JP4089503B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速機を備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の電動パワーステアリング装置には減速機が用いられる。例えばコラム型EPSでは、モータの回転力をウォーム軸に伝え、さらにウォームホイールに伝えることでモータの回転を減速するとともに出力を増幅したのち、コラムに付与して運転者のステアリング操作をトルクアシストしている。
ところで、減速機構としての小歯車と大歯車との噛み合いには適度なバックラッシが必要であるが、例えば歯車の正逆回転時や、石畳み等の悪路を走行してタイヤからの反力が入力された際などに、バックラッシに起因して歯打ち音が発生する場合がある。これらの音が車室内に騒音として伝わると、運転者に不快感を与えることになる。
【0003】
このため従来は、適正なバックラッシとなるように小歯車と大歯車との組み合わせを選別して減速機を組み立て(いわゆる層別組み立て)しているが、かかる方法では生産性が著しく低いという問題がある。
そこで、例えばウォーム軸をウォームホイールヘ向けて偏倚可能とするとともに、ウォーム軸をその偏倚方向へ付勢するばね体などの付勢手段を設けることでバックラッシをなくするようにした、電動パワーステアリング装置における減速機などが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−43739号公報(第0007欄〜第0009欄、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献1などの減速機は構造が極めて複雑になり、製造コストがかさむという問題がある。
そこで本発明の目的は、減速機の騒音を、小歯車と大歯車とを組み合わせた際のバックラッシの大きさに関係なく、また減速機の構造を複雑化することなく、これまでよりも小さくすることができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明は、操舵補助用のモータの出力を、減速機を介して減速して舵取機構に伝える電動パワーステアリング装置であって、上記減速機に、微小粒子を分散した潤滑剤組成物を充てんするとともに、減速機の入力軸を、上記入力軸とともに回転する内輪側に、薄肉円盤状で、かつ上記円盤の、ギヤハウジング内に面した側に筒状の返しを有する形状に形成された、潤滑剤組成物が内部に浸入するのを防止するための浸入防止部材を固定した転がり軸受によって回転自在に支持したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、潤滑剤組成物中に分散した微小粒子が、減速機の、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在することによって、減速機の騒音を大幅に低減することができる。
また、減速機の入力軸を支持する転がり軸受に浸入防止部材を設けることによって、上記の、微小粒子を分散した潤滑剤組成物が、転がり軸受の内部に浸入するのを防止することもできる。
【0008】
このため微小粒子が転がり軸受の回転を阻害するのを未然に防止して、当該転がり軸受のスムーズな回転を維持することができる。
しかも、グリース等の潤滑剤に単に微小粒子を添加するとともに、転がり軸受に浸入防止部材を設けるだけで、減速機の構造を複雑化することなく、コスト安価に騒音を低減することもできる。
【0009】
さらに浸入防止部材は、薄肉円盤状で、かつ上記円盤の、ギヤハウジング内に面した側に筒状の返しを有する形状に形成され、減速機の入力軸とともに回転する転がり軸受の内輪側に固定されており、入力軸の回転に伴って浸入防止部材を回転させて、当該浸入防止部材に付着した潤滑剤組成物を、回転時の遠心力によって、返しの内側面に集めてギヤハウジングに戻すことができるため、微小粒子が転がり軸受の回転を阻害するのを、より一層、確実に防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略断面図である。また図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
図1を参照して、この例の電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイール1を取り付けている入力軸としての第1の操舵軸2と、ラックアンドピニオン機構等の舵取機構(図示せず)に連結される出力軸としての第2の操舵軸3とがトーションバー4を介して同軸的に連結されている。
【0011】
