JP4200666B2 - 駆動装置およびその運転制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動装置に関し、入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、この自動変速機の入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、自動変速機の入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置に関する。また、そのような駆動装置の運転制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の駆動装置としては、内燃機関と無段変速機と発電電動機とをプラネタリギヤを用いて接続したものが提案されている(例えば、特開平9−37411号公報など)。この駆動装置では、プラネタリギヤのリングギヤに内燃機関を、サンギヤに発電電動機を、キャリアに変速機を各々連結し、駆動軸へ要求された要求出力とは運転ポイントは異なるが同一の出力を行なう運転ポイントで内燃機関を運転すると共にこの内燃機関からの出力を発電電動機の回転数制御と無段変速機のトルク比制御とによって要求出力として駆動軸に出力する。また、この駆動装置では、サンギヤとリングギヤとキャリアとを一体として回転させるクラッチを備え、このクラッチを接続状態とすることにより、内燃機関の出力軸と無段変速機の入力軸とを連結して内燃機関の出力を無段変速機による変速を介して直接駆動軸に出力すると共に発電電動機を発電させて二次電池を充電できるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内燃機関の出力軸と発電電動機の回転軸と無段変速機の入力軸とが一体となるように接続した状態では、目標とする動力と発電電動機の発電に必要な電力との和が内燃機関の出力になるが、通常、燃費を良くすることを考慮して内燃機関の回転数が小さくなるように設定されているため内燃機関の出力トルクが大きくなり、発電電動機が発電するのに必要なトルクの絶対値が大きくなる。このトルクの絶対値が大きいと、発電電動機に流れる電流が多くなり、その電流の2乗に比例して銅損が発生するため発熱量が多くなる。発電電動機は温度上昇に伴い効率が低下するため、このような温度上昇を放置した場合には、装置全体の効率低下を招くおそれがある。
【0004】
本発明は上記問題点を解決することを課題とするものであり、発電電動機の過熱を防止できる駆動装置およびその運転制御方法を提供することを目的とする。なお、出願人は、2つのモータを用いて内燃機関からの動力をトルク変換して駆動軸に出力する装置であって、モータの温度が所定温度以上であるときにはその温度上昇を抑えるために内燃機関の運転ポイントを変更するものを提案している(特願平9−224316号)。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上述の目的を達成する本発明の駆動装置は、
入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、前記入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、前記入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置であって、
前記駆動軸が目標駆動状態となり前記発電電動機が目標作動状態となるよう前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を制御しつつ、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する運転制御手段
を備えることを要旨とする。
【0006】
この駆動装置では、駆動軸が目標駆動状態となり発電電動機が目標作動状態となるように内燃機関、発電電動機および自動変速機を制御しつつ、発電電動機の温度に応じて自動変速機の変速比を変化させることにより、発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないように制御するから、発電電動機の過熱を防止できる。ここで、駆動軸に関して「駆動状態」とは、トルクと回転数の組み合わせを意味し、発電電動機に関して「作動状態」とは、発電機として又は電動機として作動している双方の状態を意味する。「発電電動機の温度」とは、発電電動機の駆動回路の温度も含む意であり、発電電動機そのものの温度に限定されるものではなく、また、発電電動機の温度を直接的に検出してもよいが、別のパラメータ(例えば発電電動機の冷却媒体温度、発電電動機の周辺機器の温度またはその機器の冷却媒体温度の温度など)から発電電動機の温度を推定してもよい。また、「許容限界温度」とは、例えば発電電動機の特性や作動効率等を加味して定められた上限温度である。
【0007】
本発明の駆動装置において、前記内燃機関の出力軸は、前記入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能であり、前記発電電動機の回転軸は、前記入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能であり、前記運転制御手段は、前記自動変速機の入力軸、前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸が滑りを伴わない機械的な接続状態のときに、前記駆動軸が目標駆動状態となり前記発電電動機が目標作動状態となるよう前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を制御しつつ、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するように構成してもよい。このような直結走行時つまり自動変速機の入力軸、内燃機関の出力軸及び発電電動機の回転軸が滑りを伴わない機械的な接続状態のときには、自動変速機の変速比制御により内燃機関の動作点を最適燃費曲線上に制御することが可能となるが、このようなときに発電電動機の過熱を防止できるため、装置全体の効率低下を招くことがない。なお、「滑りを伴わない機械的な接続が可能」には、クラッチやブレーキなどの接続機構の操作を伴って滑りを伴わない機械的な接続を行うことができるものも含まれる意であり、滑りを伴わない機械的な接続が常になされているものに限定されない。
【0008】
本発明の駆動装置において、前記発電電動機の温度を検出する温度検出手段を備え、前記運転制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。
【0009】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機が発電状態のときに前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を変化させてもよい。例えば、発電電動機が電動して内燃機関をアシストしていたとしても、通常、そのアシスト時間は発電電動機が過熱するほど長くはないため過熱のおそれは少ないのに対して、発電電動機が発電して電池を充電している場合には充電に長時間を要することがあるため過熱のおそれがある。したがって、発電電動機が発電状態のときには本発明を適用する必要性が高い。
