JP2013060619A - 加工性に優れた薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実際のプレス成形において良好な成形性を得ることができる、加工性に優れた薄鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01%以下、Si:0.2%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.001以上0.03%以下、N:0.01%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.02%以上0.1%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成とし、さらに鋼中に、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2を体積率で0.005〜0.5%の範囲で分散させる。
【選択図】なし
【解決手段】質量%で、C:0.01%以下、Si:0.2%以下、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.001以上0.03%以下、N:0.01%以下、Al:0.1%以下、Ti:0.02%以上0.1%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成とし、さらに鋼中に、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2を体積率で0.005〜0.5%の範囲で分散させる。
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車用部品等の構造部材や住居、家具、机などの構造体の素材として好適な、加工性に優れた薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
なお、本発明において、薄鋼板とは、板厚が3mm以下の冷延鋼板を意味する。
なお、本発明において、薄鋼板とは、板厚が3mm以下の冷延鋼板を意味する。
薄鋼板は、その成形性の良さから、多種多様な構造体の素材として用いられている。通常は、プレス成形で2次元の板形状のものを3次元構造体とし、これらを接合してさらに複雑な3次元の構造体を形成する。
従来、このような薄鋼板には、Cを0.03質量%程度含有する低炭素鋼板が用いられてきた。低炭素鋼板では、Cを粗大なセメンタイトとして析出させることによって加工性を向上させていた。しかしながら、今日では構造体の形状が複雑化するにつれて、より加工性のよい鋼板が必要とされるようになってきた。このような鋼板の加工性の向上技術として、低炭素鋼板をプレス加工するとセメンタイトが亀裂の発生源となることから、このセメンタイトを減じたり、生じないようにする試みがなされてきた。
また、特許文献1には、Cを0.003質量%以下に低減し、TiとNbを添加し、さらにS量を規定すると共に、熱間圧延での仕上温度をMn,S,NbおよびC含有量に応じて規定することで、鋼板の成形性と化成処理性を向上させる技術が開示されている。
しかしながら、この技術では、優れた伸びとr値を得ることはできるものの、実際の成形においては、プレス成形性は十分とは言い難かった。
しかしながら、この技術では、優れた伸びとr値を得ることはできるものの、実際の成形においては、プレス成形性は十分とは言い難かった。
特許文献2には、Cを0.0025質量%以下に規定し、さらにフェライト粒径を15μm以下とすることで、耐二次加工脆性の優れた薄鋼板が開示されている。
しかしながら、この技術では、伸びが低い上に、実際の成形においては、やはり十分なプレス成形性は得られなかった。
しかしながら、この技術では、伸びが低い上に、実際の成形においては、やはり十分なプレス成形性は得られなかった。
特許文献3には、Cを0.0030質量%以下に低減すると共に、C,N,S含有量に応じて適量のTiを添加し、さらに連続鋳造後、室温まで冷却すること無しに熱間圧延を開始し、粗圧延後に粗圧延バーを加熱昇温することで、深絞り性に優れた薄鋼板を得る方法が開示されている。
しかしながら、この技術では、r値や耐二次加工脆性は向上するものの、伸びが低い上に、実際の成形においては、やはり十分なプレス成形性は得られなかった。
しかしながら、この技術では、r値や耐二次加工脆性は向上するものの、伸びが低い上に、実際の成形においては、やはり十分なプレス成形性は得られなかった。
さらに、特許文献4には、Cを0.0015質量%以下にまで低減すると共に、AlをN量に応じて積極的に添加することで、耐食性および成形性の良好な薄鋼板が開示されている。
しかしながら、この技術でも、単純な引張試験での伸びやr値の向上は認められるものの、実際の成形においては、やはり満足のいくプレス成形性を得ることはできなかった。
