前記駆動力源トルクとして、前記差動部の出力回転要素に動力伝達可能に連結された電動機の出力トルクを制御するものである。このようにすれば、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の変化に基づいて、その変速部に入力される駆動力源トルクを実用的な態様で制御することができる。
また、好適には、予め定められた関係から、前記変速部の変速前後でのその変速部からの出力変化に基づいて、前記駆動力源トルクの制御量を補正するものである。このようにすれば、前記変速部に入力される駆動力源トルクを更にきめ細かに制御することができ、その変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を更に好適に抑制することができる。
また、好適には、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の相違に対応する出力トルクの変化幅以上となるように、前記駆動力源トルクの制御量を変速の種類に応じて補正するものである。このようにすれば、前記変速部に入力される駆動力源トルクを更にきめ細かに制御することができ、その変速部の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を更に好適に抑制することができる。
また、好適には、前記変速部のアップ変速動作に際して、その変速部に入力される前記駆動力源トルクを制御するものである。このようにすれば、前記動力伝達装置からの出力がドライバビリティの悪化の要因となるおそれがあるアップ変速動作においてその動力伝達装置からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置全体としての等パワー変速を実現することができる。
また、好適には、前記変速部は有段式の自動変速機である。このようにすれば、実用的な自動変速部を備えた動力伝達装置に関して、その動力伝達装置全体としての等パワー変速を実現することができる。
また、好適には、前記差動部は、遊星歯車装置及び2つの電動機を備え、電気的な無段変速機として機能するものである。このようにすれば、実用的な差動部を備えた動力伝達装置に関して、その動力伝達装置全体としての等パワー変速を実現することができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図である。この動力伝達装置10は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられる縦置き型の駆動機構であり、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、単にケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力軸14と、その入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパ(振動減衰装置)等を介して間接に連結された差動部16と、その差動部16と出力軸22との間で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結された有段式自動変速機としての変速部20と、その変速部20に連結された出力軸22とを、直列に備えて構成されている。この動力伝達装置10は、走行用の駆動力源(主動力源)であるエンジン8と一対の駆動輪38(図5を参照)との間に設けられて、そのエンジン8から出力される動力を駆動装置の他の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)36及び一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。なお、上記動力伝達装置10は、その軸心に対して略対称的に構成されているため、図1においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
前記エンジン8は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、前記差動部16は、第1電動機M1の出力と、前記入力軸14に入力されたエンジン8の出力とを機械的に合成し或いは分配する機械的機構であって、前記エンジン8に連結された入力回転要素としての第1回転要素RE1と、上記第1電動機M1に連結された第2回転要素RE2と、出力回転要素としての第3回転要素RE3とを、備え、上記第1電動機M1の運転状態が制御されることにより入力回転要素(第1回転要素RE1)と出力回転要素(第3回転要素RE3)との差動状態、すなわち入力回転速度と出力回転速度との差動状態が制御される動力分配装置34を構成している。また、前記伝達部材18すなわち出力回転要素としての第3回転要素RE3と一体的に回転するように設けらた第2電動機M2を備えている。なお、この第2電動機M2は、前記伝達部材18から出力軸22までの間の何れの部分に設けられてもよい。また、本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は、好適には、何れも原動機(駆動力源)としての機能及び発電機としての機能を併せ持つ所謂モータジェネレータであるが、上記第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電機)としての機能を少なくとも備え、上記第2電動機M2は駆動力を出力するためのモータ(原動機)としての機能を少なくとも備えたものである。
上記動力分配装置34は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、切換クラッチC0と、切換ブレーキB0とを、主体的に備えて構成されている。上記第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転及び公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えており、第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
前記動力分配装置34において、第1回転要素RE1としての第1キャリヤCA1は、前記入力軸14すなわちエンジン8の出力軸に連結されている。また、第2回転要素RE2としての第1サンギヤS1は、上記第1電動機M1の回転子(ロータ)に連結されている。また、この第1電動機M1の固定子(ステータ)は、上記ケース12に固定されている。また、第3回転要素RE3としての第1リングギヤR1は、上記伝達部材18に連結されている。また、上記切換ブレーキB0は、上記ケース12と第1サンギヤS1との間に設けられており、そのケース12と第2回転要素RE2である第1サンギヤS1とを選択的に連結する。また、上記切換クラッチC0は、上記第1キャリヤCA1と第1サンギヤS1との間に設けられており、第1回転要素RE1である第1キャリヤCA1と第2回転要素RE2である第1サンギヤS1とを選択的に連結する。上記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0が解放されると、上記第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、及び第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能な差動作用が働く差動状態とされることから、前記エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されると共に、分配された前記エンジン8の出力の一部により前記第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり、前記第2電動機M2が回転駆動されたりするので、例えば所謂無段変速状態(電気的CVT状態)が成立させられ、前記エンジン8の所定回転に拘わらず前記伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、前記差動部16が、その変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。
