JP4204285B2 - コイル状線材処理装置及びコイル状線材処理方法 - Google Patents

コイル状線材処理装置及びコイル状線材処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コイル状線材を伸線加工する前処理として、該コイル状線材に酸洗処理及び潤滑被覆処理を含む表面処理を施すための処理装置及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼線材を製造する過程において、熱間圧延後にコイル状に巻き取られた線材(コイル状線材)に対して、伸線加工を行う前の前処理として、脱スケール処理及び潤滑処理等の表面処理が行われる。脱スケール処理は塩酸又は硫酸等による酸洗処理であり、潤滑処理は下地処理及び潤滑被覆処理である。なお、下地処理は適宜省略されることもある。酸洗処理、下地処理、潤滑被覆処理等の処理工程は、コイル状線材を自動的に搬送して、必要な処理を所定の処理槽において行うように自動化されている。
【0003】
コイル状線材を自動的に搬送して表面処理を施すためのコイル状線材処理装置として、搬送路の形態が異なる2種類が知られている。一つはループ状に閉じた搬送路を備えるループ式搬送処理装置(サーキット式搬送処理装置、モノレール式搬送処理装置とも言われる。以下本願においてはこのようにループ状に閉じた搬送路を閉路状搬送路と言う)であり、他の一つは、開放端を有する直線状の往復搬送路を備えるトラバース式搬送処理装置(クレーン式搬送処理装置とも言われる。以下本願においてはこのような直線状の往復搬送路を開路状搬送路と言う)である。これらの搬送路に沿って、処理パターンに応じた所定の処理槽において所定の処理を行うことにより、酸洗、下地処理、潤滑被覆等の各処理が行われる。
【0004】
ループ式搬送処理装置は、1台の搬送機が1つの吊具を吊ったままでコイル状線材を搬送する方式である。したがって、搬送機の台数は多くなるが、搬送制御は簡素で自由度が大きく、高能率、高稼働率及び高酸洗品質の維持が容易である。これに対しトラバース式搬送処理装置は、1台の搬送機が吊具を吊り替えてコイル状線材を搬送する方式である。したがって、搬送機の台数は少なくて済むが、搬送制御は複雑で自由度が小さく、高能率、高稼働率及び高酸洗品質の維持が困難である。
【0005】
ループ式搬送処理装置とトラバース式搬送処理装置との機能等の相違から近年は、能率、稼働率、酸洗品質共に優れているループ式搬送処理装置が主流になっている。しかし、ループ式搬送処理装置には次のような問題が依然としてある。つまり、設備の設置面積が大きく工場の建設費が高価であること、搬送機の台数がトラバース式搬送処理装置の3〜4倍必要であることから設備費が高価であること、潤滑被覆処理工程の異なるコイル状線材をランダムに投入すると酸洗処理の後に処理待ちが発生し、再発錆に起因する品質不良を生じること等の問題がある。
【0006】
図10は閉路状搬送路を備えた従来のループ式搬送処理装置の平面配置図である。100は閉路状搬送路であり、天井等に固定配置される図示していないループ状搬送レールを備える。閉路状搬送路100に沿って投入部1、湯洗部2、塩酸処理部3、4、5、回転部6、塩酸処理部7、8、9、高圧水洗部10、水洗部11、中和部12、燐酸塩処理部13、14、湯洗部15、中和部16、ステアリン酸塩処理部17、石灰石鹸処理部18、乾燥部19、取り出し部20が順次配置されている。コイル状線材は搬送処理装置の外部から、ハンガー台車1aを介して投入部1へ投入され、閉路用搬送機により、閉路用搬送機の走行方向(矢符100a)に搬送され、湯洗部2乃至乾燥部19の各処理部において所定の処理を施される。所定の処理を終了したコイル状線材は、ハンガー台車20aを介して取り出し部20から搬送処理装置の外部へ取り出される。湯洗部2乃至乾燥部19の各処理部は、閉路状搬送路100と同一方向に長手方向を有する処理槽を備えることから、閉路状搬送路100は長くなり、各処理部の全体の配置長さLpは、例えば、60〜70メートルという長いものになり、結果として設置面積が大きくなるという問題がある。
【0007】
図11は処理パターンの例を示す図表である。処理工程は、処理順に投入(投入処理工程)、酸洗(酸洗処理工程)、潤滑被覆(潤滑被覆処理工程)、取り出し(取り出し処理工程)に区分できる。投入処理工程は投入部1において、取り出し処理工程は取り出し部20においてそれぞれ行われる。
【0008】
酸洗はさらに処理順に湯洗(湯洗処理工程)、塩酸処理(塩酸処理工程)、回転(回転処理工程)、塩酸処理(塩酸処理工程)、高圧水洗(高圧水洗処理工程)、水洗(水洗処理工程)、中和(中和処理工程)に区分できる。なお、図表においては、塩酸処理の前後の処理工程を含めて酸洗としているが、塩酸処理を行う工程のみを対象として酸洗処理と言うこともある。湯洗処理工程は湯洗部2において、塩酸処理工程は塩酸処理部3、4、5及び塩酸処理部7、8、9においてそれぞれ行われる。回転処理工程はコイル状線材と図示しない吊具との接触位置を変え、コイル状線材の全体に対して均一な塩酸処理を行うために回転部6において行われ、コイル状線材を90度乃至180度程度の適宜の角度で円周方向に回転する。高圧水洗処理工程は高圧水洗部10において、水洗処理工程は水洗部11において、中和処理工程は中和部12においてそれぞれ行われる。
【0009】
潤滑被覆はさらに処理順に燐酸塩処理(燐酸塩処理工程)、湯洗(湯洗処理工程)、中和(中和処理工程)、ステアリン酸塩処理(ステアリン酸塩処理工程)、石灰石鹸処理(石灰石鹸処理工程)、乾燥(乾燥処理工程)に区分できる。なお、図表においては、ステアリン酸塩処理、石灰石鹸処理の前後の処理工程を含めて潤滑被覆としているが、燐酸塩処理、湯洗、中和の各工程は潤滑被覆における下地処理であり、ステアリン酸塩処理又は石灰石鹸処理を行う工程のみを対象として潤滑被覆処理と言うこともある。通常、ステアリン酸塩処理と石灰石鹸処理とはいずれか一方を選択して行われる。燐酸塩処理工程は燐酸塩処理部13、14において、湯洗処理工程は湯洗部15において、中和処理工程は中和部16において、ステアリン酸塩処理工程はステアリン酸塩処理部17において、石灰石鹸処理工程は石灰石鹸処理部18において、乾燥処理工程は乾燥部19においてそれぞれ行われる。
