JP4199339B2 - パルスレーザ用電源装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、充電用直流高圧電源に並列接続されたコンデンサに蓄積されたエネルギーを磁気パルス圧縮回路を介してレーザ放電部に転送供給するパルスレーザ用電源装置に関し、特に最終的にレーザ放電部に転送されるパルスエネルギーを時間的に伸長し、さらには安定したパルスエネルギーとして出力することができるパルスレーザ用電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、パルスレーザ用電源装置には、高速、大電流、高繰り返しパルス電源を実現するため、磁気パルス圧縮回路を付加するものがある。この磁気パルス圧縮回路は、鉄心等の強磁性体の磁化の飽和を利用するものである。
【0003】
例えば、図13は磁気パルス圧縮回路を用いた従来のパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。図13において、充電用直流電源11は、例えば数十kVの直流電源であり、これに並列接続されたコンデンサC0を充電する。スイッチ素子SWのゲートG1にパルスを印加してスイッチ素子SWをオンにすると、可飽和リアクトルSL1の両端にコンデンサC0による放電電圧がかかり、可飽和リアクトルSL1に設定された電圧時間積に到達すると可飽和リアクトルSL1は飽和状態となり、可飽和リアクトルSL1のインダクタンスが急激に減少して導通状態となる。この導通状態によってコンデンサC0に蓄積されていた電荷はスイッチ素子SWを介し、電流I11として流れ、コンデンサC1に転送される。この電流I11がほぼ流れ切った段階で次段の可飽和リアクトルSL2がオンとなり、コンデンサC1に転送された電荷はコンデンサC2に転送される。このコンデンサC2への電荷転送の完了時点で可飽和リアクトルSL3が飽和してオンになると、コンデンサC2に蓄積された電荷は最終段のピーキングコンデンサCPに転送される。そして、このピーキングコンデンサCPに転送された電荷はレーザ放電部LDに印加され、放電破壊して電流ILD10が流れて、レーザ媒質を放電励起して、パルスレーザ発振が行われる。。
【0004】
可飽和リアクトルSL1〜SL3が飽和する多段磁気圧縮回路の磁気スイッチの飽和時のインダクタンスは、下流の磁気スイッチの飽和時のインダクタンスの方が小さいのでパルス圧縮が行われる。すなわち、図14(a)に示すように、可飽和リアクトルSL1がオンしてコンデンサC0の端子電圧VC0が低下し、この電荷の転送に伴ってコンデンサC1の端子電圧VC11が低下し、コンデンサC1への電荷転送が完了した時点で可飽和リアクトルSL2がオンする。可飽和リアクトルSL2がオンすると、コンデンサC1に転送した電荷がコンデンサC2に転送される。同様にして、コンデンサC2に電荷が転送完了したときに可飽和リアクトルSL3がオンし、コンデンサC2からピーキングコンデンサCPに電荷が転送される。
【0005】
この場合、可飽和リアクトルSL1のオンから可飽和リアクトルSL2のオンまでの間、可飽和リアクトルSL2のオンから可飽和リアクトルSL3のオンまでの間、可飽和リアクトルSL3のオンからピーキングコンデンサCPに電荷転送が完了するまでの間は、順次短くなるように設定されるので、各電荷の転送間の電流は図14(b)に示すように順次大きな電流値となり、パルス圧縮が実現される。
【0006】
さらに、ピーキングコンデンサCPに転送された電荷は、レーザ放電部LDに印加され、レーザ放電部LD間の端子電圧VLD10が最大値に近い所定値以上に達するとレーザ放電部LD間は放電破壊され、図14(b)に示すように電流ILD10が流れる。その後、ピーキングコンデンサCPとレーザ放電部LDとを含む閉回路では、共振状態となって数回放電が繰り返される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、レーザ放電部LD間の放電破壊で該レーザ放電部LD間を流れた電流ILD10は、再びピーキングコンデンサCPに逆極性で蓄積され、この逆極性で蓄積された電荷エネルギーによって再度、当初の電流ILD10とは逆方向に電荷エネルギーがレーザ放電部LDに流れ、不安定な放電が行われる。すなわち、ピーキングコンデンサCPとレーザ放電部LDとからなる転送エネルギー閉回路上で共振が生じ、これが不安定な放電状態を生成させるという、いわばリンギング状態が発生するという問題点があった。
【0008】
