JP4207674B2 - 材料試験機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、引張試験用つかみ具や圧縮試験用圧盤などの各種治具の使用に関する情報を出力して最適な試験を誘導する材料試験機に関する。
【0002】
【背景技術】
材料試験機には、大別して引張試験機、圧縮試験機、曲げ試験機の3種類の試験機がある。引張試験機では、上下つかみ具に設けた一対のつかみ歯間に試験片を挟持して試験片に引張負荷を与える。圧縮試験機では、上下圧盤間で供試体に圧縮負荷を与える。曲げ試験機では、支点間に保持した供試体にポンチにより曲げ負荷を与える。つかみ具、圧盤あるいはポンチや支持台などの治具は、負荷の大きさ、試験片や供試体の種類に応じて選択して使用される。
【0003】
従来は、試験条件に基づいて、作業者が経験により使用する治具を選択している。そのため、経験の浅い作業者は試験条件に最適な治具を選択することができず、信頼性の高い試験結果が得られないおそれがあった。あるいは、試験条件に最適な治具を選択するまでに種々の治具を使用してトライアンドエラーで試験を行い、その結果、効率が悪いこともあった。
【0004】
本発明は、試験治具の使用に関する情報を出力することができる材料試験機を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1の発明による材料試験機は、無線タグが装着され、作業者により試験機本体に取り付けられる治具と、治具が試験機本体に取り付けられたときの無線タグの通信可能領域内に設置され、無線タグから非接触でデータを読み出すリーダ装置と、作業者が入力した試験条件にしたがって試験片に負荷を与える負荷手段と、試験機本体に取り付けられた治具に装着された無線タグからリーダ装置によって読み出されたデータに基づいて、その治具の使用に関する情報(治具情報)を出力する制御手段と、制御手段から出力される治具情報と試験条件とを比較し、試験機本体に取り付けられている治具が試験条件に合致する治具であるか否かを判定する判定手段と、判定手段で試験条件に合致しない治具であると判定されたときに、負荷手段による試験を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
(2)このような材料試験機は、判定手段で試験条件に合致しない治具であると判定されたときに、試験条件に合致する推奨治具を表示する表示手段を備えるようにしてもよい。
(3)無線タグからリーダ装置によって読み出されたデータを治具の識別番号とする場合、制御手段は、識別番号と治具情報を対応づけたデータベースを有し、受信した識別情報に基づいてデータベースから治具情報を検索して出力するように構成することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
―第1の実施の形態―
図1〜図5により本発明の一実施の形態による材料試験機を説明する。図1は材料試験機の正面図である。基台1の両側に一対の支柱2が立設され、一対の支柱2の上端はクロスヨーク3で接続されている。一対の支柱2の内部には不図示のねじ棹がそれぞれ支柱2に沿って配設され、クロスヘッド4にそれぞれ内設されているナットにねじ棹が螺合されている。すなわち、ねじ棹間にクロスヘッド4が横架され、ねじ棹の回転によりクロスヘッド4は昇降する。クロスヘッド4の下面にはロードセル6を介して上つかみ具7が設置され、基台1には下つかみ具8が設置されている。クロスヘッド4を上昇させて上下つかみ具間で試験片に引張負荷を加える。
【0007】
上下つかみ具7,8の構造は略同様であり、図2にその概略構成を示す。つかみ具7,8は、連結ロッド71、81と、つかみ具本体72、82と、一対のくさび状のつかみ歯73,83とを有する。つかみ歯の試験片把持面にはやすり目が形成されている。つかみ具本体72,82は対向するテーパ面を有し、このテーパ面にそれぞれつかみ歯73,83が摺動可能に保持されている。つかみ具本体72,82と一対のつかみは73,83との負荷軸方向の相対位置関係を図示しない機構により変更して一対のつかみ歯間に試験片TPを挟持することができる。試験片TPの把持力は、試験片TPに引張力が作用したときのつかみ歯73,83のくさび効果で増加する。
【0008】
つかみ具本体72,82には、いわゆる無線タグ30が装着されている。無線タグ30は半導体メモリを内蔵している。半導体メモリには、リーダ/ライター31を用いて誘導電磁波あるいは電波によって非接触でデータが書き込まれる。また、リーダ/ライター31を用いて半導体メモリからデータが非接触で読み出される。なお、リーダ/ライター31は無線タグ30の通信可能領域内に設置されている。図1の例では、クロスヘッド4と基台1に設置されている。
