JP4214664B2 - プレス成形用薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や家電製品等において、プレス成形工程を経て使用されるプレス成形用薄鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、自動車や家電製品では、製造コスト低減の動きが激化しており、生産性に対しても極めて高いレベルへの対応が要求されている。この中で、プレス工程では、高速化によるサイクルタイムの短縮や長時間運転により、生産性の向上を図っている。このような生産状況の中では、金型温度が上昇することによりプレス成形条件が変化するため、割れやシワが発生し、プレス不良率が高くなるという問題が生じている。
【0003】
また、プレス成形用鋼板として多く用いられている自動車用鋼板に対しては、安全性向上のための鋼板の高強度化、および、部品の一体化による部品点数の削減等のプレス工程の省力化の両者を満足させるという要求が高まってきている。このため、プレス成形用鋼板に対しては、高い成形性とともにプレス成形における余裕度が大きいことも要求されている。
【0004】
このような問題に対して、プレス成形性を高め余裕度を改善する技術が開発されている。例えば、特開平7-62209号公報や特開平7-47796号公報には、極低炭素鋼を用いた技術が提案されている。これらの技術では、C≦0.0025%,Ti:0.025〜0.120%,Nb:0.003〜0.020%,B≦0.0004%,板の圧延方向と45方向の引張り強さTSが28.5〜31.0kgf/mm2,圧延方向と45方向のr値が1.90以上である冷延鋼板としている。さらに、後者では鋼板表面の中心線平均粗さが0.2〜1.0μmとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来技術のTi-Nb系極低C鋼の薄鋼板は、プレス成形用薄鋼板としてごく一般的なものであり、その機械的性質は、TSが300MPa(約31 kgf/mm2)前後、r値も面内平均値で2以上である。板の圧延方向と45方向の機械的性質についても、このような冷延鋼板であれば、通常の製造方法でもTSが28.5〜31.0kgf/mm2でr値が1.90以上となる。
【0006】
このようなTi-Nb系極低C鋼の冷延鋼板は、以前より自動車メーカーに供給されてきたが、材質の向上に伴い、メーカー側のプレス成形条件がさらに厳しくなってきている。その結果、最近のプレス条件では、従来技術のTi-Nb系極低C鋼の薄鋼板では、プレス不良が発生するという問題が生じている。特に、高強度鋼板においても、適用部品の拡大に伴いプレス不良が頻発している。
【0007】
本発明の目的は、以上の点に鑑み、プレス成形時の成形余裕度が大きく、プレス不良率を低減し生産性を向上させることが可能なプレス成形用薄鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。
その発明は、フェライト粒径が粒度番号で10以上、フェライト相の中にNb系およびTi系の析出物のうち1種以上を含有するとともに、フェライト粒界近傍に析出物密度の低い低密度領域を有し、この低密度領域の析出物密度はフェライト粒の中央部の析出物密度の60%以下であることを特徴とするプレス成形用薄鋼板である。
【0009】
ここでさらに、析出物密度の低い低密度領域の範囲が、フェライト粒界から0.2μm以上2.4μm以下の範囲であることを特徴とするプレス成形用薄鋼板とすることもできる。
【0010】
さらに、BH量が10MPa以下であることを特徴とするプレス成形用薄鋼板とすることもできる。
【0011】
本発明は、前述の従来技術によるプレス成形用薄鋼板の問題点に鑑み、プレス成形時の成形余裕度を支配する諸因子について詳細に検討を行った結果なされた。検討の過程で、フェライト粒の細粒化とフェライト粒界近傍に析出物密度の低い低密度領域を有することにより、同じ材料特性であってもプレス成形時の割れ限界およびシワ限界の差が拡大し、成形余裕度が増加することを見出した。
【0012】
このような知見に基づき、さらに検討を重ねた結果、成形余裕度については、フェライト粒の粒度および低密度領域の範囲が支配因子となることを突き止めた。以下、これらの因子について、成形余裕度との関係および限定理由について説明する。なお、成形余裕度としては、後述のように実部品プレス成形におけるシワ押え荷重の余裕量、即ち荷重増加に伴いシワが発生しなくなる(シワ限界)荷重から割れが発生する直前の(割れ限界)荷重までの荷重範囲の大きさ(荷重の差)を用いる。
