JP4206887B2 - マスタシリンダ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のブレーキ系統に係り、特にホイールシリンダへ供給する液圧を電気的に制御するブレーキ液圧制御システム、いわゆるブレーキバイワイヤ(BBW)システムに用いられるマスタシリンダ装置に関する。
BBWシステムに用いられるマスタシリンダ装置は、ホイールシリンダに対してフェイルセーフ弁を介して接続されるマスタシリンダと該マスタシリンダ内の液圧室のブレーキ液を導入してブレーキペダルの必要なストロークを確保するストロークシミュレータとを備えており、システムの失陥時には、前記フェイルセーフ弁が開かれて、マスタシリンダの発生液圧がホイールシリンダへ供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
特表2001−526150号公報
ところで、BBWシステムでは、通常、マスタシリンダ内のプライマリピストンの移動量、すなわちピストンストロークに基いてホイールシリンダへ供給する液圧を制御するようにしている。しかしながら、従来、前記ピストンストロークの検出には、上記特許文献1にも記載されるように、ブレーキペダルの駆動を検出するセンサを用いているのが一般で、このような対応では、ブレーキペダルとプライマリピストンとを作動連結する機構内に存在する機械的な遊びによる検出精度の悪化が避けられず、BBWシステムの制御性が悪化する、という問題があった。
なお、前記問題を解消するには、プライマリピストンのストロークを直接検出するストロークセンサをマスタシリンダに設けるようにすればよいが、一般的なリニアセンサを用いたのでは、いたずらにマスタシリンダの軸方向寸法が長くなり、車両への搭載性が悪化してしまう。
本発明は、上記した従来の技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、BBW用マスタシリンダ装置において、マスタシリンダをそれほど大型化することなくピストンストロークを高精度に検出できるようにすることにある。
上記課題を解決するため、本発明は、ホイールシリンダに対してフェイルセーフ弁を介して接続されるタンデム型マスタシリンダと、該マスタシリンダ内の液圧室のブレーキ液を導入して、ブレーキペダルの必要なストロークを確保するストロークシミュレータと、前記マスタシリンダのシリンダ本体から一部を突出させたプライマリピストンのストロークを検出するストロークセンサとを備えたマスタシリンダ装置において、前記ストロークセンサは、前記シリンダ本体に取付けられ前記プライマリピストンの突出部分を覆うカバー部内にこれと一体に配設された回転角度検出器と、前記プライマリピストンの直線運動を回転運動に変換して前記回転角度検出器に伝達する運動変換機構とを備えていることを特徴とする。このように構成したマスタシリンダ装置においては、プライマリピストンの直線運動を回転運動に変換して、回転角度からピストンストロークを検出するので、それほどスペースをとらずに高精度にピストンストロークを検出することができる。
本発明において、上記運動変換機構は、回転角度検出器の回転軸に一端部が結合されたセンサアームと、前記プライマリピストンの突出部分の端部に植立され、先端部を前記センサアームの他端部に係合させたセンサピンとからなる構成とすることができ、これにより、構造簡単なストロークセンサが実現する。この場合、前記センサアームが、付勢手段により回転方向の一方へ付勢されているようにするのが望ましく、この場合は、センサアームとセンサピンとが常に接触する状態を維持するので、検出精度はより一層向上する。また、前記センサアームは、一端部からの延出方向に対して途中であってその角度が変化するように形成されてなる構成としてもよく、この場合は分解能が向上する。さらに、前記センサアームは、前記プライマリピストンの後退方向に凸に湾曲してなる構成としてもよく、この場合は、分解能が向上するとともに、ストロークと回転角度との関係が直線的になるので、データ処理が簡単となる。
本発明に係るマスタシリンダ装置によれば、マスタシリンダを大型化することなくピストンストロークを高精度に検出できるので、BBWシステムの制御性の向上に大きく寄与するばかりか、車両へ搭載性の向上に大きく寄与する効果を奏する。