また、レーザ放電部LD間を流れる電流ILD1の先頭値は非常に大きな値であり、この大きな先頭値をもつ放電エネルギーに対応した時間プロファイルでパルスレーザ発振出力も生じるため、図13に示すパルスレーザ用電源装置を用いたパルスレーザ装置の共振器を構成する光学素子等の寿命を低下させるという問題点があった。
【0009】
なお、半導体露光装置に連続発振パルスレーザ光を用いる場合、高精度で均一な露光を達成するために、スペクトル線幅の狭帯域化が強く要望される。
【0010】
そこで、本発明は、かかる問題点を除去し、パルスレーザ装置の安定かつ長時間連続パルス発振を可能とし、該パルスレーザ装置に用いられる光学素子等の長寿命化をも促進することができ、狭帯域化パルスレーザ装置に適用する場合には出力パルスレーザ光の狭帯域化を一層促進することができるパルスレーザ用電源装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段および効果】
請求項1に係る発明では、充電用直流電源からの電荷エネルギーを充電用コンデンサに蓄積し、この充電用コンデンサに蓄積された電荷エネルギーをスイッチ素子のオンを契機として、可飽和リアクトルおよびコンデンサからなる磁気パルス圧縮回路を介して順次磁気パルス圧縮しつつ転送し、最終段のコンデンサに並列接続されたレーザ放電部に供給するパルスレーザ用電源装置において、前記最終段のコンデンサに並列接続され、該最終段のコンデンサから前記レーザ放電部のアノードへの転送方向を順方向とするダイオードと、前記最終段のコンデンサからのパルスエネルギーを前記レーザ放電部に流す最終エネルギー転送閉回路上に直列接続されたインダクタンス、または並列接続された抵抗とキャパシタンスとからなる回路であって、該パルスエネルギーを時間的に伸長するパルス伸長手段とを具備したことを特徴とする。
【0020】
請求項1に係る発明では、前記パルス伸長手段によって最終エネルギー転送閉回路上でのパルスが時間的伸長され、この伸長されたパルスによって放電励起されたパルスレーザ光も時間的に伸長される。
この場合、時間的に伸長されたパルスレーザ光は、パルスエネルギー値全体を維持したまま、そのピーク値が低減されるため、光学素子等に与えるダメージを低減できることから、光学素子等の寿命を延ばし、該光学素子等を交換することなく、長期に渡るレーザ発振と安定したレーザ発振とを達成することができる。一方、パルスレーザ光のピーク値の低減に伴ってパルスレーザ装置に用いる光学素子等の選択幅が増大することから、パルスレーザ用電源装置を用いたパルスレーザ装置の小型軽量化の促進や大量生産を可能にする。
また、パルスレーザ光は時間的に伸長されることから、光共振器間の往復回数が増大したパルスレーザ光が含まれ、パルスレーザ用電源装置がグレーティング等の波長選択素子が含んで狭帯域化されたパルスレーザ光を出力する狭帯域化パルスレーザ装置に適用する場合には、出力されるパルスレーザ光の狭帯域化を一層促進することができる。
また、前記ダイオードによる最終エネルギー転送閉回路上でのリンギングが防止され、さらに、前記ダイオードと前記パルス伸長手段によるパルス伸長とが重畳されてパルスレーザ光の時間的伸長を一層促進するとすることができることになる。
【0021】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記パルス伸長手段は、一端が前記最終段のコンデンサの一端に接続され、他端が前記最終段のコンデンサの前段のコンデンサの一端及び前記アノードに接続され、前記ダイオードは、順方向入力端が前記最終段のコンデンサの他端に接続され、順方向出力端が前記パルス伸長手段の他端に接続されることを特徴とする。
【0022】
これにより、具体的なダイオード配置がなされ、最終コンデンサに蓄積されたパルスエネルギーはパルス伸長手段を介してパルス伸長され、請求項1に係る発明と同様な作用効果を奏する。
【0023】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記パルス伸長手段は、一端が前記最終段のコンデンサの一端に接続され、他端が前記最終段のコンデンサの前段のコンデンサの一端及び前記アノードに接続され、前記ダイオードは、順方向入力端が前記最終段のコンデンサの他端に接続され、順方向出力端が前記最終段のコンデンサの一端及び前記パルス伸長手段の一端に接続されることを特徴とする。
【0024】
これにより、具体的なダイオード配置がなされ、最終段のコンデンサに蓄積されたパルスエネルギーはパルス伸長手段を介してパルス伸長され、請求項1に係る発明と同様な作用効果を奏する。
