JP4200425B2 - 減速機およびこれを備える電動式動力舵取装置 - Google Patents

減速機およびこれを備える電動式動力舵取装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ウォームとウォームホイールなどの、小歯車と大歯車とを有する減速機、並びにこの減速機を備える電動式動力舵取装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の電動式動力舵取装置には減速機が用いられる。例えばコラム型EPSでは、モータの回転力をウォーム等の小歯車からウォームホイール等の大歯車に伝えることでモータの回転を減速するとともに出力を増幅してコラムに付与し、ステアリング操作をトルクアシストしている。
ところで、減速機構としての小歯車と大歯車との噛み合いには適度なバックラッシが必要であるが、例えば歯車の正逆回転時や、石畳み等の悪路を走行してタイヤからの反力が入力された際などに、バックラッシに起因して歯打ち音が発生する場合がある。これらの音が車室内に騒音として伝わると、運転者に不快感を与えることになる。
【0003】
同様の問題は電動式動力舵取装置の減速機に限らず、小歯車と大歯車とを有する一般の減速機においても存在する。
このため従来は、適正なバックラッシとなるように小歯車と大歯車との組み合わせを選別して減速機を組み立て(いわゆる層別組み立て)しているが、かかる方法では生産性が著しく低いという問題がある。
そこで、例えばウォーム軸をウォームホイールヘ向けて偏倚可能とするとともに、ウォーム軸をその偏倚方向へ付勢するばね体などの付勢手段を設けることで、バックラッシをなくするようにした、電動式動力舵取装置における減速機などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−43739号公報(第0007欄〜第0009欄、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1などの減速機は構造が極めて複雑になり、製造コストがかさむという問題がある。
そこでこの発明の目的は、騒音を、小歯車と大歯車とを組み合わせた際のバックラッシの大きさに関係なく、また構造を複雑化することなく、これまでよりも小さくすることができ騒音の小さい減速機、およびこれを備える電動式動力舵取装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
この発明の減速機は、金属製の小歯車および大歯車を含み、かつ両者の噛み合い部分を含む領域に、潤滑剤としてのグリースと、前記金属製の小歯車および大歯車よりも軟質の金属にて形成した、平均粒径5〜150μmの軟質金属粉末とを少なくとも含み、前記軟質金属粉末を添加した状態でのちょう度が、NLGI番号で表してNo.2〜No.000である潤滑剤組成物を充填したことを特徴とするものである。
この発明の減速機によれば、潤滑初期には、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ軟質金属粉末が介在することによって、またそれ以降は、小歯車と大歯車との噛み合いによって軟質金属粉末が押しつぶされて、両歯車の金属面に層状に付着することによってバックラッシを適正化して、その騒音を大幅に低減することができる。しかも、潤滑剤としてのグリースに単に軟質金属粉末を添加するだけで、減速機の構造を複雑化することなく、コスト安価に騒音を低減することができる。
【0007】
潤滑剤としてのグリースに軟質金属粉末を添加した、潤滑剤組成物としてのちょう度は、NLGI(National Lubricating Grease Institute)番号で表してNo.2〜No.000であるのが、減速機に使用する上で必要である。
また軟質金属粉末の平均粒径は、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ介在して、減速機の騒音を低減する効果をさらに向上するために50μm以上であるのが好ましい。また、軟質金属粉末は、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると、特に球状または粒状であるのが好ましい。さらに、小歯車および大歯車が鉄、または鋼からなる場合、軟質金属粉末は、青銅、銅、錫、銀、金、およびアルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属によって形成されているのが好ましい。
【0008】
たこの発明の電動式動力舵取装置は、操舵補助用の電動モータの回転を、上記の減速機を介して減速するものゆえ、車室内での騒音をコスト安価に低減できる点で好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を説明する。
〈潤滑剤組成物〉
この発明の減速機に用いる潤滑剤組成物は、前記のように潤滑剤と、金属面よりも軟質の金属にて形成した、平均粒径5〜150μmの軟質金属粉末とを少なくとも含むことを特徴とする。
【0010】
このうち軟質金属粉末の平均粒径が5〜150μmに限定されるのは、5μm以下では、とくに潤滑初期に小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在して騒音を低減する効果に限界があり、減速機の騒音を大幅に低減できないためである。
また軟質金属粉末の平均粒径が150μmを超えると、軟質金属粉末が潤滑剤から分離しやすくなって均一な潤滑剤組成物が得られないため、やはり潤滑初期に、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ軟質金属粉末をまんべんなく介在させて騒音を低減する効果が得られないためである。
