JP4214818B2 - 拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造設備の拘束性ブレークアウトの予知に用いられる温度センサの異常を検知する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
拘束性ブレークアウトとは、連続鋳造時に例えばモールドパウダーの鋳型・鋳片間への流入不良による潤滑不良等が原因で鋳型・鋳片間に焼付きが発生し、鋳片を下方に引き抜いた時に焼付部分の凝固シェルが破断してこの破断部が鋳型の下端から露出したところで鋳型内の溶鋼が外部に漏れ出すことをいう。
【0003】
連続鋳造時にこの拘束性ブレークアウトが発生すると、鋳造中断や設備損傷を引き起して生産性を低下させることになるため、従来においては、鋳型外面に複数の熱電対(温度センサ)を埋設して該熱電対による測温値の変化の異常を検出し、該検出結果に基づいて拘束性ブレークアウトの発生を推定して警報等を発し、鋳込速度を遅くする等の対策を施している。
【0004】
ところで、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等が生じると、実際の鋳型銅板の温度変化に対して熱電対の出力変化が鈍化して、即ち、出力変化が正常な熱電対よりも小さくなって時間遅れ等が生じ、熱電対による測温値変化の異常検出の精度が低下して拘束性ブレークアウトの予知の信頼性が損なわれることになる。
【0005】
この場合、熱電対単体の検査を行って正常、異常を判定する方法が提案されているが(例えば特許文献1参照)、これでは、熱電対を鋳型外面に取り付けた状態での該熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等を検査することができないことから、従来においては、鋳型外面に熱電対を取り付けた状態で該熱電対を蒸気やバーナで加熱してその出力変化により熱電対の正常、異常を判定するようにしたものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−137956号公報
【特許文献2】
特開平8−159883号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献2に記載のように蒸気やバーナで熱電対を加熱しても実際の溶鋼熱で鋳型を介して熱電対を衝撃的に加熱するものではないため、正常な熱電対と異常な熱電対との出力変化に有意差が得られにくく、仮に熱電対の異常を判定できたとしても、連続鋳造を継続していくうちに徐々に劣化したり冷却水等が浸水して出力変化が鈍化していく熱電対を検知することはできないという不都合がある。
【0008】
本発明はこのような不都合を解消するためになされたものであり、第1の目的は、温度センサの温度変化に対する出力変化の鈍化をオンラインで正確に検知することができる拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、温度センサの浸水異常をオンラインで正確に、且つ迅速に検知することができる拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を提供することにある
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、連続鋳造設備の鋳型に取り付けられた複数の温度センサによる操業時の測温値の変化が、サンプリングしている測温値の最新値をT 、前回値をT i−1 、しきい値をΔT、最新測温値T 以前の過去の一定期間の測温値の標準偏差σを変数とした関数F(σ)とした場合に、T ≧F(σ)及びT −T i−1 ≧ΔTの両方の条件を満たしたときに異常と判定し、該異常判定結果に基づいて拘束性ブレークアウトを予知するに際して、前記温度センサの温度変化に対する測温値の変化の異常鈍化を検知する拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法であって、
異なる位置に配置された二つの前記温度センサにおける測温値の変化の前記異常判定の成立回数を比較すると共に、前記成立回数が多い方の前記温度センサの該成立回数が予め実験や経験で定められた所定の回数以上とされ、且つ前記成立回数が多い方の前記温度センサの該成立回数前記成立回数が少ない方の前記温度センサの該成立回数で除した比率が予め実験や経験で定められた所定の比率以上のときに、前記成立回数が少ない方の前記温度センサの温度変化に対する測温値の変化が異常鈍化したことを検知することを特徴とする。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に係る発明は、連続鋳造設備の鋳型に取り付けられた複数の温度センサによる操業時の測温値の変化が、サンプリングしている測温値の最新値をT 、前回値をT i−1 、しきい値をΔT、最新測温値T 以前の過去の一定期間の測温値の標準偏差σを変数とした関数F(σ)とした場合に、T ≧F(σ)及びT −T i−1 ≧ΔTの両方の条件を満たしたときに異常と判定し、該異常判定結果に基づいて拘束性ブレークアウトを予知するに際して、前記温度センサの浸水異常を検知する拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法であって、
