JP4218335B2 - 薄膜磁気ヘッド用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードディスクドライブ装置の薄膜磁気ヘッドスライダーに用いられる薄膜磁気ヘッド用基板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通信・情報技術分野の発展に伴って、コンピュータで扱える情報量が飛躍的に増大してきている。特に、従来ではアナログ信号としてのみ扱うことが可能であった音声や音楽、画像などの情報もデジタル信号に変換してパーソナルコンピュータで処理できるようになってきている。このような音楽や画像などのマルチメディアデータは、多くの情報を含むため、パーソナルコンピュータなどに用いられる情報記録装置の容量を大きくすることが求められている。
【0003】
ハードディスクドライブ装置は、パーソナルコンピュータなどに従来より用いられている典型的な情報記録装置である。上述した要求に応えるため、ハードディスクドライブの容量をより大きくし、また、装置を小型化することが求められている。
【0004】
図7は従来のハードディスクドライブ装置の薄膜磁気ヘッドスライダー部分の断面を模式的に示している。図に示すように、ジンバル10により保持された、基板12の側面にはアンダーコート膜13が形成されている。アンダーコート膜13上には、記録および再生ヘッドである読み込み・書き込み素子14’が設けられている。通常ジンバル10によって保持される基板12および読み込み・書き込み素子14’を含むユニットをヘッドスライダー、あるいは単にスライダーと呼ぶ。
【0005】
読み込み・書き込み素子14’は、磁性材料から形成されており、リングの一部が切り取られた形状をしている。リングの内部にコイル15が巻かれており、記録信号をコイル15に与えることによって読み込み・書き込み素子14’に磁界が発生し、磁気記録媒体17にデータを書き込む。また、磁気記録媒体17に記録されている磁場の変化を電気信号に変換する。
【0006】
図8は、従来の他の薄膜磁気ヘッドスライダーを示している。図8の薄膜磁気ヘッドスライダーでは読み込みの性能を向上させるために、記録ヘッドと再生ヘッドとを分離している。書き込み素子14は、図7における読み込み・書き込み素子14’と同様の構造を備えており、磁気記録媒体17へのデータの書き込みのみを行う。
【0007】
一方、再生ヘッドである読み込み素子16は、磁場の変化を電気抵抗の変化に変換する磁気抵抗効果素子(MR、あるいはGMR)であり、磁気記録媒体17に記録されている磁気の変化を読み取って、電気信号に変換する。
【0008】
読み込み・書き込み素子14’ならびに書き込み素子14および読み込み素子16を保持する基板12は、従来よりAl2O3−TiC系のセラミックス焼結体から形成されている。これは、熱特性、機械特性、および加工性の点で、Al2O3−TiC(以下AlTiCと略す)がバランス良く優れているためである。しかし、AlTiCは、電気的に良導体であるため、読み込み・書き込み素子14’や書き込み素子14をそのような導体に接するように配置すると、読み込み・書き込み素子14’や書き込み素子14が短絡されてしまい、正しく動作しない。また、AlTiCからなる基板は、その表面にポアを有しており、表面の平滑性があまりよくなかった。このため、読み込み・書き込み素子14’や書き込み素子14と基板12との間の絶縁を高め、基板12の表面を滑らかなものにするために、Al2O3から形成されるアンダーコート膜13が基板12の側面上に設けられていた。Al2O3は、絶縁特性に優れ、また、表面の平滑性に優れるからである。
【0009】
近年、ハードディスクドライブ装置の記録密度を更に高め、装置をより小型化することが求められるなかで、スライダーの構造が従来とは異なるものが提案されている。提案されている構造では、図9(a)に示すように、書き込み素子14および読み込み素子16の配置が入れ替わっている。つまり、アンダーコート膜13に隣接して、まず、読み込み素子16が配置され、書き込み素子14は基板12から離れて配置される。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−151736号公報
【特許文献2】
特開平5−166309号公報
【特許文献3】
米国特許第5670253号明細書
【特許文献4】
特許第1899891号明細書
【特許文献5】
米国特許第4769127号明細書
【特許文献6】
特許第1659501号明細書
【特許文献7】
米国特許第4814915号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、提案されている新しい構造のスライダーを備えたハードディスクドライブを実現するためには種々の解決すべき問題がある。
【0012】
まず、ハードディスクドライブ装置の小型化が求められるにつれ、スライダーのサイズもより小さくする必要がある。このためには、図9(b)に示すように、書き込み素子14のコイル15が占める面積を小さくしなければならない。具体的には、コイル15の内径を小さくし、また、巻き線もできるだけ重ならないようにしなければならない。しかし、このようにコイルの面積を小さくすると、端子18を介してコイル15に電流が流れたとき、単位面積あたりに発生する熱量が大きくなってしまう。
