JP4211465B2 - パルス幅変調回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえばオーディオアンプに用いられるパルス幅変調回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オーディオアンプでは、オーディオ信号をパルス幅変調(PWM)してその変調信号を出力するパルス幅変調回路が用いられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−124859号公報
【0004】
図8は、たとえば無安定マルチバイブレータを利用したパルス幅変調回路の一例(従来例1とする)を示す図である。この図によるパルス幅変調回路は、定電流iを出力する定電流部Kと、第1トランジスタQ3からなる第1オン・オフ回路の出力端(コレクタ)と第2トランジスタQ4からなる第2オン・オフ回路の入力端(ベース)とが、第1コンデンサC1とこの第1コンデンサC1に定電流iの一部i1を充電電流として供給する抵抗R1とトランジスタQ1とからなる第1電流供給回路で結合されるとともに、第2トランジスタQ4からなる第2オン・オフ回路の出力端(コレクタ)と第1トランジスタQ3からなる第1オン・オフ回路の入力端(ベース)とが第2コンデンサC2とこの第2コンデンサC2に定電流iの残りi2(=i−i1)を充電電流として供給する抵抗R2とトランジスタQ2とからなる第2電流供給回路で結合された無安定マルチバイブレータからなるパルス信号生成部と、第1電流供給回路のトランジスタQ1のベースにオーディオ出力源AUからのオーディオ信号(変調信号)を入力することにより第1コンデンサC1の充電電流i1と第2コンデンサC2の充電電流i2との電流比k(=i2/i1)を変化させてパルス信号生成部から発生されるパルス信号のパルス幅変調を行うパルス幅変調部とで構成されている。
【0005】
図8に示すパルス幅変調回路は、第1および第2電流供給回路(差動増幅回路)に対して定電流部Kから定電流iが供給されており、トランジスタQ1のベースに入力されるオーディオ信号のレベル変動に応じて第1コンデンサC1に供給される電流i1と第2コンデンサC2に供給される電流i2とがi1+i2=iの関係を保持しながら変化するようになっている。電流i1,i2による第1および第2コンデンサC1,C2の充電動作によって第1トランジスタQ3と第2トランジスタQ4とが交互にオン・オフをするため、オーディオ信号に基づいて充電電流i1,i2の電流比kが変化し、この電流比kの変化に応じて第2トランジスタQ4のオン期間とオフ期間とが変化するようになっている。すなわち、オーディ信号の振幅の変化に応じて第2トランジスタQ4のコレクタ端子から出力されるパルス信号のパルス幅が変化するようになっている。
【0006】
図9は、上記パルス幅変調回路の各点における波形を示す図であるが、第1コンデンサC1の充電時間は、第2トランジスタQ4から出力されるパルス信号のオフ期間T1を決定し、第2コンデンサC2の充電時間は、同パルス信号のオン期間T2を決定する。この場合、パルス幅変調信号PWMの周期Tは、T=T1+T2で表される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、各トランジスタQ3,Q4は、それらの固有のスイッチング特性によりスイッチング動作において応答遅れ時間を有する。そのため、上記パルス幅変調回路の各点における実際の波形は、上記スイッチング動作の応答遅れ時間によって、図10に示すような波形となる。すなわち、本来ならば、第1コンデンサC1の充電時間t1は、第2トランジスタQ4から出力されるパルス信号のオフ期間T1と等しく、また、第2コンデンサC2の充電時間t2は、同パルス信号のオン期間T2と等しくなるが、上記各トランジスタQ3,Q4によるスイッチング動作の応答遅れ時間をΔtとすれば、それによって、パルス信号のオフ期間T1はt1+Δtとなり、パルス信号のオン期間T2はt2+Δtとなる。
【0008】
図8におけるd点の波形(パルス幅変調信号PWMのパルス波形)においてデューティ比が50%であるとき(オーディオ信号が無変調のとき)、上記各トランジスタQ3,Q4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtは、第1コンデンサC1の充電時間t1や第2コンデンサC2の充電時間t2に比べ比較的短いために、応答遅れ時間Δtのパルス周期に与える影響は比較的小さい。デューティ比が50%(t1=t2)のときには、t1+Δt:t2+Δt=1:1であり、デューティ比に影響しないからである。しかしながら、たとえばオーディオ信号のレベルが変動し変調がかけられることにより、パルス幅変調信号PWMのパルス周期において、たとえばそのパルス信号のオン期間T1またはオフ期間T2のいずれかが無変調時に比べ短くなると、上記各トランジスタQ3,Q4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtのパルス周期に与える影響が比較的大きくなる。そのため、適切なパルス幅の変調信号が出力できなくなり、パルス幅変調信号PWM自体に歪みを生じさせることになるといった問題点がある。
【0009】