【0025】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記パルス伸長手段に並列接続された充電用ダイオードをさらに具備し、前記充電用ダイオードは、順方向入力端が前記パルス伸長手段の他端に接続され、順方向出力端が前記最終段のコンデンサの一端及び前記パルス伸長手段の一端に接続されることを特徴とする。
【0026】
請求項4に係る発明では、充電用ダイオードを介して最終段の前段の磁気パルス圧縮過程において転送されるパルスエネルギーは、パルス伸長手段を介さずに最終コンデンサに蓄積されるため、最終エネルギー転送閉回路上のみでパルス伸長され、パルス伸長の設定制御が容易となる。しかも、この場合においても、ダイオードによってリンギングが防止され、安定した放電励起がなされる。
【0027】
請求項5に係る発明では、請求項1に係る発明において、前記パルス伸長手段は、一端が前記レーザ放電部のカソードに接続され、他端が前記ダイオードの順方向入力端に接続されることを特徴とする。
【0028】
これにより、前段の磁気パルス圧縮回路において磁気圧縮されるパルスに影響を与えずに、最終エネルギー転送閉回路上のみパルス伸長されるとともに、ダイオードによってリンギングが防止されるため、安定した放電励起がなされ、さらには安定したレーザパルス発振がなされ、請求項4に係る発明と同様な作用効果を奏する。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図であり、図2は、図1に示すパルスレーザ用電源装置の電荷エネルギー転送動作を示すタイミングチャートである。
【0033】
図1において、パルスレーザ用電源装置1は、図13に示すパルスレーザ用電源装置20と同様に、充電用直流電源11を有し、スイッチ素子SWと、直列接続された充電用コンデンサC0と可飽和リアクトルSL1と転送用のコンデンサC1とがこの充電用直流電源41に並列接続される。また、直列接続された可飽和リアクトルSL2およびコンデンサC2はコンデンサC1に並列接続される。さらに、直列接続された可飽和リアクトルSL3およびピーキングコンデンサCPはコンデンサC2に並列接続される。また、ピーキングコンデンサCPには、レーザ放電部LDと充電用のコイルLとが並列接続されるとともに、リンギング防止用のダイオードD1が並列接続される。ここで、充電用直流電源11の負極側、スイッチSWの順方向側、コンデンサC1,C2およびピーキングコンデンサCPの一端、レーザ放電部LDのアノード12側、およびコイルLの一端は、点P1で共通接続され、接地される。リンギング防止用のダイオードD1の順方向側は、この点P1に接続され、ピーキングコンデンサCPをパイパスするようになっている。この図1に示すパルスレーザ用電源装置1は、図13に示すパルスレーザ用電源装置20にリンギング防止用のダイオードD1を付加した構成であり、ピーキングコンデンサCPから転送される電荷エネルギーをレーザ放電部LDに供給する際、ダイオードD1によって電流方向が一方向に制限され、レーザ放電部LDでのリンギングが防止される。
【0034】
次に、図2を参照して、このリンギング防止用のダイオードD1を付加した場合のパルスレーザ用電源装置1の動作について説明する。図2において、充電用直流電源11によって印加される直流高電圧によってコンデンサC0がゆっくりと充電され、コンデンサVC0の電圧が+Eボルトまで充電される。この場合、コイルLを介した閉回路が直流的に構成されることになる。スイッチ素子SWのゲートG1にパルスを印加してスイッチ素子SWをオンにすると、可飽和リアクトルSL1の両端にコンデンサC0による放電電圧がかかり、可飽和リアクトルSL1に設定された電圧時間積に到達すると可飽和リアクトルSL1は飽和状態となり、可飽和リアクトルSL1のインダクタンスが急激に減少して導通状態となる。この導通状態によってコンデンサC0に蓄積されていた電荷はスイッチ素子SWを介し、電流I1として流れ、コンデンサC1に転送される。この電流I1がほぼ流れ切った段階で次段の可飽和リアクトルSL2がオンとなり、コンデンサC1に転送された電荷はコンデンサC2に転送される。このコンデンサC2への電荷転送の完了時点で可飽和リアクトルSL3が飽和してオンになると、コンデンサC2に蓄積された電荷は最終段のピーキングコンデンサCPに転送される。ここまでのエネルギー転送動作は、図14に示すパルスレーザ用電源装置20と同じ動作である。
【0035】
