JP4215852B2 - テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、カチオン錯体重合反応に供されるメタロセン触媒(重合触媒)の助触媒、また、光化学的活性化または電子ビーム照射による、官能性ポリマーまたはモノマーの重合に供されるカチオン重合開始剤として有用な、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法、該テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用なテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体およびその製造方法、並びに、テトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体は、例えば、カチオン錯体重合反応に供されるメタロセン触媒(重合触媒)の活性を高める助触媒として有用な化合物である。尚、メタロセン触媒は、ポリオレフィン重合用触媒として、近年、特に注目されている。
【0003】
そして、従来より、有機リチウム化合物を用いて調製したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウムからテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造する方法が知られている。
【0004】
例えば、特開平6−247981号公報には、有機リチウム化合物とハロゲン化ホウ素とを用いて、ペンタフルオロベンゼンからテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウムを合成した後、該化合物とN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩とを反応させる方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記公報に記載の方法は、(1)反応系の温度を−65℃以下に維持しなければならないので、特殊な設備が必要であると共に冷却に要する費用が嵩む;(2)高価な有機リチウム化合物(t−ブチルリチウム)を用いなければならず、しかも、該化合物は水等との反応により発火するおそれがあるので、その取り扱いに危険を伴う;(3)高価なハロゲン化ホウ素(三塩化ホウ素)を用いなければならず、しかも、該化合物はガス状であり、強い腐食性を有するので、その取り扱いが困難である;という問題点を有している。従って、該公報に記載の方法は、工業的に実施することが困難である。
【0006】
また、グリニャール (Grignard) 試薬を用いて調製したテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・マグネシウムハライドからテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造する方法も知られている。
【0007】
例えば、米国特許第398,236号には、グリニャール試薬であるペンタフルオロフェニルマグネシウムブロマイドと三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体との反応によって得たテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・マグネシウムブロマイドと、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩とを反応させて、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを製造する方法が、開示されている。
【0008】
しかしながら、上記米国特許の方法では、反応後の溶液が、副生した水酸化マグネシウムによってゲル化する。従って、該溶液を濾過することが困難であり、また、該溶液からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート誘導体を単離することが困難である。
【0009】
また、上記米国特許の方法では、グリニャール反応に由来する着色成分によってテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート誘導体が着色するという問題点も有している。さらに、上記米国特許の方法では、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート誘導体を単離するためには、クロロホルム或いはジクロロエタン等の塩素系溶媒を用いて粗生成物を再結晶させる必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、上記従来の有機リチウム化合物或いはグリニャール試薬を用いて調製したテトラキス(フッ化アリール)ボレートからテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造する方法は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を高純度で、効率的かつ安価に製造することができないという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を高純度で、効率的かつ安価に製造することができるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の第2の目的は、テトラキス(フッ化アリール)ボレートを高純度で製造することができるテトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第3の目的は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用であるだけでなく、カチオン錯体重合反応に供されるメタロセン触媒(重合触媒)の助触媒としても有用な新規物質であるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体およびその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第4の目的は、上記のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体からテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を効率的かつ安価に製造することができるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを出発物質とすることにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を高純度で、効率的かつ安価に製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、請求項1記載の発明の一般式(2)
【0017】
【化15】
【0018】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Z+ は一価のカチオン種を表し、nは2または3である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、一般式(1)
【0019】
【化16】
【0020】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属ハライドを表し、nは2または3であり、mはMが水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハライドである場合に1、アルカリ土類金属である場合に2である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを出発物質とすることを特徴としている。
【0021】
請求項2記載の発明のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、請求項1記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法において、一般式(3)
【0022】
【化17】
【0023】
(式中、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表す)
で表されるエーテル化合物を反応系外に除去する工程を含むことを特徴としている。
【0024】
請求項3記載の発明のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、請求項2記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法において、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去して一般式(4)
【0025】
【化18】
【0026】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属ハライドを表し、nは2または3であり、mはMが水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハライドである場合に1、アルカリ土類金属である場合に2である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートを得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させることを特徴としている。
【0027】
請求項4記載の発明のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、請求項2記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法において、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させて一般式(5)
【0028】
【化19】
【0029】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表し、Z+ は一価のカチオン種を表し、nは2または3である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去することを特徴としている。
【0030】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと比較して容易に高純度に精製できる前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を出発物質とするので、前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を高純度で、効率的かつ安価に製造することができる。
【0031】
また、請求項5記載の発明の前記一般式(4)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法は、上記課題を解決するために、前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から前記一般式(3)で表されるエーテル化合物を除去することを特徴としている。
【0032】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと比較して容易に高純度に精製できる前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を用いるので、従来の有機リチウム化合物やグリニャール試薬から直接的に製造する方法と比較して、高純度のテトラキス(フッ化アリール)ボレートを製造することができる。
【0033】
さらに、請求項6記載の発明の前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体の製造方法は、上記課題を解決するために、前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させることを特徴としている。
【0034】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用な新規物質である前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を製造することができる。
【0035】
また、請求項7記載の発明のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体は、上記課題を解決するために、前記一般式(5)で表されることを特徴としている。
【0036】
上記構成によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用な新規物質であるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を提供することができる。
【0037】