【0010】
処理パターン種別の欄に、第1処理パターンTP1、第2処理パターンTP2、第3処理パターンTP3の3種類を例として示す。第1処理パターンTP1の処理工程は投入後、順次、湯洗→塩酸処理→回転→塩酸処理→高圧水洗→水洗→燐酸塩処理→湯洗→中和→ステアリン酸塩処理の各処理を施して取り出す工程からなる。第2処理パターンTP2の処理工程は投入後、順次、湯洗→塩酸処理→回転→塩酸処理→高圧水洗→水洗→燐酸塩処理→湯洗→中和→石灰石鹸処理→乾燥の各処理を施して取り出す工程からなる。つまり、第2処理パターンTP2は第1処理パターンTP1のステアリン酸塩処理に替えて石灰石鹸処理及び乾燥の処理をするものである。第3処理パターンTP3の処理工程は投入後、順次、湯洗→塩酸処理→回転→塩酸処理→高圧水洗→水洗→中和→石灰石鹸処理→乾燥の各処理を施して取り出す工程からなる。つまり、第3処理パターンTP3は第2処理パターンTP2の水洗後に中和を加え、燐酸塩処理→湯洗→中和の各処理を省略したものである。
【0011】
図10に示した従来のループ式搬送処理装置において処理パターンが異なるコイル状線材を処理する場合の待機時間の発生について説明する。例えば先に処理するコイル状線材に対して第1処理パターンTP1の処理を行い、後に処理するコイル状線材に対して第3処理パターンTP3の処理を行う場合においては、搬送路が閉路状搬送路100であることから、先に処理されるコイル状線材がステアリン酸塩処理を終了するまでは後に処理されるコイル状線材に対して石灰石鹸処理をすることができず、後に処理されるコイル状線材は待機状態となる。つまり、後に処理されるコイル状線材においては処理工程の途中において待機時間が発生し、この待機時間中に錆を生じる虞がある。待機時間の発生を防止するために、通常は後に処理するコイル状線材の投入タイミングを遅くして時間調整することから、処理効率が悪くなり、また投入タイミングの調整が必要になる等の問題がある。また、処理効率を上げるために、同一処理パターンのコイル状線材を集約して、処理パターンを揃える等の調整が必要になるという問題がある。
【0012】
第1処理パターンTP1と第2処理パターンTP2とが連続する場合においても同様な問題が生じる。つまり、先に処理されるコイル状線材がステアリン酸塩処理を終了するまでは後に処理されるコイル状線材に対して石灰石鹸処理をすることができず、後に処理されるコイル状線材は待機状態となる。このような待機状態(待機時間)の発生は、ステアリン酸塩処理と石灰石鹸処理のようにいずれか一方を選択して処理する場合のように異なる複数の処理パターンに対応する際に問題となる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、閉路状搬送路を備えた従来のループ式搬送処理装置は、設備(搬送処理装置全体)の設置面積が大きくなること、搬送に用いる搬送機の台数がトラバース式搬送処理装置の3〜4倍必要になること、処理パターンの異なるコイル状線材をランダムに投入すると処理工程の途中において待機状態が発生し再発錆による品質不良を生じること等の問題があった。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは閉路状搬送路を備えるコイル状線材処理装置において、閉路状搬送路に加えて開路状搬送路を併設することにより、異なる処理パターンが適用されるコイル状線材を連続的に処理する場合においても処理工程の途中における待機状態の発生を防止でき、コイル状線材のランダム投入が可能なコイル状線材処理装置、さらには搬送機の台数を削減したコイル状線材処理装置を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、各処理部(各処理槽)の長手方向を閉路用搬送路と交差する方向に配置することにより、各処理部全体の配置長さを短くし、全体の設置面積を小さくしたコイル状線材処理装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明の他の目的は、酸洗理及第1潤滑被覆処理を施されるコイル状線材と、酸洗処理及び第2潤滑被覆処理を施されるコイル状線材とを処理する方法において、共通する酸洗処理は閉路状搬送路に沿って配置された処理槽において施し、相互に異なる第1,第2潤滑被覆処理の一方は、閉路状搬送路に沿って配置された処理槽において施し、他方は、開路状搬送路に沿って配置された処理槽において施すことにより、異なる処理パターンを有するコイル状線材を混在処理する処理工程における待機状態の発生を防止できる処理方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
第1発明に係るコイル状線材処理装置は、コイル状線材を搬送するための閉路状搬送路と、搬送されるコイル状線材に対して表面処理を施すための処理槽とを備えるコイル状線材処理装置において、前記閉路状搬送路に沿って配置されており、コイル状線材に酸洗処理を施すための第1処理槽及び酸洗処理したコイル状線材に第1潤滑被覆処理を施すための第2処理槽と、前記第1処理槽及び第2処理槽の間に配置されており、酸洗処理したコイル状線材を閉路状搬送路から取り出すための移載部と、該移載部から延在し、取り出したコイル状線材を搬送するための開路状搬送路と、該開路状搬送路に沿って配置されており、搬送されるコイル状線材に前記第1潤滑被覆処理とは異なる第2潤滑被覆処理を施すための第3処理槽とを備えることを特徴とする。
【0018】