【0013】
ところが、従来からアンダーコート膜13に用いられていたAl2O3は熱伝導性があまりよくない。このため、コイル15に信号を流すことにより発生した熱が、Al2O3からなるアンダーコート膜13に遮られて、基板12へ十分拡散されず、読み込み素子16や書き込み素子14に蓄積されてしまう。その結果、読み込み素子16や書き込み素子14が熱による膨張を起こし、図9(a)に矢印で示すように、磁気記録媒体17側へ飛び出してしまう。読み込み素子16や書き込み素子14と磁気記録媒体17との間隔は10nm程度しかないため、膨張を起こした読み込み素子16や書き込み素子14は、磁気記録媒体17と接触してしまう。
【0014】
この問題は、TPTR(Thermal Pole Tip Recession)と呼ばれ、読み込み素子16あるいは書き込み素子14と磁気記録媒体との物理的な接触によって、磁気記録媒体に損傷を与えたり、読み込み素子16や書き込み素子14自体が破壊してしまう。その結果、ハードディスクドライブ装置が機能しなくなってしまうという重大な故障をもたらす。
【0015】
また、読み込み素子16および書き込み素子14が磁気記録媒体17と接触しない場合であっても、読み込み素子16および書き込み素子14の熱膨張により、磁気記録媒体17と読み込み素子16および書き込み素子14との間隔が変化してしまう。たとえば、読み込み素子16および書き込み素子14が数ナノメートル膨張すると、磁気記録媒体17と読み込み素子16および書き込み素子14との間隔は10%以上変化する。このため、書き込み特性および読み込み特性が大きく変化し、磁気記録媒体へ書き込まれる信号や磁気記録媒体から読み込まれる信号に誤りが生じる可能性がある。
【0016】
この問題を解決するために、アンダーコート膜13の厚みを小さくし、基板12へ熱を逃がしやすくすることが考えられる。しかし、この場合、基板12の表面に生じているポアの影響が顕著になってしまい、アンダーコート膜13を設ける目的が損なわれてしまう。
【0017】
次に、上述した理由により、読み込み素子16や書き込み素子14の外形が小さくなるにつれて、静電気による静電破壊が問題となってくる。特に、ハードディスクドライブ装置では磁気記録媒体が高速で回転するため、静電気が発生しやすくなっている。これに対して、読み込み素子16や書き込み素子14は、電気的に絶縁性の高いAl2O3からなるアンダーコート膜13上に形成されているため、読み込み素子16および書き込み素子14に静電気が蓄積されてしまう。このため、蓄積される静電気が所定の量を超えると、蓄積された静電気がいっきに放電されてしまい、読み込み素子16や書き込み素子14が破壊してしまうという問題がある。
【0018】
この問題に対しても、アンダーコート膜13の厚みを小さくし、アンダーコート膜13の絶縁性を低くすることが考えられる。しかし、そのような変更を行えば、蓄積した静電気が、アンダーコート膜13に隣接したAlTiCからなる基板12へ放電される可能性があり、その場合、アンダーコート膜13が絶縁破壊を起こしてしまう。
【0019】
本願発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、小型で高記録密度のハードディスクドライブ装置において、上記問題の発生を防ぎ、装置の信頼性の高めるために好適に用いられる薄膜磁気ヘッド用の基板およびその製造方法を提供する。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜磁気ヘッド用基板は、セラミックス基板とセラミックス基板に保持された非晶質SiCからなるアンダーコート膜とを備えている。
【0021】
好ましい実施形態において、前記アンダーコート膜の厚みは、0.1〜10μmである。前記アンダーコート膜のみの体積抵抗率は、1×10-1〜1×1015Ω・cmである。前記アンダーコート膜の表面の平均粗さは、1nm以下である。
【0022】
好ましい実施形態において前記非晶質SiCは、SiおよびCを主成分とし、Siが全体の20〜80原子%、Cが全体の20〜80原子%である。前記非晶質SiCは、さらにOを含んでいてもよく、その含有率は全体の5〜15原子%である。前記非晶質SiCは、さらにHおよび/またはArを含んでいてもよい。また、好ましい実施形態において、前記セラミックス基板の熱伝導率は、5W/mK以上である。前記セラミックス基板の体積抵抗率は、1×10-5〜1×109Ω・cmである。前記セラミックス基板の表面の平均粗さは、2.5nm以下である。前記セラミックス基板は、全体の24〜75mol%のα−Al2O3と、全体の2mol%以下の添加剤とを含むアルミナ系セラミックス材料が用いられる。残部は導電性、熱伝導性に富み、機械的強度がアルミナに比べて著しく低いものでなければよい。具体的には、前記アルミナ系セラミックス材料は、さらに全体の24〜75mol%の金属の炭化物または金属の炭酸窒化物を含む。
【0023】
本発明の薄膜磁気ヘッドスライダーは、上記いずれかの薄膜磁気ヘッド用基板と、前記薄膜磁気ヘッド用基板に保持された書き込み素子および読み込み素子とを備えている。また、本発明のハードディスクドライブ装置は、上記薄膜磁気ヘッドスライダーを備えている。
