JP4209517B2 - 農薬粒剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は農薬粒剤に関する。さらに詳しくは、本発明は農薬活性成分の溶出が促進された農薬粒剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、水稲の栽培としては、田植機による移植水稲栽培が広く行われている。その際、育苗稲による稲の生育初期栽培が実施されている。また、各種病害に対する防除として、土面施用の一種として育苗箱施用が行われている。すなわち、移植した後の水稲本田の水稲初期の病害虫防除を目的として、稚苗から本田へ移植する直前までの間に粒剤等の薬剤が育苗箱の稲体の苗の上から箱の土壌表面に散粒施用されている。散粒された粒剤は移植と共に本田に運ばれ、粒剤中の農薬活性成分は、育苗箱成育時と同様に稲体に有効に吸収され、浸透作用により稲体内の濃度を保ち、残効性をももたらす。
【0003】
しかしながら、水溶解度の低い農薬活性成分においては、溶出が遅く充分な薬剤の効果が達成されない場合がある。従って、水難溶性の農薬活性成分を有効成分とする農薬粒剤の場合、有効成分の溶出を促進させることは重要な課題である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、今回、農薬活性成分、リグニンスルホン酸ナトリウムに加えて、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む粒剤が、農薬活性成分の溶出を促進する効果があることを見い出し本発明を完成した。
【0005】
かくして、本発明は、農薬活性成分、リグニンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び担体からなることを特徴とする農薬活性成分の溶出が促進された農薬粒剤を提供するものである。
【0006】
本発明によれば、農薬活性成分とリグニンスルホン酸ナトリウムからなる従来の農薬粒剤に、さらに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物を配合することにより、農薬粒剤中の農薬活性成分の溶出が促進され、該粒剤の育苗箱施用による病害虫防除効果を向上させることができる。
【0007】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の農薬粒剤について更に詳細に説明する。
【0008】
本発明の農薬粒剤において使用されるリグニンスルホン酸ナトリウムは、農薬活性成分の分散を促す作用を示す陰イオン界面活性剤の一種であり、その配合量は農薬粒剤100重量部あたり一般に約0.1〜約20重量部、好ましくは約0.5〜約5重量部の範囲内とすることができる。
【0009】
また、本発明の農薬粒剤において使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムは、陰イオン界面活性剤の一種であり、カルボキシメチルセルロースナトリウムと併用することにより、農薬活性成分の溶出をさらに促進する。その配合量は農薬粒剤100重量部あたり、一般に約0.5〜約7重量部、特に約1〜約6重量部の範囲内が好適である。
【0010】
さらに、本発明の農薬粒剤において使用されるカルボキシメチルセルロースナトリウムは、崩壊剤の一種であるが、上記のとおりポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムと併用することにより、農薬活性成分の溶出を促進する作用を示す。その配合量は農薬粒剤100重量部あたり、一般に約0.1〜約10重量部、好ましくは約0.5〜約6重量部の範囲内とすることができる。
【0011】
本発明の農薬粒剤に配合される農薬活性成分は、特に制限されるものではないが、通常、水20℃における溶解度が80ppm以下、特に50ppm以下の水難溶性農薬活性成分が好ましい。そのような農薬活性成分の具体例としては下記の化合物を例示することができるが、これらのみに限定されるものでない。
殺虫活性化合物:
O,O−ジメチル−O−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート(一般名:クロルピリホスメチル)、
(2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6)−ジエチルチオホスフェート(一般名:ダイアジノン)、
O,O−ジエチル−S−2−(エチルチオ)エチルホスホロジチオエート(一般名:エチルチオメトン)、
O,O−ジメチル−O−[3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル]チオホスフェート(一般名:フェンチオン)、
2,2−ジメチル−1,3−ベンゾジオキソル−4−イルメチルカーバメート(一般名:ベンダイオカルブ)、
エチル N−[2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ]−N−イソプロピル−β−アラニナート(一般名:ベンフラカルブ)、
2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカーバメート(一般名:カルボスルファン)、
ブチル 2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イル N,N′ジメチル−N,N′−チオジカーバメート(一般名:フラチオカルブ)、
(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラート(一般名:シクロプロトリン)、
2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル 3−フェノキシベンジルエーテル(一般名:エトフェンプロックス)、
S,S′−2−ジメチルアミノトリメチレン ジ(ベンゼンチオスルホナート)(一般名:ベンスルタップ)、
2−ターシャリ−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(一般名:ブプロフェジン)、等。
殺菌活性化合物:
α,α,α−トリフルオロ−3′−イソプロポキシ−o−トルアニリド(一般名:フルトラニル)、
ジイソプロピル 1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(一般名:イソプロチオラン)、
(1RS,3SR)−2,2−ジクロロ−N−[1−(4−クロロフェニル)エチル]−1−エチル−3−メチルシクロプロパンカルボキサミド(一般名:カルプロパミド)、等。
【0012】
本発明の農薬粒剤において、上記の農薬活性成分は、それぞれ単独で使用することができ、あるいは2種以上組合わせて用いることもできる。
【0013】
上記農薬活性成分の配合量は、その種類等によって変えることができるが、農薬粒剤100重量部あたり、一般に約0.1〜約30重量部、好ましくは約0.5〜約25重量部の範囲内が適当である。
【0014】
上記の水難溶性農薬活性成分は、水20℃における溶解度が80ppmより大きい他の農薬活性成分と併用してもよく、そのような他の農薬活性成分としては下記の化合物を例示することができるが、これらのみに限定されるものでない。1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イ
【0015】
リデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、
3−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−2−シアノイミノチアゾリジン(一般名:チアクロプリド)、
(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N′−メチル2−ニトロビニリデンジアミン(一般名:ニテンピラム)、
2−イソプロポキシフェニル−N−メチルカーバメート(一般名:プロポクスル)、
2−セコンダリ−ブチルフェニル−N−メチルカーバメート(一般名:BPMC)、
1−ナフチル−N−メチルカーバメート(一般名:カルバリル)、
1,3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(一般名:カルタップ)、
5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(一般名:チオシクラム)、