図11は、無安定マルチバイブレータを利用したパルス幅変調回路の他の一例(従来例2とする)を示す図である。この図によるパルス幅変調回路は、第1コンパレータCP1および第1トリガー素子TR1からなる第1オン・オフ回路の出力端(第1トリガー素子TR1の出力)と第2コンパレータCP2および第2トリガー回路TR2からなる第2オン・オフ回路の入力端(第2コンパレータCP2の入力端子)とが、第1コンデンサC11とこの第1コンデンサC11に第1充電電流i1を供給する電流供給素子CC1と第1コンデンサC11を放電させるための第1スイッチング素子SW1と、からなる第1の電流供給回路で結合されるとともに、第2オン・オフ回路の出力端(第2トリガー素子TR2の出力)と第1オン・オフ回路の入力端(第1コンパレータCP1の入力端子)とが、第2コンデンサC12とこの第2コンデンサC12に上記第1充電電流i1に対して所定の電流比を有する第2充電電流i2(=i−i1)を供給する電流供給素子CC2と第2コンデンサC12を放電させるための第2スイッチング素子SW2とからなる第2の電流供給回路で結合された無安定マルチバイブレータからなるパルス信号生成部と、第1電流供給回路にオーディオ出力源AUからのオーディオ信号(変調信号)を入力することにより第1コンデンサC11の充電電流i1と第2コンデンサC12の充電電流i2との電流比k(=i2/i1)を変化させてパルス信号生成部から発生されるパルス信号のパルス幅変調を行うパルス幅変調部とで構成されている。
【0010】
図11に示すパルス幅変調回路は、第1および第2電流供給回路に対して電源V0が供給されており、各電流供給素子CC1,CC2に入力されるオーディオ信号のレベル変動に応じて第1コンデンサC11に供給される電流i1と第2コンデンサC12に供給される電流i2とがi1+i2=iの関係を保持しながら変化するようになっている。第1および第2コンパレータCP1,CP2は、電流i1,i2による第1および第2コンデンサC11,C12の充電動作に基づく充電電圧を入力しその入力電圧が基準電圧V2を越えたときオン出力する。そのため、電流i1,i2による第1および第2コンデンサC11,C12の充電動作によって第1および第2コンパレータCP1,CP2とは、交互にオン出力する。したがって、オーディオ信号に基づいて充電電流i1,i2の電流比kが変化し、この電流比kの変化に応じて第2コンパレータCP2の出力のオン期間とオフ期間とが変化するようになっている。すなわち、オーディ信号の振幅の変化に応じて第2コンパレータCP2の出力端子から出力されるパルス信号のパルス幅が変化するようになっている。
【0011】
図12は、従来例2のパルス幅変調回路の各点における波形を示す図であるが、第1コンデンサC11の充電電圧が第1コンパレータCP1の基準電圧V2を越えるか否かに基づいて、第1コンパレータCP1から出力されるパルス信号のオン期間T1が決定され、第2コンデンサC12の充電電圧が第2コンパレータCP2の基準電圧V2を越えるか否かに基づいて、第2コンパレータCP2から出力されるパルス信号のオン期間T2が決定される。この場合、パルス幅変調信号PWMの周期Tは、T=T1+T2で表される。
【0012】
ところが、上記第1および第2コンパレータCP1,CP2並びに第1および第2スイッチング素子SW1,SW2は、それらの固有のスイッチング特性によりスイッチング動作において応答遅れ時間を有する。そのため、本来ならば、第1コンデンサC11の充電電圧が第1コンパレータCP1において基準電圧V2を上回るときの第1コンデンサC11の充電時間t1は、第2コンパレータCP2から出力されるパルス信号のオフ期間T1と等しく、また、第2コンデンサC12の充電電圧が第2コンパレータCP2において基準電圧V2を上回るときの第2コンデンサC12の充電時間t2は、同パルス信号のオン期間T2と等しくなるが、第1および第2コンパレータCP1,CP2並びに第1および第2スイッチング素子SW1,SW2によるスイッチング動作の応答遅れ時間をΔtとすれば、従来例1と同様に、それらによって、パルス信号のオン期間T1はt1+Δtとなり、パルス信号のオフ期間T2はt2+Δtとなる。そのため、図11に示すパルス幅変調回路においても、上記した従来例1におけるパルス幅変調回路における問題点と同様の問題点が生じる。
【0013】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、回路素子のスイッチング動作による応答遅れ時間を補正してそれに起因するパルス幅変調信号に対する影響を抑制することのできるパルス幅変調回路を提供することを、その課題としている。
【0014】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本発明によって提供されるパルス幅変調回路は、第1のオン・オフ回路の出力端と第2のオン・オフ回路の入力端とが、第1のコンデンサとこの第1のコンデンサに第1充電電流を供給する第1の電流供給回路とを含む第1の結合回路で結合されるとともに、上記第2のオン・オフ回路の出力端と上記第1のオン・オフ回路の入力端とが、第2のコンデンサとこの第2のコンデンサに上記第1充電電流に対して所定の電流比を有する第2充電電流を供給する第2の電流供給回路とを含む第2の結合回路で結合されるパルス信号生成部と、外部入力される変調信号のレベル変動に応じて上記第1充電電流を変化させることにより上記パルス信号生成部で生成されるパルス信号のデューティ比を変化させるパルス幅変調部と、からなるパルス幅変調回路であって、上記第1のオン・オフ回路の出力端と上記第1のコンデンサの上記第1充電電流が供給される端子との間に設けられ、上記第1のオン・オフ回路のオン、オフ動作に基づいて、上記第1のコンデンサに対して補助的に上記第2のオン・オフ回路のスイッチング動作の応答遅れ時間を補正するに対して補助電流を供給する第1の補助電流供給手段と、上記第2のオン・オフ回路の出力端と上記第2のコンデンサの上記第2充電電流が供給される端子との間に設けられ、上記第2のオン・オフ回路のオン、オフ動作に基づいて、上記第2のコンデンサに対して補助的に上記第1のオン・オフ回路のスイッチング動作の応答遅れ時間を補正する補助電流を供給する第2の補助電流供給手段と、を備えることを特徴としている。