さらに、請求項8記載の発明の前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、上記課題を解決するために、前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から前記一般式(3)で表されるエーテル化合物を除去することを特徴としている。
【0038】
上記方法によれば、前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を効率的かつ安価に製造することができる。
【0039】
以下に、本発明を詳しく説明する。
先ず、本発明にかかる製造方法に用いる前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体(以下、単にテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と記す)について説明する。
【0040】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体は、前記一般式(4)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートを、前記一般式(3)で表されるエーテル化合物と反応させることにより調製される。
【0041】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の調製に用いる前記一般式(4)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートは、式中、R1 〜R10で示される置換基が、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基で構成され、かつ、該R1 〜R5 で示される置換基のうちの少なくとも一つがフッ素原子であり、該R6 〜R10で示される置換基のうちの少なくとも一つがフッ素原子であり、Mで示される置換基が水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属ハライドで構成され、nが2または3であり、mが、Mが水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハライドである場合に1、アルカリ土類金属である場合に2である化合物である。
【0042】
上記の炭化水素基とは、具体的には、アリール基、炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルキル基、および、炭素数2〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルケニル基等を示す。尚、上記の炭化水素基は、本発明にかかる反応に対して不活性な官能基をさらに有していてもよい。該官能基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、メチルチオ基、N,N−ジメチルアミノ基、o−アニス基、p−アニス基、トリメチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリルオキシ基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0043】
上記のアルコキシ基は、一般式(A)
−ORa ……(A)
(式中、Ra は炭化水素基を表す)
で表され、式中、Ra で示される炭化水素基とは、具体的には、例えば、アリール基、炭素数1〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルキル基、および、炭素数2〜12の直鎖状、枝分かれ鎖状、または環状のアルケニル基等を示す。尚、上記の炭化水素基は、本発明にかかる反応に対して不活性な官能基をさらに有していてもよい。
【0044】
前記一般式(A)で表されるアルコキシ基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、 sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。
【0045】
また、上記のアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、上記のアルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウム等が挙げられ、上記のアルカリ土類金属ハライドとしては、マグネシウムクロライド、マグネシウムブロマイド、マグネシウムヨーダイド等が挙げられる。
【0046】
前記一般式(4)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート(以下、単にテトラキス(フッ化アリール)ボレートと記す)のうち、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・マグネシウムブロマイド、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム、およびテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウムが、特に好ましい。
【0047】
テトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法は、特に限定されるものではない。テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ土類金属ハライドは、例えば、1)フッ化アリールマグネシウムハライドとハロゲン化ホウ素とを、モル比4:1で反応させる方法;2)フッ化アリールマグネシウムハライドとトリス(フッ化アリール)ホウ素とを、モル比1:1で反応させる方法;等により、容易に得ることができる。これら方法におけるグリニャール反応の反応条件は、特に限定されるものではない。
【0048】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドは、グリニャール反応を行う際に用いた溶媒に溶解した溶液の状態で得られる。該溶媒としては、具体的には、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶媒は、混合溶媒であってもよい。尚、フッ化アリールマグネシウムハライドとハロゲン化ホウ素とを反応させてテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを製造した場合には、例えば、フッ化臭化マグネシウム等の副生したハロゲン化マグネシウムが不純物として上記溶液に溶解している。
【0049】
また、テトラキス(フッ化アリール)ボレートの水素化合物、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩は、1)上記のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドをカルボン酸アルカリ金属塩および/またはカルボン酸アルカリ土類金属塩で処理する方法(▲1▼の処理方法);2)上記のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを酸で処理する方法(▲2▼の処理方法);3)上記のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを酸で処理した後、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物で処理する方法(▲3▼の処理方法);4)上記のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを酸で処理した後、カルボン酸アルカリ金属塩および/またはカルボン酸アルカリ土類金属塩で処理する方法(▲4▼の処理方法);等により調製できる。
【0050】
上記▲1▼・▲4▼の処理方法に用いられるカルボン酸アルカリ金属塩としては、具体的には、例えば、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム等の、飽和脂肪族モノカルボン酸のアルカリ金属塩;
シュウ酸一ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸一カリウム、シュウ酸二カリウム、マロン酸一ナトリウム、マロン酸二ナトリウム、マロン酸一カリウム、マロン酸二カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、コハク酸一カリウム、コハク酸二カリウム等の、飽和脂肪族ジカルボン酸のモノまたはジアルカリ金属塩;
アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム等の、不飽和脂肪族モノカルボン酸のアルカリ金属塩;
マレイン酸一ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、マレイン酸一カリウム、マレイン酸二カリウム、フマル酸一ナトリウム、フマル酸二ナトリウム、フマル酸一カリウム、フマル酸二カリウム等の、不飽和脂肪族ジカルボン酸のモノまたはジアルカリ金属塩;
安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム等の、芳香族モノカルボン酸のアルカリ金属塩;
フタル酸一ナトリウム、フタル酸二ナトリウム、フタル酸一カリウム、フタル酸二カリウム、イソフタル酸一ナトリウム、イソフタル酸二ナトリウム、イソフタル酸一カリウム、イソフタル酸二カリウム、テレフタル酸一ナトリウム、テレフタル酸二ナトリウム、テレフタル酸一カリウム、テレフタル酸二カリウム等の、芳香族ジカルボン酸のモノまたはジアルカリ金属塩;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、本発明においては、カルボン酸アルカリ金属塩に、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩も含まれることとする。
【0051】
上記▲1▼・▲4▼の処理方法に用いられるカルボン酸アルカリ土類金属塩としては、具体的には、例えば、ギ酸カルシウム、ギ酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸バリウム等の、飽和脂肪族モノカルボン酸のアルカリ土類金属塩;
シュウ酸カルシウム、シュウ酸バリウム、マロン酸カルシウム、マロン酸バリウム、コハク酸カルシウム、コハク酸バリウム等の、飽和脂肪族ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩;
アクリル酸カルシウム、アクリル酸バリウム、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸バリウム等の、不飽和脂肪族モノカルボン酸のアルカリ土類金属塩;
マレイン酸カルシウム、マレイン酸バリウム、フマル酸カルシウム、フマル酸バリウム等の、不飽和脂肪族ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩;
安息香酸カルシウム、安息香酸バリウム等の、芳香族モノカルボン酸のアルカリ土類金属塩;
フタル酸カルシウム、フタル酸バリウム、イソフタル酸カルシウム、イソフタル酸バリウム、テレフタル酸カルシウム、テレフタル酸バリウム等の、芳香族ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。尚、本発明においては、カルボン酸アルカリ土類金属塩に、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩も含まれることとする。但し、本発明においては、カルボン酸アルカリ土類金属塩にカルボン酸マグネシウム塩は含まれないこととする。
【0052】
これらカルボン酸アルカリ金属塩並びにカルボン酸アルカリ土類金属塩(以下、両者を総称する場合にはカルボン酸塩と記す)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示のカルボン酸塩のうち、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸バリウムがより好ましい。カルボン酸塩の使用量は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドに対して1当量以上であればよく、特に限定されるものではない。また、カルボン酸アルカリ金属塩とカルボン酸アルカリ土類金属塩とを併用する場合における両者の割合は、特に限定されるものではない。
【0053】
上記▲2▼・▲3▼・▲4▼の処理方法に用いられる酸としては、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸等の有機酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0054】
これら酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。上記例示の酸のうち、塩酸、硫酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸がより好ましい。酸の使用量は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを製造する際に用いた(反応系に仕込んだ)マグネシウムに対して1当量以上であればよく、特に限定されるものではない。また、無機酸と有機酸とを併用する場合における両者の割合は、特に限定されるものではない。