【0009】
第1の実施の形態では、無線タグ30の半導体メモリには、つかみ具本体72,82の識別番号、製造番号、製造年月日、購入年月日、引張/圧縮/曲げの試験種別、負荷容量などが記録される。これらの記録情報を総称して治具情報と呼び、治具情報に基づいて、試験条件の適否、最適な試験方法の提示、使用する計測器の適否を表示モニタ24に表示する。なお、治具情報は事前にリーダ/ライター31を介して無線タグ30に記録しておく。
【0010】
引張試験用つかみ具の種別として、主に金属、プラスチック試験片用の定位置くさび式つかみ具、あるいは、主にプラスチック、ゴム、布、織物用の平面型つかみ具がある。圧縮試験用圧盤の種別として、固定式圧盤や、実物試験に使用されるキーボード式圧縮試験治具などがある。また、曲げ試験用治具の種別として、プラスチック3点曲げ試験治具、小型試験用3点/4点曲げ試験治具、金属用3点曲げ試験治具などがある。
【0011】
なお、上下つかみ具7,8のつかみ具本体72,82にそれぞれ設けられる無線タグ30を区別する場合、上つかみ具7の無線タグに符号30Uを、下つかみ具8の無線タグに符号30Lを付して区別する。同様に、リーダ/ライター31についても、上つかみ具用リーダ/ライターに符号31Uを、下つかみ具用リーダ/ライターに符号31Lを付して区別する。
【0012】
材料試験機は制御装置20を備えている。図3に示すように、この制御装置20は、主にCPUで構成される演算処理装置21と、キーボード22と、試験開始ボタン23aを有する制御パネル23と、モニタ24とを有する。上述したリーダ/ライター31U,31Lは演算処理装置21と接続されている。試験結果はモニタ24に表示される。モータ25は、ねじ棹を駆動するための電動モータであり、演算処理装置21によりその駆動が制御される。
【0013】
材料試験機は試験条件ファイルに記録されている試験条件にしたがって試験を行う。試験条件ファイルには、引張/圧縮/曲げの試験種別、試験片材質、試験片寸法形状、試験速度、最大荷重、最大変位、データの出力形式などが記録される。試験条件ファイルは、試験に先立って作業者がキーボード22から入力し、所定のファイル名を付与して演算処理装置21の試験条件ファイルデータベースに記憶される。そして、試験を実行する際、試験条件ファイル名を入力すると、上記データベースから1つの試験条件ファイルが読み出される。
【0014】
図4は試験開始ボタン23aが操作されると実行されるプログラムの処理手順を示すフローチャートである。プログラムは演算処理装置21に格納されている。ステップS21において、リーダ/ライター31を介して無線タグ30の半導体メモリに記憶されている治具情報を読み込み、治具情報をモニタ24に表示する。
【0015】
なお、この実施の形態では、上下つかみ具7、8は必ずセットで使用されることを前提にするため、上つかみ具用無線タグ30Uとリーダ/ライター31Uとの間でデータの授受を行うものとする。上下つかみ具7,8が必ずしもセットで使用されない場合もあり、その場合は、その旨を警告することが好ましい。
【0016】
ステップS21でつかみ具の情報を表示した後、ステップS22に進む。ステップS22では、演算処理装置21に予め記録している試験条件ファイルを読み込み、モニタ24に表示してステップS23に進む。ステップS23では、読み込んだ治具情報と設定されている試験条件ファイルの内容とを比較する。ステップS23の比較の結果、治具情報と試験条件ファイルの内容が一致している場合、ステップS26に進む。ステップS26では、試験条件ファイルの内容にしたがって試験が行われる。ステップS27において、試験終了が判定されるまで試験を続行し、試験終了が判定されると試験を終了する。
【0017】
ステップS23の比較の結果、治具情報と試験条件ファイルの内容が一致していない場合、ステップS24に進み、試験を禁止する処理を行う。たとえば、ねじ棹用駆動モータ25の電源回路を開路する。その後、ステップS25において、試験が禁止されたことをモニタ24に表示するとともに、治具情報と試験条件ファイルが不一致であるとしてモニタ24に警告表示を行う。
【0018】
ステップS23の比較結果が不一致と判定されるのは、たとえば、試験条件ファイルでは曲げ試験が記録されているにもかかわらず、治具情報には引張試験用治具種別が記録されている場合である。この場合、治具の交換を促すメッセージを表示する。たとえば、「治具が違います。適切な治具に交換して下さい」と表示することができる。あるいは、図5に示すような推奨治具を表示してもよい。
【0019】