【0024】
本発明の薄膜磁気ヘッド用基板の製造方法は、セラミックス基板上に非晶質SiCからなるアンダーコート膜を物理的堆積法により形成する。
【0025】
好ましい実施形態において、前記セラミック基板を200〜800℃の温度で保持しながら前記アンダーコート膜を形成する。あるいは、前記セラミックス基板上に前記アンダーコート膜を形成後、前記アンダーコート膜を300〜800℃の温度で熱処理する。
【0026】
また、好ましい実施形態において、0.1〜0.6分圧比のArガス、0.1〜0.9分圧比の炭化水素ガス、0〜0.5分圧比の水素ガス、および0〜0.05分圧比の酸素ガスを含む雰囲気下において前記アンダーコート膜を形成する。 本発明の薄膜磁気ヘッドスライダーの製造方法は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板に保持された非晶質SiCからなるアンダーコート膜とを備えた、請求項1から15のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド用基板を用意する工程と、前記アンダーコート膜上に書き込み素子および読み取り素子を配置する工程とを包含する。
【0027】
【発明の実施の形態】
従来技術の問題点を解決するためには、絶縁破壊の防止に有効であり、かつ、熱伝導性に優れた材料を用いてアンダーコート膜を形成することが重要である。本願発明者がこの点について検討した結果、読み込み素子がアンダーコート膜に隣接する新しい構造のスライダーでは、アンダーコート膜が必ずしも高絶縁性を備えている必要がないことに気がついた。なぜなら、MRあるいはGMRなどの読み込み素子はその特性上、素子自体が絶縁構造になっているからである。したがって、絶縁破壊を防止するためには、アンダーコート膜に適度な導電性を与え、電荷が蓄積する前に、アンダーコート膜を介して基板へ電荷を逃がしてやることが重要である。また、従来の構造を備えたスライダーにおいても、ある程度の絶縁性は要求されるものの、アルミナほどの高い絶縁性は必要ないことが分かった。
【0028】
上記知見に基づいて種々の材料を検討した結果、本願発明者は、SiCが熱伝導性に優れる半導電性材料(適度な導電性を有する)として適当であることを見出した。SiCは、従来より、半導体材料あるいは、切削工具等のコーティング材料として知られており、単結晶や多結晶状態のものが主として用いられている。また、特許文献3には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって多結晶SiCを基板の上に形成し、薄膜磁気ヘッドに用いることが開示されている。
【0029】
しかし、本願発明者が種々の実験を行ったところ、単結晶や多結晶のSiCは脆性が高く、切断加工の際にクラックの発生が顕著にみられ、その結果、チッピングが多く見られることが分かった。切削によってSiC膜にチッピングが生じた基板を用い、薄膜磁気ヘッドスライダーを製造した場合、ハードディスクドライブ装置内で、更にチッピングが拡大し、SiCの破片が磁気記録媒体の上に落下したり、ハードディスクドライブ装置内に散乱する可能性がある。このような破片は、高速で回転する磁気記録媒体に対して微小な間隔で保持されている薄膜磁気ヘッドスライダーを備えたハードディスクドライブ装置に対して深刻な故障を引き起こすこととなる。
【0030】
そこで、本願発明者がさらに研究を行ったところ、SiCを非晶質構造に形成することによって、SiCの脆性を改善し、上記課題を解決しうる優れた薄膜磁気ヘッド用の基板を提供し得ることを発見した。しかも、非晶質構造をとっても、SiCは、上記課題を解決する上では十分な熱伝導性および適度な導電性を備えていることが分かった。
【0031】
なお、種々のスライダー構造により、SiC膜に要求される導電性(体積抵抗率)は異なるが、以下の方法によって所望の体積抵抗率に制御できることが分かった。すなわち、非晶質のSiC膜を形成する際の基板の加熱温度によって、SiC膜の体積抵抗率が変化すること、および、SiC膜形成後の熱処理によってもSiC膜の体積抵抗率を変えることができることを見出した。実験結果によれば、基板加熱温度あるいは熱処理温度が高くなるにしたがって、SiC膜の体積抵抗率も高くなる。この特徴を利用して、SiC膜の体積抵抗率を制御することが可能となる。さらに本願発明者は、非晶質SiC膜を形成する際の成膜雰囲気を制御し、SiC膜中に含まれる水素やアルゴンの量を変えることによって、体積抵抗率などのSiC膜の物性を調節できることが分かった。この方法によってもSiC膜の体積抵抗率を制御することが可能となる。
【0032】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、本発明の薄膜磁気ヘッド用基板は、セラミックス基板1とセラミックス基板1に保持されたアンダーコート膜2とを備えている。なお、図1に示す薄膜磁気ヘッド用基板をセラミックス基板1に対して垂直な方向に切断したチップが、図9(a)に示す基板12およびアンダーコート膜13として用いられる。
【0034】