しかしながら、この技術でも、単純な引張試験での伸びやr値の向上は認められるものの、実際の成形においては、やはり満足のいくプレス成形性を得ることはできなかった。
上述したとおり、従来の技術では、実際のプレス成形において成形性が良好な薄鋼板を提供することは困難であった。
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決するもので、実際のプレス成形において良好な成形性を得ることができる、加工性に優れた薄鋼板を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
本発明は、上記した従来技術が抱える問題を有利に解決するもので、実際のプレス成形において良好な成形性を得ることができる、加工性に優れた薄鋼板を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
従来、薄鋼板の成形性は、一般的に引張試験での伸びが指標として用いられてきたが、この伸びは、引張試験において破断に至ったときの材料の塑性変形量のことである。
しかしながら、実際の成形において破断に至った場合、プレス成形は失敗であり、製品とならない。すなわち、伸びだけではプレス成形性の指標としては不十分であることがわかった。
しかしながら、実際の成形において破断に至った場合、プレス成形は失敗であり、製品とならない。すなわち、伸びだけではプレス成形性の指標としては不十分であることがわかった。
そこで、発明者らは、実際のプレス成形における薄鋼板の変形挙動について調査を行った。
その結果、実際は破断まで成形されることはなく、引張試験時の最大荷重までに加工に応じて薄鋼板がどのように硬化していくかが、実際のプレス成形における成形性を支配していることが突き止められた。
さらに、歪み量が5%から25%までの範囲で高い加工硬化率を有することが重要であるとの知見を得た。
その結果、実際は破断まで成形されることはなく、引張試験時の最大荷重までに加工に応じて薄鋼板がどのように硬化していくかが、実際のプレス成形における成形性を支配していることが突き止められた。
さらに、歪み量が5%から25%までの範囲で高い加工硬化率を有することが重要であるとの知見を得た。
そこで、発明者らは、さらに、このような加工硬化特性を得る各種要因について鋭意検討を重ねた。
その結果、
(1) 鋼中に、炭硫化物として粗大なTi4C2S2を分散させる
ことで、加工性が向上することを知見した。
さらに、
(2) TiSをTi4C2S2と複合させる
ことで、加工性が一層向上することの知見を得た。
その結果、
(1) 鋼中に、炭硫化物として粗大なTi4C2S2を分散させる
ことで、加工性が向上することを知見した。
さらに、
(2) TiSをTi4C2S2と複合させる
ことで、加工性が一層向上することの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたもので、その要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.2%以下、
Mn:0.5%以下、
P:0.04%以下、
S:0.001以上0.03%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.1%以下および
Ti:0.02%以上0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、鋼中に、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2が体積率で0.005〜0.5%の範囲で分散してなることを特徴とする加工性に優れた薄鋼板。
1.質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.2%以下、
Mn:0.5%以下、
P:0.04%以下、
S:0.001以上0.03%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.1%以下および
Ti:0.02%以上0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、鋼中に、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2が体積率で0.005〜0.5%の範囲で分散してなることを特徴とする加工性に優れた薄鋼板。
2.前記Ti4C2S2の一部が、TiS・Ti4C2S2複合炭硫化物で代替されてなることを特徴とする前記1に記載の加工性に優れた薄鋼板。
3.さらに質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする、前記1または2に記載の加工性に優れた薄鋼板。