第2発明に係るコイル状線材処理装置は、第1発明において、前記開路状搬送路を往復移動し、前記移載部から前記第3処理槽へコイル状線材を搬送する開路用搬送機と、前記第3処理槽で処理されたコイル状線材を開路状搬送路から取り出すため取り出し部とを備えることを特徴とする。
【0020】
発明に係るコイル状線材処理装置は、第1発明又は第2発明において、前記第1潤滑被覆処理はステアリン酸塩処理であり、第2潤滑被覆処理は石灰石鹸処理であることを特徴とする。
【0021】
発明に係るコイル状線材処理装置は、第1発明乃至第発明のいずれかにおいて、前記閉路状搬送路を構成するループ状搬送レールと、該ループ状搬送レールの下方に配置される前記第1処理槽及び第2処理槽と、前記ループ状搬送レールに懸架されて自動走行する閉路用搬送機と、該閉路用搬送機により昇降可能に保持される吊具とを備え、該吊具は前記閉路用搬送機の走行方向と交差する方向においてコイル状線材を保持する構成としてあることを特徴とする。
【0022】
発明に係るコイル状線材処理方法は、酸洗処理及び第1潤滑被覆処理を施すべき第1のコイル状線材と、酸洗処理及び第2潤滑被覆処理を施すべき第2のコイル状線材とを搬送処理するコイル状線材処理方法において、前記第1のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路に沿って配置された第1処理槽において酸洗処理を、閉路状搬送路に沿って配置された第2処理槽において第1潤滑被覆処理をそれぞれ施し、前記第2のコイル状線材に対しては、前記第1処理槽において酸洗処理を、前記閉路状搬送路に併設された開路状搬送路に沿って配置された第3処理槽において第2潤滑被覆処理をそれぞれ施すことを特徴とする。
【0023】
第1発明においては、閉路状搬送路と開路状搬送路とを併設して、全てのコイル状線材に共通する酸洗処理は閉路状搬送路に設けた第1処理槽において実施し、また相互に異なる第1,第2潤滑被覆処理のうちの一方の処理は閉路状搬送路に設けた第2処理槽において、他方の処理は開路状搬送路に設けた第3処理槽においてそれぞれ実施することにより、処理パターンが異なるコイル状線材が混在する場合においても、工程途中における待機状態の生じることのない処理が可能になり、コイル状線材のランダム投入が可能となる。
【0024】
第2発明においては、開路用搬送路に往復移動する開路用搬送機を備え、最低1台の開路用搬送機があれば開路状搬送路における処理を繰り返し施すことが可能となり、設備費を低減することができる。
【0025】
第3発明においては、共通する処理工程としての酸洗処理及び異なる二つの処理工程としての潤滑被覆処理(ステアリン酸塩処理及び石灰石鹸処理)を施されるコイル状線材に適用することとしたので、コイル状線材の伸線加工前の前処理効率的、経済的に実施することができる。
【0026】
発明においては、閉路用搬送機が備える吊具により保持されるコイル状線材の保持方向を閉路用搬送機の走行方向と交差する方向にすることとしたので、閉路用搬送路の長さを短くでき、設備(搬送処理装置全体)の設置面積を小さくでき、建設費の安いコイル状線材処理装置を実現することが可能となる。
【0027】
発明においては、第のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路において酸洗処理及び第1潤滑被覆処理をそれぞれ施し、第2のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路において酸洗処理を施した後、閉路状搬送路に併設された開路状搬送路に移し、該開路状搬送路において第2潤滑被覆処理を施すこととしたので、処理工程における待機状態の発生を防止することができ、異なる処理パターンが要求されるコイル状線材を効率良く一括処理することができ、ランダム投入の実現が可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
<実施の形態1>
図1は実施の形態1に係るコイル状線材処理装置の平面配置図である。図10において説明した閉路状搬送路を備えた従来のループ式搬送処理装置と共通する部分には同一の符号を付している。100は閉路状搬送路であり、天井等に固定配置される図示しないループ状搬送レール及び閉路用搬送機を備える。閉路状搬送路100に沿って投入部1、湯洗部2、塩酸処理部3、4、5、回転部6、塩酸処理部7、8、9、高圧水洗部10、水洗部11、中和部12、燐酸塩処理部13、14、湯洗部15、中和部16、ステアリン酸塩処理部17、取り出し部20が順次配置されている。閉路状搬送路100に沿ってさらに中和部12と燐酸塩処理部13との間に移載部21が配置され、中和部16とステアリン酸塩処理部17との間に移載部22が配置されている。なお、矢符100aは閉路用搬送機の走行方向を示す。
【0029】
150は開路状搬送路であり、天井等に固定配置される図示しない直線状搬送レール及び開路用搬送機を備える。開路状搬送路150に沿って移載部22、移載部21、吊具台23、石灰石鹸処理部24、乾燥部25、26、27、取り出し部28が順次配置されている。両方向矢符150aは開路用搬送機の走行方向を示し、開路用搬送機は開路状搬送路150において往復移動が可能な構成とされている。
【0030】
湯洗部2乃至ステアリン酸塩処理部17の各処理部は、閉路状搬送路100と交差する方向に長手方向を有する処理槽を備えることから、閉路状搬送路100は従来のループ式搬送処理装置に比較して短くすることができ、各処理部の全体の配置長さLiは、例えば、35〜40メートルと従来の約6割程度に抑えることができる。また、石灰石鹸処理部24乃至乾燥部27の各処理部も、開路状搬送路150と交差する方向に長手方向を有する処理槽を備える構成として、開路状搬送路150に沿って配置される各処理部の全体の配置長さを短くすることができる。
【0031】