セラミックス基板1を構成するセラミックスは、静電破壊を防ぐために、静電気が蓄積しないような範囲の体積抵抗率を備えていることが好ましい。具体的には、体積抵抗率は、1×109Ω・cm以下であることが好ましい。この値は、半導通材料と呼ばれる材料の体積抵抗率の上限値でもある。一方、静電気が蓄積しにくいという観点では、セラミックスの体積抵抗率は、低いほど好ましい。しかし、あまり体積抵抗率が低いと、セラミックスが金属結合性を帯びてきて、切断抵抗性が高くなり、トライボロジー特性が悪くなる。したがって、体積抵抗率は、1×10-5Ω・cm以上であることが好ましい。以上の理由からセラミックス基板の体積抵抗率は、1×10-5〜1×109Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
【0035】
セラミックス基板1は、また、熱伝導性の高い材料から構成されることが好ましい。読み取り素子や書き込み素子において発生した熱を蓄積させないで、アンダーコート膜2を介してセラミックス基板1内へ効率よく拡散させるためには、熱伝導率が5W/mK以上であることが好ましく、15W/mK以上であることがより好ましい。
【0036】
また、セラミック基板1の面粗さが粗いと、アンダーコート膜2の面粗さが粗くなり、研磨工程においてアンダーコート膜2の面粗さを後述する所定の範囲にすることができない。したがって、アンダーコート膜2を形成する前において、セラミックス基板1の表面の平均粗さ(Ra)は、2.5nm以下であることが好ましい。
【0037】
上述した特性を備えたセラミックスである限り、セラミックス基板1の材料として種々の組成のセラミックスを用いることができる。例えば、セラミックス基板1は、24〜75mol%のα-Al2O3を含み、残部は、金属の炭化物もしくは炭酸窒化物および2mol%以下の焼結助剤から構成されていてもよい。上述の組成を有する基板材料は、開口ポアが非常に少なく、高精度の面粗さに仕上げることが可能であるため、薄膜磁気ヘッドスライダーに用いる基板として適している。特に、上記組成比のAl2O3と24〜75mol%のTiCと2mol%以下の焼結助剤とを含むセラミックスからなる基板は薄膜磁気ヘッドスライダーに好適に用いられる。
【0038】
本発明に用いることのできるセラミックス基板としては、上記のほか、特許文献4や特許文献5に開示されているSiC−Al2O3系セラミックス材料を用いた基板、特許文献6や特許文献7に開示されたZrO2−Al2O3系セラミックス材料を用いた基板、導電性セラミックス材料として有名なZrO2−SiC系セラミックス材料を用いた基板などを用いることもできる。ただし、窒化珪素に代表されるような難加工性材料であって、トライボロジー特性の悪い材料は、セラミックス基板1には向いていない。
【0039】
アンダーコート膜2は、非晶質構造のSiCから形成されている。上述したように、従来から知られているSiCにはCVD法などの化学的堆積方法が用いられ、多結晶構造や単結晶構造を備えている。本発明者は、スパッタ法あるいは蒸着法などの物理的堆積方法によってSiC膜を形成した。このような方法により形成されたSiC膜は結晶構造を示さず、非晶質になっている。本発明で用いる非晶質のSiC膜は、例えば、単結晶あるいは、多結晶のSiCをターゲットとして、公知のスパッタリング装置を用いて形成することができる。あるいは、炭素含有ガスを含む雰囲気中において、Siをターゲットとしてスパッタすることによって形成してもよい。
【0040】
SiC膜が、非晶質構造をとっているか、単結晶や多結晶などの結晶性の構造をとっているかは、形成されたSiC膜のX線回折分析により、所定の結晶方位のピークが検出されるかどうかで判断できる。具体的には、図2に示すように、X線回折チャートにおいて、非晶質構造に由来するハローと呼ばれるブロードなピークAのみが観測される場合、SiC膜は非晶質構造をとっている。これに対して2θ=35.8°±3°や2θ=34.9°±3°など結晶性SiCに由来するピークが観測される箇所にピークBが観測される場合、SiC膜は結晶性の構造を備えている。
【0041】
なお、非晶質のSiC膜が得られるならば、成膜方法は必ずしも前記物理的堆積法に限定されるものではない。
【0042】
非晶質のSiC膜は、SiおよびCを主成分とし、20〜80原子%のSiおよび20〜80原子%のCを含んでいることが好ましい。Cの含有比率が20%よりも小さいと、得られる材料は耐腐食性が悪くなる。また、Cの含有比率が80%よりも大きいと、得られる膜の応力が高くなりすぎる。また、ビッカース硬度Hvも1600より大きくなり、硬く、脆くなる。SiC膜はさらにOを含んでいてもよく、その場合、含有率は、全体の5原子%以上15原子%以下であることが好ましい。
【0043】
Oの含有比率が、5%より小さいと、膜構造の安定性が悪くなる恐れがある。また、Oの含有比率が15%よりも大きいと、得られる材料はSiO2の性質を帯びてくる。このため、膜の硬度、熱伝導率、および耐腐食性の点で十分な特性を得ることができなくなる。このように本実施形態で用いる非晶質SiC膜は前記の範囲において微量の酸素を含んでいてもよい。
【0044】