【0011】
なお減速機の、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ介在して、減速機の騒音を低減する効果をさらに向上するためには、軟質金属粉末の平均粒径は、上記の範囲内でも特に50μm以上であるのが好ましい。
また軟質金属粉末の、潤滑剤からの分離を抑制して、潤滑剤組成物をより均一なものとすることで、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ軟質金属粉末をまんべんなく介在させて騒音を低減する効果をさらに向上するためには、軟質金属粉末の平均粒径は、上記の範囲内でも特に130μm以下であるのが好ましい。
【0012】
また軟質金属粉末は、とくに潤滑初期に、小歯車と大歯車との噛み合い部分を隙間なく埋めて騒音を低減する効果を向上することを考慮すると、粒径の分布が単分散でなく、ある程度の粒度分布を有することが好ましい。つまり比較的粒径の大きい軟質金属粉末の隙間を、それよりも粒径の小さい軟質金属粉末で埋めることによって、とくに潤滑初期の騒音をより一層、低減することができる。
さらに軟質金属粉末は、潤滑剤100重量部に対して3〜50重量部の割合で添加するのが好ましい。
【0013】
軟質金属粉末が3重量部未満では低減する効果があまり期待できず、逆に50重量部を超えると潤滑剤組成物の流動性が低下して、潤滑剤として機能し得なくなるおそれがある。
なお騒音を低減する効果をより一層、向上するためには、潤滑剤100重量部に対する軟質金属粉末の添加量は10重量部以上であるのがさらに好ましい。
また、潤滑剤組成物の流動性を向上することを考慮すると、潤滑剤100重量部に対する軟質金属粉末の添加量は30重量部以下であるのがさらに好ましい。
【0014】
軟質金属粉末の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると、特に球状または粒状であるのが好ましい。
軟質金属粉末としては、小歯車や大歯車などの金属面よりも軟質である、種々の金属や合金からなる粉末を用いることができる。かかる軟質金属粉末の具体例としては、たとえば金属面が鉄、鋼などである場合、青銅、銅、錫、亜鉛、銀、金、アルミニウムなどの粉末を用いることができる。
【0015】
軟質金属粉末は、電解法、粉砕法、アトマイズ法などの、従来公知の種々の方法によって製造することができる。
潤滑剤としては、半固体状のグリースを用いる。
【0016】
リースとしては、軟質金属粉末を添加した潤滑剤組成物としてのちょう度がNLGI番号で表してNo.2〜No.000となるものを用いるのが、減速機に使用する上で必要である
【0017】
グリースは、従来同様に潤滑基油に、増ちょう剤を添加して形成される。
潤滑基油としては、合成炭化水素油(例えばポリαオレフィン油)が好適に使用されるが、鉱油、シリコーン油、フッ素系合成樹脂等を用いることもできる。また増ちょう剤としては、従来公知の種々の増ちょう剤(石けん系、非石けん系)が使用可能である。潤滑基油の動粘度は、5〜200mm2/sであるのが好ましい。
【0018】
さらにグリースには、必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の化合物等の極圧添加剤、トリブチルフェノール、トリメチルフェノール等の酸化防止剤などを添加剤として添加しても良い。
〈減速機および電動式動力舵取装置〉
図1は、この発明の一実施形態にかかる電動式動力舵取装置の概略断面図である。
【0019】
図1を参照して、この例の電動式動力舵取装置では、ステアリングホイール1を取り付けている入力軸としての第1の操舵軸2と、ラックアンドピニオン機構等の舵取機構(図示せず)に連結される出力軸としての第2の操舵軸3とがトーションバー4を介して同軸的に連結されている。
第1および第2の操舵軸2,3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング5は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング6とギヤハウジング7により構成されている。具体的には、ギヤハウジング7は筒状をなし、その上端の環状縁部7aがセンサハウジング6の下端外周の環状段部6aに嵌め合わされている。ギヤハウジング7は減速機構としてのウォームギヤ機構8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9および制御基板10等を収容している。ギヤハウジング7にウォームギヤ機構8を収容することで減速機50が構成されている。
【0020】
上記ウォームギヤ機構8は、図2に示すように、電動モータMの回転軸32に例えばスプライン33継手等の継手機構を介して連結されるウォーム軸11と、このウォーム軸11と噛み合い、且つ図1に示すように、第2の操舵軸3の軸方向中間部に一体回転可能で且つ軸方向移動を規制されたウォームホイール12とを備える。図示していないが、ウォーム軸11はギヤハウジング7内に一対の軸受を介して回転自在に支持されている。
【0021】
ウォームホイール12は、第2の操舵軸3に一体回転可能に結合される環状のギヤである。
ウォーム軸11とウォームホイール12はともに、鉄、鋼等の金属にて形成される。
ギヤハウジング7内において、ウォーム軸11とウォームホイール12の噛み合い部分Aを少なくとも含む領域に、先に説明した潤滑剤組成物が充填されている。すなわち潤滑剤組成物は、噛み合い部分Aのみに充填しても良いし、噛み合い部分Aとウォーム軸11の周縁全体に充填しても良いし、ギヤハウジング7内全体に充填しても良い。
【0022】