被処理物であるコイル状線材は搬送処理装置の外部から、ハンガー台車1aを介して投入部1へ投入され、閉路用搬送機により、閉路用搬送機の走行方向100aに搬送され、湯洗部2乃至ステアリン酸塩処理部17の各処理部において所定の処理を施される。所定の処理を終了したコイル状線材は、ハンガー台車20aを介して取り出し部20から搬送処理装置の外部へ取り出される。また、閉路状搬送路100に対応する処理部のみによる処理とは異なる処理パターンを有する被処理物の処理においては、移載部21又は移載部22において閉路状搬送路から開路状搬送路へ移載され、石灰石鹸処理部24、乾燥部25、26、27において所定の処理を施される。開路状搬送路において所定の処理を終了したコイル状線材は、ハンガー台車28aを介して取り出し部28から搬送処理装置の外部へ取り出される。
【0032】
なお、各処理部の配置は例示であり、これに限るものではない。例えば、ステアリン酸塩処理部17と取り出し部20との間にさらに別途乾燥部を設けることも可能であり、塩酸処理部(3、4、…)を処理対象に応じてさらに増加することも可能である。また、塩酸処理は適宜硫酸処理等の他の酸による処理に置き換えることも可能である。さらに、ステアリン酸塩処理部17を開路状搬送路150に沿って配置し、石灰石鹸処理部24を閉路状搬送路100に沿って配置する構成としても良い。
【0033】
湯洗部2において湯洗が、塩酸処理部3、4、5及び塩酸処理部7、8、9において塩酸処理がそれぞれ行われる。回転部6において回転が行われる。回転はコイル状線材と図示しない吊具との接触位置を変え、コイル状線材の全体に対して均一な塩酸処理をするために行われ、コイル状線材を例えば90度乃至180度程度の適宜の角度で円周方向に回転するものである。高圧水洗部10において高圧水洗が、水洗部11において水洗が、中和部12において中和がそれぞれ行われる。燐酸塩処理部13、14において燐酸塩処理が、湯洗部15において湯洗が、中和部16において中和が、ステアリン酸塩処理部17においてステアリン酸塩処理がそれぞれ行われる。石灰石鹸処理部24において石灰石鹸処理が、乾燥部25、26、27において乾燥がそれぞれ行われる。
【0034】
実施の形態1に係るコイル状線材処理装置において、第1処理パターンTP1、第2処理パターンTP2、第3処理パターンTP3(図11参照)の場合の処理は次のようになる。第1処理パターンTP1の処理工程は被処理物であるコイル状線材が投入部1に投入された後、順次、湯洗(湯洗部2)→塩酸処理(塩酸処理部3、4、5)→回転(回転部6)→塩酸処理(塩酸処理部7、8、9)→高圧水洗(高圧水洗部10)→水洗(水洗部11)→燐酸塩処理(燐酸塩処理部13、14)→湯洗(湯洗部15)→中和(中和部16)→ステアリン酸塩処理(ステアリン酸塩処理部17)の各処理を施され、取り出し部20から外部へ取り出す工程により構成される。この際、移載部21、22は単にコイル状線材が通過するのみであり、コイル状線材を開路状搬送路150へ移載する必要は無い。
【0035】
第2処理パターンTP2の処理工程は投入部1に投入された後、順次、湯洗(湯洗部2)→塩酸処理(塩酸処理部3、4、5)→回転(回転部6)→塩酸処理(塩酸処理部7、8、9)→高圧水洗(高圧水洗部10)→水洗(水洗部11)→燐酸塩処理(燐酸塩処理部13、14)→湯洗(湯洗部15)→中和(中和部16)→閉路状搬送路100から開路状搬送路150への移載(移載部22)→石灰石鹸処理(石灰石鹸処理部24)→乾燥(乾燥部25、26、27)の各処理を施され、取り出し部28から外部へ取り出す工程により構成される。この際、移載部21は閉路状搬送路100、開路状搬送路150のいずれにおいてもコイル状線材が単に通過するのみである。
【0036】
第3処理パターンTP3の処理工程は投入部1に投入された後、順次、湯洗(湯洗部2)→塩酸処理(塩酸処理部3、4、5)→回転(回転部6)→塩酸処理(塩酸処理部7、8、9)→高圧水洗(高圧水洗部10)→水洗(水洗部11)→中和(中和部12)→閉路状搬送路100から開路状搬送路150への移載(移載部21)→石灰石鹸処理(石灰石鹸処理部24)→乾燥(乾燥部25、26、27)の各処理を施され、取り出し部28から外部へ取り出す工程により構成される。なお、処理工程、処理内容等は上述の処理パターン等に限られるものではなく、被処理物であるコイル状線材の種類、要求品質等の処理レベル等により適宜変更されるものである。
【0037】
実施の形態1において、閉路状搬送路100に沿って配置された塩酸処理部3、4、5における塩酸処理は第1処理(酸洗処理)に、塩酸処理部3、4、5における処理槽は第1処理槽に、閉路状搬送路100に沿って配置されたステアリン酸塩処理部17におけるステアリン酸塩処理は第2処理(第1潤滑被覆処理)に、ステアリン酸塩処理部17における処理槽は第2処理槽に、開路状搬送路150に沿って配置された石灰石鹸処理部24における石灰石鹸処理は第3処理(第2潤滑被覆処理)に、石灰石鹸処理部24における処理槽は第3処理槽に、それぞれ相当する。
【0038】
つまり、全ての処理パターンに共通する酸洗処理及び異なる2種類の潤滑被覆処理の内の一方の潤滑被覆処理を閉路状搬送路100に沿って配置した処理槽において処理し、2種類の潤滑被覆処理の内の他方の潤滑被覆処理を開路状搬送路150に沿って配置した処理槽において処理することにより、異なる処理パターンが適用される複数の被処理物を連続的に処理する場合においても処理工程の途中における待機状態の発生を防止でき、処理パターンに関係の無いランダム投入が可能となる。
【0039】
例えば先に処理するコイル状線材に対して第1処理パターンTP1の処理を施し、後に処理するコイル状線材に対して第3処理パターンTP3の処理を施す場合において、先に処理されるコイル状線材がステアリン酸塩処理部17においてステアリン酸塩処理を施されている時に、後に処理されるコイル状線材は移載部21を介して開路状搬送路150に移載し、開路状搬送路150に沿って配置された石灰石鹸処理部24において石灰石鹸処理を施すことができるので、後に処理されるコイル状線材は待機状態となることは無い。つまり、後に処理されるコイル状線材においては処理工程の途中において従来技術のような待機時間が発生することは無く、錆が生じることはない。
