JP4215294B2 - ドライエッチング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はドライエッチング方法に関する。より詳しくは、高速エッチングが可能で、且つフォトレジストおよびポリシリコンなどの保護膜に対し良好な選択性を示すドライエッチング法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエレクトロニクスの急速な進歩の大きな一因として、極めて高集積化された半導体デバイスの実用化があげられる。ドライエッチング技術は、こうした高集積化のための微細なパターンをシリコンウエハー上に形成するうえで極めて重要な技術として日々改良がなされている。
このドライエッチングでは、プラズマ放電などによりフッ素を含む反応活性種を生成させるため、エッチングガスとしてフッ素原子を多く含むガス類が用いられてきた。フッ素含有エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、三フッ化窒素、三フッ化臭化炭素、トリフルオロメタン、六フッ化エタン、八フッ化プロパンなどの高度にフッ素化された化合物が挙げられている。
【0003】
ところで、地球環境を保全しようという取り組みが国際的に進められており、特に地球の温暖化防止策は大きな課題になっている。例えば、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)においては、国際的な合意事項の中に二酸化炭素の排出量の総量規制が盛り込まれている。このような状況下において、従来利用されてきた高度にフッ素化された化合物も、その長い大気寿命と大きな地球温暖化係数のため地球温暖化防止の観点から代替物の探索の必要性が指摘されるようになってきた。上記のエッチング用ガスにおいても、四フッ化炭素、六フッ化エタンおよび六フッ化硫黄の大気寿命はそれぞれ50,000年、10,000年および3,200年と長いことが示されており、赤外線吸収量も多く、地球温暖化への影響が大きいことが知られている。こうした地球温暖化への影響を解決し、しかも従来のエッチング用ガスの性能と比較して遜色のない新たなエッチング用ガスを用いたエッチング方法の開発が望まれている。
【0004】
一方、ドライエッチングにおいて、フォトレジストおよびポリシリコンなどの保護膜に対する選択性を高める方法が種々提案されている。例えば、特開平4−170026号公報には、パーフルオロプロペン、パーフルオロブテンのような不飽和フルオロカーボンを含むガスを用いて被エッチング基体の温度を50℃以下に制御しながらシリコン化合物をエッチングする技術が開示されている。さらに、特開平4−258117号公報には、パーフルオロシクロプロパン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロシクロブテン、パーフルオロシクロペンテンなどの環状飽和または環状不飽和フルオロカーボンを含むガスを用いて、同様に被エッチング基体の温度を50℃以下に制御しながらエッチングする技術が開示されている。
【0005】
ところで、エッチングは発熱を伴ううえ、非常に希薄なガス条件下に行われるため、基体の温度がかなり上昇する。そのため、上記公開公報に記載されるように被エッチング基体温度を50℃以下に制御するには、外部冷却装置に接続された内部冷却手段を具えた特殊なエッチング装置を用いねばならず、技術的に困難を伴うとともに装置コストが高く、しかもエッチング速度が遅いため、工業的に著しく不利である。従って、そのような低温に制御する制約を伴わない、または緩和されたエッチングの改良技術が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記のような従来技術の状況に鑑み、被エッチング基体の温度を実質的に制御することなしにフォトレジストおよびポリシリコンなどの保護膜に対し高い選択性を示し、且つ高速でエッチングすることができるドライエッチング方法を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、種々の飽和および不飽和、ならびに直鎖状および環状のフッ素化合物を含むエッチングガスを用いてシリコン化合物のドライエッチングを繰返した結果、意外にも、オクタフルオロシクロペンテンを含むエッチングガスを用いると、被エッチング基体の温度制御をすることなしにドライエッチングを行っても、高い対フォトレジスト選択性および高い対ポリシリコン選択性を有し、しかもエッチングが高速度で達成できることを見出した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用い、かつ、エッチング時において、被エッチング基体の温度を、外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく、被エッチング基体が到達する温度である60℃〜250℃として、プラズマによりドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用いると、ドライエッチング時に、プラズマによってフッ素ラジカルが発生する。
【0011】
本発明においては、オクタフルオロシクロペンテン以外のパーフルオロオレフィン、すなわち、直鎖状または環状の不飽和パーフルオロカーボン、および/またはパーフルオロアルカンおよび/またはパーフルオロシクロアルカンを併用してもよいが、これらの併用されるパーフルオロカーボン類を多量に使用すると本発明の目的を達成することはできないので、その量は、通常全フルオロカーボン量の30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下とする。
また、ドライエッチング用ガスとして、ハイドロフルオロカーボンガスをオクタフルオロシクロペンテンと組合わせて用いることができる。
【0012】