前記差動部16が無段変速状態である場合に、前記エンジン8の出力による車両走行中に前記切換クラッチC0が係合させられて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に係合させられると、上記第1遊星歯車装置24の3要素S1、CA1、R1が一体回転させられる非差動状態とされることから、前記エンジン8の回転と前記伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、前記差動部16は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態とされる。また、前記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて第1サンギヤS1が非回転状態とされる非差動状態とされると、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、前記差動部16は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態とされる。
前記変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、及びシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備えて構成されている。上記第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転及び公転可能に支持する第2キャリヤCA2、及び第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。上記第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転及び公転可能に支持する第3キャリヤCA3、及び第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。上記第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転及び公転可能に支持する第4キャリヤCA4、及び第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
前記変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して前記伝達部材18に選択的に連結されると共に第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結されるようになっている。また、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介して前記ケース12に選択的に連結されるようになっている。また、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介して前記ケース12に選択的に連結されるようになっている。また、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて前記出力軸22に連結されている。また、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して前記伝達部材18に選択的に連結されるようになっている。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2(以下、特に区別しない場合には単にクラッチCという)、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、及び第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合には単にブレーキBという)は、好適には、従来よく知られた油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本又は2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキ等により構成されている。前記動力伝達装置10においては、上記クラッチC又はブレーキBが介装されている両側の部材を選択的に連結することによりそれらの部材の相対的な回転を不能或いは可能とし、前記動力伝達装置10において所定の変速段(変速比)を成立させる。
図2は、前記動力伝達装置10が無段或いは有段変速作動させられる場合における変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。上述のように構成された動力伝達装置10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、上記クラッチC及びブレーキBが選択的に係合作動させられることにより、前進ギヤ段としての第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)の何れか或いは後進ギヤ段或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力歯車回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。また、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、前記差動部16は前述したように無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。従って、前記動力伝達装置10では、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた前記差動部16及び前記変速部20により有段変速機として作動する有段変速状態が構成される一方、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた前記差動部16及び変速部20により電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。換言すれば、前記動力伝達装置10は、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられる一方、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。
前記動力伝達装置10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、及び第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられる。また、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、及び第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられる。また、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、及び第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。また、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、及び第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、前記第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態においては、前記クラッチC及びブレーキBの何れもが解放されるか、或いは前記切換クラッチC0のみが係合される。