また、上記運動変換機構を、回転角度検出器の回転軸に一端部が結合されたセンサアームと、前記プライマリピストンの突出部分に植立され、先端部を前記センサアームの他端部に係合させたセンサピンとからなる構成とした場合は、構造簡単なストロークセンサが実現する。また、前記センサアームを、付勢手段により回転方向の一方へ付勢されているようにした場合は、センサアームとセンサピンとが常に接触する状態を維持するので、検出精度はより一層向上する。また、前記センサアームを、一端部からの延出方向に対して途中であってその角度が変化するように形成されてなる構成とした場合は、分解能が向上する。さらに、前記センサアームを、プライマリピストンの後退方向に凸に湾曲してなる構成とした場合は、分解能が向上するとともに、ストロークと回転角度との関係が直線的になるので、データ処理が簡単となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および2は、本発明に係るマスタシリンダ装置の全体構造を示したものである。本マスタシリンダ装置1は、前記したBBWシステムに用いられるもので、ホイールシリンダ(図示略)に対してフェイルセーフ弁2A、2Bを介して接続され、ブレーキペダル3の踏力に応じた液圧を発生するタンデム型マスタシリンダ4と、マスタシリンダ4のシリンダ本体10に外付けされ、マスタシリンダ4内のプライマリピストン11とセカンダリピストン12との間に画成される第1液圧室13のブレーキ液を導入して、ブレーキペダル3の必要なストロークを確保するストロークシミュレータ5とを備えている。本マスタシリンダ装置1はまた、前記マスタシリンダ4内の第1液圧室13とストロークシミュレータ5内とを連通するシミュレータ通路6に配設された開閉手段7と、ブレーキペダル3と連動するマスタシリンダ4内のプライマリピストン11のストローク(ピストンストローク)を検出するストロークセンサ8とを備えている。なお、BBWシステムは、本マスタシリンダ装置1以外に液圧源、液圧制御弁、電子制御ユニット等を含む液圧制御手段を備えており、該液圧制御手段は、通常前記ストロークセンサ8の検出信号に基づいてホイールシリンダ1へ供給する液圧を制御するようになっている。
上記マスタシリンダ4は、プランジャ型として構成されており、そのシリンダ本体10は、図3にも示されるように有底筒状をなしており、そのボア14内には、前記プライマリピストン11と前記セカンダリピストン12とが摺動可能に納められている。プライマリピストン11は、その先端側(ボア14への挿入端側)がカップ形状部11aとなっており、前記第1液圧室13は、このプライマリピストン11のカップ形状部11aとセカンダリピストン12との間に設定されている。また、セカンダリピストン12の先端側もカップ形状部12aとなっており、このカップ形状部12aとシリンダ本体10の内底との間には、第2液圧室15が設定されている。シリンダ本体10には、第1液圧室13内のブレーキ液を対応するホイールシリンダへ供給する第1吐出ポート16と、第2液圧室15内のブレーキ液を対応するホイールシリンダへ供給する第2吐出ポート17とが設けられている。なお、前記第1、第2吐出ポート16、17は、ここでは、シリンダ本体10のボア14の内面に形成した縦溝18、19内に開口している。
また、プライマリピストン11のカップ形状部11aの底とセカンダリピストン12との間には第1戻しばね20が、セカンダリピストン12のカップ形状部12aの底とシリンダ本体10の内底との間には第2戻しばね21がそれぞれ配設されており、両ピストン11、12はこれら第1、第2戻しばね20、21のばね力で、常時はボア14から抜け出る方向へ付勢されている。ここで、前記2つの戻しばねは、セカンダリピストン12を付勢する第2戻しばね21の方がプライマリピストン11を付勢する第2戻しばね20よりも大きなばね力を有するものとなっている。シリンダ本体10の後端部には、該後端部に螺着した押え部材22を用いて有底筒状のピストンガイド23が連結されており、プライマリピストン11は、このピストンガイド23の底板により抜止めされると共にその後退位置が規制されている。一方、セカンダリピストン12は、その中実部に貫設した軸径方向孔(長穴)24に挿入されたストッパピン25により後退位置が規制されている。ストッパピン25は、図4に示すようにボア14を横断して延ばされ、その基端部がシリンダ本体10の壁に螺着されている。