所定の周期でサンプリングした前記温度センサの測温値の平均温度を演算すると共に、前記測温値の平均偏差を演算し、前記平均温度が前記温度センサが浸水したときにばらつく温度範囲内とされ、且つ前記平均偏差が所定の値以下のときに、前記温度センサの浸水異常であることを検知することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1は本発明の第1の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図、図2は熱電対出力(測温値)変化鈍化検知手段の作動を説明するためのフローチャート図、図3は本発明の第2の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図、図4は熱電対の取付構造を説明するための断面図、図5は浸水検知用コントローラの作動を説明するためのフローチャート図、図6は正常な熱電対及び浸水異常の熱電対における測温値と時間と鋳込み速度との関係を示すグラフ図、図7は本発明の第3の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図、図8は鈍化検知用コントローラの作動を説明するためのフローチャート図、図9は正常な熱電対及び鈍化異常の熱電対における鋳造初期の測温値と連続鋳造時の経過時間との関係を示すグラフ図である。
【0013】
まず、本発明の第1の態様の実施の形態から説明すると、図1において符号1は連続鋳造用鋳型、T101〜T132はこの鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数箇所埋設された熱電対(温度センサ)であり、各熱電対T101〜T132による測温値Tはコントローラ3によって所定の周期でサンプリングされて所定のプログラムによる処理が実行される。
コントローラ3は、F(σ)演算手段4、測温値変化異常判定手段5、拘束性ブレークアウト判定手段6及び熱電対出力(測温値)変化鈍化検知手段7を備える。
【0014】
測温値変化異常判定手段5は、個々の熱電対T101〜T132毎に操業時の測温値の変化が異常であるか否かを判定するものであり、次式(1)及び(2)の両方の条件を満たしたときに測温値の変化が異常であると判定し、該異常判定結果に基づいて拘束性ブレークアウト判定手段6は公知の判定ロジックを用いて拘束性ブレークアウトか否かを判定し、拘束性ブレークアウトと判定した場合は警報をモニタ画面等に表示したり、警報音を発生させる信号を出力し、この警報を認識した時点で鋳込速度を遅くする等の対策を施す。
【0015】
i ≧F(σ) …(1)
i −Ti-1 ≧ΔT …(2)
但し、F(σ):F(σ)演算手段4によって与えられる値でTi に対するしきい値(変動値)
i :最新測温値
i-1 :前回測温値
ΔT :しきい値(固定値:熱電対の最小測温単位の2〜3倍程度)F(σ)演算手段4は、最新測温値Ti 以前の過去の一定期間(例えば10点)の測温値の標準偏差σを変数とした関数F(σ)を各熱電対T101〜T132毎且つサンプリング周期毎に算出するものであり、次式(3)により算出される。
【0016】
F(σ)=T(avg) +kσ …(3)
但し、T(avg) :最新測温値Ti 以前の過去の一定期間(例えば10点)の測温値の平均値
σ :最新測温値Ti 以前の過去の一定期間(例えば10点)の測温値の標準偏差
k :測温値とブレークアウト痕等の関係から経験的に定まる定数で、この実施の形態ではk=3に設定する。
【0017】
各熱電対T101〜T132について、各測温値を基にF(σ)演算手段4によって演算されたF(σ)は熱電対T101〜T132の応答性のばらつきに応じて変更され、且つサンプリング周期毎に更新されて鋳込状況に応じて変動する。
熱電対出力変化鈍化検知手段7は、異なる位置に配置された二つの熱電対による測温値変化の前記測温値変化異常判定手段5による異常判定の成立回数を比較すると共に、成立回数が多い方の熱電対の該成立回数が所定の回数n以上とされ、且つ成立回数が多い方の熱電対の該成立回数を成立回数が少ない方の熱電対の該成立回数で除した比率が所定値H以上のときに、成立回数が少ない方の熱電対の温度変化に対する出力変化が、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等により鈍化したことを検知する。
