JP4207414B2 - ポリオレフィン樹脂組成物及びそのフィルム - Google Patents

ポリオレフィン樹脂組成物及びそのフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂組成物およびその組成物からなるフィルムに関するものである。更に詳しくは、本発明は、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上したポリオレフィン系樹脂組成物及びその組成物からなるフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
包装用フィルムに用いられる材料には、フィルムの製膜加工性が良いこと、加工機の汚染が起りにくいこと等に関係する耐加工機汚染性が優れること等が要求され、包装用フィルムには、内容物が明瞭に見えること等に関係するフィルムの透明性に優れ、目視でのちらつき感が少ないこと、フィルムの製袋等の二次加工時に取り扱いやすいこと、得られた袋に内容物を充填する時、特に自動充填時に、袋の口が開き易いこと等に関係するフィルムの耐ブロッキング性、滑り性等に優れること、輸送時にフィルム同士の摩擦による傷の発生が起りにくいこと等に関係する耐傷付き性に優れること等が要求される。
【0003】
上記のような包装用フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体が好適に用いられるが、フィルムの耐ブロッキング性、滑り性の問題から、エチレン−α−オレフィン共重合体を単独で使用することは困難であるので、エチレン−α−オレフィン共重合体とアンチブロッキング剤、滑剤等からなるポリオレフィン系樹脂が包装用フィルムの材料として用いられている。
【0004】
例えば、特開平7−258478号公報には、ポリオレフィン系樹脂、平均粒径が1〜10μである実質的に球状のアンチブロッキング剤、および、天然鉱物を粉砕・焼成して得られ、平均粒径が1〜5μであり、かつ該平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合が10〜40重量%であるアンチブロキング剤からなるポリオレフィン系樹脂組成物が記載されているが、フィルムの透視感及び目視外観(ちらつき感)に関しては、さらに改良が求められていた。
【0005】
また、特開平8−92428号公報には、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、重量に基づく粒度分布において実質的に2つ以上の極大値を示し、該極大値を与える最も大きい粒子径と最も小さい粒子径の差が3.0μ以上であるアンチブロッキング剤0.01〜2.0重量部を含有するポリオレフィン系樹脂組成物が記載されているが、透視感及び目視外観(ちらつき感)に関しては、さらに改良が求められていた。
【0006】
以上のような状況の中で、フィルムに用いた場合、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上した材料が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フィルムに用いた場合、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上したポリオレフィン系樹脂組成物及びその組成物からなるフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、以上の実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリオレフィン系樹脂(A)および天然鉱物を紛砕・焼成して得られ、体積平均粒径が1〜5μであり、かつ体積粒径分布において該体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合が30〜40重量%であり、粒径22μを超える粒子の割合が1.0重量%未満であるアンチブロッキング剤(B)からなり、そのアンチブロッキング剤(B)の配合濃度が500〜15000重量ppmであるポリオレフィン系樹脂組成物に係るものである。
【0009】
また、本発明は、
ポリオレフィン系樹脂(A)、天然鉱物を紛砕・焼成して得られ、体積平均粒径が1〜5μであり、かつ体積粒径分布において該体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合が30〜40重量%であり、粒径22μを超える粒子の割合が1.0重量%未満であるアンチブロッキング剤(B)および有機アミド化合物(C)からなり、そのアンチブロッキング剤(B)の配合濃度が500〜15000重量ppmであり、その有機アミド化合物(C)の配合濃度が200〜5000重量ppmであるポリオレフィン系樹脂組成物に係るものである。
さらに、本発明は、
上記のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムに係るものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(A)とは、炭素数2〜10のオレフィンから誘導される少なくとも1種の構造単位を50〜100重量%含む熱可塑性樹脂である。
【0011】