【0013】
フェライト粒の粒度: 粒度番号で10以上
フェライト粒が粗粒化し粒度番号10未満となると、割れの発生が顕著となるため成形余裕度が小さくなり、実質的に成形不能となる。従って、フェライト粒の粒度を粒度番号で10以上に規定する。
【0014】
粒界近傍の析出物密度: フェライト粒中央部の60%以下
低密度領域の析出物密度がフェライト粒の中央部の60%を超えると、粒界近傍と粒内の析出物密度の差が不十分となり、シワの発生が顕著となるため析出物密度の異なる領域を有することにより成形余裕度を拡大させるという本発明の効果が、得られなくなる。従って、フェライト粒界近傍の析出物密度を、フェライト粒中央部の60%以下に規定する。
【0015】
低密度領域の範囲: フェライト粒界から0.2μm以上2.4μm以下
低密度領域の範囲がフェライト粒界から0.2μm未満の場合は、フェライト粒界近傍は実質的に低密度領域のない場合と同様となり、シワの発生が顕著となるため低い成形余裕度に止まる。逆に、低密度領域の範囲がフェライト粒界から2.4μmを超えると、フェライト粒に占める低密度領域が大きくなりすぎ、割れの発生が顕著となり成形余裕度を拡大させることができなくなる。従って、成形余裕度をさらに拡大させるためには、低密度領域の範囲をフェライト粒界から0.2μm以上2.4μm以下の範囲に規定する。
【0016】
BH量:10MPa以下
鋼板のBH量(塗装焼付硬化量)が10MPaを超える場合、固溶C量に起因するシワおよび割れともに発生しやすくなり、成形余裕度が低下する。なお、BH量の測定は、JIS規格G 3135「自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯」の附属書「塗装焼付硬化量試験方法」により行う。
【0017】
上記のプレス成形用薄鋼板については、その化学成分を次の発明のようにすることができる。
【0018】
その発明は、上記の発明においてさらに、化学成分が、mass%で、C:0.002〜0.02%、Si:1%以下、Mn:3%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.007%以下を含有するとともに、Nb:0.01〜0.4%およびTi:0.005〜0.3%のうち1種以上を含有し、残部が実質的に鉄からなることを特徴とするプレス成形用薄鋼板である。また、上記の化学成分にさらに、B:0.002%以下を含有させてもよい。
【0019】
以下、この発明の化学成分の限定理由について説明する。
C: 0.002〜0.02%(mass%、以下同じ)
Cは、Nb,Tiと炭化物を形成し、フェライト粒界近傍とフェライト粒中央部に、析出物密度の異なる領域を形成するための重要な元素である。Cが0.002%未満では、フェライト粒内の析出物密度が低くなりすぎ、フェライト粒界近傍とフェライト粒中央部の析出物密度の差が小さくなるため、シワ限界荷重が十分に低下せず、大きな成形余裕量が得られない。
【0020】
Cが、0.02%を超えると、フェライト粒内の析出物密度が高くなりすぎるとともに、フェライト粒界近傍の析出物密度もあまり低くならず、析出物密度の差が小さくなる。そのため、延性が低下してプレス割れが生じやすくなり、割れ限界荷重が低下するので、成形余裕量が縮小する。従って、C量を0.002〜0.02%の範囲に規定する。
【0021】
Si: 1.0%以下
Siは固溶強化により強度を上昇させる元素であり、強度レベルに応じて添加することができる。しかし、1.0%を超えるSiの添加は、延性を著しく低下させるので、プレス割れが生じやすくなり、成形余裕量が縮小する。従って、Si量を1.0%以下に規定する。
【0022】
Mn: 3.0%以下
Mnは、熱延板の細粒化と固溶強化により、めっき密着性を劣化させることなく、強度を上昇させる。しかし、Mnを3.0%を超えて添加すると、延性が著しく低下し、プレス割れが生じ、成形余裕量が縮小する。また、熱間での加工性も低下する。従って、Mnの添加量を3.0%以下に規定する。
【0023】
P: 0.1%以下
Pは鋼の強化に有効な元素であるが、フェライト粒生成を促進して熱延板の粒径を粗大化させる。また、0.1%を超えて過剰に添加すると、延性が著しく低下し、プレス割れが生じ、成形余裕量が縮小する。また、熱間での加工性も低下する。従って、Pの添加量を0.1%以下に規定する。
【0024】
S: 0.02%以下