第1および第2の操舵軸2、3を支持するハウジング5は、例えばアルミニウム合金からなり、車体(図示せず)に取り付けられている。ハウジング5は、互いに嵌め合わされるセンサハウジング6とギヤハウジング7により構成されている。具体的には、ギヤハウジング7は筒状をなし、その上端の環状縁部7aがセンサハウジング6の下端外周の環状段部6aに嵌め合わされている。ギヤハウジング7は減速機構としてのウォーム軸ギヤ機構8を収容し、センサハウジング6はトルクセンサ9および制御基板10等を収容している。ギヤハウジング7にウォーム軸ギヤ機構8を収容することで減速機50が構成されている。
【0012】
ウォーム軸ギヤ機構8は、第2の操舵軸3の軸方向中間部に一体回転可能でかつ軸方向移動を規制されたウォームホイール12と、このウォームホイール12と噛み合い、かつ電動モータMの回転軸32に、スプライン継手33を介して連結されるウォーム軸11(図2参照)とを備える。
ウォームホイール12は、第2の操舵軸3に一体回転可能に結合される環状の芯金12aと、芯金12aの周囲を取り囲んで外周面部に歯を形成する合成樹脂部材12bとを備えている。芯金12aは、例えば合成樹脂部材12bの樹脂成形時に金型内にインサートされるものである。
【0013】
第2の操舵軸3は、ウォームホイール12を軸方向の上下に挟んで配置される第1および第2の転がり軸受13、14により回転自在に支持されている。
第1の転がり軸受13の外輪15は、センサハウジング6の下端の筒状突起6b内に設けられた軸受保持孔16に嵌め入れられて保持されている。第1の転がり軸受13の外輪15の上端面は環状の段部17に当接しており、センサハウジング6に対する軸方向上方への移動が規制されている。一方、第1の転がり軸受13の内輪18は、第2の操舵軸3に締まりばめにより嵌め合わされている。また内輪18の下端面は、ウォームホイール12の芯金12aの上端面に当接している。
【0014】
また第2の転がり軸受14の外輪19は、ギヤハウジング7の軸受保持孔20に嵌め入れられて保持されている。第2の転がり軸受14の外輪19の下端面は、環状の段部21に当接し、ギヤハウジング7に対する軸方向下方への移動が規制されている。第2の転がり軸受14の内輪22は、第2の操舵軸3に一体回転可能で、かつ軸方向の相対移動を規制されて取り付けられている。内輪22は、第2の操舵軸3の段部23と、第2の操舵軸3のねじ部に締め込まれるナット24との間に挟持されている。
【0015】
トーションバー4は、第1および第2の操舵軸2、3を貫通している。トーションバー4の上端4aは、連結ピン25により第1の操舵軸2と一体回転可能に連結され、トーションバー4の下端4bは、連結ピン26により第2の操舵軸3と一体回転可能に連結されている。第2の操舵軸3の下端は、図示しない中間軸を介してラックアンドピニオン機構等の舵取機構に連結されている。
上記の連結ピン25は、第1の操舵軸2と同軸に配置される第3の操舵軸27を、第1の操舵軸2と一体回転可能に連結している。第3の操舵軸27はステアリングコラムを構成するチューブ28内を貫通している。
【0016】
第1の操舵軸2の上部は、例えば針状ころ軸受からなる第3の転がり軸受29を介してセンサハウジング6に回転自在に支持されている。第1の操舵軸2の下部の縮径部30と第2の操舵軸3の上部の孔31とは、第1および第2の操舵軸2、3の相対回転を所定の範囲に規制するように、回転方向に所定の遊びを設けて嵌め合わされている。
次いで図2を参照して、ウォーム軸11は、ギヤハウジング7により保持される第4および第5の転がり軸受34、35によりそれぞれ回転自在に支持されている。
【0017】
第4および第5の転がり軸受34、35としては、操舵トルクの上昇を抑制しつつ、次に述べる浸入防止部材B1、B2と協働して、微小粒子を分散した潤滑剤組成物の浸入をさらに確実に防止することを考慮すると、例えば軽接触シール(RDタイプ)付きの玉軸受を用いるのが好ましい。軽接触シールは、第4および第5の転がり軸受34、35のうち、ギヤハウジング7内に面する、玉より内側部分に設けるのが好ましい。玉より外側部分には、軽接触シールを設けてもよいし設けなくてもよい。
【0018】
第4および第5の転がり軸受34、35の内輪36、37は、ウォーム軸11の対応するくびれ部に嵌合されている。また、第4および第5の転がり軸受34、35の外輪38、39は、ギヤハウジング7の軸受保持孔40、41にそれぞれ保持されている。
ギヤハウジング7は、ウォーム軸11の周面の一部に対して径方向に対向する部分7bを含んでいる。また、ウォーム軸11の一端部11aを支持する第4の転がり軸受34の外輪38は、ギヤハウジング7の段部42に当接して位置決めされている。一方、第4の転がり軸受34の内輪36は、ウォーム軸11の位置決め段部43に、浸入防止部材B1を挟んで当接することにより、ウォーム軸11の、他端部11b側への移動が規制されている。
【0019】
またウォーム軸11の他端部11b(継手側端部)の近傍を支持する第5の転がり軸受35の内輪37は、ウォーム軸11の位置決め段部44に、同様に浸入防止部材B2を挟んで当接することにより、ウォーム軸11の一端部11a側への移動が規制されている。