【0055】
上記▲3▼の処理方法に用いられるアルカリ金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、▲3▼の処理方法に用いられるアルカリ土類金属水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。但し、本発明においては、アルカリ土類金属水酸化物に水酸化マグネシウムは含まれないこととする。
【0056】
これらアルカリ金属水酸化物並びにアルカリ土類金属水酸化物(以下、両者を総称する場合には水酸化物と記す)は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。水酸化物の使用量は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドに対して1当量以上であればよく、特に限定されるものではない。また、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類金属水酸化物とを併用する場合における両者の割合は、特に限定されるものではない。
【0057】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドをカルボン酸塩で処理する場合(▲1▼の処理方法)には、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドとカルボン酸塩とを混合・撹拌すればよい。また、酸で処理する場合(▲2▼の処理方法)には、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドと酸とを混合・撹拌すればよい。また、酸で処理した後、水酸化物で処理する場合(▲3▼の処理方法)には、酸を分離・除去した後、水酸化物を混合・撹拌すればよい。さらに、酸で処理した後、カルボン酸塩で処理する場合(▲4▼の処理方法)には、酸を分離・除去した後、カルボン酸塩を混合・撹拌すればよい。
【0058】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液と、上記カルボン酸塩や酸、水酸化物とを混合する方法は、特に限定されるものではない。カルボン酸塩、酸および水酸化物は、そのままの状態(固体または液体)でテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液と混合してもよく、或いは、必要に応じて溶液の状態で混合してもよい。
【0059】
カルボン酸塩や酸、水酸化物を溶液の状態とする場合において好適に用いられる溶媒としては、具体的には、例えば、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0060】
カルボン酸塩や酸、水酸化物を混合する方法、および、混合順序は、特に限定されるものではない。例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液に、カルボン酸塩や酸、水酸化物を混合してもよく、または、カルボン酸塩や酸、水酸化物に、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液を混合してもよい。
【0061】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液と、カルボン酸塩や酸、水酸化物とを混合・撹拌する際の温度並びに時間、即ち、処理条件は、特に限定されるものではない。上記▲1▼〜▲4▼の処理方法においては、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドの溶液と、カルボン酸塩や酸、水酸化物とを混合した後、室温で所定時間、撹拌することにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドを容易に処理することができる。また、酸で処理した後、水酸化物またはカルボン酸塩で処理する場合において、酸を分離・除去する方法は、特に限定されるものではない。酸は、例えば分液(油水分離)等の簡単な操作を行うことにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の溶液と分離することができる。処理後、テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩は、溶媒に溶解した溶液の状態で得られる。
【0062】
尚、テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の溶液にカルボン酸塩や酸、水酸化物が含まれている場合には、必要に応じて洗浄等を行って、これらカルボン酸塩や酸、水酸化物を除去すればよい。また、カルボン酸塩や酸、水酸化物、或いはこれらの溶液にテトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩が含まれている場合には、必要に応じて抽出等を行って、テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩を回収すればよい。さらに、テトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩の溶液に水が含まれている場合には、必要に応じて無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を該溶液に添加して、除去(乾燥)すればよい。
【0063】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の調製に用いる前記一般式(3)で表されるエーテル化合物は、式中、R11、R12で示される置換基が、それぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基で構成され、Yで示される置換基が炭化水素二価基で構成される化合物である。
【0064】
上記炭化水素基としては、具体的には、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ベンジル基等が挙げられるが、炭素数1〜10のアルキル基、およびアリール基が特に好ましい。上記ヘテロ原子を含む置換基としては、具体的には、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アシルオキシ基等の酸素原子を含む置換基;ジアルキルアミノ基等の窒素原子を含む置換基;アルキルチオ基、アリールチオ基等の硫黄原子を含む置換基;等が挙げられる。
【0065】
また、上記の炭化水素二価基としては、2つの酸素原子を結合する炭素鎖の長さが炭素数1〜6のアルキレン基、即ち、置換基を有していてもよいメチレン基、置換基を有していてもよいエチレン基、置換基を有していてもよいトリメチレン基、置換基を有していてもよいテトラメチレン基、置換基を有していてもよいペンタメチレン基、置換基を有していてもよいヘキサメチレン基からなる群より選ばれる1種の二価基が好ましい。さらに、これら二価基における置換基は、炭素数1〜6のアルキル基であるのが好ましい。
【0066】
前記一般式(3)で表されるエーテル化合物(以下、多官能エーテルと称する)の種類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン;
エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジイソブチルエーテル、エチレングリコールジ−sec −ブチルエーテル、エチレングリコールジ−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジペンチルエーテル、エチレングリコールジネオペンチルエーテル、エチレングリコールジヘキシルエーテル、エチレングリコールジヘプチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、エチレングリコールジノニルエーテル、エチレングリコールジデシルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル;
エチレングリコールジシクロプロピルエーテル、エチレングリコールジシクロブチルエーテル、エチレングリコールジシクロペンチルエーテル、エチレングリコールジシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールジヘプチルエーテル、エチレングリコールジシクロオクチルエーテル、エチレングリコールジシクロノニルエーテル、エチレングリコールジシクロデシルエーテル等のエチレングリコールジシクロアルキルエーテル;
エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルブチルエーテル等の非対称エチレングリコールメチルアルキルエーテル;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジぺンチルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジヘプチルエーテル、ジエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールジノニルエーテル、ジエチレングリコールジデシルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;
トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジペンチルエーテル、トリエチレングリコールジヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジヘプチルエーテル、トリエチレングリコールジオクチルエーテル、トリエチレングリコールジノニルエーテル、トリエチレングリコールジデシルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート等の、アシルオキシ基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル;
エチレングリコールジ−2−メチルチオエチルエーテル等の、アルキルチオ基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル;
エチレングリコールジ−2−ジメチルアミノエチルエーテル等の、ジアルキルアミノ基を有するエチレングリコールジアルキルエーテル;
エチレングリコールジフェニルエーテル等のエチレングリコールジアリールエーテル;
ジエチレングリコールジフェニルエーテル等のジエチレングリコールジアリールエーテル;
トリエチレングリコールジフェニルエーテル等のトリエチレングリコールジアリールエーテル;
エチレングリコールジベンジルエーテル;等が挙げられる。
【0067】
上記例示の化合物のうち、蒸留によって高純度のテトラキス(フッ化アリール)ボレートに容易に変換でき、また、工業的に入手が可能であり、安価であることから、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、および、ジエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
【0068】
多官能エーテルの使用量は、特に限定されるものではないが、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとがモル比1:1以上で錯体を形成することから、テトラキス(フッ化アリール)ボレートに対して等モル以上であることが好ましい。
【0069】
本発明にかかる製造方法において、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとを反応させる方法は、特に限定されるものではないが、溶媒中でテトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとを混合する方法が好適である。
【0070】
上記反応に用いる溶媒としては、一般に有機合成に使用される溶媒であれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒等の有機溶媒、および、水が挙げられる。これら溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0071】
これら例示の溶媒のうち、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶解度が比較的低い溶媒、即ち、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒が、特に好ましい。これらの溶媒を用いることにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を結晶として容易に析出させることができ、溶液からの分離が容易となる。
