JP4204361B2 - エンジンカバー用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

エンジンカバー用熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂に関するものである。更に詳しくは、本発明は、耐熱老化性及び、実用領域での制振性に優れた自動車のエンジンカバーに好適に用いられる熱可塑性樹脂組成物および製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の軽量化、形状の自由度の観点から自動車のエンジンカバーの樹脂化が進んでおり、高い機械的強度,優れた耐摩耗性,耐薬品性および耐熱性などに優れることからポリアミド系樹脂が広く用いられている。エンジンカバーに用いられるポリアミド系樹脂としては、高温時の強度に有利なガラス繊維で強化した組成物(特許文献1)や、さらに軽量化やポリアミドの吸水による寸法変化を抑制する観点からポリアミドとポリオレフィンの組み合わせによるガラス繊維強化組成物(特許文献2)、さらにはガラス繊維強化系材料のソリ改良を目的にポリアミドとポリオレフィンの組み合わせによるタルク強化組成物(特許文献3)などが、それぞれ耐熱劣化抑制のための熱安定剤を併用し提案されている。
【0003】
しかし、ポリアミドガラス繊維強化材においては、実使用時の高温下での制音性(制振性)が不足する場合や、ガラスのみの強化系特有の成形時のガス焼けが発生する場合があり、タルクのみの強化系では、タルクに起因するシルバーの発生や、高温時の剛性が不足する場合があった。また、熱安定剤の種類によっては、蒸散性の問題から十分な耐熱劣化の抑制効果が得られない場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−30219号公報
【特許文献2】
特許第2597879号公報
【特許文献3】
特開2002−69297
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、実用温度領域での制振性および耐熱老化性に優れたエンジンカバー用に好適に用いられる熱可塑性樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物を提供する点に存する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂およびマイカからなる樹脂組成物に、特定の熱安定剤を特定量添加することで、耐熱老化性及び実用温度領域での制振性に優れ、且つ外観及びに優れた樹脂組成物が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記の成分(A)〜(D)を溶融混練してなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物および製造方法に係るものである。
(A)ポリアミド系樹脂
(B)ポリプロピレン系樹脂
(C)マイカ
(D)相容化剤
(E)N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)
(F)安定剤
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する成分の(A)は、ポリアミド系樹脂である。
【0008】
本発明で用いられる「ポリアミド」とは、ラクタム類から誘導される構造単位を含む脂肪族ポリアミド樹脂や、アミノカルボン酸の重合によって得られる脂肪族ポリアミド樹脂や、炭素原子数4〜12の飽和脂肪族ジカルボン酸と炭素原子数2〜12の脂肪族ジアミンとの重縮合によって得られる脂肪族ポリアミド樹脂や、熱可塑性の芳香族ポリアミドを意味する。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で組合せて用いてもよい。これらのポリアミド樹脂は結晶性であっても非晶性であってもよい。ポリアミド樹脂は公知の樹脂であってもよい。
【0009】
上記のラクタム類として、ε−カプロラクタムや、ω−ラウロラクタム例示することができる。上記のアミノカルボン酸として、7−アミノフヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸を例示することができる。
【0010】
上記の飽和脂肪族ジカルボン酸として、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸を例示することができる。上記の脂肪族ジアミンとして、ヘキサメチレンジアミン及びオクタメチレンジアミンを例示することができる。飽和脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合においては、一般に、等モル量のジカルボン酸とジアミンとが用いられるが、ジアミンを過剰に用いることによって、得られるポリアミド樹脂中のアミン末端基の量をカルボキシル末端基の量より多くすることができるし、逆に、ジカルボン酸を過剰に用いることによって、得られるポリアミド樹脂中のカルボキシル末端基の量をアミン末端基の量より多くすることもできる。ジカルボン酸に替えて、該酸のエステルや酸塩化物や酸無水物を用いてもよいし、ジカルボン酸と該酸のエステルや酸無水物との混合物を用いてもよい。同様に、ジアミンに替えて該アミンの塩を用いてもよいし、ジアミンと該アミンの塩との混合物を用いてもよい。
【0011】
上記の「芳香族ポリアミド」とは、主鎖骨格に芳香核とアミド結合とを有するポリアミドを意味する。本発明で用いられる芳香族ポリアミドは公知のポリアミドであってもよく、芳香族ポリアミドとしてポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)を例示することができる。
【0012】
芳香族ポリアミドは、以下に例示する方法によって製造することができる。
(1)パラアミノメチル安息香酸やパラアミノエチル安息香酸で例示される芳香族アミノ酸を重縮合する方法
