JP4506476B2 - 温間成形に適した冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.040〜0.20%
Cは鋼板の強度増加や温間成形中の炭化物生成の観点から、本発明において最も重要な元素の一つであり、本発明では温間成形後に目的とする強度を確保するために0.040%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を越える含有は、冷延板へのVを含む炭窒化物の固溶化を困難にし、さらには溶接性を著しく劣化させる。以上より、Cは0.040%以上0.20%以下、好ましくは、0.050%以上0.15%以下とする。
Si:1.5%以下
Siは鋼の延性を顕著に低下させることなく、鋼板を高強度化させることができる有用な強化元素であり、鋼板の強度レベルに応じて添加してもよく、このような効果を得るには0.01%以上添加するのが好ましい。しかしながら、特に、高い表面美麗性や耐食性を要求される自動車用鋼板の場合、1.5%を越えるSiの含有は、表面性状、化成処理性等に悪影響を与えるうえ、これらの悪影響を抑制するために鋼板表面の酸洗処理を長時間にわたり行わなければならない等、大きなコストアップを招く。以上より、Siは1.5%以下とする。より優れた表面美麗性、耐食性が求められる用途では好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.25%以下である。
Mn:0.50〜3.0%
Mnは、オーステナイトを安定化し、フェライト変態を遅延させる元素であり、連続焼鈍の際の冷却時にフェライト変態と同時に起こるVの炭化物の析出を安定して抑制する。このような効果を得るためには0.50%以上の添加が必要である。一方、3.0%を越えるMnの含有は上記した効果が飽和するだけでなく、温間成形時の強度が増大する。以上より、Mnは0.50%以上3.0%以下、好ましくは1.0%以上2.5%以下とする。
P:0.10%以下
Pは鋼を強化する作用があり、鋼板の強度レベルに応じて添加してもよく、このような効果を得るには0.005%以上添加するのが好ましい。一方、P含有量が0.10%を超えると、溶接性が劣化する。以上より、Pは0.10%以下である。また、より優れた溶接性が要求される場合には、Pは0.05%以下が好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼板中では介在物として存在し、溶接性の劣化をもたらすだけでなく、Sを含む粗大介在物は自動車衝突時に鋼板の破壊の起点となり、衝突の衝撃を十分に吸収することなく鋼板が破断する恐れがある。そのため、自動車用構造部材としてはできるだけ低減するのが好ましく、0.01%以下であればこれらの悪影響が無視できることから、本発明ではSは0.01%以下とする。また、より優れた溶接性や衝撃吸収特性を要求される場合には、Sは0.005%以下が好ましい。
Al:0.01〜0.5%
Alは鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有用な元素であり、鋼の組織微細化のためにも添加が望ましい元素である。また適性範囲のAlを添加したアルミキルド鋼のほうが、Alを添加しない従来のリムド鋼に比して、機械的性質が優れている。以上の理由により、下限は0.01%とする。また、Siと同様に強度-延性バランスを向上させる効果も有するが、一方で、Al含有量が多くなると表面性状の悪化につながるため上限は0.5%とする。以上より、Alは0.01%以上0.5%以下とする。
N:0.005%以下
NはVとV窒化物を形成する。V窒化物のオーステナイト中の溶解度積は著しく低いため、通常の連続焼鈍ラインで到達可能な温度域でV窒化物を溶解させるのは困難であり、結果として冷延板中の固溶Vを減少させる。よって、本発明においてはできるだけ少ないほうが好ましい。以上より、Nは0.005%以下、好ましくは0.003%以下とする。
V:0.10〜1.0%
Vは本発明においてもっとも重要な元素の一つであり、温間成形中に極微細炭化物として析出することにより成形後の部材の強度を高める。V含有量が0.10%未満では、いかなる方法で製造したとしても、温間成形後に所望の強度上昇を得ることができない。一方、1.0%を超えて添加しても温間成形時の強度上昇効果が飽和し、逆に加工性の劣化をもたらす。以上より、Vは0.10%以上1.0%以下とする。好ましくは、0.20%以上1.0%以下、より好ましくは、0.30%以上1.0%以下である。
Vの90%以上が固溶状態
さらに、本発明では、冷延鋼板中にVの90%以上を固溶させることとする。このようにVを冷延鋼板中に析出させず、積極的に固溶させることにより、温間成形時に所望の強度上昇を得ることができる。Vの固溶量が含有量の90%未満では、含有量に見合う強度上昇を得ることができない。よって、Vの固溶量は含有量の90%以上とする。より好ましくは95%以上である。なお、本発明において、固溶V量は、10%AA系電解法(参照:高山ら:鉄と鋼, 82(1996),147.)により抽出した残さの化学分析により得られた析出V量を、鋼中V量から差し引いて求めるものとする。
Mo:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜1.0%の一種または二種