【0010】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度が前記許容限界温度に近づいたときに前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。もちろん発電電動機の温度に応じて常に自動変速機の変速比を制御してもよいが、その温度が発電電動機の許容限界温度に近づいたときに発電電動機の温度に応じて自動変速機の変速比を制御しても発電電動機の過熱を防止できる。
【0011】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機の温度に応じて前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。こうすれば、駆動軸回転数と自動変速機の入力軸の目標回転数とから自動変速機の変速比を求めることができる。ここで、「入力軸の目標回転数に基づいて」とは、実質的に自動変速機入力軸の目標回転数と同一視できるパラメータに基づく場合を含む意であり、自動変速機入力軸の目標回転数以外のパラメータ(例えば内燃機関や発電電動機の目標回転数あるいは内燃機関や発電電動機や自動変速機入力軸の目標トルク)であってもそのパラメータが決まれば一義的に自動変速機入力軸の回転数が決まるのであればそのようなパラメータに基づく場合も含まれる。
【0012】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機が目標電力を出力するにあたって前記発電電動機の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるように前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。こうすれば、発電電動機の温度が高いほど自動変速機の入力軸に接続された発電電動機の回転軸のトルク絶対値が小さくなり、発電電動機の発熱が抑制される。
【0013】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。発電電動機は冷却媒体によって冷却されるため、発電電動機の過熱防止をより確実に行うには、発電電動機の温度のほかに冷却媒体の温度を加味したうえで自動変速機の変速比を制御することが好ましい。この場合、前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度を検出する媒体温検出手段を備え、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記媒体温検出手段により検出された前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。但し、媒体温として他のパラメータ値に基づいて算出した推定値を用いてもよい。
【0014】
ここで、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機の温度及び前記冷却媒体の温度に応じて前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。こうすれば、駆動軸回転数と自動変速機の入力軸の目標回転数とから自動変速機の変速比を求めることができる。また、発電電動機の温度のほかに冷却媒体の温度を加味した上で自動変速機の変速比を制御するため、発電電動機の過熱防止をより確実に行うことができる。
【0015】
また、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を変化させるに際し、前記発電電動機が目標電力を出力するにあたって前記発電電動機の温度が高いほど又は前記冷却媒体の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるように前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御してもよい。こうすれば、発電電動機の温度が高いほど自動変速機の入力軸に接続された発電電動機の回転軸のトルク絶対値が小さくなり、発電電動機の発熱が抑制される。また、発電電動機の温度のほかに冷却媒体の温度を加味した上で自動変速機の変速比を制御するため、発電電動機の過熱防止をより確実に行うことができる。
【0016】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記入力軸の目標回転数が前記自動変速機の変速比の最大値と前記駆動軸の実回転数とから得られる上限目標回転数を越えないようにガードをかけるようにしてもよい。こうすれば、入力軸の目標回転数が変速比制御によって達成できない値になることを回避できる。
【0017】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記自動変速機の変速比を制御する一方、前記自動変速機の変速比を制御するだけでは前記許容限界温度を越えるおそれがあるならば前記発電電動機の目標電力を低くしてもよい。こうすれば、自動変速機の変速比だけでは発電電動機の温度が十分下がらないことがあっても、その場合には発電電動機の目標電力を減らすことで更に発電電動機の温度を下げることができるため、発電電動機の過熱をより確実に防止できる。
【0018】
次に、上述の目的を達成する他の本発明の駆動装置は、
入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、前記入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、前記入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置であって、
前記入力軸の回転を停止させる入力軸回転停止手段と、
前記自動変速機の入力軸を前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸から切り離した状態で前記内燃機関の出力軸と前記発電電動機の回転軸とを動力伝達可能に接続する動力伝達手段と、
前記動力伝達手段によって前記自動変速機の入力軸を前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸から切り離した状態で前記内燃機関の出力軸と前記発電電動機の回転軸とを動力伝達可能に接続し、前記入力軸回転停止手段によって前記入力軸の回転を停止させているときに、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御する運転制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0019】
この駆動装置では、自動変速機の入力軸を内燃機関の出力軸および発電電動機の回転軸から切り離した状態で内燃機関の出力軸と発電電動機の回転軸とを動力伝達可能に接続すると共に入力軸の回転を停止させているときに、発電電動機の温度に応じて内燃機関の回転数を変化させることにより発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないように制御するから、駐車時などにおける発電電動機の過熱を防止できる。ここで、「発電電動機の温度」や「許容限界温度」については先に説明したとおりの意である。また、「内燃機関の回転数を制御する」とは、実質的に内燃機関の回転数を変化させるものを含む意であり、内燃機関の回転数以外のパラメータ(例えば発電電動機の回転数あるいは内燃機関や発電電動機のトルク)を変化させる場合であっても、それらのパラメータが決まれば一義的に内燃機関の回転数が決まるのであればそのような場合も含まれる。
【0020】