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、例えば、エチレンまたはα−オレフィンの単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレンとα−オレフィンおよび/または共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物との共重合体等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用しても良い。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂(A)として、好ましくは、エチレンまたはα−オレフィンの単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、または、これらの混合物である。
【0013】
α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、好ましくはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、さらに好ましくはブテン−1、ヘキセン−1である。
【0014】
多不飽和化合物としては例えばジビニルベンゼン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンノルボルネン等が挙げられ、好ましくはジビニルベンゼン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエンである。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂(A)として用いられる単独重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1等が挙げられ、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンである。
【0016】
エチレン−α−オレフィン共重合体としてはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、エチレン−デセン−1共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体である。
【0017】
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−ブテン−1共重合体である。
【0018】
エチレン−プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン−1共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体である。
【0019】
エチレンとα−オレフィンおよび/または共役ジエンや非共役ジエン等の多不飽和化合物との共重合体としては、エチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチレン−プロピレン−ノルボルナジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン−プロピレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0020】
本発明でポリオレフィン系樹脂(A)として用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンの含有量として、好ましくは0.5〜30重量%であり、より好ましくは1.0〜20重量%である。
【0021】
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度として、好ましくは880〜970kg/m3であり、より好ましくは890〜940kg/m3であり、さらに好ましくは910〜930kg/m3である。
【0022】
エチレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンのメルトフローレート(MFR)として、好ましくは0.1〜50g/10分であり、より好ましくは0.2〜20g/10分であり、さらに好ましくは0.3〜5g/10分である。
【0023】
エチレン−α−オレフィン共重合体の冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)として、好ましくは下記式(1)の範囲を満足するものである。
1.5×10-4×(d/1000)-125×MFR0.5+0.3≧CXS 式(1)
【0024】
また、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(A)として、上記の単独重合体および共重合体以外に、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそのエステル化物や酸無水物との共重合体やエチレンと酢酸ビニル等のビニルエステル類との共重合体が挙げられる。さらに、これらの共重合体のエチレンをプロピレンに替えた共重合体も挙げられる。具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、チーグラー・ナッタ触媒系、メタロセン触媒系、バナジウム触媒系等の存在下で行うイオン重合法または配位重合法、あるいはパーオキサイド化合物等の存在下で行うラジカル重合法等が挙げられる。また、重合方法としても、特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは、バルク重合法、溶液重合法、高圧重合法、気相重合法である。