【0018】
異なる位置に配置された二つの熱電対の組み合わせに特に制限はないが、もっとも好ましい熱電対の組合せは、鋳型1の短辺または長辺方向に向かい合う一対である。図1では短辺方向に向かい合う熱電対T103と熱電対T128の一対、長辺方向に向かい合う熱電対T131と熱電対T116の一対が例示できる。鋳型1の短辺または長辺方向に向かい合う一対の熱電対は、熱電対に異常のない場合、同様な測温値の変化を示す。そのため、一方の熱電対の異常を敏感に検出できる。言うまでもなく、別の一対、例えば隣接する一対を選択することができる。また、一つの熱電対の鈍化を検出するために、該熱電対と短辺または長辺方向に向かい合う熱電対からなる一対を選択して検知に供すると同時に、該熱電対と隣接する熱電対からなる一対を選択して検知に供してもよい。
【0019】
次に、熱電対出力変化鈍化検知手段7の具体的作動を図2を参照して説明する。なお、ここでは、鋳型1の短辺方向に互いに向かい合う一対の熱電対T103、T128を例に採って説明する。
まず、ステップS1では、熱電対T103の測温値変化の前記測温値変化異常判定手段5による異常判定の成立回数N1 と熱電対T128の測温値変化の前記測温値変化異常判定手段5による異常判定の成立回数N2 とを比較して、N1 >N2 のときはステップS2へ移行し、N1 >N2 でないときはステップS5に移行する。
【0020】
ステップS2では、熱電対T103における前記異常判定の成立回数N1が予め実験や経験で定められた所定回数n以上であるか否かを判断し、N1≧nであればステップS3に移行する。ステップS3では、熱電対T103における前記異常判定の成立回数N1を熱電対T128における前記異常判定の成立回数Nで除した比率N1/Nが予め実験や経験で定められた所定の比率H以上であるか否かを判断し、N1/N≧Hであれば、熱電対T128の温度変化に対する出力変化が、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等により鈍化したことを検知し(ステップS4)、オペレータ等に警報等を発するか、或いは熱電対T128を不使用状態にする信号を発する。
【0021】
一方、ステップS5では、熱電対T103の測温値変化の前記測温値変化異常判定手段5による異常判定の成立回数N1と熱電対T128の測温値変化の前記測温値変化異常判定手段5による異常判定の成立回数Nとを比較して、N>N1のときはステップS6へ移行する。
ステップS6では、熱電対T128における前記異常判定の成立回数Nが予め実験や経験で定められた所定回数n以上であるか否かを判断し、N≧nであればステップS7に移行する。ステップS7では、熱電対T128における前記異常判定の成立回数Nを熱電対T103における前記異常判定の成立回数N1で除した比率N/Nが予め実験や経験で定められた所定の比率H以上であるか否かを判断し、N/N≧Hであれば、熱電対T103の温度変化に対する出力変化が、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等により鈍化したことを検知し(ステップS8)、オペレータ等に対して警報等を発するか、或いは熱電対T103を不使用状態にする信号を出力する。
【0022】
上記の説明から明らかなように、この実施の形態では、操業時の実際の溶鋼熱による熱電対の測温値の変化に基づく異常判定の成立回数を用いて前記熱電対の温度変化に対する出力変化の鈍化を検知するようにしているので、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等による熱電対の出力変化の鈍化をオンラインで正確に検知することができる。
【0023】
なお、上記第1の態様の実施の形態では、鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数の熱電対を一段取り付けた場合を例に採ったが、これに限定されず、上下二段或いは上下三段以上に熱電対を取り付けた場合にも本発明を適用してもよい
【0025】
次に、図3〜図6を参照して、本発明の第2の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明する。なお、上記第1の態様の実施の形態と重複する部分については、各図に同一符号を付して説明する。