本発明の駆動装置において、入力軸回転停止手段に代えて又は加えて前記駆動軸を非駆動状態とする非駆動状態制御手段を備え、前記運転制御手段は、前記動力伝達手段によって前記自動変速機の入力軸を前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸から切り離した状態で前記内燃機関の出力軸と前記発電電動機の回転軸とを動力伝達可能に接続し、前記非駆動状態制御手段によって前記駆動軸を非駆動状態としているときに、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御するように構成してもよい。この場合も駐車時などにおける発電電動機の過熱を防止できる。
【0021】
本発明の駆動装置において、前記発電電動機の温度を検出する温度検出手段を備え、前記運転制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御してもよい。
【0022】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記自動変速機がPレンジのときに前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御してもよい。
【0023】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機が発電状態のときに前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を変化させてもよい。発電電動機が発電状態のときには、電動状態のときに比べて長時間を要することがあるため、発電電動機が過熱になるおそれが高く、本発明を適用する必要性が高い。
【0024】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度が前記許容限界温度に近づいたときに前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御してもよい。もちろん発電電動機の温度に応じて常に内燃機関の回転数を制御してもよいが、その温度が発電電動機の許容限界温度に近づいたときに発電電動機の温度に応じて内燃機関の回転数を制御しても発電電動機の過熱を防止できる。
【0025】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御するに際し、前記発電電動機が目標電力を出力するにあたって前記発電電動機の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるように前記内燃機関の目標回転数を求め該目標回転数になるように前記内燃機関の回転数を制御してもよい。こうすれば、発電電動機の温度が高いほど内燃機関の出力軸に接続された発電電動機の回転軸のトルク絶対値が小さくなり、発電電動機の発熱が抑制される。
【0026】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御してもよい。発電電動機は冷却媒体によって冷却されるため、発電電動機の過熱防止をより確実に行うには、発電電動機の温度のほかに冷却媒体の温度を加味したうえで内燃機関の回転数制御を行うことが好ましい。この場合、前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度を検出する媒体温検出手段を備え、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記媒体温検出手段により検出された前記冷却媒体の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御してもよい。但し、媒体温として他のパラメータ値に基づいて算出した推定値を用いてもよい。
【0027】
ここで、前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記内燃機関の回転数を制御するに際し、前記発電電動機が目標電力を出力するにあたって前記発電電動機の温度又は前記冷却媒体の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるように記内燃機関の目標回転数を求め該目標回転数になるように前記内燃機関の回転数を制御してもよい。こうすれば、発電電動機の温度が高いほど内燃機関の出力軸に接続された発電電動機の回転軸のトルク絶対値が小さくなり、発電電動機の発熱が抑制される。また、発電電動機の温度のほかに冷却媒体の温度を加味した上で内燃機関の回転数を制御するため、発電電動機の過熱防止をより確実に行うことができる。
【0028】
本発明の駆動装置において、前記運転制御手段は、前記内燃機関の回転数を制御することにより前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないように制御する一方、前記内燃機関の回転数を制御するだけでは前記許容限界温度を越えるおそれがあるならば前記発電電動機の目標電力を低くしてもよい。こうすれば、内燃機関の回転数制御だけでは発電電動機の温度が十分下がらないことがあっても、その場合には発電電動機の目標電力を減らすことで更に発電電動機の温度を下げることができるため、発電電動機の過熱をより確実に防止できる。
【0029】
次に、上述の目的を達成する他の本発明の駆動装置は、
入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、前記入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、前記入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置であって、
前記発電電動機の温度に応じて前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を複合制御する運転制御手段
を備えることを要旨とする。
【0030】
この駆動装置では、例えば発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう発電電動機の温度に応じて内燃機関、発電電動機および自動変速機を複合制御するようにすれば、走行時や駐車時において発電電動機の過熱を防止できる。ここで、「発電電動機の温度」や「許容限界温度」については先に説明したとおりの意である。
【0031】
本発明の駆動装置において、前記自動変速機は無段変速機としてもよい。また、前記内燃機関の出力軸及び前記発電電動機の回転軸は、それぞれ遊星歯車機構を介して前記自動変速機の入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能となるように構成されていてもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態である車載用の駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。本実施形態の駆動装置20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト24に接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30に接続された発電可能なモータ40と、プラネタリギヤ30に接続されると共にディファレンシャルギヤ64を介して駆動輪66a,66bに接続された自動変速機としてのCVT50と、装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0033】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22のクランクシャフト24には、図示しない補機に供給する電力を発電すると共にエンジン22を始動するスタータモータ26がベルト28により取り付けられている。エンジン22の運転制御、例えば燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などは、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)29により行なわれている。エンジンECU29は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0034】