ハイドロフルオロカーボンガスは、揮発性を有するものであれば特に制限はないが、通常は、直鎖状もしくは分岐鎖状または環状の飽和炭化水素の水素原子の半数以上をフッ素で置換した化合物の中より選択される。かかる飽和ハイドロフルオロカーボンガスとしては、例えば、トリフルオロメタン、ペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ペンタフルオロプロパン、ノナフルオロブタン、オクタフルオロブタン、ヘプタフルオロブタン、ヘキサフルオロブタン、ウンデカフルオロペンタン、デカフルオロペンタン、ノナフルオロペンタン、オクタフルオロペンタン、トリデカフルオロヘキサン、ドデカフルオロヘキサン、ウンデカフルオロヘキサン、ヘプタフルオロシクロブタン、ヘキサフルオロシクロブタン、ノナフルオロシクロペンタン、オクタフルオロシクロペンタン、ヘプタフルオロシクロペンタンなどがあげられる。これらの中でもトリフルオロメタン、ペンタフルオロエタンおよびテトラフルオロエタンがが好ましい。ハイドロフルオロカーボンガスは単独で用いてもよく、または2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0013】
オクタフルオロシクロペンテンに併用するハイドロフルオロカーボンガスの量はガスの被エッチング材料に及ぼす影響の度合いによって異なるが、通常はオクタフルオロシクロペンテンに対して50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。本発明においては、上記ドライエッチング用ガスに、必要に応じて、ドライエッチング用ガスで一般に使用されるその他種々のガスを含有せしめることができる。そのようなガスとしては、例えば、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス、塩素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、酸化窒素ガス、酸化硫黄ガスなどがあげられ、これらの中でも、酸素および二酸化炭素ガスが好ましく、酸素が最も好ましい。これらの添加ガスは単独で使用してもよく、また、2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0014】
添加するガスの量はガスの被エッチング材料に及ぼす影響の度合いによって異なるが、通常は、オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガス100重量部に基づき40重量部以下、好ましくは3〜25重量部での範囲で選ばれる。被エッチング基体とは、ガラス基板、シリコン単結晶ウエハー、ガリウム−ヒ素などの基板上に被エッチング材料の薄膜層を備えたものである。被エッチング材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アルミニウム、タングステン、モリブデン、タンタル、チタン、クロム、酸化クロム、金などがあげられる。被エッチング基体としては、酸化シリコンまたはアルミニウム薄膜を備えたシリコンウエハーが好適に用いられる。被エッチング材料が酸化シリコンの場合、その上に設ける保護膜の好ましい例としてはフォトレジストおよびポリシリコンが挙げられる。
【0015】
本発明においては、エッチング時において、被エッチング基体の温度を、外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく、被エッチング基体が到達する温度である60℃〜250℃として、プラズマによりドライエッチングすることが特徴である。従って、エッチング時の急激な発熱に対応して急冷するような操作は除外されるが、被エッチング基体を取出すまでに徐冷する程度の操作は含まれる。このように、被エッチング基体の温度を実質的に制御せずに、その温度を、60℃〜250℃、好ましくは80℃〜200℃の範囲となるようにすることによって、高い対ポリシリコン選択性および対フォトレジスト選択性を有したまま、高速エッチングが可能となる。しかも、低温でドライエッチングすることによって、オクタフルオロシクロペンテンの重合が促進されて基体上に生成ポリマーのデポジションが起こることが回避される。エッチング処理の時間は10秒〜10分程度であるが、本発明の方法によれば、概して、高速エッチングが可能なので、生産性向上の見地からも10秒〜3分が好ましい。
【0016】
本発明のドライエッチング方法において、上記ドライエッチング用ガスおよび所望により併用されるその他のガスを含むガス組成物のエッチング時の圧力は、特別な範囲を選択する必要はなく、一般的には、真空に脱気したエッチング装置内にガス組成物を10torr〜10-5torr程度の圧力になるように導入する。好ましくは10-2torr〜10-3torrである。
【0017】
本発明のドライエッチング方法においては、エッチングの際に照射するプラズマとして1010cm-3以上の高密度領域のものを発生せしめることが好ましい。特に、1010〜1012cm-3程度の密度が、より高性能を発現し、微細なパターンを形成するうえで特に好ましい。プラズマの密度が過度に小さいと、本発明が目的とする特に高いエッチング速度、高い対フォトレジスト選択性、および対ポリシリコン選択性を達成することができず、しかもデポジションによるポリマー膜を生成させる場合が多く、好ましくない。
従来より用いられている並行平板タイプやマグネトロンタイプの反応性イオンエッチング方式によるドライエッチングでは、一般的に、上記のような高密度領域のプラズマを実現するには不適である。上記のような高密度領域のプラズマを実現するための方法としてはヘリコン波や高周波誘導方式が推奨される。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例について、より具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその範囲を限定されるものではない。
実施例1〜9