4.さらに質量%で、Nb:0.01%以下を含有することを特徴とする、前記1ないし3のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
5.さらに質量%で、Cu,Sn,Ni,Ca,Mg,Co,As,Cr,Sb,W,Mo,Pb,Ta,REM,V,Cs,ZrおよびHfのうちから選んだ一種または二種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする前記1ないし4のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
6.前記薄鋼板の表面にめっき層をそなえてなる前記1ないし5のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
7.前記1または、前記3ないし5のいずれかに記載の組成を有する鋼素材を、熱間圧延後、冷却してコイルに巻き取り、ついで酸洗後、冷間圧延したのち、連続焼鈍を施して薄鋼板を製造するに当たり、
上記熱間圧延の仕上げ圧延を890℃以上の温度で終了し、ついで600℃超えの温度で巻き取ることを特徴とする薄鋼板の製造方法。
上記熱間圧延の仕上げ圧延を890℃以上の温度で終了し、ついで600℃超えの温度で巻き取ることを特徴とする薄鋼板の製造方法。
8.前記7に記載の製造方法により製造した薄鋼板の表面にめっき処理を施すことにより、鋼板表面にめっき皮膜を形成することを特徴とするめっき薄鋼板の製造方法。
本発明によれば、従来に比べてプレス加工性が大幅に向上した薄鋼板を提供することが可能となり、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、薄鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.01%以下
Cは、Ti4C2S2を形成して鋼の加工硬化率を上昇させるために必要な元素である。本発明では、TiおよびSと結合して微細炭硫化物を形成し、鋼板の加工硬化率を向上させる。しかしながら、C含有量が0.01%を超えると、TiCによって鋼が析出強化されてかえって加工硬化率が低下してしまう。従って、C量は0.01%以下とする。好ましくは0.0005%以上 0.005%以下である。さらに好ましくは0.0005%以上 0.003%以下である。
まず、本発明において、薄鋼板の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成を表す%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.01%以下
Cは、Ti4C2S2を形成して鋼の加工硬化率を上昇させるために必要な元素である。本発明では、TiおよびSと結合して微細炭硫化物を形成し、鋼板の加工硬化率を向上させる。しかしながら、C含有量が0.01%を超えると、TiCによって鋼が析出強化されてかえって加工硬化率が低下してしまう。従って、C量は0.01%以下とする。好ましくは0.0005%以上 0.005%以下である。さらに好ましくは0.0005%以上 0.003%以下である。
Si:0.2%以下
Siは、転位の状態を制御してフェライトの加工硬化を促進する元素である。しかしながら、Si含有量が0.2%を超えると、フェライトの固溶強化が顕著となり、加工硬化率が低下する。従って、Si量は0.2%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Siは、転位の状態を制御してフェライトの加工硬化を促進する元素である。しかしながら、Si含有量が0.2%を超えると、フェライトの固溶強化が顕著となり、加工硬化率が低下する。従って、Si量は0.2%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
Mn:0.5%以下
Mnは、固溶強化元素であるので、Siと同様に本発明では低減することが望ましい。特に優れた加工性を得るためにはMn含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Mnは、固溶強化元素であるので、Siと同様に本発明では低減することが望ましい。特に優れた加工性を得るためにはMn含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
P:0.04%以下
Pは、固溶強化元素であるので本発明では低減するのが望ましい。すなわち、P含有量が0.04%を超えると固溶強化が顕著となり加工硬化率が低下する。従って、P量は0.04%以下とする。好ましくは0.03%以下である。
Pは、固溶強化元素であるので本発明では低減するのが望ましい。すなわち、P含有量が0.04%を超えると固溶強化が顕著となり加工硬化率が低下する。従って、P量は0.04%以下とする。好ましくは0.03%以下である。