プラネタリギヤ30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35と備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35とを回転要素として差動作用を行なう。プラネタリギヤ30のサンギヤ31にはエンジン22のクランクシャフト24が、キャリア35にはモータ40の回転軸41がそれぞれ連結されており、エンジン22の出力をサンギヤ31から入力すると共にキャリア35を介してモータ40と出力のやりとりを行なうことができる。キャリア35はクラッチC1により、リングギヤ32はクラッチC2によりCVT50のインプットシャフト51に接続できるようになっており、クラッチC1およびクラッチC2を接続状態とすることにより、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35の3つの回転要素による差動を禁止して一体の回転体、即ちエンジン22のクランクシャフト24とモータ40の回転軸41とCVT50のインプットシャフト51とを一体の回転体とする。なお、プラネタリギヤ30には、リングギヤ32をケース39に固定してその回転を禁止するブレーキB1も設けられている。
【0035】
モータ40は、例えば発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ43を介して二次電池44と電力のやりとりを行なう。モータ40は、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)49により駆動制御されており、モータECU49には、モータ40を駆動制御するために必要な信号や二次電池44を管理するのに必要な信号、例えばモータ40の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ45からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ40に印加される相電流,モータ40の温度を検出するモータ温センサ42からの信号,二次電池44の端子間に設置された電圧センサ46からの端子間電圧,二次電池44からの電力ラインに取り付けられた電流センサ47からの充放電電流,二次電池44に取り付けられた温度センサ48からの電池温度などが入力されており、モータECU49からはインバータ43へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU49では、二次電池44を管理するために電流センサ47により検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算している。なお、モータECU49は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータ40を駆動制御すると共に必要に応じてモータ40の運転状態や二次電池44の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0036】
CVT50は、溝幅が変更可能で入力軸としてのインプットシャフト51に接続されたプライマリープーリー53と、同じく溝幅が変更可能で駆動軸としてのアウトプットシャフト52に接続されたセカンダリープーリー54と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝に架けられベルト55と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更する第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57とを備え、第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57によりプライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更することによりインプットシャフト51の動力を無段階に変速してアウトプットシャフト52に出力する。CVT50の変速比の制御は、CVT用電子制御ユニット(以下、CVTECUという)59により行なわれている。このCVTECU59には、インプットシャフト51に取り付けられた回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数やアウトプットシャフト52に取り付けられた回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数が入力されており、CVTECU59からは第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57への駆動信号が出力されている。また、CVTECU59は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってCVT50の変速比を制御すると共に必要に応じてCVT50の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0037】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数Ninや回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数Nout,シフトレバー80の操作位置を検出するシフトポジションセンサ81からのシフトポジションSP,アクセルペダル82の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ83からのアクセル開度A,ブレーキペダル84の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ85からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ86からの車速V,各ギヤやモータ40やCVT50等の冷却用オイルが入ったオイルパンに取り付けられた油温センサ87からの油温などが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、クラッチC1やクラッチC2への駆動信号やブレーキB1への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0038】
次に、こうして構成された本実施形態の駆動装置20の動作、特にクラッチC1とクラッチC2とを接続状態にしている直結走行時の動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは所定タイミング毎に直結走行時で且つ二次電池充電中(つまりモータ40が発電状態)であれば実行される。