その後、ピーキングコンデンサCPに転送された電荷はレーザ放電部LDへの印加電圧VLD1として印加され、印加電圧VLD1が所定電圧になった時点でレーザ放電部LDは放電破壊し、電流ILD1が急激に流れ、図示しないパルスレーザ装置のチャンバ内のレーザ媒質を放電励起して、パルスレーザ発振が行われる。
【0036】
図2に示すように、この電流ILD1は、その後、ピーキングコンデンサCPの逆極性側に蓄積されずに、ダイオードD1を介して、このダイオードD1とレーザ放電部LDとからなる閉回路を環流し、この閉回路上に内在する抵抗分、例えばダイオードD1の順方向抵抗分によって減衰する。従って、電流ILD1は、そのパルスのピーク値PP1の後、ダイオードD1を用いない電流ILD10に比較して時間的に徐々に減衰し、極性は維持される。その結果、リンギングが防止されて不安定なパルスレーザ発振が防止され、電流ILD1のパルス波形も極性が反転しない分、ダイオードD1を付加しない場合に比べて、平坦な波形となり、同極性のパルス波形が時間的に伸長されることにもなる。なお、ダイオードD1を付加しても、ダイオードD1の順方向抵抗によるエネルギーロスを除けば、転送される全体のエネルギー値は同じである。
【0037】
ここで、このパルス電流ILD1によって放電励起されたパルスレーザ光は、パルス電流ILD1とほぼ同様な時間波形をもった強度分布をなし、図示しないパルスレーザ装置の光共振器間を往復することになるが、例えばエキシマレーザの場合、数回程度の往復を行って出力される。すなわち、光共振器内におけるレーザ光の往復回数である、ラウンドトリップ数nは最大でも数回程度の値となり、グレーティング等の波長選択素子によって狭帯域化を図る図示しない狭帯域化モジュールがある場合、発光したレーザ光は、時間的に伸長されて発生するため、最大ラウンドトリップ数nの値が伸長された時間に対応して大きくなる。この関係は、次式で示される。すなわち、
Δλf=Δλ/n^(1/2)
である。ここで、Δλfは共振器内を1往復して出力した光のスペクトル線幅であり、Δλfはn往復した光のスペクトル線幅である。また、「^」はべき乗を示す。
【0038】
従って、スペクトル線幅Δλfは、ラウンドトリップ数の2分の1乗に逆比例して狭くなることになり、ラウンドトリップ数nが増大すればするほど、狭帯域化が図れることになる。
【0039】
この結果、パルスストレッチを行った放電励起を狭帯域化を行うパルスレーザ装置に適用することにより、レーザ光の狭帯域化が一層容易に行われることになる。
【0040】
しかも、パルスストレッチによって、パルスレーザ光のピーク値も低減されて発光するため、共振器内およびモニタ系に用いられる光学素子等へのダメージが小さくなり、光学素子等の長寿命化が促進され、レーザ部品を交換することなく、安定したパルスレーザ発振および長期間のパルスレーザ発振を実現することになる。また、レーザ光の狭帯域化を行うパルスレーザ装置に用いる光学素子等の選択幅が拡がり、小型軽量化や大量生産等を可能にすることができる。
【0041】
次に、図3および図4を参照して、第2の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0042】
図3において、第2の実施の形態では、第1の実施の形態で付加されたリンギング防止用のダイオードD1を取り除き、ピーキングコンデンサCPとレーザ放電部LDとからなる最終エネルギー転送回路上にコイルL11〜L15のリアクタンスを直列接続した構成としている。コイルL11は、ピーキングコンデンサCPと、可飽和リアクトルSL3とレーザ放電部LDのカソード13との間の点P2との間に直列接続される。コイルL12は、点P2と、レーザ放電部LDのカソード13とコイルLとの間の点P3との間に直列接続される。コイルL13は、点P3と、レーザ放電部LDのカソード13との間に直列接続される。コイルL14は、レーザ放電部LDのアノード12と、該アノード12とコイルLとの間の点P4との間に直列接続される。コイル15は、点P4と、ピーキングコンデンサCPと接地との間の点P1との間に直列接続される。コイル16は、点P1とピーキングコンデンサCPとの間に直列接続される。
【0043】
これらのコイルL11〜L15の直列接続の位置は、最終エネルギー転送回路上のいずれの位置でもよく、少なくとも1つのコイルが配置されればよい。例えば、コイルL15のみを接続して、他のコイルL11〜L14,L16を取り除いた構成としてもよい。要は、所望のインダクタンスが最終エネルギー転送回路上に設けられればよい。但し、コイルL11,L16が設けられた場合には、前段の磁気パルス圧縮回路(可飽和リアクトルSL3〜コンデンサC2〜ピーキングコンデンサCP〜可飽和リアクトルSL3)上にも重複するため、前段の磁気パルス圧縮された波形は、コイルL11あるいはコイルL16のインダクタンスによって若干時間的に伸長されたものとなる。