S:0.001%以上0.03%以下
Sは、本発明において、Tiと結合してTi4C2S2を形成する重要な元素である。これにより加工硬化率の上昇が達成される。それ故、本発明では、少なくとも0.001%のSを含有させるものとした。一方、S含有量が0.03%を超えると微細なTiSが多くなり、またMnSが析出するようになり加工性を劣化させてしまう。従って、本発明では、S量は0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Sは、本発明において、Tiと結合してTi4C2S2を形成する重要な元素である。これにより加工硬化率の上昇が達成される。それ故、本発明では、少なくとも0.001%のSを含有させるものとした。一方、S含有量が0.03%を超えると微細なTiSが多くなり、またMnSが析出するようになり加工性を劣化させてしまう。従って、本発明では、S量は0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
N:0.01%以下
Nは、Tiと結合してTiNを形成したり、Alと結合してAlNを形成したりする。そして、N含有量が0.01%を超えるとこれらの窒化物がフェライト粒内に分散して加工硬化率が低下する。このため、N量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
Nは、Tiと結合してTiNを形成したり、Alと結合してAlNを形成したりする。そして、N含有量が0.01%を超えるとこれらの窒化物がフェライト粒内に分散して加工硬化率が低下する。このため、N量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として作用する元素である。この効果を得るためには、Alは0.001%以上含有させることが望ましいが、0.1%を超える含有は介在物量を増やして転位の移動を阻害し、加工硬化率を低下させる。このため、Al量は0.1%以下とする。
Alは、脱酸剤として作用する元素である。この効果を得るためには、Alは0.001%以上含有させることが望ましいが、0.1%を超える含有は介在物量を増やして転位の移動を阻害し、加工硬化率を低下させる。このため、Al量は0.1%以下とする。
Ti:0.02%以上0.1%以下
Tiは、本発明において重要な元素である。すなわち、Tiは、フェライト粒内でTi4C2S2を形成することにより、鋼板の加工硬化率を向上させる。しかしながら、Ti含有量が0.02%未満では、Ti4C2S2量が少なく、転位運動の制御ができず、十分な加工硬化率の上昇は臨めない。一方、Ti含有量が0.1%を超えると、微細なTiCやTiSが析出して転位運動を阻害し、加工硬化率が低下する。従って、Ti量は0.02%以上0.1%以下とする。
Tiは、本発明において重要な元素である。すなわち、Tiは、フェライト粒内でTi4C2S2を形成することにより、鋼板の加工硬化率を向上させる。しかしながら、Ti含有量が0.02%未満では、Ti4C2S2量が少なく、転位運動の制御ができず、十分な加工硬化率の上昇は臨めない。一方、Ti含有量が0.1%を超えると、微細なTiCやTiSが析出して転位運動を阻害し、加工硬化率が低下する。従って、Ti量は0.02%以上0.1%以下とする。
以上、必須成分について説明したが、本発明では、その他にも、以下に述べる元素を必要に応じて適宜含有させることができる。
B:0.0030%以下
Bは、炭化物形成で清浄化された粒界の強化に寄与する元素である、しかしながら、B含有量が0.0030%を超えると固溶強化により加工硬化率が低下する。従って、Bを含有させる場合の上限は0.0030%とする。
B:0.0030%以下
Bは、炭化物形成で清浄化された粒界の強化に寄与する元素である、しかしながら、B含有量が0.0030%を超えると固溶強化により加工硬化率が低下する。従って、Bを含有させる場合の上限は0.0030%とする。
Nb:0.01%以下
Nbは、Cと結合してフェライト中のセメンタイト析出を抑制し、加工性を向上させる。しかしながら、0.01%を超えて添加すると、微細なNbCが多量に生成して析出強化するとともにフェライト粒が微細化して降伏強度が上がり、加工硬化率が低下する。このため。上限を0.01%とする。
Nbは、Cと結合してフェライト中のセメンタイト析出を抑制し、加工性を向上させる。しかしながら、0.01%を超えて添加すると、微細なNbCが多量に生成して析出強化するとともにフェライト粒が微細化して降伏強度が上がり、加工硬化率が低下する。このため。上限を0.01%とする。
Cu,Sn,Ni,Ca,Mg,Co,As,Cr,Sb,W,Mo,Pb,Ta,REM,V,Cs,ZrおよびHfのうちから選んだ一種または二種以上を合計で1%以下