(2)テレフタル酸やイソフタル酸で例示される芳香族ジカルボン酸と、後記のジアミンとを重縮合する方法
(3)上記の芳香族アミノ酸と、上記の芳香族ジカルボン酸と、後記のジアミンとを重縮合する方法
(4)上記の芳香族ジカルボン酸と、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートで例示されるジイソシアネートとの重縮合する方法
【0013】
上記のジアミンとして、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル、4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを例示することができる。
【0014】
脂肪族ポリアミド樹脂として、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン11及びナイロン12を例示することができる。芳香族ポリアミドとして、ナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6I6Tを例示することができる。上記のポリアミドの中、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン6とナイロン66との任意の割合の混合物が好ましい。
【0015】
ポリアミドとして、アミン末端基の量とカルボキシル末端基の量とが実質上等量のポリアミド樹脂を用いてもよいし、アミン末端基の量がカルボキシル末端基の量より多いポリアミド樹脂を用いてもよいし、カルボキシル末端基の量がアミン末端基の量より多いポリアミド樹脂を用いてもよいし、これらポリアミド樹脂の任意の割合の混合物を用いてもよい。
【0016】
好ましいアミン末端基は、40meq/kg以上が好ましい。さらに好ましくは50meq/kg以上である。アミン末端基が少ないと相溶性が不足することがある。
【0017】
本発明の成分(B)は、ポリプロピレン樹脂である。ポリプロピレン樹脂としては、結晶性ポリプロピレンホモポリマー、及び重合の少なくともひとつの工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の他の工程でプロピレン、エチレン及び/又は少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体があげられ、さらに上記結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物であってもよい。
【0018】
かかるポリプロピレン樹脂は、通常、チタン系触媒、担持型触媒、またメタロセンのような均一系の触媒で重合されたものであってもよい。これらのポリプロピレンの物性は、通常、本発明の組成物の性能にも影響を及ぼすので、衝撃強度、剛性等のバランスにおいて優れるものが好ましい。
【0019】
本発明の成分(C)は、マイカである。ここでマイカとはケイ酸塩鉱物のうちの層状アルミノケイ酸塩、雲母(mica)族である。具体的には、真珠雲母、白雲母、金雲母、黒雲母、鱗雲母、ソーダ雲母等が揚げられる。
【0020】
マイカの重量平均フレーク径は5μm以上、400μm以下が好ましい。さらに好ましくは8μm以上、200μm以下である。重量平均フレーク径が5μm未満の場合、十分な剛性が得られない場合がある。一方、400μmを越えると成形品の外観不良や衝撃強度や伸びが低下する場合がある。また、重量平均アスペクト比は10以上が好ましい。アスペクト比が10未満であると十分な剛性が得られない場合がある。
【0021】
本発明の成分(D)は、相溶化剤である。ここで相容化剤とは、非芳香族性の炭素−炭素多重結合とオキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一つを有する官能性化合物である。
【0022】
本発明における非芳香族の炭素−炭素二重結合又は三重結合のみを有する官能性化合物は下記に示すオレフィン類、液状ジエンポリマー及びキノン類である。
【0023】
すなわち、かかる官能性化合物の具体例としては、ドデセン−1、オクタデセン−1等で例示されるオレフィン類;液状ポリブタジエンで例示される液状ジエンポリマー;並びに1,2−及び1,4−ベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジフェニルベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、2−クロロ−1,4−ベンゾキノン、2,2′−及び4,4′−ジフェノキノン、1,2―ナフトキノン、1,4―ナフトキノン及び2,6−ナフトキノン、9,10−アントラキノン等で例示されるキノン類をあげることができる。
【0024】
また、本発明におけるオキシラン基のみを有する官能性化合物の具体例としては、多価フェノール、多価アルコール及びアミン類からなる群から選ばれる化合物とエピクロロヒドリンとを縮合させることによって製造されるエポキシ樹脂、上記液状ジエンポリマーのエポキシ化物、酸化ポリオレフィンワックス、オクタデシルグリシジルエーテル、1−ヘキサデセンオキシド等で例示されるエポキシ化合物があげられる。
【0025】
本発明における誘導カルボキシル基のみを有する官能性化合物の例としては下記に示す化合物があげられるが、ここに、誘導カルボキシル基とは一般式
−COOR
−COY、
−CONR、R又は
−CO−Z−CO−
[式中、Rは水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yはハロゲン原子を表わし、RとRはそれぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yは酸素原子又はNHを表わす。]で表わされるカルボキシル基から派生する基のことである。
【0026】