【0044】
次に、図4に示すタイミングチャートを参照して、最終エネルギー転送時におけるパルス波形について説明する。図4において、ピーキングコンデンサCPに電荷エネルギーが転送されるまでは、図2に示すタイミングチャートと同じ動作を行う。
【0045】
その後、ピーキングコンデンサCPに転送された電荷はレーザ放電部LDへの印加電圧VLD2として印加され、印加電圧VLD2が所定電圧になった時点でレーザ放電部LDは放電破壊し、電流ILD2が急激に流れ、図示しないパルスレーザ装置のチャンバ内のレーザ媒質を放電励起して、パルスレーザ発振が行われる。
【0046】
図4に示すように、この電流ILD2のパルス波形は、最終エネルギー転送回路上に設けられたコイルL11〜L16のインダクタンスによって、このインダクタンスに対応して時間的に伸長した波形となり、そのピーク値PP2は、コイルL11〜L16を設けない場合あるいはダイオードD1を設けた場合に比して、小さな値をなり、パルス波形が時間的に伸長され、平坦な波形となる。なお、放電後の電荷エネルギーは、ピーキングコンデンサCPの逆極性側に再度蓄積され、共振回路としてリンギングが発生するが、そのリンギング周波数自体は小さな値となり、コイルL11〜L16を設けない場合に比して、リンギングによるレーザ発振の不安定さは減少される。
【0047】
このようなコイルL11〜L16のインダクタンスによるパルスストレッチによって、パルスレーザ光のピーク値は図1のパルスレーザ用電源装置1に比して小さな値となるため、共振器内およびモニタ系に用いられる光学素子等へのダメージが小さくなり、光学素子等の長寿命化が一層促進され、レーザ部品を交換することなく、安定したパルスレーザ発振および長期間のパルスレーザ発振を実現することになる。
【0048】
また、このことはレーザ光の狭帯域化を行うパルスレーザ装置に用いる光学素子等の選択幅が拡がり、小型軽量化や大量生産等を一層可能にすることができるとともに、パルスストレッチによりパルス波形が時間的に伸長するため、最大ラウンドトリップ数nが増大したパルスレーザ光を出力するので、狭帯域化を一層促進することができる。
【0049】
次に、図5および図6を参照して、第3の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0050】
図5において、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に、さらにリンギング防止用のダイオードD1の順方向側出力点P10と点P1との間にインダクタンスとしてのコイルL20を付加した構成となっている。逆に言えば、第2の実施の形態の構成におけるコイルL16のみを設け、さらにリンギング防止用のダイオードD1を設け、このダイオードD1の順方向出力点をこのコイルL16とピーキングコンデンサCPとの間とした構成である。
【0051】
次に、図6に示すタイミングチャートを参照して、最終エネルギー転送時におけるパルス波形について説明する。図6において、ピーキングコンデンサCPに電荷エネルギーが転送されるまでは、図2に示すタイミングチャートとほぼ同じ動作である。但し、コイルL20のインダクタンスにより、最終エネルギー転送回路の前段の磁気パルス圧縮回路での電荷エネルギー転送がコイルL20によってパルスストレッチされるため、電流波形I3は、ピーク値が若干低下し、パルス圧縮時間T3も若干長い、電流波形I3’となる。なお、転送される電荷エネルギーは変わらない。
【0052】
その後、ピーキングコンデンサCPに転送された電荷はレーザ放電部LDへの印加電圧VLD3として印加され、印加電圧VLD3が所定電圧になった時点でレーザ放電部LDは放電破壊され、電流ILD3が急激に流れ、図示しないパルスレーザ装置のチャンバ内のレーザ媒質を放電励起して、パルスレーザ発振が行われる。
【0053】
図6に示すように、この電流ILD3のパルス波形は、最終エネルギー転送回路上に設けられたコイルL20のインダクタンスによって、このインダクタンスに対応して時間的に伸長した波形となるとともに、リンギング防止用のダイオードD1によってさらに連続的にコイルL20のインダクタンスの影響を受けて時間的に伸長した波形となり、そのピーク値PP3は、そのパルスストレッチに伴って、ピーク値PP2よりも小さな値となり、平坦なパルス波形となる。しかも、ダイオードD1によってリンギングが防止されるため、パルスレーザ発振が安定したものとなる。