また、第5の転がり軸受35の外輪39は、予圧調整用のねじ部材45により、第4の転がり軸受34側へ付勢されている。ねじ部材45は、ギヤハウジング7に形成されるねじ孔46にねじ込まれることにより、一対の転がり軸受34、35に予圧を付与すると共に、ウォーム軸11を軸方向に位置決めしている。47は予圧調整後のねじ部材45を止定するためにねじ部材45に係合されるロックナットである。
【0020】
ギヤハウジング7内において、ウォーム軸11とウォームホイール12の噛み合い部分Aを少なくとも含む領域には、先に述べたように微小粒子を分散した潤滑剤組成物が充填される。すなわち潤滑剤組成物は、噛み合い部分Aのみに充填しても良いし、噛み合い部分Aとウォーム軸11の周縁全体に充填しても良いし、ギヤハウジング7内全体に充填しても良い。
図3、図4を参照して、浸入防止部材B1は、その中心にウォーム軸11の一端部11aが挿通される通孔B11を有する薄肉円盤状で、かつ上記円盤の、ギヤハウジング7内に面した側に筒状の返しB12を有する形状に形成される。また浸入防止部材B1は、前記のように第4の転がり軸受34の内輪36と、ウォーム軸11の位置決め段部43との間に挟まれた位置決め状態において、減速機50の入力軸であるウォーム軸11とともに回転する転がり軸受34の内輪36側に固定される。
【0021】
また拡大して図示していないが浸入防止部材B2も、同様にウォーム軸11の他端部11bが挿通される通孔を有する薄肉円盤状で、かつ上記円盤の、ギヤハウジング7内に面した側に筒状の返しを有する形状に形成され、第5の転がり軸受35の内輪37と、ウォーム軸11の位置決め段部44との間に挟まれた位置決め状態において、ウォーム軸11とともに回転する転がり軸受35の内輪37側に固定される。
これらの固定状態では、電動モータMを駆動してウォーム軸11と内輪36、37とを回転させると、それと一緒に浸入防止部材B1、B2も回転する。このため浸入防止部材B1、B2の、ギヤハウジング7内に面した面に潤滑剤組成物が付着しても、回転時の遠心力によってギヤハウジング7内に戻すことができる。
【0022】
すなわち、浸入防止部材B1の、ギヤハウジング7内に面した面に付着した潤滑剤組成物を、遠心力によって返しB12の内側面に集めて、より効率よくギヤハウジング7内に戻すことができる。
【0023】
図示していないが、浸入防止部材B2についても同様である。
なお減速機50の出力側であるウォームホイール12の転がり軸受13、14は、高トルク、低速で回転するものゆえ、微小粒子の影響は少ない。
したがって別部品である浸入防止部材を設ける必要はないが、やはり微小粒子を分散した潤滑剤組成物の侵入を防止するためには、両転がり軸受13、14をシールつきとするのが好ましい。詳しくは、上記のように転がり軸受13、14が高トルク、低速で回転するものゆえより強力な接触シール(RSタイプ、RKタイプなど)付きとして、微小粒子を分散した潤滑剤組成物の侵入を防止するようにするのが好ましい。
【0024】
(潤滑剤組成物)
潤滑剤組成物としては、潤滑油やグリース等の潤滑剤に、微小粒子を分散したものを用いる。
分散させる微小粒子としては、減速機の、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在することで、減速機の騒音を低減する機能を有する種々の微小粒子を用いることができる。
【0025】
かかる微小粒子は、小歯車と大歯車の材質の組み合わせによって下記の3種に分類される。
(1) 両歯車の一方が樹脂、他方が金属である場合に用いる緩衝材の微小粒子。
(2) 同じく両歯車の一方が樹脂、他方が金属である場合に用いる、金属製の歯面より軟らかくかつ樹脂製の歯面より硬い材料からなる微小粒子。
(3) 両歯車がともに金属である場合に用いる、金属製の歯面より軟質の金属からなる微小粒子。
【0026】
このうち(1)の緩衝材の微小粒子は、小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在して、両者の歯面間の衝突を緩衝することによって減速機の騒音を低減する働きをする。
緩衝材の微小粒子としては、例えば平均分子量が1000〜20000程度の合成樹脂からなる粒子や、あるいは合成ゴムの粒子を用いることができる。合成樹脂の平均分子量が1000未満では微小粒子が軟らかくなりすぎ、逆に20000を超える場合には硬くなりすぎるため、このいずれの場合にも緩衝作用が低下するおそれがある。
【0027】
合成樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、例えばオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系などの耐油性の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。