【0026】
本発明で用いられるアンチブロッキング剤(B)は、天然鉱物を紛砕・焼成して得られ、体積平均粒径が1〜5μであり、かつ体積粒径分布においてその体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合が30〜40重量%であり、粒径22μを超える粒子の割合が1.0重量%未満であるアンチブロッキング剤である。
【0027】
アンチブロッキング剤(B)の体積平均粒径は1〜5μであり、好ましくは2〜5μである。体積平均粒径が1μ未満である場合、フィルムの耐ブロッキング性が劣ることがあり、5μを超えた場合、フィルムの透明性が劣ることがある。
【0028】
アンチブロッキング剤(B)の体積粒径分布において体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合は30〜40重量%であり、好ましくは33〜40重量%である。上記の割合が30重量%未満である場合、二次加工性が劣ることがあり、40重量%を超えた場合、フィルムの透明性が劣ることがある。
【0029】
また、アンチブロッキング剤(B)が含有する粒子の体積粒径分布における粒径22μを超える粒子の割合は1.0重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満である。粒径22μを超える粒子の割合が1.0重量%以上である場合、フィルムの目視外観(ちらつき感)が劣ることがある。
【0030】
本発明で用いられるアンチブロッキング剤(B)における天然鉱物としては、二酸化珪素、クレー、タルク、珪藻土、長石、ゼオライト、カオリナイト、ウォラストナイト、セリサイト等が挙げられ、好ましくは、六角板状又は不整六角板状のカオリナイトである。
【0031】
本発明で用いられるアンチブロッキング剤(B)における天然鉱物を粉砕・焼成するということは天然鉱物を工業的に精製することを意味する。粉砕とは、得られた天然鉱物を本発明の要件である体積平均粒径、体積粒径分布を有する粉体にすることであり、また、本発明の要件である体積平均粒径、体積粒径分布を有する粉体を得るために行う分級、捕集等の作業をも含む。粉砕の方法としては、特に制限はないが、例えば、ボールミル、チューブミル、ハンマーミル等を用いる方法が挙げられ、また、粉砕の方法は乾式法、湿式法のどちらを用いても構わない。焼成とは、得られた天然鉱物を200℃から800℃の温度で加熱することであり、天然鉱物中の結晶中に含まれる構造水を取り除くことを意味する。焼成の温度は、フィルム成形時の発泡現象やフィルム端面の黒ずみ現象を防止する観点から、好ましくは500℃以上である。上記のような方法で得られた、好ましいアンチブロッキング剤(B)成分として、上記の六角板状又は不整六角板状の焼成カオリナイトが挙げられる。
【0032】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、上記のポリオレフィン系樹脂(A)に上記のアンチブロッキング剤(B)を、その濃度が500〜15000重量ppmになるように配合したものであり、アンチブロッキング剤(B)の濃度として、好ましくは1000〜10000重量ppmである。アンチブロッキング剤(B)の濃度が500重量ppm未満の場合、フィルムの耐ブロッキング性が不充分であることがあり、15000重量ppmを超えた場合、フィルムの透明性や透視感等の光学的性質が悪化することがある。
【0033】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物においては、ポリオレフィン系樹脂(A)およびアンチブロッキング剤(B)に加えて、有機アミド化合物(C)を配合して用いることが好ましい。有機アミド化合物(C)の配合濃度は、フィルムの滑り性、耐傷付き性及び耐ブロッキング性の観点から、好ましくは200〜5000重量ppmであり、より好ましくは500〜3000重量ppmである。
【0034】
本発明で用いられる有機アミド化合物(C)としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等をあげることができ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、べへニン酸アミド等が挙げられ、不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられ、不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。好ましくは、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドであり、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法としては、本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂(A)およびアンチブロッキング剤(B)、または、ポリオレフィン系樹脂(A)、アンチブロッキング剤(B)および有機アミド化合物(C)を均一に混合する方法が挙げられる。