一方、前記動力伝達装置10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0及び切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、前記差動部16が無段変速機として機能し、それに直列に接続された前記変速部20が有段変速機として機能することにより、その変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対してその変速部20に入力される回転速度すなわち前記伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。従って、各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって前記動力伝達装置10全体としてのトータル変速比(総合変速比)γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する前記差動部16と有段変速部或いは第2変速部として機能する前記変速部20とから構成される前記動力伝達装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、横軸方向において各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの相対関係を示し、縦軸方向において相対的回転速度を示す二次元座標であり、3本の横軸のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち前記入力軸14に連結された前記エンジン8の回転速度NEを示し、横軸XGが前記伝達部材18の回転速度を示している。また、前記差動部16を構成する前記動力分配装置34の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は前記第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。すなわち、縦線Y1とY2との間隔を1に対応するとすると、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応するものとされる。さらに、前記変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。すなわち、図3に示すように、各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が1に対応するものとされ、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応するものとされる。
図3の共線図を用いて表現すれば、前記動力伝達装置10は、前記差動部16(動力分配装置34)において、前記第1遊星歯車装置24の3回転要素(要素)の1つである第1キャリヤCA1が前記入力軸14に連結されると共に前記切換クラッチC0を介して他の回転要素の1つである第1サンギヤS1と選択的に連結される。また、その他の回転要素の1つである第1サンギヤS1が前記第1電動機M1に連結されると共に前記切換ブレーキB0を介して前記ケース12に選択的に連結される。また、残りの回転要素である第1リングギヤR1が前記伝達部材18及び第2電動機M2に連結されて、前記入力軸14の回転を前記伝達部材18を介して前記変速部(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。例えば、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の解放により無段変速状態に切換えられたときは、前記第1電動機M1の発電による反力を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられ、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が下降或いは上昇させられる。また、前記切換クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、上記3回転要素が一体回転するロック状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で前記伝達部材18が回転させられる。また、前記切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1すなわち前記伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で前記変速部20へ入力される。
前記変速部20では、図3に示すように、前記第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、前記出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の前記出力軸22の回転速度が示される。同様に、前記第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と前記出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の前記出力軸22の回転速度が示される。また、前記第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と前記出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。また、前記第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と前記出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の前記出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、前記切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第8回転要素RE8に前記差動部16すなわち動力分配装置34からの動力が入力される。しかし、前記切換クラッチC0に替えて前記切換ブレーキB0が係合させられると、前記差動部16からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、及び切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と前記出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の前記出力軸22の回転速度が示される。
図4は、前記動力伝達装置10を制御するために備えられた電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより前記エンジン8の駆動制御や、そのエンジン8、第1電動機M1、及び第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御、或いは前記変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。また、この電子制御装置40には、RAM等の記憶部48(図5を参照)が備えられており、図6に示す変速線図や、後述する変速時駆動力源トルク制御に用いられるマップ等がその記憶部48に記憶されている。
図4に示すように、上記電子制御装置40には、各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションを表す信号、前記第1電動機M1の回転速度等の状態を示すM1レゾルバ信号、前記第2電動機M2の回転速度等の状態を示すM2レゾルバ信号、前記エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、M(モータ走行)モードを指令する信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、前記出力軸22の回転速度に対応する車速信号、前記変速部20の作動油温を示す油温信号、ETCスイッチからの信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、車両の重量を示す車重信号、前記出力軸22の軸心まわりのモーメントすなわち出力トルクTOUTを示す信号等が、それぞれ供給される。