Mo、Crはそれぞれ単独で添加しても、温間成形時に添加量に見合う強度上昇を得ることができないが、Vと複合で添加することにより、温間成形時の強度上昇量を増加させる効果を有し、このような効果はMo、Crそれぞれを0.10%以上添加したときに顕著となる。これは、Mo、CrはVに比べ炭化物形成能が弱いため、単独添加では添加量にみあう十分な強度上昇を得ることができないが、Vと複合添加することで、Vを含む炭化物に複合して析出し、温間成形時の強度上昇量を増加させると考えられる。一方で、Mo、Crそれぞれを1.0%を超えて添加すると、コストアップや温間成形時の加工性の劣化をもたらす。以上より、含有する場合、Moは0.10%以上1.0%以下、Crは0.10%以上1.0%以下とする。
Ti:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%の一種または二種
Ti、Nbは鋼中で炭窒化物を形成し、鋼の高強度化および組織微細化に有効に作用するため、必要に応じて選択して添加できる。このような効果を得るためには、Ti、Nbそれぞれを0.005%以上添加することが好ましい。一方で、Ti、Nbそれぞれを0.10%を超えて添加すると、コストアップや温間成形時の加工性の劣化をもたらす。以上より、含有する場合、Tiは0.005%以上0.10%以下、Nbは0.005%以上0.10%以下とする。
マルテンサイト体積率:20%以下(ただし、0%の場合も含む)
マルテンサイトが多量に生成すると鋼板強度が高くなりすぎるほか、マルテンサイト相は温間成形時に軟化するため、温間成形時のV炭化物析出による強度上昇効果を相殺してしまう。よって、マルテンサイト相の体積率は20%以下が好ましい。より好ましくは15%以下である。なお、上記主旨により、本発明においては、マルテンサイト体積率が0%の場合においても本発明の効果を奏するため、マルテンサイト体積率が0%の場合も含むものとする。
残部:ベイナイトを主体
マルテンサイトを除いた残部組織はベイナイトを主体とする組織とする。ただし、若干量(体積率で20%以下)のフェライト、パーライト、残留オーステナイト等の組織が混在していても構わない。また、本発明でいうベイナイトとは、ラス状フェライトの界面に沿って板状のセメンタイトが析出した所謂上部ベイナイト、およびラス状フェライト内にセメンタイトが微細分散した所謂下部ベイナイトを含むものとする。
固溶V量測定
固溶V量は、10%AA系電解法(参照:(*)高山ら:鉄と鋼, 82(1996),147. )により抽出した残さの化学分析により得られた析出V量を、鋼中V量から差し引いて求め、鋼中V量に対する固溶量の比:S(=固溶V/鋼中V×100)で評価した。
組織観察
得られた冷延鋼板から試験片を採取し、圧延方向に直交する断面(C断面)について、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて微視組織を撮像し、組織の種類の同定を行い、画像解析装置を用いてマルテンサイト相の体積率を求めた。
引張試験
得られた冷延鋼板から長軸を圧延方向に直交する方向としたJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張強さ(室温TS)を求めた。また、550℃で10分間保持後、同温度で破断するまで上記と同様の引張試験を行い、温間引張強さ(温間TS)を求めた。さらに、550℃で10分間保持後に同温度で2%の引張変形を行ったのち室温まで冷却した試料に対しても上記と同様の引張試験を行い、温間成形後室温引張強さ(温間成形後室温TS)を求め、さらに、これらの温間TS、温間成形後室温TSから温間TS/温間成形後室温TSであるP値を求めた。得られた結果を表2に併せて示す。
Claims (6)
- mass%で、C:0.040〜0.20%、Si:1.5%以下、Mn :0.50〜3.0%、P: 0.10%以下、S :0.01%以下、Al:0.01〜0.5%、N:0.005%以下、V:0.10〜1.0%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、さらに前記Vの90%以上が固溶状態であることを特徴とする温間成形に適した冷延鋼板。
- さらに、mass%で、Mo:0.10〜1.0%、Cr:0.10〜1.0%の一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の温間成形に適した冷延鋼板。
- さらに、mass%で、Ti:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%の一種または二種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の温間成形に適した冷延鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の組成を有するスラブに、熱間圧延工程、冷間圧延工程、連続焼鈍工程を順次施す冷延鋼板の製造方法であって、前記連続焼鈍工程では、850℃以上の温度域に加熱保持後、該保持温度から平均冷却速度:30℃/s以上で600℃以下まで急冷することを特徴とする温間成形に適した冷延鋼板の製造方法。
- 前記連続焼鈍工程では、前記急冷後、500〜350℃の間に10〜300s保持することを特徴とする請求項4に記載の温間成形に適した冷延鋼板の製造方法。
- 前記熱間圧延工程では、スラブを、鋳造後、再加熱することなく若しくは1000℃以上に再加熱した後、熱間圧延し、該熱間圧延では粗圧延を経ることなく若しくは粗圧延した後、仕上げ圧延温度:800℃以上で仕上げ圧延を行い、次いで、平均冷却速度: 30℃/s以上で650℃以下まで急冷し、次いで、巻取り温度:650℃以下で巻取ることを特徴とする請求項4または5に記載の温間成形に適した冷延鋼板の製造方法。
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