混合方法としては、特に制限はなく、上記の名成分の所定量を公知の方法で混合するが挙げられ、例えば、タンブラーブレンダー、へンシェルミキサー等の混合機を用いてドライブレンドする方法、混合後更に単軸押出機、多軸押出機等を用いて溶融混練造粒する方法、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等を用いて溶融混練後造粒する方法等が挙げられる。上記の各成分の混合は、それらを一度に混合してもよく、それらの一部をあらかじめ混合した後、残りの部分と更に混合してもよい。
【0037】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲で、公知の配合剤を配合してもよい。配合剤としては、例えば、耐候安定剤、酸化防止剤、中和剤、防曇剤、離型剤、顔料、難燃剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムは、特に制限はないが、フィルムの厚さとしては、通常、5〜200μである。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなる単独のフィルムでもよく、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層および他の熱可塑性樹脂組成物からなる層を有する二層以上の多層フィルムでもよく、また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を基材にラミネー卜したラミネートフィルムでもよい。
【0039】
多層フィルムとしては、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層が最外層の両側又は片側であるものが好ましい。また、多層フィルムに用いられる他の熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステルおよびこれらの混合物等が挙げられる。ラミネートフィルムに用いられる基材としては、例えば、プラスチックフィルム、アルミ箔、板紙、紙等が挙げられる。
【0040】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムの成形法としては、公知の成形法が挙げられ、例えば、空冷インフレーション成形法、水冷インフレーション成形法、キャスト成形法等が挙げられる。さらに、これらの成形法を用いて、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を単独で成形する方法や、他の熱可塑性樹脂組成物と積層成形する方法等が挙げられる。
【0041】
積層成形方法としては、例えば、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物と上記の他の樹脂を共押出インフレーション成形する方法または共押出キャスト成形する方法等が挙げられる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を単独又は共押出で成形した後、延伸又は無延伸のポリプロピレン、ポリエステルフィルム、ポリアミド等のフィルム、アルミ箔、セロハン、紙およびそれらの複合フィルム等とドライラミネーション又はサンドイッチラミネーションする方法等が挙げられる。
【0042】
ラミネートフィルムの成形法としては、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を上記の基材に対して押出コーティング又は共押出コーティングする方法等が挙げられる。
【0043】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルムは、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上したものであり、その優れた特徴を生かして、例えば、食品、繊維、医薬品、肥料、雑貨品、工業部品等の包装用フィルムとして、またゴミ袋、規格袋用フィルムとして、さらに農業用被覆材及び建築用被覆材として、最適に使用できる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
本実施例および比較例で使用した材料を以下に示した。
【0045】
(1)ポリオレフィン系樹脂
(1−1)PO−1
エチレン−ブテン−1共重合体(住友化学工業(株)製、スミカセン L FS150、メルトフローレート:1.0g/10分、密度:921kg/m3、冷キシレン可溶部(CXS):4.2重量%)
(1−2)PO−2
ポリエチレン(住友化学工業(株)製、スミカセン F200−0、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:923kg/m3
(PO−1は、チーグラー系触媒を用い、気相イオン重合法で製造されたものであり、PO−2は、ラジカル重合法により製造されたものである。メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)および密度(d、単位:kg/m3)は、JIS K 6760に従って測定されたものであり、冷キシレン可溶部(CXS、単位:重量%)は、米国のCode of federal regulations,Food and Drugs Administrationの§175.1520に規定された方法に従って測定されたものである。)