なお、非晶質SiC膜は上記組成を構成する元素に加えてTi、Al、He、Ne、B、P、S、Nなどを不可避元素として含んでいてもよい。特に、アンダーコート膜2を形成する下地基板の構成元素は、アンダーコート膜を形成する際に用いるプラズマやイオンビームなどの形成条件により、基板から脱離してアンダーコート膜2に取り込まれる可能性がある。このような元素が微量アンダーコート膜2に含まれていても、得られる膜の特性に実質的な影響はない。
【0045】
上記組成を有する非晶質SiC膜は、1000〜1600のビッカース硬度Hv、3.0〜5.0の線膨張率α、および150〜300GPaのヤング率を有する。また、加工能率として結晶性SiCの10倍以上の研磨加工性を備え、加工性に優れている。非晶質SiC膜を形成する基板との密着性がよく、セラミック基板1と非晶質SiC膜との間に密着性を改善するための下地膜を形成する必要はない。
【0046】
このような特徴を備える非晶質SiC膜をアンダーコート膜2として用いる。アンダーコート膜2の厚みは、0.1〜10μmの範囲の値であることが好ましい。膜厚が0.1μmよりも小さい場合、セラミックス基板1が潜在的にもっているマイクロポアを完全には埋めることができないため、好ましくない。また、厚みが10μmを超える場合、熱伝導距離が大きくなることにより、熱伝導性が悪くなってしまい、コイルで発生した熱を基板へ伝える速度が小さくなってしまう。さらに好ましい膜厚の範囲は、0.5〜2μmである。膜厚が0.5μm以上であれば、表面粗さを後述の範囲内の値に困難なく調整できる。
【0047】
また、アンダーコート膜2の表面粗さは、CMP(Chemical Mechanical Polish)などの方法によって、1nm以下に調製されていることが好ましい。アンダーコート膜2上に形成されるMR素子またはGMR素子などの読み取り素子のセンサ部分の厚みは10nm以下であり、超精密な平坦度が要求されるからである。
【0048】
アンダーコート膜2の熱伝導率は、書き込み素子や読み取り素子で発生した熱を速やかに伝導させるため、おおよそ5W/mK以上であることが好ましい。本願発明者が確認したところ、アンダーコート膜2が非晶質SiCから形成されている限り、この条件は満足される。
【0049】
前述の読み込み素子自体が絶縁構造を有している新しい構造のスライダー(図9参照)のようにアンダーコート膜に高絶縁性が要求されない場合は、アンダーコート膜2もセラミックス基板1と同様、体積抵抗率は小さいほうが好ましい。しかし、その値はセラミックス基板1やアンダーコート膜上に載置される素子との関係から通常1×10-1Ω・cm〜1×108Ω・cmの範囲にあることが好ましい。すなわち体積抵抗率が1×10-1Ω・cm未満では、電気抵抗が低すぎるため、アンダーコート膜2上に載置される絶縁構造を有する素子とアンダーコート膜2との間で電気抵抗の差が大きくなりすぎてしまい、この間において、絶縁破壊が生じる可能性がある。また、体積抵抗率が1×108Ω・cmを超えると、絶縁性が高くなりすぎてしまい、今度はセラミックス基板1とアンダーコート膜2との間で絶縁破壊が生じる可能性がある。なお、アンダーコート膜2と素子との間に導電性シールド膜を配置した構成においても上記範囲の体積抵抗率を満たしていれば絶縁破壊の問題は生じない。
【0050】
また、前述の従来の構造のスライダー(図7、8参照)のようにアンダーコート膜に絶縁性が要求される場合には、以下のような方法により体積抵抗率を調整することができる。まず1番目の方法として、通常の物理的成膜法によって形成されたSiC膜からなるアンダーコート膜2を300℃以上800℃以下の温度で、1〜12時間熱処理することによって成膜時に示していた体積抵抗率よりも増大させることができる。熱処理の温度が300℃未満であると、体積抵抗率の変化は小さく加熱の効果が十分には見られない。一方、800℃を超える温度で加熱すると、高温により生じる応力のため、アンダーコート膜2がセラミックス基板1から剥離したり、チッピング特性の低下を招く恐れがある。アンダーコート膜の他の特性を実質的に変化させることなく、体積抵抗率を大きくするためには、300〜600℃の間の温度で熱処理することがさらに好ましい。この熱処理による方法を用いることによって、体積抵抗率を1×1015Ω・cm程度まで増大させることができる。
【0051】
また、2番目の方法としてSiCからなるアンダーコート膜2をセラミック基板1上に形成する際、セラミックス基板1を加熱あるいは高温で保持することによっても、室温で形成したときにSiC膜が備えている体積抵抗率よりも高い値を備えたアンダーコート膜2を形成することができる。
【0052】
この場合、セラミックス基板1をあらかじめ所定の温度に加熱してからアンダーコート膜2を堆積しても良いし、赤外線ランプ等により、アンダーコート膜2を堆積しながらセラミックス基板1を加熱してもよい。成膜時に基板を加熱あるいは高温で保持する場合には、基板の温度は200〜800℃の範囲にあることが好ましい。200℃未満では、体積抵抗率の変化は小さく熱処理の効果が十分には見られず、800℃を超える温度で基板を保持すると、高温により生じる応力のため、アンダーコート膜2がセラミックス基板1から剥離したり、チッピング特性の低下を招く恐れがある。この成膜時の基板加熱による方法を用いることによって、体積抵抗率を1×1012Ω・cm程度まで増大させることができる。