【0016】
好ましい実施の形態によれば、上記第1の補助電流供給手段および第2の補助電流供給手段は、抵抗およびコンデンサからなる微分回路と、その微分回路の出力に基づいて補助電流を出力する補助電流出力素子とによってそれぞれ構成されてもよい。
【0017】
本発明によれば、第1のコンデンサは第1充電電流i1により充電され、第2のコンデンサは第1充電電流i1に対して所定の電流比を有する第2充電電流i2により充電される。第1および第2のコンデンサの充電電圧の変化により第1および第2のオン・オフ回路の出力端の出力レベルが交互に反転し、これによりパルス信号が出力される。変調信号が外部入力されると、第1充電電流i1と第2充電電流i2との電流比kは、変調信号のレベル変動に応じて変化し、これにより第1および第2のコンデンサの充電時間が変化して第1および第2のオン・オフ回路から出力されるパルス信号のオン期間とオフ期間の比率(デューティ比)が変化するパルス幅変調信号が得られる。
【0018】
従来の構成では、第1および第2のオン・オフ回路におけるスイッチング動作の応答遅れ時間によってパルス幅変調信号に歪みを生じさせることがあったが、本発明では、第1および第2のオン・オフ回路のオン、オフ動作に応じて第1および第2のコンデンサに対して補助的に第1および第2のオン・オフ回路のスイッチング動作の応答遅れ時間を補正する補助電流を供給しているので、第1および第2のコンデンサにおける充電速度が所定期間内で増し、これにより、第1および第2のオン・オフ回路におけるスイッチング動作の応答遅れ時間を解消するように補正することができる。そのため、第1および第2のオン・オフ回路におけるスイッチング動作の応答遅れ時間による影響のない良好なパルス幅変調信号を得ることができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるパルス幅変調回路の概略回路図である。図2は、このパルス幅変調回路の各点における波形を示す図である。このパルス幅変調回路は、入力信号(本実施形態では、オーディオ信号とする)をそれに応じたパルス幅を有するパルス幅変調信号PWMとしてのパルス信号に変調するものである。
【0022】
このパルス幅変調回路は、定電流回路11と、パルス信号生成回路12と、変調回路13と、補助電流供給回路14とによって大略構成されている。
【0023】
定電流回路11は、所定の定電流を出力し、パルス信号生成回路12に供給するものである。パルス信号生成回路12は、パルス幅変調信号の被変調信号(キャリア)であるパルス信号を生成する回路である。パルス信号生成回路12は、npn型の第1トランジスタQ3からなる第1オン・オフ回路、npn型の第2トランジスタQ4からなる第2オン・オフ回路、第1オン・オフ回路の出力端(第1トランジスタQ3のコレクタ端子)と第2オン・オフ回路の入力端(第2トランジスタQ4のベース端子)とを結合する第1結合回路、および第2オン・オフ回路の出力端(第2トランジスタQ4のコレクタ端子)と第1オン・オフ回路の入力端(第1トランジスタQ3のベース端子)とを結合する第2結合回路からなる無安定マルチバイブレータで構成されている。
【0024】
第1結合回路は、第1コンデンサC1と、この第1コンデンサC1に定電流回路11から出力される定電流iの一部i1を充電電流として供給する第1電流供給回路とで構成されている。第1電流供給回路は、抵抗R1とトランジスタQ1とからなる。一方、第2結合回路は、第2コンデンサC2と、この第2コンデンサC2に定電流iの残りi2(=i−i1)を充電電流として供給する第2電流供給回路とで構成されている。第2電流供給回路は、抵抗R2とトランジスタQ2とからなる。また、第1電流供給回路および第2電流供給回路は差動増幅回路によって構成され、この差動増幅回路は変調回路13として機能している。
【0025】
変調回路13は、パルス信号生成回路12で生成されるパルス信号をオーディオ信号によりパルス幅変調する回路である。このパルス幅変調回路では、第2トランジスタQ4のコレクタ端子(d点)から出力のパルス信号を取り出すとすると、図9に示したように、第1コンデンサC1の充電時間によりパルス信号のオン期間T1が決定され、第2コンデンサC2の充電時間によりパルス信号のオフ期間T2が決定されるようになっている。
【0026】
変調回路13は、上述のように差動増幅回路からなり、定電流回路11から供給される定電流iを分流して第1コンデンサC1への第1充電電流i1と第2コンデンサC2への第2充電電流i2(=i−i1)とを生成するとともに、第1充電電流i1と第2充電電流i2との電流比kをオーディオ信号のレベル変動に応じて変化させることにより、パルス信号生成回路12で生成されるパルス信号のデューティ比T1/(T1+T2)をオーディオ信号のレベル変動に応じて変化させる。
【0027】
定電流回路11、パルス信号生成回路12および変調回路13の接続構成を説明すると、第1トランジスタQ3および第2トランジスタQ4のエミッタ端子は、第2電源V2に接続され、第1トランジスタQ3および第2トランジスタQ4のコレクタ端子は、それぞれ抵抗R3と抵抗R4とを介して第1電源V1に接続されている。また、第1コンデンサC1は、第1トランジスタQ3のコレクタ端子と第2トランジスタQ4のベース端子との間に接続され、第2コンデンサC2は、第2トランジスタQ4のコレクタ端子と第1トランジスタQ3のベース端子との間に接続されている。
【0028】