【0040】
第1処理パターンTP1と第2処理パターンTP2とが連続する場合においても同様である。先に処理されるコイル状線材がステアリン酸塩処理部17においてステアリン酸塩処理を施されている時に、後に処理されるコイル状線材は移載部22を介して開路状搬送路150に移載し、開路状搬送路150に沿って配置された石灰石鹸処理部24において石灰石鹸処理を施すことができるので、後に処理されるコイル状線材は待機状態となることは無い。つまり、後に処理されるコイル状線材においては処理工程の途中において従来技術のような待機時間が発生することは無く、錆が生じることはない。
【0041】
図2は図1に示すコイル状線材処理装置における投入部及び取り出し部を矢符AA方向の側面から示す動作説明図である。閉路状搬送路100の部分を構成するループ状搬送レール101に対応する下部に投入部1及び取り出し部20が配置される。ループ状搬送レール101は、例えば天井200に固着される。ループ状搬送レール101には、閉路用搬送機102が懸架され、ループ状搬送レール101に従って走行方向100aに自動走行する。閉路用搬送機102には自動走行用の電源、制御部等が搭載される。閉路用搬送機102には吊具昇降手段103が垂下状に設けられ、その先端には吊具104を備える。吊具104は被処理物であるコイル状線材50を吊り上げるための吊具先端部105を備える。吊具104(及び吊具先端部105)は閉路用搬送機102の走行方向100aと交差する方向にコイル状線材50を吊して保持するように構成される。つまり、吊具104の長手方向は走行方向100aと交差する方向に配置される。交差角度としては90度が望ましいがこれに限るものではない。なお、吊具104は吊具先端部105を含め、その形状からCフックと呼ばれる。
【0042】
投入部1及び取り出し部20にはハンガー台車1a及びハンガー台車20aが配置される。ハンガー台車1aは対(2本)の支柱1aaを備え、支柱1aaの上部にはコイル状線材50を吊して保持できるように構成された台車ハンガー部1abが配置される。ハンガー台車20aも同様に支柱20aa、台車ハンガー部20abを備える。図において、ハンガー台車1aはコイル状線材50を保持した状態を示し、ハンガー台車20aはコイル状線材50を保持しない状態を示す。
【0043】
投入部1に対応する位置で、閉路用搬送機102から吊具先端部105(二点鎖線)は台車ハンガー部1abと高さが整合する位置まで下降する(矢符S1)。次に、コイル状線材50を保持したハンガー台車1aは吊具先端部105の方へ移動し(矢符S2)、吊具先端部105を支柱1aa(台車ハンガー部1ab)の間に挿入配置する。挿入配置した状態で、吊具先端部105を少し吊り上げることにより、コイル状線材50を台車ハンガー部1abから吊具先端部105へ移載する。移載後、ハンガー台車1aはさらに移動し(矢符S3)、吊具先端部105(コイル状線材50)から引き出して分離する。その後、吊具先端部105は上昇し(矢符S4)、コイル状線材50(二点鎖線)の投入を完了する。なお、ハンガー台車1aは元の位置へ戻す(矢符S5)。
【0044】
取り出し部20に対応する位置で、コイル状線材50を保持した吊具先端部105(二点鎖線)は台車ハンガー部20abと高さが整合する位置まで下降する(矢符S6)。次に、ハンガー台車20aは吊具先端部105の方へ移動し(矢符S7)、吊具先端部105を支柱20aa(台車ハンガー部20ab)の間に挿入配置する。挿入配置した状態で、吊具先端部105をさらに少し下げることにより、コイル状線材50を吊具先端部105から台車ハンガー部20abへ移載する。移載後、ハンガー台車20aは元の位置へ移動し(矢符S8)、吊具先端部105からハンガー台車20a(コイル状線材50)を分離する。その後、吊具先端部105を上昇させ(矢符S9)、コイル状線材50の取り出しを完了する。取り出したコイル状線材50は適宜フォークリフト等を利用して次の処理装置へ移送する。
【0045】
図3は図1に示すコイル状線材処理装置における塩酸処理部を矢符BB方向の側面から示す動作説明図である。図1、図2等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。ループ状搬送レール101に対応する下部に塩酸処理用の処理槽8bを備える塩酸処理部8が配置される。コイル状線材50(二点鎖線)を保持した吊具先端部105(二点鎖線)は、処理槽8bに対応する位置で下降し、処理槽8bの液面8baを有する塩酸中にコイル状線材50を浸漬し塩酸処理を施す。この塩酸処理の間、吊具104は図示しない支持部により支持され、吊具先端部105の下側部分(コイル状線材50を係止する部分)及びコイル状線材50のみが塩酸中に浸漬するように構成される。塩酸処理部8に対応して周囲にはフード106が配置され、塩酸の拡散を防止し、塩酸ガス等を図示しないダクトへ導出する。所定時間の塩酸処理を終了した吊具先端部105(実線)は上昇し元の位置(二点鎖線)に戻り、閉路用搬送機102により次の処理部へ搬送される。
【0046】
図4は図1に示すコイル状線材処理装置における移載部を矢符CC方向の側面から示す動作説明図である。図1乃至図3等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。移載部21は、閉路状搬送路100の部分を構成するループ状搬送レール101に対応する下部及び開路状搬送路150の部分を構成する直線状搬送レール151に対応する下部に渡って配置される。移載部21は、ハンガー台車21aを備え、ハンガー台車21aがループ状搬送レール101に対応する下部及び直線状搬送レール151に対応する下部を往復でき、コイル状線材50を移載できる構成とされる。直線状搬送レール151はループ状搬送レール101と同様に例えば天井200に固着される。直線状搬送レール151には、例えばクレーンで構成される開路用搬送機152が懸架される。開路用搬送機152は走行方向150a(図1参照)において往復移動をする構成とされる。開路用搬送機152は、吊具昇降手段153を備え、吊具昇降手段153の先端には取り外し可能な吊具154を備える。吊具154はコイル状線材50を吊り上げるための吊具先端部155を備える。吊具154(及び吊具先端部155)は開路用搬送機152の走行方向150aと交差する方向にコイル状線材50を吊して保持するように構成される。つまり、吊具154の長手方向は走行方向150aと交差する方向に配置される。交差角度としては90度が望ましいがこれに限るものではない。なお、吊具154は吊具先端部155を含め、その形状からCフックと呼ばれる。