プライマリピストン11の後端側(ボア14への挿入端側と反対側)には、その軸心上を延びる凹部11bが形成されており、この凹部11b内にはブレーキペダル3から延ばした入力軸26が挿入されている。入力軸26は、その先端の球形部26aを前記凹部11bの奥底に当接させた状態で該凹部11b内に係止されており、プライマリピストン11は、ブレーキペダル3の踏力をこの入力軸26を介して受けることで、ボア14の奥側へ前進するようになっている。
シリンダ本体10のボア14の内面には、プライマリピストン11およびセカンダリピストン12に対向して2つの環状溝27、28が形成されており、各環状溝27、28には、シリンダ本体10の上部に装着したリザーバ29に連通するリザーバポート30、31がそれぞれ開口している。一方、プライマリピストン11のカップ形状部11aおよびセカンダリピストン12のカップ形状部12aには補給孔32、33が設けられている。この補給孔32、33は、プライマリピストン11およびセカンダリピストン12が後退位置にあるとき、前記環状溝27、28内にそれぞれ開口するようになっており、この状態において、リザーバ29から第1液圧室13および第2液圧室15に対するブレーキ液の補給が行われる。
また、シリンダ本体10のボア14の内面には、プライマリ側の環状溝27を間にする配置で一対のカップシール34、35が装着されると共に、セカンダリ側の環状溝28を間にする配置で一対のカップシール36、37が装着されている。プライマリ側の一対のカップシールのうち、ボア14の入口側に位置するカップシール34は、前記第1液圧室13を外部から密封する役割をなしている。また、セカンダリ側の一対のカップシールのうち、ボア14の入口側に位置するカップシール36は、第1液圧室13と第2液圧室15との連通を遮断する役割をなしている。一方、プライマリ側の一対のカップシールのうち、ボア14の奥側に位置するカップシール35は、第1液圧室13から前記リザーバ29に通じる環状溝27への液流通を遮断する役割をなしている。また、セカンダリ側の一対のカップシールのうち、ボア14の奥側のカップシール37は、第2液圧室15から同じくリザーバ29に通じる環状溝28への液流通を遮断する役割をなしている。
上記したプライマリ側の一対のカップシール34、35およびセカンダリ側の一対のカップシール36、37は何れもシリンダ本体10のボア14の内面に形成された環状溝内に配置されているが、図5、6に示すように、特に、ボア奥側のカップシール35、37が配置された環状溝38、39には、ボア14の内面に形成された前記縦溝18、19が開通している。しかして、プライマリ側のカップシール35が配置された環状溝38に開通する縦溝18は、図5に示すように、その底面が環状溝38の底面よりも浅くなっている。すなわち、カップシール35の外周縁部が環状溝38の前壁38aに当接する状態となっており、これにより、該カップシール35の背面側の環状溝27から第1液圧室13への液補給が規制される。これに対し、セカンダリ側のカップシール37が配置された環状溝39に開通する縦溝19は、図6に示すようにその底面が環状溝39の側面と同等かわずか深くなっており、これにより該カップシール37の背面側の環状溝28から第2液圧室15への液補給が許容される。
上記ストロークシミュレータ5は、図1に示されるように小径部40aと、中径部40bと大径部40cとを連接してなる段付のシミュレータ本体40を備えており、前記中径部40bの外周面にはおねじが形成されている。一方、上記マスタシリンダ4のシリンダ本体10には、段付の嵌合穴41を有するボス部42が突設されており、前記嵌合穴41の大口径部分にはめねじが形成されている。ストロークシミュレータ5のシミュレータ本体40は、その中径部40を前記シリンダ本体10の嵌合穴41に螺合させることによりシリンダ本体10に直結(外付け)され、この状態で、シミュレータ本体40の先端側の小径部40aが前記嵌合穴41の小口径部分にシール部材43を介して圧入されるようになっている。
上記したマスタシリンダ4の第1液圧室13とストロークシミュレータ5とを連通するシミュレー通路6は、シリンダ本体10の前記段付穴41の底に開けられた、後述のポート50および開閉手段7内の通液路51と前記シミュレータ本体40に形成された通液路52とから構成されている(図3、7)。