Cu,Sn,Ni,Ca,Mg,Co,As,Cr,Sb,W,Mo,Pb,Ta,REM,V,Cs,ZrおよびHfはいずれも、耐食性向上に有用な元素であるが、合計量が1%を超えると固溶強化による高降伏強度化で加工硬化率が低下する問題が生じるので、単独添加または複合添加いずれの場合も1%以下で含有させるものとした。好ましくは0.5%以下である。
なお、上記した以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
Cu,Sn,Ni,Ca,Mg,Co,As,Cr,Sb,W,Mo,Pb,Ta,REM,V,Cs,ZrおよびHfはいずれも、耐食性向上に有用な元素であるが、合計量が1%を超えると固溶強化による高降伏強度化で加工硬化率が低下する問題が生じるので、単独添加または複合添加いずれの場合も1%以下で含有させるものとした。好ましくは0.5%以下である。
なお、上記した以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。
以上、鋼板の成分組成範囲について説明したが、本発明で所期した効果を得るには、成分組成を上記の範囲に調整するだけでは不十分で、鋼中に析出する炭硫化物の種類、大きさおよび分布状態を所定の範囲に制御することが重要である。
すなわち、本発明では、炭硫化物として、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2を析出させることが重要である。また、本発明では、Ti4C2S2の一部をTiS・Ti4C2S2複合炭硫化物で代替させることもできる。
すなわち、本発明では、炭硫化物として、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2を析出させることが重要である。また、本発明では、Ti4C2S2の一部をTiS・Ti4C2S2複合炭硫化物で代替させることもできる。
炭硫化物(Ti4C2S2またはTiS・Ti4C2S2複合炭硫化物)の平均粒子径:10nm以上
本発明において、鋼中に析出してくる炭硫化物の大きさは極めて重要である。かかる炭硫化物の平均粒子径が10nm未満では転位運動を障害し、加工硬化率が低下する。従って、これらの炭硫化物の平均粒子径は10nm以上とした。また、炭硫化物の平均粒子径の上限値については特に制限はないが、あまりに大きいと加工時にフェライトと炭硫化物界面から亀裂が生じやすくなり伸びの低下が著しいことから、かかる炭硫化物の平均粒子径の上限は500nm程度とするのが好ましい。
なお、上述したTiを含む炭硫化物の平均粒子径は、100000倍での10視野の観察結果をもとに、円近似を用いた画像処理で個々の粒子径を求め、求めた粒子径を算術平均して平均粒子径とした。
本発明において、鋼中に析出してくる炭硫化物の大きさは極めて重要である。かかる炭硫化物の平均粒子径が10nm未満では転位運動を障害し、加工硬化率が低下する。従って、これらの炭硫化物の平均粒子径は10nm以上とした。また、炭硫化物の平均粒子径の上限値については特に制限はないが、あまりに大きいと加工時にフェライトと炭硫化物界面から亀裂が生じやすくなり伸びの低下が著しいことから、かかる炭硫化物の平均粒子径の上限は500nm程度とするのが好ましい。
なお、上述したTiを含む炭硫化物の平均粒子径は、100000倍での10視野の観察結果をもとに、円近似を用いた画像処理で個々の粒子径を求め、求めた粒子径を算術平均して平均粒子径とした。
炭硫化物の体積率:0.005〜0.5%
上記した炭硫化物の量が、体積率で0.005%に満たないと満足いくほどの加工硬化率の向上が望めず、一方0.5%を超えると析出強化を起こして高強度化し、加工硬化率が低下してしまうので、本発明では、炭硫化物の量は、体積率で0.005〜0.5%の範囲とした。
なお、炭硫化物の体積率は、通常の電子顕微鏡で行われているレプリカ法により析出物のみをカーボン支持膜に取り出し、これを走査型電子顕微鏡で元素分析しながら析出物1つ1つの大きさを測定した。これをレプリカ法において溶解した鉄の量中の析出物量として体積率を求めた。
上記した炭硫化物の量が、体積率で0.005%に満たないと満足いくほどの加工硬化率の向上が望めず、一方0.5%を超えると析出強化を起こして高強度化し、加工硬化率が低下してしまうので、本発明では、炭硫化物の量は、体積率で0.005〜0.5%の範囲とした。
なお、炭硫化物の体積率は、通常の電子顕微鏡で行われているレプリカ法により析出物のみをカーボン支持膜に取り出し、これを走査型電子顕微鏡で元素分析しながら析出物1つ1つの大きさを測定した。これをレプリカ法において溶解した鉄の量中の析出物量として体積率を求めた。
また、本発明の鋼板は、表面にめっき皮膜を有するものとしてもよい。鋼板表面にめっき皮膜を形成することにより、薄鋼板の耐食性が向上する。なお、めっき皮膜としては、例えば溶融亜鉛めっき皮膜や合金化溶融亜鉛めっき皮膜の他、電気亜鉛めっき、例えばZn−Ni電気合金めっき等が挙げられる。