【0039】
この制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ83により検出されるアクセル開度Aや車速センサ86により検出される車速V,回転数センサ61や回転数センサ62により検出されるインプットシャフト51の回転数Ninやアウトプットシャフト52の回転数Nout,モータECU49により演算され通信により入力される二次電池44の残容量(SOC)など制御に必要な信号を読み込む処理を実行する(ステップS100)。続いて、読み込んだアクセル開度Aと車速Vに基づいて駆動軸に要求される駆動のための目標動力Pd*を計算する(ステップS110)。目標動力Pd*の計算は、アクセル開度Aと車速Vを変数として目標動力Pd*を求める関係式を実験などにより求めておき、その関係式を用いて計算するものとしてもよいし、アクセル開度Aと車速Vと目標動力Pd*との関係を実験などにより求めて目標動力マップとして予めROM74に記憶しておき、アクセル開度Aと車速Vとが与えられるとROM74に記憶された目標動力マップから対応する目標動力Pd*を導出するものとしてもよい。続いて、バッテリ残容量SOCに基づいてモータ40に要求される目標電力Pb*を計算する(ステップS120)。そして、目標動力Pd*と目標電力Pb*との和に伝達効率等を考慮して目標エンジン出力Pe*を計算する(ステップS130)。
【0040】
その後、この目標エンジン出力Pe*と目標電力Pb*に応じて、目標エンジントルクTe*や目標インプットシャフト回転数Nin*やモータトルク指令Tm*を設定する(ステップS140)。即ち、目標エンジン出力Pe*を出力可能なエンジン22の運転ポイントのうち燃費が最適となるポイントとなるように目標エンジントルクTe*および目標エンジン回転数Ne*を算出し、また直結走行時であるためエンジン22のクランクシャフト24とモータ40の回転軸41とCVT50のインプットシャフト51は滑りを伴わない機械的な接続がなされているので、目標エンジン回転数Ne*と同値をCVT50の目標インプットシャフト回転数Nin*に設定し、モータ40の目標電力Pb*を目標モータ回転数(=Ne*=Nin*)で除した値をモータ40のトルク指令Tm*に設定する。
【0041】
次いで、モータ温センサ42から入力されるモータ温度および油温センサ87から入力される油温を読み込み(ステップS150)、そのモータ温度および油温に応じて目標インプットシャフト回転数Nin*の補正係数VCVTを求める(ステップS160)。ここで、本ルーチンは直結走行時に実行されることから、インプットシャフト回転数とモータ回転数とエンジン回転数は一致している。このため、目標インプットシャフト回転数Nin*が補正されると結果的にモータ回転数とエンジン回転数も補正される。
【0042】
補正係数VCVTは、例えば次のようにして求めることができる。即ち、予めモータ40について実験などにより動作効率や動作安定性等を考慮して使用可能な上限温度(許容限界温度)を求めると共に、その許容限界温度を越えないようにするためのモータ過熱防止用の目標インプットシャフト回転数補正係数マップを作成する。図3はこのマップの一例である。このマップは、モータ温度と油温(モータ冷却媒体温度)と補正係数VCVTとの関係を定めたものであり、モータ温度が高いほど補正係数VCVTが大きくなるように、また、油温が高いほど補正係数VCVTが大きくなるように定められている。なお、補正係数VCVTは1以上の数値であり、モータ温度と油温の両方とも十分低ければ補正係数VCVTを「1.0」として実質的な補正は行わない。
【0043】
ところで、モータ40に要求される発電量とモータトルクとモータ回転数との関係は、発電量=モータトルク×モータ回転数で表される。このため、同じ発電量を得る場合、モータ回転数を小さくするとモータトルクが大きくなるため発熱量が増加するが、モータ回転数を大きくするとモータトルクが小さくなるため発熱量が減少する。一方、エンジン22の燃費の最適化という観点からすると、エンジン回転数を小さく抑えることが好ましいことから、直結走行時においてはそれに伴ってモータ回転数も小さくなり、その分モータトルクが大きくなってモータの発熱量が増加しやすい。しかし、モータ40の発熱によってモータ40が許容限界温度を越えることは好ましくない。そこで、モータ40が許容限界温度を越えないようにするために、同じ発電量を得るにしても、モータ回転数を大きくし、モータトルクを小さくすることによりモータ40の発熱量を少なくする。ここでモータ回転数を大きくするということは、直結走行時においてはCVT50のインプットシャフト回転数やエンジン回転数を大きくするということに他ならない。したがって、モータ40が許容限界温度を越えるおそれが大きいモータ温度や油温の高いときほど、補正係数VCVTを大きくしてCVT50の目標インプットシャフト回転数Nin*を大きく設定し、モータトルクの絶対値を小さくしてモータ発熱量を抑えるのである。
【0044】
さて、こうして補正係数VCVTを算出したあと、その補正係数VCVTをステップS140で求めた目標インプットシャフト回転数Nin*に乗じた値(Nin*×VCVT)を新たな目標インプットシャフト回転数Nin*とする(ステップS170)。続いて、その目標インプットシャフト回転数Nin*がステップS100で入力したCVT50のアウトプットシャフト回転数NoutにCVT50の変速比の最大値γmaxを乗じた値(Nout×γmax)以下か否かを判定し(ステップS180)、肯定判定ならばステップS200へ進み、否定判定ならばその目標インプットシャフト回転数Nin*では変速比制御ができないことからNout×γmaxを新たな目標インプットシャフト回転数Nin*とするガード処理を行い(ステップS190)、その後ステップS200へ進む。
【0045】
ステップS200では、補正後の目標インプットシャフト回転数Nin*に応じて目標エンジントルクTe*とモータ40のトルク指令Tm*を補正する(ステップS200)。即ち、補正後の目標インプットシャフト回転数Nin*は直結走行時においてはエンジン回転数やモータ回転数の目標値にもなるため、目標エンジン出力Pe*を得るには目標エンジントルクTe*をPe*/Nin*とし、モータ40の目標電力Pb*を得るにはモータ40のトルク指令Tm*をPb*/Nin*とする。その後、このようにして求めた各目標値Te*、Nin*、Tm*を用いてエンジン制御、CVT変速比制御、モータ制御を行い(ステップS210)、本ルーチンを終了する。
【0046】
このステップS210の制御は、具体的には、ハイブリッド用電子制御ユニット70がエンジンECU29に目標トルクTe*を、CVTECU59に目標インプットシャフト回転数Nin*を、モータECU49にトルク指令Tm*を各々制御信号として出力する。すると、エンジン22から目標トルクTe*が出力されるようエンジンECU29がエンジン22の燃料噴射量、点火時期、吸入空気量等を制御し、インプットシャフト51が目標インプットシャフト回転数Nin*で回転するようCVTECU59がCVT50の変速比γをアウトプットシャフト回転数Noutに応じて制御し、モータ40からトルク指令Tm*のトルクが出力されるようモータECU49がモータ40を制御する。
【0047】