O,O−ジメチル−S−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェート(一般名:ジメトエート)、
メチル N−(2−メトキシアセチル)−N−(2,6−キシリル)−DL−アラニナート(一般名:メタラキシル)、
3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(一 般名:プロベナゾール)、
5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンチアゾール(一般名:トリシクラゾール)、
1,2,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(一般名:ピロキロン)、
O,O−ジイソプロピル−S−ベンジルチオホスフェート(一般名:IBP)、等。
【0016】
本発明の農薬粒剤において使用される担体は、ベントナイトとその他の担体との混合物であり、それらの配合量は、農薬粒剤100重量部あたり、ベントナイトは一般に約1〜約15重量部、好ましくは約5〜約10重量部の範囲内、そしてその他の担体は一般に約18〜約92.7重量部、好ましくは約48〜約92.5重量部の範囲内が適当である。該その他の担体としては、例えば、クレー、タルク、カオリン、パーライト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、軽石、ケイソウ土、焼成ケイソウ土等が挙げられる。これらの他の担体は単独で用いてもよく、あるいは2種以上併用してもよい。
【0017】
本発明によれば、担体として使用するベントナイトの配合量を低減することができ、それにより、育苗箱に成育している稲体に、粒剤の粒が付着する、いわゆる汚れを防止することができる。さらに、上記配合量のベントナイトは水難溶性農薬活性成分の溶出を促進する補助的作用も発揮する。
【0018】
本発明の農薬粒剤には、上記各成分の他に、必要に応じて、結合剤、分解防止剤、着色剤、薬害軽減剤等の農薬添加剤を適宜配合することができる。
【0019】
本発明の農薬粒剤は、農薬活性成分として殺虫、殺菌剤を用いることにより、育苗箱及び水田の稲に対して強力な殺虫、殺菌効果を奏することができる。従って、本発明の農薬粒剤は、育苗箱及び水田の殺虫、殺菌用粒剤として有利に使用することができる。
【0020】
本発明の農薬粒剤は、通常一般に行われている粒剤の製造法に従って製造することができる。例えば、農薬活性成分、リグニンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び担体を混合し、そしてこの混合物に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液を加え、混練し、エクストルーダーで押し出し造粒し、流動層乾燥器で乾燥した後、整粒することにより、目的の農薬粒剤を得ることができる。
【0021】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
製剤例1
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 66.0重量部
上記配合量のカルプロパミド原末、リグニンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ベントナイト、焼成ケイソウ土及びタルクを混合し、そして、この混合物にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムの水溶液を加え、混練し、エクストルーダーで押し出し造粒し、流動層乾燥器で乾燥し、整粒し、粒剤を得た。
【0023】
下記の製剤例2〜5および比較製剤例1〜3に示す配合処方の各成分を、製剤例1と同様に処理して粒剤を得た。
製剤例2
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 2.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 72.0重量部
製剤例3
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 4.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 9.0重量部
焼成ケイソウ土 5.0重量部
タルク 66.0重量部
製剤例4
エチルチオメトン原体(95%) 5.7重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 66.3重量部
製剤例5
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
イミダクロプリド原末 3.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 63.0重量部
比較製剤例1
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 71.0重量部
比較製剤例2
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
ベントナイト 6.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 71.0重量部
比較製剤例3
カルプロパミド原末(70%) 6.0重量部
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.0重量部
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック
コポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 5.0重量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム 5.0重量部
焼成ケイソウ土 10.0重量部
タルク 72.0重量部
試験例1(溶出試験)
ポット(19×28×8cm)に水1500mlを入れ、製剤例1、2、3、4及び比較製剤例1、2、3の各製剤を150mg秤り取り、各ポット中に投じた。投入の1、2、3、5、7、9、11、14日後に水の一部を採取し、高速液体クロマトグラフィーにより溶出したカルプロパミド又はエチルチオメトンの濃度を測定した。その結果を下記第1表に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上の試験例の結果から明らかなように、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物を含む本発明の農薬粒剤は、それらを含まない比較粒剤例に比し、水難溶性の農薬活性成分の溶出を促進する効果を有する。また、本発明の農薬粒剤はベントナイトを含まない対応する粒剤に比べて農薬活性成分の溶出が促進される。
Claims (2)
- 水20℃における溶解度が80ppm以下の水難溶性農薬活性成分、リグニンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマースチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び担体からなり、該担体がクレー、タルク、カオリン、パーライト、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、軽石、ケイソウ土及び焼成ケイソウ土より成る群から選ばれる少なくとも1種とベントナイトとの混合物であることを特徴とする農薬活性成分の溶出が促進された農薬粒剤。
- 農薬活性成分が、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、エチルチオメトン、フェンチオン、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、カルボスルファン、フラチオカルブ、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ベンスルタップ、ブプロフェジン、フルトラニル、イソプロチオラン及びカルプロパミドから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の農薬粒剤。
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