【0053】
このように、本発明によれば、アンダーコート膜2の体積抵抗率を成膜時の基板加熱温度あるいは成膜後の熱処理温度によって制御できる。したがって、用途に応じて、任意の体積抵抗率を備えたアンダーコート膜2をセラミック基板1上に形成することができる。
【0054】
たとえば、非晶質SiC薄膜の成膜温度と形成されたSiC薄膜の体積抵抗率との関係をあらかじめ実験などで求めておくことによって、所望の体積抵抗率を得るのに必要な成膜温度がわかる。したがって、セラミックス基板1をその成膜温度に設定して、アンダーコート膜2を堆積することにより、所望の体積抵抗率を有するアンダーコート膜2をセラミックス基板1上に形成することができる。
【0055】
同様に、アンダーコート膜2を熱処理する際の温度と、熱処理前後のアンダーコート膜2の体積抵抗率の変化との関係を求めることができる。この関係を用いて、熱処理によってアンダーコート膜2の体積抵抗率を所望の値に調整できる。
【0056】
さらに3番目の方法として、体積抵抗率は非晶質SiC中に含まれるHおよび/またはArの含有量を変化させることによっても調整できる。この場合、非晶質SiCは、たとえば、RFあるいはDCスパッタ法により形成する。イオンアシストあるいはバイアス機構を備えた蒸着法により形成してもよい。スパッタ法のターゲットあるいは、蒸着法の蒸着源として金属SiまたはSiCを用いる。膜形成雰囲気は、0.1〜0.6分圧比のArガス、0.1〜0.9分圧比の炭化水素ガス、0〜0.5分圧比の水素ガスおよび0〜0.05分圧比の酸素ガスで構成する。
【0057】
非晶質SiC膜を形成する前に、基板の表面に対してプラズマ処理を施してもよい。たとえば、アルゴンを0.5〜1分圧比にし、水素ガスを0〜0.5分圧比にして、放電を開始させ、非晶質SiC膜を形成する基板の表面をプラズマに曝す。
【0058】
上記雰囲気で成膜したとき、アンダーコート膜2として用いられるSiC膜は、Si-C-Oを100としたとき、それぞれ0〜15%のモル比でHおよびArを含んでいると推測される。Hの含有率を変化させることにより、体積抵抗率および膜の硬度を調節することができる。Hの含有比率が高すぎると、膜が樹脂化して十分な硬度が得られなくなる。また、Arの含有率を変化させることにより、体積抵抗率および膜の応力を調節することができる。本発明者によれば、Hの含有率を変化させることの方が体積抵抗率の調整に効果があることを確認した。なお、HおよびArを含有させることなく体積抵抗率、膜の硬度および膜の応力が所望の値となるのであれば、HおよびArの含有比率はゼロであってもかまわない。膜形成雰囲気中の各ガスの分圧比を上述の範囲内で調整することにより、HおよびArの含有比率を上記範囲内において変化させることができる。
【0059】
この方法によれば、成膜時に基板を加熱したり、成膜後熱処理をしなくても、体積抵抗率を調節することができるが、前述の2つの方法と組み合わせて用いることもできる。
【0060】
なお、これら3つの方法において、体積抵抗率の下限はセラミックス基板1の体積抵抗率の上限よりも高ければよく、通常、その値は1×10-1Ω・cm程度である。なお、工業的生産の観点から成膜のしやすい、1×105Ω・cm以上の膜が得やすい。
【0061】
(実施例)
以下に、薄膜磁気ヘッド用基板を作製した実施例を説明する。
【0062】
表2および表3に示すように、番号1〜22で示す試料を作成し、種々の特性を測定した。
【0063】
試料1〜17として、それぞれ表2に示される組成の基板上に多結晶SiCをターゲットとしたスパッタ法によって非晶質SiC膜を形成した。このうち、試料1〜8、17については、常温で非晶質SiC膜を形成し、成膜後、熱処理は行わなかった。試料9〜12については、常温で非晶質SiC膜を形成した後、表2に示す温度で熱処理をした。試料13〜16については、非晶質SiC膜を形成する際、表2に示す温度で基板を加熱した。
【0064】
試料18および19については、比較例として、多結晶SiC膜をCVD法によって形成した。
【0065】
試料20〜22は、スパッタ法によりSiをターゲットとし、以下に示す分圧比でAr、CH4、H2、およびO2ガスを含む雰囲気中で作製した。成膜中の加熱および成膜後の熱処理は行わなかった。
【0066】
【表1】
【0067】
作製した試料の特性は、以下の測定によって求めた。結晶性は、X線回折による回折パターンの有無により判断した。基板および膜面の表面粗さは触針式粗度計によって求めた。体積抵抗率は表面抵抗測定装置によって求めた。チッピング特性は、外周刃切断機で基板を切断し、切断面を顕微鏡によって100倍に拡大して観察し、単位長さあたりに発生した20μm以上のチッピングの個数で評価した。基板のトライボロジー特性はコンタクトスタート・ストップ時における摩擦抵抗によって判断した。熱伝導性はレーザフラッシュ法によって判断した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表3に示す試料1〜8の測定結果から明らかなように、スパッタ法により形成した膜はいずれも非晶質であり、膜面の表面粗さが1nm以下であり、体積抵抗率も1×106Ω・cm以上であった(表2)。また、チッピング特性および基板のトライボロジー特性も優れており、熱伝導性も良好であった。このことから、試料1〜8の薄膜磁気ヘッド用基板は、導電性および熱伝導性に優れ、かつ加工性および機械特性も良好であることが分かる。
