JP4214580B2 - ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN−LCD(ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置)から、STN―LCD(スーパー・ツイスティッド・ネマチック)へと表示容量の拡大に対応してきた。STN―LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって、開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。STN−LCDはTN−LCDでは90゜程度の捻りを更に強く捻ったものである。捻りを上げることにより、印加電圧に対する光学応答が急峻になり、TN−LCDでは達成できなかった高密度表示での十分なコントラストを得ることが出来る。一方、強く捻ったために、ねじれた配向を安定して維持することが難しくなり、アンダードメインと呼ばれる十分ねじれない状態や、ストライプドメインと呼ばれ、ねじれが安定せずセル中央の分子が波打ったように配列し散乱が起こり、著しくコントラストを悪化させる状態が起こるようになった。このような好ましくない状態を起こりにくくするには、液晶組成物の分子構造や、チルト角、弾性定数、分子間相互作用等のパラメータの制御が重要になってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述の最も重要な課題は、上記のような不安定なねじれ構造を起こしにくく、歩留まりよく、高コントラスト、高速応答を兼ね備えたSTN−LCDを製造できる液晶組成物及び液晶組成物と装置との最適の組み合わせを見いだすことである。
【0004】
液晶組成物の曲がりの弾性定数(K33)と広がりの弾性定数(K11)の比(K33/K11)は、液晶表示装置の光学特性に大きな影響を及ぼす(F.LEENHOUTS, M.SCHADT; JAPAN DISPLAY '86 9.2, P388)。STN−LCDでは、K33/K11を大きくすると、コントラストは良くなるが応答が悪くなり、逆に、K33/K11を小さくすると、応答は良くなるがコントラストを悪化させてしまう。このように過度にこれらの値を大きくしたり小さくしたりすることでは、上記の課題を解決することは出来ない。本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を新たに見いだした知見に基づき、解決あるいはより改善することにある。発明者らは、多くの液晶組成物を作成し、液晶組成物の極性成分、非極性成分の組み合わせを詳細に検討した結果、液晶材料の組み合わせによりコントラストと応答速度のバランスが良く、ねじれ構造も安定で、アンダードメインやストライプドメインの発生しにくい液晶組成物及び液晶組成物との組み合わせを見いだすことに成功し本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果、一般式(I)
【0006】
【化6】
(この式において、R1は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、オキサアルキル基、オキサアルケニル基又はアルコキシル基を表わし、nは0又は1を示す。)で表わされる化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有量が5〜20重量%の範囲であり、更に、一般式(II)
【0007】
【化7】
(この式において、R2は炭素数1〜10のアルケニル基、オキサアルケニル基を示す)で表わされる化合物を1種又は2種以上含有し、その含有量が5〜40重量%の範囲であり、更に、一般式(III)
【0008】
【化8】
(この式において、R3は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、オキサアルキル基、オキサアルケニル基又はアルコキシル基を示す。)で表わされる化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有量が10〜40重量%の範囲であり、更に、一般式(IV)
【0009】
【化9】
(この式において、R4、R5は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、オキサアルキル基、オキサアルケニル基又はアルコキシル基を表わし、環Aはシクロへキシレン、フェニレン、フッ素原子により置換されたフェニレンを表し、mは0又は1を示す。)で表わされる化合物を1種又は2種以上含有し、その含有率が10〜40重量%の範囲であり、更に一般式(V)
【0010】
【化10】
(この式において、R6は炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、オキサアルキル基、オキサアルケニル基又はアルコキシル基を示す。)で表された化合物を1種または2種以上含有し、その含有率が5〜40重量%の範囲である液晶組成物であって、少なくとも70℃のネマチック相−等方性液体相転移温度であり、高くとも−20℃の結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度であり、屈折率の光学異方性Δnが0.12〜0.16であり、比誘電率異方性Δεが3以上であるネマチック液晶組成物を使用することにより本課題を解決されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0011】
また本発明は、上記の組成を有したネマチック液晶組成物を用いたねじれ角220°〜270°であるスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置にも関し、この組成物と表示装置との組み合わせにより、コントラストと応答速度のバランスが良く、ねじれ構造も安定で、アンダードメインやストライプドメインの発生しにくい液晶組成物及び液晶組成物との組み合わせを見いだすことに成功し本発明を完成するに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置の一例について説明する。
【0013】
本発明の液晶組成物における好ましい態様は、一般式(I)で示される化合物群より1種〜10種、一般式(II)で表される化合物群より1種〜6種、一般式(III)で表される化合物群より1種〜6種、一般式(IV)の化合物より1種〜6種、一般式(V)の化合物より1種〜6種の範囲で選ばれることが望ましい。この効果は、一般式(I)の化合物を5〜20重量%の範囲で、一般式(II)の化合物を5〜40重量%の範囲で、一般式(III)で表される化合物を10〜40重量%の範囲で、一般式(IV)の化合物を10〜40重量%の範囲で、一般式(V)の化合物を5〜40重量%で含有させることが好ましい。更に好ましくは、それぞれの群の重量%を5〜10重量%、5〜20重量%、10〜30重量%、20〜40重量%、10〜30重量%の範囲で含有させることにより特段のものとなる。
【0014】
以下に本発明の液晶組成物を構成する各群の化合物について詳述する。