【0072】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶解度が高い溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒、或いは、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒を用いた場合には、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を形成させた後、そのままでは結晶が析出しないので、これら溶媒を留去すればよい。尚、ニトロメタンやアセトニトリル等の極性溶媒は、多官能エーテルよりも配位力が強く、エーテル錯体の形成を阻害するので、好ましくない。
【0073】
溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体のみを結晶として析出させて反応系外に取り出す場合には、テトラキス(フッ化アリール)ボレートが溶媒に全て溶解する量であることが好ましい。これにより、着色成分や副生塩を含むテトラキス(フッ化アリール)ボレートを用いて錯体を形成させたときに、着色成分や副生塩が反応系内に留まるため、濾過等の操作によって着色の無い高純度のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が得られる。
【0074】
溶媒の使用量は、テトラキス(フッ化アリール)ボレートが全て溶解しない量の溶媒であってもよく、例えば、懸濁状態で反応を行っても錯体化を進行させることができる。この場合には、テトラキス(フッ化アリール)ボレートを、懸濁状態で多官能エーテルと反応させ、その結果生成したテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を、濾過等の方法で反応系外に取り出せばよい。取り出したテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が着色成分や副生塩等の不純物を含んでいる場合には、これら不純物を溶解する適当な溶媒(例えば、エーテル系溶媒)で洗浄するのが、好ましい。これにより、着色の無い高純度のテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が得られる。
【0075】
尚、溶媒を使用せず、大過剰の多官能エーテル中でテトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとを反応させ、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を形成させた後に、錯体を形成しなかった分の多官能エーテルを留去してもよい。この場合には、得られた生成物が着色成分や副生塩等の不純物を含んでいる場合には、これら不純物を溶解する適当な溶媒(例えば、エーテル系溶媒)で洗浄するのが好ましい。
【0076】
また、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとの混合の方法および順序は何ら制限されるものではない。混合方法としては、例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液に多官能エーテルを加える方法;或いは、多官能エーテルにテトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液を加える方法;等が挙げられる。
【0077】
反応温度は、特に限定されるものではないが、多官能エーテルの沸点以下であることが好ましく、さらに、溶媒を使用する場合には、該溶媒の沸点以下であることが好ましい。
【0078】
また、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと多官能エーテルとの反応は非常に速く、混合律速であるが、生成した錯体が成長して析出してくる迄の時間が必要である。従って、反応時間は、生成した錯体が成長して析出してくる迄の時間以上となるように、適宜設定すれば良い。さらに、反応圧力は、常圧、減圧、加圧の何れであってもよい。
【0079】
以上の調製方法により、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が得られる。上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体は、着色成分や副生塩等の不純物を含んでいる場合には、これら不純物を溶解する適当な溶媒(例えば、エーテル系溶媒)で洗浄することによって、容易に高純度に精製できるので、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の出発物質として優れている。
【0080】
本発明にかかる前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体(以下、単にテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体と記す)の製造方法は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、カチオン種発生化合物とを出発物質とする方法である。また、上記の方法は、多官能エーテルを反応系外に除去する工程を含んでいる。
【0081】
本発明にかかる一価のカチオン種を発生する化合物(以下、カチオン種発生化合物と記す)は、後述する反応溶媒中において一価のカチオン種を発生し、かつ、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体またはテトラキス(フッ化アリール)ボレート(以下、両者を総称する場合にはテトラキス(フッ化アリール)ボレート化合物と記す)との反応性を有する化合物であればよい。
【0082】
カチオン種発生化合物によって発生される一価のカチオン種としては、具体的には、例えば、n−ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム等のアンモニウム陽イオン;
アニリニウム、N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−ジフェニルアニリニウム、N,N,N−トリメチルアニリニウム等のアニリニウム陽イオン;
ピリジニウム、N−メチルピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム等のピリジニウム陽イオン;
キノリニウム、イソキノリニウム等のキノリニウム陽イオン;
ジメチルフェニルフォスフォニウム、トリフェニルフォスフォニウム、テトラエチルフォスフォニウム、テトラフェニルフォスフォニウム等のフォスフォニウム陽イオン;
トリメチルスルフォニウム、トリフェニルスルフォニウム等のスルフォニウム陽イオン;
ジフェニルヨードニウム、ジ−4−メトキシフェニルヨードニウム等のヨードニウム陽イオン;
トリフェニルカルベニウム、トリ−4−メトキシフェニルカルベニウム等のカルベニウム陽イオン;
アルカリ金属並びにアルカリ土類金属以外の金属の一価陽イオン;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0083】
このうち、トリアルキルアンモニウム陽イオン、テトラアルキルアンモニウム陽イオン、ジアルキルアニリニウム陽イオン、アルキルピリジニウム陽イオン、テトラアルキルフォスフォニウム陽イオン、テトラアリールフォスフォニウム陽イオン、ジアリールヨードニウム陽イオンがより好ましい。尚、一価のカチオン種と対になるべきアニオン種は、特に限定されるものではない。
【0084】
カチオン種発生化合物としては、具体的には、例えば、トリ−n−ブチルアミン・塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン・硫酸塩、塩化テトラメチルアンモニウム等の第四アンモニウム化合物;
ピリジン・塩酸塩、キノリン・塩酸塩、ヨウ化−N−メチルピリジン、ヨウ化−N−メチルキノリン等の含窒素芳香族複素環化合物;
臭化テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、臭化テトラフェニルフォスフォニウム等の第四フォスフォニウム化合物;
ヨウ化トリメチルスルフォニウム等のスルフォニウム化合物;
塩化ジフェニルヨードニウム等のヨードニウム化合物;
トリチルクロライド等のカルベニウム化合物;等が挙げられる。
【0085】
例えば、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩は、一価のカチオン種としてN,N−ジメチルアニリニウム陽イオンを発生する。尚、この場合のアニオン種は塩素イオンである。
【0086】
カチオン種発生化合物の使用量は、特に限定されるものではなく、テトラキス(フッ化アリール)ボレート化合物に対して、0.8当量以上であればよい。
【0087】
本発明にかかる製造方法においては、カチオン種発生化合物を反応溶媒中で反応させる。上記の反応溶媒としては、具体的には、例えば、水;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら反応溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0088】
本発明にかかるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法としては、具体的には、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から多官能エーテルを除去して、テトラキス(フッ化アリール)ボレートを得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、カチオン種発生化合物とを反応させる第1の製造方法と、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体とカチオン種発生化合物とを反応させて、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から多官能エーテルを除去する第2の製造方法とがある。
【0089】
上記第1の製造方法において、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から多官能エーテルを除去する第1の工程は、反応容器中でテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を加熱して、多官能エーテルを反応容器外へ留出させる方法によって行うことが望ましい。
【0090】
上記加熱温度は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から多官能エーテルが除去される温度であればよく、特に限定されるものではないが、40℃以上であることがより好ましく、40℃〜200℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、加熱時間は、特に限定されるものではない。
【0091】
多官能エーテルを反応容器外へ留出させるためには、反応容器内の温度を、反応容器内の圧力における多官能エーテルの沸点よりも高い温度にする必要がある。そのため、必要に応じて、反応容器内を減圧してもよい。これにより、比較的低温で多官能エーテルを留出させることができる。
【0092】
また、上記第1の工程では、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を溶媒中に溶解させた溶液状態で用いてもよく、また、溶媒中に懸濁させた懸濁状態で用いてもよい。
【0093】
尚、第1の製造方法において、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から多官能エーテルを除去する第1の工程は、単独で実施すれば、つまり、第2の工程を実施しなければ、テトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法となる。上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートを、高純度で、効率的かつ安価に製造することができる。
【0094】
上記第1の製造方法において、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、カチオン種発生化合物とを反応させる第2の工程は、前記の反応溶媒中で行われる。
【0095】
テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液を用いて反応を行う場合には、反応溶媒(或いはその一部)として、テトラキス(フッ化アリール)ボレートが溶解している溶媒を用いることができる。従って、前記第1の工程で得られるテトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液から該化合物を単離しなくとも、該溶液を用いて、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造することができる。
【0096】
テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、カチオン種発生化合物とを混合する方法としては、具体的には、例えば、反応溶媒にテトラキス(フッ化アリール)ボレートおよびカチオン種発生化合物を混合する方法;テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液に、カチオン種発生化合物またはその溶液を混合する方法;カチオン種発生化合物の溶液に、テトラキス(フッ化アリール)ボレートまたはその溶液を混合する方法;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液に、カチオン種発生化合物の溶液を混合する場合、並びに、カチオン種発生化合物の溶液に、テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液を混合する場合には、添加する側の溶液を滴下することがより好ましい。
【0097】
テトラキス(フッ化アリール)ボレートとカチオン種発生化合物との反応における、反応温度並びに反応時間、即ち、反応条件は、特に限定されるものではない。本発明にかかる製造方法においては、テトラキス(フッ化アリール)ボレートとカチオン種発生化合物とを反応溶媒に溶解させてなる反応液を、室温で所定時間、撹拌することにより、反応を容易に進行させることができる。従って、目的物であるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を簡単に得ることができる。
【0098】
例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートがテトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ金属塩、またはテトラキス(フッ化アリール)ボレートのアルカリ土類金属塩であり、カチオン種発生化合物がN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩である場合には、両者の反応によって、目的物であるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレートが得られると共に、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物、または塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩化物が副生される。これらアルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物は、例えば、分液・濾過・洗浄等の操作を行うことにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレートの溶液から簡単に分離・除去することができる。また、反応溶媒が水の場合には、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレートを濾過し、水で洗浄することによって簡単に除去できる。
【0099】
また、例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートがテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライドであり、カチオン種発生化合物がN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩である場合には、両者の反応によって、目的物であるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレートが得られると共に、臭化塩化マグネシウム等のマグネシウムハロゲン化物が副生される。
【0100】
該マグネシウムハロゲン化物は、例えば分液、濾過、洗浄等の操作を行うことにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレートから簡単に分離・除去することができる。具体的には、例えば、臭化塩化マグネシウムは、塩酸等の酸性水溶液で洗浄することによって、或いは、塩酸過剰のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩を用いて反応を行った後に水で洗浄することによって、簡単に分離・除去することができる。
【0101】
つまり、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体は、例えば分液や濾過等の簡単な操作を行った後、必要に応じて反応溶媒の除去(留去)等の簡単な操作を行うことにより、結晶として容易に単離・精製することができる。
【0102】
上記第2の製造方法において、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、カチオン種発生化合物とを反応させる第1の工程は、前記の反応溶媒中で行われる。
【0103】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、カチオン種発生化合物とを混合する方法としては、具体的には、例えば、反応溶媒にテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体およびカチオン種発生化合物を混合する方法;テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶液に、カチオン種発生化合物またはその溶液を混合する方法;カチオン種発生化合物の溶液に、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体またはその溶液を混合する方法;等が挙げられるが、特に限定されるものではない。テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶液に、カチオン種発生化合物の溶液を混合する場合、並びに、カチオン種発生化合物の溶液に、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶液を混合する場合には、添加する側の溶液を滴下することがより好ましい。
【0104】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体とカチオン種発生化合物との反応における、反応温度並びに反応時間、即ち、反応条件は、特に限定されるものではない。本発明にかかる製造方法においては、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体とカチオン種発生化合物とを反応溶媒に溶解または懸濁させてなる反応液を、沸点以下で所定時間、撹拌することにより、反応を容易に進行させることができる。従って、目的物であるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を簡単に得ることができる。
【0105】
例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体がテトラキス(フッ化アリール)ボレート・アルカリ金属塩・エーテル錯体、またはテトラキス(フッ化アリール)ボレート・アルカリ土類金属塩・エーテル錯体であり、カチオン種発生化合物がN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩である場合には、両者の反応によって、目的物であるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が得られると共に、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物、または塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩化物が副生される。これらアルカリ金属塩化物またはアルカリ土類金属塩化物は、例えば、分液・濾過・洗浄等の操作を行うことにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体の溶液から簡単に分離・除去することができる。具体的には、例えば、アルカリ金属塩化物は、水で洗浄することによって簡単に分離・除去することができる。
【0106】
また、例えば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体がテトラキス(フッ化アリール)ボレート・マグネシウムハライド・エーテル錯体であり、カチオン種発生化合物がN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩である場合には、両者の反応によって、目的物であるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体が得られると共に、臭化塩化マグネシウム等のマグネシウムハロゲン化物が副生される。
【0107】
該マグネシウムハロゲン化物は、例えば分液、濾過、洗浄等の操作を行うことにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から簡単に分離・除去することができる。具体的には、例えば、臭化塩化マグネシウムは、塩酸等の酸性水溶液で洗浄することによって、或いは、塩酸過剰のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩を用いて反応を行った後に水で洗浄することによって、簡単に分離・除去することができる。
【0108】
つまり、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体は、例えば分液や濾過等の簡単な操作を行った後、必要に応じて反応溶媒の除去(留去)等の簡単な操作を行うことにより、結晶として容易に単離・精製することができる。
【0109】
尚、第2の製造方法において、カチオン種発生化合物を反応させる第1の工程は、単独で実施すれば、つまり、第2の工程を実施しなければ、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体の製造方法となる。上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用なテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を、高純度で、効率的かつ安価に製造することができる。
【0110】
上記第2の製造方法において、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から多官能エーテルを除去する第2の工程は、反応容器中でテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を加熱して、多官能エーテルを反応容器外へ留出させる方法によって行うことが望ましい。
【0111】
上記加熱温度は、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から多官能エーテルが除去される温度であればよく、特に限定されるものではないが、40℃以上であることがより好ましく、40℃〜200℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、加熱時間は、特に限定されるものではない。
【0112】
多官能エーテルを反応容器外へ留出させるためには、反応容器内の温度を、反応容器内の圧力における多官能エーテルの沸点よりも高い温度にする必要がある。そのため、必要に応じて、反応容器内を減圧してもよい。これにより、比較的低温で多官能エーテルを留出させることができる。
【0113】
また、上記第2の工程では、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を、溶媒中に溶解させた溶液状態で用いてもよく、また、溶媒中に懸濁させた懸濁状態で用いてもよい。
【0114】
テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を溶液状態で用いる場合には、溶媒(或いはその一部)として、テトラキス(フッ化アリール)ボレートが溶解している溶媒を用いることができる。従って、前記第1の工程で得られるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体の溶液から該エーテル錯体を単離しなくとも、該溶液を用いて、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造することができる。
【0115】
尚、第2の製造方法において、多官能エーテルを除去する第2の工程は、単独で実施すれば、つまり、第1の工程を実施しなければ、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を、高純度で、効率的かつ安価に製造することができるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法となる。