図3において符号1は連続鋳造用鋳型、T101〜T132はこの鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数箇所埋設された熱電対(温度センサ)であり、各熱電対T101〜T132による測温値は浸水検知用コントローラ31によって例えば数時間の浸水ロジック周期毎に所定の周期でサンプリングされて所定のプログラムによる処理が実行される。
【0026】
熱電対T101〜T132はいずれも同一構造であるため、熱電対T101について説明すると、熱電対T101は、図4に示すように、鋳型1の銅板とバックアップフレーム(水箱)20とを固定しているスタッドボルト21の軸芯を中空化し、その穴に通されてスプリング22により鋳型1の外面に押し付られた状態で着脱自在に取り付けられており、中空のスタッドボルト21内に水が浸入することで熱電対が浸水状態となり出力変化に異常をきたす(水の沸点近傍の温度以上を測定できなくなる)。なお、図4において符号23はスタッドボルト21の先端と鋳型1の外面との間に介装されたOリング、24は冷却水溝である。
【0027】
コントローラ31は、平均温度度演算手段41、平均偏差演算手段51及び浸水異常検知手段61を備える。
平均温度演算手段41は、各熱電対T101〜T132毎に測温値のサンプリングデータの合計をサンプリングデータ数で除して平均温度Ts(avg)を算出する。
平均偏差演算手段51は、各熱電対T101〜T132毎に全ての測温値のサンプリングデータについて、該サンプリングデータと前記平均温度Ts(avg)との差の絶対値を求め、その合計をサンプリングデータ数で除して平均偏差Ts(σ)を算出する。
【0028】
浸水異常検知手段61は、各熱電対T101〜T132について、前記平均温度Ts(avg)が、下限値Tmin <平均温度Ts(avg)<上限値Tmax の関係を満足し、且つ前記平均偏差Ts(σ)が所定値P以下(平均偏差Ts(σ)≦P)のときに、測温値の出力変化が100°C前後の小さいばらつきで推移したものと判断して熱電対が浸水異常であることを検知し、オペレータ等に警報等を発するか、或いは当該熱電対を不使用状態にする信号を出力する。なお、下限値Tmin 及び上限値Tmax については、熱電対が浸水すると、100°C前後の小さいばらつきに入る測定値を示すことから、例えば下限値Tmin を98°C、上限値Tmax を105°C程度に設定するが、これらは鋳込み状況に応じて適宜変更可能である。
【0029】
図6に正常な熱電対及び浸水異常の熱電対における測温値と時間と鋳込速度との関係を示す。図から、正常な熱電対は、各測温点の測温値が鋳込速度に追従して上昇するが、浸水異常の熱電対については、鋳込速度が上昇しても一定温度(100°C前後)になるとそれ以上上昇しなくなるのが判る。
次に、浸水検知用コントローラ31の作動を図5を参照して説明する。
【0030】
まず、ステップS11では、各熱電対T101〜T132から測温値をサンプリングし、ステップS12でサンプリングが完了すると、ステップS13に移行する。
ステップS13では、平均温度演算手段41によって、各熱電対T101〜T132毎に測温値のサンプリングデータの合計をサンプリングデータ数で除して平均温度Ts(avg)を算出し、ステップS14に移行する。
【0031】
ステップS14では、平均偏差演算手段51によって、各熱電対T101〜T132毎に全ての測温値のサンプリングデータについて、該サンプリングデータと前記平均温度Ts(avg)との差の絶対値を求め、その合計をサンプリングデータ数で除して平均偏差Ts(σ)を算出し、ステップS15に移行する。
ステップS15では、浸水異常検知手段61によって、各熱電対T101〜T132について、前記平均温度Ts(avg)が、下限値Tmin <平均温度Ts(avg)<上限値Tmax の関係を満足し、且つ前記平均偏差Ts(σ)が所定値P以下(平均偏差Ts(σ)≦P)であるか否かが判断され、下限値Tmin <平均温度Ts(avg)<上限値Tmax 、且つ平均偏差Ts(σ)≦Pである場合は、測温値の出力変化が100°C前後の小さいばらつきで推移したものと判断して熱電対が浸水異常であることを検知し、ステップS16に移行してオペレータ等に警報等を発するか、或いは当該熱電対を不使用状態にする信号を出力する。
【0032】
上記の説明から明らかなように、この実施の形態では、操業時の実際の溶鋼熱による熱電対の測温値の変化から熱電対の浸水異常を検知するようにしているので、熱電対の浸水異常をオンラインで正確に検知することができ、しかも、上記第1の態様の実施の形態のように、異常判定の成立回数の評価を行わなくて済むため、前記浸水異常の検知を迅速に行うことができる。
【0033】