さらに、トランジスタQ1のエミッタ端子は抵抗R1の一方端が接続されるとともに、トランジスタQ2のエミッタ端子は抵抗R2の一方端が接続され、抵抗R1および抵抗R2の他方端は定電流回路11の出力端子に接続されている。また、定電流回路11の入力端子は電源V0に接続されている。また、トランジスタQ1のベース端子には、オーディオ信号が出力されるオーディオ出力源AUが接続されている。一方、抵抗R2の他端は、トランジスタQ2のエミッタ端子に接続され、トランジスタQ2のベース端子は、グランドに接地されている。
【0029】
第2トランジスタQ4のベース−エミッタ間電圧をVbe4とすると、第2トランジスタQ4がオン状態ではc点の電位はV1、a点の電位は第2トランジスタQ4のベース電位(Vbe4+V2)にそれぞれなっている。したがって、第1コンデンサC1の両端電圧はc点側を+、a点側を−の極性としてV1−(Vbe4+V2)に保持されている。
【0030】
この状態で、第2コンデンサC2の充電動作によりb点の電位が(Vbe3+V2)に上昇すると、第1トランジスタQ3がオンになり、c点の電位は略第2電源の電圧V2となり、a点の電位はc点の電位から第1コンデンサC1の両端電圧V1−(Vbe4+V2)だけ低下した電圧となる。Vbe4は|V1−V2|に対して非常に小さいので、Vbe4を無視すると、a点の電位は−(V1−V2)となる。
【0031】
したがって、第1トランジスタQ3がオンになると、電流i1が第1コンデンサC1に流入して当該第1コンデンサC1は図1とは逆極性の方向に充電され、a点の電位が(V2+Vbe4)に上昇すると、第2トランジスタQ4がオンになり、第1トランジスタQ3はオフになる。そして、第2コンデンサC2についても上述と同様の充電動作が行なわれる。
【0032】
補助電流供給回路14は、第1および第2トランジスタQ3,Q4におけるスイッチング動作の応答遅れ時間を補正するために、第1および第2コンデンサC1,C2に対して補助的に補助電流をそれぞれ供給する回路である。補助電流供給回路14は、pnp型のトランジスタQ5,Q6と、複数の抵抗R5〜R8と、複数のコンデンサC3,C4とによって構成されている。
【0033】
補助電流供給回路14は、コンデンサC3および抵抗R6によって構成される微分回路により、第1トランジスタQ3がオンするタイミングでトランジスタQ5を瞬間的にオンさせて第1コンデンサC1のa端子に補助的に補助電流i3を供給する。また、補助電流供給回路14は、コンデンサC4および抵抗R8によって構成される微分回路により、第2トランジスタQ4がオンするタイミングでトランジスタQ6を瞬間的にオンさせて第2コンデンサC2のb端子に補助的に補助電流i4を供給する。
【0034】
補助電流供給回路14の接続構成を説明すると、トランジスタQ5のエミッタ端子は、抵抗R5を介してパルス信号生成回路12の第1トランジスタQ3のエミッタ端子に接続されている。トランジスタQ5のべース端子は、コンデンサC3を介して第1コンデンサC1のc端子に接続されているとともに、抵抗R6を介して第2の電源V2に接続されている。トランジスタQ5のコレクタ端子は、第1コンデンサC1のa端子に接続されている。
【0035】
一方、トランジスタQ6のエミッタ端子は、抵抗R7を介してパルス信号生成回路12の第2トランジスタQ4のエミッタ端子に接続されている。トランジスタQ6のべース端子は、コンデンサC4を介して第2コンデンサC2のd端子に接続されているとともに、抵抗R8を介して第2の電源V2の出力に接続されている。トランジスタQ6のコレクタ端子は、第2コンデンサC2のb端子に接続されている。
【0036】
次に、このパルス幅変調回路における動作を、図2に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0037】
このパルス幅変調回路では、オーディオ信号がそれに応じたパルス幅を有するパルス幅変調信号PWMに変調される。ここでは、説明の便宜のため、オーディオ信号が「0」の場合(無変調の場合)を説明する。
【0038】
変調回路13では、トランジスタQ1,Q2により定電流回路11からの定電流iが電流i1と電流i2とに分流される。すなわち、トランジスタQ1側に流れる電流をi1とすると、トランジスタQ2側に流れる電流は、(i−i1)となる。トランジスタQ1を流れる電流i1は、ベース電圧の変動に応じて変化する一方、トランジスタQ2を流れる電流i2は(i−i1)であるため、オーディオ出力源AUから変調信号としてトランジスタQ1のベース端子に入力されるオーディオ信号のレベルが基準レベル0vから変動すると、電流i1と電流i2の合計は一定値iを保持しつつそのレベル変動に応じて電流i1が変動する。すなわち、電流i1と電流i2との電流比kが変動する。
【0039】
無変調の場合、オーディオ信号のレベルは「0」であるので、トランジスタQ1に流れる電流i1とトランジスタQ2に流れるi2(i−i1)は等しくなる。すなわち、i1=i2=i/2となり、電流比kは1となる。
【0040】
第1および第2コンデンサC1,C2には、充電時に(V1−V2)の電圧が印加され、それぞれi/2の電流で充電される。
【0041】
ここで、図2における時刻taのときの各点の波形a,b,c,dを説明すると、このとき、第1トランジスタQ3はオフ状態であり、第2トランジスタQ4はオン状態である。第2トランジスタQ4はオン状態であるため、a点の電位は第2の電圧V2より第2トランジスタQ4のベース−エミッタ間電圧(Vbe4)分だけ高くなっており、(V2+Vbe4)である。なお、図2では、Vbe4がV2に対して非常に小さいので、Vbe4を無視して単に「V2」と記載している。
【0042】