次に、本発明の薄鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、好適には連続鋳造で得られたスラブを鋼素材とし、熱間圧延後、冷却してコイルに巻き取り、ついで酸洗後、冷間圧延したのち、連続焼鈍を施すことによって薄鋼板とする。
本発明において、鋼素材の溶製方法は特に限定されず、転炉や電気炉等、公知の溶製方法いずれもが適合する。鋳造方法も特に限定はされないが、連続鋳造方法が好適である。また、スラブを熱間圧延するに際しては、加熱炉でスラブを再加熱した後に熱間圧延しても良いし、温度補償を目的として1250℃以上の加熱炉で短時間加熱した後に熱間圧延に供しても良い。
本発明では、好適には連続鋳造で得られたスラブを鋼素材とし、熱間圧延後、冷却してコイルに巻き取り、ついで酸洗後、冷間圧延したのち、連続焼鈍を施すことによって薄鋼板とする。
本発明において、鋼素材の溶製方法は特に限定されず、転炉や電気炉等、公知の溶製方法いずれもが適合する。鋳造方法も特に限定はされないが、連続鋳造方法が好適である。また、スラブを熱間圧延するに際しては、加熱炉でスラブを再加熱した後に熱間圧延しても良いし、温度補償を目的として1250℃以上の加熱炉で短時間加熱した後に熱間圧延に供しても良い。
上記のようにして得られた鋼素材(スラブ)に、熱間圧延を施す。この熱間圧延は、粗圧延と仕上げ圧延による圧延でも、粗圧延を省略した仕上げ圧延だけの圧延としてもよいが、いずれにしても仕上げ圧延温度が重要である。
仕上げ圧延温度:890℃以上
仕上げ圧延温度が890℃を下回ると、フェライト粒が伸展して加工硬化率が低下する。そのため、仕上げ圧延温度は890℃以上とする。なお、仕上げ圧延温度の上限については特に制限はないが、1000℃程度とするのが好適である。
仕上げ圧延温度:890℃以上
仕上げ圧延温度が890℃を下回ると、フェライト粒が伸展して加工硬化率が低下する。そのため、仕上げ圧延温度は890℃以上とする。なお、仕上げ圧延温度の上限については特に制限はないが、1000℃程度とするのが好適である。
上記の熱間圧延後、冷却してコイルに巻き取るが、この巻取り温度も重要である。
巻取り温度:600℃超え
巻取り温度が600℃以下では、Ti4C2S2が十分に析出しないので、本発明の効果が得られない。このため、巻き取り温度は600℃超えとする。好ましくは620℃以上、さらに好ましくは640℃以上である。なお、巻取温度の上限については760℃程度とするのが好適である。
巻取り温度:600℃超え
巻取り温度が600℃以下では、Ti4C2S2が十分に析出しないので、本発明の効果が得られない。このため、巻き取り温度は600℃超えとする。好ましくは620℃以上、さらに好ましくは640℃以上である。なお、巻取温度の上限については760℃程度とするのが好適である。
そして、酸洗後、冷間圧延したのち、連続焼鈍を施すが、この冷間圧延や連続焼鈍条件に特に制限はなく、従来公知の方法に従って行えば良い。
例えば、冷間圧延における圧下率:40〜95%程度、連続焼鈍における焼鈍温度は760〜900℃程度とするのが好適である。
例えば、冷間圧延における圧下率:40〜95%程度、連続焼鈍における焼鈍温度は760〜900℃程度とするのが好適である。
なお、本発明においては、以上のようにして製造された冷延鋼板に対し、めっき処理を施すことにより、鋼板表面にめっき皮膜を形成してもよい。例えば、めっき処理として、鋼板表面に溶融亜鉛めっき処理を施して溶融亜鉛めっき皮膜を形成しても良いし、溶融亜鉛めっき処理後、合金化処理を施すことにより、合金化溶融亜鉛めっき皮膜を形成してもよい。このとき、溶融亜鉛めっきと焼鈍を一つのライン内で行ってもよい。その他、Zn−Ni電気合金めっき等の電気めっきにより、めっき皮膜を形成してもよい。
実施例1
表1に示す成分組成になる溶鋼を、連続鋳造して、厚み:270mmのスラブ(鋼素材)とした。ついで、得られたスラブを、表2に示す温度で仕上げ圧延終了後、同じく表2に示す温度で巻取って、板厚:2.8mmの熱延鋼板とした。ついで、酸洗にて表面のスケールを除去し、圧下率:65%の冷間圧延を施したのち、780〜860℃の温度で連続焼鈍を施した。なお、表2のNo.17,18,19の薄鋼板については、焼鈍後直ちに480℃の亜鉛めっき浴(0.1%Al−Zn)中に浸漬し、付着量:45g/m2(両面)の溶融亜鉛めっき皮膜を形成したのち、520℃で合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
表1に示す成分組成になる溶鋼を、連続鋳造して、厚み:270mmのスラブ(鋼素材)とした。ついで、得られたスラブを、表2に示す温度で仕上げ圧延終了後、同じく表2に示す温度で巻取って、板厚:2.8mmの熱延鋼板とした。ついで、酸洗にて表面のスケールを除去し、圧下率:65%の冷間圧延を施したのち、780〜860℃の温度で連続焼鈍を施した。なお、表2のNo.17,18,19の薄鋼板については、焼鈍後直ちに480℃の亜鉛めっき浴(0.1%Al−Zn)中に浸漬し、付着量:45g/m2(両面)の溶融亜鉛めっき皮膜を形成したのち、520℃で合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした。