以上説明した本実施形態の駆動装置20によれば、直結走行時において、駆動軸であるCVT50のアウトプットシャフト52が目標動力Pd*を出力しモータ40が目標電力Pb*を出力するようにエンジン22、モータ40及びCVT50を制御しつつ、モータ40の温度に応じてCVT50の変速比を変化させることにより、モータ40の温度が予め定められた許容限界温度を越えないように制御するから、モータ40が過熱になりやすい発電状態のときつまり二次電池44の充電中であってもモータ40の過熱を防止できる。また、モータ40の温度のほかに油温を加味したうえでCVT50の変速比制御を行うため、モータ40の加熱防止をより確実に行うことができる。更に、図3のようにモータ40の温度が高いほど又は油温が高いほど補正係数VCVTが大きくなるように定めたため、これらの温度が高いほどCVT50のインプットシャフト51の回転数が大きくなり、このインプットシャフト51に接続されたモータ40のトルク絶対値が小さくなり、モータ40の発熱が抑制される。
【0048】
上記実施形態の駆動装置20において、モータ温度および油温の一方又は両方が各々につき予め定められた所定のしきい値を越えるまでは目標インプットシャフト回転数Nin*の実質的な補正を行うことなく(補正係数VCVTを「1.0」として)変速比制御を行い、所定のしきい値を越えたたときに目標インプットシャフト回転数Nin*の実質的な補正を行ったうえで(補正係数VCVTを>1.0として)変速比制御を行うようにしてもよい。この場合であっても、モータ40の過熱を防止できる。なお、モータ温度のしきい値や油温のしきい値は予め実験などにより定めておけばよい。
【0049】
上記実施形態の駆動装置20において、より確実にモータ40の過熱を防止するためにモータ温度および油温に応じて補正係数VCVTを算出したが、モータ温度のみに応じて補正係数VCVTを算出してもよいし、油温のみに応じて補正係数VCVTを算出してもよい。
【0050】
上記実施形態の駆動装置20では直結走行時の充電中(モータ発電中)のときに上述の制御ルーチンを実行したが、直結走行時の放電中(モータ電動中)のときに上述の制御ルーチンを実行してもよい。
【0051】
上記実施形態の駆動装置20が実行する直結走行時の制御ルーチンでは、ステップS120で算出したモータ40の目標電力Pb*を補正することなくそのまま用いたが、図4のフローチャートに示すように、モータ40の目標電力Pb*を算出したあと前回この制御ルーチンにおいて算出した補正係数VCVTが予め定められた所定値α以上か否かを判定し(ステップS121)、補正係数VCVTが所定値α未満ならば、特に目標電力Pb*を補正する必要がないとみなして充電量補正係数Vchgを「1.0」とし(ステップS123)、その後ステップS129へ進み、一方、補正係数VCVTが所定値α以上ならば、目標インプットシャフト回転数Nin*に基づく変速比制御だけではモータ40の温度が十分下がらないおそれがあるとみなして、モータ温センサ42から入力されるモータ温度および油温センサ87から入力される油温を読み込み(ステップS125)、そのモータ温度および油温に応じて充電量補正係数Vchg(<1.0)を求め(ステップS127)、その後ステップS129へ進む。ここで、充電量補正係数Vchgは、例えば次のようにして求めることができる。即ち、予めモータ40について同じ発電量を得るために目標インプットシャフト回転数Nin*を大きくモータトルクを小さくしてモータ40の発熱量を小さくしたとしても許容限界温度を越えるおそれがある場合を実験的に求め、その場合における補正係数VCVTを所定値αに設定する一方、その場合においてモータ40が許容限界温度を越えないような発電量となるようにモータ過熱防止用の充電量補正係数マップを作成する。図5はこのマップの一例である。このマップは、モータ温度と油温(モータの冷却媒体温度)と充電量補正係数Vchgとの関係を定めたものであり、モータ温度が高いほど充電量補正係数Vchgが小さくなるように、また、油温が高いほど充電量補正係数Vchgが小さくなるように定められている。そして、ステップS129では、充電量補正係数Vchgを目標電力Pb*に乗じた値を新たな目標電力Pb*とし、その後既に述べたステップS130以降の処理を実行する。なお、補正係数VCVTが所定値α未満ならば充電量補正係数Vchgは「1.0」であるので実質的な補正は行われない。以上の制御ルーチンによれば、CVT50の変速比だけではモータ40の温度が十分下がらないことがあっても、その場合にはモータ40の目標電力Pb*を減らすことで更にモータ40の温度を下げることができるため、モータ40の過熱をより確実に防止できる。
【0052】
[第2実施形態]
本実施形態の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明を省略し、ここでは、特にシフトレバー80がPレンジにセットされているときの動作について説明する。このとき、CVT50のインプットシャフト51は、ブレーキB1によってリングギヤ32がケース39に固定されることにより回転が禁止されており、また、クラッチC1によってキャリア35から切り離されることによりエンジン22のクランクシャフト24およびモータ40の回転軸41から切り離されている。また、エンジン22のクランクシャフト24とモータ40の回転軸41とはサンギヤ31と第1および第2ピニオンギヤ33,34とを介して動力伝達可能に接続されている。なお、クラッチC2は接続・非接続のいずれであってもよい。
【0053】
図6は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは所定タイミング毎にシフトポジションセンサ81からのシフトポジションSPがPレンジであれば実行される。この制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、モータECU49により演算され通信により入力される二次電池44の残容量(SOC)など制御に必要な信号を読み込む処理を実行する(ステップS300)。続いて、バッテリ残容量SOCに基づいてモータに要求される目標電力Pb*を計算する(ステップS310)。そして、目標電力Pb*に伝達効率等を考慮して目標エンジン出力Pe*を計算し(ステップS320)、この目標エンジン出力Pe*を出力可能なエンジン22の運転ポイントのうち燃費が最適となるポイントとなるようにエンジン22の目標トルクTe*および目標エンジン回転数Ne*を算出する(ステップS330)。
【0054】
次いで、モータ温センサ42から入力されるモータ温度および油温センサ87から入力される油温を読み込み(ステップS340)、そのモータ温度および油温に応じて目標エンジン回転数Ne*の補正係数VNETを求める(ステップS350)。補正係数VNETは、例えば次のようにして求めることができる。即ち、予めモータ40について実験などにより動作効率や動作安定性等を考慮して使用可能な上限温度(許容限界温度)を求めると共に、その許容限界温度を越えないようにするためのモータ過熱防止用の目標エンジン回転数補正係数マップを作成する。図7はこのマップの一例である。このマップは、モータ温度と油温(モータの冷却媒体温度)と補正係数VNETとの関係を定めたものであり、モータ温度が高いほど補正係数VNETが大きくなるように、また、油温が高いほど補正係数VNETが大きくなるように定められている。なお、補正係数VNETは1以上の数値であり、モータ温度と油温の両方とも十分低ければ補正係数VNETを「1.0」として実質的な補正は行わない。
【0055】