【0071】
試料17の結果から分かるように、SiC膜の厚さが15μmもあると、熱伝導性が悪くなってしまう。
【0072】
CVD法により形成した試料18および19のSiC膜は、結晶質であり、熱伝導性には優れるが、チッピング特性および基板のトライボロジー特性が悪く、加工性および機械特性が不良であり、薄膜磁気ヘッド用基板としては適していないことがわかる。
【0073】
表2に示す試料9〜12の測定結果から分かるように、SiC膜を形成した後に熱処理することによって、熱処理温度に応じてSiC膜の体積抵抗率が制御できる。
【0074】
更に、表2に示す試料13〜16の測定結果から分かるように、SiC膜を形成する際の基板加熱温度を制御することによってもSiC膜の体積抵抗率を制御できる。
【0075】
試料20〜22の測定結果から分かるように、ArとCH4との分圧比を変化させることにより、体積抵抗率を変化させることができる。
【0076】
試料1〜17および20〜22の組成を分析したところ、いずれの試料もSiおよびCを主成分とし、Siの含有率が20〜80原子%でありCの含有率が20〜80原子%であった。また、Oの含有率は5〜15原子%であった。試料20〜22は、Si−C−Oを100としArを0〜15mol%含んでいた。また、1000〜1600のビッカース硬度Hv、3.0〜5.0の線膨張率α、および150〜300GPaのヤング率を有していることも確認した。
【0077】
本発明の薄膜磁気ヘッド用基板のチッピング特性を確かめるために、作製した薄膜磁気ヘッド用基板をダイシングソーで切断し、切断面を光学顕微鏡で観察した。図3(a)に示すように、セラミックス基板1上に形成されたアンダーコート膜2を備えた薄膜磁気ヘッド用基板を貼り付け基板3に固定して、テーブル4の上に保持し、ダイシングソー5で薄膜磁気ヘッド用基板を切断した。図3(b)に示すように、チッピングは、ダイシングソー5が薄膜磁気ヘッド用基板のアンダーコート膜2と接する部分において発生する。
【0078】
図4はダイシングソーによって切断された薄膜磁気ヘッド用基板の切断個所を上から見た顕微鏡写真である。図において、ほぼ水平に伸びる境界の下側が薄膜磁気ヘッド用基板を示している。図から明らかなように、切断面にはほとんどチッピングがなく、本発明の薄膜磁気ヘッド用基板は良好なチッピング特性を備えているのが分かる。
【0079】
これに対して、図5(a)および(b)は、CVD法により形成した多結晶SiC膜をアンダーコート膜として有する薄膜磁気ヘッド用基板の切断個所を示している。これらの図においても、図中の境界の下側が薄膜磁気ヘッド用基板を示している。図5(a)および(b)から明らかなように、多結晶CVD法によるSiC膜は脆性が高く、チッピングが著しい。
【0080】
上記説明から明らかなように、本発明によれば、アンダーコート膜として非晶質SiC膜を用いることによって、高密度記録ハードディスクドライブ装置の薄膜磁気ヘッドスライダーに要求される熱伝導性、電気伝導性、加工特性および機械特性を達成し、優れた薄膜磁気ヘッド用基板が得られる。これらの要求をすべて満たす材料は知られておらず、例えば結晶性のSiC膜では、これらの要求を同時には満たしえなかった。
【0081】
また、非晶質SiC膜を例えばスパッタ法により形成すれば、ガス圧や膜の堆積速度、バイアス電圧等を調整することによって、薄膜磁気ヘッド用基板の応力も制御しうる。したがって、用途に応じてより最適な薄膜磁気ヘッド用基板を提供することができる。
【0082】
本発明の薄膜磁気ヘッド用基板は、高密度記録ハードディスクドライブ装置の薄膜磁気ヘッドスライダーに好適に用いられる。また、そのような薄膜磁気ヘッドスライダーを用いることによって、信頼性の高い高密度記録ハードディスクドライブ装置を得ることができる。薄膜磁気ヘッド用基板を用いて、薄膜磁気ヘッドスライダーおよびハードディスクドライブ装置を製造する方法は、例えば特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0083】
以下、本発明による薄膜磁気ヘッドスライダーの実施形態の一例を説明する。
【0084】
図6は、薄膜磁気ヘッドスライダー80の主要部を示す斜視図である。図6には薄膜磁気ヘッドスライダー80のジンバルは示されていないが、図9と同様、図6に示す主要部がジンバルに取り付けられている。
【0085】
薄膜磁気ヘッドスライダー80はセラミックス基板1と、セラミックス基板1上に堆積されたアンダーコート膜2と、アンダーコート膜2上に堆積されたシールド膜85とを備えている。本実施形態ではアンダーコート膜として上述の組成を有し、厚さ2〜3μmの非晶質SiC膜をDCスパッタ法により形成する。
【0086】