【0116】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例中に示したNMR(核磁気共鳴)スペクトルデータは、 1H−NMRの場合にはテトラメチルシラン(TMS)を標準物質として測定し、19F−NMRの場合にはトリフルオロ酢酸を標準物質として測定した。そして、標準物質のシグナルを0ppmとした。
【0117】
〔実施例1〕
温度計、滴下ロート、蒸留装置および撹拌器を備えた反応容器に、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体としてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.0152モル、および、アセトンとイオン交換水との混合溶媒(混合体積比1:1)100mlを仕込んだ。また、カチオン種発生化合物としてのN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は0.0167モル)20mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0118】
次に、上記反応容器の内容物を撹拌しながら、90℃で30分間加熱し、1,2−ジメトキシエタンとアセトンとを蒸留装置によって反応系外に留去した。これにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレートとしてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウムを水溶液の状態で得た。
【0119】
続いて、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を同温度(90℃)で10分間かけて滴下した後、さらに、同温度(90℃)で30分間撹拌した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させた後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓(ケーキ)をイオン交換水で洗浄した。
【0120】
そして、洗浄後の濾滓を減圧下で乾燥することにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体としてのN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の粉体として得た。
【0121】
得られたN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は、19F−NMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定することによって求めた。即ち、p−フルオロトルエンを内部標準として用い、19F−NMRを所定の条件下で測定した。そして、得られたチャートから、p−フルオロトルエンのフッ素原子の積分値と、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートにおけるペンタフルオロフェニル基のオルト位のフッ素原子の積分値との比を求め、該積分比からN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの重量を算出した。
【0122】
その結果、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体を基準とするN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は92.5モル%であり、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの純度は99%であった。
【0123】
〔実施例2〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.0446モル、および、イオン交換水200gを仕込み、撹拌して懸濁液を得た。
【0124】
続いて、上記懸濁液を撹拌しながら加熱し、蒸留装置を通して1,2−ジメトキシエタンを留出させた後、内容物を50℃に冷却した。これにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレートとしてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウムを水溶液の状態で得た。
【0125】
次に、カチオン種発生化合物としてのN,N−ジメチルアニリン硫酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン硫酸塩の量は0.060モル)80mlを滴下ロートに仕込んだ。そして、上記のN,N−ジメチルアニリン硫酸塩水溶液を、上記のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウムの水溶液に、撹拌下、50℃で滴下した。反応液を室温まで冷却して結晶を析出させた後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0126】
さらに、洗浄後の濾滓を減圧下で乾燥することにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の粉体として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は90.9モル%であり、その純度は99%であった。
【0127】
〔実施例3〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体としてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体2.29ミリモル、および、ジ−n−ブチルエーテル40mlを仕込み、撹拌して混合溶液を得た。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は3.51ミリモル)10mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0128】
次に、上記混合溶液を撹拌しながら、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で滴下した。滴下終了後、反応容器内の混合液を加熱し、蒸留装置を通して1,2−ジメトキシエタンを留出させた。
【0129】
続いて、反応液を室温まで冷却し、ジ−n−ブチルエーテル層と水層とに分液した。得られたジ−n−ブチルエーテル層からジ−n−ブチルエーテル層を減圧下で留去したところ、結晶が析出した。反応容器の内容物を吸引濾過して析出した結晶を集め、集めた結晶を少量のジ−n−ブチルエーテルで洗浄した。
【0130】
そして、洗浄後の結晶を、減圧下、80℃で一晩かけて乾燥することにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の粉体として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は58.8モル%であり、その純度は99%であった。
【0131】
〔実施例4〕
温度計、滴下ロート、還流冷却管および撹拌器を備えた反応容器に、アセトンとイオン交換水との混合溶媒(混合体積比1:1)中にテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体としてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウム・1,2−ジエトキシエタン錯体0.123モルを溶解してなる溶液300mlを仕込んだ。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は0.135モル)100mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0132】
次に、上記反応容器の内容物を撹拌しながら、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で30分間かけて滴下した後、さらに、同温度(室温)で30分間撹拌した。これにより、結晶が析出した。反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0133】
そして、洗浄後の濾滓を減圧下で乾燥することにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体としてのN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジエトキシエタン錯体を、白色の粉体として得た。
【0134】
実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジエトキシエタン錯体の収率は49.8モル%であり、その純度は99%であった。
【0135】
さらに、p−フルオロトルエンを内部標準として用い、 1H−NMRを所定の条件下で測定した。そして、得られたチャートから、p−フルオロトルエンのメチル基の積分値と、N,N−ジメチルアニリンのメチル基の積分値と、1,2−ジエトキシエタンのメチル基の積分値との積分比を求め、該積分比からN,N−ジメチルアニリンおよび1,2−ジエトキシエタンの重量を算出した。N,N−ジメチルアニリンおよび1,2−ジエトキシエタンの重量から、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジエトキシエタン錯体におけるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと1,2−ジエトキシエタンとのモル比を算出したところ、該モル比は1:1であった。
【0136】
一方、前記の濾過により得られた濾液を減圧下で濃縮することによって、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジエトキシエタン錯体を白色の結晶として回収したところ、回収された該錯体の収率は45.0モル%(即ち、合計の収率は94.8モル%)であった。
【0137】
N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジエトキシエタン錯体は、融点測定、IR(赤外吸収スペクトル)、19F−NMR、および 1H−NMRの各分析を行うことにより同定した。各分析により得られたデータは、
融点:162℃〜163℃
IR(KBr,cm-1):2984,2941,1644,1515,1465,1277,1112,1069,980
19F−NMR(CDCl3,δ):−56.8,−87.1,−91.0
1H−NMR(CDCl3,δ):1.22(6H,t,J=7.2Hz),3.22(6H,s),3.40〜3.68(8H,m),7.31〜7.33(2H,m),7.56〜7.59(3H,m)
であった。
【0138】
〔実施例5〕
実施例4と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.0188モルを仕込み、イオン交換水50mlに懸濁させた。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は0.0207モル)20mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0139】
次に、上記の懸濁液を撹拌しながら、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で30分間かけて滴下した後、さらに、同温度(室温)で30分間撹拌した。これにより、結晶が析出した。反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0140】
そして、洗浄後の濾滓を減圧下で乾燥することにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体としてのN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体を、白色の粉体として得た。
【0141】
実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体の収率は93.1モル%であり、その純度は99%であった。
【0142】
さらに、実施例4と同様の方法で算出したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体におけるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと1,2−ジメトキシエタンとのモル比は、1:1であった。
【0143】
尚、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体は、以下に示す各分析データ
融点:129℃〜131℃
IR(KBr,cm-1):2952,2908,1646,1517,1456,1277,1083,978
19F−NMR(CDCl3,δ):−56.6,−85.5,−90.1
1H−NMR(CDCl3,δ):3.11(6H,s),3.25(6H,s),3.42(4H,s),7.20〜7.50(5H,m)
により同定した。
【0144】