一方、合成ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)等をあげることができる。
【0028】
また緩衝材は自己潤滑性を有しているのが好ましく、かかる緩衝材としては、上記のうちポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、フッ素系熱可塑性エラストマーにて形成したものや、滑剤としてフッ素樹脂を添加した合成樹脂製、合成ゴム製の緩衝材を挙げることができる。
微小粒子の平均粒径は、0.1〜350μmの範囲内であるのが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では十分な緩衝作用が得られないおそれがあり、逆に350μmを超える場合には潤滑剤から分離しやすくなって、均一な潤滑剤組成物が得られないおそれがある。
【0029】
なお緩衝作用をより一層、向上することを考慮すると、微小粒子の平均粒径は、上記の範囲内でもとくに50μmを超えるのが好ましく、80μm以上であるのがさらに好ましい。
また、平均粒径が50μmを超える微小粒子と、50μm以下である微小粒子とを併用すると、平均粒径の大きい微小粒子の隙間を平均粒径の小さい微小粒子が埋めるため、緩衝作用をさらに向上することができる。
【0030】
微小粒子の形状は球状、粒状、薄片状、棒状等の種々の形状が選択できるが、潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると、とくに球状または粒状が好ましい。
緩衝材の微小粒子は、潤滑剤100重量部に対して50〜300重量部の割合で配合するのが好ましい。
微小粒子の割合が50重量部未満では、当該微小粒子による緩衝作用が不十分になるおそれがあり、逆に300重量部を超える場合には潤滑剤組成物の流動性が低下して、潤滑剤として機能しえなくなるおそれがある。
【0031】
次に前記(2)の微小粒子は、減速機を作動させると、その入力によって一部が、小歯車と大歯車のうち、自身より軟らかい樹脂製の歯面に食い込んで、歯面から一部を突出させた状態で固定されることによって、当該歯面に多数の突起を形成する。そしてこの突起によってバックラッシを適正化して、減速機の騒音を低減する働きをする。
かかる微小粒子としては、組み合わせる金属製の歯面より軟らかくかつ樹脂製の歯面より硬い、有機および無機の種々の材料にて形成したものを用いることができる。
【0032】
しかし微小粒子からなる突起と、金属面との衝突時に騒音が発生したり、突起が金属面を傷つけたり、あるいは突起が簡単に割れたり潰れたりするのを防止することを考慮すると、粒子は、とくに弾性や靭性に優れた樹脂にて形成するのが好ましい。
例えば樹脂製の歯面を、樹脂歯車の材料として一般的なポリアミド系の樹脂(未強化品)にて形成する場合は、微小粒子を、このポリアミド系の樹脂よりも硬く、しかも金属面よりも軟らかい樹脂にて形成すればよい。その具体例としては、たとえばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのいわゆるエンジニアリングプラスチック類や、熱硬化性樹脂の硬化物などを挙げることができる。なお硬さは、例えばロックウェル硬さによって規定することができる。
【0033】
微小粒子の平均粒径は、10〜200μmであるのが好ましい。平均粒径が10μm未満では、樹脂製の歯面に形成される突起の高さが低すぎて、バックラッシを適正化する効果が不十分になるおそれがあり、逆に200μmを超える場合には潤滑剤から分離しやすくなって、均一な潤滑剤組成物が得られないおそれがある。
また微小粒子は、組み合わせる小歯車と大歯車とのバックラッシのばらつきに柔軟に対応することや、樹脂製の歯面に固定されなかった余剰の微小粒子によって小歯車と大歯車との噛み合い部分を隙間なく埋めて騒音を低減することなどを考慮して、粒径の分布が単分散でなく、ある程度の粒度分布を有することが好ましい。
【0034】
つまり減速機の作動による入力によって、微小粒子のうち比較的粒径の大きいものは樹脂製の歯面に食い込んで突起を形成するが、粒径の小さいものは固定されずに、形成された突起の隙間を埋めて騒音をさらに低減する働きをする。
微小粒子の形状は種々、選択できるが、樹脂製の歯面への食い込みやすさや、食い込んだ後の突起の形状、あるいは潤滑剤組成物の流動性などを考慮すると、とくに球状または粒状であるのが好ましい。
【0035】
微小粒子は、潤滑剤100重量部に対して3〜50重量部の割合で配合するのが好ましい。
微小粒子の割合が3重量部未満では、当該微小粒子による、突起を形成してバックラッシを適正化する効果が不十分になるおそれがあり、逆に50重量部を超える場合には潤滑剤組成物の流動性が低下して、潤滑剤として機能しえなくなるおそれがある。
【0036】