かかる官能性化合物の具体例は無水コハク酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の無水マレイン酸重合体、p−ニトロ安息香酸メチル、p−シアノフェニルアセトアミド等で例示されるカルボン酸誘導体である。
【0027】
本発明における官能性化合物(C)としては、(i)非芳香族の炭素−炭素二重結合、オキシラン基及び誘導カルボキシル基からなる群から選ばれる結合又は官能基の少なくとも一つと(ii)誘導カルボキシル基、誘導水酸基、誘導アミノ基、誘導シリル基、誘導メルカプト基、誘導スルホン酸基及びオイシラン基からなる群から選ばれる官能基であって上記(i)の官能基とは異なる官能基の少なくとも一つとを同時に有する官能性化合物が好ましい。
【0028】
ここに、誘導水酸基とは、一般式
―OR―、
―OCOR10―、又は、
―OSi(R11
[式中、R及びR10は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭酸原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、3個のR11は互いに同じか又は異なる不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基、アリール基もしくはアルコキシ基を表わす。]で表わされる水酸基から派生する基のことである。
【0029】
誘導アミノ酸基とは、一般式
―NHR12―、又は
―NHCOR13
[式中、R12は水素原子、シアノ基又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、R13は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるアミノ基から派生する基のことである。
【0030】
誘導シリル基とは、一般式
−Si(R14
[式中、3個のR14は互いに同じか又は異なる水素原子、アミノ基又はメルカプト基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基、アリール基もしくはアルコキシ基を表わす。]で表わされるシリル基から派生する基のことである。
【0031】
誘導メルカプト基とは、一般式
―SR15、又は
―SCOR16
[式中、R15及びR16は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるメルカプト基から派生する基のことである。
【0032】
誘導スルホン酸基とは、一般式
−SO17
−SOY又は
−SONR1819
[式中、R17は水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至20個のアルキル基もしくはアリール基を表わし、Yはハロゲン原子をわし、R18とR19はそれぞれ水素原子又は不活性な置換基を有していてもよい炭素原子数が1乃至10個のアルキル基もしくはアリール基を表わす。]で表わされるスルホン酸基から派生する基のことである。
【0033】
かかる好ましい官能性化合物の例としては、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸、シトラコン酸、イタコン酸等で例示される不飽和ジカルボン酸;アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等で例示される不飽和モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水ハイミック酸、アクリル酸無水物等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の酸無水物;マレイン酸アミド、マレインヒドラジド、アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸の酸アミド;エチルマレイン酸等で例示される前記α、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸のエステル;マレイミド等で例示されるα、β−不飽和ジカルボン酸又は不飽和モノカルボン酸のイミド;アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等で例示される不飽和エポキシ化合物;アリルアミン、p−アミノスチレン、N−ビニルアニリン等で例示される不飽和アミン;アリルアルコール、3−ブテン−2−オール、プロパギルアルコール等で例示される不飽和アルコール;p−ビニルフェノール、2−プロペニルフェノール等で例示されるアルケニルフェノール;2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、1,3−ジビニルテトラエトキシシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のオルガノシラン化合物;3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトベンズイミダゾール等のメルカプト化合物;2−ヒドロキシイソ酪酸、DL−酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸カルシウム、リング酸カルシウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、アセチルシトレート、ステアリルシトレート、ジステアリルシトレート、アセチルマリエート、ステアリルマリエート、N、N′−ジエチルクエン酸アミド、N、N′−ジプロピルクエン酸アミド、N−フェニルクエン酸アミド、N−ドデシルクエン酸アミド、N、N′−ジドデシルクエン酸アミド、N−ドデシルリンゴ酸アミド等のオキシカルボン酸誘導体;トリメリト酸無水物酸ハロゲン化物、クロロホルミルコハク酸、クロロホルミルコハク酸無水物、クロロホルミルグルタル酸、クロロホルミルグルタル酸無水物、クロロアセチルコハク酸無水物等の酸塩化物等があげられる。