ところで、既に第1実施形態において述べたとおり、同じ発電量を得る場合、モータ回転数を小さくするとモータトルクが大きくなるため発熱量が増加するが、モータ回転数を大きくするとモータトルクが小さくなるため発熱量が減少する。一方、エンジン22の燃費の最適化という観点からすると、Pレンジでのエンジン回転数を小さく抑えることが好ましいことからそれに伴ってモータ回転数も小さくなり、その分モータトルクが大きくなってモータの発熱量が増加しやすい。しかし、モータ40の発熱によってモータ40が許容限界温度を越えることは好ましくない。そこで、モータ40が許容限界温度を越えないようにするために、同じ発電量を得るにしても、モータ回転数を大きくし、モータトルクを小さくすることによりモータ40の発熱量を少なくする。ここでモータ回転数を大きくするということは、Pレンジではエンジン回転数を大きくするということに他ならない。したがって、モータ40が許容限界温度を越えるおそれが大きいモータ温度や油温の高いときほど、補正係数VNETを大きくして目標エンジン回転数Ne*を大きく設定し、モータトルクを小さくしてモータ発熱量を抑えるのである。
【0056】
さて、こうして補正係数VNETを算出したあと、その補正係数VNETをステップS330で求めた目標エンジン回転数Ne*に乗じた値(Ne*×VNET)を新たな目標エンジン回転数Ne*とする(ステップS360)。続いて、その目標エンジン回転数Ne*から目標エンジン出力Pe*が得られる目標エンジントルクTe*を算出すると共に、その目標エンジン回転数Ne*からサンギヤ31と第1および第2ピニオンギヤ33,34とのギヤ比に基づいて目標モータ回転数Nm*を算出し、その目標モータ回転数Nm*と目標動力Pb*とからモータ40のトルク指令Tm*を算出する(ステップS370)。その後、このようにして求めた各目標値Te*、Tm*を用いてエンジン制御、モータ制御を行い(ステップS380)、本ルーチンを終了する。なお、本ルーチンではモータ40のトルクをトルク指令Tm*となるように制御することにより、結果的にエンジン回転数を目標エンジン回転数Ne*となるように制御している。
【0057】
以上説明した本実施形態の駆動装置20によれば、CVT50のインプットシャフト51をエンジン22のクランクシャフト24およびモータ40の回転軸41から切り離した状態でクランクシャフト24と回転軸41とを動力伝達可能に接続すると共にインプットシャフト51の回転を停止させているときに、モータ40の温度に応じてエンジン回転数を変化させることによりモータ40の温度が予め定められた許容限界温度を越えないように制御するから、駐車時などにおいてモータ40が過熱になりやすい発電状態のときつまり二次電池44の充電中のときであってもモータ40の過熱を防止できる。また、モータ40の温度のほかに油温を加味したうえでエンジン回転数の制御を行うため、モータ40の加熱防止をより確実に行うことができる。更に、図7のようにモータ40の温度が高いほど又は油温が高いほど補正係数VNETが大きくなるように定めたため、これらの温度が高いほどエンジン回転数が大きくなり、エンジン22のクランクシャフト24に接続されたモータ40の回転軸41のトルク絶対値が小さくなり、モータ40の発熱が抑制される。
【0058】
上記実施形態の駆動装置20において、モータ温度および油温の一方又は両方が予め定められた所定のしきい値を越えるまでは目標エンジン回転数Ne*の実質的な補正を行うことなく(補正係数VNETを「1.0」として)制御を行い、所定のしきい値を越えたたときに目標エンジン回転数Ne*の実質的な補正を行ったうえで(補正係数VNETを>1.0として)制御を行うようにしてもよい。この場合であっても、モータ40の過熱を防止できる。なお、モータ温度のしきい値や油温のしきい値は予め実験などにより定めておけばよい。
【0059】
上記実施形態の駆動装置20において、より確実にモータ40の過熱を防止するためにモータ温度および油温に応じて補正係数VNETを算出したが、モータ温度のみに応じて補正係数VNETを算出してもよいし、油温のみに応じて補正係数VNETを算出してもよい。
【0060】
上記実施形態の駆動装置20が実行するPレンジでの制御ルーチンでは、ステップS310で算出したモータ40の目標電力Pb*を補正することなくそのまま用いたが、図8のフローチャートに示すように、モータ40の目標電力Pb*を算出したあと前回このPレンジでの制御ルーチンにおいて算出した補正係数VNETが予め定められた所定値β以上か否かを判定し(ステップS311)、補正係数VNETが所定値β未満ならば、特に目標電力Pb*を補正する必要がないとみなして充電量補正係数Vchgを「1.0」とし(ステップS313)、その後ステップS319へ進み、一方、補正係数VNETが所定値β以上ならば、エンジン回転数制御だけではモータ40の温度が十分下がらないおそれがあるとみなしてモータ温センサ42から入力されるモータ温度および油温センサ87から入力される油温を読み込み(ステップS315)、そのモータ温度および油温に応じて充電量補正係数Vchg(<1.0)を求め(ステップS317)、その後ステップS319へ進む。ここで、充電量補正係数Vchgや所定値βは、第1実施形態の変形例として既に述べた充電量補正係数Vchgや所定値αと同様にして求めることができ、モータ過熱防止用の充電量補正係数マップも例えば図5と同様のものを用いることができる。そして、ステップS319では、充電量補正係数Vchgを目標電力Pb*に乗じた値を新たな目標電力Pb*とし、その後既に述べたステップS320以降の処理を実行する。なお、補正係数VNETが所定値β未満ならば充電量補正係数Vchgは「1.0」であるので実質的な補正は行われない。以上の制御ルーチンによれば、エンジン回転数制御だけではモータ40の温度が十分下がらないことがあっても、その場合にはモータ40の目標電力Pb*を減らすことで更にモータ40の温度を下げることができるため、モータ40の過熱をより確実に防止できる。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述したような実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態である車載用の駆動装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】目標インプットシャフト回転数補正係数マップの一例を示す説明図である。
【図4】第1実施形態の変形例の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】充電量補正係数マップの一例を示す説明図である。
【図6】第2実施形態の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】目標エンジン回転数補正係数マップの一例を示す説明図である。
【図8】第2実施形態の変形例の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
20 駆動装置、22 エンジン、24 クランクシャフト、26 スタータモータ、28 ベルト、29 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33 第1ピニオンギヤ、34 第2ピニオンギヤ、35 キャリア、39 ケース、40 モータ、41 回転軸、42 モータ温センサ、43 インバータ、44 二次電池、45 回転位置検出センサ、46 電圧センサ、47 電流センサ、48 温度センサ、49 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、50 CVT、51 インプットシャフト、52 アウトプットシャフト、53 プライマリープーリー、54 セカンダリープーリー、55 ベルト、56 第1アクチュエータ、57 第2アクチュエータ、59 CVT用電子制御ユニット(CVTECU)、61,62 回転数センサ、64 ディファレンシャルギヤ、66a,66b 駆動輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 シフトレバー、81 シフトポジションセンサ、82 アクセルペダル、83 アクセルペダルポジションセンサ、84 ブレーキペダル、85 ブレーキペダルポジションセンサ、86 車速センサ、87 油温センサ、C1,C2 クラッチ、B1 ブレーキ。