【0054】
このパルスストレッチによって、パルスレーザ光のピーク値PP3は第2の実施の形態におけるピーク値PP2よりも小さな値となるため、共振器内およびモニタ系に用いられる光学素子等へのダメージが小さくなり、光学素子等の長寿命化が一層促進され、レーザ部品を交換することなく、安定したパルスレーザ発振および長時間のパルスレーザ発振を実現することになる。
【0055】
しかも、ダイオードD1によって安定したパルスレーザ発振が可能となる。
【0056】
また、第2の実施の形態と同等以上に、レーザ光の狭帯域化を行うパルスレーザ装置に用いる光学素子等の選択幅が拡がり、小型軽量化や大量生産等を一層可能にすることができるとともに、パルスストレッチによりパルス波形が時間的に一層伸長するため、最大ラウンドトリップ数nが更に増大したパルスレーザ光を出力するので、狭帯域化を一層促進することができる。
【0057】
次に、図7および図8を参照して、第4の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0058】
図7において、第4の実施の形態では、第3の実施の形態におけるコイルL20の構成配置を、ピーキングコンデンサCPと点P10との間としている。すなわち、図7において、コイルL21は、コンデンサD1の順方向出力側の点P11とピーキングコンデンサCPとの間に配置される。
【0059】
図8に示すタイミングチャートを参照して、最終エネルギー転送時におけるパルス波形について説明する。図8において、ピーキングコンデンサCPに電荷エネルギーが転送されるまでは、図6に示すタイミングチャートと同じである。
【0060】
その後、ピーキングコンデンサCPに転送された電荷はレーザ放電部LDへの印加電圧VLD4として印加され、印加電圧VLD4が所定電圧となった時点でレーザ放電部LDは放電破壊され、電流ILD4が急激に流れ、図示しないパルスレーザ装置のチャンバ内のレーザ媒質を放電励起して、パルスレーザ発振が行われる。
【0061】
図8に示すように、この電流ILD4のパルス波形は、最終エネルギー転送回路上に設けられたコイルL21のインダクタンスによって、このインダクタンスに対応して時間的に伸長した波形となるとともに、リンギング防止用のダイオードD1によってリンギングが防止される。また、そのピーク値PP4は、そのパルスストレッチに伴って、ピーク値PP2よりも小さな値となり、電流ILD3と同様に平坦なパルス波形となる。
【0062】
但し、最終エネルギー転送回路を一巡した電流ILD4は、その後コイルL21を経由することがないので、コイルL21によるパルスストレッチはされない。そのため、図8に示すように、電流ILD4のピーク値PP4は電流ILD3のピーク値PP3に比較して早い時点に現れることになる。
【0063】
このようなパルスストレッチによって、パルスレーザ光のピーク値PP4は第2の実施の形態におけるピーク値PP2により小さな値となり、また、ピーク値PP3とほぼ同様な値となることから、共振器内およびモニタ系に用いられる光学素子等へのダメージが小さくなり、光学素子等の長寿命化が一層促進され、レーザ部品を交換することなく、安定したパルスレーザ発振および長時間のパルスレーザ発振を実現することになる。
【0064】
しかも、第3の実施の形態と同様に、ダイオードD1によって安定したパルスレーザ発振が可能となる。
【0065】
また、第3の実施の形態と同様に、レーザ光の狭帯域化を行うパルスレーザ装置に用いる光学素子等の選択幅が拡がり、小型軽量化や大量生産等を一層可能にすることができるとともに、パルスストレッチによりパルス波形が時間的に一層伸長するため、最大ラウンドトリップ数nが更に増大したパルスレーザ光を出力するので、狭帯域化を一層促進することができる。
【0066】
次に、図9および図10を参照して、第5の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0067】
図9において、第5の実施の形態では、第3の実施の形態にさらにダイオードD2を付加した構成となっている。ダイオードD2は、コイルL20の両端に並列接続され、その順方向を磁気パルス圧縮方向、すなわち、点P1から点P10に向いている。従って、最終エネルギー転送回路の前段の磁気パルス圧縮回路から転送される電荷エネルギーは、コイルL20を経由せず、ダイオードD2を介してピーキングコンデンサCPに蓄積されることになる。
【0068】