このように、この実施の形態の材料試験機では、試験開始ボタン23aが操作されると、つかみ具に内蔵した無線タグ30から治具情報を読み出すとともに、演算処理装置21から試験条件ファイルを読み出して、両者の内容を比較する。そして、両者の内容に不一致がある場合、制御装置20は試験を禁止して治具が不適切であることを作業者に報知する。したがって、不適切な治具の使用により信頼性の低いデータ採取を未然に防止できる。さらに、最適な推奨治具を表示するようにすれば、経験の浅い作業者でも適切に治具を選択することができる。
【0020】
治具情報と試験条件ファイルの内容をステップS23で比較する際、次のような項目を比較してもよい。
(1)つかみ具の使用荷重と最大試験荷重
たとえば、つかみ具の使用荷重が100kgであるときに最大試験荷重が500kgの場合、試験を禁止して警告表示する。
(2)つかみ具の種別と試験片の材質
たとえば、つかみ具がプラスチック用であるときに試験片の材質が金属である場合、試験を禁止して警告表示する。
【0021】
―第2の実施の形態―
無線タグ30につかみ具の種別や試験最大荷重などの具体的個別的情報を記録することに代えて、治具の識別番号を無線タグ30に記録しておき、識別番号に基づいて、演算処理装置21のデータベースから、治具の種別や試験最大荷重などの具体的個別的情報(治具情報)を読み出してもよい。このようにした第2の実施の形態の材料試験機について説明する。
【0022】
第2の実施の形態の材料試験機では、無線タグ30の半導体メモリにつかみ具の識別番号を書き込み、制御装置20はリーダ/ライター31を介して識別番号を読取る。なお、つかみ具の識別番号は事前にリーダ/ライター31を介して記録しておく。制御装置20の記憶領域には予め識別番号に対応した記憶領域が設定されており、その記憶領域につかみ具の種別、試験最大荷重などが書き込まれている。すなわち、演算処理装置21には治具のデータベースが識別番号ごとに設けられている。
【0023】
図6のフローチャートを参照して第2の実施の形態の処理手順を説明する。試験開始ボタン23aが操作されたときに図6の処理が開始される。ステップS11において、制御装置20はリーダ/ライター31を介して無線タグ30からつかみ具の識別番号を読取る。ステップS12において、演算処理装置21に設けたデータベースから識別番号に対応した治具情報を読み出し、ステップS13に進む。ステップS13では、読み出した治具情報をモニタ24に表示する。その後、ステップS14において、試験条件ファイルを演算処理装置21から読み込み、ステップS15において、試験条件ファイルの試験条件に適したつかみ具の一覧を推奨つかみ具として表示する。このとき、ステップS13で表示している治具情報とともに推奨つかみ具をモニタ24に表示する。
【0024】
作業者は、このモニタ画面から判断して、装着されているつかみ具が推奨つかみ具一覧にあれば試験続行指示を入力する。これにより、ステップS16が肯定されるとステップ17で試験が開始され、ステップS18で試験終了と判定されると試験が終了される。ステップS15で表示される推奨つかみ具一覧内に装着されているつかみ具がない場合は、作業者は試験中断を指示する。この場合、ステップS16が中断と判定され、この処理が終了する。
【0025】
第2の実施の形態の材料試験機では、試験機に装着されているつかみ具の識別番号を無線タグから読取り、演算処理装置21のデータベースから読み取ったつかみ具情報をモニタ24に表示する一方、試験条件ファイルから読み込んだ試験条件もモニタ24に表示する。作業者は、モニタ24に同時表示されているつかみ具の使用に関する情報に基づいて、このつかみ具が試験条件から作成した推奨モニタ一覧に存在しない治具であると判定すると、試験をいったん中断する。つかみ具が推奨モニタ一覧に存在する治具である場合、引き続き試験を行う。その結果、第1の実施の形態と同様、不適切な治具の使用により信頼性の低いデータ採取を未然に防止できるとともに、経験の浅い作業者でも適切に治具を選択することができる。
【0026】
以上では、つかみ具本体に無線タグを装着した一例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、無線タグをつかみ歯に装着してもよい。つかみ歯の無線タグから読み込まれる情報も本明細書の治具情報である。無線タグには治具情報としてつかみ歯の種別を記録することができる。つかみ歯が使用対象とする試験片材質と、試験条件から認識する試験片の材質が異な場合、試験を禁止するとともに、モニタ24に警告する。モニタ24には、試験条件から認識した試験片材質に最適なつかみ歯を推奨つかみ歯として表示することが好ましい。また、つかみ歯の各種情報をモニタ24に表示してもよい。
【0027】