また、d点の電位は第2電源電圧V2となるので、b点の電位は、d点の電位V2より第2コンデンサC2の両端電圧Vcの分だけ低下した値(V2−Vc)となっている。なお、第2トランジスタQ4のオン期間に第2コンデンサC2の充電動作が行われ、図2では、時刻taを第2トランジスタQ4のオン期間の略中間のタイミングにしているので、Vcは略(V1−V2)/2となっている。
【0043】
時刻tbになると、b点の電位は、第1トランジスタQ3のベース−エミッタ間電圧をVbe3とすると、第2コンデンサC2の充電動作によって(V2+Vbe3)になり、第1トランジスタQ3がオンになる。なお、図2では、Vbe3がV2に対して非常に小さいので、Vbe3を無視して単に「V2」と記載している。第1トランジスタQ3がオンになると、c点の電位はV2となるので、a点の電位は、c点の電位V2から第1コンデンサC1の充電電圧(V1−V2)だけ低下した値V2−(V1−V2)となり、これにより第2トランジスタQ4のベース電位はVbe4より小さくなるので、第2トランジスタQ4は瞬時にオフになる。
【0044】
a点の電位がV2−(V1−V2)になると、電流i1により図1に示す極性とは逆方向に第1コンデンサC1の充電動作が開始され、これによりa点の電位が上昇する。そして、時刻tcでa点の電位が(V2+Vbe4)に達すると、第2トランジスタQ4がオンになり、これによりb点の電位がV2−(V1−V2)になるため、第1トランジスタQ3はオフになる。以下、同様の動作が繰り返され、第1トランジスタQ3と第2トランジスタQ4とが交互にオン・オフ動作を繰り返すことによりc点,d点からパルス幅変調信号が出力される。なお、d点から出力されるパルス幅変調信号はc点から出力されるパルス幅変調信号に対して位相が反転している。
【0045】
ここで、時刻tbでは、第1トランジスタQ3がオンして、c点の電位がV2になるが、第1トランジスタQ3のスイッチング動作における応答遅れ時間Δtによって、第1コンデンサC1の充電動作は、時刻tbから遅れ時間Δt後に開始されることになる。そのため、たとえばオーディオ信号のレベルが変動し変調がかけられることにより、パルス幅変調信号PWMのパルス周期において、たとえばそのパルス信号のオン期間T1またはオフ期間T2のいずれかが無変調時に比べ短くなると、上記トランジスタQ3,Q4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtのパルス周期に与える影響が大きくなる。そのため、パルス幅変調信号PWM自体に歪みを生じさせることになるといった問題点があった。
【0046】
そこで、本第1実施形態では、時刻tbにおいて第1トランジスタQ3がオンするタイミングで、コンデンサC3および抵抗R6からなる微分回路(図2のe点における微分波形を生成)によってトランジスタQ5を瞬間的にオンさせて、第1コンデンサC1のa端子に補助電流i3を供給するようにしている。これにより、第1コンデンサC1のa端子では、第1充電電流i1が実質的に増加することになり、トランジスタQ5がオンする期間Δt′だけ充電速度が増し(図3(a) の波形の傾斜部の勾配参照)、すなわち、第1トランジスタQ3のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtが補正される。たとえば、図3(b) に示すように、c点の波形の立ち上がり時間が遅くなるところ、図3(c) に示すように、補正して立ち上がり時間が早められる。
【0047】
また、時刻tcでは、第2トランジスタQ4がオンするタイミングで、コンデンサC4および抵抗R8からなる微分回路(図2のf点における微分波形を生成)によってトランジスタQ6を瞬間的にオンさせて、第2コンデンサC2のb端子に補助電流i4を供給するようにしている。これにより、第2コンデンサC2のb端子では、第2充電電流i2が実質的に増加することになり、トランジスタQ6がオンする期間Δt′だけ充電速度が増し、すなわち、第2トランジスタQ4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtが補正される。
【0048】
このように、本実施形態では、補助電流供給回路14によって、第1および第2コンデンサC1,C2の充電電流をその充電開始時において瞬間的に増加させることにより、第1および第2トランジスタQ3,Q4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtが補正され、たとえばオーディオ信号のレベルが変動し変調がかけられることにより、パルス幅変調信号PWMのオン期間T1またはオフ期間T2のいずれかが無変調時に比べ短くなったとしても、パルス幅変調信号PWM自体に歪みを生じさせることを抑制することができる。
【0049】
なお、トランジスタQ5,Q6がオンする期間Δt′は、コンデンサC3および抵抗R6からなる微分回路およびコンデンサC4および抵抗R8からなる微分回路のそれぞれの時定数によって決定される。そのため、第1および第2トランジスタQ3,Q4のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtを補正することができるように、上記時定数を適当な値にすることが望ましい。
【0050】
図4は、このパルス幅変調回路における復調電圧と歪み率との関係を示す図である。なお、図4における縦軸には、THD+N(全高調波歪み+ノイズ)を百分率で表したものを歪み率として示している。この場合の試験構成としては、図5に示すように、パルス幅変調回路に対してオーディオ信号を入力し、パルス幅変調回路から出力されたパルス幅変調信号PWMをローパスフィルタを介して歪み率計に入力させるものが用いられている。また、パルス幅変調回路としては、補助電流供給回路14による遅れ時間の補正がないものと、補助電流供給回路14による遅れ時間の補正があるものとについてそれぞれ計測した。