図1に示されるように、ストロークシミュレータ5のシミュレータ本体40内には有底のボア44が設けられており、このボア44内には、カップシール45を介してピストン46が摺動可能に配設されている。ピストン46の先端(ボア44内への挿入端)とボア44の内底との間は、前記カップシール45により密閉の圧力室Sとして区画されており、この圧力室Sに上記したシミュレータ通路6を構成する通液路52が開口している。一方、シミュレータ本体40の大径部40cは中空構造となっており、この中空内部には、前記ボア44を延長する延長筒部44aが配設されている。この延長筒部44aの延長端には、シミュレータ本体40の蓋板40´に一端が着座する第1ばね47の他端を受けるばね受け48が添設されている。また、前記延長筒部44a内には、前記第1ばね47よりもばね力の小さい第2ばね49が配設されている。この第2ばね49は、前記ばね受け48とピストン46のカップ底との間に介装され、常時はピストン46を上方へ付勢している。このようなストロークシミュレータ5において、圧力室S内の液圧が上昇すると、先ず、ピストン46が第2ばね49のばね力に抗して後退し、ピストン46がばね受け48に当接した後は、第2ばね47のばね力に抗して後退する。
上記ストロークセンサ8は、図1および3に示すようにシリンダ本体10の後端のフランジ部10aに取付けたカバー70内に配設されている。ストロークセンサ8は、回転角度検出器71と、この回転角度検出器71から延出された回転軸72と、この回転軸72に一端部が固結されたセンサアーム73と、マスタシリンダ4内のプライマリピストン11の後端部(シリンダ本体10からの突出部分の端部)に植立され、前記ピストンガイド23に設けられたスリット74を挿通してセンサ本体71側へ延ばされたセンサピン75とを備えている。
図7によく示されるように、上記センサアーム73の他端部には長穴76が設けられており、この長穴76内に上記センサピン75の上端部が挿入されている。センサピン75は、プライマリピストン11と一体に、上記ピストンガイド23に設けられたスリット74に沿って直線移動するようになっており、センサアーム73の長穴76は、前記したセンサピン75の直線移動を保証するに足る十分な長さを有している。また、この長穴76は、センサピン75の円滑な移動を保証するに足る十分なる幅を有している。これにより、いまプライマリピストン11と一体にセンサピン74が進退動すると、センサアーム73はその長穴76内でセンサピン74を移動させながら回転軸72を中心に回転をするようになる。したがって、前記センサアーム73およびセンサピン75は、プライマリピストン11の直線運動を回転運動に変換して回転角度検出器71に伝達する運動変換機構を構成している。この場合、その構造は簡単かつ小型となり、マスタシリンダ4の周りにストロークセンサ8を設けたことによる大型化は必要最小限に抑えられる。
しかして、上記センサアーム73は、図示を略す付勢手段により図7に見て反時計方向へ付勢されており、これにより前記長穴76の片側の壁面76aが常にセンサピン75に押し当てられている。すなわち、センサピン75はセンサアーム73の長穴76内で遊ぶことなく直線移動するようになっており、この結果、プライマリピストン11の直線移動量が精確に回転軸72の回転量に変換可能となる。この場合、プライマリピストン11の直線移動量と回転軸72の回転角との関係は、図10に実線にて示すようにほぼ直線関係となり、ストローク全長にわたって安定した検出精度が得られるようになる。
ここで、上記ストロークセンサ8のセンサアーム73は、図7に示した直線状のものに代えて、例えば、図8に示すようにくの字状のセンサアーム73´としても、あるいは図9に示すように湾曲状のセンサアーム73″としてもよい。この場合、センサアーム73´の屈曲方向およびセンサアーム73″の湾曲方向は、回転軸72とセンサピン75とを結ぶ線上から外向きとし、また、センサアーム73″については、その長穴76も湾曲形状とする。くの字状のセンサアーム73´を用いた場合は、図10に点線にて示すように、ストローク終盤の分解能がある程度犠牲になるが、ストローク初期に優れた分解能が得られるようになる。一方、湾曲状のセンサアーム73″を用いた場合は、図10に一点鎖線にて示すように、分解能は、センサアーム73とセンサアーム73´との中間的なものとなるが、回転角とストロークとの関係が直線的になるので、この場合のセンサ出力を用いた場合のデータ処理が簡単となる。