無線タグをロードセルに装着してもよい。ロードセルの無線タグから読み込まれる情報も本明細書の治具情報である。無線タグには治具情報としてロードセル容量を記録することができる。この場合、ロードセル容量が100kgであるときに最大試験荷重が500kgの場合、試験を禁止するとともに、モニタ24に警告する。モニタ24に最適なロードセル容量を推奨ロードセルとして表示することが好ましい。また、ロードセル情報をモニタ24に表示してもよい。
【0028】
あるいは、無線タグを伸び計に装着してもよい。伸び計の無線タグから読み込まれる情報も本明細書の治具情報である。この場合の治具情報を伸び計の最大測定距離とした場合、最大測定距離が10mmであるときに試験条件の最大測定伸びが25mmの場合、試験を禁止するとともに、モニタに警告する。モニタ24に最適な最大測定距離を有する伸び計を推奨伸び計として表示することが好ましい。また、伸び計情報をモニタ24に表示してもよい。
【0029】
なお、アンテナ内蔵のリーダ/ライター31をクロスヘッド4と基台6に設置したが、図7に示すように、材料試験機のアクリル製安全カバー40にアンテナ41を内蔵してもよい。この場合、アンテナ41を専用ケーブル42によりリーダ/ライター43に接続し、さらに、リーダ/ライター43を専用ケーブル44で制御装置20と接続して情報を読み書きする。なお、安全カバー40は、破断した試験片が飛び散るのを防止するためのものである。
【0030】
以上の実施の形態における負荷手段は一対のねじ棹とクロスヘッド4で構成したが、その他、種々の形式の材料試験機の負荷機構を用いることができる。制御手段も実施の形態に限定されない。また、無線タグは、半導体メモリを備え、近距離通信により治具の使用に関する各種情報を授受できるものであって、試験治具に装着できるものであれば、その形式は問わない。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、つかみ具などの治具に無線タグを装着し、無線タグの情報に基づいて治具の使用に関する情報を出力するようにしたので、初心者でも試験に最適な治具を簡単に選択でき、その結果、信頼性の高い試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による材料試験機の一実施の形態を示す図
【図2】図1のつかみ具の概略構成を示す図
【図3】図1の制御装置を説明するブロック図
【図4】第1の実施の形態の処理手順を示すフローチャート
【図5】推奨つかみ具の表示例を示す図
【図6】第2の実施の形態の処理手順を示すフローチャート
【図7】アクリル製安全カバーにアンテナを内蔵して例を示す材料試験機の側面図
【符号の説明】
4:クロスヘッド 7:上つかみ具
8:下つかみ具 20:制御装置
30,30U,30L:無線タグ 31,31U、31L:リーダ/ライター

Claims (3)

  1. 無線タグが装着され、作業者により試験機本体に取り付けられる治具と、
    前記治具が前記試験機本体に取り付けられたときの前記無線タグの通信可能領域内に設置され、前記無線タグから非接触でデータを読み出すリーダ装置と、
    前記作業者が入力した試験条件にしたがって試験片に負荷を与える負荷手段と、
    前記試験機本体に取り付けられた治具に装着された無線タグから前記リーダ装置によって読み出されたデータに基づいて、その治具の使用に関する情報(治具情報)を出力する制御手段と、
    前記制御手段から出力される治具情報と前記試験条件とを比較し、前記試験機本体に取り付けられている治具が前記試験条件に合致する治具であるか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段で前記試験条件に合致しない治具であると判定されたときに、前記負荷手段による試験を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする材料試験機。
  2. 請求項1の材料試験機において、
    前記判定手段で前記試験条件に合致しない治具であると判定されたときに、前記試験条件に合致する推奨治具を表示する表示手段を備えることを特徴とする材料試験機。
  3. 請求項1または2の材料試験機において、
    前記無線タグから前記リーダ装置によって読み出されたデータは前記治具の識別番号であり、
    前記制御手段は、識別番号と治具情報を対応づけたデータベースを有し、前記データベースを使用して前記治具の識別情報に対応した治具情報を検索して出力することを特徴とする材料試験機。
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