図10に示すタイミングチャートを参照して、最終エネルギー転送時におけるパルス波形について説明すると、ピーキングコンデンサCPに電荷エネルギーが転送されるまでは、図2に示すタイミングチャートと同じであり、その後におけるピーキングコンデンサCPからレーザ放電部LDへの電荷エネルギーの転送は、第3の実施の形態で示した図6に示すタイミングチャートと同じである。
【0069】
すなわち、最終エネルギー転送時直前の電流I3は、ダイオードD2を経由するため、パルス波形は時間的に伸長せず、最終エネルギー転送時後における電流ILD5は電流ILD3と同様にコイルL20によるパルスストレッチが繰り返し行われることになる。この場合、第3の実施の形態と同様にダイオードD1によってリンギングが防止される。
【0070】
従って、第5の実施の形態では、第3の実施の形態と同様なパルス波形を出力することができるので、第3の実施の形態と同様な作用効果を奏するが、その前段における磁気パルス圧縮過程に影響を与えることがないので、磁気パルス圧縮がより効果的に行われることになる。また、最終エネルギー転送時におけるパルスストレッチのみを考えればよいので設計上も容易であり、所望のパルスストレッチを容易に得ることができる。
【0071】
次に、図11を参照して第6の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0072】
図11において、第6の実施の形態では、第3の実施の形態におけるコイルL20を取り除いて、ダイオードD1の順方向入力側の点P12と、レーザ放電部LDのカソード13とコイルLとの間の接続点P13との間に配置した構成としている。これにより、第6の実施の形態では図9に示す第5の実施の形態の動作と全く同様な動作を行うことになる。
【0073】
しかも、この場合、図9に示す第5の実施の形態では、ダイオードD2を必要としたが、第6の実施の形態では、ダイオードD2の構成が必ずしも必要ではない。
【0074】
これは、インダクタンスたるコイルL22が最終エネルギー転送回路上であっって、前段の磁気パルス圧縮回路とは無関係の位置に配置されるからである。
【0075】
従って、最終エネルギー転送回路上であって、ピーキングコンデンサCPとダイオードD1との並列回路上以外の部署に直列にコイルを配置すればよいことになり、そのような構成としても、第6の実施の形態と同様な作用効果を奏する。
【0076】
次に、図12を参照して、第7の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置について説明する。
【0077】
図12に示すパルスレーザ用電源装置は、図3に示す第2の実施の形態におけるコイルL11〜L16の内のコイルL15のみを取り付けた場合で、このコイルL15の代わりに、抵抗RとコンデンサCとの並列回路であるパルス伸長回路8を最終エネルギー転送回路上に直列接続した構成としている。
【0078】
この図12に示すパルスレーザ用電源装置では、図3に示す第2の実施の形態とほぼ同様な動作を行うが、抵抗Rによるエネルギーロスの分だけ、電流ILD2の波形が早く減少することになる。
【0079】
もちろん、このパルス伸長回路8によるパルス伸長は、抵抗RとコンデンサCとの時定数によって決定することができる。
【0080】
また、パルス伸長回路8は、第2の実施の形態から第6の実施の形態までのコイルに代えて適用できるのは言うまでもなく、その場合、抵抗Rによるエネルギーロスが生じ、パルス波形も減少が早くなる。
【0081】
なお、上述した実施の形態におけるスイッチ素子SWは、高速動作が可能で大電力用のスイッチ素子であればよく、例えばサイリスタ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、バイポーラトランジスタ、MOSFET等の半導体電力デバイスが適用できる。
【0082】
また、スイッチ素子SWは、複数のスイッチ素子を直列接続した構成として各スイッチ素子にかかる耐圧を軽減するようにしてもよい。
【0083】
