JP4102971B2 - ストラット式サスペンション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば車両の密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンション、特に、タイヤ側から伝達される外乱等による揺動や振動を減少させ、ハンドル操作時の操舵感覚を良好なものとした密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンションに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のサスペンション形式の一つであるストラット式サスペンションは、図3及び図3のP部の拡大断面図である図4に示すように、支持メンバー21に装着されて車体の一部を支持するストラットバー23と、該ストラットバー23に組み込まれタイヤ側からの振動や衝撃を吸収するコイルスプリング22と、車体の上部に固定されるスタビライザーサポート24と、該スタビライザーサポート24の下側に配置されるアッパーマウント25と、前記コイルスプリング22のばね座27を保持するロワーマウント28と、これらアッパーマウント25とロワーマウント28との間に配置される密封型スラスト玉軸受10、等より構成される。尚、前記支持メンバー21周りには、車軸29と該車軸29に固定され車輪を装着するハブ30と、該ハブ30に固定されるブレーキディスク31と、該ブレーキディスク31を油圧により圧接されるパッドを設けたキャリパボディ32等が配置されている。
【0003】
上記構成のストラット式サスペンションで用いられる前記密封型スラスト玉軸受10は、図5に示すように、通常、環状の第1レース11と、第2レース12と、これらのレースの軌道面の間の空間14に配置した玉13と、第1レース11と第2レース12との内周部の隙間18および外周部の隙間19を密封するシール部材15、16等で構成されている。また、潤滑には、潤滑油やグリース等の潤滑成分が用いられる。そしてこれらのシール部材15、16は、それぞれ芯金15a、16aとゴムシール15b、16bとで構成され、更に、これらのゴムシール15b、16bには、内部空間を密封するためのリップ部15c、16cが形成され、外部からの泥水や異物の侵入を防止する構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記するように、従来のストラット式サスペンションに使用される密封型スラスト玉軸受は、ストラットと車体との間にあって操舵時のストラットバーの揺動運動に追従しながら、両側の車輪を保持する役割を持っている。しかし、その構造から操舵とは逆方向の入力や車輪からの外乱等に対してその動きを規制することを目的とするものではなかった。そのため、タイヤ側からの外乱に起因する振動等を吸収することは出来ず、ハンドル側へ外乱の一部が伝達され運転感覚に不快感を催すことがあった。
【0005】
この発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、タイヤ側からの外乱等による揺動や振動を減少させ、ハンドルへ伝達される振動等を減衰させ、操舵感覚を良好なものとした密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンションを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、上記する課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ハンドルによって操作される車軸(29)に固定され車輪を装着するハブ(30)と、該ハブを介して前記車軸(29)に繋がるように取り付けられるストラットバー(23)と、該ストラットバー(23)に組み込まれ、タイヤ側からの振動や衝撃を吸収するコイルスプリング(22)と、第1レース(1)と第2レース(2)とこれらのレースの軌道面間の空間に配置され転動する適数の玉(3)と前記第1レース(1)と第2レース(2)との内周部および外周部間の隙間を密封するシール部材(5、6)と、を備えた密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンションにおいて、
前記密封型スラスト玉軸受の前記第1レース(1)および第2レース(2)の軌道面間の空間(4)に、上記車両のハンドルを回し始めたときの起動トルクよりも回し始めた後の回転トルクを低減させるポリマーと潤滑油とを混合し溶融・固化したポリマー潤滑剤(7)を充填した密封型スラスト玉軸受を用いたことを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記ポリマー潤滑剤(7)には、極圧添加剤および/または摩耗防止剤が混入してあることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の具体的な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明のストラット式サスペンションに用いる密封型スラスト玉軸受の一部断面図である。
この密封型スラスト玉軸受は、環状の第1レース1と、同じく環状の第2レース2と、これらのレース1、2の軌道面1a、2aの間の空間4に配置される玉3と、これら第1レース1と第2レース2との内周部を密封するシール部材5と、外周部を密封するシール部材6と、で構成されている。前記シール部材5及び6は、いずれも芯金にゴムシ−ルを固着させたシ−ルタイプの弾性シ−ル材であって、内周部の隙間を密封するシール部材5は、円筒状の芯金5aとゴムシ−ル5bとより構成され、外周部の隙間を密封するシール部材6は、一部円筒状の芯金6aとゴムシール6bとより構成される。なお、シール部材は、金属シールドであっても良い。こうしてを密封構造とした内部空間4には、固形化させたポリマー潤滑剤7が充填してある。
【0009】