【0051】
同図によると、復調電圧の大小(約1〜4V)にかかわらず、補助電流供給回路14による遅れ時間の補正がないパルス幅変調回路に比べ、補助電流供給回路14による遅れ時間の補正があるパルス幅変調回路の方が歪み率が格段に小さくなっていることがわかる。そのため、この実施形態によれば、再現性に優れたパルス幅変調回路を提供することができる。
【0052】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態にかかるパルス幅変調回路の概略回路図である。図7は、このパルス幅変調回路の各点における波形を示す図である。図6に示すパルス幅変調回路は、従来の技術の欄で説明した従来例2に対応するものである。
【0053】
この第2実施形態にかかるパルス幅変調回路は、パルス信号生成回路21と、変調回路22と、補助電流供給回路23とによって大略構成されている。
【0054】
パルス信号生成回路21は、パルス幅変調信号の被変調信号(キャリア)であるパルス信号を生成する回路であり、第1コンパレータCP1および第1トリガー素子TR1からなる第1オン・オフ回路、第2コンパレータCP2および第2トリガー素子TR2からなる第2オン・オフ回路、第1オン・オフ回路の出力端(第1トリガー素子TR1の出力)と第2オン・オフ回路の入力端(第2コンパレータCP2の入力)とを結合する第1結合回路、および第2オン・オフ回路の出力端(第2トリガー素子TR2の出力)と第1オン・オフ回路の入力端(第1コンパレータCP1の入力)とを結合する第2結合回路からなる無安定マルチバイブレータで構成されている。
【0055】
第1結合回路は、第1コンデンサC11と、この第1コンデンサC11に第1充電電流i1を供給する電流供給素子CC1からなる第1電流供給回路と、第1コンデンサC11を放電させる第1スイッチング素子SW1とで構成されている。一方、第2結合回路は、第2コンデンサC12と、この第2コンデンサC12に充電電流i1に対して所定の電流比を有する第2充電電流i2を供給する電流供給素子CC2からなる第2の電流供給回路と、第2コンデンサC12を放電させる第2スイッチング素子SW2とで構成されている。この場合、第1電流供給回路および第2電流供給回路は、変調回路22として機能している。
【0056】
パルス信号生成回路21では、第1コンパレータCP1は、第1コンデンサC11の充電電圧と、基準電圧(第2電源V2の電圧)とを比較し、第1コンデンサC11の充電電圧が基準電圧を上回るとオン信号を出力する。このオン信号が、図7に示すようにパルス信号のオフ期間T2を決定する。また、第2コンパレータCP2は、第2コンデンサC12の充電電圧と、基準電圧(第2電源V2の電圧)とを比較し、第2コンデンサC12の充電電圧が基準電圧を上回るとオン信号を出力する。このオン信号が、図7に示すようにパルス信号のオン期間T1を決定する。
【0057】
変調回路22は、パルス信号生成回路21で生成されるパルス信号をオーディオ信号によりパルス幅変調する回路である。変調回路22は、上述のように差動増幅回路からなり、定電流回路11から供給される定電流iを分流して第1コンデンサC11への第1充電電流i1と第2コンデンサC12への第2充電電流i2(=i−i1)とを生成するとともに、第1充電電流i1と第2充電電流i2との電流比kをオーディオ信号のレベル変動に応じて変化させることにより、パルス信号生成回路21で生成されるパルス信号のデューティ比T1/(T1+T2)をオーディオ信号のレベル変動に応じて変化させる。
【0058】
パルス信号生成回路21および変調回路22の接続構成を説明すると、第1コンデンサC11は、その一方端が第1コンパレータCP1の一方の入力端子に接続されているとともに、他方端が第1電源V1に接続されている。第1コンデンサC11の両端には、第1スイッチング素子SW1が並列に接続されている。第1コンパレータCP1は、他方の入力端子が基準電圧としての第2の電源V2に接続されており、その出力端子が第1トリガー素子TR1の入力端子に接続されている。
【0059】
また、第2コンデンサC12は、その一方端が第2コンパレータCP2の一方の入力端子に接続されているともに、他方端が第1電源V1に接続されている。第2コンデンサC12の両端には、第2スイッチング素子SW2が並列に接続されている。第2コンパレータCP2は、他方の入力端子が基準電圧としての第2の電源V2に接続されており、その出力端子が第2トリガー素子TR2の入力端子に接続されている。
【0060】
第1トリガー素子TR1の出力は第2スイッチング素子SW2の制御端子に接続され、第2トリガー素子TR2の出力は第1スイッチング素子SW1の制御端子に接続されている。
【0061】
第1および第2コンデンサC11,C12の一方端には、電流供給素子CC1,CC2の一方端がそれぞれ接続され、電流供給素子CC1,CC2の他方端は、電源V0に接続されている。また、電流供給素子CC1,CC2には、オーディオ信号が出力されるオーディオ出力源AUがそれぞれ接続されている。
【0062】
補助電流供給回路23は、第1および第2スイッチング素子SW1,SW2並びに第1および第2コンパレータCP1,CP2におけるスイッチング動作の応答遅れ時間を補正するために、第1および第2コンデンサC11,C12に対して補助的に補助電流を供給する回路である。補助電流供給回路23は、第3および第4トリガー回路TR3,TR4と、第3および第4スイッチング素子SW3,SW4と、複数の抵抗R11、R12とによって構成されている。