【0015】
一般式(I)から(V)の化合物は、公知の化合物であり、当業者が容易に入手することができる。
【0016】
一般式(I)の化合物は、大きい比誘電率異方性Δεを持ち、低電圧可能な低閾値電圧を組成物に付与する。一般式(II)の化合物は弾性定数比K33/K11が大きく、STN表示装置での電気光学特性の急峻性を急峻にし、コントラストを格段に高くする効果がある。但し多量に使用することにより応答速度が遅くなり、ねじれ構造が安定化しにくく、ストライプドメインが発生しやすい欠点を有している。一般式(III)の化合物は、一般式(I)、(II)の化合物と比べて比誘電率異方性Δεはそれほど大きくない中程度の極性を持つ化合物である。一般式(IV)の化合物は、小さい比誘電率異方性Δεを持つ低粘性化合物である。一般式(V)の化合物は、広いネマチック温度範囲をもつ低粘性化合物であり、比較的低い弾性定数比K33/K11をもつ。
【0017】
上記一般式(I)〜(V)におけるR1〜R6はそれぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、オキサアルキル基、オキサアルケニル基又はアルコキシル基を表わす(R2はアルキル基を含まず)が、アルキル基、オキサアルキル基の炭素数は1〜7が好ましく、特に好ましくは、3から5である。アルケニル基は、低粘性でネマティック温度範囲を広くするため好ましい。特にCH2=CH−(CH2)u(u=0、2)の化合物が好ましい。最も好ましい態様は、一般式(I)のR1がアルキル基、一般式(II)のR2がアルケニル基、一般式(III)のR3がアルケニル基、一般式(IV)のR4及びR5の一方もしくは両方がアルケニル基である。一般式(IV)のA環は、シクロヘキサン環が最も好ましい。
【0018】
また、本発明のネマティック液晶組成物は、少なくとも70℃のネマチック相−等方性液体相転移温度(N−I点)であり、高くとも−20℃の結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(C、S−N)であることを特徴とするネマチック液晶組成物である。液晶組成物の結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(C、S−N)は、好ましくは、−25℃以下である。液晶組成物の比誘電率は、好ましくは3以上であり、更に好ましくは、10以下である。
【0019】
このようにして得られた液晶組成物を使用した液晶表示装置は、アンダードメインや、ストライプドメインなどの不具合が起こりにくく、高いコントラストと良好な応答性能を持つ優れた特性を有する。
【0020】
上記ネマチック液晶組成物は、高時分割駆動のSTN液晶表示装置に有用であり、透過型あるいは反射型の液晶表示装置に用いることができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例の組成とその特性データを表1に示す。
【0022】
【表1】
(表中、液晶組成物の組成は「重量%」である。)
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
【0023】
Tni:ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T-n:固体相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth:セル厚 d=6μmの90°ツイストのTNセルでのしきい値電圧(V)
△n :複屈折率
η20℃ :20℃での粘度(mPa・s)
【0024】
化合物記載に使用した略号は下記の構造を意味する。
・略式中の右末端あるいは左末端が数字の場合:
右末端あるいは左末端が数字の場合、相当する化合物の末端はCnH2n+1−をとるが、ここで示される数字はCnH2n+1−におけるnの値である。
【0025】
但し、左末端が数字(n)であって、次いでd、数字(m)と続く(つまりndmで表わされる)場合:ndm(数字d数字)は、
【0026】
【化11】
【0027】
で表わされる構造を意味する。ここで、ndmの数字nは上式中のCnH2n+1におけるnに相当する部分を、ndmの数字mは上式中の(CH2)m-1におけるmに相当する部分を表わすものである。
・C:トランス−1,4−シクロヘキシレン基
・P:1,4−フェニレン基
・E:−COO−
・e:−OCO−
・A:−CH2CH2−
・t:−C≡C−
・0:酸素原子
・略式中の右末端がCNの場合:
相当する化合物中の右末端の環における4位はシアノ基をとる。
・略式中の右末端がFの場合:
相当する化合物中の右末端の環における4位はフッ素原子をとる。
・f:相当する化合物中の右末端の環におけるオルト位(3位)はフッ素原子をとる。
【0028】
例えば、上記の略号例1として、第1表中の2PEPfCNは、本発明の一般式(I)で表される化合物である式
【0029】
【化12】
【0030】
の化合物を表す。
【0031】
また、上記の略号例2として、3CPEPfFで表される化合物は、式
【0032】
【化13】
【0033】
の化合物である。
【0034】
実施例1で示した液晶Aと、比較例として示した液晶Cを、コレステリックノナノエートでピッチを調整した後、240°ツイストした液晶表示装置に注入し、時分割駆動波形(1/240 duty 1/16 bias, 1/480 duty 1/23bias)で駆動させて電気光学特性を測定し、0℃、25℃、50℃の温度で配向の安定性(アンダードメイン、ストライプドメインの発生)を評価した。実施例1の液晶Aを使用したSTN液晶表示装置では、すべての温度範囲で良好なコントラストと、安定した配向が得られたが、比較例の液晶Cを使用した液晶表示装置では、コントラストが劣り、50℃で配向異常が観察された(表2)。
【0035】
【表2】
表1、表2の結果からわかるように、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)から選ばれた化合物を同時に使用した実施例1、実施例2は、同時に使用していない比較例に比べてコントラストが良好で、アンダードメインやストライプドメインが発生しにくく良好な配向安定性が得られることがわかる。本発明の液晶組成物を使用すれば、コントラストの高い液晶表示装置を製造工程の歩留まり良く製造することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の液晶材料の組み合わせにより、STN液晶表示装置に使用した際のコントラストが高く、製造歩留まりを良く生産することができる液晶組成物を提供することができた。また、本発明の液晶組成物を使用したSTN液晶表示装置は、高時分割駆動においても高いコントラスト維持することができた。
Claims (2)
- 一般式(I)
- 請求項1記載のネマチック液晶組成物を用いたねじれ角220°〜270°であることを特徴とするスーパー・ツイスティッド・ネマチック(STN)液晶表示装置。
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