第2の操舵軸3は、ウォームホイール12を軸方向の上下に挟んで配置される第1および第2の転がり軸受13,14により回転自在に支持されている。
第1の転がり軸受13の外輪15は、センサハウジング6の下端の筒状突起6b内に設けられた軸受保持孔16に嵌め入れられて保持されている。第1の転がり軸受13の外輪15の上端面は環状の段部17に当接しており、センサハウジング6に対する軸方向上方への移動が規制されている。一方、第1の転がり軸受13の内輪18は第2の操舵軸3に締まりばめにより嵌め合わされている。内輪18の下端面はウォームホイール12の上端面に当接している。
【0023】
また、第2の転がり軸受14の外輪19は、ギヤハウジング7の軸受保持孔20に嵌め入れられて保持されている。第2の転がり軸受14の外輪19の下端面は、環状の段部21に当接し、ギヤハウジング7に対する軸方向下方への移動が規制されている。第2の転がり軸受14の内輪22は、第2の操舵軸3に一体回転可能で且つ軸方向相対移動を規制されて取り付けられている。内輪22は第2の操舵軸3の段部23と、第2の操舵軸3のねじ部に締め込まれるナット24との間に挟持されている。
【0024】
トーションバー4は第1および第2の操舵軸2,3を貫通している。トーションバー4の上端4aは、連結ピン25により第1の操舵軸2と一体回転可能に連結され、トーションバー4の下端4bは、連結ピン26により第2の操舵軸3と一体回転可能に連結されている。第2の操舵軸3の下端は、図示しない中間軸を介してラックアンドピニオン機構等の舵取機構に連結されている。
上記の連結ピン25は、第1の操舵軸2と同軸に配置される第3の操舵軸27を、第1の操舵軸2と一体回転可能に連結している。第3の操舵軸27はステアリングコラムを構成するチューブ28内を貫通している。
【0025】
第1の操舵軸2の上部は、例えば針状ころ軸受からなる第3の転がり軸受29を介してセンサハウジング6に回転自在に支持されている。第1の操舵軸2の下部の縮径部30と第2の操舵軸3の上部の孔31とは、第1および第2の操舵軸2,3の相対回転を所定の範囲に規制するように、回転方向に所定の遊びを設けて嵌め合わされている。
次いで、図2を参照して、ウォーム軸11はギヤハウジング7により保持される第4および第5の転がり軸受34,35によりそれぞれ回転自在に支持されている。第4および第5の転がり軸受34,35は例えば玉軸受からなる。
【0026】
第4および第5の転がり軸受34,35の内輪36,37がウォーム軸11の対応するくびれ部に嵌合されている。また、第4および第5の転がり軸受34,35の外輪38,39は、ギヤハウジング7の軸受保持孔40,41にそれぞれ保持されている。
ギヤハウジング7は、ウォーム軸11の周面の一部に対して径方向に対向する部分7bを含んでいる。また、ウォーム軸11の一端部11aを支持する第4の転がり軸受34の外輪38は、ギヤハウジング7の段部42に当接し位置決めされている。一方、第4の転がり軸受34の内輪36は、ウォーム軸11の位置決め段部43に当接することにより、ウォーム軸11の他端部11b側への移動が規制されている。
【0027】
ウォーム軸11の他端部11b(継手側端部)の近傍を支持する第5の転がり軸受35の内輪37はウォーム軸11の位置決め段部44に当接することにより、ウォーム軸11の一端部11a側への移動が規制されている。
また、第5の転がり軸受35の外輪39は予圧調整用のねじ部材45により、第4の転がり軸受34側へ付勢されている。ねじ部材45は、ギヤハウジング7に形成されるねじ孔46にねじ込まれることにより、一対の転がり軸受34,35に予圧を付与すると共に、ウォーム軸11を軸方向に位置決めしている。47は予圧調整後のねじ部材45を止定するためにねじ部材45に係合されるロックナットである。
【0028】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えばこの発明の減速機の構成を、電動式動力舵取装置以外の装置用の、一般の減速機に適用することができる等、この発明の特許請求の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の、一実施形態にかかる電動式動力舵取装置の概略断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【符号の説明】
7 ギヤハウジング
8 ウォームギヤ機構
11 ウォーム軸(ウォーム)
12 ウォームホイール
A 噛み合い部分
50 減速機
M 電動モータ

Claims (5)

  1. 金属製の小歯車および大歯車を含み、かつ両者の噛み合い部分を含む領域に、潤滑剤としてのグリースと、前記金属製の小歯車および大歯車よりも軟質の金属にて形成した、平均粒径5〜150μmの軟質金属粉末とを少なくとも含み、前記軟質金属粉末を添加した状態でのちょう度が、NLGI番号で表してNo.2〜No.000である潤滑剤組成物を充填したことを特徴とする減速機。
  2. 軟質金属粉末の平均粒径が50μm以上であることを特徴とする請求項1記載の減速機
  3. 軟質金属粉末が球状または粒状であることを特徴とする請求項1記載の減速機
  4. 小歯車および大歯車が鉄、または鋼からなり、軟質金属粉末が青銅、銅、錫、銀、金、およびアルミニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなることを特徴とする請求項1記載の減速機
  5. 操舵補助用の電動モータの回転を、請求項1ないし4のいずれかに記載の減速機を介して減速することを特徴とする電動式動力舵取装置。
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