また、上記電子制御装置40からは、スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、前記エンジン8の点火時期を指令する点火信号、前記第1電動機M1の作動を指令するM1指令信号、前記第2電動機M2の作動を指令するM2指令信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、前記変速部20のライン圧を制御するためのソレノイド弁を制御するための信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、前記動力分配装置34や変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42(図5を参照)に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、その油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、前記動力伝達装置10を制御するために前記電子制御装置40に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5に示す切換制御手段50は、高車速判定手段52、高出力走行判定手段54、及び電気パス機能判定手段56を備えており、車両状態に基づいて前記動力伝達装置10を無段変速状態及び有段変速状態の何れかの状態に選択的に切り換える。また、ハイブリッド制御手段58は、前記動力伝達装置10の無段変速状態すなわち前記差動部16の無段変速状態において前記エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方、前記エンジン8と第1電動機M1及び/又は第2電動機M2との駆動力の配分を最適になるように変化させて前記差動部16の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。また、有段変速制御手段60は、例えば記憶部48に予め記憶された図7に示すような変速線図から車速V及びアクセル開度Acc等で示される車両状態に基づいて前記変速部20の変速すべき変速段を判断してその変速部20の自動変速制御を実行する。
上記高車速判定手段52は、車両の状態例えば実際の車速Vが高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1以上の高車速となったか否かを判定する。上記高出力走行判定手段54は、車両の状態例えば駆動力に関連する駆動力関連値例えば前記変速部20の出力トルクToutが高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1以上の高トルク(高駆動力)走行となったか否かを判定する。上記電気パス機能判定手段56は、前記動力伝達装置10を無段変速状態とするための車両状態例えば制御機器の機能低下が判定される故障判定条件の判定を、例えば前記第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわちその第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ44、蓄電装置46、及びそれらを接続する伝送路等の故障(フェイル)や低温による機能低下或いは機能不全の発生に基づいて判定する。
増速側ギヤ段判定手段62は、前記動力伝達装置10を有段変速状態とする際に前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて前記記憶部48に予め記憶された図7に示すような変速線図に従って前記動力伝達装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。これは、前記動力伝達装置10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合に、第1速乃至第4速では前記切換クラッチC0が係合させられ、或いは第5速では前記切換ブレーキB0が係合させられるようにするためである。
また、前記切換制御手段50は、前記高車速判定手段52による高車速判定、前記高出力走行判定手段54による高出力走行判定すなわち高トルク判定、前記電気パス機能判定手段56による電気パス機能不全の判定のうち少なくとも1つが判定されたことに基づいて、前記動力伝達装置10を有段変速状態に切り換える有段変速制御領域であると判定して、前記ハイブリッド制御手段58に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力すると共に、前記有段変速制御手段60に対しては、予め設定された有段変速時の変速制御を許可する。この際、前記有段変速制御手段60は、前記記憶部48に予め記憶された例えば図7に示すような変速線図に従って前記変速部20の自動変速制御を実行する。図2は、このときの変速制御において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。
前記高車速判定手段52による高車速判定、前記増速側ギヤ段判定手段62による第5速ギヤ段判定、或いは前記高出力走行判定手段54による高出力走行判定が行われた場合であっても、前記増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段が判定される場合には、前記動力伝達装置10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段を成立させるために前記切換制御手段50は前記差動部16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように前記切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を前記油圧制御回路42へ出力する。また、前記高出力走行判定手段54による高出力走行判定或いは前記増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、前記動力伝達装置10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段を成立させるために前記切換制御手段50は前記差動部16が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように前記切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を前記油圧制御回路42へ出力する。このように、前記切換制御手段50によって前記動力伝達装置10が有段変速状態に切り換えられると共に、その有段変速状態における2種類の変速段の何れかとなるように選択的に切り換えられて、前記差動部16が副変速機として機能させられ、それに直列に設けられた前記変速部20が有段変速機として機能することにより、前記動力伝達装置10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
また、前記切換制御手段50は、前記高車速判定手段52による高車速判定、前記高出力走行判定手段54による高出力走行判定、及び前記電気パス機能判定手段56による電気パス機能不全の判定の何れも判定されない場合には、前記動力伝達装置10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域であると判定して、前記動力伝達装置10全体として無段変速状態を成立させるために前記差動部16を無段変速状態として無段変速可能とするように前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0を解放させる指令を前記油圧制御回路42へ出力する。同時に、前記ハイブリッド制御手段58に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力すると共に、前記有段変速制御手段60には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは前記記憶部48に予め記憶された例えば図7に示すような変速線図に従って前記変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、前記有段変速制御手段60により、図2の係合表内において前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、前記切換制御手段50により無段変速状態に切り換えられた前記差動部16が無段変速機として機能し、それに直列に設けられた前記変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、前記変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその変速部20に入力される回転速度すなわち前記伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。従って、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって前記動力伝達装置10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