Sは硫化物として鋼中に存在し、0.02%を超えて過剰に含まれると延性の劣化を招き、プレス割れが生じ易くなり成形余裕量が縮小する。従って、S量を0.02%以下に規定する。
【0025】
sol.Al: 0.01〜0.1%
Alは鋼中NをAINとして析出させ、歪み時効により延性を低下させる固溶Nの弊害を軽減する作用がある。sol.Al が0.01%未満では、この効果が十分に得られない。sol.Alを0.1%を超えて添加しても、添加量に見合う効果が得られない。従って、sol.Al量を0.01〜0.1%の範囲に規制する。
【0026】
N: 0.007%以下
NはAlNとして析出し、またTiあるいはBを添加した場合は、TiN,BNとしても析出して無害化されるが、Nは製鋼技術上可能な限り少ない方が好ましい。Nが0.007%を超えて含まれる場合、特にTi,B添加の歩留まり低下が無視できなくなり、また、BH量が増大する。従って、N量を0.007%以下に規定する。
【0027】
Nb: 0.01〜0.4%
Nbは、Cと結合して炭化物を形成し、次に述べるTiとともに、フェライト粒界近傍と中央部を、析出物密度の異なる領域とするための重要な元素である。しかし、Nbが 0.01%未満では、フェライト粒内の析出物密度が低く、フェライト粒界近傍と粒内の析出物密度の差が小さくなるため、シワ限界荷重が十分に低下せず、大きな成形余裕量が得られない。一方、Nbが、0.4%を超えると、フェライト粒内の析出物密度が高くなりすぎるとともに、析出物密度の差が小さくなる。そのため、延性が低下してプレス割れが生じ、成形余裕量が縮小する。従って、Nbを0.01〜0.4%の範囲で単独添加またはTiとの複合添加とする。
【0028】
Ti: 0.005〜0.3%
Tiは、Nbと同様Cと結合して炭化物を形成し、フェライト粒界近傍と中央部を、析出物密度の異なる領域とするための重要な元素である。しかし、Tiが 0.005%未満では、フェライト粒内の析出物密度が低く、フェライト粒界近傍と粒内の析出物密度の差が小さくなるため、シワ限界荷重が十分に低下せず大きな成形余裕量が得られない。一方、Tiが、0.3%を超えると、フェライト粒内の析出物密度が高くなりすぎるとともに、析出物密度の差が小さくなる。そのため、延性が低下してプレス割れが生じ、成形余裕量が縮小する。従って、Ti量を0.005〜0.3%の範囲で単独添加またはNbとの複合添加とする。
【0029】
B: 0.002%以下
本発明の効果は、上記の化学成分により十分に発揮されるが、さらに耐二次加工脆性の向上のためにB を添加してもよい。その場合、B添加量が0.002wt%を超えると成形性を著しく損なう。従って、Bを添加する場合は、添加量を0.002%以下に規定する。
【0030】
上記のプレス成形用薄鋼板の製造方法については、次の発明のようにすることができる。
【0031】
その発明は、プレス成形用薄鋼板の製造方法において、化学成分が、上記の化学成分からなる鋼を用いて、熱延仕上圧延後少なくとも750℃までは10℃/s以上の冷却速度で冷却し、熱延板巻取り後、冷間圧延および焼鈍を行うことにより、上記のプレス成形用薄鋼板を得ることを特徴とするプレス成形用薄鋼板の製造方法である。
【0032】
この発明は、前述のミクロ組織を得るために好ましい製造方法を提供するもので、特に熱延仕上圧延後の急冷の冷却条件を規定している。熱延仕上圧延後の冷却条件は、冷延板における前述の低密度領域の形成に大きな影響を及ぼす。
【0033】
冷却速度: 10℃/s以上
冷却速度が10℃/s未満では、熱延板の冷却中にTi,Nb系の析出物が粗大化するため、冷延板における析出物の密度が低下し、フェライト粒界近傍と粒内の析出物密度の差が小さくなる。そのため、実質的に低密度領域が形成されなくなる。従って、冷却速度を 10 /s 以上とする。
【0034】
急冷の温度範囲: 少なくとも750℃まで
急冷を750℃より高い温度で停止すると、その後の徐冷中にTi,Nb系の粗大な析出物が生成する。そのため、上記の冷却速度が遅い場合と同様、冷延板における析出物の密度が低下し、実質的に低密度領域が形成されなくなる。
【0035】
さらに、この発明で、熱延板巻取り後の熱延板のフェライト粒径を、粒度番号で11.2以上とすることもできる。このように、熱延板のフェライト粒径を細粒化することにより、後述のように極めて大きな成形余裕量を得ることが可能となる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の鋼板は、前述のようにミクロ組織を規定することにより、鋼板に優れた成形性を付与している。以下、その詳細について説明する。