【0063】
補助電流供給回路23の接続構成を説明すると、第1コンパレータCP1の出力は、第3トリガーTR3の入力端子に接続され、第3トリガーTR3の出力端子には、第4スイッチング素子SW4の制御端子が接続されている。第4スイッチング素子SW4は、その一方端が第3電源V3に接続され、他方端が抵抗R12を介して第2コンデンサC12の一方端に接続されている。また、第2コンパレータCP2の出力は、第4トリガーTR4の入力端子に接続され、第4トリガーTR4の出力端子には、第3スイッチング素子SW3の制御端子が接続されている。第3スイッチング素子SW3は、その一方端が第3電源V3に接続され、他方端が抵抗R11を介して第1コンデンサC11の一方端に接続されている。
【0064】
補助電流供給回路23は、第1コンパレータCP1の出力に基づいて第3トリガー素子TR3によって、第4スイッチング素子SW4を瞬間的にオンさせて第2コンデンサC12の一方端に補助的に補助電流i4を供給する。また、補助電流供給回路23は、第2コンパレータCP2の出力に基づいて第4トリガー素子TR4によって、第3スイッチング素子SW3を瞬間的にオンさせて第1コンデンサC11の一方端に補助的に補助電流i3を供給する。
【0065】
次に、第2実施形態にかかるパルス幅変調回路における動作を、図7に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0066】
この第2実施形態にかかるパルス幅変調回路では、第1実施形態にかかるパルス幅変調回路と同様に、オーディオ信号がそれに応じたパルス幅を有するパルス幅変調信号PWMに変調される。ここでも、説明の便宜のため、オーディオ信号が「0」の場合(無変調の場合)を説明する。
【0067】
変調回路22では、電流供給素子CC1,CC2により電源V0からの電流iが電流i1と電流i2(=i−i1)とに分流される。電流供給素子CC1,CC2を流れる電流i1,i2は、オーディオ信号のレベル変動に応じて変化するが、電流i1と電流i2の合計は一定値iを保持しつつそのレベル変動に応じて電流i1が変動する。すなわち、電流i1と電流i2との電流比kが変動する。
【0068】
無変調の場合、オーディオ信号のレベルは「0」であるので、電流供給素子CC1に流れる電流i1と電流供給素子CC2に流れるi2(i−i1)は等しくなる。すなわち、i1=i2=i/2となり、電流比kは1となる。これにより、第1および第2コンデンサC11,C12は、それぞれi/2の電流で充電される。
【0069】
ここで、図7における時刻taのときの各点の波形a,b,c,d,e,fを説明すると、このとき、第2コンデンサC12の充電電圧は、第2コンパレータCP2の基準電圧(第2電源V2の電圧)を上回っており、第2コンパレータCP2の出力は、オン状態である。一方、第1コンデンサC11の充電電圧は、第1コンパレータCP1の基準電圧(第2電源V2の電圧)を下回っており、第1コンパレータCP1の出力は、オフ状態である。
【0070】
次いで、第1コンデンサC11の充電電圧が電流供給素子CC1によって上昇していき、時刻tbにおいて第1コンパレータCP1の基準電圧(第2電源V2の電圧)を上回ると、第1コンパレータCP1の出力がオフ状態からオン状態になる(c点の波形参照)。第1コンパレータCP1の出力がオン状態になると、第1トリガー素子TR1は、瞬間的に短時間のパルス信号を出力し(d点の波形参照)、第2スイッチング素子SW2を瞬間的にオンさせる。これにより、第2コンデンサC12が放電動作することにより、第2コンデンサC12の充電電圧は低下し、第2コンパレータCP2の基準電圧を下回るので、第2コンパレータCP2の出力は、オン状態からオフ状態になる(e点の波形参照)。
【0071】
その後、第2コンデンサC12では、電流供給素子CC2によってその充電電荷が再び上昇し、時刻tcにおいて第2コンパレータCP2の基準電圧(第2電源V2の電圧)を上回ると、第2コンパレータCP2の出力は、オフ状態からオン状態になる。第2コンパレータCP2の出力がオン状態になると、第2トリガー素子TR2は、瞬間的に短時間のパルス信号を出力し(f点の波形参照)、第1スイッチング素子SW1を瞬間的にオンさせる。
【0072】
以下、同様の動作が繰り返され、第1コンパレータCP1の出力と第2コンパレータCP2の出力とが交互にオン・オフを繰り返すことにより、e点からパルス幅変調信号が出力される。なお、e点から出力されるパルス幅変調信号はc点から出力されるパルス幅変調信号に対して位相が反転している。
【0073】
ここで、時刻tbにおいては第1コンパレータCP1の出力がオン状態になって、第2スイッチング素子SW2をオンさせるが、第1コンパレータCP1および第2スイッチング素子SW2のスイッチング動作における応答遅れ時間Δtによって、第2コンデンサC12の充電動作は、時刻tbから遅れ時間Δt後に開始されることになる。そのため、たとえばオーディオ信号のレベルが変動し変調がかけられることにより、パルス幅変調信号PWMのパルス周期において、たとえばそのパルス信号のオン期間T1またはオフ期間T2のいずれかが無変調時に比べ短くなると、第1コンパレータCP1および第2スイッチング素子SW2のスイッチング動作の応答遅れ時間Δtのパルス周期に与える影響が大きくなり、パルス幅変調信号PWM自体に歪みを生じさせることになるといった問題点があった。
【0074】