以下、上記のように構成したマスタシリンダ装置1の作用を説明する。なお、本マスタシリンダ装置1は、シリンダ本体10のフランジ部10aのおもて面からストロークセンサ8を納めたカバー70を挿通して延ばしたスタットボルト80を利用して車体に取付けられる。
先ず、BBWシステムが正常に作動している場合について説明する。この場合は、フェイルセーフ弁2A、2Bが閉鎖(閉弁)されており、ブレーキペダル3の踏込みに応じてプライマリピストン11が、図1、3の左方向へ前進し、第1液圧室13内にブレーキペダル3の入力に応じた液圧が発生する。このとき、後退位置にあるセカンダリピストン12との係合で、開閉手段7を構成するポペット弁55は開弁しており、第1液圧室13内のブレーキ液は、シリンダ本体10のポート50から開閉手段7内の通液路51およびシミュレータ本体50内の通液路52とを通ってストロークシミュレータ5内の圧力室Sへ供給される。
上記ストロークシミュレータ5の圧力室Sにブレーキ液が導入されると、先ず、ピストン46が、ばね力の小さい第2ばね49のばね力に抗して後退し、これによりブレーキペダル3の適切な初期ストロークが確保される。そして、ピストン46がばね受け48に当接した後は、ばね力の大きい第2ばね47のばね力に抗してピストン46が後退し、これによりブレーキペダル3の必要なストロークが確保される。この場合、ピストン46の後退に応じてブレーキペダル3に対する反力が高まり、いわゆる踏み応えが生じて、ペダルフィーリング性は理想の状態となる。この間、プライマリピストン11の移動量はストロークセンサ8により監視されており、BBWシステム内の電子制御ユニットは、前記ストロークセンサ8からの信号(ピストンストローク)に基いてホイールシリンダへ供給する液圧を制御し、これにより所望の制動力が得られる。
ところで、上記したようにピストンストロークに基いて制動力を制御する場合は、ブレーキペダル3の繰返し踏込みに応じて、プライマリ側のカップシール35の背面側から第1液圧室13へ液補給(背面補給)が繰返されると、ブレーキペダル3にかかる反力が大きくなり、ブレーキ操作に応じた適性な制動力を得ることが困難になる。しかし、本実施形態においては、図5に示したようにこのプライマリ側のカップシール35の外周縁部が環状溝38の前壁38aに当接して背面補給が規制されているので、ブレーキペダル3の繰返し踏込みが行われても、所望の制動力が安定して得られるようになる。
次に、BBWシステムが失陥した場合について説明する。この場合は、フェイルセーフ弁2A、2Bが切換わってマスタシリンダ4がホイールシリンダへ接続される。そして、ブレーキペダル3の踏込みによりプライマリピストン11が前進し、第1液圧室13内の液圧が上昇すると、この第1液圧室13内のブレーキ液は、第1吐出ポート16からフェイルセーフ弁2Aを通って対応するホイールシリンダへ供給される。一方、第1液圧室13内の液圧が上昇すると、セカンダリピストン12も前進し、これにより第2液圧室15内のブレーキ液が、第2吐出ポート17からフェイルセーフ弁2Bを通って対応するホイールシリンダへ供給される。
そして、セカンダリピストン12が前進すると、開閉手段7の揺動レバー55が揺動し、ポペット弁54がシミュレータ本体50内の通液路52(シミュレータ通路6)を遮断する。これによりストロークシミュレータ5へのブレーキ液供給は停止され、この結果、各ホイールシリンダに対して必要なブレーキ液が供給され、マニュアルブレーキとして作動する。