【0047】
ハンガー台車21aはハンガー台車1a等と同様に支柱21aa、台車ハンガー部21abを備える。ハンガー台車21aが吊具先端部105の位置へ移動し、コイル状線材50を吊具先端部105から台車ハンガー部21abへ移載する。コイル状線材50を移載したハンガー台車21aはさらに吊具先端部155の位置へ移動し、コイル状線材50を台車ハンガー部21abから吊具先端部155へ移載する。この移載方法の細部は図2において説明した方法と基本的には同様である。
【0048】
図5は図1に示すコイル状線材処理装置における石灰石鹸処理部を矢符DD方向の側面から示す動作説明図である。図1乃至図4等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。直線状搬送レール151に対応する下部に石灰石鹸処理用の処理槽24bを備える石灰石鹸処理部24が配置される。コイル状線材50(二点鎖線)を保持した吊具先端部155(二点鎖線)は、処理槽24bに対応する位置で下降し、処理槽24bの液面24baを有する石灰石鹸中にコイル状線材50を浸漬し石灰石鹸処理を施す。この石灰石鹸処理の間、吊具154は図示しない支持部により支持され、吊具先端部155の下側部分(コイル状線材50を係止する部分)及びコイル状線材50のみが石灰石鹸中に浸漬するように構成される。石灰石鹸処理部24に対応して周囲にはフード156が配置され、石灰石鹸の飛散を防止し、排ガス等を図示しないダクトへ導出する。所定時間の石灰石鹸処理を終了した吊具先端部155(実線)は上昇し元の位置(二点鎖線)に戻り、開路用搬送機152により次の処理部へ搬送される。
【0049】
図6は図1に示すコイル状線材処理装置における取り出し部を矢符EE方向の側面から示す動作説明図である。同図(a)は取り出し部28に搬送されたコイル状線材50の状態を示し、同図(b)は取り出し部28からコイル状線材50を取り出した上体を示す。図1乃至図5等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。直線状搬送レール151に対応する下部に取り出し部28が配置され、取り出し部28にはハンガー台車28aが配置される。ハンガー台車28aはハンガー台車1a等と同様に支柱28aa、台車ハンガー部28abを備える。参考に隣接する処理部である乾燥部27の処理槽27b及び乾燥部27に対応するフード156を示す。取り出し部28へ搬送されたコイル状線材50は表面処理をすべて終了しており化学的な処理はしないことからフード及び処理槽を特に備える必要はない。
【0050】
取り出し部28に対応する位置で、コイル状線材50を保持した吊具先端部155は台車ハンガー部28abと高さが整合する位置まで下降する。ハンガー台車28aが吊具先端部155の位置へ移動し(矢符S10)、コイル状線材50を吊具先端部155から台車ハンガー部28abへ移載する(同図(a))。コイル状線材50を移載したハンガー台車28aはさらに移動し(矢符S11)、取り出し部28(吊具先端部155)からハンガー台車28a(コイル状線材50)を分離し、コイル状線材50の取り出しを完了する。その後、吊具154は上昇する(同図(b))。この移載方法の細部は図2において説明した方法と基本的には同様である。
【0051】
図7は図1に示すコイル状線材処理装置における投入部から高圧水洗部までを矢符FF方向の側面から示す動作説明図である。図1乃至図6等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。ループ状搬送レール101は閉路用搬送機102を懸架し、閉路用搬送機102は吊具昇降手段103を介して吊具104を昇降可能に保持する。吊具先端部105にはコイル状線材50が保持される。吊具104(吊具先端部105)は投入部1において投入されたコイル状線材50に対し、図中矢印で示すように、上昇移動、搬送(水平移動)、下降移動の操作を繰り返すことにより各処理部(湯洗部2乃至高圧水洗部10)における所定の処理を施す。全ての処理部(湯洗部2乃至高圧水洗部10)に対応する台数の閉路用搬送機102を備え、空いている処理部を無くした場合を示す。閉路用搬送機102の台数は処理時間、処理量等を考慮し適宜決定すればよく、このような配置に限るものではない。各処理部(湯洗部2乃至高圧水洗部10)にはそれぞれ所定の処理に必要な処理槽2b乃至10bが配置される。
【0052】
図8は図1に示すコイル状線材処理装置における移載部から取り出し部までを矢符GG方向の側面から示す動作説明図である。図1乃至図7等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。直線状搬送レール151にクレーンで構成される開路用搬送機152(図4参照)が懸架され、走行する。ここでは2台の開路用搬送機152a、152bが使用される例を示す。開路用搬送機152aは吊具台23に係止されて待機状態の吊具154を吊り上げ、移載部21(矢符S20)又は移載部22(矢符S21)へ移動する。開路用搬送機152a(A)は移載部21へ移動した状態を、開路用搬送機152a(B)は移載部22へ移動した状態をそれぞれ示す。開路用搬送機152aは移載部21又は移載部22においてハンガー台車21a又はハンガー台車22aからコイル状線材50を吊具154へ移載した後、石灰石鹸処理部24に対応する位置まで走行移動(矢符S22、矢符S23)し、コイル状線材50を搬送する。開路用搬送機152a(C)は石灰石鹸処理部24へ移動した状態を示す。石灰石鹸処理部24へ搬送されたコイル状線材50は処理槽24bへ浸漬され、石灰石鹸処理を施される。石灰石鹸処理部24において、吊具154は図示しない支持部により支持され、開路用搬送機152aと吊具154とは分離可能であるから、開路用搬送機152aは元の位置へ単独で戻ることができる。つまり、開路用搬送機152aは移載部22と石灰石鹸処理部24との間を往復移動することができる。