上記のようにして得られた薄鋼板から試験片を採取して、引張試験を行った。
また、炭硫化物の種類、平均粒子径および体積率を以下のようにして求めた。
また、炭硫化物の種類、平均粒子径および体積率を以下のようにして求めた。
(i)組織観察
得られた薄鋼板から作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)によって倍率:10000〜260000倍で観察し、Tiを含む炭硫化物の種類を求めた。
また、Tiを含む炭硫化物の平均粒子径や体積率は、前述した方法に従ってそれぞれ求めた。
得られた薄鋼板から作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)によって倍率:10000〜260000倍で観察し、Tiを含む炭硫化物の種類を求めた。
また、Tiを含む炭硫化物の平均粒子径や体積率は、前述した方法に従ってそれぞれ求めた。
(ii)引張試験
得られた薄鋼板から、圧延方向に対して平行方向を引張方向とするJIS 5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行って、引張強さを測定した。また、真歪みが0.05から0.25の間の加工硬化指数n値を求めた。
このn値が0.20以上であれば、プレス成形工性に優れているといえる。
得られた結果を、表2に併記する。なお、表2のNo.14の鋼板はTiの含有量が極めて少ないため、Tiを含む炭硫化物は析出しなかった。
得られた薄鋼板から、圧延方向に対して平行方向を引張方向とするJIS 5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行って、引張強さを測定した。また、真歪みが0.05から0.25の間の加工硬化指数n値を求めた。
このn値が0.20以上であれば、プレス成形工性に優れているといえる。
得られた結果を、表2に併記する。なお、表2のNo.14の鋼板はTiの含有量が極めて少ないため、Tiを含む炭硫化物は析出しなかった。
表2に示したとおり、本発明に従い得られた薄鋼板はいずれも、n値が0.20以上であり、プレス成形性に優れていることが分かる。
Claims (8)
- 質量%で、
C:0.01%以下、
Si:0.2%以下、
Mn:0.5%以下、
P:0.04%以下、
S:0.001以上0.03%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.1%以下および
Ti:0.02%以上0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成からなり、鋼中に、平均粒子径が10nm以上のTi4C2S2が体積率で0.005〜0.5%の範囲で分散してなることを特徴とする加工性に優れた加工性に優れた薄鋼板。 - 前記Ti4C2S2の一部が、TiS・Ti4C2S2複合炭硫化物で代替されてなることを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れた加工性に優れた薄鋼板。
- さらに質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の加工性に優れた薄鋼板。
- さらに質量%で、Nb:0.01%以下を含有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
- さらに質量%で、Cu,Sn,Ni,Ca,Mg,Co,As,Cr,Sb,W,Mo,Pb,Ta,REM,V,Cs,ZrおよびHfのうちから選んだ一種または二種以上を合計で1%以下含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
- 前記薄鋼板の表面にめっき層をそなえてなる請求項1ないし5のいずれかに記載の加工性に優れた薄鋼板。
- 請求項1または、請求項3ないし5のいずれかに記載の組成を有する鋼素材を、熱間圧延後、冷却してコイルに巻き取り、ついで酸洗後、冷間圧延したのち、連続焼鈍を施して薄鋼板を製造するに当たり、
上記熱間圧延の仕上げ圧延を890℃以上の温度で終了し、ついで600℃超えの温度で巻き取ることを特徴とする薄鋼板の製造方法。 - 請求項7に記載の製造方法により製造した薄鋼板に対しめっき処理を施すことにより、鋼板表面にめっき皮膜を形成することを特徴とするめっき薄鋼板の製造方法。
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