Claims (16)

  1. 入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、前記入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、前記入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置であって、
    前記駆動軸が目標駆動状態となり前記発電電動機が目標作動状態となるよう前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を制御しつつ、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する一方、前記自動変速機の変速比を制御するだけでは前記許容限界温度を越えるおそれがあるならば前記発電電動機の目標電力を低くする運転制御手段
    を備える駆動装置。
  2. 請求項1記載の駆動装置であって、
    前記内燃機関の出力軸は、前記入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能であり、
    前記発電電動機の回転軸は、前記入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能であり、
    前記運転制御手段は、前記自動変速機の入力軸、前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸が滑りを伴わない機械的な接続状態のときに、前記駆動軸が目標駆動状態となり前記発電電動機が目標作動状態となるよう前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を制御しつつ、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する
    駆動装置。
  3. 請求項1又は2記載の駆動装置であって、
    前記発電電動機の温度を検出する温度検出手段を備え、
    前記運転制御手段は、前記温度検出手段により検出された前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する
    駆動装置。
  4. 前記運転制御手段は、前記発電電動機が発電状態のときに前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する請求項1〜3のいずれかに記載の駆動装置。
  5. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度が前記許容限界温度に近づいたときに前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する請求項1〜4のいずれかに記載の駆動装置。
  6. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機の温度に応じて前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御する請求項1〜5のいずれかに記載の駆動装置。
  7. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機に目標電力を出力させるにあたって前記発電電動機の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるよう前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御する請求項1〜6のいずれかに記載の駆動装置。
  8. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する請求項1〜7のいずれかに記載の駆動装置。
  9. 請求項8記載の駆動装置であって、
    前記発電電動機を冷却する冷却媒体の温度を検出する媒体温検出手段を備え、
    前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記媒体温検出手段により検出された前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する
    駆動装置。
  10. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御する請求項8又は9記載の駆動装置。
  11. 前記運転制御手段は、前記発電電動機の温度および前記冷却媒体の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記発電電動機に目標電力を出力させるにあたって前記発電電動機の温度が高いほど又は前記冷却媒体の温度が高いほど前記発電電動機の回転数が高くトルクが低くなるよう前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御する請求項8〜10のいずれかに記載の駆動装置。
  12. 前記運転制御手段は、前記入力軸の目標回転数を求め該目標回転数に基づいて前記自動変速機の変速比を制御するに際し、前記入力軸の目標回転数が前記自動変速機の変速比の最大値と前記駆動軸の実回転数とから得られる上限目標回転数を越えないようガードをかける請求項6,7,10又は11記載の駆動装置。
  13. 前記運転制御手段は、前記自動変速機の変速比を制御するだけでは前記許容限界温度を越えるおそれがあるならば、前記発電電動機の温度及び該発電電動機の冷却媒体の温度の少なくとも一方の値が高いほど前記発電電動機の目標電力が低くなるように設定する、
    請求項1〜12のいずれかに記載の駆動装置。
  14. 前記自動変速機は無段変速機である請求項1〜13のいずれかに記載の駆動装置。
  15. 前記内燃機関の出力軸および前記発電電動機の回転軸は、それぞれ遊星歯車機構を介して前記自動変速機の入力軸に対して滑りを伴わない機械的な接続が可能となるように構成されている請求項1〜14のいずれかに記載の駆動装置。
  16. 入力軸と駆動軸との間で変速を行う自動変速機と、前記入力軸に接続される出力軸を備えた内燃機関と、前記入力軸に接続される回転軸を備えた発電電動機とを備える駆動装置の運転制御方法であって、
    前記駆動軸が目標駆動状態となり前記発電電動機が目標作動状態となるよう前記内燃機関、前記発電電動機および前記自動変速機を制御しつつ、前記発電電動機の温度が予め定められた許容限界温度を越えないよう前記発電電動機の温度に応じて前記自動変速機の変速比を制御する一方、前記自動変速機の変速比を制御するだけでは前記許容限界温度を越えるおそれがあるならば前記発電電動機の目標電力を低くする、
    駆動装置の運転制御方法。
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