【0037】
図1は、プレス成形時の成形余裕量(成形余裕範囲)と薄鋼板のミクロ組織の関係を示す図である。試験に用いた薄鋼板は、板厚0.80mm、TS=340MPa級のIF鋼冷延鋼板である。プレス成形試験は、図2に示すように自動車の実部品スケールのフロントフェンダモデルについて、割れおよびシワが発生するそれぞれの限界荷重を測定し、その差からプレス成形余裕量(割れ限界荷重−シワ限界荷重)を求めた。
【0038】
図1より、好ましい成形余裕量(30T以上、図中○、◎印)を得るためには、鋼板のフェライト粒が粒度番号で10以上(微細化)とすればよいことが分かる。ここで、粒度の測定は、JIS G 0552に準拠して行った。同様に、好ましい成形余裕量を得るためには、低密度領域の大きさを、0.2μm以上2.4μm以下とすればよいことが分かる。
【0039】
ここで、析出物密度の測定は、加速電圧300kvの透過電顕により、レプリカ法で撮影した写真を用いて行った。具体的には、写真から無作為に100個のフェライト粒を抽出し、粒内の任意の10箇所で直径2μmの円内における析出物の面積率を測定した。これら全1000箇所の測定値の平均値をフェライト粒内の析出物密度とした。次に、フェライト粒界近傍の任意の20箇所で、析出物密度がフェライト粒内の析出物密度の60%以下となる円の直径の最大値を測定した。最後に、これら全2000箇所の測定値の平均値を算出し、これを低密度領域の平均サイズとした。
【0040】
ここで、フェライト粒界近傍の低密度領域の析出物密度については、前述のようにフェライト粒の中央部の60%以下であればよいが、本発明の効果を最大限に発揮するには、20%以下とすることが好ましい。
化学成分については、本発明に規定するようにすればよいが、さらに好ましくは次のようにするとよい。
【0041】
Cは、好ましくは0.004〜0.01%(mass%、以下同じ)とすることにより、フェライト粒の粒界近傍と粒内の析出物密度の差を、より大きくすることができ、本発明の効果が大きくなる。
【0042】
Siは、好ましくは0.5%以下とすることにより、冷延鋼板の化成処理性の劣化および亜鉛めっき鋼板におけるめっき密着性の劣化を防止することができる。
【0043】
Mnは、好ましくは2.5%以下とすることにより、延性の低下によるプレス成形余裕量の縮小や熱間加工性の低下をさらに軽減することができる。
【0044】
Pは、好ましくは0.08%以下とすることにより、亜鉛めっき鋼板に用いる場合の合金化処理性の著しい劣化を防止し、めっき密着不良およびそれに起因するうねりによりパネル外観不良が発生することを防止できる。
【0045】
sol.Alは、前述の発明の範囲とすることにより、歪み時効現象によって鋼板の局部延性を低下させる固溶Nの弊害を軽減することもできる。
【0046】
Nbは、好ましくは0.04〜0.14%とすることにより、より適正な析出物密度が得られ、本発明の効果が大きくなる。
【0047】
Tiは、好ましくは0.05%以下とすることにより、溶融亜鉛めっき鋼板に用いる場合の表面性状を著しく劣化させることを防止できる。さらに、0.02%以下とすることにより、極めて高いめっき表面品質を得ることができる。
【0048】
Bは、添加する場合は好ましくは0.001%以下とすることにより、焼鈍時に粒成長性を阻害して伸びおよびr値を低下させることを防止し、プレス成形性の劣化を防止できる。なお、耐二次加工脆性の向上のためには、少なくとも0.0001%以上の添加が必要である。
【0049】
製造方法については、本発明に規定する成分組成の鋼のスラブから、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍等の一連の工程を経て製造され、必要に応じてめっき処理が施される。以下、発明の実施に当たって好ましい実施形態について説明する。
【0050】
熱間圧延においては、スラブ加熱後圧延する通常の熱延プロセス、連続鋳造後そのままあるいは短時間の加熱処理を施して圧延する方法など種々の方法を用いることができる。その際、最終製品に不めっきやめっき密着不良がなく、めっき後の優れた表面性状を付与するためには、スラブに生成している一次スケールのみならず、熱間圧延中に生成する二次スケールについても十分に除去することが好ましい。なお、熱間圧延中のバーヒーターにより粗バーを加熱して温度調節等を行ってもよい。
【0051】