【0034】
より好ましい官能性化合物は、(i)非芳香族性の炭素−炭素多重結合とカルボキシル基を持つ化合物と(ii)水酸基とカルボキシル基を二つ以上持つ化合物およびその無水物である群から選ばれるすくなくとも一種である。これらの中で更に好ましい官能性化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、アクリル酸、クエン酸及びリンゴ酸である。
【0035】
なお、本発明の官能性化合物(D)は、有機過酸化物との併用が好ましく、さらには、スチレン、α−メチルスチレン等のアルケニル芳香族炭化水素と一緒に用いた方が更に好ましい場合がある。
【0036】
本発明の成分(E)は、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)である。N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)の例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 Irg1098があり、当業者が通常の方法で入手可能である。
【0037】
本発明の成分(F)は、安定剤である。具体的には、ビス[ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンであり、単独でも併用してもかまわない。ビス[ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニルとしては、吉冨ファインケミカル株式会社製 GSY−P101がある。また、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトとしては、アデカ製 PEP−36が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンとしては、住友化学工業製 スミライザーGPがある。これらは当業者が通常の方法で入手可能である。この他の安定剤、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト チバ・スペシャリティケミカルズ社製 イルガフォース168などを用いた場合、蒸散性の問題から耐熱老化性が不十分になることがある。
【0038】
本発明の樹脂組成物における各成分の量比は、(A)/(B)の重量比が95/5〜40/60、(C)の添加量が(A)+(B)100重量部に対して5〜100重量部、(D)の添加量が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.001〜10重量部であって、(E)が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.1〜1重量部、(F)が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.05〜1重量部であって、(E)+(F)の添加量が、(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.3重量部以上である。
【0039】
(A)/(B)の重量比において、(A)が99重量部を超えるとポリプロピレンによる耐薬品性や制振性などの改質効果が低下することがあり、逆に(A)が40重量部未満になると、ポリアミドとポリプロピレンの相構造が不安定となり機械強度や耐熱性、耐熱老化性が低下することがある。
【0040】
本発明の樹脂組成物における(C)の添加量は、(A)+(B)100重量部に対して5〜100重量部である。(C)が過少の場合、十分な強度が得られず、逆に(C)が過多の場合、成形品の外観が悪化するとともに、脆くなり衝撃強度が低下することがある。
【0041】
本発明の樹脂組成物における(D)の添加量は、(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.001〜10重量部である。(D)が過少の場合、ポリアミドとポリプロピレンとの相溶性が不足し、十分な強度、耐熱性、外観が得られないことがある。一方、過多であると成形品表面にシルバーなどの外観不良が現われることがある。
【0042】
本発明の樹脂組成物における(E)と(F)の添加量は、(E)が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.1〜1重量部、(F)が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.05〜1重量部であって、(E)+(F)の添加量が、(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.3重量部以上である。(E)、(F)ともに添加量が過少であると、耐熱老化性における物性値の低下抑制効果が得られないことがある。逆に(E)、(F)ともに添加量が過多であると、ガス焼けや光沢低下などの外観不良が起きる事がある。さらに本発明において(E)+(F)の添加量は、(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.3重量部以上である。(E)+(F)の添加量が過少であると、耐熱老化性における物性値の低下抑制効果が得られないことがある。
【0043】