なお、上記第2の態様の実施の形態では、鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数の熱電対を一段取り付けた場合を例に採ったが、これに限定されず、上下二段或いは上下三段以上に熱電対を取り付けた場合にも本発明を適用してもよい。
次に、図7〜図9を参照して、本発明の第3の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明する。なお、上記第1の態様の実施の形態と重複する部分については、各図に同一符号を付して説明する。
【0034】
図7において符号1は連続鋳造用鋳型、T101〜T132はこの鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数箇所埋設された熱電対(温度センサ)であり、各熱電対T101〜T132による測温値は鈍化検知用コントローラ32によって例えば鋳造初期の所定時間、例えば、湯面到達時(溶鋼注入により熱電対を設置した高さに溶鋼が到達した時)から数十分の間、所定の周期でサンプリングされて所定のプログラムによる処理が実行される。
【0035】
コントローラ32は、温度変化率演算手段42及び熱電対出力変化鈍化検知手段52を備える。
温度変化率演算手段42は、鋳造初期の湯面到達時から数十分の間、各熱電対T101〜T132毎に測温値データをサンプリングして、その温度変化率(deg/sec)を算出する。
【0036】
熱電対出力変化鈍化検知手段52は、前記温度変化率が予め実験や経験(過去の正常データ)等を基に定められた所定の値以下の場合に、好ましくは前記の場合に加えて更に、前記測温値の最高到達温度が予め実験や経験(過去の正常データ)等を基に定められた所定の値以下のときに、当該熱電対の温度変化に対する出力変化が、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等により鈍化したことを検知し、オペレータ等に警報等を発するか、或いは当該熱電対を不使用状態にする信号を出力する。なお、最高到達温度とは、湯面到達時から測温値が上昇していき、初めて下降を始める時点の測温値のことである。
【0037】
図9に正常な熱電対及び鈍化異常の熱電対における鋳造初期の測温値と鋳込み時間との関係を示す。図から明らかなように、正常な熱電対は湯面到達時から急激に温度が上昇して最高到達温度も高いのに対し、鈍化異常の熱電対は湯面到達時からの温度変化率が低く、最高到達温度も低いのが判る。
次に、鈍化検知用コントローラ32の作動を図8を参照して説明する。
【0038】
まず、ステップS21で湯面到達が検知されると、ステップS22に移行して、各熱電対T101〜T132から測温値を所定時間(例えば数十分)サンプリングし、ステップS23でサンプリングが完了すると、ステップS24に移行する。
ステップS24では、温度変化率演算手段42によって、各熱電対T101〜T132毎にサンプリングされた測温値データを基に、その温度変化率(deg/sec)を算出し、ステップS25に移行する。
【0039】
ステップS25では、熱電対出力変化鈍化検知手段52によって、前記温度変化率が予め実験や経験(過去の正常データ)等を基に定められた所定の値以下で、あるいは更に前記測温値の最高到達温度が予め実験や経験(過去の正常データ)等を基に定められた所定の値以下であるか否かを判断し、前者あるいは両方を満足する場合は、当該熱電対の温度変化に対する出力変化が、熱電対の劣化、熱電対のケーブルの異常、熱電対と鋳型外面(銅板)との接触不良、熱電対の浸水異常等により鈍化したことを検知し、オペレータ等に警報等を発するか、或いは当該熱電対を不使用状態にする信号を出力する。
【0040】
上記の説明から明らかなように、この実施の形態では、鋳造初期時の実際の溶鋼熱による熱電対の測温値を基に該熱電対の鈍化を検知するようにしているので、熱電対の出力変化の鈍化状態をオンラインで正確に、且つ鋳造初期に検知することができる。
なお、上記第3の態様の実施の形態では、鋳型1の外面(銅板)に周方向に沿って複数の熱電対を一段取り付けた場合を例に採ったが、これに限定されず、上下二段或いは上下三段以上に熱電対を取り付けた場合にも本発明を適用してもよい。
【0041】
また、上記第3の態様の実施の形態では、熱電対出力変化鈍化検知手段52が、前記温度変化率が所定の値以下で、あるいは更に前記測温値の最高到達温度が所定の値以下のときに、当該熱電対の温度変化に対する出力変化が鈍化したことを検知するようにしているが、熱電対出力変化鈍化検知手段52が、前記温度変化率が所定の値以下のときに、当該熱電対の温度変化に対する出力変化が鈍化したことを検知するようにしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、請求項1の発明によれば、操業時の実際の溶鋼熱による温度センサの測温値の変化に基づく異常判定の成立回数を用いて前記温度センサの温度変化に対する出力(測温値の)変化の鈍化を検知するようにしているので、該温度センサの出力変化の鈍化状態をオンラインで正確に検知することができるという効果が得られる。