前記ハイブリッド制御手段58は、前記エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、そのエンジン8と第1電動機M1及び/又は第2電動機M2との駆動力の配分を最適になるように変化させる。例えば、そのときの走行車速において、アクセルペダル操作量や車速から運転者の要求出力を算出し、運転者の要求出力と充電要求値から必要な駆動力を算出し、前記エンジン8の回転速度とトータル出力とを算出し、そのトータル出力とエンジン回転速度NEとに基づいて、所定の出力を得るように前記エンジン8を制御すると共に前記第1電動機M1の発電量を制御する。また、前記ハイブリッド制御手段58は、その制御を前記変速部20の変速段を考慮して実行したり、或いは燃費向上等のために前記変速部20に対する変速指令を行う。斯かるハイブリッド制御では、前記エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速V及び前記変速部20の変速段で定まる前記伝達部材18の回転速度とを整合させるために、前記差動部16が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、前記ハイブリッド制御手段58は、無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立した予め記憶された最適燃費率曲線に沿って前記エンジン8が作動させられるように前記動力伝達装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように前記差動部16の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
上記のように、前記ハイブリッド制御手段58は、前記第1電動機M1により発電された電気エネルギを前記インバータ44を通して前記蓄電装置46や第2電動機M2へ供給するので、前記エンジン8の動力の主要部は機械的に前記伝達部材18へ伝達される他、そのエンジン8の動力の一部は前記第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、前記インバータ44を通して電気エネルギの形で第2電動機M2或いは第1電動機M1へ供給され、その第2電動機M2或いは第1電動機M1から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、前記エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。また、前記ハイブリッド制御手段58は、前記エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、前記差動部16の電気的CVT機能によって車両をモータ走行させることができる。更に、前記ハイブリッド制御手段58は、前記エンジン8の停止状態において前記差動部16が有段変速状態(定変速状態)であっても前記第1電動機M1及び/又は第2電動機M2を作動させて車両をモータ走行させることもできる。
図6は、前記動力伝達装置10において、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー72を備えた手動変速操作装置であるシフト操作装置70の構成を例示する図である。このシフト操作装置70は、例えば運転席の横に配設されており、上記シフトレバー72は、例えば図2の係合作動表に示されるように、前記変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つその変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、前記動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、又は前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションは、「P」ポジション及び「N」ポジションは車両を走行させないときに選択される非走行ポジションすなわち車両を駆動不能な非駆動ポジションであり、「R」ポジション、「D」ポジション及び「M」ポジションの各走行ポジションは例えば図2の係合作動表に示されるように前記クラッチC1及びクラッチC2の少なくとも一方が係合されるような車両を駆動可能な駆動ポジションでもある。また、「D」ポジションは最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「4」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、上記シフトレバー72が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがそのシフトレバー72の操作に応じて選択される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、及びダウンシフト位置「−」が設けられており、上記シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「+」又はダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかが選択される。例えば、「M」ポジションにおいて選択される「D」レンジ乃至「L」レンジの5つの変速レンジは、前記動力伝達装置10の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また、前記変速部20の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。また、上記シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」及びダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。
図7は、前記変速部20の変速判断を行うために前記記憶部48に予め記憶された変速線図の一例である。前記有段変速制御手段60は、例えばこの図7に示すような車速Vとアクセル開度Accとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)及びダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(マップ)から、実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて、前記変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわちその変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように前記変速部20の自動変速制御を実行する。具体的には、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、前記変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合及び/又は解放させる指令(油圧指令)を前記油圧制御回路42へ出力する。その油圧制御回路42では、そのようにして出力される指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して前記変速部20の変速が実行されるようにリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。また、前記記憶部48には、図7に示すように、走行用の駆動力源を前記エンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係が予め定められて記憶されており、前記ハイブリッド制御手段58は、そのように前記記憶部48に記憶された関係から、実際の車速V及びアクセル開度Accで示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図7から明らかなように、前記ハイブリッド制御手段58によるモータ走行制御は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