次に前記(3)の軟質金属からなる微小粒子は、潤滑初期には、小歯車と大歯車との噛み合い部分にあらかじめ介在することによって、またそれ以降は小歯車と大歯車との噛み合いによって押しつぶされて、両歯車の金属製の歯面に層状に付着することによって、それぞれバックラッシを適正化して、減速機の騒音を低減する働きをする。
かかる微小粒子としては、組み合わせる金属製の歯面よりも軟質である、種々の金属や合金からなるものを用いることができる。その具体例としては、例えば歯面が鉄、鋼などである場合、青銅、銅、錫、亜鉛、銀、金、アルミニウムなどの粉末を、微小粒子として用いることができる。
【0037】
微小粒子は、電解法、粉砕法、アトマイズ法などの、従来公知の種々の方法によって製造することができる。
微小粒子の平均粒径は、5〜150μmであるのが好ましい。平均粒径が5μm未満では、とくに潤滑初期に小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在してバックラッシを適正化する効果が不十分になるおそれがあり、逆に150μmを超える場合には潤滑剤から分離しやすくなって、均一な潤滑剤組成物が得られないおそれがある。
【0038】
微小粒子は、潤滑剤100重量部に対して3〜50重量部の割合で配合するのが好ましい。
微小粒子の割合が3重量部未満では、当該微小粒子による、潤滑初期に小歯車と大歯車との噛み合い部分に介在してバックラッシを適正化する効果や、その後、金属製の歯面に層状に付着してバックラッシを適正化する効果が不十分になるおそれがあり、逆に50重量部を超える場合には潤滑剤組成物の流動性が低下して、潤滑剤として機能しえなくなるおそれがある。
【0039】
上記いずれかの微小粉末を分散させる潤滑剤としては、液状の潤滑油と半固体状のグリースのいずれを用いても良い。
このうち潤滑油としては、その動粘度が5〜200mm2/s(40℃)であるものを用いるのが好ましい。
潤滑油としては、合成炭化水素油(例えばポリαオレフィン油)が好ましいが、シリコーン油、フッ素油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油などを用いることもできる。潤滑油は、それぞれ単独で使用できる他、2種以上を混合しても良い。
【0040】
また潤滑油には、必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属活性剤、粘度指数向上剤、油性剤などを添加してもよい。
一方、グリースとしては、微小粒子を添加した潤滑剤組成物としてのちょう度が、NLGI(National Lubricating Grease Institute)番号で表してNo.0〜No.000であるものを用いるのが好ましい。
【0041】
グリースは、従来同様に潤滑基油に、増ちょう剤を添加して形成される。
潤滑基油としては、合成炭化水素油(例えばポリαオレフィン油)が好ましいが、シリコーン油、フッ素油、エステル油、エーテル油等の合成油や鉱油などを用いることもできる。潤滑基油の動粘度は5〜200mm2/s(40℃)であるのが好ましく、20〜100mm2/s(40℃)であるのがさらに好ましい。
また増ちょう剤としては、従来公知の種々の増ちょう剤(石けん系、非石けん系)が使用できる。
【0042】
さらにグリースには、やはり必要に応じて固体潤滑剤(二硫化モリブデン、グラファイト、PTFE等)、リン系や硫黄系の極圧添加剤、トリブチルフェノール、メチルフェノール等の酸化防止剤、防錆剤、金属活性剤、粘度指数向上剤、油性剤などを添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、一実施形態にかかる電動パワーステアリング装置の概略断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】上記電動パワーステアリング装置のうち、要部としての浸入防止部材の近傍を拡大した分解斜視図である。
【図4】浸入防止部材の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
M 電動モータ
11 ウォーム軸(入力軸)
34、35 転がり軸受
50 減速機
B1、B2 浸入防止部材
Claims (1)
- 操舵補助用のモータの出力を、減速機を介して減速して舵取機構に伝える電動パワーステアリング装置であって、上記減速機に、微小粒子を分散した潤滑剤組成物を充てんするとともに、減速機の入力軸を、上記入力軸とともに回転する内輪側に、薄肉円盤状で、かつ上記円盤の、ギヤハウジング内に面した側に筒状の返しを有する形状に形成された、潤滑剤組成物が内部に浸入するのを防止するための浸入防止部材を固定した転がり軸受によって回転自在に支持したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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