〔実施例6〕
実施例4と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウム・1,2−ジメトキシエタン錯体6.44ミリモルを仕込むと共に、アセトン20mlとイオン交換水20mlとを加え、錯体を溶解した。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は7.08ミリモル)20mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0145】
次に、上記反応容器の内容物を撹拌しながら、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で10分間かけて滴下した後、さらに、同温度(室温)で1時間撹拌した。続いて、上記反応容器の内容物を、減圧下で40℃に加熱してアセトンを留去した後、イソプロピルエーテルで抽出した。抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、該硫酸マグネシウムを濾別した後、減圧下でイソプロピルエーテルを留去した。これにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体を、淡黄色の油状物として得た。
【0146】
実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体の収率は82.8モル%であり、その純度は99%であった。
【0147】
〔実施例7〕
実施例4と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム・ジエチレングリコールジメチルエーテル錯体1.03ミリモルを仕込むと共に、イオン交換水10mlを加え、錯体を懸濁させた。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は1.23ミリモル)10mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0148】
次に、上記反応容器の内容物を撹拌しながら、滴下ロート内のN,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で10分間かけて滴下した後、さらに、同温度(室温)で1時間撹拌した。これにより、結晶が析出した。反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0149】
そして、洗浄後の濾滓を減圧下で乾燥することにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体としてのN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチレングリコールジメチルエーテル錯体を、白色の粉体として得た。
【0150】
実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチレングリコールジメチルエーテル錯体の収率は89.3モル%であり、その純度は99%であった。
【0151】
さらに、実施例4と同様の方法で算出したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチレングリコールジメチルエーテル錯体におけるN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとジエチレングリコールジメチルエーテルとのモル比は、1:1であった。
【0152】
尚、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチレングリコールジメチルエーテル錯体は、以下に示す各分析データ
融点:179℃〜180℃
IR(KBr,cm-1):2940,2904,1644,1515,1468,1462,1278,1114,1084,978
19F−NMR(CDCl3,δ):−56.8,−87.1,−91.0
1H−NMR(CDCl3,δ):3.25(6H,s),3.38(6H,s),3.41〜3.58(4H,m),3.59〜3.66(4H,m),7.34〜7.36(2H,m),7.57〜7.58(3H,m)
により同定した。
【0153】
〔実施例8〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウム・1,2−ジメトキシエタン錯体6.44ミリモルをアセトンに溶解してなるアセトン溶液30mlを仕込んだ。
【0154】
上記反応容器の内容物を撹拌しながら30分間加熱し、1,2−ジメトキシエタンとアセトンとを蒸留装置によって反応系外に留去した。さらに、反応容器の内温が100℃になるまで加熱した後、室温まで冷却した。
【0155】
これにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレートとしてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウムを淡黄色の油状物として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウムの収率は95.3モル%であった。
【0156】
〔実施例9〕
実施例1と同様の反応容器に、実施例5で得られたN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・1,2−ジメトキシエタン錯体5.34ミリモルをアセトンとイオン交換水との混合溶媒(混合体積比1:1)に溶解してなる溶液40mlを仕込んだ。
【0157】
上記反応容器の内容物を撹拌しながら、反応容器の内温を80℃まで上げ、30分間、同温度(80℃)に保った後、同温度(80℃)で減圧することにより、アセトンおよびイオン交換水と共に、1,2−ジメトキシエタンを反応系外に留去した。
【0158】
これにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の粉体として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は93.6モル%であり、その純度は99%であった。
【0159】
〔実施例10〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・リチウム・1,2−ジメトキシエタン錯体1.24ミリモルをアセトンとイオン交換水との混合溶媒(混合体積比1:1)に溶解してなる溶液20mlを仕込んだ。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は1.34ミリモル)10mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0160】
上記反応容器の内容物を撹拌しながら、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を室温で10分間かけて滴下した後、さらに、同温度(室温)で1時間撹拌した。その後、反応容器の内温を100℃まで昇温して、30分間、同温度(100℃)に保ち、アセトンと1,2−ジメトキシエタンとを留去した。反応生成物をイソプロピルエーテル20mlで抽出した後、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。該硫酸マグネシウムを濾別した後、減圧下でイソプロピルエーテルを留去した。
【0161】
これにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、薄茶色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は95.6モル%であり、その純度は99%であった。
【0162】
〔実施例11〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・カリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.0152モルをアセトンとイオン交換水との混合溶媒(混合体積比1:1)に溶解してなる溶液100mlを仕込んだ。また、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液(N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩の量は0.0167モル)20mlを滴下ロートに仕込んだ。
【0163】
上記反応容器の内容物を撹拌しながら、反応容器の内温を90℃まで昇温し、同温度(90℃)で90分間撹拌して、アセトンと1,2−ジメトキシエタンとを留去した。
【0164】
次に、N,N−ジメチルアニリン・塩酸塩水溶液を同温度(90℃)で30分間かけて滴下した。反応容器の内温を室温まで冷却して結晶を析出させた後、反応容器の内容物を吸引濾過して析出した結晶を集め、集めた結晶をイオン交換水100mlで洗浄した。
【0165】
そして、洗浄後の結晶を90℃で減圧乾燥することにより、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、淡黄色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は94.0モル%であり、その純度は99%であった。
【0166】
〔実施例12〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.0103モル、および、イオン交換水50mlを仕込み、撹拌して懸濁液を得た。
【0167】
続いて、上記懸濁液を撹拌しながら加熱し、蒸留装置を通して1,2−ジメトキシエタンを留出させた。これにより、テトラキス(フッ化アリール)ボレートとしてのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウムを水溶液の状態で得た。
【0168】
上記水溶液を55℃まで冷却した後、反応容器の蒸留装置を還流冷却器に切り替えると共に、カチオン種発生化合物としての臭化テトラフェニルフォスフォニウム0.0103モルとアセトン60mlとを上記水溶液に加え、撹拌して懸濁液を得た。
【0169】
上記懸濁液を撹拌しながら加熱し、1.5時間かけて還流を行った。さらに、還流温度で、反応容器の還流冷却器を蒸留装置に切り替え、溶媒を35.4g留出させた。反応容器の内温を室温まで冷却して結晶を析出させた後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0170】
そして、洗浄後の濾滓を80℃で減圧乾燥することにより、テトラフェニルフォスフォニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、テトラフェニルフォスフォニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は96.3モル%であり、その純度は99%であった。
【0171】
〔実施例13〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.015モル、および、イオン交換水50mlを仕込み、撹拌して懸濁液を得た。
【0172】
続いて、上記懸濁液を撹拌しながら加熱し、蒸留装置を通して1,2−ジメトキシエタンを留出させた。これにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウムを水溶液の状態で得た。
【0173】
上記水溶液を室温まで冷却した後、カチオン種発生化合物としてのキノリン・塩酸塩0.016モルを含む水溶液を上記水溶液に加え、1時間撹拌した。その後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0174】
そして、洗浄後の濾滓を80℃で減圧乾燥することにより、キノリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、キノリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は82.3モル%であり、その純度は99%であった。
【0175】
〔実施例14〕
実施例13におけるキノリン・塩酸塩の水溶液の代わりに、カチオン種発生化合物としてのヨウ化−N−メチルピリジン0.016モルを含む水溶液を用いた以外は、同実施例の反応および操作と同様の反応および操作を行った。これにより、N−メチルピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、N−メチルピリジニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は54.7モル%であり、その純度は99%であった。
【0176】
〔実施例15〕
実施例13におけるキノリン・塩酸塩の水溶液の代わりに、カチオン種発生化合物としてのヨウ化トリメチルスルフォニウム0.016モルを含む水溶液を用いた以外は、同実施例の反応および操作と同様の反応および操作を行った。これにより、トリメチルスルフォニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、トリメチルスルフォニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は89.5モル%であり、その純度は99%であった。