シールド膜85上には、0.4μm程度のギャップ86が設けられており、そのギャップ86内に再生用のGMR素子87が配置されている。GMR素子87は不図示の電極やGMR膜を有する公知の構成を備えている。ギャップ86は、GMR素子87を覆うようにしてシールド膜85上に堆積されたアルミナなどの絶縁膜から形成されている。GMR素子87の厚さは、例えば0.1μm程度である。なお、シールド膜85上に形成される磁気素子(再生素子)は、GMR素子に限定されない。MR素子やTMR素子など他のタイプの素子であってもよい。
【0087】
ギャップ86として機能する絶縁膜上にシールド膜88が堆積されている。シールド膜85および88は、例えばパーマロイなどの軟磁性材料から形成されており、磁気シールド膜としての機能も発揮する。シールド膜88上には、0.4〜0.6μmの書き込みギャップ89を介してトップポール(厚さ:2〜3μm)90が形成されている。シールド膜88とトップポール90との間には、厚さ5μm程度のCu膜をパターニングすることによって形成したコイルパターン91が設けられている。コイルパターン91は、その周囲が有機絶縁膜で覆われている。ボトムポール88、コイルパターン91およびトップポール90等によって記録ヘッド部が構成されている。コイルパターン91に通電することによって書き込みギャップ89近傍に磁界が形成され、不図示の記録媒体へのデータの書き込み(記録)が実行される。記録ヘッド部はオーバーコート(厚さ:例えば40μm)によって覆われている。これらの積層構造は、通常の薄膜堆積技術やリソグラフィ技術によって製造される。図6に示すヘッド部が完成したあとヘッド部をジンバルに取り付け、薄膜磁気ヘッドスライダーが完成する。
【0088】
本実施形態によれば、アンダーコート膜2が熱伝導性および適度な導電性を備えているため、読み取り素子あるいは書き込み素子から発生する熱によって素子自体が膨張し、磁気記録媒体と接触するという問題を防ぐことができ、また、薄膜磁気ヘッドスライダーの静電破壊や絶縁破壊も防止しうるともに、加工性および機械性に優れ、高密度記録ハードディスクドライブ装置に適した薄膜磁気ヘッドスライダーが得られる。
【0089】
なお、上記実施形態において、アンダーコート膜はセラミックス基板の上に直接形成されていた。しかし、アンダーコート膜は必ずしもセラミックス基板に直接形成されている必要はなく、例えば、電気導電性および熱伝導性のよい薄膜をアンダーコート膜とセラミックス基板の間に設けてもよい。
【0090】
【発明の効果】
本発明によれば、薄膜磁気ヘッドスライダーの読み取り素子あるいは書き込み素子から発生する熱によって素子自体が膨張し、磁気記録媒体と接触するという問題を防ぐことができ、また、薄膜磁気ヘッドスライダーの静電破壊や絶縁破壊も防止しうるともに、加工性および機械性に優れ、高密度記録ハードディスクドライブ装置に適した薄膜磁気ヘッド用基板が得られる。
【0091】
また、この薄膜磁気ヘッド用基板を用いることにより、信頼性の高い薄膜磁気ヘッドスライダーおよびハードディスクドライブ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜磁気ヘッド用基板の実施形態を示す断面図である。
【図2】非晶質SiCのX線回折パターンを示すチャートである。
【図3】(a)は薄膜磁気ヘッド用基板をダイシングソーで切断する工程を模式的に示す側面図であり、(b)はその上面図である。
【図4】本発明の薄膜磁気ヘッド用基板を切断した部分の上面顕微鏡写真である。
【図5】(a)および(b)はCVD法により形成されたアンダーコート膜を有する薄膜磁気ヘッド用基板を切断した部分の上面顕微鏡写真である。
【図6】本発明の薄膜磁気ヘッドスライダーの主要部を示す斜視図である。
【図7】従来の薄膜磁気ヘッドスライダーを模式的に示す断面図である。
【図8】従来の他の薄膜磁気ヘッドスライダーを模式的に示す断面図である。
【図9】(a)は、他の薄膜磁気ヘッドスライダーを模式的に示す断面図であり、(b)は書き込み素子が形成された面からみた側面図である。
【符号の説明】
1、12 基板
2、13 アンダーコート膜
3 貼り付け板
4 テーブル
5 ダイシングソー
Claims (3)
- セラミック基板を200〜800℃の範囲の温度で保持しながら前記セラミックス基板上に非晶質SiCからなるアンダーコート膜を物理的堆積法により形成し、前記温度と前記アンダーコート膜の体積抵抗率との関係を求める工程と、
前記求めた関係に基づいて、前記セラミックス基板の温度を設定し、前記設定した温度を保持しながら前記セラミックス基板上に非晶質SiCからなるアンダーコート膜を物理的堆積法により形成する工程と、
を包含する薄膜磁気ヘッド用基板の製造方法。 - セラミックス基板上に非晶質SiCからなるアンダーコート膜を物理的堆積法により形成する工程と、
前記アンダーコート膜を形成後、前記アンダーコート膜を300〜800℃の温度で熱処理する工程と
を包含する薄膜磁気ヘッド用基板の製造方法。 - 0.1〜0.6分圧比のArガス、0.1〜0.9分圧比の炭化水素ガス、0〜0.5分圧比の水素ガス、および0〜0.05分圧比の酸素ガスを含む雰囲気下において前記アンダーコート膜を形成する請求項1または2に記載の薄膜磁気ヘッド用基板の製造方法。
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