【0053】
開路用搬送機152bは石灰石鹸処理を終了したコイル状線材50を吊具154と共に吊り上げる。開路用搬送機152b(A)は、石灰石鹸処理部24においてコイル状線材50を吊り上げる直前の状態を示す。開路用搬送機152bは吊り上げたコイル状線材50を搬送し(矢符S24)、乾燥部25の処理槽25bへ配置する。開路用搬送機152b(B)は搬送直後の状態を示す。石灰石鹸処理部24が処理槽24bを一つしか持たないのに対し、乾燥部25、26、27は計3つの処理槽25b、26b、27bを持っている。乾燥に必要な時間は石灰石鹸処理に必要な時間に比較して長いためであり、開路用搬送機152bによるコイル状線材50の搬送は処理部25、26、27の内いずれか空いている所に対して行われる。開路用搬送機152bは乾燥を終了したコイル状線材50を吊具154と共に乾燥用の処理槽25bから吊り上げ、取り出し部28へ搬送する(矢符S25)。開路用搬送機152b(C)はコイル状線材50を取り出し部28へ搬送した状態を示す。ハンガー台車28a(A)は移載前の状態を示す。吊具154からハンガー台車28aへコイル状線材50を移載した開路用搬送機152bは、コイル状線材50をハンガー台車28aへ移載して空きになった吊具154を吊具台23へ戻す(矢符S26)。乾燥部25、26、27において、吊具154は図示しない支持部により支持され、開路用搬送機152bと吊具154とは分離可能であるから、開路用搬送機152bは元の位置へ単独で戻ることができる。つまり、開路用搬送機152bは吊具台23と取り出し部28との間を往復移動することができる。乾燥部26、27におけるコイル状線材50及び吊具154は、開路用搬送機152bから分離されている状態を示す。コイル状線材50を移載されたハンガー台車28a(B)は適宜搬送処理装置の外部へ適宜移動される。
【0054】
石灰石鹸処理部24及び乾燥部25、26、27を開路状搬送路150において処理することにより、閉路状搬送路100における閉路用搬送機102は開路状搬送路150において必要な開路状搬送機152(あるいは吊具154)の台数以上の台数を削減でき、設備費を低減できる。また、閉路状搬送路100における待機状態の発生を解消できることから、処理能率が向上し、実質的に閉路用搬送機102の台数をさらに低減できる。
【0055】
開路状搬送路150において利用する吊具154は、吊具台23を備えることから、開路状搬送路150において循環使用が可能であり、吊具154が搬送処理装置の外部へ搬送されてしまうという従来の開路状搬送路を用いた搬送処理装置の問題も生じない。また、吊具台23を備えることにより必要な開路状搬送機152の台数は2台以内に抑えることができる。
【0056】
<実施の形態2>
図9は、本発明の実施の形態2に係るコイル状線材処理装置の平面配置図である。図1乃至図8等と同一の部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。実施の形態1の移載部22を除外し、移載部は移載部21のみとし、移載部22の所にステアリン酸処理部17を配置し、ステアリン酸処理部17の次に石灰石鹸処理部18を配置したものである。第1処理パターンTP1、第2処理パターンTP2、第3処理パターンTP3(図11参照)の処理比率が特殊な場合に適用可能である。つまり、第2処理パターンTP2による被処理物であるコイル状線材の比率が第1処理パターンTP1及び第3処理パターンTP3による被処理物であるコイル状線材の比率に比較して小さい場合に適用することが可能である。第1処理パターンTP1及び第2処理パターンTP2を閉路状搬送路100において処理し、第3処理パターンTP3のみを閉路状搬送路100における移載部21以降の処理を開路状搬送路150において施すものである。
【0057】
第2処理パターンTP2による被処理物の比率が小さいことから、移載部22を廃止して設備費を削減することができる。実施の形態2に係る搬送処理装置において、第1処理パターンTP1による被処理物の後に第2処理パターンTP2による被処理物を投入する場合、待機状態が発生することから投入タイミングを調整する必要があるが、第2処理パターンTP2による被処理物の比率が小さいことから作業者が適宜調整することにより対応可能である。なお、石灰石鹸処理部18と取り出し部20との間に乾燥部を設けても良いが、乾燥は搬送処理装置の外部に取り出して、フォークリフト等により開路状搬送路150に配置された乾燥部23乃至25へ搬送して処理することも可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、第1発明にあっては、閉路状搬送路と開路状搬送路とを併設して、共通する酸洗処理は閉路状搬送路において実施し、第1潤滑被覆処理は閉路状搬送路において、第2潤滑被覆処理は開路状搬送路においてそれぞれ実施するから、異なる処理パターンを有するコイル状線材を待機状態生じずに効率良く処理することができ、異なる処理パターンを有するコイル状線材のランダム投入が可能となり、待機状態のもとでの再発錆が無く、再発錆による品質不良の問題が生じない。したがって、高能率、高稼働率、高酸洗品質が得られるコイル状線材処理装置を実現できる。
【0059】