図5に戻って、前記ハイブリッド制御手段58は、前記変速部20の変速動作に際して、前記動力伝達装置10全体としての変速比すなわち前記トータル変速比γTが連続的に変化するように前記差動部16の差動状態を制御する。換言すれば、前記変速部20の変速動作に際して、前記動力伝達装置10のトータル変速比γTが段階的(飛び飛びの値をとる)変化とならないように前記差動部16の変速比γ0を制御するのである。例えば、図8に示す曲線P1、P2、P3はそれぞれ前記エンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aは必要なエンジン出力P2を発生する際に前記エンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定される前記エンジン8の動作点すなわちそのエンジン8の駆動状態の一例である。前記ハイブリッド制御手段58は、前記変速部20の変速前後で、この点Aに示されるような前記エンジン8の動作点が変化しないか、等パワー線上に位置するように、すなわち前記エンジン8の動作点が最適燃費率曲線に沿い且つ等パワーが維持されるように、前記差動部16における変速比γ0を制御する所謂等パワー変速を実行する。より具体的には、前記ハイブリッド制御手段58は、前記変速部20の変速中において、前記出力軸22からの出力トルクTOUTが略一定となるようにスロットル制御を実行すると共に、エンジン回転速度NEを略一定に維持するように前記変速部20の変速に伴う前記第2電動機M2の回転速度の変化とは反対方向に前記第1電動機M1の回転速度を変化させる。
また、前記ハイブリッド制御手段58は、前記変速部20の変速時に、その変速前後で前記動力伝達装置10の出力軸22上において略等パワーとなるように、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0をその変速部20の変速中に制御する。換言すれば、前記変速部20の変速動作に際して、予め定められた関係から、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化に基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0を制御する。この駆動力源トルクT0とは、前記動力伝達装置10による伝達に係る総トルクすなわち駆動力源からその動力伝達装置10に入力される総トルク(トータルトルク)であり、具体的には、前記エンジン8の出力トルクTE及び第2電動機M2の出力トルクTM2の合算値である。すなわち、前記ハイブリッド制御手段58は、好適には、前記駆動力源トルクとして、前記差動部16の入力回転要素である第1回転要素RE1に動力伝達可能に連結された前記エンジン8の出力トルクTE及びその差動部16の出力回転要素である第3回転要素RE3に動力伝達可能に連結された前記第2電動機M2の出力トルクTM2の少なくとも一方を制御する。すなわち、前記ハイブリッド制御手段58は、換言すれば、前記変速部20の変速動作に際して、予め定められた関係から、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化に基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0を制御する駆動力源トルク制御手段として機能する。
駆動力源トルク制御手段としての前記ハイブリッド制御手段58は、具体的には、例えば前記記憶部48等に記憶された関係から、前記変速部20の変速動作に応じてその変速部20に入力される駆動力源トルクT0を制御する。このために、前記記憶部48には、予め実験的に求められた、前記変速部20における各変速段の変速動作に対応するその変速部20における動力伝達効率ηの変化がマップとして記憶されている。すなわち、前記変速部20が第1速から第2速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη1-2(第2速から第1速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη2-1)、第2速から第3速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη2-3(第3速から第2速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη3-2)、第3速から第4速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη3-4(第4速から第3速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη4-3)、第4速から第5速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη4-5(第5速から第4速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη5-4)がそれぞれ記憶されている。前記ハイブリッド制御手段58は、前記変速部20による変速動作が行われた場合、すなわち前記有段変速制御手段60から前記変速部20における変速動作を実行するための変速指令が出力された場合、その変速動作に対応する前記変速部20の動力伝達効率の変化Δηを前記記憶部48から読み出し、その読み出された動力伝達効率の変化Δηに基づいて、前記動力伝達装置10における等パワー変速が実現されるように前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を決定し、その制御量ΔT0に応じて前記駆動力源トルクT0を制御する。
前記ハイブリッド制御手段58は、例えば、前記変速部20の変速動作に応じてその変速部20における動力伝達効率ηが上昇する場合(動力伝達効率の変化Δηがプラスである場合)には、前記出力軸22における出力変化が可及的に小さくなるようにその上昇分に対応して前記駆動力源トルクT0を低下させる。すなわち、この場合には駆動力源トルクの制御量ΔT0はマイナスの値となる。また、前記変速部20の変速動作に応じてその変速部20における動力伝達効率ηが低下する場合(動力伝達効率の変化Δηがマイナスである場合)には、前記出力軸22における出力変化が可及的に小さくなるようにその低下分に対応して前記駆動力源トルクT0を上昇させる。すなわち、この場合には駆動力源トルクの制御量ΔT0はプラスの値となる。上述のように、斯かる駆動力源トルクT0の制御は、具体的には、前記エンジン8の出力トルクTE及び/又は第2電動機M2の出力トルクTM2を制御することにより実現されるが、それらの制御の他に前記第1電動機M1の反力による制御を併せて行ってもよい。
なお、前記動力伝達装置10からの出力の変動に関しては、特に出力の増加がドライバビリティの悪化の要因となることから、前記ハイブリッド制御手段58は、少なくとも前記変速部20の変速動作に応じてその変速部20における動力伝達効率ηが上昇する場合に前記駆動力源トルクT0を低下させる制御を行う。また、一般的に、変速部のアップシフトに応じてその変速部における動力伝達効率ηが上昇するものであることから、前記ハイブリッド制御手段58は、好適には、少なくとも前記変速部20のアップ変速動作(アップシフト)に際して、その変速前後での動力伝達効率ηの変化に基づいて前記駆動力源トルクT0の制御を行う。