本発明の樹脂組成物は上記の(A)〜(F)の成分を溶融混練して得られる。溶融混練方法の一例としては押出機等を用いて溶融混練する方法があげられるが、一般に行われている混練方法であれば特に制限を受けない。フィード方法は、材料を一括で投入する方法、材料の一部をサイドフィードする方法、予備混練物をフィードする方法が考えられるが、(B)成分を(D)成分とで予め溶融混練し、そののちに(A)成分と(E)成分、(F)成分を追加して溶融混練することが好ましく、その際(C)成分はどのタイミングで添加してもかまわないし、添加方法も一括して添加してもかまわないし、分割して任意の場所から添加してもかまわない。具体的には、単軸もしくは二軸混練機を用いて(B)成分を(D)成分とで予め溶融混練して冷却固化しペレット化したのち、別工程で成分(A)と(C)成分、(E)成分、(F)成分をブレンドして単軸もしくは二軸混練機に一括フィードする方法、(B)成分を(D)成分とで予め溶融混練して冷却固化しペレット化したものを複数のフィード口を持つ混練機を用い、上流側のフィード口からフィードし溶融させ、下流のフィード口から成分(A)と(C)成分、(E)成分、(F)成分を追加フィードして溶融混練する方法、同じく複数のフィード口を持つ混練機を用いて、上流側のフィード口から成分(B)と(C)、または(B)と(C)、(D)成分をフィードして溶融混練し、下流のフィード口から成分(A)と(E)、(F)、または成分(A)と(E)、(F)及び(C)成分をフィードして溶融混練する方法が挙げられる。下流フィード口からの成分(A)、(C)、(E)、(F)のフィードについては一括であっても、第三のフィード口を設置し、第二および第三のフィード口から分割してフィードしても良い。
【0044】
また、(B)、(D)成分もしくは(B)、(C)および(D)成分を予め溶融混練して冷却固化し、ペレット化したものを(A)、(E)、(F)成分または(A)、(C)、(E)、(F)成分とブレンドし、射出成形機、ブロー成形機、シート押出し機、圧縮成形機などの加工機に直接投入し、溶融混練して加工することもできる。
【0045】
混練温度は、(B)、(D)成分または(B)、(C)および(D)成分を予め溶融混練する部分では、150℃以上270℃以下が好ましく、さらに好ましくは160〜250℃の範囲である。それ以降の工程では、220℃〜300℃が好ましく、さらに好ましくは、230〜280℃の範囲である。
【0046】
本発明において、より一層高い衝撃強度を有する樹脂組成物が所望される場合には、塗装性や成形品の外観を損ねない範囲で該組成物にエラストマー類を含有されることが出来る。
【0047】
かかるエラストマー類の例としては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピンレン共重合体ゴム、ブタジエンスチレン共重合体ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴム、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロック共重合体ゴム、ポリエステルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等及びこれらの変性物等をあげることができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物は所望により上記した物質以外の他の物質も含むことができる。特定の目的のために含有せしめることが好ましいかかる他の物質の例としては、他の樹脂、難燃剤、安定剤、可塑剤、滑剤、顔料、充填材等があげられる。
【0049】
充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、カオリン、タルク、マグネシウムオキシサルフェート、ガラスバルン、ガラスビーズ、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維等があるが、これらの充填剤を必要に応じて一種以上配合することが可能である。
【0050】
本発明の熱樹脂組成物の成形方法は射出成形、押出成形、圧縮成形、中空成形など、一般に行われている成形方法であれば特に問題はなく、得られる樹脂組成物の形状は何等限定されるものではなく、成形方法による制約を受けることはない。
【0051】
得られた成形品は、自動車のエンジンルーム部品、具体的にはエンジンカバーに好適に用いられる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例及び比較例で使用された成分は以下のとおりである。
1.ポリアミド系樹脂(成分(A))
PA−1:ポリアミド6 カネボウ製 数平均分子量 15000
PA−2:ポリアミド6 ユニチカ製 数平均分子量 21500
【0054】
2.ポリプロピレン樹脂(成分(B))
230℃、21NにおけるMFRが0.5g/10min、ホモタイプでパウダー形状であるポリプロピレン。
【0055】
3.マイカ(成分(C))
クラレ製 クラライトマイカ 200D
重量平均フレーク径:90μm、重量平均アスペクト比:50
4.相容化剤(成分(D))
日本触媒製 無水マレイン酸(MAH)
5.成分(E)
N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 Irg1098
6.安定剤(成分(F))
f−1、ビス[ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニル
吉冨ファインケミカル株式会社製 GSY−P101
f−2、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
アデカ製 PEP−36
f−3、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
住友化学工業製 スミライザーGP
f−4、ペンタエリスリトール テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)
住友化学工業製 スミライザーTP−D
【0056】
6.有機過酸化物(PO)
三建化工社製 1,3−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼンの8%濃度品
【0057】
7.顔料(Pig)
三菱化学製 三菱カーボンブラック #750B
【0058】
8.流動性改良剤
無水コハク酸(SAH)
【0059】
9.ポリアミド66/ガラス繊維強化材
東レ製 ポリアミド66/ガラス繊維=70/30