次に、上記構成の密封型スラスト玉軸受の内部空間4に充填するポリマー潤滑剤7は、ポリマーと潤滑油とを混合した原料を、組立後の密封型スラスト玉軸受の第1レース1と第2レース2および玉3を配置した軌道面1aと2aとの間の空間4に溶融状態で注入し、冷却して固化させたものである。即ち、図2に示すように、第1レース1を上側に、第2レース2を下側において、シール部材6を外し、隙間9から注入して固化させたものである。
【0010】
ポリマー潤滑剤7の原料のうちポリマーとしては、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が用いられ、潤滑油としては、ポリαオレフィン、ジエステル、パーフロロポリエーテル、合成炭化水素、エーテル油、エステル油、シリコン油、フッ素油等の合成油や鉱油全般等、任意のものを用いることができる。また、あまり重い操舵感覚を避けること及び軸受内摩擦面の焼き付きを防止するため極圧添加剤および/または摩耗防止剤を使用する。これら極圧添加剤および/または摩耗防止剤としては、Moジチオカルバメート、Znジチオフォスフェートなどの有機金属錯体全般、ジエステルサルファイド、ベンジルサルファイドなどの硫黄系、トリクレジルフォスフェート、リン酸エステルなどのリン系、塩化アルキルベンゼンなどのハロゲン系等、全ての極圧添加剤や摩耗防止剤を使用することができる。
【0011】
ポリマー潤滑剤7を軌道面間の空間4に充填する場合、例えば平均分子量100万〜600万程度、融点100℃〜140℃の超高分子量ポリエチレンを20〜80重量%(従って、潤滑油は、上記する任意のもの80〜20重量%)含む潤滑性組成物を溶融させて注入し、冷却固化させる。超高分子量ポリエチレン20重量%未満になると潤滑性組成物が柔らか過ぎて、固形潤滑剤とならない。また、60重量%を越えると潤滑性組成物が硬過ぎて樹脂に近い状態となり、潤滑剤の滲み出しが少なくて潤滑不良を起こしやすい。ポリマー潤滑剤7を調合する場合、上記するように、種々のポリマーと潤滑油の組み合わせを用いて溶融・固化することが可能であるが、その場合、ポリマ潤滑剤7のベースオイルとなる潤滑油は、その動粘度が、40℃において、10〜200mm2 /s(ストークス)以上であることが好ましい。また、極圧添加剤および/または摩耗防止剤は、潤滑油に配合される割合としては、2〜30重量%(好ましくは5〜15重量%)の範囲で配合されていることが好ましい。
【0012】
ポリマー潤滑剤7を充填したこの発明の密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンションによれば、ハンドル操作時、軸受内の玉3とポリマー潤滑剤7との間の摺動抵抗により適度の重い操舵感覚が生じるようになる。即ち、第1レース1と第2レース2との間の空間4内で充填固化されたポリマー潤滑剤7が、ハンドル操作時に特有のトルク感覚を生じさせるようになる。この場合、ハンドル操作時、ハンドルを回し始める際の起動トルク感覚は、このポリマー潤滑剤の摺動抵抗により重く感じるが、回し始めると潤滑油成分がその性能を発揮するため回転トルクは軽くなる。従って、操舵感覚にしっくり感が生じるようになる。
【0013】
上記するように、この発明において、密封型スラスト玉軸受の内部空間にポリマー潤滑剤7を封入する意図は、タイヤからの外乱を低減させるとともに、ハンドル操作時において、回転起動時には重く感じさせ、一旦ハンドルが回転を始めると、軽い回転トルク感覚を得るようにしていわば「しっくり感」を得る点にある。従って、密封型スラスト玉軸受の内部の空間4に、固形化したポリマー潤滑剤7を充填する以外に、例えば玉3にゴム材を巻きつかせ弾性変形させながらスラスト方向に回転させる構成、或いは動粘度を高く且つ適宜潤滑しやすくして摺動抵抗を得るようにする、等の手段でも良い。なお、上記の実施の形態では、固形潤滑組成物であるポリマ潤滑剤7を、ストラット型サスペンションに用いられる密封型スラススト玉軸受内に封入した例を示したが、玉軸受、自動調心型玉軸受、深溝玉軸受、円筒ころ軸受、円すいころ軸受等に封入しても同様の効果を奏することができ、更には、軸受以外の部材、例えば直動案内機構等にも適用することも可能である。
【0014】
【発明の効果】
以上のように、この発明の密封型スラススト玉軸受を用いるストラット式サスペンションによれば、ハンドル操作に際して、タイヤ側からの外乱等による揺動や振動を減少させ、ハンドルへ伝達される振動等を減衰させ、良好な操舵感覚を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の密封型スラスト玉軸受の一部断面図である。
【図2】 この発明の密封型スラスト玉軸受の一部断面図であって、軌道面間の空間に溶融したポリマーと潤滑油の混合物を流し込む状態を示す図である。
【図3】 車両のサスペンション形式の一つであるストラット式サスペンションの概要を示す斜視図である。
【図4】 図3のP部の拡大断面図を示す図である。
【図5】 従来のストラット式サスペンションに使用されている密封型スラスト玉軸受の断面図である。
【符号の説明】
1 第1レース
2 第2レース
3 玉
4 軌道面間の空間
5 シール部材
6 シール部材
7 ポリマー潤滑剤
Claims (2)
- ハンドルによって操作される車軸に固定され車輪を装着するハブと、該ハブを介して前記車軸に繋がるように取り付けられるストラットバーと、該ストラットバーに組み込まれ、タイヤ側からの振動や衝撃を吸収するコイルスプリングと、第1レースと第2レースとこれらのレースの軌道面間の空間に配置され転動する適数の玉と前記第1レースと第2レースとの内周部および外周部間の隙間を密封するシール部材とより成る密封型スラスト玉軸受と、を備えたストラット式サスペンションにおいて、
前記密封型スラスト玉軸受の第1レースおよび第2レースの軌道面間の空間に、上記車両のハンドルを回し始めたときの起動トルクよりも回し始めた後の回転トルクを低減させるポリマーと潤滑油とを混合し溶融・固化したポリマー潤滑剤を充填したことを特徴とする密封型スラスト玉軸受を用いたストラット式サスペンション。 - 前記ポリマー潤滑剤には、極圧添加剤および/または摩耗防止剤が混入してあることを特徴とする請求項1に記載の密封型スラスト玉軸受を備えたストラット式サスペンション。
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