【0043】
請求項2の発明では、操業時の実際の溶鋼熱による熱電対の測温値の変化から熱電対の浸水異常を検知するようにしているので、熱電対の浸水異常をオンラインで正確に検知することができ、しかも、請求項1の発明のように、異常判定の成立回数の評価を行わなくて済むため、前記浸水異常の検知を迅速に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図である。
【図2】熱電対出力変化鈍化検知手段の具体的作動を説明するためのフローチャート図である。
【図3】本発明の第2の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図である。
【図4】熱電対の取付構造を説明するための断面図である。
【図5】浸水検知用コントローラの作動を説明するためのフローチャート図である。
【図6】正常な熱電対及び浸水異常の熱電対における測温値と時間と鋳込み速度との関係を示すグラフ図である。
【図7】本発明の第3の態様の実施の形態の一例である拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法を説明するための説明図である。
【図8】鈍化検知用コントローラの作動を説明するためのフローチャート図である。
【図9】正常な熱電対及び鈍化異常の熱電対における鋳造初期の測温値と連続鋳造時の経過時間との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…連続鋳造用鋳型
3…コントローラ
4…F(σ)演算手段
5…測温値変化異常判定手段
6…拘束性ブレークアウト判定手段
7…熱電対出力変化鈍化検知手段
31…浸水検知用コントローラ
41…平均温度演算手段
51…平均偏差演算手段
61…浸水異常検知手段
32…鈍化検知用コントローラ
42…温度変化率演算手段
52…熱電対出力変化鈍化検知手段
T101〜T132…熱電対(温度センサ)

Claims (2)

  1. 連続鋳造設備の鋳型に取り付けられた複数の温度センサによる操業時の測温値の変化が、サンプリングしている測温値の最新値をT 、前回値をT i−1 、しきい値をΔT、最新測温値T 以前の過去の一定期間の測温値の標準偏差σを変数とした関数F(σ)とした場合に、T ≧F(σ)及びT −T i−1 ≧ΔTの両方の条件を満たしたときに異常と判定し、該異常判定結果に基づいて拘束性ブレークアウトを予知するに際して、前記温度センサの温度変化に対する測温値の変化の異常鈍化を検知する拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法であって、
    異なる位置に配置された二つの前記温度センサにおける測温値の変化の前記異常判定の成立回数を比較すると共に、前記成立回数が多い方の前記温度センサの該成立回数が予め実験や経験で定められた所定の回数以上とされ、且つ前記成立回数が多い方の前記温度センサの該成立回数前記成立回数が少ない方の前記温度センサの該成立回数で除した比率が予め実験や経験で定められた所定の比率以上のときに、前記成立回数が少ない方の前記温度センサの温度変化に対する測温値の変化が異常鈍化したことを検知することを特徴とする拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法。
  2. 連続鋳造設備の鋳型に取り付けられた複数の温度センサによる操業時の測温値の変化が、サンプリングしている測温値の最新値をT 、前回値をT i−1 、しきい値をΔT、最新測温値T 以前の過去の一定期間の測温値の標準偏差σを変数とした関数F(σ)とした場合に、T ≧F(σ)及びT −T i−1 ≧ΔTの両方の条件を満たしたときに異常と判定し、該異常判定結果に基づいて拘束性ブレークアウトを予知するに際して、前記温度センサの浸水異常を検知する拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法であって、
    所定の周期でサンプリングした前記温度センサの測温値の平均温度を演算すると共に、前記測温値の平均偏差を演算し、前記平均温度が前記温度センサが浸水したときにばらつく温度範囲内とされ、且つ前記平均偏差が所定の値以下のときに、前記温度センサの浸水異常であることを検知することを特徴とする拘束性ブレークアウト予知用温度センサの異常検知方法。
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