また、前記ハイブリッド制御手段58は、好適には、予め定められた関係から、前記変速部20の変速前後でのその変速部20からの出力変化に基づいて、前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を補正する。更に好適には、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの相違に対応する出力トルクの変化幅以上となるように、前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を変速の種類に応じて補正する。斯かる制御のために、前記電子制御装置40には上乗せ補正量決定手段64が機能的に備えられており、この上乗せ補正量決定手段64は、前記ハイブリッド制御手段58による前記駆動力源トルクT0の制御に関して、その駆動力源トルクT0の制御量ΔT0の補正量を決定する。この変速の種類とは、第1速から第2速への変速、第2速から第3速への変速、第3速から第4速への変速等、変速前後における変速段の種類に係るものであり、具体的には、アップシフト時に前記変速部20からの出力を減少させるように、ダウンシフト時にその出力を増加させるように補正を行う。換言すれば、前記変速部20の変速前後で運転者が違和感を感じない方向へ補正する。アップシフト時には出力が増加(加速)する方が違和感が大きくなるため、前記変速部20の出力を若干減少方向とする補正を行うのである。
前述のように、本実施例のハイブリッド制御手段58は、前記変速部20の変速動作に際して、前記動力伝達装置10のトータル変速比γTが連続的に変化するように等パワー変速制御を行うものであるが、前記出力軸22からの出力が増加することはドライバビリティを悪化させる要因となるため、その出力軸22からの出力トルクTOUTが所定値以下となるように制御する。上記上乗せ補正量決定手段64は、前記出力軸22の出力トルクTOUTが斯かる所定値以下となるように前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0の補正量を決定するものであり、換言すれば、前記ハイブリッド制御手段58は、前記出力軸22の出力トルクTOUTが斯かる所定値以下となるように前記駆動力源トルクT0のフィードバック制御を行う。一方、前記ハイブリッド制御手段58は、前述のように基本的には等パワー変速を実現するように制御を行うものであるが、最低限で見て、フィーリングが悪化する前記出力軸22上で出力が増加することを避けるため、前記駆動力源トルクT0を余分に補償する。この場合には、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの相違に対応する出力トルクの変化幅以上となるように、前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を補正し、これにより、前記変速部20の変速動作前後において、若干の出力減少乃至は出力増加が発生する。なお、斯かるフィードバック制御の結果(補正値)を前記記憶部48に記憶しておき、次回以降の制御においてはその記憶された値に基づいて制御を行うものであってもよい。また、前記出力軸22のトルクTOUTは、好適には前述した出力トルクセンサにより検出(実測)されるものであるが、その出力軸22の回転速度の変化率(回転角加速度)等から算出されるものであってもよい。
図9は、前記変速部20の変速動作に際しての前記ハイブリッド制御手段58による駆動力源トルク制御を説明するためのタイムチャートである。この図9に示す制御は、前記差動部16が電気的な無段変速機として機能している場合の制御であり、前記変速部20の変速動作の前後でエンジン回転速度NEは略一定に維持される。すなわち、電気的無段変速機としての前記差動部16が逆に同期変速して補償する。図9に示す例では、時点t1において、前記変速部20を第2速から第3速へ切り換える変速動作が判断される。ここで、前記変速部20における動力伝達効率ηは、第2速から第3速へ切り換えにより上昇するものとする。すなわち、第2速から第3速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη2-3はプラスの値である。次に、時点t2において、前記変速部20を第2速から第3速へ切り換える変速が出力され、前記油圧制御回路42における斯かる変速動作に関連するソレノイド弁に油圧指令値が出力される。この時点t2における変速出力以降、時点t3において変速動作が終了するまでの間、前記変速部20の入力回転速度は漸減させられる。また、前記第2電動機M2の回転速度が漸減させられると共に、前記第1電動機M1の回転速度が漸増させられる。また、上述のように、第2速から第3速へ切り替わる際の動力伝達効率の変化Δη2-3がプラスの値である場合、時点t2における変速出力以降、前記エンジン8の出力トルクTEがその変化Δη2-3に応じて低下させられる。すなわち、図9に示す制御では、前記駆動力源トルクT0として前記エンジン8の出力トルクTEを制御している。これにより、前記出力軸22の回転速度に対応する車速Vは前記変速部20における第2速から第3速への変速に際して変化せず、等パワー変速を実現してドライバビリティの悪化を抑制することができる。なお、図9では、駆動力源トルクT0の制御を行わない従来の制御におけるエンジントルクTEを一点鎖線で示しているが、前記変速部20の変速動作によってその変速部20の動力伝達効率ηが増加した場合においてエンジントルクTEに変化がないと、前記出力軸22から出力されるトルクが変速に前後して変化(増加)してドライバビリティが悪化するのである。
図10は、前記電子制御装置40による変速時駆動力源トルク制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、図7に示すようなマップから車速Vやアクセル開度Acc等の車両状態に基づいて前記変速部20における変速が行われるか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、S8において、その他の制御が実行された後、本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、S1にて判定された変速動作がアップシフトであるか否かが判断される。このS2の判断が否定される場合には、S8以下の処理が実行されるが、S2の判断が肯定される場合には、S3において、S1にて判定された変速動作に対応する前記変速部20における動力伝達効率の変化Δηが前記記憶部48から読み出され、その動力伝達効率の変化Δηに対応する駆動力源トルクT0の制御量(調整量)ΔT0が決定される。次に、S4において、S3にて決定された駆動力源トルクT0の制御量ΔT0の上乗せ補正量が決定される。次に、S5において、前記変速部20においてS1にて判定された変速動作が実行されると共に、S3及びS4にて決定された駆動力源トルクT0に基づいて前記エンジン8の出力トルクTE及び/又は第2電動機M2の出力トルクTM2が制御される。次に、S6において、アウトプットトルクすなわち前記出力軸22から出力されるトルクTOUTが増加したか否かが判断される。このS6の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S6の判断が肯定される場合には、S7において、次回の制御における上乗せ補正量を増加させるようにその値が前記記憶部48に記憶された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1及びS2が前記有段変速制御手段60の動作に、S3乃至S5が駆動力源トルク制御手段としての前記ハイブリッド制御手段58の動作に、S4、S6、及びS7が前記上乗せ補正量決定手段64の動作にそれぞれ対応する。
このように、本実施例によれば、入力回転要素である第1回転要素RE1と出力回転要素である第3回転要素RE3との差動状態を制御するための差動部16と、その差動部16から駆動輪38への動力伝達経路の一部を構成する変速部20とを、備えた車両用動力伝達装置10の制御装置において、前記変速部20の変速時に、その変速前後で動力伝達装置10の出力軸22上において略等パワーとなるように、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0をその変速部20の変速中に制御するものであることから、その変速部20の変速動作が実行された際における前記動力伝達装置10からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置10全体としてのトータル変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。すなわち、前記変速部20の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を抑制する車両用動力伝達装置10の制御装置を提供することができる。