ヘリコン波方式によるプラズマエッチング装置(I−4100SH型、アネルバ社製)中に、酸化シリコン(SiO2)膜、フォトレジスト(PR)膜、ポリシリコン(Poly−Si)膜の何れかを表面に形成した直径150mmのシリコンウエハーをセットし、系内を真空にした後、オクタフルオロシクロペンテンを含有するエッチング用ガス組成物を流量50sccmにて導入した。系内の圧力を5mmTorrに維持し、プラズマ発生の電気エネルギーを変えて表1記載のプラズマの密度の異なった条件で実験を行った。このとき、ウエハーの温度はことさら制御しなかったが、全ての実施例において約130℃まで上昇した。エッチングの時間は15〜60秒の範囲内で選択した。エッチング速度の測定はウエハー中心、およびウエハーの直径に沿った中心から両側へ35mmおよび65mmの測定点の計5点で行った。
【0019】
このときの各条件での各測定ポイントでのエッチング速度(ウエハー直径上の上記5つの測定点におけるエッチング速度を順次エッチング速度−1〜エッチング速度−5とした)を測定した。また、同一エッチング条件での酸化シリコン(SiO2)、フォトレジスト(PR)、ポリシリコン(Poly−Si)のエッチング速度の比較により、エッチングの対フォトレジスト選択性および対ポリシリコン選択性を評価した。選択性は以下の式より算出した。
選択性=(酸化シリコンの平均エッチング速度)/(フォトレジストまたはポリシリコンのエッチング速度)
【0020】
エッチング条件および評価結果を表1に示す。使用したウエハーの種類は次のとおりである。
SiO2:酸化シリコン膜を表面に形成PR:フォトレジストを表面に塗布
Poly−Si:ポリシリコン膜を表面に形成
なお、エッチング用ガスとして使用したオクタフルオロシクロペンテンについて、水酸化ラジカルとの反応速度の実測に基づき求めた大気寿命は1.0年であった。この事実から、地球温暖化への影響は極めて低いことが確認された。また、文献(Atmospheric Environment,Vol.26A,No7,P1331(1992))に準じて分子のHOMOエネルギーを計算し、大気寿命の推算を行った結果、大気寿命は0.3年となった。
【0021】
【表1】
【0022】
比較例1〜9
エッチング用ガス組成物に含まれるオクタフルオロシクロペンテンを従来よりエッチング用ガスガスとして使用されてきた四フッ化炭素に変えた他は実施例1〜9と同様にドライエッチングを行った。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
比較例10〜18
エッチング用ガス組成物に含まれるオクタフルオロシクロペンテンを従来より用いられている環状のガスであるオクタフルオロシクロンブタンに変えた他は実施例1〜9と同様にドライエッチングを行った。その結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
【発明の効果】
本発明に従って、オクタフルオロシクロペンテンを含有するエッチング用ガスを用い、かつ、エッチング時において、被エッチング基体の温度を、外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく、被エッチング基体が到達する温度である60〜250℃として、プラズマによりドライエッチングすることで高い対ポリシリコン選択性および高い対フォトレジスト選択性を有したまま、高速エッチングが可能となる。また、ポリマーが生成せず、基体上にポリマーのデポジションを生じない。従って、本発明の方法ではウエハーを冷却することはなく、外部冷却装置に接続された内部冷却手段を具えた特殊なエッチング装置を用いる必要がなく、工業的に著しく有利である。
【0027】
【発明の好ましい実施態様】
オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用い、かつ、エッチング時において、被エッチング基体の温度を、外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく、被エッチング基体が到達する温度である60〜250℃として、プラズマによりドライエッチングすることを特徴とする本発明のドライエッチング法の好ましい実施態様をまとめると以下のとおりである。
【0028】
1.被エッチング基体の到達温度が80〜200℃の範囲でドライエッチングを行う。
2.エッチングに際し、1010cm-3以上、より好ましくは1010〜1012cm-3、ガス組成物の圧力が10〜10-5torr、より好ましくは10-2〜10-3torrにてプラズマを発生させる。
【0029】
3.オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスがオクタフルオロシクロペンテンとハイドロフルオロカーボンとからなる。
4.上記3項のハイドロフルオロカーボンが鎖状もしくは分岐鎖状または環状の飽和炭化水素の水素原子の半数以上をフッ素原子で置換したものである。
5.上記3項または4項のハイドロフルオロカーボンの量が、オクタフルオロシクロペンテンに対して50モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
【0030】
6. オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスが添加ガスを含有する。
7.上記6項の添加ガスが酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス、塩素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、酸化窒素ガスおよび酸化硫黄ガスの中から選ばれる。
8.上記6項または7項の添加ガスの含有量が、オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガス100重量部に基づき40重量部以下である。
9.ヘリコン波方式または高周波誘導方式のプラズマエッチング装置を用いてドライエッチングする。
Claims (1)
- オクタフルオロシクロペンテンを含むドライエッチング用ガスを用い、かつ、エッチング時において、被エッチング基体の温度を、外部冷却装置に接続された内部冷却手段により被エッチング基体を冷却することなく、被エッチング基体が到達する温度である60℃〜250℃として、プラズマによりドライエッチングすることを特徴とするドライエッチング方法。
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