熱延板冷却後の巻取りでは、Ti,Nb系析出物を微細化させ、冷延板において適切な析出物密度が得られるようにする。巻取温度が500℃未満では析出物が十分に生成されず効果が小さくなる。一方、巻取温度が700℃を超えると析出物が粗大化し、また脱スケール性が低下する。従って、巻取温度は500〜700℃の温度範囲内とすることが好ましい。
【0052】
さらに、熱延板巻取り後の熱延板のフェライト粒径の影響については、図3に示すようになる。この図は、フェライト粒径が10以上、低密度領域の大きさが0.2μm〜2.4μmである冷延板について、熱延板段階でのフェライト粒径と冷延板のプレス成形余裕量の関係を示している。この図より、粒度番号で11.2以上とすることにより、極めて大きな成形余裕量を得ることがわかる。
【0053】
冷間圧延時の冷圧率(冷間圧下率)については、85%を超えると、圧延負荷が高くなりすぎ生産性を低下させる。従って、冷圧率は85%以下とすることが好ましい。
【0054】
焼鈍については、再結晶温度以上900℃以下の温度範囲で連続焼鈍とすることが好ましい。焼鈍温度が900℃を超えると、異常粒成長が生じて材質劣化を招く恐れがあり、またフェライト粒の結晶方位(集合組織)がランダム化するのでプレス成形性の観点から好ましくない。また、箱焼鈍では、加熱速度が遅いため、再結晶温度以下の領域で冷間加工組織に析出物が析出し、焼鈍後に本発明の適切な析出物密度を得ることができなくなる。
【0055】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す化学成分の鋼番号A〜Qの鋼を溶製後、連続鋳造により220mm厚のスラブを製造した。このスラブを加熱後、仕上温度880〜920℃で熱間圧延し、冷却速度5〜15℃/sで冷却し、巻取温度640〜700℃で巻取って板厚3.2mmの熱延鋼板とし、酸洗後、板厚0.8mmまで冷間圧延した。
【0056】
【表1】
Figure 0004214664
【0057】
その後、連続焼鈍(焼鈍温度750〜890℃)または連続焼鈍+溶融亜鉛めっき(焼鈍温度830〜850℃)のいずれかを実施した。連続焼鈍+溶融亜鉛めっきでは、焼鈍後460℃で溶融亜鉛めっき処理を行い、直ちにインライン合金化処理炉で500℃でめっき層の合金化処理を行った。溶融亜鉛めっき処理では、めっき目付量片面当たり45g/m2 で両面に付着させた。また、焼鈍または焼鈍+溶融亜鉛めっき後の鋼板には圧下率0.7%の調質圧延を行った。
【0058】
これらの冷延鋼板およびめっき鋼板の機械特性およびミクロ組織を調査した。引張試験は、圧延方向0°,45°,90°の3方向について、JIS5号試験片を採取して行った。その際、めっき鋼板についてはめっきを剥離して試験を行った。測定された引張強さ、全伸び、r値については、次の式によりそれぞれの面内平均値TS,El,rを算出した。
TS=(TS0+TS45+TS90)/4
El=(El0+El45+El90)/4
r=(r0+r45+r90)/4
ここで、添字0,45,90はそれぞれ圧延方向0°,45°,90°の測定値であることを示す。
【0059】
BH量は、JIS規格G 3135「自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯」の附属書「塗装焼付硬化量試験方法」により行った。具体的には、引張試験片を用いて、2%の予歪み後、170℃x20分の塗装焼付け条件で熱処理を施した時の強度上昇量を測定した。
【0060】
また、既に説明したのと同様の方法で、これらの冷延鋼板をプレス成形し、プレス成形余裕量を測定した。また、溶融亜鉛めっき鋼板については、めっき後の表面性状の評価を行った。これらの試験結果を強度(TS)レベル毎にまとめて表2および表3に示す。
【0061】
【表2】
Figure 0004214664
【0062】
【表3】
Figure 0004214664
【0063】
表2および表3より明らかなように、本発明例では、本発明のミクロ組織を満足することにより、比較例に比べて大きなプレス成形余裕量が得られている。また、本発明の成分を有し本発明の製造方法により製造した鋼板は、本発明のミクロ組織を満足している。また、本発明の成分を有しTi量を規制した鋼を用いた鋼板は、不めっきやめっき密着不良がなく、めっき後の表面性状に優れていることがわかる。
【0064】
これに対して比較例では、従来から良いとされていた極低C鋼(鋼番号C)を用いたNo.6では低密度領域が無く、また熱延板粒径も大きく、プレス成形余裕量が小さい。
【0065】