【0046】
(2)アンチブロッキング剤
本実施例および比較例で使用したアンチブロッキング剤(B)は、以下に示したものを使用した。
(2−1)ABA−1
焼成カオリナイト粉末(水沢化学工業社製、体積平均粒子径:2.55μm、平均粒子径の1.5倍以上の粒子径である粒子の割合:35.3重量%、粒子径が22μmを超える粒子の割合:0.38重量%)
(2−2)ABA−2
焼成カオリナイト粉末(水沢化学工業社製、インシュライトMC−6、体積平均粒子径:3.17μm、平均粒子径の1.5倍以上の粒子径である粒子の割合:36.5重量%、粒子径が22μmを超える粒子の割合:11.8重量%)
(2−3)ABA−3
珪酸アルミニウム粉末(水澤化学工業社製、シルトンJC−30、体積平均粒子径:3.11μm、平均粒子径の1.5倍以上の粒子径である粒子の割合:25.1重量%、粒子径が22μmを超える粒子の割合:0重量%)
(2−4)ABA−4
珪酸アルミニウム粉末(水澤化学工業社製、シルトンJC−50、体積平均粒子径:6.49μm、平均粒子径の1.5倍以上の粒子径である粒子の割合:16.2重量%、粒子径が22μmを超える粒子の割合:0.52重量%)
【0047】
(3)アンチブロッキング剤マスターバッチの製造及びアンチブロッキング剤のポリオレフィン系樹脂への配合
アンチブロッキング剤マスターバッチは、各アンチブロッキング剤をポリオレフィン系樹脂に加えて、アンチブロッキング剤の濃度を10重量%に調整して、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して製造した。
アンチブロッキング剤のポリオレフィン系樹脂への配合は、上記マスターバッチの配合量を調整することにより各アンチブロッキング剤の配合濃度を調整して行った。
【0048】
(4)有機アミド化合物のマスターバッチの製造及び有機アミド化合物のポリオレフィン系樹脂への配合
有機アミド化合物として、エルカ酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドを4:1の重量割合で混合した脂肪酸アミド化合物を用いた。脂肪酸アミド化合物のマスターバッチは、上記脂肪酸アミド化合物をポリオレフィン系樹脂に加えて、上記脂肪酸アミド化合物の濃度を2.0重量%に調整して、バンバリーミキサーを用い溶融混練して製造した。脂肪酸アミド化合物のポリオレフィン系樹脂への配合は上記マスターバッチの配合量を調整することにより、脂肪酸アミド化合物の配合濃度を調整して行った。
【0049】
実施例および比較例における物性値は、下記の方法に従って測定した。
アンチブロッキング剤(B)の体積平均粒径及び体積粒径分布
日機装株式会社製マイクロトラックFRAを使用した。メタノール中にサンプルを投入し2分間超音波分散させた試料溶液を測定レンジ0.12〜704μm、粒径分布50区分で測定した。得られた体積粒径分布曲線の累積50%径を試料の体積平均粒径とした。
(6)へイズ(透明性、単位:%)
ASTM D1003−61に準拠して測定した。
【0050】
(7)LSI(透視感、単位:%)
成形フィルムを、23±2℃、50±5%RHで24時間以上状態調整後、東洋精機社製LSI試験機を用い、±0.4〜1.2°の散乱透過光を測定し、透視感の尺度とした。数値が小さい方が透視感が優れることを示す。
【0051】
(8)摩擦角tanθ(滑り性)
東洋精機社製、摩擦角測定器を使用し160mm(長さ)×80mm(幅)の試料フィルムを傾斜板上に載置し、下面に試料フィルムを取付けた100mm(長さ)×65mm(幅)の1kgのスレッドを置いた。傾斜上昇速度2.7°/秒でスレッドが動き始めた角度θを測定し、tanθで表示した。数値が小さい方が滑り性が良好であることを示す。
【0052】
(9)ブロッキング(単位:N/m2
成形フィルムを、40℃に調整されたオーブン中、400g/cm2の重量下、7日間密着させた後、クロスヘッド速度一定型引張試験機にて引張速度200mm/minの条件で、フィルム面積500cm2をせん断的に引き剥がすのに要する最大応力を測定し、耐ブロッキング性の尺度とした。数値が小さい方が耐ブロッキング性が優れることを示す。
【0053】
(10)耐傷つき性(Δヘイズ、単位:%)
成形フィルムを23±2℃、50±5%RHで24時間以上状態調整後、成形フィルムを二枚重ねにし、一方をフィルムが傷付かないような軟質材の上に弛みや皺のないように取り付け、シェー力ー(TAITEC社、Recopro Shaker R−10)上に固定した(傷付き性測定用試料)。他方を金属パイプにシリコンゴムを張り付けた棒を介して固定し、振幅40mm、振とう速度60回/分の条件で1分間フィルム同志を擦り合わせた。擦り合わせた前後の成形フィルムのへイズをASTMD1003−61に準拠して測定し、その差を△へイズとし、フィルムの耐傷つき性の尺度とした。数値が小さい方が耐傷付き性が優れることを示す。
【0054】
(11)二次加工性(ロール汚れ性)
空冷インフレーション成形法により紙管に成形フィルムを400m巻取り、40℃に調整されたオーブン中で3日間状態調整後、西村製作所製NSTC100型スリッターを使用し、ライン速度20m/min、巻出ブレーキ力15kg・mの条件で巻き換えを行い、ガイドロールの汚れを観察し、二次加工性の尺度とした。下記の基準に従って評価した。
◎:ガイドロールに汚れはみられなかった。(二次加工性が非常に優れる。)