第2発明にあっては、第2潤滑被覆処理を実施する開路用搬送路に最低1台の開路用搬送機があればよく、コイル状線材処理装置全体としての搬送機の台数を削減することが可能となる。
【0060】
第3発明にあっては、コイル状線材の伸線加工前の前処理がより効率的、経済的になり、前処理における処理パターンの相違によるコイル状線材の品質低下を防止できる。
【0061】
発明にあっては、閉路用搬送路の長さを短くすることができ、コイル状線材処理装置の設置面積を小さくでき、建設費を低減することが可能となる。また、閉路用搬送機及び吊具の構成により、装置高さも低減することができる。
【0062】
発明にあっては、第1のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路において酸洗処理及び第1潤滑被覆処理をそれぞれ施し、第2のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路において酸洗処理を、閉路状搬送路に併設された開路状搬送路において第2潤滑被覆処理をそれぞれ施すこととしたので、異なる処理を必要とする第1,第2のコイル状線材を待機状態を発生せずに処理することができ、処理の効率化を実現し、第1,第2のコイル状線材のランダム投入が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係るコイル状線材処理装置の平面配置図である。
【図2】 図1に示すコイル状線材処理装置における投入部及び取り出し部を矢符AA方向の側面から示す動作説明図である。
【図3】 図1に示すコイル状線材処理装置における塩酸処理部を矢符BB方向の側面から示す動作説明図である。
【図4】 図1に示すコイル状線材処理装置における移載部を矢符CC方向の側面から示す動作説明図である。
【図5】 図1に示すコイル状線材処理装置における石灰石鹸処理部を矢符DD方向の側面から示す動作説明図である。
【図6】 図1に示すコイル状線材処理装置における取り出し部を矢符EE方向の側面から示す動作説明図である。
【図7】 図1に示すコイル状線材処理装置における投入部から高圧水洗部までを矢符FF方向の側面から示す動作説明図である。
【図8】 図1に示すコイル状線材処理装置における移載部から取り出し部までを矢符GG方向の側面から示す動作説明図である。
【図9】 本発明の実施の形態2に係るコイル状線材処理装置の平面配置図である。
【図10】 閉路状搬送路を備えた従来のループ式搬送処理装置の平面配置図である。
【図11】 処理パターンの例を示す図表である。
【符号の説明】
1 投入部
1a、20a、28a ハンガー台車
2、15 湯洗部
3、4、5、7、8、9 塩酸処理部
6 回転部
10 高圧水洗部
11 水洗部
12、16 中和部
13、14 燐酸塩処理部
17 ステアリン酸塩処理部
18 石灰石鹸処理部
20 取り出し部
21、22 移載部
23 吊具台
24 石灰石鹸処理部
25、26、27 乾燥部
28 取り出し部
50 コイル状線材
100 閉路状搬送路
100a、150a 走行方向
101 ループ状搬送レール
102 閉路用搬送機
103 吊具昇降手段
104、154 吊具
105、155 吊具先端部
150 開路状搬送路
151 直線状搬送レール
152 開路用搬送機
153 吊具昇降手段

Claims (5)

  1. コイル状線材を搬送するための閉路状搬送路と、搬送されるコイル状線材に対して表面処理を施すための処理槽とを備えるコイル状線材処理装置において、
    前記閉路状搬送路に沿って配置されており、コイル状線材に酸洗処理を施すための第1処理槽及び酸洗処理したコイル状線材に第1潤滑被覆処理を施すための第2処理槽と、
    前記第1処理槽及び第2処理槽の間に配置されており、酸洗処理したコイル状線材を閉路状搬送路から取り出すための移載部と、
    該移載部から延在し、取り出したコイル状線材を搬送するための開路状搬送路と、
    該開路状搬送路に沿って配置されており、搬送されるコイル状線材に前記第1潤滑被覆処理とは異なる第2潤滑被覆処理を施すための第3処理槽と
    を備えることを特徴とするコイル状線材処理装置。
  2. 前記開路状搬送路を往復移動し、前記移載部から前記第3処理槽へコイル状線材を搬送する開路用搬送機と、前記第3処理槽で処理されたコイル状線材を開路状搬送路から取り出すため取り出し部とを備えることを特徴とする請求項1記載のコイル状線材処理装置。
  3. 前記第1潤滑被覆処理はステアリン酸塩処理であり、第2潤滑被覆処理は石灰石鹸処理であることを特徴とする請求項1又は2記載のコイル状線材処理装置。
  4. 前記閉路状搬送路を構成するループ状搬送レールと、該ループ状搬送レールの下方に配置される前記第1処理槽及び第2処理槽と、前記ループ状搬送レールに懸架されて自動走行する閉路用搬送機と、該閉路用搬送機により昇降可能に保持される吊具とを備え、該吊具は前記閉路用搬送機の走行方向と交差する方向においてコイル状線材を保持する構成としてあることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のコイル状線材処理装置。
  5. 酸洗処理及び第1潤滑被覆処理を施すべき第1のコイル状線材と、酸洗処理及び第2潤滑被覆処理を施すべき第2のコイル状線材とを搬送処理するコイル状線材処理方法において、
    前記第1のコイル状線材に対しては、閉路状搬送路に沿って配置された第1処理槽において酸洗処理を、閉路状搬送路に沿って配置された第2処理槽において第1潤滑被覆処理をそれぞれ施し、
    前記第2のコイル状線材に対しては、前記第1処理槽において酸洗処理を、前記閉路状搬送路に併設された開路状搬送路に沿って配置された第3処理槽において第2潤滑被覆処理をそれぞれ施すことを特徴とするコイル状線材処理方法。
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