Nb,Ti量の少ないNo.8(鋼番号D)、No.16(鋼番号H)では、BH量が高くなるとともに析出物密度が全体として低くなるため差が小さくなり、低密度領域の析出物密度が60%を超えており、プレス成形余裕量が小さくなっている。あるいは、C,Nb量の多いNo.22(鋼番号K)では、析出物密度が全体として高すぎて差が小さくなり、低密度領域の析出物密度が60%を超えており、プレス成形余裕量が小さくなっている。
【0066】
また、Bが高いNo.14(鋼番号G)、Siが高いNo.24(鋼番号L)、Mnが高い No.30(鋼番号O)、Pが高いNo.32(鋼番号P)では、伸びとr値が低下するとともに、ミクロ組織も発明範囲から外れ、プレス成形余裕量が小さくなる。No.11,No.13,No.19,No.21は、成分および熱延条件が本発明の範囲内であっても、ミクロ組織が発明範囲から外れているため、プレス成形余裕量が小さくなる。
【0067】
熱延条件において冷却速度CRが低いNo.3とNo.27あるいは急冷停止温度Tが高いNo.5とNo.29では、低密度領域の形成が不十分となり、プレス成形余裕量が小さくなった。
【0068】
BH量の大きいNo.33(鋼番号Q)では、伸びおよびr値が低下するとともにプレス成形余裕量が小さくなった。
【0069】
めっき表面性状については、Bが高いNo.15(鋼番号G)、Siが高いNo.24(鋼番号L)、Mnが高い No.30(鋼番号O)、Pが高いNo.32(鋼番号P)では、不めっきやめっき密着不良となった。
【0070】
【発明の効果】
本発明は、フェライト粒の細粒化とフェライト粒界近傍に析出物密度の低い低密度領域を形成させることにより、プレス成形時の成形余裕度を増加させることを可能としている。その結果、プレス不良率が低減し生産性を大幅に向上させることが可能なプレス成形用薄鋼板を得ることができる。この薄鋼板は、プレス成形時の成形余裕度等、プレス成形性に関する特性への要求が特に求められる自動車や家電製品等プレス成形用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】プレス成形時の成形余裕量(成形余裕範囲)と薄鋼板のミクロ組織の関係を示す図。
【図2】自動車の実部品スケールのフロントフェンダモデルの外観を示す図。
【図3】成形余裕量に及ぼす熱延板のフェライト粒径の影響を示す図。

Claims (4)

  1. 化学成分が、mass%で、C:0.004〜0.02%、Si:1%以下、Mn:3%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.007%以下を含有するとともに、Nb:0.04〜0.4%およびTi:0.005〜0.05%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、フェライト粒径が粒度番号で10以上、フェライト相の中にNb系およびTi系の析出物のうち1種以上を含有するとともに、フェライト粒界の両側合わせて0.2μm以上2.4μm以下の範囲に析出物密度の低い低密度領域を有し、この低密度領域の析出物密度がフェライト粒の中央部の析出物密度の60%以下であることを特徴とするプレス成形用薄鋼板。
  2. 化学成分が、mass%で、C:0.004〜0.02%、Si:1%以下、Mn:3%以下、P:0.1%以下、S:0.02%以下、sol.Al:0.01〜0.1%、N:0.007%以下、B:0.002%以下を含有するとともに、Nb:0.04〜0.4%およびTi:0.005〜0.05%のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、フェライト粒径が粒度番号で10以上、フェライト相の中にNb系およびTi系の析出物のうち1種以上を含有するとともに、フェライト粒界の両側合わせて0.2μm以上2.4μm以下の範囲に析出物密度の低い低密度領域を有し、この低密度領域の析出物密度がフェライト粒の中央部の析出物密度の60%以下であることを特徴とするプレス成形用薄鋼板。
  3. プレス成形用薄鋼板の製造方法において、化学成分が、請求項1または請求項2記載の化学成分からなる鋼を用いて、熱延仕上圧延後710℃までは10℃/s以上の冷却速度で冷却し、熱延板巻取り後、冷間圧延および焼鈍を行うことにより、請求項1ないし請求項2記載のプレス成形用薄鋼板を得ることを特徴とするプレス成形用薄鋼板の製造方法。
  4. 熱延板巻取り後の熱延板のフェライト粒径を、粒度番号で11.2以上とすることを特徴とする請求項3記載のプレス成形用薄鋼板の製造方法。
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