○:ガイドロールに僅かに汚れがみられたが、問題とならなかった。(二次加工性が良好である。)
△:ガイドロールに汚れがみられ問題となった。(二次加工性が劣る。)
×:ガイドロールに汚れがみられ、時々ロールに付着した汚れ物がフィルムに転写した。(二次加工性が非常に劣る。)
【0055】
(12)目視外観
空冷インフレーション成形法により得られたフィルムを用い、複数のパネラーによって、ちらつき感(50〜100μm程度のグレインの多少)について目視観察し、フィルムの外観として、下記の基準に従って総合的に判定し、目視外観の尺度とした。
◎:パネラー全員が外観について良好と判定した。(目視外観が非常に優れる。)
○:ほぼパネラー全員が外観について良好と判定した。(目視外観が良好である。)
△:パネラーの半数以上が外観について不満と判定した。(目視外観が劣る。)
×:パネラー全員が外観について不満と判定した。(目視外観が非常に劣る。)
【0056】
(13)総合評価
透明性、透視感、耐ブロッキング性、滑り性、耐傷つき性、二次加工性(ロール汚れ性)及び目視外観の結果から、フィルムの外観と実用物性のバランスを、下記の基準に従って、総合評価として示した。
○:外観と実用物性とのバランスが良好であった。
△:外観と実用物性とのバランスがやや悪いものであった。
×:外観と実用物性とのバランスが悪く、実用に供せないものであった。
【0057】
実施例1および比較例1〜4
実施例1および比較例1〜4で用いた各ポリオレフィン系樹脂組成物の成分及びそれらの量を表1に示した。各ポリオレフィン系樹脂組成物は、タンブラーミキサーを用いてドライブレンドして得られた。得られた各ポリオレフィン系樹脂組成物を、50mmφ単軸押出機からなるプラコー製インフレーションフィルム成形機を用いて、25kg/hrの押出量、200℃のダイ設定温度BUR1.8の条件で、厚みが20μmまたは80μmである単層フィルムに成形した。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。ヘイズ、LSI、目視外観は、厚みが80μmであるフィルムを用いて評価し、ブロッキング、摩擦角、耐傷つき性は厚みが20μmであるフィルムを用いて評価した。
【0058】
【表1】
Figure 0004207414
【0059】
【表2】
Figure 0004207414
【0060】
本発明の要件を満足する実施例1は、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上したものであることが分かる。
これに対して、本発明の要件であるアンチブロッキング剤(B)を用いなかった比較例1は、耐ブロッキング性、滑り性、ロール汚れ性が不充分なものである。
アンチブロッキング剤(B)が体積粒径分布において粒径22μmを超える粒子を1.0重量%以上含有するため、本発明の要件を満足しない比較例2は、透明性、目視外観が不充分なものである。
本発明の要件である体積粒径分布においてアンチブロッキング剤(B)の体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合を満足しない比較例3は、ロール汚れ性が不充分なものである。
本発明の要件であるアンチブロッキング剤(B)の体積平均粒径、体積粒径分布における体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合を満足しない比較例4は、耐傷つき性、ロール汚れ性が不充分なものである。
【0061】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明により、フィルムに用いた場合、透明性、透視感、耐ブロッキング性、さらに滑り性、耐傷つき性、二次加工性および目視外観(ちらつき感)に優れ、これらの物性のバランスが向上したポリオレフィン系樹脂組成物およびその組成物からなるフィルムが提供される。
また、本発明のフィルムは、優れた特性を生かして、例えば食品、繊維、医薬品、肥料、雑貨品、工業用部品などの包装用材料として、また農業用被覆材および建築用被覆材として最適に使用できる。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン系樹脂(A)および天然鉱物を紛砕・焼成して得られ、体積平均粒径が〜5μであり、かつ体積粒径分布において該体積平均粒径の1.5倍以上の粒径を有する粒子の割合が33〜40重量%であり、粒径22μを超える粒子の割合が0.5重量%未満であるアンチブロッキング剤(B)からなり、該アンチブロッキング剤(B)の配合濃度が1000〜10000重量ppmであり、該アンチブロッキング剤(B)がカオリナイトであることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
  2. 請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物のポリオレフィン系樹脂(A)およびアンチブロッキング剤(B)に加えて、有機アミド化合物(C)を含有し、該有機アミド化合物(C)の配合濃度が200〜5000重量ppmであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなるフィルム。
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