そこで、本第2実施形態では、第1コンパレータCP1の出力がオン状態になるタイミングで、第3電源V3からの補助電流i4を第2コンデンサC12に瞬間的に供給するようにしている。具体的には、時刻tbにおいて第1コンパレータCP1の出力がオン状態になると、第3トリガー素子TR3がオンし、それによって第4スイッチング素子SW4が瞬間的にオンする。これにより、第2コンデンサC12の一方端に第3電源V3による補助電流i4が供給される。その結果、第2コンデンサC12では、充電電流i2が実質的に増加することになり、補助電流i4が瞬間的に供給される期間Δt′だけ充電速度が増し(図7のb点波形の傾斜部の勾配参照)、すなわち、第1コンパレータCP1および第2スイッチング素子SW2のスイッチング動作における応答遅れ時間Δtが補正される。
【0075】
また、時刻tcでは、第2コンパレータCP2の出力がオン状態になるタイミングで、第3電源V3からの補助電流i3を第1コンデンサC11に瞬間的に供給するようにしている。具体的には、時刻tcにおいて第2コンパレータCP2の出力がオン状態になると、第4トリガー素子TR4がオンし、それによって第3スイッチング素子SW3が瞬間的にオンする。これにより、第1コンデンサC11の一方端に第3電源V3による補助電流i3が供給される。その結果、第1コンデンサC11では、充電電流i1が実質的に増加することになり、補助電流i3が瞬間的に供給される期間Δt′だけ充電速度が増し(図7のa点波形の傾斜部の勾配参照)、すなわち、第2コンパレータCP2および第1スイッチング素子SW1のスイッチング動作における応答遅れ時間Δtが補正される。
【0076】
このように、本第2実施形態では、補助電流供給回路23によって、第1および第2コンデンサC11,C12の充電電流を瞬間的に増加させることにより、各コンパレータCP1,CP2および各スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング動作における応答遅れ時間Δtが補正されるので、パルス幅変調信号PWM自体に歪みを生じさせることを抑制することができる。
【0077】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記第1および第2実施形態においては、無安定マルチバイブレータの一例を示したが、無安定マルチバイブレータの構成は、これらに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるパルス幅変調回路の概略回路図である。
【図2】図1に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【図3】図1に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【図4】図1に示すパルス幅変調回路における復調電圧と歪み率との関係を示す図である。
【図5】パルス幅変調回路の試験構成を示す図である。
【図6】第2実施形態にかかるパルス幅変調回路の概略回路図である。
【図7】図6に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【図8】従来のパルス幅変調回路の一例を示す概略回路図である。
【図9】図8に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【図10】図8に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【図11】従来のパルス幅変調回路の他の一例を示す概略回路図である。
【図12】図11に示すパルス幅変調回路の各点における信号波形を示す図である。
【符号の説明】
11 定電流回路
12 パルス信号生成回路
13 変調回路
14 補助電流供給回路
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
Q3 第1トランジスタ
Q4 第2トランジスタ
Claims (2)
- 第1のオン・オフ回路の出力端と第2のオン・オフ回路の入力端とが、第1のコンデンサとこの第1のコンデンサに第1充電電流を供給する第1の電流供給回路とを含む第1の結合回路で結合されるとともに、
上記第2のオン・オフ回路の出力端と上記第1のオン・オフ回路の入力端とが、第2のコンデンサとこの第2のコンデンサに上記第1充電電流に対して所定の電流比を有する第2充電電流を供給する第2の電流供給回路とを含む第2の結合回路で結合されるパルス信号生成部と、
外部入力される変調信号のレベル変動に応じて上記第1充電電流を変化させることにより上記パルス信号生成部で生成されるパルス信号のデューティ比を変化させるパルス幅変調部と、からなるパルス幅変調回路であって、
上記第1のオン・オフ回路の出力端と上記第1のコンデンサの上記第1充電電流が供給される端子との間に設けられ、上記第1のオン・オフ回路のオン、オフ動作に基づいて、上記第1のコンデンサに対して補助的に上記第2のオン・オフ回路のスイッチング動作の応答遅れ時間を補正する補助電流を供給する第1の補助電流供給手段と、
上記第2のオン・オフ回路の出力端と上記第2のコンデンサの上記第2充電電流が供給される端子との間に設けられ、上記第2のオン・オフ回路のオン、オフ動作に基づいて、上記第2のコンデンサに対して補助的に上記第1のオン・オフ回路のスイッチング動作の応答遅れ時間を補正する補助電流を供給する第2の補助電流供給手段と、
を備えることを特徴とする、パルス幅変調回路。 - 上記第1の補助電流供給手段および第2の補助電流供給手段は、抵抗およびコンデンサからなる微分回路と、その微分回路の出力に基づいて補助電流を出力する補助電流出力素子とによってそれぞれ構成されている、請求項1に記載のパルス幅変調回路。
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