【0060】
測定・評価方法が下記のとおりである。
耐熱老化性
耐熱老化性の評価として引張試験片及びIzod試験片を熱風オーブン内130℃雰囲気下で表1に示す時間状態調整後に引張試験およびIzod衝撃試験を実施した
引張強度
ASTM D638 に準拠し、3.2mm厚さの試験片を使用して23℃における引張り強度および引張破断伸びを測定した。
Izod衝撃強度
ASTM D256 に準拠し、3.2mm厚さの試験片を使用して23℃におけるノッチ無しのIzod衝撃強度を測定した。
制振性
二軸混練機で溶融混練して得られたペレットを、140℃5時間で真空乾燥後、240℃の温度で厚み1mmtのプレスシートを作製し、50mm×5mmの大きさに切り出して、株式会社レオロジ社製 FTレオスペクトラ DVE−4にて、10Hzの周波数で、実用温度域である110℃、130℃、150℃のtanδ(損失正接)を測定した。
【0061】
実施例1
表1に示す配合割合(重量部)の各成分を、表1に示す順序にて、第一フィード口からダイスまでのシリンダー温度240℃、スクリュー回転数250rpmに設定した連続二軸混練機(東芝機械製TEM−50A型)のホッパーから投入した後、これら成分を溶融混練してペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレットを、シリンダー温度240℃、金型温度50℃に設定した射出成型機にて、物性評価用のテストピースを作製し、耐熱老化性の評価として熱風オーブン内で130℃雰囲気下で表1に示す時間状態調整後に引張試験およびIzod衝撃試験を実施した。また、実用温度域の制振性評価として、二軸混練機で溶融混練して得られたペレットを、140℃5時間で真空乾燥後、240℃の温度で厚み1mmtのプレスシートを作製し、50mm×5mmの大きさに切り出して、株式会社レオロジ社製 FTレオスペクトラ DVE−4にて、10Hzの周波数で、実用温度域である110℃、130℃、150℃のtanδ(損失正接)を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
実施例24、比較例1〜3、5
表1に示す配合割合を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0063】
比較例4
従来から用いられている代表的なエンジンカバー材としてポリアミド66/ガラス繊維(30%)の制振性について評価した。結果を表1に示す。
本願実施例に比較し、実用温度領域での制振性が劣ることが判る。
【0064】
結果から次のことがわかる。本発明の条件を充足する実施例は全ての評価項目において満足すべき結果を示している。一方、本願発明の特定の組成及び安定剤の組み合わせを用いない比較例1〜3は、耐熱老化性が劣り、ポリアミドガラス繊維30%では、制振性が劣っている。
【0065】
【表1】
Figure 0004204361
【0066】
【表2】
Figure 0004204361
【0067】
【表3】
Figure 0004204361
【0068】
【表4】
Figure 0004204361
【0069】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、実用温度領域での制振性および耐熱老化性に優れたエンジンカバー用に好適に用いられる熱可塑性樹脂組成物および製造方法を提供することができた。

Claims (4)

  1. 下記の成分(A)〜(F)を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物であって、
    (A)/(B)の重量比が95/5〜40/60、
    (C)の添加量が(A)+(B)100重量部に対して5〜100重量部、
    (D)の添加量が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.001〜10重量部、
    (E)の添加量が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.1〜1重量部、
    (F)の添加量が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.05〜1重量部、
    (E)+(F)の添加量が(A)+(B)+(C)100重量部に対して0.3重量部
    以上であることを特徴とする
    熱可塑性樹脂組成物。
    (A)ポリアミド6および/またはポリアミド66よりなるポリアミド系樹脂
    (B)ポリプロピレン系樹脂
    (C)マイカ
    (D)相容化剤
    (E)N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナアミド)
    (F)ビス[ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェノキシ)ホスフィノ]ビフェニルおよび/またはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトよりなる安定剤
  2. 相容化剤(D)が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、無水ハイミック酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、アクリル酸、クエン酸及びリンゴ酸よりなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物によって成形された自動車用のエンジンカバー。
  4. 成分(E)および成分(F)が、(B)が(D)で変性されたあとに(A)とともに添加されることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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