さらに、上述した実施の形態では、まず充電用コンデンサC0に充電するようにしているが、この充電用コンデンサC0を取り除き、充電用直流電源1が可飽和リアクトルSL1,SL2を介してコンデンサC1,C2を直接充電するようにしてもよい。この場合、コイルLは取り除かれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すパルスレーザ用電源装置1の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図4】図3に示すパルスレーザ用電源装置2の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第3の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図6】図5に示すパルスレーザ用電源装置3の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】本発明の第4の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図8】図7に示すパルスレーザ用電源装置4の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】本発明の第5の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図10】図9に示すパルスレーザ用電源装置5の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】本発明の第6の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図12】本発明の第7の実施の形態であるパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図13】従来のパルスレーザ用電源装置の構成を示す図である。
【図14】図13に示す従来のパルスレーザ用電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1〜7…パルスレーザ用電源装置 8…パルス伸長回路
11…充電用直流電源 SW…スイッチ素子 G1…ゲート
SL1〜SL3…可飽和リアクトル
L,L11〜L16,L20〜L22…コイル
D1,D2…ダイオード C0…充電用コンデンサ
C,C1,C2…コンデンサ R…抵抗
CP…ピーキングコンデンサ LD…レーザ放電部
12…アノード 13…カソード
Claims (5)
- 充電用直流電源からの電荷エネルギーを充電用コンデンサに蓄積し、この充電用コンデンサに蓄積された電荷エネルギーをスイッチ素子のオンを契機として、可飽和リアクトルおよびコンデンサからなる磁気パルス圧縮回路を介して順次磁気パルス圧縮しつつ転送し、最終段のコンデンサに並列接続されたレーザ放電部に供給するパルスレーザ用電源装置において、
前記最終段のコンデンサに並列接続され、該最終段のコンデンサから前記レーザ放電部のアノードへの転送方向を順方向とするダイオードと、
前記最終段のコンデンサからのパルスエネルギーを前記レーザ放電部に流す最終エネルギー転送閉回路上に直列接続されたインダクタンス、または並列接続された抵抗とキャパシタンスとからなる回路であって、該パルスエネルギーを時間的に伸長するパルス伸長手段と
を具備したことを特徴とするパルスレーザ用電源装置。 - 前記パルス伸長手段は、一端が前記最終段のコンデンサの一端に接続され、他端が前記最終段のコンデンサの前段のコンデンサの一端及び前記アノードに接続され、
前記ダイオードは、順方向入力端が前記最終段のコンデンサの他端に接続され、順方向出力端が前記パルス伸長手段の他端に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザ用電源装置。 - 前記パルス伸長手段は、一端が前記最終段のコンデンサの一端に接続され、他端が前記最終段のコンデンサの前段のコンデンサの一端及び前記アノードに接続され、
前記ダイオードは、順方向入力端が前記最終段のコンデンサの他端に接続され、順方向出力端が前記最終段のコンデンサの一端及び前記パルス伸長手段の一端に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザ用電源装置。 - 前記パルス伸長手段に並列接続された充電用ダイオードをさらに具備し、
前記充電用ダイオードは、順方向入力端が前記パルス伸長手段の他端に接続され、順方向出力端が前記最終段のコンデンサの一端及び前記パルス伸長手段の一端に接続される
ことを特徴とする請求項3に記載のパルスレーザ用電源装置。 - 前記パルス伸長手段は、
一端が前記レーザ放電部のカソードに接続され、他端が前記最終段のコンデンサ及び前記ダイオードの順方向入力端に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のパルスレーザ用電源装置。
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