【0177】
〔実施例16〕
実施例1と同様の反応容器に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム・1,2−ジメトキシエタン錯体0.017モル、および、イオン交換水50mlを仕込み、撹拌して懸濁液を得た。
【0178】
続いて、上記懸濁液を撹拌しながら加熱し、蒸留装置を通して1,2−ジメトキシエタンを留出させた。これにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウムを水溶液の状態で得た。
【0179】
上記水溶液を室温まで冷却した後、カチオン種発生化合物としての塩化ジフェニルヨードニウム0.016モルを上記水溶液に加え、3時間撹拌した。その後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をイオン交換水で洗浄した。
【0180】
そして、洗浄後の濾滓を80℃で減圧乾燥することにより、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、白色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は92.3モル%であり、その純度は99%であった。
【0181】
〔実施例17〕
実施例16の操作と同様の操作を行うことにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウムを水溶液の状態で得た。上記水溶液を100℃で減圧乾固することにより、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ナトリウム11.9gを固体の状態で得た。
【0182】
次に、上記固体をn−ヘキサン200mlに懸濁させた後、該懸濁液に、カチオン種発生化合物としてのトリチルクロライド0.019モルを加え、還流温度で6時間撹拌した。上記懸濁液を室温まで冷却した後、反応容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をジクロロメタンに溶解させた。
【0183】
そして、濾滓に含まれる不溶物(沈殿物)を吸引濾過して除去した後、得られた濾液を減圧濃縮した。次いで、濃縮物に、結晶が析出するまでn−ヘキサンを添加した。16時間静置した後、容器の内容物を吸引濾過し、得られた濾滓をn−ヘキサンで洗浄した。
【0184】
そして、洗浄後の濾滓を80℃で減圧乾燥することにより、トリチル・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを、黄色の結晶として得た。実施例1と同様の方法で分析したところ、トリチル・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの収率は30.6モル%であり、その純度は99%であった。
【0185】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の一般式(2)
【0186】
【化20】
【0187】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Z+ は一価のカチオン種を表し、nは2または3である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、以上のように、一般式(1)
【0188】
【化21】
【0189】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属ハライドを表し、nは2または3であり、mはMが水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハライドである場合に1、アルカリ土類金属である場合に2である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを出発物質とする方法である。
【0190】
本発明の請求項2記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、以上のように、一般式(3)
【0191】
【化22】
【0192】
(式中、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表す)
で表されるエーテル化合物を反応系外に除去する工程を含む方法である。
【0193】
本発明の請求項3記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、以上のように、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去して一般式(4)
【0194】
【化23】
【0195】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルカリ土類金属ハライドを表し、nは2または3であり、mはMが水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハライドである場合に1、アルカリ土類金属である場合に2である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートを得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させる方法である。
【0196】
本発明の請求項4記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、以上のように、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させて一般式(5)
【0197】
【化24】
【0198】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、R10はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表し、かつ、該R1 〜R5 のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、該R6 〜R10のうちの少なくとも一つはフッ素原子であり、R11、R12はそれぞれ独立してヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Yは炭化水素二価基を表し、Z+ は一価のカチオン種を表し、nは2または3である)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去する方法である。
【0199】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと比較して容易に高純度に精製できる前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を出発物質とするので、前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を高純度で、効率的かつ安価に製造することができるという効果を奏する。
【0200】
また、本発明の請求項5記載の前記一般式(4)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法は、以上のように、前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から前記一般式(3)で表されるエーテル化合物を除去する方法である。
【0201】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレートと比較して容易に高純度に精製できる前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体を用いるので、従来の有機リチウム化合物やグリニャール試薬から直接的に製造する方法と比較して、高純度のテトラキス(フッ化アリール)ボレートを製造することができるという効果を奏する。
【0202】
さらに、本発明の請求項6記載の前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体の製造方法は、以上のように、前記一般式(1)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させる方法である。
【0203】
上記方法によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用な新規物質である前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を製造することができるという効果を奏する。
【0204】
また、本発明の請求項7記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体は、以上のように、前記一般式(5)で表される構成である。
【0205】
上記構成によれば、テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を製造するための中間体として有用な新規物質であるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を提供することができるという効果を奏する。
【0206】
さらに、本発明の請求項8記載の前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法は、以上のように、前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から前記一般式(3)で表されるエーテル化合物を除去する方法である。
【0207】
上記方法によれば、前記一般式(5)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から前記一般式(2)で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体を効率的かつ安価に製造することができるという効果を奏する。
Claims (8)
- 一般式(1)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを出発物質とすることを特徴とする一般式(2)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法。 - 上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去して一般式(4)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートを得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレートと、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させることを特徴とする請求項2記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法。 - 上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、上記の一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させて一般式(5)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体を得た後、上記テトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から上記エーテル化合物を除去することを特徴とする請求項2記載のテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法。 - 一般式(1)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体から一般式(3)
で表されるエーテル化合物を除去することを特徴とする一般式(4)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレートの製造方法。 - 一般式(1)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート・エーテル錯体と、一価のカチオン種を発生する化合物とを反応させることを特徴とする一般式(5)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体の製造方法。 - 一般式(5)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体・エーテル錯体から一般式(3)
で表されるエーテル化合物を除去することを特徴とする一般式(2)
で表されるテトラキス(フッ化アリール)ボレート誘導体の製造方法。
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