また、前記駆動力源トルクT0として、前記差動部16の入力回転要素である第1回転要素RE1に動力伝達可能に連結されたエンジン8の出力トルクTEを制御するものであるため、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0を実用的な態様で制御することができる。
また、前記駆動力源トルクT0として、前記差動部16の出力回転要素である第3回転要素RE3に動力伝達可能に連結された第2電動機M2の出力トルクTM2を制御するものであるため、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0を実用的な態様で制御することができる。
また、予め定められた関係から、前記変速部20の変速前後でのその変速部20からの出力変化に基づいて、前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を補正するものであるため、前記変速部20に入力される駆動力源トルクT0を更にきめ細かに制御することができ、その変速部20の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を更に好適に抑制することができる。
また、前記変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの相違に対応する出力トルクの変化幅以上となるように、前記駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を変速の種類に応じて補正するものであるため、前記変速部20に入力される駆動力源トルクT0を更にきめ細かに制御することができ、その変速部20の変速動作に起因するドライバビリティの悪化を更に好適に抑制することができる。
また、前記変速部20のアップ変速動作に際して、その変速部20に入力される前記駆動力源トルクT0を制御するものであるため、前記動力伝達装置10からの出力がドライバビリティの悪化の要因となるおそれがあるアップ変速動作においてその動力伝達装置10からの出力の変動を抑制し、その動力伝達装置10全体としての変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。
また、前記変速部20は有段式の自動変速機であるため、実用的な自動変速部を備えた動力伝達装置10に関して、その動力伝達装置10全体としての変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。
また、前記差動部16は、第1遊星歯車装置24、第1電動機M1、及び第2電動機M2を備え、電気的な無段変速機として機能するものであるため、実用的な差動部16を備えた動力伝達装置10に関して、その動力伝達装置10全体としての変速比γTを連続的に変化させて等パワー変速を実現することができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例では、前記差動部16が差動状態と非差動状態とに切り換えられることで電気的な無段変速機として機能する無段変速状態と有段変速機として機能する有段変速状態とに切り換えられる動力伝達装置10に本発明が適用された例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記動力分配装置34が切換クラッチC0及び切換ブレーキB0を備えず電気的な無段変速機としてのみ機能させられる構成にも本発明は好適に適用される。また、前記切換クラッチC0及び切換ブレーキB0の何れか一方のみを備えた動力伝達装置に本発明が適用されても当然に構わない。
また、前述の実施例では、予め実験的に求められた前記変速部20における各変速段の変速動作に対応するその変速部20における動力伝達効率ηの変化Δηが前記記憶部48にマップとして記憶されており、前記変速部20の変速動作に際してその変速動作に対応する動力伝達効率ηの変化Δηを前記記憶部48から読み出して駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を決定する制御を説明したが、上記動力伝達効率ηの変化Δηに相当する駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を予め算出して前記記憶部48に記憶しておき、前記変速部20の変速動作に際してその変速動作に対応する駆動力源トルクT0の制御量ΔT0を前記記憶部48から読み出して制御を行うものであってもよい。更には、各駆動力源トルクT0の制御量ΔT0に相当するスロットル弁開度の変化量等を前記記憶部48に記憶しておき、その変化量を読み出して制御を行う態様も考えられる。このように、前記変速部20の変速動作に際して、予め定められた関係から、実質的にその変速部20の変速前後での動力伝達効率ηの変化Δηに基づいて、その変速部20に入力される駆動力源トルクT0を制御し得るものであれば、制御の態様は問わない。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
8:エンジン
10:車両用動力伝達装置
16:差動部
20:変速部
22:出力軸
38:駆動輪
M2:第2電動機
RE1:第1回転要素(入力回転要素)
RE3:第3回転要素(出力回転要素)
10:車両用動力伝達装置
16:差動部
20:変速部
22:出力軸
38:駆動輪
M2:第2電動機
RE1:第1回転要素(入力回転要素)
RE3:第3回転要素(出力回転要素)
Claims (5)
- 入力回転要素と出力回転要素との差動状態を制御するための差動部と、該差動部から駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する変速部とを、備えた車両用動力伝達装置の制御装置であって、
前記変速部の変速時に、該変速前後で動力伝達装置の出力軸上において略等パワーとなるように、前記変速部の変速前後での動力伝達効率の変化に基づいて、該変速部に入力される駆動力源トルクを該変速部の変速中に制御することを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。 - 前記駆動力源トルクとして、前記差動部の入力回転要素に動力伝達可能に連結されたエンジンの出力トルクを制御するものである請求項1に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記駆動力源トルクとして、前記差動部の出力回転要素に動力伝達可能に連結された電動機の出力トルクを制御するものである請求項1又は2に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 予め定められた関係から、前記変速部の変速前後での該変速部からの出力変化に基づいて、前記駆動力源トルクの制御量を補正するものである請求項1から3の何れか1に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
- 前記変速部の変速前後での動力伝達効率の相違に対応する出力トルクの変化幅以上となるように、前記駆動力源トルクの制御量を変速の種類に応じて補正するものである請求項4に記載の車両用動力伝達装置の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007270530A JP2009096363A (ja) | 2007-10-17 | 2007-10-17 | 車両用動力伝達装置の制御装置 |
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Family Applications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012042591A1 (ja) * | 2010-09-27 | 2012-04-05 | トヨタ自動車株式会社 | ハイブリッド車両の制御装置 |
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-
2007
- 2007-10-17 JP JP2007270530A patent/JP2009096363A/ja active Pending
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