上記制動状態からブレーキペダル3が解放されると、第2戻しばね21のばね力が第1戻しばね20のばね力よりも大きいことから、先ず、セカンダリピストンピストン12が戻り、第2液圧室15内の液圧が低下する。すると、ホイールシリンダから第2液圧室15へブレーキ液が戻ると共に、カップシール37を通してリザーバ29から第2液圧室15へブレーキ液が補給される。セカンダリピストン12は、ストッパピン25に当接して移動停止し、この段階では、セカンダリピストン12のカップ形状部12aに設けられた補給孔33により第2液圧室15とリザーバ29とが連通し、第2液圧室15内のブレーキ液が調整される。一方、プライマリピストン11は、第1戻しばね20のばね力により、前記セカンダリピストン12よりも遅れて初期位置に戻り、これによりプライマリピストン11のカップ形状部11aに設けられた補給孔32により第1液圧室13とリザーバ29とが連通し、第1液圧室13内のブレーキ液が調整される。なお、このプライマリピストン11側のカップシール35は、前記したように背面補給不能な構造となっているので(図5)、プライマリピストン11の戻り途中におけるブレーキ液補給は行われない。その後、ブレーキペダル3が踏込まれると、再びプライマリピストン11とセカンダリピストン12とが前進するが、両ピストン11、12はピストンガイド23、ストッパピン25により初期位置に正確に戻っているので、次の制動に際して無効ストロークを生じることはなく、したがって、BBW失陥時においても安定した制動が得られるようになる。
なお、上記実施形態においては、マスタシリンダ4をプランジャ型として構成したが、このマスタシリンダ4の型は任意であり、センターバルブを有する構成としてもよいことはもちろんである。
本発明に係るマスタシリンダ装置の全体構造を示す断面図である。 本マスタシリンダ装置の全体構造を示す側面図である。 本マスタシリンダ装置を構成するマスタシリンダの構造を示す断面図である。 本マスタシリンダの一部を拡大して示す断面図である。 プライマリ側のカップシールの組付構造を示す断面図である。 セカンダリ側のカップシールの組付構造を示す断面図である。 本マスタシリンダ装置を構成するストロークセンサの構造を示す模式図である。 本マスタシリンダ装置を構成するストロークセンサの変形構造を示す模式図である。 本マスタシリンダ装置を構成するストロークセンサの、さらに他の変形構造を示す模式図である。 図7〜9に示したストロークセンサにおけるストロークと回転角との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 マスタシリンダ装置
2A、2B フェイルセーフ弁
3 ブレーキベダル
4 マスタシリンダ
5 ストロークシミュレータ
6 シミュレータ通路
7 開閉手段
8 ストロークセンサ
10 シリンダ本体
11 プライマリピストン
12 セカンダリピストン
13 第1液圧室(液圧室)
14 ボア
70 カバー
71 回転角度検出器
72 回転軸
73 センサアーム
74 長穴
75 センサピン

Claims (5)

  1. ホイールシリンダに対してフェイルセーフ弁を介して接続されるタンデム型マスタシリンダと、該マスタシリンダ内の液圧室のブレーキ液を導入して、ブレーキペダルの必要なストロークを確保するストロークシミュレータと、前記マスタシリンダのシリンダ本体から一部を突出させたプライマリピストンのストロークを検出するストロークセンサとを備えたマスタシリンダ装置において、前記ストロークセンサは、前記シリンダ本体に取付けられ前記プライマリピストンの突出部分を覆うカバー部内にこれと一体に配設された回転角度検出器と、前記プライマリピストンの直線運動を回転運動に変換して前記回転角度検出器に伝達する運動変換機構とを備えていることを特徴とするマスタシリンダ装置。
  2. 前記運動変換機構が、回転角検出器の回転軸に一端部が結合されたセンサアームと、前記プライマリピストンの突出部分の端部に植立され、先端部を前記センサアームの他端部に係合させたセンサピンとからなることを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
  3. 前記センサアームが、付勢手段により回転方向の一方へ付勢されていることを特徴とする請求項2に記載のマスタシリンダ装置。
  4. 前記センサアームは、一端部からの延出方向に対して途中であってその角度が変化するように形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載のマスタシリンダ装置。
  5. 前記センサアームは、前記プライマリピストンの後退方向に凸に湾曲してなることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載のマスタシリンダ装置。
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